以下、本発明の処理装置、シート製造装置、処理方法およびシートの製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の処理装置1は、繊維FBを含むシート状材料(原料)M1に、多価金属イオンのイオン性物質(凝集材)ISを付与してシート状材料M1に含まれる異物ASを凝集させる凝集部(異物凝集部)6と、凝集部6により生じた凝集物AGをシート状材料M1中から除去する除去部(異物除去部)5と、を備える。
また、本発明の処理方法は、繊維FBを含むシート状材料(原料)M1に、多価金属イオンのイオン性物質ISを付与してシート状材料M1に含まれる異物ASを凝集させる凝集工程と、凝集工程により生じた凝集物AGをシート状材料M1中から除去する除去工程と、を備える。そして、この方法は、処理装置1によって実行される。
このような本発明によれば、後述するように、シート状材料M1に含まれている異物ASの除去に先立って、シート状材料M1に含まれている異物ASをイオン性物質ISと接触させることにより、凝集物AGの形態にする。このような凝集物AGは、比較的大型で除去し易い。したがって、シート状材料M1からの異物ASの除去が容易となり、シート状材料M1から異物ASを十分に除去することができる。特に、繊維FBの狭い隙間や、繊維FBの内部に浸透した異物ASも好適に除去することができる。
すなわち、本発明に係る処理は、古紙の脱墨処理と言えるものである。従来の脱墨処理は、古紙を水中に分散させ、機械的、化学的(界面活性剤、アルカリ系薬品等)に着色剤を遊離させ、浮上法、スクリーン洗浄法などにより、色材を取り除く処理が一般的であるが、本発明では、古紙を水に浸す必要なく、脱墨が可能になる。乾式の脱墨技術と言えるものである。
本発明のシート製造装置100は、処理装置1を備える。
また、本発明のシートの製造方法は、繊維FBを含むシート状材料(原料)M1に、多価金属イオンのイオン性物質(凝集材)ISを付与してシート状材料M1に含まれる異物ASを凝集させる凝集工程と、凝集工程により生じた凝集物AGをシート状材料M1中から除去する除去工程と、を有し、異物ASが除去されたシート状材料M1からシートSを製造する。そして、この方法は、シート製造装置100によって実行される。
このような本発明によれば、前述した処理装置1(処理方法)の利点を享受しつつ、異物ASが除去されたシート状材料M1からシートSをさらに製造する(再生する)ことができる。
<第1実施形態>
図1は、本発明のシート製造装置(第1実施形態)の上流側(本発明の処理装置)の構成を示す概略側面図である。図2は、本発明のシート製造装置(第1実施形態)の下流側の構成を示す概略側面図である。図3は、本発明のシート製造装置(第1実施形態)が実行する工程を順に示す図である。図4〜図7は、それぞれ、図1に示す処理装置により処理されるシート状材料の状態を順に示すイメージ図(図4は図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大図、図5は図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大図、図6は図1中の一点鎖線で囲まれた領域[C]の拡大図、図7は図1中の一点鎖線で囲まれた領域[D]の拡大図)である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図2および図4〜図7中(図8、図10〜図13についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」または「上流側」、右側を「右」または「下流側」と言うことがある。
図1に示すように、シート製造装置100は、その上流側に、処理装置1を備えている。この処理装置1は、搬送部3と、表面積増大処理部(前処理部)4と、凝集部(異物凝集部)6と、除去部(異物除去部)5とを備えている。
また、図2に示すように、シート製造装置100は、その下流側に、原料供給部11と、粗砕部12と、解繊部13と、選別部14と、第1ウェブ形成部15と、細分部16と、混合部17と、ほぐし部18と、第2ウェブ形成部19と、シート形成部20と、切断部21と、ストック部22とを備えている。また、シート製造装置100は、加湿部231と、加湿部232と、加湿部233と、加湿部234とを備えている。
シート製造装置100が備える各部の作動は、制御部(図示せず)によって制御されている。
図3に示すように、本実施形態では、シートの製造方法は、表面積増大工程(前処理工程)と、凝集工程(異物凝集工程)と、除去工程(異物除去工程)と、原料供給工程と、粗砕工程と、解繊工程と、選別工程と、第1ウェブ形成工程と、分断工程と、混合工程と、ほぐし工程と、第2ウェブ形成工程と、シート形成工程と、切断工程とを有する。そして、シート製造装置100がこれらの工程を順に実行することができる。また、これらの工程のうち、処理装置1が行う工程は、表面積増大工程(前処理工程)と、凝集工程(異物凝集工程)と、除去工程(異物除去工程)である。
以下、シート製造装置100が備える各部の構成について説明する。
まず、シート製造装置100の下流側の構成について説明し、次いで、シート製造装置100の上流側の構成、すなわち、処理装置1について説明する。
原料供給部11は、粗砕部12にシート状材料M1を供給する原料供給工程(図3参照)を行う部分である。このシート状材料M1としては、繊維FB(セルロース繊維)を含むシート状材料である(図4〜図7参照)。このシート状材料M1、すなわち、シート状材料は、処理装置1によって異物ASを除去する異物除去処理が施されたものである。なお、セルロース繊維とは、化合物としてのセルロース(狭義のセルロース)を主成分とし繊維状をなすものであればよく、セルロース(狭義のセルロース)の他に、ヘミセルロース、リグニンを含むものであってもよい。
粗砕部12は、原料供給部11から供給されたシート状材料M1を気中(空気中)で粗砕する粗砕工程(図3参照)を行う部分である。粗砕部12は、一対の粗砕刃121と、シュート(ホッパー)122とを有している。
一対の粗砕刃121は、互いに反対方向に回転することにより、これらの間でシート状材料M1を粗砕して、すなわち、裁断して粗砕片M2にすることができる。粗砕片M2の形状や大きさは、解繊部13における解繊処理に適しているのが好ましく、例えば、1辺の長さが100mm以下の小片であるのが好ましく、10mm以上70mm以下の小片であるのがより好ましい。
シュート122は、一対の粗砕刃121の下方に配置され、例えば漏斗状をなすものとなっている。これにより、シュート122は、粗砕刃121によって粗砕されて落下してきた粗砕片M2を受けることができる。
また、シュート122の上方には、加湿部231が一対の粗砕刃121に隣り合って配置されている。加湿部231は、シュート122内の粗砕片M2を加湿するものである。この加湿部231は、水分を含むフィルター(図示せず)を有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を粗砕片M2に供給する気化式(または温風気化式)の加湿器で構成されている。加湿空気が粗砕片M2に供給されることにより、粗砕片M2が静電気によってシュート122等に付着するのを抑制することができる。
シュート122は、管(流路)241を介して、解繊部13に接続されている。シュート122に集められた粗砕片M2は、管241を通過して、解繊部13に搬送される。
解繊部13は、粗砕片M2を気中(空気中)で、すなわち、乾式で解繊する解繊工程(図3参照)を行う部分である。この解繊部13での解繊処理により、粗砕片M2から解繊物M3を生成することができる。ここで「解繊する」とは、複数の繊維FBが結着されてなる粗砕片M2を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。そして、この解きほぐされたものが解繊物M3となる。解繊物M3の形状は、線状や帯状である。また、解繊物M3同士は、絡み合って塊状となった状態、すなわち、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
解繊部13は、例えば本実施形態では、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーとを有するインペラーミルで構成されている。解繊部13に流入してきた粗砕片M2は、ローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。
また、解繊部13は、ローターの回転により、粗砕部12から選別部14に向かう空気の流れ(気流)を発生させることができる。これにより、粗砕片M2を管241から解繊部13に吸引することができる。また、解繊処理後、解繊物M3を、管242を介して選別部14に送り出すことができる。
管242の途中には、ブロアー261が設置されている。ブロアー261は、選別部14に向かう気流を発生させる気流発生装置である。これにより、選別部14への解繊物M3の送り出しが促進される。
選別部14は、解繊物M3を、繊維FBの長さの大小によって選別する選別工程(図3参照)を行う部分である。選別部14では、解繊物M3は、第1選別物M4−1と、第1選別物M4−1よりも大きい第2選別物M4−2とに選別される。第1選別物M4−1は、その後のシートSの製造に適した大きさのものとなっている。第2選別物M4−2は、例えば、解繊が不十分なものや、解繊された繊維FB同士が過剰に凝集したもの等が含まれる。
選別部14は、ドラム部141と、ドラム部141を収納するハウジング部142とを有する。
ドラム部141は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部141には、解繊物M3が流入してくる。そして、ドラム部141が回転することにより、網の目開きよりも小さい解繊物M3は、第1選別物M4−1として選別され、網の目開き以上の大きさの解繊物M3は、第2選別物M4−2として選別される。
第1選別物M4−1は、ドラム部141から落下する。
一方、第2選別物M4−2は、ドラム部141に接続されている管(流路)243に送り出される。管243は、ドラム部141と反対側(下流側)が管241と接続されている。この管243を通過した第2選別物M4−2は、管241内で粗砕片M2と合流して、粗砕片M2とともに解繊部13に流入する。これにより、第2選別物M4−2は、解繊部13に戻されて、粗砕片M2とともに解繊処理される。
また、ドラム部141からの第1選別物M4−1は、空気中に分散しつつ落下して、ドラム部141の下方に位置する第1ウェブ形成部(分離部)15に向かう。第1ウェブ形成部15は、第1選別物M4−1から第1ウェブM5を形成する第1ウェブ形成工程(図3参照)を行う部分である。第1ウェブ形成部15は、メッシュベルト(分離ベルト)151と、3つの張架ローラー152と、吸引部(サクション機構)153とを有している。
メッシュベルト151は、無端ベルトであり、第1選別物M4−1が堆積する。このメッシュベルト151は、3つの張架ローラー152に掛け回されている。そして、張架ローラー152の回転駆動により、メッシュベルト151上の第1選別物M4−1は、下流側に搬送される。
第1選別物M4−1は、メッシュベルト151の目開き以上の大きさとなっている。これにより、第1選別物M4−1は、メッシュベルト151の通過が規制され、よって、メッシュベルト151上に堆積することができる。また、第1選別物M4−1は、メッシュベルト151上に堆積しつつ、メッシュベルト151ごと下流側に搬送されるため、層状の第1ウェブM5として形成される。
また、第1選別物M4−1には、例えば塵や埃等が混在しているおそれがある。塵や埃は、例えば、原料供給部11から粗砕部12にシート状材料M1を供給した際に、シート状材料M1とともに混入することがある。この塵や埃は、メッシュベルト151の目開きよりも小さい。これにより、塵や埃は、メッシュベルト151を通過して、さらに下方に落下する。
吸引部153は、メッシュベルト151の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト151を通過した塵や埃を空気ごと吸引することができる。
また、吸引部153は、管(流路)244を介して、回収部27に接続されている。吸引部153で吸引された塵や埃は、回収部27に回収される。
回収部27には、管(流路)245がさらに接続されている。また、管245の途中には、ブロアー262が設置されている。このブロアー262の作動により、吸引部153で吸引力を生じさせることができる。これにより、メッシュベルト151上における第1ウェブM5の形成が促進される。この第1ウェブM5は、塵や埃が除去されたものとなる。また、塵や埃は、ブロアー262の作動により、管244を通過して、回収部27まで到達する。
ハウジング部142は、加湿部232と接続されている。加湿部232は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部142内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、第1選別物M4−1を加湿することができ、よって、第1選別物M4−1がハウジング部142の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
選別部14の下流側には、加湿部235が配置されている。加湿部235は、水を噴霧する超音波式加湿器で構成されている。これにより、第1ウェブM5に水分を供給することができ、よって、第1ウェブM5の水分量が調整される。この調整により、静電力による第1ウェブM5のメッシュベルト151への吸着を抑制することができる。これにより、第1ウェブM5は、メッシュベルト151が張架ローラー152で折り返される位置で、メッシュベルト151から容易に剥離される。
加湿部235の下流側には、細分部16が配置されている。細分部16は、メッシュベルト151から剥離した第1ウェブM5を分断する分断工程(図3参照)を行う部分である。細分部16は、回転可能に支持されたプロペラ161と、プロペラ161を収納するハウジング部162とを有している。そして、回転するプロペラ161に第1ウェブM5が巻き込まれることにより、第1ウェブM5を分断することができる。分断された第1ウェブM5は、細分体M6となる。また、細分体M6は、ハウジング部162内を下降する。
ハウジング部162は、加湿部233と接続されている。加湿部233は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部162内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、細分体M6がプロペラ161やハウジング部162の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
細分部16の下流側には、混合部17が配置されている。混合部17は、細分体M6と樹脂P1とを混合する混合工程(図3参照)を行う部分である。この混合部17は、樹脂供給部171と、管(流路)172と、ブロアー173とを有している。
管172は、細分部16のハウジング部162と、ほぐし部18のハウジング部182とを接続しており、細分体M6と樹脂P1との混合物M7が通過する流路である。
管172の途中には、樹脂供給部171が接続されている。樹脂供給部171は、スクリューフィーダー174を有している。このスクリューフィーダー174が回転駆動することにより、樹脂P1を粉体または粒子として管172に供給することができる。管172に供給された樹脂P1は、細分体M6と混合されて混合物M7となる。
なお、樹脂P1は、後の工程で繊維FB同士を結着させるものであり、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができるが、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66等のポリアミド(ナイロン)、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂としては、ポリエステルまたはこれを含むものを用いる。
なお、樹脂供給部171から供給されるものとしては、樹脂P1の他に、例えば、繊維FBを着色するための着色剤、繊維FBの凝集や樹脂P1の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維FB等を燃えにくくするための難燃剤等が含まれていてもよい。
また、管172の途中には、樹脂供給部171よりも下流側にブロアー173が設置されている。ブロアー173は、ほぐし部18に向かう気流を発生させることができる。この気流により、管172内で、細分体M6と樹脂P1とを撹拌することができる。これにより、混合物M7は、細分体M6と樹脂P1とが均一に分散した状態で、ほぐし部18に流入することができる。また、混合物M7中の細分体M6は、管172内を通過する過程でほぐされて、より細かい繊維状となる。
ほぐし部18は、混合物M7における、互いに絡み合った繊維FB同士をほぐすほぐし工程(図3参照)を行う部分である。ほぐし部18は、ドラム部181と、ドラム部181を収納するハウジング部182とを有する。
ドラム部181は、円筒状をなす網体で構成され、その中心軸回りに回転する篩である。このドラム部181には、混合物M7が流入してくる。そして、ドラム部181が回転することにより、混合物M7のうち、網の目開きよりも小さい繊維FB等が、ドラム部181を通過することができる。その際、混合物M7がほぐされることとなる。
また、ドラム部181でほぐされた混合物M7は、空気中に分散しつつ落下して、ドラム部181の下方に位置する第2ウェブ形成部19に向かう。第2ウェブ形成部19は、混合物M7から第2ウェブM8を形成する第2ウェブ形成工程(図3参照)を行う部分である。第2ウェブ形成部19は、メッシュベルト(分離ベルト)191と、張架ローラー192と、吸引部(サクション機構)193とを有している。
メッシュベルト191は、無端ベルトであり、混合物M7が堆積する。このメッシュベルト191は、4つの張架ローラー192に掛け回されている。そして、張架ローラー192の回転駆動により、メッシュベルト191上の混合物M7は、下流側に搬送される。
また、メッシュベルト191上のほとんどの混合物M7は、メッシュベルト191の目開き以上の大きさである。これにより、混合物M7は、メッシュベルト191を通過してしまうのが規制され、よって、メッシュベルト191上に堆積することができる。また、混合物M7は、メッシュベルト191上に堆積しつつ、メッシュベルト191ごと下流側に搬送されるため、層状の第2ウェブM8として形成される。
吸引部193は、メッシュベルト191の下方から空気を吸引することができる。これにより、メッシュベルト191上に混合物M7を吸引することができ、よって、混合物M7のメッシュベルト191上への堆積が促進される。
吸引部193には、管(流路)246が接続されている。また、この管246の途中には、ブロアー263が設置されている。このブロアー263の作動により、吸引部193で吸引力を生じさせることができる。
ハウジング部182は、加湿部234と接続されている。加湿部234は、加湿部231と同様の気化式の加湿器で構成されている。これにより、ハウジング部182内には、加湿空気が供給される。この加湿空気により、ハウジング部182内を加湿することができ、よって、混合物M7がハウジング部182の内壁に静電力によって付着してしまうのを抑制することもできる。
ほぐし部18の下流側には、加湿部236が配置されている。加湿部236は、加湿部235と同様の超音波式加湿器で構成されている。これにより、第2ウェブM8に水分を供給することができ、よって、第2ウェブM8の水分量が調整される。この調整により、静電力による第2ウェブM8のメッシュベルト191への吸着を抑制することができる。これにより、第2ウェブM8は、メッシュベルト191が張架ローラー192で折り返される位置で、メッシュベルト191から容易に剥離される。
第2ウェブ形成部19の下流側には、シート形成部20が配置されている。シート形成部20は、第2ウェブM8からシートSを形成するシート形成工程(図3参照)を行う部分である。このシート形成部20は、加圧部201と、加熱部202とを有している。
加圧部201は、一対のカレンダーローラー203を有し、これらの間で第2ウェブM8を加熱せずに加圧することができる。これにより、第2ウェブM8の密度が高められる。そして、この第2ウェブM8は、加熱部202に向けて搬送される。なお、一対のカレンダーローラー203のうちの一方は、モーター(図示せず)の作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
加熱部202は、一対の加熱ローラー204を有し、これらの間で第2ウェブM8を加熱しつつ、加圧することができる。この加熱加圧により、第2ウェブM8内では、樹脂P1が溶融して、この溶融した樹脂P1を介して繊維FB同士が結着する。これにより、シートSが形成される。そして、このシートSは、切断部21に向けて搬送される。なお、一対の加熱ローラー204の一方は、モーター(図示略)の作動により駆動する主動ローラーであり、他方は、従動ローラーである。
シート形成部20の下流側には、切断部21が配置されている。切断部21は、シートSを切断する切断工程(図3参照)を行う部分である。この切断部21は、第1カッター211と、第2カッター212とを有する。
第1カッター211は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断するものである。
第2カッター212は、第1カッター211の下流側で、シートSの搬送方向に平行な方向にシートSを切断するものである。
このような第1カッター211と第2カッター212との切断により、所望の大きさのシートSが得られる。そして、このシートSは、さらに下流側に搬送されて、ストック部22に蓄積される。
ところで、本実施形態では、シートSとして再生されるシート状材料M1は、印刷されて使用済みとなった古紙である。このため、原料供給部11に投入される前のシート状材料M1(繊維FB)は、黒色またはカラーのトナー、各種インク、各種染料、顔料等の色材や、その他、埃、塵等が付着したものとなっている。以下、これらの付着物を総称して「異物AS」と言う。シートSを再生する際には、異物ASは、できる限り除去された状態となっているのが好ましい。これにより、シートSは、再生時に不純物となり得る異物ASが除去された高品質のものとなる。
そこで、シート製造装置100では、その上流側に配置された処理装置1によって、シート状材料M1から異物ASの除去が可能な構成となっている。以下、処理装置1について説明する。特に、インク(特に、インクジェットインク)由来の異物は、繊維の狭い隙間や繊維の内部に浸透しやすく、一般には、除去が困難であるとされているが、本発明では、このようなインク(特に、インクジェットインク)由来の異物でも好適に除去することができる。言い換えると、異物ASがインク(特に、インクジェットインク)由来のものである場合、本発明による効果がより顕著に発揮される。
図1に示すように、処理装置1は、搬送部3と、表面積増大処理部(前処理部)4と、凝集部(異物凝集部)6と、除去部(異物除去部)5とを備えている。
搬送部3は、シート状材料M1を下流側に向かって搬送するものである。搬送部3は、グルーベルト31と、2つの張架ローラー32と、多数のアイドルローラー33とを有している。
グルーベルト31は、その表面が粘着性を有する無端ベルトである。この粘着力により、グルーベルト31上でシート状材料M1は、固定された状態となり、よって、表面積増大処理部(前処理部)4による表面積増大工程(前処理工程)や、除去部5による異物除去工程が安定して行われる。また、グルーベルト31上には、複数のシート状材料M1を載置可能である。そして、グルーベルト31上でのこれらのシート状材料M1の向き(姿勢)は、揃っていてもよいし、そうでなくてもよい。
2つの張架ローラー32は、上流側と下流側とに互いに離間して配置されており、グルーベルト31が掛け回されている。2つの張架ローラー32のうちの一方の張架ローラー32は、モーター(図示せず)に接続され、このモーターの駆動により矢印α32方向に回転する駆動ローラーである。また、他方の張架ローラー32は、駆動ローラーからの回転力がグルーベルト31を介して伝達されて、駆動ローラーと同様に矢印α32方向に回転する従動ローラーである。そして、各張架ローラー32の回転により、グルーベルト31上のシート状材料M1は、搬送方向α31に搬送される。
また、搬送部3では、駆動ローラーの回転数を調整することにより、シート状材料M1の搬送速度が可変となる。
多数のアイドルローラー33は、2つの張架ローラー32の間に、間隔を置いて配置されている。各アイドルローラー33は、グルーベルト31の駆動に伴って、張架ローラー32の回転方向と同方向の矢印α33方向に回転することができる。このようなアイドルローラー33により、グルーベルト31の撓みを防止することができ、よって、シート状材料M1を安定して搬送することができる。
なお、搬送部3は、図1に示す構成ではベルト搬送による構成のものとなっているが、これに限定されず、例えば、ステージ上でシート状材料M1を負圧により吸着保持しつつ搬送する構成のもの、すなわち、プラテンであってもよい。
図1に示すように、処理装置1は、凝集部6でイオン性物質ISが付与される前のシート状材料M1に対し、シート状材料M1の表面積を増大させるための前処理を施す表面積増大処理部(前処理部)4を備えている。より詳しくは、図1に示すように、グルーベルト31の上側に、表面積増大処理部(前処理部)4が配置されている。
これにより、シート状材料M1の表面積が増え、シート状材料M1中に含まれる異物ASとイオン性物質ISとを、より効率よく接触させることができる。また、表面積増大工程前の状態では、シート状材料M1の深部(図1中上側の面よりも下側の部位)の繊維FBの狭い隙間に存在していた異物ASや、繊維FBの内部に浸透していた異物ASを、凝集部(異物凝集部)6において、より効率よくイオン性物質ISと接触させることができる。このようなことから、シート状材料M1中の異物ASをより効率よく除去することができる。
表面積増大処理部(前処理部)4は、シート状材料M1の表面積を増大させるための前処理を施すことができれば、いかなる構成であってもよいが、本実施形態では、シート状材料M1を毛羽立たせる毛羽立て部である。
これにより、シート状材料M1に対し、シート状材料M1の表面積を増大させるための処理を短時間で効率よく行うことができる。また、シート状材料M1を毛羽立たせることにより、下流側で行う解繊工程の効率も向上する。このようなことから、シート状材料M1の処理速度を向上させることができる。
ここで、「毛羽立たせる」について説明する。
シート状材料M1に含まれる繊維FBは、表面積増大工程(毛羽立て工程)を経るまでは、図4に示すように、寝ている、すなわち、伏倒した状態となっている。図4に示す状態では、繊維FB同士は、同じ方向、すなわち、図4中の左側に伏倒しているが、中には、互いに異なる方向に伏倒しているものがあってもよい。そして、表面積増大工程(毛羽立て工程)を経ることにより、少なくとも表面付近にある繊維FBは、図5に示すように、図4に示す状態よりも起き上がる、すなわち、起立する。これを「毛羽立たせる」と言う。なお、繊維FBの起立状態は、凝集工程で、シート状材料M1にイオン性物質ISが付与されるまでは維持される。
図1に示すように、表面積増大処理部(毛羽立て部)4は、ブラシ41を有している。このブラシ41は、回転可能に支持された円筒状または円柱状をなす芯部411と、芯部411の外周部に設けられたブラシ毛412とを有している。
芯部411は、モーター(図示せず)に接続され、このモーターの駆動により、ブラシ毛412ごと矢印α41方向に回転することができる。
芯部411の外周部には、その全周にわたってブラシ毛412が植え込まれている。ブラシ毛412は、例えば、ポリアミドやポリエステル等のような可撓性を有する樹脂材料で構成されている。
また、ブラシ毛412の毛先は、鋭利となっていてもよいし、丸みを帯びていてもよい。
そして、ブラシ41が矢印α41方向に回転することにより、その直下を通過するシート状材料M1は、繊維FBがブラシ41のブラシ毛412に接触して、搬送方向α31と反対方向、すなわち、上流側に強制的に押し戻される。これにより、シート状材料M1では、繊維FBが毛羽立った状態となる、すなわち、繊維FBが図4に示す状態から図5に示す状態となる。このような状態により、異物ASをできる限り繊維FBから浮かせることができ、よって、除去部5で繊維FBが除去され易くなる。
なお、ブラシ41は、本実施形態では矢印α41方向に回転するよう構成されているが、これに限定されず、例えば、矢印α41方向と反対方向に回転するよう構成されていてもよいし、矢印α41方向の回転と、その回転と反対方向の回転とを周期的に交互に行うよう構成されていてもよい。
また、ブラシ41は、本実施形態では回転するよう構成されているが、これに限定されず、例えば、搬送方向α31と反対方向または搬送方向α31と同方向に移動するよう構成されていてもよい。
また、ブラシ41の下方には、アイドルローラー33の1つがグルーベルト31を介して位置している(以下のこのアイドルローラー33を「アイドルローラー33a」と言う)。このアイドルローラー33aにより、ブラシ41を上側からシート状材料M1に押し付けることができ、よって、ブラシ毛412と繊維FBとが十分に接触する。これにより、繊維FBを過不足なく毛羽立たせることができる。
処理装置1は、表面積増大処理部(毛羽立て部)4の下流側(表面積増大処理部4と除去部5との間)には、シート状材料M1に、多価金属イオンのイオン性物質ISを付与してシート状材料M1に含まれる異物ASを凝集させる凝集部(異物凝集部)6を備えている。この凝集部6が行う凝集工程(異物凝集工程)は、表面積増大工程と除去工程(異物除去工程)との間で行われる。
凝集部6は、グルーベルト31の上側に配置されており、イオン性物質ISを上方からシート状材料M1に供給することができる。これにより、シート状材料M1上で異物ASを凝集させることができ、凝集物AGが形成される(図6参照)。より具体的には、多価金属イオンのイオン性物質ISを付与することにより、異物ASとの間での電気的な作用で、比較的大きい凝集物AGを効率よく形成することができる。また、異物ASが繊維FBに強固に結合している場合でも、イオン性物質ISを用いることにより、繊維FBと異物ASとの結合力を弱め、比較的大きい凝集物AGを効率よく形成することができる。
そして、凝集した異物ASは、除去工程(異物除去工程)で容易に除去される大きさのものとなっている。
したがって、凝集した異物ASは、除去部(異物除去部)5の作動によって、シート状材料M1から容易に除去される。
このような効果は、異物ASが電荷を有するもの(特に、アニオン性の異物AS)である場合に、より顕著に発揮される。また、イオン性物質ISは、例えば、溶液や分散液等ではない乾燥状態(例えば、粉末状態)でシート状材料M1に付与した場合であっても、異物ASを凝集物AGとして容易にかつ効率よく除去することができる。このため、凝集物AGの除去後の後処理を省略または簡略化することができ、処理装置1の構成が複雑化するのを防止しつつ、上記のような効果を得ることができる。
凝集部6では、シート状材料M1に対し、イオン性物質ISを単独で付与してもよいし、イオン性物質ISと他の成分とを含む混合物の状態で付与してもよい。
凝集部6では、いかなる形態でシート状材料M1にイオン性物質ISを付与してもよく、例えば、イオン性物質ISを他の液体成分(溶媒)に溶解させた溶液状態や、他の液体成分(分散媒)に分散させた分散液状態であってもよいが、イオン性物質ISを粉末状態で付与するのが好ましい。
これにより、シート状材料M1にイオン性物質ISを付与した後の凝集物AGや余剰のイオン性物質ISの除去が容易になる。また、イオン性物質ISを付与した後の後処理(例えば、乾燥処理等)を省略または簡略化することができ、シート状材料M1の処理速度をより向上させることができる。また、処理装置1内における乾式状態を徹底することができ、処理装置1の装置構成を簡略化、小型化する上で有利である。
イオン性物質ISを粉末状態で付与する場合、当該粉末の平均粒径は、10μm以上2000μm以下であるのが好ましく、20μm以上1000μm以下であるのがより好ましく、30μm以上500μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、イオン性物質ISの粉末が処理装置1内で不本意に飛散(拡散)してしまうことをより効果的に抑制し、イオン性物質ISの取り扱いのし易さをより優れたものとしつつ、異物ASの除去効率をより向上させることができる。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径をいう。
イオン性物質ISをシート状材料M1に付与する方法は、特に限定されず、例えば、噴霧法、塗布法、印刷法、浸漬法(ディッピング)等が挙げられるが、中でも、噴霧法、塗布法のうち少なくとも一方を用いて、イオン性物質ISをシート状材料M1に付与するのが好ましい。
これにより、例えば、シート状材料M1の所望の部位に、所望量のイオン性物質ISを効率よく付与することができる。したがって、イオン性物質ISの使用量を抑制しつつ、異物ASをより効率よく除去することができる。また、上記のような方法では、乾燥状態のイオン性物質IS(溶液状態や分散液状態ではないイオン性物質IS)も好適に用いることができる。
シート状材料M1に付与するイオン性物質ISの目付量は、特に限定されないが、1μg/m2以上50g/m2以下であるのが好ましく、5μg/m2以上40g/m2以下であるのがより好ましく、10μg/m2以上30g/m2以下であるのがさらに好ましい。
これにより、イオン性物質ISの使用量を抑制しつつ、異物ASをより効率よく除去することができる。
なお、シート状材料M1の特定の部位(例えば、印刷が施された部位)に選択的にイオン性物質ISを付与する場合、当該特定の部位におけるイオン性物質ISの目付量が、前述した条件を満足するのが好ましい。
また、このように特定の部位に選択的にイオン性物質ISを付与することにより、イオン性物質ISの使用量をより効果的に抑制することができる。また、凝集物AGの除去や余剰のイオン性物質ISの除去に要する時間を短縮することができるため、シート状材料M1の処理速度を向上させることができる。
なお、予め、図示しない検出手段により、(例えば、光学的に)シート状材料M1の異物ASを含む部位を特定すること(当該部位の座標を求めること)により、特定の部位への選択的なイオン性物質ISの付与を好適に行うことができる。また、図示しない検出手段により、(例えば、光学的に)シート状材料M1の各部位での異物ASの含有量(絶対的な含有量または相対的な含有率)を検出し、当該検出結果に基づいて、イオン性物質ISの付与量を調整してもよい。
イオン性物質ISは、多価金属イオン(2価以上の金属イオン)を含むイオン性の物質であればよいが、潮解性を有しているのが好ましい。
これにより、例えば、イオン性物質ISを他の液体成分と混合していない状態(例えば、溶液状態や分散液状態ではない状態)でシート状材料M1に付与した場合であっても、雰囲気中に含まれる水分により、イオン性物質ISは自発的に水溶液状態となり、シート状材料M1に濡れた状態で接触することができる。その結果、イオン性物質ISは、より効率よく異物ASと接触し、より効率よく繊維FBと異物ASとの結合力を弱め、凝集物AGの形成効率を向上させることができる。特に、繊維FBの隙間に存在する異物ASだけでなく、繊維FBの内部に浸透した異物ASとの間でも効果的に凝集物AGを形成することができ、より効果的に異物ASを除去することができる。また、積極的に液体成分を準備する必要がなく、潮解性を有するイオン性物質ISを他の液体成分と混合されていない状態で用いることにより、処理装置1内における乾式状態を徹底することができ、装置構成の簡略化、小型化等を図る上で有利である。潮解性を有するイオン性物質ISを他の液体成分と混合されていない状態で用いることにより、後処理としての乾燥処理を省略または簡略化することができ、シート状材料M1の処理速度を向上させることができる。また、潮解性を有するイオン性物質ISが雰囲気中に含まれる水分を吸収することにより、処理装置1内の雰囲気の湿度を低下させることができる。
イオン性物質ISとしては、例えば、多価金属(2価以上の金属(例えば、第2族〜第16族の金属元素))のハロゲン化物塩(塩化物、臭化物塩、フッ化物塩、ヨウ化物塩)、硝酸塩、亜硝酸塩、次亜硝酸塩、過硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、炭酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、ホウ酸塩、過ホウ酸塩、ケイ酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、スルフィン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ヒ酸塩等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
イオン性物質ISの好ましい材料としては、アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)の塩(ハロゲン化物塩、硝酸塩等)、マグネシウム族(Be、Mgや亜鉛等の第12族元素)の塩(ハロゲン化物塩、硝酸塩等)、マンガン族(Mn等の第7族元素)の塩(ハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩等)、鉄族(Fe、Co、Ni)の塩(ハロゲン化物塩、硝酸塩等)、希土類(第3族のうちアクチノイドを除く第4周期から第6周期までの元素)の塩(ハロゲン化物塩、硝酸塩等)等が挙げられる。
イオン性物質ISの分子量は、47以上300以下であるのが好ましく、60以上250以下であるのがより好ましく、80以上200以下であるのがさらに好ましい。
これにより、イオン性物質ISの使用量を抑制しつつ、異物ASをより効率よく除去することができる。
イオン性物質ISを水に溶解して1.0質量%の水溶液としたときの当該水溶液のpH(25℃におけるpH)は、5.8以上7.8以下であるのが好ましく、6.0以上7.5以下であるのがより好ましく、6.5以上7.3以下であるのがさらに好ましい。
これにより、処理装置1での処理中におけるシート状材料M1に対するダメージを抑制しつつ、より効率よく異物ASを除去することができる。また、仮に、処理装置1による処理済みのシート状材料M1中にイオン性物質ISが残存した場合であっても、残存する当該イオン性物質ISによる悪影響の発生(シート状材料M1の劣化等)がより効果的に抑制される。
特に、イオン性物質ISは、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのうち少なくとも一方を含むものであるのが好ましい。
これらのイオン性物質ISは、より好適な潮解性を示し、前述したような効果がより効果的に発揮される。また、これらのイオン性物質ISは、比較的安価で、コスト的にも有利である。
また、異物ASは、いかなるものであってもよいが、インクジェットインクの成分であるのが好ましい。
一般に、インクジェットインクの成分は、繊維の隙間だけでなく、繊維の内部にまで浸透しやすく、一般に繊維を含む記録媒体に付与された後に除去することは容易でない。これに対し、本発明では、多価金属イオンのイオン性物質ISを用いることにより、インクジェットインクの成分であっても、繊維FBを含むシート状材料M1から好適に除去することができる。したがって、異物ASがインクジェットインクの成分である場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
インクジェットインクの成分としては、例えば、各種染料、各種顔料等の着色剤、分散剤、浸透剤、溶解補助剤、pH調整剤等が挙げられる。
また、異物ASは、非イオン性の物質でも、カチオン性の物質でもよいが、アニオン性の物質であるのが好ましい。
アニオン性の物質は、各種物質の中でも、特に、多価金属イオンのイオン性物質ISとの相互作用が強い。したがって、異物ASがアニオン性の物質であると、多価金属イオンのイオン性物質ISとの相互作用により、より好適に凝集物AGを形成することができ、除去部5においてより好適に除去することができる。
アニオン性の物質としては、例えば、カーボンブラック等の負帯電性の着色剤;トリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属錯塩、ベンジル酸の金属錯塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、金属錯塩アゾ系染料、アゾクロムコンプレックスなどの重金属含有酸性染料、カッリクスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基やスルホニル基を含有する樹脂、アルミナ、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、タルク、ハイドロタルサイト等の金属酸化物や水酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸金属塩、窒化チタン、窒化珪素等の窒化物、炭化チタン、炭化珪素等の炭化物等の無機微粒子や、アクリル酸およびその誘導体を単量体の主成分とするアクリル酸系樹脂、メタクリル酸およびその誘導体を単量体の主成分とするメタクリル酸系樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、トリフロロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル等の負帯電性の有機微粒子等の負帯電性の帯電制御剤や外添剤;ポリエステル等の負帯電性のバインダー(特に、トナーに用いられるバインダー)等が挙げられる。
図1に示すように、グルーベルト31の上側には、凝集部6よりも下流側に除去部(異物除去部)5が配置されている。
除去部5は、凝集部6により生じた凝集物AGをシート状材料M1から除去する除去工程(図3参照)を行う部分である。
除去部5では、凝集物AGとともに、余剰のイオン性物質ISを除去してもよい。
これにより、処理装置1で処理された材料中に不本意にイオン性物質ISが残存することをより効果的に防止することができる。また、除去部5よりも下流側にイオン性物質ISを除去するための除去部(第2の除去部)を設けることも考えられるが、除去部5(第1の除去部)で余剰のイオン性物質ISを除去することにより、第2の除去部での処理をより短時間で行うことができたり、第2の除去部の構造の簡略化を図ることができたりする。また、装置全体の小型化を図る上でも有利である。また、除去部5で凝集物AGとともに余剰のイオン性物質ISを除去することにより、第2の除去部を設けなくても、処理済みのシート状材料M1に含まれるイオン性物質ISの含有率を十分に低くすることができ、処理済みのシート状材料M1の信頼性を十分に優れたものとすることができ、シート製造装置100を用いて製造されるシートSの信頼性を優れたものとすることができる。
なお、除去部5で余剰のイオン性物質ISを除去する場合、イオン性物質ISの少なくとも一部を除去すればよい。
本実施形態においては、除去部5では、凝集物AGを含むシート状材料M1に、不織布または織布で構成された布材51を接触させ、凝集物AGを布材51に移行させて(転写して)除去するように構成されている。除去部5は、布材51と、2つの張架ローラー52と、多数のアイドルローラー53と、クリーニング部54とを有している。
これにより、より効率よく凝集物AGを除去することができる。また、余剰のイオン性物質ISが残存している場合に、除去部5において、凝集物AGとともに、余剰のイオン性物質ISも効率よく除去することができる。
また、布材51が不織布または織布で構成されていることにより、凝集物AGを効率よくシート状材料M1から絡め取ることができる。また、除去部5では、布材51が無端ベルトとなっている。これにより、例えば、布材51をクリーニング部54によって清掃すれば、そのまま布材51を凝集物AGの除去に使用し続けることができる。
2つの張架ローラー52は、上流側と下流側とに互いに離間して配置されており、布材51が掛け回されている。2つの張架ローラー52のうちの一方の張架ローラー52は、モーター(図示せず)に接続され、このモーターの駆動により矢印α52方向に回転する駆動ローラーである。また、他方の張架ローラー52は、駆動ローラーからの回転力が布材51を介して伝達されて、駆動ローラーと同様に矢印α52方向に回転する従動ローラーである。そして、各張架ローラー52の回転により、布材51は、グルーベルト31上では、搬送方向α31と反対方向の矢印α51方向に駆動する。これにより、布材51は、凝集物AGをシート状材料M1から移行させて、すなわち、付着させて、拭き取ることができる。その結果、凝集物AGが十分に除去されて、図7に示す状態となる。
また、除去部5では、駆動ローラーの回転数を調整することにより、布材51の矢印α51方向への駆動速度が可変となる。
多数のアイドルローラー53は、2つの張架ローラー52の間に、等間隔に配置されている。各アイドルローラー53は、布材51の駆動に伴って、張架ローラー52の回転方向と同方向の矢印α53方向に回転することができる。
また、布材51の下方には、複数のアイドルローラー33がグルーベルト31を介して位置している(以下のこれらのアイドルローラー33を「アイドルローラー33b」と言う)。そして、これらのアイドルローラー33bと、前記アイドルローラー53との間で、布材51をシート状材料M1に押し付けることができる。これにより、布材51と凝集物AGとが十分に接触して、よって、凝集物AGの除去が十分に行われる。
また、布材51は、図1に示す構成では搬送方向α31と反対方向の矢印α51方向に駆動するが、これに限定されず、例えば、搬送方向α31と同方向に駆動してもよい。この場合、布材51の駆動速度と、シート状材料M1の搬送速度との間には、差があるのが好ましい。
除去部5は、凝集物AGが移行してきた布材51を清掃するクリーニング部54を有している。クリーニング部54は、布材51の上方に配置されており、布材51に付着した凝集物AGを吸引するよう構成されている。これにより、布材51から凝集物AG(異物AS)が除去され、よって、布材51が清掃される。清掃された布材51は、再度凝集物AG(異物AS)の除去に用いられる。
<第2実施形態>
図8は、本発明のシート製造装置(第2実施形態)の上流側(本発明の処理装置)の構成を示す概略側面図である。図9は、本発明のシート製造装置(第2実施形態)が実行する工程を順に示す図である。図10〜図13は、それぞれ、図8に示す処理装置により処理されるシート状材料の状態を順に示すイメージ図(図10は図8中の一点鎖線で囲まれた領域[A’]の拡大図、図11は図8中の一点鎖線で囲まれた領域[B’]の拡大図、図12は図8中の一点鎖線で囲まれた領域[C’]の拡大図、図13は図8中の一点鎖線で囲まれた領域[D’]の拡大図)である。
以下、これらの図を参照して本発明の処理装置、シート製造装置、処理方法およびシートの製造方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、予備付与部を備えること以外は前述した第1実施形態と同様である。
図8に示すように、本実施形態では、予備付与部(第1のイオン性物質付与部)7において、シート状材料M1にイオン性物質ISを付与し、その下流側に設けられた表面積増大処理部(前処理部)4で、シート状材料M1の表面積を増大させるための前処理を施し、さらにその下流側に設けられた凝集部6(イオン性物質付与部、第2のイオン性物質付与部)で、シート状材料M1にイオン性物質ISを付与するように構成されている。言い換えると、本実施形態の処理装置1は、表面積増大処理部4よりも上流側に、シート状材料M1に予備的に多価金属イオンのイオン性物質ISを付与する予備付与部7をさらに備えている。この予備付与部7が行う予備付与工程は、表面積増大工程より前に行われる。
このような構成により、より効率よく凝集物AGを形成することができる。より詳しく説明すると、表面積増大処理部4に供給されるシート状材料M1に対して、予備付与部7において予め比較的少量のイオン性物質ISが付与されることにより、表面積増大処理部4でシート状材料M1の表面積を増大させるための処理を行う際に、表面積増大処理部4に多量のイオン性物質ISが付着するのを効果的に防止しつつ、予備付与部7で付与されたイオン性物質ISを、効率よく繊維FBの隙間に侵入させたり、効率よく繊維FBの内部に浸透させたりすることができる。その結果、これらの部位に含まれる異物ASとイオン性物質ISを効率よく接触させることができる。そして、表面積増大処理部4より下流側の凝集部6(第2のイオン性物質付与部)で、シート状材料M1にイオン性物質ISをさらに付与することにより、新たに付与されたイオン性物質ISが、それより上流側で異物ASと接触していたイオン性物質ISと接触し、より大きく、より除去されやすい形態の凝集物AGが形成される。このようなことから、より効率よく凝集物AGを形成することができる。また、全体としてのイオン性物質ISの利用量を抑制した場合でも、十分に異物ASを除去することができる。
なお、各工程でのシート状材料M1の状態は、図10〜図13に示すようになる。
すなわち、予備付与工程では、予備的に比較的少量のイオン性物質ISを付与した状態では、凝集物AGの成長(粗大化)はほとんど進行していない(図10参照)。
表面積増大工程では、表面積増大処理部(毛羽立て部)4による外力が加わり、シート状材料の表面積が増大するとともに、イオン性物質ISと異物ASとの接触が促進され、凝集物AGの成長が進行する(図11参照)。
凝集工程で、さらに、イオン性物質ISが追加で付与されると、凝集物AGの成長がさらに進行する(図12参照)。
その後の除去工程では、凝集物AGが十分に除去されて、図13に示すような状態となる。
予備付与部7でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISの目付量は、通常、凝集部6でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISの目付量よりも少ないものである。
具体的には、予備付与部7でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISの目付量は、特に限定されないが、0.01μg/m2以上10g/m2以下であるのが好ましく、0.10μg/m2以上5g/m2以下であるのよりが好ましく、0.30μg/m2以上1g/m2以下であるのがさらに好ましい。
これにより、イオン性物質ISの使用量を抑制しつつ、異物ASをより効率よく除去することができる。
また、予備付与部7でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISの量は、凝集部6でシート状材料M1に付与するイオン性物質IS:100質量部に対し、0.1質量部以上30質量部以下であるのが好ましく、0.2質量部以上25質量部以下であるのがより好ましく、0.3質量部以上20質量部以下であるのがさらに好ましい。
これにより、イオン性物質ISの使用量を抑制しつつ、異物ASをより効率よく除去することができる。
なお、予め、図示しない検出手段により、(例えば、光学的に)シート状材料M1の異物ASを含む部位を特定すること(当該部位の座標を求めること)により、予備付与部7によるイオン性物質ISの付与を、特定の部位に選択的に行うことができる。また、図示しない検出手段により、(例えば、光学的に)シート状材料M1の各部位での異物ASの含有量(絶対的な含有量または相対的な含有率)を検出し、当該検出結果に基づいて、予備付与部7によるイオン性物質ISの付与量を調整してもよい。
また、予め、図示しない検出手段により、(例えば、光学的に)シート状材料M1の異物ASの含有量(絶対的な含有量または相対的な含有率)を検出し、当該検出結果に基づいて、予備付与部7および凝集部6の作動を制御してもよい。例えば、異物ASの含有量が多い場合には、予備付与部7および凝集部6を作動させ、異物ASの含有量が少ない場合には、凝集部6を作動させ、予備付与部7の作動を中止してもよい。
予備付与部7でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISと、凝集部6でシート状材料M1に付与するイオン性物質ISとでは、例えば、イオン性物質ISの組成、イオン性物質ISの状態(例えば、他の成分との混合の有無、他の成分と混合されている場合には、他の成分による希釈率や当該他の成分の組成等)等の条件が、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
以上、本発明の処理装置、シート製造装置、処理方法およびシートの製造方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。また、処理装置およびシート製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の処理装置、シート製造装置、処理方法およびシートの製造方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、毛羽立て部は、1つのブラシを有していたが、これに限定されず、例えば、原料の搬送方向に沿って配置された複数のブラシを有していてもよい。
また、毛羽立て部は、鉤状をなす複数本の爪部と、当該爪部を回動可能に支持する回動支持部とを有するものであってもよい。
また、表面積増大処理部は、シート状材料の表面積を増大させるための前処理を施す部位であれば、いかなる構成であってもよく、シート状材料を毛羽立たせるものでなくてもよい。
また、表面積増大処理部(表面積増大工程)は省略してもよい。
また、前述した実施形態では、除去部は、無端ベルトで構成された1つの布材を有していたが、これに限定されず、例えば、原料の搬送方向に沿って配置された複数の布材を有していてもよい。
また、本発明において、除去部は、凝集物を材料中から除去することができれば、いかなる構成のものであってもよい。