JP4401429B1 - 防護柵 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支柱の上部に防護ネットの有効高さより高い塔部12を形成し、隣り合う塔部12の間に吊りロープ30を張設する。吊りロープ30の中間を最上位の横ロープに連結して、最上位の横ロープを斜め上方へ吊り上げる。
【選択図】図1
Description
雪の静的荷重とは、鉛直方向に作用する積雪荷重と、積雪内部での沈降力(クリープ)および斜面に沿った滑り(グライド)を成分とする雪圧であり、これらの外力が複合的に防護柵を構成する防護ネットや支柱へ作用する。
<1>従来の防護柵の積雪対策は、サポート材や支柱等の柵本体の強度のみで雪の静的荷重に対抗するものであって、防護柵本体に作用する雪の静的荷重を積極的に軽減することができない。
<2>経済性を考慮して支柱間隔を広げようとすると、大断面のサポート材を使用して曲げ耐力を増す必要があるが、サポート材の断面を大きくすると、積雪の受圧面積が増えてサポート材へ作用する雪の静的荷重が大きくなる。
サポート材へ作用する雪の静的荷重が大きくなると、サポート材を支持する支柱の支持力を増す必要があり、結果として防護柵本体を必要以上の高強度に設計しなければならなかった。
<3>サポート材と連結金具は共に金属製で重量が重たく、現場への搬入と組み付けに多くの労力を要する。
特に防護柵の建設現場は搬送車両や重機類の導入が困難な現場が大半であるから、工期が長くかかるだけでなく工費も高くつく。
<4>各支柱間隔が一様であっても、樹木等の障害物の存在により雪圧が小さい部分があると、隣接するスパンとの不釣合いによって、支柱間隔が狭まり、サポート材に大きな圧縮力が作用する。
さらにサポート材には積雪荷重等が直接作用するだけでなく、防護ネットに作用した雪の静的荷重が、間隔保持材を通じてサポート材に大きな曲げモーメントを生じさせる。
そのため、支柱間隔に対応してサポート材の全長が長くなるほど、サポート材が座屈変形を起こし易くなる。
<5>従来の防護柵は、サポート材に作用する雪の静的荷重を最終的に支柱が支持する構造である。
そのため、支柱間隔に対応してサポート材の全長が長くなるほど、支柱が曲げ変形を起こし易くなる。
<6>上記したように支柱間隔を広げようとすると、防護柵の破壊リスクが高まるだけでなく、工期および工費の負担が大きくなる。
そのため、従来の防護柵は防護ネットが強度的に十分な余裕があるにもかかわらず、支柱間隔を広くすることができず、2m〜3mといった狭い間隔を余儀なくされている。
<7>前記したように従来の防護柵は、支柱間隔が狭くコスト的に不経済である。
しかも連結金具が、サポート材に一定量のスライドを許容し、かつ、雪圧等による支柱の傾斜に対応できるようサポート材の回転が可能な複雑な構造を呈するため、多額の製作費用を必要とする。
このように従来の防護柵は資材費が嵩む問題もある。
<8>水平ケーブルの両端を端末支柱に固定するとともに、中間支柱に対して水平ケーブルをスライド可能に構成した防護柵が知られている。
これは、局部的に作用した大きな荷重を防護柵全体で受け持とうとする発想に基づいている。
各スパンに一様に荷重が作用する場合、端末支柱が負担する荷重は1スパンに作用する荷重の2分の1でよいが、一部に局部的な荷重が作用する場合は、そのスパンの水平ケーブルの全荷重を両端の端末支柱が負担することとなって、端末支柱が崩壊する。
本願発明の第2発明は、前記第1発明において、前記吊りロープが支柱の複数スパンに亘る全長を有し、該吊りロープを前記塔部と最上位の横ロープの間に波形に張設し、中間の塔部に対して吊りロープを摺動可能に係留したことを特徴とする。
本願発明の第3発明は、前記第1発明において、前記吊りロープが支柱の1スパンに亘る全長を有し、該吊りロープの両端を隣り合う塔部に連結して張設したことを特徴とする。
本願発明の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明の何れかにおいて、スパンの両側の支柱の塔部間に複数の吊りロープを配置して最上位の横ロープを斜め上方へ吊り上げたことを特徴とする。
本願発明の第2発明は、前記第1発明において、前記吊りロープが支柱の複数スパンに亘る全長を有し、該吊りロープを前記塔部と最上位の横ロープの間に波形に張設し、中間の塔部に対して吊りロープを摺動可能に係留したことを特徴とする。
本願発明の第3発明は、前記第1発明において、前記吊りロープが支柱の1スパンに亘る全長を有し、該吊りロープの両端を隣り合う塔部に連結して張設したことを特徴とする。
本願発明の第4発明は、前記第1発明乃至第3発明の何れかにおいて、スパンの両側の支柱の塔部間に複数の吊りロープを配置して最上位の横ロープを斜め上方へ吊り上げたことを特徴とする。項1請求項3の何れか1項
<1>吊りロープは従来のサポート材と比較して受圧面積が格段に小さく、雪の静的荷重(沈降力)も小さくなる。
したがって、サポート材を具備する従来の防護柵と比べて、防護ネットの最上部に作用する単位長さ当たりの雪の静的荷重を軽減することが可能となる。
<2>上記したように吊りロープに作用する雪の静的荷重を軽減できるうえに、吊りロープで以って防護ネットの最上位の横ロープに作用する雪の静的荷重を塔部と支柱へ伝えて支持するので、横ロープが下方へ変位することを効果的に防止することができる。
したがって、防護柵の破壊リスクを低く抑えつつ、支柱間隔を広げることができる。
<3>支柱の間隔を広くできる要因にくわえて、従来の防護柵が必須としていたサポート材と連結金具が不要となる。
したがって、防護柵をより経済的に設計することができるだけでなく、防護柵の工期の短縮および工費の削減を図ることできる。
<4>吊りロープの一部に作用する雪の静的荷重を有効活用して横ロープの吊り上げ力を増加することができる。
<5>吊りロープを中間の塔部に対して摺動可能に係留することで、一部のスパンに局所的に大小異なる雪の静荷重が作用しても、吊りロープの張力変動が隣接するスパンへ伝達されて、張力が一様化される。
したがって、防護柵全体として良好な安定性を保つことができる
<6>支柱が等間隔の場合、支柱の左右で吊りロープの張力がほぼ同じとなるので、支柱には軸圧縮力成分のみが作用する。
<7>横ロープが中間の支柱に対して摺動可能であるので、支柱には吊りロープの圧縮力と雪圧の防護柵横断方向の成分のみが作用し、防護柵の延長方向の荷重が作用しない。
そのため、支柱の延長方向の横曲げが発生せず、支柱の断面決定に際し計算が容易である。
図1に基づき本発明が前提とする防護柵について説明する。
防護柵は端末支柱10の間に間隔を隔てて中間支柱11を立設し、これらの支柱10,11の間にロープ材を主体とした公知の防護ネット20を架設したものである。
これに対し本発明は、防護ネット20から上方へ突出する支柱10,11の塔部12に反力を得て、両側スパンの防護ネット20の最上縁を吊りロープ30で斜め上方へ吊り上げるようにしたものである。
以降に防護柵の構成について詳しく説明する。
端末支柱10および中間支柱11は、防護ネット20により伝達される動的荷重および静的荷重に抵抗し得る強度を有する剛性部材で、各支柱10,11の防護ネット20の有効高さHより吊り高さh分だけ上方へ延出して塔部12を形成している。
塔部12は吊りロープ30を支持するための部位で、各支柱10,11を延長して一体に形成することの他に、別部材の塔部12を各支柱10,11に頂部に接続してもよい。
また各支柱10,11の上部と斜面側との間には、図示しない控えロープで接続して容易に傾倒しないように支持されている。
本例の防護ネット20は、端末支柱10および中間支柱11に上下に間隔を隔てて多段的に横架した複数の横ロープ21a,21b・・・と、複数の横ロープ21a,21b・・・に鉛直に配置した間隔保持材23とより成る。
尚、22は横ロープ21a,21b・・・に一体に付設した金網等のネットで、必須の要素ではない。
防護ネット20を構成する横ロープ21a,21b・・・は、ワイヤロープが好適であるが、PC鋼線、PC鋼より線や炭素繊維、アラミド繊維も使用可能である。
間隔保持材23は、ワイヤロープとワイヤクリップを組み合わせたものの他に、帯鋼板とワイヤクリップを組み合わせたものや、チェーン等を適用できる。
要は、防護ネット20の最上縁に水平に横ロープ21aが存在するネットであればよい。
吊りロープ30は従来の防護柵の沈降力を支持するサポート材に代わる引張力に優れたロープ材で、図3に示すように積雪の受圧幅Bを有する。
傾斜引張部30a,30aは最上位の横ロープ21aの真上に離隔して位置し、水平引張部30bは最上位の横ロープ21aと重合する。
水平引張部30bの区間に位置する横ロープ21aには引張(実線矢印)が発生し、二つの傾斜引張部30a,30aの区間に位置する横ロープ21aには圧縮(破線矢印)が発生し、これらの引張と圧縮は互いにバランスする。
各スパン単位で力がバランスするため、最上位の横ロープ21aの端部と端末支柱10の固定部に過大な力が作用しないで済む。
つぎに本発明に係る防護柵の作用について説明する。
図1において、本願発明に係る防護柵全体が雪に埋設した場合、防護ネット20に対して鉛直方向の積雪荷重と、雪圧を構成する沈降力(クリープ)および斜面に沿った滑り(グライド)が作用する。
吊りロープ30は従来のサポート材と比較して受圧面積が格段に小さいため、吊りロープ30に作用する積雪荷重と沈降力は小さなものとなる。
また、最上位の横ロープ21aに作用する積雪荷重と沈降力も小さなものとなる。
したがって、本発明はサポート材を具備する従来の防護柵と比べて、防護ネット20の最上部に作用する単位長さ当たりの雪の静的荷重を軽減することが可能となる。
仮に吊りロープ30が存在しなければ、スパンの両側の中間支柱11,11の間に位置する最上位の横ロープ21aに雪の静的荷重が直接作用して、最上位の横ロープ21aの中央部が下方へ大きく変位し、最悪は防護ネット20の破壊に至る。
したがって、最上位の横ロープ21aに作用する雪の静的荷重を吊りロープ30が塔部12と支柱10,11へ伝えて支持するので、横ロープ21aの中央部が下方へ変位することを効果的に防止できる。
そのため、防護ネット20が斜面の下流側へ向けて撓み変形するときに、ネットの撓み変形を阻害せずに、防護ネット20の上縁中央の支持を継続して行なうことができる。
そのため、中間支柱11,11の間においては、その両側に配置した吊りロープ30,30の張力がほぼ同じになる。
端末支柱10に対しては片方のみに吊りロープ30の張力が作用するので、これと釣り合う控えロープ等を接続することで安定性を保つことができる。
傾斜引張部30a,30aに雪の静的荷重が作用すると、吊りロープ30の全長に亘って張力が増して、傾斜引張部30aと水平引張部30bが夫々直線状に変位する。換言すれば、吊りロープ30の張力が増すと剛性部材のように吊りロープ30の曲げ抵抗が増大する。
そのため、傾斜引張部30a,30aに作用する雪の静的荷重を横ロープ21aの吊り上げ力の増加に有効活用することができる。
したがって、従来と比べてスパン長を長くすることが可能となる。
厳密には、最上位の横ロープ21aの引張り強度に釣り合うだけ、支柱10,11と11,11の間隔を大きくすることができる。
防護ネット20の張力が大きくなるときは、ロープ径を大きくしたり、高強度の素材を用いる等の方法で吊りロープ30の強度を高めるだけで簡単に対処することができ、コストの上昇もわずかである。
サポート材を有する従来の防護柵は、雪の静的荷重による支柱の傾斜に対応できるようサポート材と支柱の間に連結金具を介装する必要があった。
本発明は吊りロープ30の可撓性により支柱10,11の傾斜に対応することができる。したがって、従来のような取扱いに不便で高価なサポート材と連結金具が不要となる。
従来の防護柵を構成する支柱は、サポート材に作用する雪の静的荷重を含めた支持力が必要であった。
これに対し本発明では、吊りロープ材30に作用する雪の静的荷重が軽減されることから、各支柱10,11の支持力は小さなものとなる。
そのため、中間支柱11の延長方向の横曲げが発生せず、支柱11の断面決定に際し計算が容易である。
端末支柱10には、片側のみに荷重が作用するので、他の横ロープの引張り力とともに対応できる控えロープを設置すればよい。
さらに従来の防護柵が必須としていたサポート材と連結金具が不要となる。
したがって、防護柵をより経済的に設計することができる。
吊りロープ30の他の配置形態としては、図4に示すように、水平引張部30bを省略し、スパンの両側の支柱11,11の塔部12,12と最上位の横ロープ21aの中央部の間に吊りロープ30を連結して二つの傾斜引張部30a,30aのみで支持するようにしてもよい。
複数の吊りロープ30,30を配置する場合、荷重バランスがとれるように、スパン中心から対称位置に連結具35を介して最上位の横ロープ21aと摺動不能に連結する。
本例では2本の吊りロープ30,30で吊り上げる場合について図示したが、吊りロープ30は3本以上であってもよい。
本実施例は、連続した吊りロープ30を中間支柱11の塔部12に対して摺動可能な状態で支持することが肝要である。
図9は塔部12の上部に開設したガイド溝13内に空転式の回転体14を枢支し、回転体14の円周面に吊りロープ30を摺動自在に係留した形態を示す。
図10は塔部12の上部のガイド溝13の溝底15を円弧状に形成し、円弧状の溝底15に吊りロープ30を摺動自在に係留した形態を示す。
そのため、一部のスパンに局所的に大小異なる雪の静荷重が作用しても、吊りロープ30の張力変動が隣接するスパンにも伝達されて、張力が一様化されるので、防護柵全体として安定を保つことができる
さらに先の実施例1〜3と比べて、隣り合う支柱10,11と11,11を互いに接近し合う力が小さくなるので、支柱10,11の荷重負担を軽減できるといった利点も得られる。
11・・・・・・中間支柱
12・・・・・・塔部
20・・・・・・防護ネット
21a・・・・・防護ネットの最上位の横ロープ
30・・・・・・吊りロープ
Claims (4)
- 間隔を隔てて立設した支柱と、支柱の間に架設した防護ネットを具備し、前記防護ネットを構成する最上位の横ロープが支柱間に張設されている防護柵であって、
前記支柱の上部に防護ネットの有効高さより高い塔部を形成し、
隣り合う前記塔部の間に吊りロープを張設し、
荷重バランスがとれるようスパン中心から対称位置に、前記吊りロープの中間を最上位の横ロープの真上に連結して、該最上位の横ロープを斜め上方へ吊り上げたことを特徴とする、
防護柵。 - 請求項1において、前記吊りロープが支柱の複数スパンに亘る全長を有し、該吊りロープを前記塔部と最上位の横ロープの間に波形に張設し、中間の塔部に対して吊りロープを摺動可能に係留したことを特徴とする、防護柵。
- 請求項1において、前記吊りロープが支柱の1スパンに亘る全長を有し、該吊りロープの両端を隣り合う塔部に連結して張設したことを特徴とする、防護柵。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項において、スパンの両側の支柱の塔部間に複数の吊りロープを配置して最上位の横ロープを斜め上方へ吊り上げたことを特徴とする、防護柵。
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