JP2015062154A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】45℃以上の高温下、満充電状態で保管した後にも、充電時の高い電圧を維持し、且つ、残存容量を高いまま保持することのできるリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水電解液とを備え、上記リチウム二次電池は、一般式(1);(XSO2)(F
SO2)NLi(式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数
1〜6のフルオロアルキル基を表す)で表されるスルホニルイミド化合物を含み、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで正極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有する。
【選択図】図1

Description

本発明はリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は高エネルギー密度を有するため、近年、移動体通信機器用電源、携帯用情報端末用電源等として使用されている。また、これらの端末の普及と共にその市場が急速に拡大しており、安全性の確保、サイクル特性やエネルギー密度の向上、高温保存特性などの改良を目的とした様々な研究がなされている。
リチウムイオン二次電池の中でも非水電解液を用いたリチウムイオン電池の分野においては、電極や電解液の組成面から上記特性の改良が試みられている。例えば、特許文献1には、非水電解液に含有させた環式ジスルホン酸エステルにより、環式ジスルホン酸エステルの分解物を含み、且つ、硫黄と酸素の濃度比、及び硫黄と上記分解物に由来する硫黄の濃度比が特定範囲内である不動態被膜を負極表面に形成させることで、所定温度での保存後の抵抗上昇や放電容量の低下を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、有機硫黄化合物又はフルオロアルキル基を有する化合物又は有機窒化物のいずれかを含み、これらの化合物に由来する硫黄、炭素及び窒素のXPS分析に基づく原子比がそれぞれ特定の範囲内である保護被膜を正極表面に形成することにより、非水二次電池を所定温度下で保存した後の放電容量の低下を抑制する技術が開示されている。さらに特許文献3には、負極活物質として用いられる黒鉛材料の表面酸素濃度や結晶性等を好適化することで、超長期サイクル特性、大電流負荷特性及び高エネルギー密度を維持しつつ、高い初期効率を確保する技術が開示されている。
特許第4844718号公報 特許第4553468号公報 国際公開第2013/051678号
電池特性には上記技術による一定の向上が認められるものの、リチウムイオン二次電池の用途の拡大に伴ってその使用環境や保管環境も多様化し、例えば温度45℃以上といった過酷な環境下で保管した場合にも保管前と同程度の電圧や残存容量を保持することが求められている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、45℃以上の高温下、満充電状態で保管した後にも、充電時の高い電圧を維持し、且つ、残存容量の低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
本発明のリチウムイオン二次電池とは、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、
上記リチウムイオン二次電池は、一般式(1);(XSO2)(FSO2)NLi(式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)で表されるスルホニルイミド化合物(以下、スルホニルイミド化合物(1)と称する場合がある)を含み、且つ、
7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで正極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有するところに特徴を有する。
スルホニルイミド化合物(1)がリチウムイオン二次電池の構成材料(例えば電解液等)として含まれている場合には、電池駆動時にスルホニルイミド化合物(1)や電解質塩が正極活物質上で分解し、被膜(SEI膜;Solid Electrolyte Interphase)が形成される。この被膜により正極活物質と溶媒との接触が防止される結果、溶媒の分解が生じ難くなり、各種電池特性の低下が抑制されるものと考えられる。
なお、HAXPES(硬X線光電子分光法、HArd X−ray Photoelectron Spectroscopy)とは、高エネルギーのX線を利用したX線光電子分光法(XPS)であり、汎用のXPSに比べて検出深さが深いため、より内部の埋もれた界面の化学状態の分析が可能となる。また、汎用のXPSでは硫黄原子のS2p軌道のスペクトルを測定するが、HAXPESは汎用のXPSと比較して硫黄原子に対する感度が非常に高いことや、硫黄原子のS1s軌道のスペクトルを測定できることが特徴である。測定方法は実施例において説明する。
上記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物と溶媒とを含む非水電解液を有するリチウムイオン二次電池は本発明の好ましい実施態様である。
本発明のリチウムイオン二次電池の満充電電圧は4.3V以上であるのが望ましい。本発明に係る非水電解液においては、上記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の濃度が0.1mol/L以上であるのが好ましい。
本発明では、上記負極が、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで負極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有するものであるのが好ましい。また、上記負極は7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで負極表面のF1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが686eV〜689eVの領域にピークを有するものであるのが好ましい。
本発明によれば、高温下(45℃以上)、満充電状態(電圧4.3V以上)で保管した場合であっても、自己放電が抑制され、電圧及び残存容量の低下が抑制されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
ラミネート型リチウムイオン二次電池1(実施例1)の正極表面のS1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。 ラミネート型リチウムイオン二次電池1(実施例1)の負極表面のS1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。 (a)ラミネート型リチウムイオン二次電池1(実施例1)と(b)ラミネート型リチウムイオン二次電池3(比較例1)の負極表面のP1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。 (a)ラミネート型リチウムイオン二次電池4(比較例2)と(b)ラミネート型リチウムイオン二次電池5(比較例3)の負極表面のP1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。 (a)ラミネート型リチウムイオン二次電池1(実施例1)と(b)ラミネート型リチウムイオン二次電池3(比較例1)の負極表面のF1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。 (a)ラミネート型リチウムイオン二次電池4(比較例2)と(b)ラミネート型リチウムイオン二次電池5(比較例3)の負極表面のF1s軌道のHAXPESスペクトルを示す図である。
本発明のリチウムイオン二次電池とは、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、上記リチウム二次電池が、一般式(1);(XSO2)(FSO2)NLi(式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。)で表されるスルホニルイミド化合物を含み、且つ、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESにより、当該電池に備えられた正極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有するところに特徴を有する。
1.電極表面の化学状態
本発明者等は、より高性能なリチウムイオン二次電池を開発すべく検討を重ねていたところ、当該電池が上記スルホニルイミド化合物(1)を含み、且つ、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESにより、当該電池に備えられた正極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有する場合には、リチウムイオン二次電池を満充電状態になるまで充電し、45℃以上の高温下で保管した後でも、保管前と同程度の電圧を維持し、残存容量の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
HAXPES測定により得られるS1s軌道のスペクトルにおいて、結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域に観察されるピークは、正極表面に形成された被膜にS原子とP原子との間の結合(以下「S−P結合」と略す)を有する成分が存在することを示すと推測される。当該ピークはスルホニルイミド化合物(1)と非水電解液の構成材料(例えば電解質塩や添加剤等)に由来するものであると考えられる。すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池では、これを稼動することによりスルホニルイミド化合物(1)等が正極上で酸化分解し、スルホニルイミド化合物に含まれるS原子と、電解質塩等に由来するP原子との間に結合(S−P結合)を有する成分が生成し、これが正極活物質表面に堆積することで被膜が形成される。SEI形成剤としてはエチレンカーボネートやビニレンカーボネート等の有機物が一般的に使用されている。しかしながら、有機物由来のSEI膜は正極で酸化分解されてCO2やCOを発生し易く、これにより被膜に欠陥が生じるため、効果的な非水電解液の酸化分解の抑制は難しかった。
これに対して、本発明に係る正極に形成される被膜にはS−P結合を有する無機骨格が含まれていることから、従来のSEI形成剤から形成される被膜に比べて強固である。したがって、斯かる被膜が正極活物質表面に存在することで、非水電解液と正極活物質との接触が抑制されるため、45℃以上の高温環境下、満充電状態で本発明のリチウムイオン二次電池を保管した場合にも電解液の分解反応等が生じ難くなり、保管前と同程度の高い電圧や充電容量を保持できるものと考えられる。
本発明では、正極表面のS1s軌道のスペクトルにおいて結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域に観察されるピークに帰属されるS−P結合に寄与するS原子の存在比(Ss-p)が0.1%〜10%であるのが好ましい。より好ましくは0.2%〜8%であり、さらに好ましくは0.5%〜7%である。S原子の存在比が低過ぎると、高温保存後の残存容量の低下を抑制し難くなり、S原子の存在比が高過ぎると、被膜が厚くなり過ぎてハイレート特性等が低下する虞がある。本発明においてS原子の存在比は、後述する実施例に記載の方法により求められた値を意味する。
また、負極表面のS1s軌道のHAXPESスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有する負極を備えたリチウムイオン電池も本発明の好ましい態様である。上記ピークを有する負極は、正極と同様、負極表面に存在する被膜がS−P結合を有する成分を含む。負極上にS−P結合を含む被膜が存在することにより負極上での電解液の還元分解が抑制される。このように正極及び負極がS−P結合を含む被膜を有する場合には、リチウムイオン二次電池の高温保存特性を大きく向上させることができる。また、この被膜は高温保存特性だけでなく、レート特性やサイクル特性等の向上にも寄与しているものと考えられる。
本発明では、負極表面のS1s軌道のスペクトルにおいて結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域に観察されるピークに帰属されるS−P結合に寄与するS原子の存在比(Ss-p)が、1%〜40%であるのが好ましい。より好ましくは2%〜35%であり、さらに好ましくは5%〜30%である。S原子の存在比が低過ぎると、高温保存後の残存容量の低下を抑制し難くなり、S原子の存在比が高過ぎると、被膜が厚くなり過ぎてハイレート特性等が低下する虞がある。本発明においてS原子の存在比は、後述する実施例に記載の方法により求められた値を意味する。
また、本発明に係る電極は、負極表面のF1s軌道のHAXPESスペクトルにおいて結合エネルギー686eV〜689eVの領域にピークを有するものであるのが好ましい。当該領域に検出されるピークはスルホニルイミド化合物(1)に由来するものと考えられ、当該ピークの存在は、負極表面の被膜にスルホニルイミド化合物(1)に由来する成分が含まれることを意味すると考えられる(例えば、スルホニルイミド化合物(1)、スルホニルイミド化合物(1)の分解生成物などのF−S結合を有する成分)。なお、本発明の好適な電解液の構成として、電解質塩としてスルホニルイミド化合物(1)とヘキサフルオロリン酸塩を併用する形態が挙げられるが、この場合には、ヘキサフルオロリン酸塩のPF6に帰属されるピークが結合エネルギー686eV〜687eVに検出されるので、上記領域(結合エネルギー686eV〜689eV)に観測されるピークは比較的ブロードなものとなる。したがって、斯かる場合には、例えば結合エネルギー686eV〜689eVの領域にF−S結合とF−S結合以外の結合に由来する2本以上のピークが存在していてもよい。
正極及び負極表面のS1sHAXPESスペクトルにおいて結合エネルギー2472eV〜2476eVの領域にピークを有する被膜、又は、これに加えて負極表面のF1sHAXPESスペクトルにおいて結合エネルギー686eV〜689eVの領域にピークを有する被膜は、スルホニルイミド化合物(1)を含むリチウムイオン二次電池の充放電を行うことにより形成することができる。この際、少なくとも初回の充電はリチウムイオン二次電池の電圧が4.3V以上となるまで実施するのが好ましい。電圧が4.3V以上であれば電極表面の被膜中にS原子とP原子との間に結合を生成するのに十分なエネルギーが供給されるからである。また、2回目以降の充電においても電圧4.3V以上となるまで充電することで、被膜をより強固で安定なものとすることができる。一方電圧が低すぎる場合には、供給されるエネルギー量が不十分であるため、スルホニルイミド化合物や電解質塩又は添加剤が酸化分解してもS原子とP原子との間に結合が形成され難くなる。したがって、電圧は4.32V以上であるのがより好ましく、さらに好ましくは4.35V以上である。電圧が高すぎると電池の安全性を確保し難くなったり、むしろ被膜が破壊されてしまう虞があるので、電圧は5V以下とするのが好ましく、より好ましくは4.9V以下であり、さらに好ましくは4.8V以下である。
電極(特に正極活物質)上にS−P結合を有する被膜を速やかに形成させる観点からは、本発明のリチウムイオン二次電池は、スルホニルイミド化合物(1)に加えてP原子を有する化合物を含むものであるのが好ましい。P原子を有する化合物は、電解質塩であってもよく、また電解液を構成する溶媒や添加剤であってもよい。P原子を有する電解質塩としては、MPFa(Cm2m+16-a(0≦a≦6、1≦m≦2、Mはアルカリ金属イオンを表す)で表されるP原子含有アルカリ金属塩が好ましい。P原子を有する溶媒としてはリン酸エステルが好ましく用いられる。
なお、HAXPESの測定サンプル調製及び測定は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。より好ましくはアルゴンガスを封入したグローブボックス中でリチウムイオン二次電池を解体して電極(正極及び負極)を取り出し、取り出した電極を低沸点の鎖状カーボネート(ジメチルカーボネートが好ましい)で洗浄し、乾燥して測定用サンプルを調整した後、このサンプルをトランスファーベッセルに格納し、電極が外気に触れない状態でHAXPES装置に導入し、測定することである。測定サンプルが微量な水分や酸素と接触するだけでも、スペクトル形状が変化してしまう虞があるからである。
2.スルホニルイミド化合物(1)
本発明のリチウムイオン二次電池は、一般式(1);(XSO2)(FSO2)NLiで表されるスルホニルイミド化合物を含む。スルホニルイミド化合物(1)が有するS−F結合はS−C結合に比べて酸化分解により結合が切断され易いため、スルホニルイミド化合物(1)を含むリチウムイオン二次電池では、正極上にS−P結合を有する被膜が形成され易いものと考えられる。
一般式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基であるのが好ましく、直鎖状のアルキル基であるのがより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。これらの中でもXとしては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
具体的なスルホニルイミド化合物(1)としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(メチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(エチルスルホニル)イミドが挙げられる。より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドであり、さらに好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。
スルホニルイミド化合物(1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、スルホニルイミド化合物(1)は、市販品を使用してもよいし、従来公知の方法により合成した物を用いてもよい。
スルホニルイミド化合物(1)は、本発明のリチウムイオン二次電池の構成材料として含まれていればよく、その存在態様は特に限定されない。例えば、スルホニルイミド化合物(1)の存在態様としては、(i)リチウムイオン二次電池の非水電解液にスルホニルイミド化合物(1)が含まれている態様;(ii)非水電解液以外のリチウムイオン二次電池構成材料(電極、セパレーター又は外装等)にスルホニルイミド化合物(1)が含まれている態様;(iii)上記(i)、(ii)を組み合わせた態様;等が挙げられる。S−P結合を有する被膜を電極に速やかに生成させる観点からは、スルホニルイミド化合物(1)は非水電解液中に含まれているのが好ましい。
(i)スルホニルイミド化合物(1)が非水電解液に含まれている態様
態様(i)では、リチウムイオン二次電池に備えられる非水電解液の構成成分(電解質)としてスルホニルイミド化合物(1)を使用すればよく、非水電解液の調製も容易であるので好ましい(スルホニルイミド化合物(1)と後述する他の電解質や媒体等他の構成成分とを混合、又は、予め調製された非水電解液にスルホニルイミド化合物(1)を添加等)。
非水電解液中のスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.05mol/L以上、飽和濃度以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.10mol/L〜4mol/L、さらに好ましくは0.10mol/L〜3mol/Lである。スルホニルイミド化合物(1)の濃度が低過ぎると正極活物質上の被膜への作用が充分でなく、所望の電池性能が得られ難くなる虞がある。一方、スルホニルイミド化合物(1)の濃度が高過ぎると非水電解液の粘度が高くなり伝導度が低下し電池性能が充分に発揮できなくなる虞がある。また、S−P結合を有する被膜を正極に生成させる観点からも、スルホニルイミド化合物(1)の濃度を上記範囲内とすることが推奨される。
(ii)非水電解液以外のリチウムイオン二次電池の構成材料にスルホニルイミド化合物(1)が含まれている態様
スルホニルイミド化合物(1)は、電極(正極及び/又は負極)、セパレータ又は外装等、非水電解液以外のリチウムイオン二次電池の構成材料に含まれていてもよい。なお、スルホニルイミド化合物(1)が電極に含まれる場合には、電極近傍におけるスルホニルイミド化合物(1)の濃度を向上させ易く、速やかに、また、継続的に電極表面に被膜を形成できるので好ましい。正極上に良好な被膜を生成させ易いとの観点から、スルホニルイミド化合物(1)は負極よりも正極に含まれていることが好ましい。
スルホニルイミド化合物(1)が電極に含まれている場合、電極は、電極活物質100質量部に対してスルホニルイミド化合物(1)を0.1質量部以上、3質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、2質量部以下であり、さらに好ましくは0.3質量部以上、1質量部以下である。スルホニルイミド化合物(1)の含有量が少なすぎると正極上に形成される被膜が不安定なものとなったり、また、被膜自体が形成され難くなる虞があり、一方、多量に使用しても使用量に比例する効果は得られ難く、また、電極構成材料におけるスルホニルイミド化合物(1)の比率が大きくなり、電極を製造し難くなる虞がある。
スルホニルイミド化合物(1)を電極に担持(保持)させる方法は特に限定されない。例えば、電極構成材料の一部としてスルホニルイミド化合物(1)を使用し、従来公知の製造方法で電極を製造すれば、スルホニルイミド化合物(1)を担持した電極が得られる。具体的には、スルホニルイミド化合物(1)を、後述する電極活物質や、導電助剤、バインダー等の電極材料と混合して電極材料組成物を調製し、これを集電体に塗工し、乾燥する方法;スルホニルイミド化合物(1)を含む電極材料組成物を混練成形し乾燥して得たシートを集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレス、乾燥する方法;電極材料組成物を集電体に塗工し、乾燥して得たシート状の電極にスルホニルイミド化合物(1)を含む溶液を塗布又は噴霧し、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した液状又はスラリー状の電極材料組成物(スルホニルイミド化合物(1)を含む)を電極集電体上に塗布又は流延して、所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
3.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、非水電解液と、スルホニルイミド化合物(1)とを含み、前記正極表面のS1s軌道のHAXPESスペクトルにおいて特定の結合エネルギー領域にピークを有するものである限り特に限定されない。
したがって、リチウムイオン二次電池の形状も特に限定されず、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等、リチウム二次電池の形状として従来公知の形状はいずれも使用することができる。また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に搭載するための高電圧電源(数10V〜数100V)として使用する場合には、個々の電池を直列に接続して構成される電池モジュールとすることもできる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、満充電電圧が4.3V以上の高電圧条件下での駆動に特に適したものである。上記構成を有することにより、高温下(45℃以上、120℃以下)、高電圧状態(4.3V以上、5V以下)で保管した場合にも、電圧の低下を抑制でき、また、残存容量を高い状態で保持することができる。なお、満充電電圧が高いほど高い電圧でリチウムイオン二次電池を駆動させられるためエネルギー密度を高めることはできるが、高すぎると安全性を確保し難い場合がある。よって、満充電電圧の範囲は4.32V〜4.9Vとするのがより好ましく、さらに好ましくは4.35V〜4.8Vである。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池の構成について順に説明する。
3−1.電極
3−1−1.正極
正極は、正極活物質、導電助剤及び結着剤等を含む正極合剤が正極集電体に担持されているものであり、通常、シート状に成形されている。
正極の製造方法としては、例えば、分散用溶媒に正極合剤を溶解又は分散させた正極活物質組成物を正極集電体にドクターブレード法等で塗工したり、又は正極集電体を正極活物質組成物に浸漬した後に、乾燥する方法;正極活物質組成物を混練成形し乾燥して得たシートを正極集電体に導電性接着剤を介して接合し、プレスし、乾燥する方法;液状潤滑剤を添加した正極活物質組成物を正極集電体上に塗布又は流延して所望の形状に成形した後、液状潤滑剤を除去し、次いで、一軸又は多軸方向に延伸する方法;等が挙げられる。
3−1−1−1.正極集電体
正極集電体の材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)、チタン等の導電性金属が使用できる。中でも、アルミニウムは薄膜に加工し易く、安価であるため好ましい。
3−1−1−2.正極活物質
正極活物質はリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能なものであればよく、本発明ではリチウムイオン二次電池で使用される従来公知の正極活物質が使用できる。
具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiMn24系で一部をNiに置換したLiNi0.5Mn1.54、LiNi1-x-yCoxMny2やLiNi1-x-yCoxAly2(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、LiAPO4(A=Fe、Mn、Ni、Co)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLi2MnO3と、電気化学的に活性な層状のLiMO[M=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、又は複数を組み合わせて使用してもよい。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、三元系酸化物等の遷移金属酸化物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料が好ましく、中でも、コバルト酸リチウム、三元系酸化物等の遷移金属酸化物が好ましい。
正極活物質の使用量は、正極合剤100質量部に対して75質量部〜99質量部とするのが好ましく、より好ましくは85質量部〜97質量部である。
3−1−1−3.導電助剤
導電助剤はリチウムイオン二次電池を高出力化するために用いられるものであり、導電助剤としては、主に導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、金属粉末材料、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及び気相法炭素繊維等が挙げられる。
導電助剤を用いる場合、導電助剤は正極合剤100質量%に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい(より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%)。導電助剤が少なすぎると、導電性が極端に悪くなり、負荷特性及び放電容量が劣化する虞がある。一方、多すぎると正極合剤層のかさ密度が高くなり、結着剤の含有量をさらに増やす必要性がでてくるため好ましくない。
3−1−1−4.結着剤
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、メチルメタクリレートブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;メチルセルロース、エチルセルロース、トリエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロース系樹脂;エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系樹脂;等が挙げられる。これらの結着剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、正極の製造時、これらの結着剤は、溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
上記結着剤を用いる場合、結着剤は正極合剤100質量%に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で使用するのが好ましい(より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜10質量%)。結着剤が少なすぎると良好な密着性が得られず、正極活物質や導電助剤が集電体から脱離してしまう虞がある。一方、多すぎると内部抵抗の増加を招き電池特性に悪影響を及ぼしてしまう虞がある。
導電助剤及び結着剤の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性等を考慮して適宜調整することができる。
正極を製造するに際して、正極活物質組成物に用いられる溶媒としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、燐酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、燐酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、及び水等が挙げられ、例えば、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
3−1−2.負極
負極は、負極活物質、結着剤及び必要に応じて導電助剤等を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなるものであり、通常、シート状に成形されている。
負極の製造方法としては、正極の製造方法と同様の方法を採用することができる。また、正極の製造時に使用する導電助剤、結着剤、材料分散用の溶媒も、正極で用いられるものと同様のものが用いられる。
3−1−2−1.負極集電体
負極集電体の材料としては、銅、鉄、ニッケル、銀、ステンレス鋼(SUS)等の導電性金属を用いることができる。これらの中でも銅は、薄膜への加工が容易であり好ましい。
3−1−2−2.負極活物質
負極活物質はリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能なものであればよく、本発明では、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知の負極活物質を使用できる。具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛材料、石炭・石油ピッチから作られるメソフェーズ焼成体、難黒鉛化性炭素等の炭素材料、Si、Si合金、SiO等のSi系負極材料、Sn合金等のSn系負極材料、リチウム金属、リチウム−アルミニウム合金等のリチウム合金、チタン酸リチウム等のチタン系化合物等を用いることができる。
負極活物質の使用量は、負極合剤100質量部に対して80質量部〜99質量部とするのが好ましく、より好ましくは90質量部〜99質量部である。
3−2.セパレータ
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と負極とを隔てるように配置されたセパレータを有するものであるのが好ましい。セパレータには特に制限がなく、従来公知のセパレータはいずれも本発明のリチウムイオン二次電池に使用できる。セパレータとしては、例えば、非水電解液を吸収・保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータやセルロース系セパレータ等)、不織布セパレータ、多孔質金属体等が挙げられる。中でも、ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、有機溶媒に対して化学的に安定であり好適である。
上記多孔性シートの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンや、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造を有する積層体等が挙げられる。
上記不織布セパレータの材質としては、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド、ガラス等が挙げられ、要求される機械強度等に応じて、上記例示の材質を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
3−3.非水電解液
リチウムイオン二次電池に備えられる非水電解液には、通常、電解質塩と、溶媒と、必要に応じて添加剤等が含まれる。
3−3−1.電解質塩
本発明に係る非水電解液では、スルホニルイミド化合物(1)を単独で電解質塩として使用してもよく、又はスルホニルイミド化合物(1)とは異なる電解質塩(他の電解質塩)を単独で若しくはスルホニルイミド化合物(1)と組み合わせて使用してもよい。
他の電解質塩としては特に限定されず、各種蓄電デバイスの電解液において電解質として用いられる従来公知の電解質はいずれも使用することができる。他の電解質としては、例えば電解液中での解離定数が大きく、また後述する非水系溶媒と溶媒和し難いアニオンを有するものが好ましい。
具体的な他の電解質塩としては、LiCF3SO3、NaCF3SO3、KCF3SO3等のトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiC(CF3SO23等のパーフルオロアルカンスルホン酸メチドのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiPF6、NaPF6、KPF6、LiPF3(C253等のヘキサフルオロリン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩や当該塩の一部のフッ素原子をパーフルオロアルキル基で置換した塩;LiClO4、NaClO4等の過塩素酸アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩;LiBF4、NaBF4等のテトラフルオロ硼酸塩;リチウムテトラシアノボレート、リチウムトリシアノメトキシボレート、ナトリウムトリシアノメトキシボレート、マグネシウムビス(トリシアノメトキシボレート)、リチウムトリシアノイソプロポキシボレート、リチウムトリシアノブトキシボレート、リチウムトリシアノフェノキシボレート、リチウムトリシアノ(ペンタフルオロフェノキシ)ボレート、リチウムトリシアノ(トリメチルシロキシ)ボレート、リチウムトリシアノ(ヘキサフルオロイソプロポキシ)ボレート、リチウムトリシアノメチルチオボレート、リチウムジシアノジメトキシボレート、リチウムシアノトリメトキシボレート等のシアノホウ酸のアルカリ金属塩;LiAsF6、LiI、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCl、NaI、NaAsF6、KI等のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらの電解質塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記他の電解質塩の中でも、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適である。アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましいのはリチウム塩である。非水系溶媒中での溶解性、イオン伝導度の観点からは、LiPF6及び/又はLiBF4がさらに好ましく、LiPF6が特に好ましい。
なお、正極上におけるS−P結合を有する被膜の生成を促進する観点からは、MPFa(Cm2m+16-a(0≦a≦6、1≦m≦2、Mはアルカリ金属イオンを表す)で表されるP原子含有アルカリ金属塩を電解質塩として使用することが推奨される。好ましくはMがLiであるP原子含有リチウム塩であり、具体的には、LiPF6、LiPF3(C253等が挙げられる。これらの中でもLiPF6が最も好ましい。
非水電解液における他の電解質塩の濃度は、0.1mol/L以上、飽和濃度以下であることが好ましい。より好ましくは0.1mol/L〜2.5mol/Lであり、さらに好ましくは0.3mol/L〜2mol/L、さらに好ましくは0.4mol/L〜1.5mol/L、最も好ましくは0.5mol/L〜1.2mol/Lである。他の電解質の濃度が高過ぎると、非水電解液の粘度が高くなって伝導度が低下し、電池性能を充分に発揮することができなくなる虞がある。一方、他の電解質塩の濃度が低過ぎると、電荷のキャリアとなるLiイオン量が少なくなり充放電に支障をきたし、やはり所望の電池性能が得られ難くなる虞がある。
なお、非水電解液中のスルホニルイミド化合物(1)と他の電解質の濃度は、これらの濃度の和が0.6mol/L〜2.5mol/Lの範囲となるようにするのが好ましく、より好ましくは0.8mol/L〜2.0mol/Lであり、さらに好ましくは1.0mol/L〜1.5mol/Lである。
この場合において、スルホニルイミド化合物(1)と他の電解質塩の配合割合は、非水電解液に含まれる電解質塩の合計100mol%に対して、他の電解質の割合が10mol%以上、99mol%以下となるようにするのが好ましい。他の電解質の割合は15mol%以上、95mol%以下であるのがより好ましく、20mol%以上、90mol%以下であるのがさらに好ましい。他の電解質量が少なすぎる場合には相対的にスルホニルイミド化合物(1)濃度が高くなり、アルミニウム集電体に腐食が生じる虞があり、一方、他の電解質量が多くなると、スルホニルイミド化合物の濃度が低くなりすぎて、所期の被膜が得られ難くなる虞がある。
3−3−2.溶媒
本発明に係る非水電解液に含まれる溶媒としては、電解質塩を溶解、分散させられるものであれば特に限定されず、従来公知の非水電解液に用いられる非水系溶媒、ポリマー、ポリマーゲル等が使用できる。非水系溶媒としては、誘電率が大きく、電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。
このような有機溶媒としては、炭酸ジメチル(ジメチルカーボネート)、炭酸エチルメチル(エチルメチルカーボネート)、炭酸ジエチル(ジエチルカーボネート)、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状カーボネート類;炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン、クロロ炭酸エチレン(クロロエチレンカーボネート)等の環状カーボネート類;1,1−ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2−ジメトキシエタン)、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸エステルに含まれるアルキル基又はアリール基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子や塩素原子等のハロゲン原子で置換されたリン酸トリストリフルオロエチル、リン酸トリストリクロロエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル類;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン等を挙げることができる。上記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を混合して使用してもよい。
上記有機溶媒の中でも、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類等のカーボネート系溶媒は、電圧印加時に分解し難く安定であるため好ましく使用できる。
また、S−P結合を有する被膜を生成させる観点からはリン酸エステル類が好ましく使用できる。上記リン酸エステルの中でも、常温(25℃)で液体であり、電気化学的にも比較的安定なリン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等、炭素数2〜15のアルキル基を有するリン酸エステルや、これらのリン酸エステルに含まれるアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基含有リン酸エステル等が好ましい。リン酸エステルの使用量は電解液に対して、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましい。より好ましくは0.5質量%以上、30質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以上、20質量%以下である。
ポリマーゲルを溶媒とする場合は次の方法を採用すればよい。すなわち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、上述の非プロトン性溶媒に電解質を溶解させた溶液を滴下して、電解質並びに非プロトン性溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質とを溶融、混合した後、成膜し、ここに非プロトン性溶媒を含浸させる方法;予め電解質を有機溶媒に溶解させた電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法(以上、ゲル電解質);ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質とを溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質);等が挙げられる。
ゲル電解質に用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及び、これらの共重合体等が挙げられる。
3−3−3.添加剤
本発明の非水電解液には、必要に応じて、サイクル特性の改善や安全性の向上等、リチウムイオン二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を用いてもよい。
添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩等のリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の不飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。
上記添加剤は、電解液中の濃度が0.1質量%〜10質量%の範囲で用いるのが好ましい(より好ましくは0.2質量%〜8質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%)。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、電解液の粘度が高くなり伝導率が低下する虞がある。
3−4.外装
正極、負極、セパレータ及び電解液等を備えた電池素子は、リチウムイオン二次電池使用時の外部からの衝撃、環境劣化等から電池素子を保護するため電池外装材に収容される。本発明では、電池外装材の素材は特に限定されず従来公知の外装材はいずれも使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
1.非水電解液の調製
調製例1
電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、キシダ化学株式会社製、LBGグレード)0.91g(6mmol)と、スルホニルイミド化合物(1)としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)1.12g(6mmol)とを10mLのメスフラスコに測り取り、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)(いずれも、キシダ化学株式会社製、LBGグレード)とを体積比3/7(EC/EMC)で混合した混合溶媒でメスアップして非水電解液1を調製した。
調製例2
電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、キシダ化学株式会社製、LBGグレード)1.52g(10mmol)と、スルホニルイミド化合物(1)としてリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)0.38g(2mmol)とを用いたこと以外は調製例1と同様にして非水電解液2を調製した。
調製例3
電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6、キシダ化学株式会社製、LBGグレード)1.82g(12mmol)を用いたこと以外は調製例1と同様にして非水電解液3を調製した。
2.ラミネート型リチウムイオン二次電池の作製
2−1.ラミネート型リチウムイオン二次電池1〜3
(正極シートの作製)
コバルト酸リチウム、黒鉛、アセチレンブラック及びPVdFを質量基準で93:2:2:3の割合で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンと混合してスラリー状の溶液を作製した。得られたスラリーをアルミニウム箔(集電板)に塗布し、乾燥することにより正極シートを作製した。
(負極シートの作製)
黒鉛、気相法炭素繊維及びPVdFを質量基準で95.7:0.5:3.8の割合で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンと混合してスラリー状の溶液を作製した。得られたスラリーを銅箔(集電板)に塗布し、乾燥することにより負極シートを作製した。
(ラミネート型リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した正極シート1枚と、負極シート1枚とを対向するように積層し、その間に1枚のポリオレフィン系セパレータを挟んだ。2枚のアルミニウムラミネートフィルムで正、負極のシートを挟み込み、アルミニウムラミネートフィルム内をそれぞれ非水電解液1〜3で満たし、真空状態で密閉した。
(エージング1)
充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用して、温度25℃の環境下、充電速度0.5C(定電流定電圧モードで5時間カットオフ)、放電速度0.2Cで2.75V〜4.4Vで1度充放電を行った後、ラミネートセルを開封してから、再度真空状態に密閉した。次いで、充電速度0.5C(定電流定電圧モードで5時間カットオフ)、放電速度1Cで充放電を行ってラミネート型リチウムイオン二次電池1〜3を作製した。
2−2.ラミネート型リチウムイオン二次電池4〜5
市販の正極シート(活物質:コバルト酸リチウム)1枚と、市販の負極シート(活物質:黒鉛)1枚とを対向するように積層し、その間に1枚のポリオレフィン系セパレータを挟んだ。2枚のアルミニウムラミネートフィルムで正、負極のシートを挟み込み、アルミニウムラミネートフィルム内をそれぞれ非水電解液2および3で満たした後、真空状態で密閉した。
(エージング2)
充放電試験装置(ACD−01、アスカ電子株式会社製)を使用して、温度25℃の環境下、充電速度0.5C(定電流定電圧モードで5時間カットオフ)放電速度0.2Cで3.0V〜4.2Vで1度充放電を行った後、ラミネートセルを開封してから、再度真空状態で密閉した。再び同条件で充放電を行いラミネート型リチウムイオン二次電池4および5を作製した。
3.電池評価(実施例1〜2、比較例1〜3)
ラミネート型リチウムイオン二次電池1〜3について高温保存試験1を行い、ラミネート型リチウムイオン二次電池4〜5について高温保存試験2を行い、高温保存試験1、2後の正極、負極についてHAXPES測定を行った。
高温保存試験1
温度25℃、充電速度1C(定電流定電圧モード、カットオフ3時間)、放電速度1Cで、ラミネート型リチウムイオン二次電池の充放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とする。次いで、ラミネート型リチウムイオン二次電池を、温度25℃、充電速度1C(定電流定電圧モード、カットオフ3時間)で、電圧が4.4Vになるまで充電し、温度60℃の遮光環境下で3日間保管した。電池保管前の充電容量を高温保存前の充電容量とする。各電池について、保管後、放電前のOCV(開放電圧)を測定した結果を表2に示す。各電池を上記条件で保管した後、温度25℃、放電速度1C(定電流モード)で電圧が2.75Vになるまで放電し、このときの放電容量(高温保存後の放電容量)を測定した。高温保存前後の充電容量と放電容量とから、下記式より、残存率(残存容量保持率)を算出した。結果を表1に示す。
残存率=100×(高温保存後の放電容量)/(高温保存前の充電容量)
放電後のラミネート型リチウムイオン二次電池を、再び同じ条件で充電した後、温度25℃下、放電速度0.2C、2C、3Cで放電を行った。各レートでの放電容量と下記式より高速充放電性能を算出した。結果を表2に示す。
高速充放電性能(2C/0.2C)(%)=100×(2Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)
高速充放電性能(3C/0.2C)(%)=100×(3Cでの放電容量)/(0.2Cでの放電容量)
高温保存試験2
温度25℃、充電速度1C(定電流定電圧モード、カットオフ3時間)、放電速度1Cで、ラミネート型リチウムイオン二次電池の充放電を行った。このときの放電容量を初期放電容量とする。次いで、ラミネート型リチウムイオン二次電池を、温度25℃、充電速度1C(定電流定電圧モード、カットオフ3時間)で、電圧が4.2Vになるまで充電し、温度80℃の遮光環境下で1週間保管した。電池保管前の充電容量を高温保存前の充電容量とする。その後、温度25℃、放電速度1C(定電流モード)で電圧が3.0Vになるまで放電し、このときの放電容量(高温保存後の放電容量)を測定した。高温保存試験1と同様にして、各リチウムイオン二次電池の残存率を算出した。結果を表1に示す。
HAXPES測定
高温保存試験1、2後のリチウムイオン二次電池を、Arガスで満たしたグローブボックス内に導入し、Arガス気流下、リチウムイオン二次電池を解体し正極と負極を測定サンプルとして取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄した。次いで、同グローブボックス内で正極測定サンプル、負極測定サンプルを外気に曝すことなくHAXPES装置のトランスファーベッセルにそれぞれ格納し、各トランスファーベッセルをHAXPES装置に設置した。
HAXPES測定は、SPring−8(ビームラインBL46XU)に常設の装置を用いて、入射エネルギー7.94keVで行った。
測定条件は、S1s軌道のスペクトルでは光電子のKinetic Energyが5450eVから5472eVのエネルギー範囲を測定し、C1s軌道のスペクトルでは光電子のKinetic Energyが7640eVから7660eVのエネルギー範囲を測定し、F1s軌道のスペクトルでは光電子のKinetic Energyが7242eVから7262eVのエネルギー範囲を測定し、P1s軌道のスペクトルでは、光電子のKinetic Energyが5780eVから5798eVのエネルギー範囲を測定した。
得られたスペクトルは、下記式によりBinding Energy(結合エネルギー)に変換される。
Binding Energy=hν−Kinetic Energy
本測定においては、hν=7.94keVである。また、Binding Energyの補正はC1sにおける炭化水素成分を284.6eVとして行った。
得られたスペクトルについて、グラフ処理ソフト(IGOR Pro、Wave Metrics社製)により波形分離処理を行い、S1s軌道のスペクトルの内、結合エネルギーが2472eVから2476eVに観察されるピークに帰属される結合に寄与するS原子の存在比を以下の方法により求めた。
得られたS1s軌道のスペクトルで観察されるS原子が関与する全ピーク面積を(A)、結合エネルギーが2472eVから2476eVの領域に観察されるピークの面積を(B)とし、下記式より求められる値を結合エネルギーが2472eVから2476eVに観察されるピークに帰属される結合に寄与するS原子の存在比とした。結果を表1に示す。また、実施例1(電池1)に係る正極S1s軌道のHAXPESスペクトルを図1に、負極S1s軌道のHAXPESスペクトルを図2に示す。
S-P原子の存在比(%)=100×(B)/(A)
表1中、SS-P原子の存在比について0%とは、S1s軌道のスペクトルの結合エネルギーが2472eVから2476eVの領域にピークが観察されなかったことを意味する。
実施例1の正極及び負極表面のS1s軌道のHAXPESスペクトルには、結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にS−P結合に由来するピークが確認でき(図1、図2)、また、負極のP1s軌道のHAXPESスペクトルには、P−S結合に由来するピーク(結合エネルギー2146.5eV〜2147.5eV)が確認できた(図3(a))。
なお、比較例2の正極表面にはS−P結合に由来するピークは確認されなかったが(表1)、比較例2の負極表面のP1s軌道のHAXPESスペクトルにはP−S結合に由来するピークが確認された(図4(a)では、LiPF6と溶媒との分解生成物に由来するピークと重なってブロードなピークとして検出)。これは、比較例2では電圧の低下により供給されるエネルギー量が不十分となり、正極ではスルホニルイミド化合物(1)が酸化分解しなかったか、又は酸化分解してもP原子とS原子との間に結合が形成されなかったためであると考えられる。一方、負極での電解液(溶媒)の還元分解は進行するため、負極ではP−S結合が確認されたものと考えられる。
また、表1に示すように、正極表面のS1s軌道のスペクトルにおいて結合エネルギーが2472eVから2476eVの領域にピークが確認され、且つ、当該ピークに帰属されるS原子の存在比が1%以上である実施例1、2では、他の例と比較して高温保存後も残存率(残存容量保持率)の低下が抑制されていた。この結果より、正極にS−P結合を有する被膜が存在することで、充電後のリチウムイオン二次電池を高温下で保管した場合にも電解液の分解が抑制され、高温保存特性を向上させられることが分かる。
表2に示すように、実施例1、2では比較例1と比べて高温保存後の高速充放電性能が高い値を示していた。実施例1、2では、正極にS−P結合を有する被膜が存在することで、電極上における電解液の分解が抑制され、その結果高い高速充放電性能を示したものと考えられる。またOCVも実施例1、2の方が高く、この結果は、実施例1、2に係るラミネート型リチウムイオン二次電池では電解液の分解が少なかったことを示している。
高温保存試験を行った際の充電時の電圧が4.2Vである比較例2の正極にはS−P結合に由来するピークが観察されず、一方、充電時の電圧が4.2Vを超える実施例2の正極では当該ピークが観察された(表1)。この結果から、S−P結合を有する被膜は、4.2Vを超える電圧でリチウムイオン二次電池を駆動して初めて正極に生成するものであることが分かる。
図5、6に、実施例1、比較例1、2及び3で使用した負極表面のF1s軌道のHAXPESスペクトルを示す。図5(a)(実施例1)には、結合エネルギー686eV〜689eVの領域にスルホニルイミド化合物(1)に由来するピークおよびPF6に帰属されるピークが確認でき(スルホニルイミド化合物(1)に由来するピークとPF6に帰属されるピークとが重なりブロードになっている)、実施例1の負極表面の被膜にはスルホニルイミド化合物(1)又はこれに由来する成分が含まれていることが分かる。一方、結合エネルギー約684.5eVにピークトップを有するピークはLiFに帰属されるものであるが、図5(b)(比較例1)と比較して図5(a)(実施例1)では、PF6に由来するピーク強度に対するLiFに由来するピーク強度が大きく、スルホニルイミド化合物(1)の分解が生じていることが示唆される。なお、スルホニルイミド化合物(1)に由来するLiFはスルホニルイミド化合物(1)が酸化分解又は還元分解により生成することから微小な状態で被膜中に分散していると推察され、これにより負極表面の被膜強度が高められるものと考えられる。
図6より、電圧が4.2V以下の場合(比較例2、3)には、スルホニルイミド化合物(1)の有無に拘らず、LiFに帰属されるピーク強度が極端に大きなものであった。これは、比較例2、比較例3の正極表面にはS−P結合を含む被膜が形成されなかったため、高温保存試験2の過酷な保管条件により、実施例1や比較例1の場合に比べて(図5)、一層電解質塩の分解が進行したものと考えられる。

Claims (6)

  1. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含有する正極と、
    リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極と、
    非水電解液とを備えたリチウムイオン二次電池であって、
    上記リチウムイオン二次電池は、一般式(1);(XSO2)(FSO2)NLi(式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のフルオロアルキル基を表す)で表されるスルホニルイミド化合物を含み、
    7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで正極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  2. 上記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物と溶媒とを含む非水電解液を備えた請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 満充電電圧が4.3V以上である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 非水電解液中における上記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物の濃度が0.1mol/L以上である請求項2又は3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記負極が、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで負極表面のS1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが2472eV〜2476eVの領域にピークを有する請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記負極が、7.94keVの硬X線を用いたHAXPESで負極表面のF1s軌道のスペクトルを測定したときに結合エネルギーが686eV〜689eVの領域にピークを有するものである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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