JP6974121B2 - 可動支柱、ワイヤロープ式防護柵及び橋梁 - Google Patents
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Description
ワイヤロープ式防護柵は、通常、数百mを1スパンとして、複数のワイヤロープを一定長延展し、両端末を索端金具を介して端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造になっている。
ワイヤロープ式の防護柵では、ワイヤロープの柔軟性を利用して車両への衝撃を緩和するようにしているが、ワイヤロープの柔軟性ゆえに、車両衝突時に、所定の間隔を有する複数本のワイヤロープがバラバラに上下に動き、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられる場合がある。
ワイヤロープ間の間隔が押し広げられると、そこからの飛び出し(突破事故)等が生じる危険性が高くなるため、ワイヤロープ間隔の拡大を抑止するため等の目的で、各支柱(端末支柱及び中間支柱)の間に、ワイヤロープの上下間隔を保持するための間隔保持材を設けることが行われている。ワイヤロープ間隔が保持されることにより、衝突車両を面として受け止めることができる。
このような間隔保持材に関する従来技術が、特許文献1によって開示されている。
しかし、ワイヤロープ式防護柵の設置環境によっては、中間支柱を設けることが難しい場合もある。例えば、橋梁等において、所定長さのアンカーボルトを打設することができない場合があり、その場合、従来の中間支柱を設けることができない。このような場合においても、間隔保持材を用いることにより、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられることによる飛び出し(突破事故)を抑止することはできる。しかし、従来の間隔保持材は、中間支柱とは違い、ワイヤロープの設置高さ(柵高)を維持することができない。従って、中間支柱を設けることができず、間隔保持材のみとなる場合、ワイヤロープがたわんでしまい、中間部にて柵高が低くなってしまう。柵高が低くなれば、所定の飛び出し(突破事故)防止機能が得られなくなるおそれがある。
ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部を有するロープ間隔保持部と、前記ロープ間隔保持部からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部と、を備え、前記設置面に対して滑動可能であることを特徴とする可動支柱。
前記ロープ高保持部の下端部に、ワイヤロープ式防護柵の設置面に固定されずに接触する設置面接触部を有することを特徴とする構成1に記載の可動支柱。
前記設置面接触部が、摩擦低減部を備えることを特徴とする構成2に記載の可動支柱。
前記摩擦低減部が球面形状によって構成され、その下端部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする構成3に記載の可動支柱。
前記ロープ間隔保持部または前記ロープ高保持部に、上下に分割される分割部を備えることを特徴とする構成1から4の何れかに記載の可動支柱。
前記ロープ間隔保持部と前記ロープ高保持部が上下に分割される分割構造を備えることを特徴とする構成1から5の何れかに記載の可動支柱。
前記ロープ受け入れ部のうち、前記ワイヤロープ式防護柵の上段側の一本または複数本のワイヤロープを受け入れる前記ロープ受け入れ部が、ワイヤロープが外れるワイヤロープ抜け構造を有することを特徴とする構成1から4の何れかに記載の可動支柱。
構成1から7の何れかに記載の可動支柱を備えることを特徴とするワイヤロープ式防護柵。
構成8に記載のワイヤロープ式防護柵を備えることを特徴とする橋梁。
図1は、本発明に係る実施形態1の可動支柱を示す図であり、図1(a):正面図、図1(b):側面図、図1(c):上面図、図1(d):底面図である。
本実施形態の可動支柱1は、ワイヤロープ式防護柵に使用する支柱(設置面に対して滑動可能な支柱)であり、丸パイプ(鋼管)を用いて形成されている。
可動支柱1は、ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部111を有するロープ間隔保持部11と、ロープ間隔保持部11からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部12と、を備える。
ロープ受け入れ部111は、図1に示されるように、丸パイプである可動支柱1の側面を切り欠いて形成され、ワイヤロープ式防護柵のロープ間隔に応じて複数設けられる。
本実施形態の可動支柱1では、最上段のロープ受け入れ部111aが、可動支柱1の上端部側から切り欠いて形成され、これにより、ワイヤロープ式防護柵のワイヤロープが上に外れるワイヤロープ抜け構造を有する。
図2に示されるように、ピン部材13は、細長い板部材(鋼板)の上端部分を折り曲げたものである。
ピン部材13は、丸パイプである可動支柱1の内部に挿通されるものであり、各ロープ受け入れ部111に入れ込んだワイヤロープに対して外側となる位置に挿通される。
図3は、可動支柱1をワイヤロープ式防護柵に取り付けた状態における、上端側のワイヤロープ2本分を示す図である。
図3に示されるように、ピン部材13は、ロープ受け入れ部111aに入る最上段のワイヤロープWRに対しては設けられず、2段目のワイヤロープWRに対して、ピン部材13の上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置される。ピン部材13は、少なくとも4本分のロープ受け入れ部111の設置間隔以上の長さを有することにより、2段目以降の各ロープ受け入れ部111に受け入れられる4本分のワイヤロープWRが外れないように保持する。
なお、“ワイヤロープ式防護柵の設置面”とは、ワイヤロープ式防護柵が設置される構造物(例えば橋梁)における設置面や、路面等である。
本実施形態の可動支柱1では、1本の丸パイプによってロープ間隔保持部11とロープ高保持部12が一体的に構成されている。
ロープ高保持部12の下端部には、ワイヤロープ式防護柵の設置面に対して、固定されずに接触する設置面接触部121が備えられる。本実施形態における設置面接触部121は、樹脂で形成された半球キャップであり、その下端部に水抜き孔121hが形成されている。
ワイヤロープ式防護柵2は、複数(本実施形態では5本)のワイヤロープの両端末を、索端金具を介して端末支柱21に繋止して張力を与える構造であり、所定間隔ごとに、上記説明した可動支柱1が取り付けられている。ワイヤロープ式防護柵2は、例えば、橋梁等において、所定長さのアンカーボルトを打設することができず、中間支柱を設けることができない場合において、本実施形態の可動支柱1が所定間隔ごとに取り付けられているものである。なお、“所定間隔”は、設計思想や安全基準、これらに基づく仕様等に応じて適宜定めればよい。
車両がワイヤロープ式防護柵に接触すると、状況によって、ワイヤロープが下に押し下げられる力が働く場合がある。例えば、図5に示されるように、大型車のタイヤTが接触した際、タイヤTの回転に巻き込まれる形で、下段のワイヤロープWRを下に押し下げる力が作用する。このような場合、従来の間隔保持材であると、タイヤTが接触していない上段のワイヤロープWRも、下段のワイヤロープWRに引っ張られる間隔保持材によって、下に押し下げられてしまう結果となる。また、車両の衝突によって間隔保持材が押し倒されるような場合にも、間隔保持材が倒れるのに伴って全てのワイヤロープWRが押し下げられる。これらにより、図12(b)に示されるように、ワイヤロープ全体が下に押し下げられ、結果、ワイヤロープWRを乗り越えた飛び出し(突破事故)が生じる危険性が高くなってしまうこともあり得る。
また、本実施形態の可動支柱1は、設置面(路面等)に固定されず、且つ、球面形状の設置面接触部121を備えることにより、設置面との間の摩擦が低減される。即ち、球面形状の設置面接触部121によって摩擦低減部が構成されている。当該摩擦低減部により、車両衝突時等に可動支柱1が比較的スムーズに滑動し、可動支柱1が倒されることが抑止されるため、より好適である。これにより、本実施形態の可動支柱1を利用したワイヤロープ式防護柵2は、支柱が設置面に対して滑動する支柱滑動システムとして構成される。
また、球面形状の設置面接触部121の下端部には、水抜き孔121hが形成されているため、雨水等が可動支柱1の内部に溜まってしまい、これによる腐食が生じてしまうこと等が抑止される。
また、本実施形態では、ワイヤロープ抜け構造が、可動支柱の上端部側から切り欠いて形成されており、ワイヤロープがフリーに抜けるものを例としているが、これに限るものではなく、仮止め部材を設けること等により、一定以上の力が作用した場合にのみワイヤロープが抜けるようにしてもよい。
図8は、本発明に係る実施形態2の可動支柱を示す図であり、図8(a):正面図、図8(b):側面視における断面図である。なお、実施形態1と同様の概念となるものについては実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
本実施形態の可動支柱1´は、ロープ間隔保持部11´において、上下に分割される分割部を備えており、最上段のロープ受け入れ部が他のロープ受け入れ部と同様の構成である点、及びピン部材の構成が実施形態1と異なる。
接続部材15は、可動支柱1´を構成する丸パイプの内径に嵌合する外径を有する丸パイプで形成されている。また、接続部材15は、図8に示されるように、分割されたロープ間隔保持部11´の上側の部材に対して、略半分入れ込む形で嵌合、固定(溶接等)されている。分割されたロープ間隔保持部11´の上側の部材から、略半分突出した接続部材15を、分割されたロープ間隔保持部11´の下側の部材に対して嵌めこむ(固着はせずに、スライドして入れ込む)ことで、図10に示されるように、可動支柱1´が一体化される。
図9に示されるように、ピン部材13a、bは、何れも実施形態1と同様に、細長い板部材(若しくは棒部材)の上端部分を折り曲げたものである。上側ピン部材13aは、2本分のロープ受け入れ部111の設置間隔分の長さを有し、下側ピン部材13bは、3本分のロープ受け入れ部111の設置間隔分の長さを有する。
図10に示されるように、上側ピン部材13aは、最上段のワイヤロープWRに対して、その上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置され、同様に、下側ピン部材13bは、3段目のワイヤロープWRに対して、その上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置される。これにより、分割部分の上下でそれぞれ独立して、各ロープ受け入れ部111に受け入れられるワイヤロープWRが外れないように保持される。
同図から理解されるように、下段側のワイヤロープWRがタイヤに巻き込まれて引っ張られたり、可動支柱1´が押し倒されたりしても、可動支柱1´が上下に分割されるため、分割される上側2本分のワイヤロープWRは、柵高及びその間隔が保持される。従って、これによって車両を捕捉し、飛び出し(突破事故)が生じる危険性を低減できるという非常に優れた効果を奏する。
また、ロープ間隔保持部とロープ高保持部が上下に分割される分割構造を備えるものであってもよく、これらの組み合わせ(複数個所で分割されるもの)であっても構わない。
11、11´...ロープ間隔保持部
111...ロープ受け入れ部
12...ロープ高保持部
121...設置面接触部
13...ピン部材
2...ワイヤロープ式防護柵
WR...ワイヤロープ
Claims (9)
- 両端部で固定されて各ワイヤロープを繋止して張力を与える端末支柱を備えたワイヤロープ式防護柵において、前記端末支柱の間に設けられる可動支柱であって、
ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部を有するロープ間隔保持部と、
前記ロープ間隔保持部からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部と、
を備え、
前記ロープ高保持部の下端部が下側に凸の曲面部として形成されており、前記設置面に対して固定されず、水平方向に滑動可能であることを特徴とする可動支柱。 - 前記ロープ高保持部の下端部が球面形状によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可動支柱。
- 前記ロープ高保持部の下端部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動支柱。
- 前記ロープ間隔保持部若しくは前記ロープ高保持部又は前記ロープ間隔保持部と前記ロープ高保持部の間に設けられた分割部であって、車両が衝突した際に下段のワイヤロープに対する押し下げ力が働いた場合若しくは可動支柱を押し倒すような力が働いた場合に、上下に分割される分割部を備えることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の可動支柱。
- 前記ロープ受け入れ部が、前記可動支柱の側面側から中心部へ向かって切り欠いて形成されていることにより、張られた状態のワイヤロープを側面側から受け入れ可能な構造を有し、
前前記受け入れられたワイヤロープが外れることを防止するために、前記可動支柱の内部の前記受け入れられたワイヤロープの受け入れ側に挿通される、ピン部材を備えることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の可動支柱。 - 前記ロープ受け入れ部のうち、前記ワイヤロープ式防護柵の上段側の一本または複数本のワイヤロープを受け入れる前記ロープ受け入れ部が、可動支柱の上端部側から切り欠いて形成されていることにより、ワイヤロープが上に外れるワイヤロープ抜け構造を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の可動支柱。
- 前記ワイヤロープ抜け構造を有するロープ受け入れ部以外の前記ロープ受け入れ部が、前記可動支柱の側面側から中心部へ向かって切り欠いて形成されていることにより、張られた状態のワイヤロープを側面側から受け入れ可能な構造を有し、
前記側面側から受け入れられたワイヤロープが外れることを防止するために、前記可動支柱の内部の前記受け入れられたワイヤロープの受け入れ側に挿通される、ピン部材を備えることを特徴とする請求項6に記載の可動支柱。 - 請求項1から7の何れかに記載の可動支柱を備えることを特徴とするワイヤロープ式防護柵。
- 請求項8に記載のワイヤロープ式防護柵を備えることを特徴とする橋梁。
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