JP6939319B2 - ポリイミドフィルム、積層体、及びディスプレイ用表面材 - Google Patents

ポリイミドフィルム、積層体、及びディスプレイ用表面材 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミドフィルム、積層体、及びディスプレイ用表面材に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
一般にポリイミド樹脂は、芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの縮合反応により得られたポリアミド酸(ポリアミック酸)を脱水閉環反応させて得られる高耐熱性の樹脂である。しかしながら、一般にポリイミド樹脂は黄色或いは褐色に着色を示すことから、ディスプレイ用途や光学用途など透明性が要求される分野に用いることは困難であった。そこで、透明性を向上したポリイミドを、ディスプレイ部材へ適用することが検討されている。例えば、特許文献1には、高耐熱性、高透明性、低吸水性のポリイミド樹脂として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物およびこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル含有化合物と、特定の式で表される、少なくとも一つのフェニレン基とイソプロピリデン基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種のイミノ形成化合物とを反応させてなるポリイミド樹脂が開示されており、フラットパネルディスプレイや携帯電話機器等の基板材料に好適であると記載されている。
特許文献2には、フレキシブルデバイスの基板に用いられるポリイミドフィルムとして、無色透明であり、無機膜との間に発生する残留応力が低く、機械的物性及び熱物性に優れたポリイミドフィルムを得ることを目的として、特定のフッ素系芳香族ジアミンと、ケイ素原子数が3〜200個のシロキサン骨格を有するシリコーン化合物とをモノマー成分として用いたポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドフィルムが開示されている。特許文献2には、前記ポリイミド前駆体を用いて無機膜(SiN膜)付きポリイミドフィルムを形成したところ、折り曲げを10回繰り返し行った折り曲げ試験後にクラックも剥離も観察されないか(○)、クラックが観察された(△)と記載されている。
一方、特許文献3には、撥水性のポリイミドフィルムとして、ポリイミドシロキサンを含有させたポリアミック酸溶液の塗膜をイミド化することにより、或いは、ポリアミック酸溶液の塗膜上に、ポリイミドシロキサン溶液の塗膜を形成した後、イミド化することにより、ケイ素原子の表面原子濃度を1%以上としたポリイミドフィルムが開示されている。
特開2006−199945号公報 国際公開2014/098235号公報 特開平10−110032号公報
発明者らは、ガラス代替となる樹脂製品として、ポリイミドフィルムと、樹脂を含有する各種機能層との積層体が有効であると考え、鋭意検討しているが、ポリイミドフィルムの前記樹脂含有層に対する密着性の向上が課題の1つであった。発明者らの検討により、ケイ素原子を適切に含有させたポリイミドフィルムは、前記樹脂含有層に対する密着性が向上するが、その一方で剥離性が悪化するため、製造過程でフィルムを支持体から剥離する際に剥離し難く、フィルムにシワ、クラック、スジ等の不良が生じたり、フィルムが破断する等の問題があることを知見した。そのため、ポリイミドフィルムにおいては、製造過程における支持体からの剥離性と、他の層を積層した場合の密着性との両立が求められている。
また、ケイ素原子を含有させたポリイミドフィルムであっても、特許文献3に記載されている撥水性ポリイミドフィルムでは、光透過性が低く、透明性が要求されるディスプレイ用途や光学用途などの分野に用いることが困難である。
さらに、従来のシリコーン成分を含有させたポリイミドフィルムは、弾性率が不足し、表面硬度が低く、傷付きやすかったり、発光パネルや回路へ衝撃を伝えてしまい、保護フィルムとしての機能が不足する場合もあった。
以上のことから、製造過程における支持体からの剥離性と、他の層を積層した場合の密着性とを両立しながら、透明フィルムとして十分な透明性を有し、保護フィルムとして十分な表面硬度をする樹脂フィルムが求められている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一方の面の密着性が向上しながら、もう一方の面の支持体からの剥離に起因する不良が抑制され、且つ、透明性の低下及び表面硬度の低下が抑制されたポリイミドフィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを有する積層体、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することを目的とする。
本発明のポリイミドフィルムの1実施形態は、下記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である。
Figure 0006939319

(一般式(1−1)において、R1’は芳香族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2’は、ジアミン残基である2価の基を表し、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び後述する一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である。n’は繰り返し単位数を表す。)
本発明のポリイミドフィルムの1実施形態は、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上である。
Figure 0006939319

(一般式(1)において、Rは芳香族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rは、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び後述する一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である。nは繰り返し単位数を表す。)
本発明のポリイミドフィルムの1実施形態においては、前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが、光透過性と表面硬度との点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの1実施形態においては、前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおける前記一般式(1−1)中のR1’、及び、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおける前記一般式(1)中のRが、各々、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが、光透過性と表面硬度との点及び屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの1実施形態においては、前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおける前記一般式(1−1)中のR2’における前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基、及び、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおける前記一般式(1)中のRにおける前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、各々、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが、光透過性と表面硬度との点及び屈曲耐性の点から好ましい。
Figure 0006939319
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
本発明のポリイミドフィルムは、ケイ素原子濃度が相対的に大きい表面を、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層との密着面に用いることができる。
本発明の積層体は、前記本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層とが隣接して位置する積層体である。
本発明の積層体においては、前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物であることが、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から好ましい。
本発明のディスプレイ用表面材は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体である。
本発明のディスプレイ用表面材は、フレキシブルディスプレイ用とすることができる。
本発明によれば、一方の面の密着性が向上しながら、もう一方の面の支持体からの剥離に起因する不良が抑制され、且つ、透明性の低下及び表面硬度の低下が抑制されたポリイミドフィルムを提供することができる。
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムを有する積層体、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することができる。
静的屈曲試験の方法を説明するための図である。
I.ポリイミドフィルム
本発明のポリイミドフィルムの第1の実施形態は、ケイ素原子を含むポリイミドを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である、ポリイミドフィルムである。
本発明のポリイミドフィルムの第2の実施形態は、ケイ素原子を含むポリイミドを含有し、ケイ素原子を全ポリイミド中に0.2質量%以上4.1質量%以下の割合で含み、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である、ポリイミドフィルムである。
前記第2の実施形態は、前記第1の実施形態において、ケイ素原子を全ポリイミド中に0.2質量%以上4.1質量%以下の割合で含むものであり、ポリイミドフィルムの一方の面の密着性と、もう一方の面の剥離性とを向上し易い形態である。
本発明のポリイミドフィルムの第3の実施形態は、下記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である、ポリイミドフィルムである。
Figure 0006939319
(一般式(1−1)において、R1’は芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2’は、ジアミン残基である2価の基を表し、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。n’は繰り返し単位数を表す。)
前記第3の実施形態は、前記第1の実施形態において、ケイ素原子を含むポリイミドとして、前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドを用いたものであり、ポリイミドフィルムの一方の面の密着性と、もう一方の面の剥離性とを向上し易い形態である。
本発明のポリイミドフィルムの第4の実施形態は、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上である、ポリイミドフィルムである。
Figure 0006939319
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rは、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
前記第4の実施形態は、前記第1の実施形態において、ケイ素原子を含むポリイミドとして、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを用い、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上であるポリイミドフィルムであり、ポリイミドフィルムの一方の面の密着性と、もう一方の面の剥離性とを向上し易い形態である。前記第4の実施形態においては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを用いることにより、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度を10.0原子%以下とすることができる。
本発明のポリイミドフィルムは、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上である。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。本発明のポリイミドフィルムの前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、30以下であることが好ましい。このように黄色度が低いことから、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、中でも、20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることがより更に好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が30以下であることが好ましく、20以下であることが更に好ましく、15以下であることがより更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、10以下であることが好ましく、7以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、前記JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、JIS Z8722に規定する分光測色方法により測定される透過率をもとに算出することができる。
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、1.8GPa以上である。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いことから、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材として用いることができる。前記引張弾性率は、中でも、2.0GPa以上であることが好ましく、2.4GPa以上であることが更に好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、5.2GPa以下であることが好ましい。屈曲耐性を向上させる点から、前記引張弾性率は4.0GPa以下であっても良く、3.5GPa以下であっても良い。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが50μm±5μmであることが好ましい。
また、本発明の前記第1、2、及び3の実施形態のポリイミドフィルムは、一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である。
また、本発明の前記第4の実施形態のポリイミドフィルムは、一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上である。
なお、本発明において、各原子の原子%の値は、測定値をJIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第1位に丸めた値とする。例えば、ケイ素原子濃度が1.0原子%以上とは、ケイ素原子濃度が0.950原子%以上であれば含まれる。
本発明のポリイミドフィルムは、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上であり、且つ、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下であることが、密着性、剥離性、及び表面硬度の点から好ましい。
一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度との差の絶対値は、一方の面の密着性と、もう一方の面の剥離性をそれぞれ向上する点から、0.1原子%以上であることが好ましく、0.4原子%以上であることがより好ましく、0.8原子%以上であることがより更に好ましい。
また、相対的にケイ素原子濃度が大きい面のケイ素原子濃度は、密着性の点から、好ましくは1.2原子%以上、より好ましくは1.6原子%以上であり、より更に好ましくは2.0原子%以上であり、密着性及び表面硬度の点から、好ましくは8.0原子%以下、より好ましくは5.0原子%以下である。
相対的にケイ素原子濃度が小さい面のケイ素原子濃度は、剥離性の点から、好ましくは4.0原子%以下、より好ましくは2.0原子%以下、より更に好ましくは1.5原子%以下であり、屈曲耐性の点から、好ましくは0.1原子%以上、より好ましくは0.2原子%以上、より更に好ましくは0.5原子%以上である。
また、相対的にケイ素原子濃度が大きい面のケイ素原子濃度が1.6原子%以上10.0原子%以下であり、且つ、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度との差の絶対値が0.8原子%以上である場合は、密着性と剥離性を両立しながら、特に相対的にケイ素原子濃度が大きい面の密着性に優れる点から好ましい。
相対的にケイ素原子濃度が小さい面のケイ素原子濃度が1.5原子%以下であり、且つ、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度との差の絶対値が0.8原子%以上である場合は、密着性と剥離性を両立しながら、特に相対的にケイ素原子濃度が小さい面の剥離性に優れる点から好ましい。
また、相対的にケイ素原子濃度が大きい面のケイ素原子濃度が1.6原子%以上10.0原子%以下であり、且つ、相対的にケイ素原子濃度が小さい面のケイ素原子濃度が1.5原子%以下である場合は、密着性及び剥離性の双方を向上する点から好ましい。
なお、本発明においてポリイミドフィルム表面の各原子濃度は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて、X線光電子分光法(XPS)により下記条件で測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
・入射X線: Monochromated Al Kα線(単色化X線、hν=1486.6eV)
・X線照射領域(測定面積):400μmφ
・X線出力:100W(15kV・6.7mA)
・光電子取り込み角度:53°(但し、試料法線を0°とする)
・帯電中和条件:電子中和銃(+6V、0.05mA)、低加速Arイオン照射
・測定ピーク:Si2p、C1s、N1s、O1s、F1s
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて原子数比を算出する。
本発明によれば、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドが、ケイ素原子を含み、前記特定の全光線透過率、及び前記特定の引張弾性率を有し、一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下であるポリイミドフィルムとしたことにより、一方の面の密着性が向上しながら、もう一方の面の支持体からの剥離に起因する不良が抑制され、且つ、透明性の低下及び表面硬度の低下が抑制されたポリイミドフィルムを提供することができる。
この理由については、以下のように推定される。
本発明者らは、ガラス代替製品として用いる樹脂として、ポリイミドに着目した。ポリイミドは、その化学構造に由来し耐熱性が優れることが知られている。また、本発明者らは、ポリイミドにケイ素原子を導入することにより、ポリイミドフィルムとハードコート層等の樹脂含有層との密着性が向上することを知見した。これは、ポリイミドにケイ素原子を導入することにより、樹脂含有層を積層する際に、ポリイミドフィルムと樹脂含有層とのミキシングに適度に優れるためと推定される。
一方で、ポリイミドにケイ素原子を導入したポリイミドフィルムは、製造過程で支持体から剥離する際に剥離し難く、シワ、クラック、スジ等の不良が生じたり、フィルムが破断する場合があることが確認された。しかし、上述したように、樹脂フィルムの密着性と剥離性とは相反する特性であると考えられ、多層構造を有しないポリイミドフィルム単体で、密着性と剥離性の両立は困難である。
それに対して、本発明者らは、ケイ素原子を含むポリイミドを用いると、ポリイミドフィルム中のケイ素原子が偏在しやすく、作製されるポリイミドフィルムの表面のケイ素原子濃度が表裏面で互いに異なる場合があることを見出した。そして、そのような、表裏面でのケイ素原子濃度が互いに異なるポリイミドフィルムにおいて、更に、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下であり、室温での引張弾性率が1.8GPa以上であり、全光線透過率が85%以上であるポリイミドフィルムは、密着性と製造過程での支持体からの剥離性とを両立でき、更に、保護フィルムとして十分な表面硬度をを維持しつつ、透明樹脂フィルムとしての十分な透明性を有することを見出した。本発明のポリイミドフィルムは、相対的にケイ素原子濃度が高い面では、ハードコート層等の樹脂含有層との密着性が向上し、相対的にケイ素原子濃度の低い面では、製造過程で支持体から剥離される際の剥離性が向上したものである。本発明のポリイミドフィルムにおいて表裏面でのケイ素原子濃度が互いに異なるのは、表裏面で露出するケイ素原子の量が異なるように分子鎖が配置されているためと推定される。ポリイミド樹脂の分子鎖がそのように配置される理由は、明らかではないが、ポリイミド樹脂がケイ素原子を含むことにより、ポリイミドフィルムの製造過程において、支持体を剥離する前の乾燥工程を適宜調整することで、空気と接する面の方が、支持体と接する面に比べて、ケイ素原子が表面に露出するように分子鎖が配列されると考えられる。また、支持体を剥離する前の乾燥工程において、段階的に温度を上げて乾燥を行うことにより、空気と接する面に、よりケイ素原子が露出しやすくなると推定される。具体的には、初めに70℃未満の低温で乾燥させる。この段階では、フィルム中に溶媒が十分に存在するため、塗膜中のケイ素原子はフィルム中にほぼ均等に存在すると推定される。次に70℃以上の温度で加熱し、さらに乾燥が進むと、ケイ素原子を含む部位がフィルム表面に凝集しやすくなると推定される。また、後述する比較例2のように、ポリイミドフィルム表面のケイ素原子濃度が大きすぎると、樹脂含有層との密着性が不十分になる傾向がみられた。これは、樹脂含有層を形成する際に用いられる樹脂含有層形成用組成物中の溶剤によりポリイミドフィルムの表面が溶解しすぎてしまい、樹脂含有層形成用組成物を硬化させる際に、ポリイミドフィルム表面の溶解した部分が再度硬化する過程で、シワがよったり、クラックが発生したりすることで、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との界面に脆弱な部分を生じるため、密着性が低下すると推定される。それに対し、本発明の第1、2、及び3の実施形態のポリイミドフィルムは、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下であることにより、このような密着性の低下が抑制されると考えられる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、製造過程での支持体からの剥離性に優れるため、熱イミド化を行う場合は、イミド化前塗膜の状態で支持体から剥離することができる。そのため、本発明のポリイミドフィルムを製造する際には、イミド化前塗膜の状態で延伸処理を行うことができ、それにより、作製されるポリイミドフィルムの収縮を抑制し、弾性率を向上することができる。また、支持体上で熱イミド化を行った後に支持体の剥離を行う場合は、熱イミド化の際に、支持体上でポリイミドフィルムが収縮することにより、端部が支持体から浮き上がってカールが生じたり、クラックが発生する等の問題が生じ得る。それに対し本発明では、イミド化前塗膜の状態で支持体から剥離することができるため、カールやクラックの発生が抑制された高弾性のポリイミドフィルムとすることができる。
また、イミド化前塗膜の強度が不十分であると、支持体から剥離する際に剥離応力によって塗膜が伸びてしまい、スジが発生したり、伸びた塗膜がイミド化後に収縮することにより、シワが発生する等の不良となりやすい。本発明のポリイミドフィルムは、キャスト面のケイ素原子濃度が相対的に低く、また、引張弾性率が1.8GPa以上となるポリイミドフィルムを形成するためのイミド化前塗膜は十分な強度を有するため、スジやシワの発生を抑制することができる。
一方で、熱イミド化を行わず、化学イミド化によりイミド化を行う場合は、熱イミド化の際に行われるような高温加熱処理を行わなくても良いため、熱によるフィルムの収縮を抑制することができる。しかし、化学イミド化を行う場合においても、支持体から剥離されるポリイミド樹脂塗膜自体の強度が不十分であると、支持体から剥離する際に剥離応力によって塗膜が伸びてスジが発生する等の剥離不良が生じやすい。本発明のポリイミドフィルムは、キャスト面のケイ素原子濃度が相対的に低く、また、引張弾性率が1.8GPa以上となるポリイミドフィルムを形成するためのポリイミド樹脂塗膜は十分な強度を有するため、剥離不良を抑制することができる。
また、後述する比較例1、2のように、フィルムの引張弾性率が小さいと、表面硬度が不十分になることが確認された。それに対し、本発明のポリイミドフィルムは、室温での引張弾性率が1.8GPa以上であることにより、室温での表面硬度の低下が抑制され、室温においても保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。そのため、本発明のポリイミドフィルムは、表面の傷付を防止する耐擦傷性に優れ、また、その下部に位置する部材の破損を防ぐ耐衝撃性にも優れる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、単層構造とすることができるため、透明性を向上しやすい。本発明のポリイミドフィルムは、単層構造で上記課題を達成できるため、生産性も高い。
以下、本発明に係るポリイミドフィルムについて詳細に説明する。
本発明に係るポリイミドフィルムは、ケイ素原子を含むポリイミドを含有し、前記特定の特性を有するものである。本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していてもよい。
1.ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
本発明に係るポリイミドフィルムで用いられるポリイミドは、ケイ素原子を含むポリイミドを含有する。
本発明に係るポリイミドフィルムが含む全ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)は、特に限定はされないが、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度を10.0原子%以下としながら、ポリイミドフィルムの表裏面においてケイ素原子濃度を互いに異なるものとすることが容易な点、ポリイミドフィルムの密着性及び剥離性の両立の点、並びに、屈曲耐性及び表面硬度の両立の点から、0.2質量%以上4.1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.1質量%以下であることがより好ましい。
ここで、ポリイミドフィルムが含む全ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)は、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができる。また、ポリイミドフィルムが含む全ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)は、ポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
なお、本発明に用いられるポリイミドは、1種又は2種以上含有することができる。
ケイ素原子を含むポリイミドとしては、例えば、ケイ素原子を有するテトラカルボン酸残基及びケイ素原子を有するジアミン残基のいずれかを含むポリイミドが挙げられる。中でも、ポリイミドフィルムの表裏面においてケイ素原子濃度を互いに異なるものとすることが容易な点、ポリイミドフィルムの密着性及び剥離性の両立の点、並びに、屈曲耐性及び表面硬度の両立の点から、ケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドが好ましく、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドがより好ましい。
ここで、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
ケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドにおいて、ジアミン残基の総量100モル%中、ケイ素原子を有するジアミン残基の割合は、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度を10.0原子%以下としながら、ポリイミドフィルムの表裏面においてケイ素原子濃度を互いに異なるものとすることが容易な点、ポリイミドフィルムの密着性及び剥離性の両立の点、並びに、屈曲耐性及び表面硬度の両立の点から、2.5モル%以上50モル%以下であることが好ましい。
ケイ素原子を含むポリイミドとしては、中でも、下記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドが好ましい。
Figure 0006939319
(一般式(1−1)において、R1’は芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2’は、ジアミン残基である2価の基を表し、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。n’は繰り返し単位数を表す。)
前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドは、芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を有する柔軟な分子骨格を特定量導入した特定の構造を有することにより、ケイ素原子が表面に露出するように分子鎖が配列されやすいと考えられ、ポリイミドフィルム中のケイ素原子がより偏在しやすいことから、ポリイミドフィルムの密着性及び剥離性の両立性をより向上することができる。更に、前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドは、芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格を有することにより、引張弾性率が高く、表面硬度に優れる。
前記一般式(1−1)のR1’におけるテトラカルボン酸残基は、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基、又は、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。
芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1−1)のR2’における、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、主鎖にケイ素原子を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基としては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。
Figure 0006939319
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。kは0以上200以下の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基であることがより好ましく、前記炭素数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基であることがより好ましい。
11で表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
11で表される2価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であることが好ましく、更に、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましい。
前記一般式(A)におけるkは、0以上200以下の数であり、中でも、0以上20以下であることが好ましく、より好ましくは0又は1である。すなわち、前記一般式(1−1)のR2’における、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、中でも、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が好ましい。主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基としては、後述する一般式(1)のRにおける、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基と同様のものが挙げられる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の分子量は、分子の運動性を抑制しつつ屈曲耐性を付与する点、表面硬度の両立性の点から、3000以下であることが好ましく、2000以下であることが好ましく、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1−1)のR2’における、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1−1)のR2’における、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の割合は、後述するハードコート層のような樹脂含有層との積層体を製造する際の樹脂含有層との密着性を向上する点から、R2’の総量の10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、15モル%超過であることがより更に好ましく、20モル%以上であることが特に好ましい。一方、前記一般式(1−1)のR2’は、ポリイミドフィルムの製造過程における支持体からの剥離性を向上し、表面硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、R2’の総量の50モル%未満であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、更に40モル%以下であることが好ましい。
なお、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、R2’の総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1−1)のR2’に、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、R2’の総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環又は脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。また、引張弾性率を高くし、表面硬度を向上する点から、主鎖にケイ素原子を3個以上有するジアミン残基を含まない方が好ましい。
中でも、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、R2’の総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残余(100%−x%)である50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
ケイ素原子を含むポリイミドとしては、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドも好ましい。
Figure 0006939319
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rは、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
前記一般式(1)のRにおけるテトラカルボン酸残基としては、上述した前記一般式(1−1)のR1’におけるテトラカルボン酸残基と同様のものが挙げられる。
前記一般式(1)のRにおける、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。ポリイミドフィルムの主成分として芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有する柔軟な分子骨格を特定量導入することで、配向性が抑制され易く、ポリイミドフィルムの表裏面のケイ素原子濃度を互いに異なるものとすることが容易にでき、さらに、複屈折率が低減されたものとなりやすい。また、ポリイミドが上述したような分子骨格を有する場合は、前記特定の主鎖が短い柔軟な分子骨格を、剛直な分子骨格に特定量導入することで、ポリイミドフィルムの室温での弾性率の低下を抑制することができるため、室温においても保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。さらに、ポリイミドが上述したような分子骨格を有する場合は、屈曲耐性を向上することができ、フィルムの折り曲げを繰り返し行った後の復元性、すなわち動的屈曲耐性だけでなく、フィルムを長時間折り曲げた状態にした後の復元性、すなわち静的屈曲耐性も向上することができるため、フレキシブルディスプレイ用としてより好適に用いることができる。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=0である下記一般式(A−1)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=1である下記一般式(A−2)で表されるジアミンが挙げられる。
Figure 0006939319
(一般式(A−1)及び一般式(A−2)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
屈曲耐性及び表面硬度の点、及びポリイミドフィルム中のケイ素原子が偏在しやすい点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のRにおける、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミン残基、及び、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミン残基としては、前記一般式(1−1)のR2’で説明したものと同様のものが挙げられる。
前記一般式(1)のRにおいて、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることにより、ポリイミドフィルム中のケイ素原子が偏在しやすく、表裏面でのケイ素原子濃度を互いに異なるものとすることが容易になり、且つ、フレキシブルディスプレイ用途として十分な屈曲耐性を有し、保護フィルムとして十分な表面硬度を有することができる。前記一般式(1)のRは、後述するハードコート層のような樹脂含有層との積層体を製造する際の樹脂含有層との密着性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、Rの総量の10モル%超過であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、15モル%超過であることがより更に好ましく、更に20モル%以上であることが好ましい。一方、前記一般式(1)のRは、ポリイミドフィルムの製造過程における支持体からの剥離性を向上し、表面硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、Rの総量の50モル%未満であることが好ましく、45モル%以下であることがより好ましく、更に40モル%以下であることが好ましい。
なお、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1)のRに、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、Rの総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環又は脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。また、引張弾性率を高くし、表面硬度を向上する点から、主鎖にケイ素原子を3個以上有するジアミン残基を含まない方が好ましい。
中でも、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残余(100%−x%)である50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミドとしては、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から、中でも、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドであることが好ましい。本発明に用いられるポリイミドは、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基から選ばれる少なくとも一種を含むことにより、分子骨格が剛直となり配向性が高まり、表面硬度が向上するが、剛直な芳香族環骨格は吸収波長が長波長に伸びる傾向があり、可視光領域の透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
本発明に用いられるポリイミドとしては、中でも、フッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点、及び塗膜の支持体からの剥離性が向上する点から好ましく用いられる。また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドがフッ素原子を含む場合、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性はより向上する傾向がある。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましく、より更に0.1以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1.0以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、本発明に用いられるポリイミドは、表面硬度が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、ケイ素原子を有しないテトラカルボン酸残基及びジアミン残基の少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、ケイ素原子を有しないテトラカルボン酸残基及びジアミン残基の両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
本発明に用いられるポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、より更に70%以上であることが好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドのR1’、及び、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドのRは、中でも、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の点、並びにフィルム中のケイ素原子が偏在しやすい点から、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが好ましい。
前記R’及び前記Rにおいて、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
特に光透過性と表面硬度のバランスが良い点から、前記一般式(1−1)中のR1’及び前記一般式(1)中のRは、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることがより好ましい。
前記一般式(1−1)中のR1’及び前記一般式(1)中のRとしては、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、及び、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも一種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選択される少なくとも一種のような光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、及び3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基の少なくとも一種を用いることが、表面硬度と光透過性の向上の点から好ましい。
前記一般式(1−1)中のR2’における芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基、及び、前記一般式(1)中のRにおける芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基は、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の点、並びにフィルム中のケイ素原子が偏在しやすい点から好ましく、特に光透過性と表面硬度の両立の点から、更に、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。下記一般式(2)で表される2価の基としては、R及びRがパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
Figure 0006939319
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
また、前記一般式(1−1)中のR2’における主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基、及び、前記一般式(1)中のRにおける主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は、ケイ素原子を2個有するジアミン残基であることが、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の点、並びにフィルム中のケイ素原子が偏在しやすい点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン等が、入手容易性や光透過性と表面硬度の両立の観点から好ましい。
前記一般式(1−1)で表される構造におけるn’、及び、前記一般式(1)で表される構造におけるnは、それぞれ繰り返し単位数を表し、1以上である。
ポリイミドにおける繰り返し単位数は、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することが好ましく、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1−1)で表される構造及び前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。本発明に用いられるポリイミドは、前記一般式(1−1)で表される構造又は前記一般式(1)で表される構造が、本発明に用いられるポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記一般式(1−1)で表される構造及び前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドは、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度が150℃以上であることにより、耐熱性に優れ、更に、200℃以上であることが好ましい。また、ガラス転移温度が400℃以下であることにより、ベーク温度を低減することができ、更に、380℃以下であることが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましく、これにより、ポリイミドフィルムの室温での引張弾性率を向上することができ、表面硬度を向上することができる。また、本発明に用いられるポリイミドは、0℃超過150℃未満の温度領域に更にtanδ曲線のピークを有していても良いが、tanδ曲線のピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有することが、引張弾性率を向上しやすい点及び屈曲耐性の点から好ましい。前記tanδ曲線で、ピークの頂点が150℃未満に存在すると、ポリイミドの分子鎖が動きやすく、塑性変形しやすくなって、屈曲耐性が悪くなる恐れがあるのに対し、前記tanδ曲線のピークの頂点が150℃未満に存在しない場合、分子鎖の運動性が抑制され、塑性変形し難くなり、屈曲耐性を向上しやすい。
本発明に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、後述するポリイミドフィルムのガラス転移温度と同様にして測定することができる。
2.添加剤
本発明のポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
3.ポリイミドフィルムの特性
本発明のポリイミドフィルムは、前記特定の全光線透過率及び前記特定の引張弾性率を有するものであり、前記特定の黄色度を有することが好ましい。また、本発明のポリイミドフィルムは、更に後述する特性を有することが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面で、下記密着性試験方法に従って密着性試験を行った場合に、塗膜の剥がれが生じないことが、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性の点及びポリイミドフィルムに隣接して樹脂含有層を積層した積層体の表面硬度の点から好ましい。
[密着性試験方法]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40重量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に対して10重量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加して調製した密着性評価用樹脂組成物を、10cm×10cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片上に塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させることにより、10μm膜厚の硬化膜を形成する。当該硬化膜について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、塗膜の剥がれの有無を観察する。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上であることが好ましく、125°以上であることが更に好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が155°以上であることが好ましく、160°以上であることが更に好ましい。さらに、本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、25±2℃、50±2%相対湿度(RH)の環境下で動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が170°以上であることが好ましく、175°以上であることが更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。試験片を前記静的屈曲試験と同様の屈曲した状態、すなわち、屈曲した状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定(内径6mmで屈曲した状態で固定)した後、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下、又は25±2℃、50±2%相対湿度(RH)の環境下、1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
本発明のポリイミドフィルムは、耐熱性の点から、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、ベーク温度を低減することができる点から、380℃以下であることが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度−tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。
動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
本発明において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
また、本発明のポリイミドフィルムは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましい。主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有する場合にはこのように低い温度領域にtanδ曲線のピークを有するが、そのような、主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムに比べて、室温での引張弾性率の低下が抑制され、保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、tanδ曲線のピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有することが、引張弾性率を向上しやすい点及び屈曲耐性の点から好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムは、光学的歪みを低減する点から、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は0.020以下であることが好ましい。これにより、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
また好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1.0以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましく、より更に0.1以上0.8以下であることが好ましい。また、これらはポリイミドフィルムの両面で満たされることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。
4.ポリイミドフィルムの構成
本発明のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し破断しやすくなり、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
また、本発明のポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
5.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、上述した本発明のポリイミドフィルムを作製することができる方法であれば特に限定はされないが、例えば、第1の製造方法として、
ケイ素原子を含むポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布し、乾燥して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を前記支持体から剥離する工程(以下、剥離工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を加熱することにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記第1の製造方法においては、前記剥離工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程(以下、延伸工程という)を有していてもよい。中でも、前記剥離工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を延伸する工程を有することが、ポリイミドフィルムの収縮を抑制し、引張弾性率を向上する点から好ましい。
前記第1の製造方法では、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜の前記支持体に接していた面の剥離性が良好であるため、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を前記支持体から容易に剥離することができ、不良が生じ難い。ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程により形成されたポリイミド前駆体樹脂塗膜は、空気と接していた面に比べて、前記支持体と接していた面の方が、ケイ素原子濃度が小さくなるため、支持体を剥離しやすい。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
前記第1の製造方法において調製するポリイミド前駆体樹脂組成物は、ケイ素原子を含むポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。前記第1の製造方法において、ケイ素原子を含むポリイミド前駆体としては、イミド化反応により前述したケイ素原子を含むポリイミドとなるポリアミド酸が用いられる。
イミド化反応により前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドとなるポリアミド酸は、下記一般式(1−1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体である。
Figure 0006939319
(一般式(1−1’)において、R1’、R2’及びn’は、前記一般式(1−1)と同様である。)
前記一般式(1−1’)で表されるポリイミド前駆体は、前記一般式(1−1’)のR1’におけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1−1’)のR2’におけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ここで、前記一般式(1−1’)のR1’、R2’及びn’は、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1−1)のR1’、R2’及びn’と同様のものを用いることができる。
イミド化反応により前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドとなるポリアミド酸は、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体である。
Figure 0006939319
(一般式(1’)において、R、R及びnは、前記一般式(1)と同様である。)
前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のRにおけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のRにおけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ここで、前記一般式(1’)のR、R及びnは、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1)のR、R及びnと同様のものを用いることができる。
前記一般式(1−1’)で表されるポリイミド前駆体、及び、前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、数平均分子量、または重量平均分子量の少なくともいずれかが、フィルムとした際の強度の点から、10000以上であることが好ましく、更に20000以上であることが好ましい。一方、平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。例えば、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
前記ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。中でも、前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)をそのままポリイミド前駆体樹脂組成物の調製に用いる場合は、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、中でも、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンもしくはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液は、少なくとも2種のジアミンを組み合わせて調製されるが、少なくとも2種のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、少なくとも2種のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
たとえば、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、表面硬度を維持しつつ屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
前記ポリイミド前駆体溶液の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上200000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられ、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることができるが、中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の前記ポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物の固形分中に50重量%以上であることが好ましく、更に60重量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40重量%以上であることが好ましく、更に50重量%以上であることが好ましく、また99重量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する方法は特に限定はされないが、前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
(2)ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布した後は、前記塗膜中の溶剤を乾燥する。溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
前記乾燥の温度及び時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類等に応じて適宜調整されれば良い。前記乾燥の温度は、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは30℃以上120℃以下である。
また、前記乾燥は、段階的に温度を上げながら行うことが好ましく、少なくとも2段階で段階的に温度を上げながら行うことが好ましい。また、前記乾燥は、合計で10分以上行うことが好ましく、20分以上行うことがより好ましい。これにより、塗膜中のケイ素原子が偏在し易くなり、表裏面でのケイ素原子濃度の差が大きくなり易くなると推定される。前記乾燥の方法としては、具体的には例えば、40℃以上70℃未満、より好ましくは40℃以上65℃以下で5分〜60分間乾燥した後、70℃以上140℃以下、より好ましくは80℃以上140℃以下で且つ先の乾燥より30℃以上高い温度で5分〜60分間乾燥する方法を好ましく用いることができる。
2段階でも最初から高温で乾燥したり、1段階の高温で、短時間で乾燥すると、ケイ素原子が偏在し難くなる恐れがあり、また、フィルムの膜厚ムラが生じたり、気泡が生じる場合がある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
(3)剥離工程
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜は、乾燥した後、前記支持体から剥離される。
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を前記支持体から剥離する方法は、特に限定されず、一般的な剥離方法を用いることができる。本発明においては、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜の前記支持体と接する面が剥離性に優れるため、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を引っ張ることにより、前記支持体から容易に剥離することができる。
前記剥離工程における剥離条件は、特に限定はされないが、例えば、支持体とポリイミド前駆体樹脂塗膜の剥離強度を0.05N/25mm以上2.0N/25mm以下とし、剥離速度を100mm/min以上1,000mm/min以下とし、剥離角度を135°以上180°以下とすることができる。前記剥離は、支持体とポリイミド前駆体樹脂塗膜との開放端から始まり、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の長手方向に沿って分離が進行するように実質的な定速度で引きはがすことにより行うことができる。
また、前記第1の製造方法では、前記剥離工程において、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中の残留溶媒量は、支持体の剥離を容易にする点から、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。また、前記剥離工程における前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中の残留溶媒量は、ポリイミドフィルムの膜厚ムラを抑制し、面質を均一化させる点から、10重量%以上であってもよい。
なお、剥離工程時の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中の残留溶媒量は、剥離工程直後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜について、H−NMRを用いて、ポリイミド前駆体由来の水素原子と、溶媒由来の水素原子との積分強度比を求めることで測定することができる。
また、前記第1の製造方法では、前記剥離工程において、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜のイミド化率は、支持体の剥離を容易にする点から、1%以上50%以下であることが好ましく、5%以上30%以下であることがより好ましい。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
(4)イミド化工程
前記第1の製造方法においては、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を加熱することにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
また、前記第1の製造方法においては、延伸工程を有することが好ましく、前記延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
(5)延伸工程
前記第1の製造方法は、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。中でも、前記剥離工程後であって、前記イミド化工程前に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を延伸する延伸工程を含むことが、ポリイミドフィルムの収縮を抑制し、引張弾性率を向上する点から好ましい。また、ポリイミドフィルムの表面硬度の点からは、イミド化後塗膜を延伸する工程を更に含むことも好ましい。
前記第1の製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることがより好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸すると、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、最終的な延伸倍率が、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの収縮を抑制し、引張弾性率及び表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。中でも、前記剥離工程後であって前記イミド化工程前に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜に対して、二方向に延伸処理を行うことが、ポリイミドフィルムの収縮を抑制し、引張弾性率を向上する点から好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、第2の製造方法として、
ケイ素原子を含むポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、
前記ポリイミド樹脂塗膜から前記支持体を剥離する工程(以下、剥離工程という)と、
を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記第2の製造方法では、前記ポリイミド樹脂塗膜の前記支持体に接していた面の剥離性が良好であるため、前記ポリイミド樹脂塗膜を前記支持体から容易に剥離することができ、剥離による不良が生じ難い。ポリイミド樹脂塗膜形成工程により形成されたポリイミド樹脂塗膜は、空気と接していた面に比べて、前記支持体と接していた面の方が、ケイ素原子濃度が小さくなるため、支持体を剥離しやすい。
本発明で用いられるポリイミドが有機溶剤に良好に溶解する場合には、ポリイミド前駆体樹脂組成物ではなく、前記ポリイミドを有機溶剤に溶解させ、必要に応じて添加剤を含有させたポリイミド樹脂組成物も好適に用いることができる。
本発明で用いられるポリイミドが25℃で有機溶剤に5重量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合には、前記第2の製造方法を好適に用いることができる。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、ケイ素原子を含むポリイミドは、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様のポリイミドの中から、前述した溶剤溶解性を有するポリイミドを選択して用いることができる。イミド化する方法としては、ポリイミド前駆体の脱水閉環反応について、加熱脱水の代わりに、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化を用いることが好ましい。化学イミド化を行う場合は、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ―ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。ただし、これらアミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、前駆体からポリイミドへと反応させた反応液をそのままキャストして製膜するのではなく、再沈殿などにより精製し、ポリイミド以外の成分をそれぞれ、ポリイミド全重量の100ppm以下まで除去してから製膜することが好ましい。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において用いられる有機溶剤としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
また、前記第2の方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
また、前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、支持体や、塗布方法は、前記第1の製造方法のポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
また、前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程の乾燥は、少なくとも2段階で段階的に温度を上げながら行うことが好ましい。また、前記乾燥は、合計で10分以上行うことが好ましく、20分以上行うことがより好ましい。これにより、塗膜中のケイ素原子が偏在し易くなり、表裏面でのケイ素原子濃度の差が大きくなり易くなると推定される。前記乾燥の方法としては、前記第1の製造方法で好ましく用いられる乾燥の方法を、前記第2の製造方法においても好ましく用いることができる。また、前記第2の製造方法における溶剤の乾燥方法としては、前記第1の製造方法で用いられる方法と同様の方法を挙げることができる。
また、前記第2の製造方法における剥離工程は、前記第1の製造方法の剥離工程の剥離方法及び剥離条件と同様にすることができる。
前記第2の製造方法では、前記剥離工程において、前記ポリイミド樹脂塗膜中の残留溶媒量は、支持体の剥離を容易にする点から、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。また、前記剥離工程における前記ポリイミド樹脂塗膜中の残留溶媒量は、ポリイミドフィルムの膜厚ムラを抑制し、面質を均一化させる点から、10重量%以上であってもよい。
なお、剥離工程時の前記ポリイミド樹脂塗膜中の残留溶媒量は、剥離工程直後の前記ポリイミド樹脂塗膜について、H−NMRを用いて、ポリイミド由来の水素原子と、溶媒由来の水素原子との積分強度比を求めることで測定することができる。
また、前記第2の製造方法は、前記剥離工程の後、ポリイミド樹脂塗膜を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程は、前記第1の製造方法における延伸工程と同様にすることができる。
また、前記第2の製造方法は、前記ポリイミド樹脂塗膜中の残留溶媒を除去するための乾燥工程を更に有していてもよい。当該乾燥工程における乾燥の温度及び時間は、ポリイミド樹脂塗膜の膜厚や溶剤の種類等に応じて適宜調整されれば良く、特に限定はされないが、100℃以上400℃以下、1分以上180分以下とすることが好ましい。また、当該乾燥工程は、ポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制する点から、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。
6.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本発明のポリイミドフィルムは、屈曲耐性を向上し、保護フィルムとして十分な表面硬度を有し、光学的歪みを低減することができるものであるため、中でも、曲面に対応できるディスプレイ用表面材として好適に用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面が密着性に優れ、特に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層との密着性に優れる。そのため、本発明のポリイミドフィルムにおいては、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面を、樹脂含有層との密着面として好適に用いることができる。
樹脂含有層は、後述する積層体に用いられる樹脂含有層と同様とすることができるため、ここでの説明を省略する。
II.積層体
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層とが隣接して位置する積層体である。
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムのケイ素原子濃度が相対的に大きい面に、樹脂含有層を密着させることにより、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性を向上することができ、それにより、表面硬度もより向上することができる。また、本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムを用いたものであるため、ポリイミドフィルムの不良が抑制されたものであり、積層体の品質の低下も抑制されたものである。
また、本発明の積層体は、本発明のポリイミドフィルムを用いたものであるため、透明性の低下が抑制されたものであり、更に、光学的歪みを低減することができる。そのため、本発明の積層体をディスプレイ用表面材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。さらに、本発明の積層体は、本発明のポリイミドフィルムを用いたものであることから、屈曲耐性を向上することができ、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。
1.ポリイミドフィルム
本発明の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本発明のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.樹脂含有層
本発明の積層体に用いられる樹脂含有層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有し、更に必要に応じて重合開始剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
前記樹脂含有層としては、例えば、ディスプレイに用いられる機能層等が挙げられ、具体的には例えば、ハードコート層等が挙げられる。
(1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、樹脂含有層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、樹脂含有層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られた樹脂含有層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られた樹脂含有層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX―212)、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
(3)重合開始剤
本発明に用いられる樹脂含有層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(4)添加剤
本発明に用いられる樹脂含有層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
硬度を向上させるための粒子としては、シリカ粒子のような無機微粒子が好適に用いられるが、シリカ粒子を用いた場合、前記ポリイミドフィルムと、樹脂含有層との密着性が向上する点から好ましい。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記樹脂含有層とが隣接して位置するものであり、中でも、前記ポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が大きい面に、前記樹脂含有層が密着されてなるものであることが、ポリイミドフィルムと該樹脂含有層との密着性の点から好ましい。
また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記樹脂含有層の他に、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層が積層されたものであってもよいし、前記樹脂含有層が2層以上の多層構造を有するものであってもよい。また、本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が小さい面側にも、前記樹脂含有層や前記他の層が積層されていてもよい。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各樹脂含有層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面に樹脂含有層を形成しても良い。
4.積層体の特性
本発明の積層体は、樹脂含有層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。なお、両面に樹脂含有層を有する積層体の場合は、少なくとも一方の面において、前記鉛筆硬度であれることが好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがより更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の積層体のヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.020以下であることが好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
本発明の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
6.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本発明のポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が大きい面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有する樹脂含有層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記樹脂含有層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記樹脂含有層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記樹脂含有層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
ポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が大きい面に、前記樹脂含有層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が大きい面に、前記樹脂含有層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記樹脂含有層形成用組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記樹脂含有層形成用組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの相対的にケイ素原子濃度が大きい面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
III.ディスプレイ用表面材
本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は本発明の積層体である。
本発明のディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、屈曲耐性を向上することができ、保護フィルムとして十分な表面硬度を有するため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。また、本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、透明フィルムとして十分な透明性を有し、光学的歪みを低減することができるため、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。
本発明のディスプレイ用表面材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明のディスプレイ用表面材が前記本発明の積層体である場合、ディスプレイの表面に配置した後の最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、樹脂含有層側の表面であってもよいが、樹脂含有層としてハードコート層を用いる場合は、ハードコート層側の面が表面となるように本発明のディスプレイ用表面材を配置することが好ましい。また、本発明のディスプレイ用表面材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明のディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用表面材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
[評価方法]
以下において、ポリイミドフィルムが有する表面のうち、乾燥工程において支持体と接していた表面をキャスト面と称し、当該キャスト面とは反対側の表面を雰囲気面と称する場合がある。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミドの重量平均分子量は、ポリイミドを0.2重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求めた。
<ポリイミド溶液の粘度>
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドのケイ素原子含有割合(質量%)>
ポリイミドのケイ素原子含有割合(質量%)は、仕込みの分子量から算出した。
例えば、実施例8のポリイミドのように、酸二無水物成分として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)1モルに対して、ジアミン成分として2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)0.9モルと1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)0.1モルを用いた場合、以下のように算出することができる。
ポリイミド繰り返し単位1モル分の分子量は、
6FDA由来:(C)12.01×19+(F)19.00×6+(O)16.00×4+(H)1.01×6=412.25
TFMB由来:{(C)12.01×14+(F)19.00×6+(N)14.01×2+(H)1.01×6}×0.9=284.60
AprTMOS由来:{(C)12.01×10+(O)16.00×1+(N)14.01×2+(Si)28.09×2+(H)1.01×24}×0.1=24.45
から、412.25+284.60+24.45=721.30と算出される。
ポリイミド繰り返し単位1モル中のケイ素原子含有割合(質量%)は、
(28.09×2×0.1)/721.30×100=0.8(質量%)と求められる。
なお、比較例2の両末端アミン変性ジフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3、側鎖フェニルタイプ、数平均分子量4400)については、−(CH−を介してアミノ基がシリコーンに結合していると仮定して、数平均分子量4400からジフェニルシロキサンの繰り返し単位数が平均19.7であると算出し、1分子中に平均21.7個のケイ素原子が含まれているものとして算出した。
<全光線透過率>
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
また、例えば、厚み100μmでの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
<YI値(黄色度)>
YI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、JIS Z8720に規定する分光測色方法により測定した透過率をもとに算出した。
また、例えば、厚み100μmでのYI値は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
<ヘイズ値>
JIS K−7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<複屈折率>
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
<ガラス転移温度>
動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
<引張弾性率>
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
<静的屈曲試験>
以下、静的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を長辺の半分の位置で折り曲げ、試験片1の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した。試験片1が固定された金属片2を、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a、3bで挟み、試験片1を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2上で試験片1がない部分にダミーの試験片4a、4bを挟み込み、ガラス板3a、3bが平行になるようにテープで固定した。
このようにして屈曲した状態で固定した試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と試験片固定用のテープを外し、試験片にかかる力を解放した。その後、試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後に試験片の内角を測定した。
なお、当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<動的屈曲試験>
20mm×100mmの大きさに切り出した試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定した。試験片を前記静的屈曲試験と同様の折り畳まれた状態、すなわち、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定した後、60±2℃で93±2%相対湿度(RH)、又は、25℃±2℃で50±10%相対湿度(RH)の環境下で1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返した。
その後、試験片を取り外してから30分後に、得られた試験片の一方の端部を固定し、試験片の内角を測定した。
なお、当該動的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<鉛筆硬度>
測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルムの雰囲気面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
<剥離性評価>
ポリイミドフィルムを目視観察し、下記評価基準により製造時における支持体からの剥離性を評価した。
A:支持体からの剥離性良好により、フィルムにシワ、クラック、スジ、破断が発生しなかった。
B:支持体からの剥離に起因して、フィルムにわずかなスジ、シワが発生したが、実用可能レベルであった。
C:剥離不良。フィルムに顕著なスジ、シワが発生し、部分的にフィルムが破断するレベルであった。
なお、スジとは、剥離応力によってフィルムが不均一に伸びることにより、短辺方向(TD方向)に発生する模様を指す。シワとは、支持体から剥離する際にフィルムが伸長し、その後収縮することにより、長手方向に発生するシワを指す。
<原子濃度測定>
ポリイミドフィルムの雰囲気面及びキャスト面の各原子濃度を、下記測定条件で、X線光電子分光法(XPS)により測定した。n=2の平均値を表2に示す。なお、JIS Z8401:1999に準拠して小数点以下第1位に丸めた値と併せて、括弧内に測定された小数点以下第2位までの値を示す。
・使用装置: Theta-Probe (Thermo Scientific製XPS装置)
・入射X線: Monochromated Al Kα線(単色化X線、hν=1486.6eV)
・X線照射領域(測定面積):400μmφ
・X線出力:100W(15kV・6.7mA)
・光電子取り込み角度:53°(但し、試料法線を0°とする)
・帯電中和条件:電子中和銃(+6V、0.05mA)、低加速Arイオン照射
・測定ピーク:Si2p、C1s、N1s、O1s、F1s
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて原子数比を算出した。
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド302.0g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)3.735g(15mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)2.22g(5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで4時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)27.2g(85mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)42.0g(94.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は85:15であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度は17770cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は117000であった。
(合成例2〜8)
前記合成例1の手順で、表1に記載の原料、固形分濃度になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液2〜8とした。
(比較合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド345.3g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)49.7g(200mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)88.4g(199mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体1が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液1(固形分40重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体溶液1(固形分40重量%)の25℃における粘度は3900cpsであり、GPCによって測定した比較ポリイミド前駆体1の重量平均分子量は42000であった。
(比較合成例2)
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、両末端アミン変性ジメチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))12.25g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を3432g加え、続いて6FDA222.12g(0.5モル)加えて、室温で30分撹拌した。その後、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を152.99g(0.478モル)投入して溶解したことを確認した後、室温で3時間撹拌した後、80℃に昇温し、4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、比較ポリイミド前駆体溶液2(固形分10重量%)を得た。比較ポリイミド前駆体溶液2(固形分10重量%)の25℃における粘度は89cpsであり、GPCによって測定した比較ポリイミド前駆体2の重量平均分子量は66900であった。
(合成例9(化学イミド化))
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(367.1g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(2.33g、9.4mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(2.08g、4.7mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(57.07g、178.2mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(80.83g、182.0mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1’が溶解したポリイミド前駆体溶液1’(固形分28重量%)を合成した。
上記溶液を室温に下げ、脱水されたジメチルアセトアミド(202.2g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(59.05g、0.747mmol)と無水酢酸(76.22g、0.747mol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液の一部(692.2g)を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(471.1g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(1046g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール(2443kg)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド1(104.7g)を得た。GPCによって測定したポリイミド1の重量平均分子量は180000であった。
ポリイミド1を酢酸ブチルとPGMEAの混合溶媒(8:2、体積比)に溶かし、固形分25質量%のポリイミド溶液1を作製した。ポリイミド溶液1(固形分25重量%)の25℃における粘度は58500cpsであった。
以下において、表中の略称はそれぞれ以下のとおりである。
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
AprTMOS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
Figure 0006939319
[ポリイミドフィルムの作製]
(実施例1〜8、比較例1〜2)
ポリイミド前駆体溶液1〜8及び比較ポリイミド前駆体溶液1〜2を用い、下記(1)〜(4)の手順を行うことで、表2に示す厚みのポリイミドフィルムをそれぞれ作製した。
(1)各ポリイミド前駆体溶液をスチール製の支持体上に塗布し、循環オーブンにて、40℃で60分間乾燥した後、さらに100℃で30分間乾燥することにより塗膜を形成した。
(2)塗膜を支持体から剥離した(剥離強度0.1N/25mm、剥離速度200mm/min、剥離角度180°)。
(3)剥離後、塗膜の外周を枠状の金属製冶具に固定した。
(4)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、350℃で1時間保持後、室温まで冷却し、枠状の金属製冶具から取り外し、各ポリイミドフィルムを得た。
(実施例9)
合成例9で得られたポリイミド溶液1を用い、下記(1)〜(4)の手順を行うことで、表2に示す厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(1)ポリイミド溶液1をスチール製の支持体上に塗布し、循環オーブンにて、40℃で60分間乾燥した後、さらに100℃で30分間乾燥することにより塗膜を形成した。
(2)塗膜を支持体から剥離した(剥離強度0.1N/25mm、剥離速度200mm/min、剥離角度180°)。
(3)剥離後、塗膜の外周を枠状の金属製冶具に固定した。
(4)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、250℃まで昇温し、250℃で1時間保持後、室温まで冷却し、枠状の金属製冶具から取り外し、ポリイミドフィルムを得た。
得られた各ポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表2に示す。
[積層体の作製]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40重量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に対して10重量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、樹脂含有層形成用樹脂組成物を調製した。
前記で得られたポリイミドフィルムを10cm×10cmに切り出し、雰囲気面に前記樹脂含有層形成用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜である樹脂含有層を形成し、積層体を作製した。
<密着性評価>
得られた各積層体の樹脂含有層の密着性について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、樹脂含有層の剥がれの有無を観察し、下記評価基準により評価した。評価結果を表2に示す。
A:テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後も樹脂含有層の剥がれが生じなかった。
B:テープによる剥離操作を1回実施した後は樹脂含有層の剥がれが生じないが、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施するまでに、樹脂含有層の剥がれが生じた。
C:テープによる剥離操作を1回実施した後に、樹脂含有層がカットの縁に沿って全面的に剥がれた。
<鉛筆硬度>
得られた各積層体の樹脂含有層側表面について、ポリイミドフィルムと同様の方法により、鉛筆硬度の評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 0006939319
表2より、本発明のポリイミドフィルムに相当する実施例1〜9のポリイミドフィルムは、雰囲気面とキャスト面のいずれにもケイ素原子を含むが、雰囲気面の方がケイ素原子濃度が大きく、且つ雰囲気面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下であり、引張弾性率が1.8GPa以上であることにより、雰囲気面の樹脂含有層に対する密着性が向上し、キャスト面の支持体からの剥離性が良好であり、支持体からの剥離に起因する不良が抑制されていた。また、実施例1〜9のポリイミドフィルムは、透明性の低下及び表面硬度の低下が抑制され、屈曲耐性が向上したものであることが示された。また、実施例1〜9では、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性が向上した積層体を得ることができた。
また、実施例1〜5の積層体は、実施例6〜9の積層体に比べ、鉛筆硬度が高かった。これは、実施例1〜5の積層体の方が、実施例6〜9の積層体に比べ、ポリイミドフィルム表面のケイ素原子濃度が適度に高く、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性に優れていたことに起因していると推定される。
比較例1のポリイミドフィルムは、支持体からの剥離に起因する不良が生じた。これは、ポリイミド中のケイ素原子含有量が多く、フィルムの表裏面でのSi濃度が実質的に同一となり、キャスト面のSi濃度が大きすぎ、また、支持体を剥離する際に塗膜の強度が不十分であったためと推定される。また、比較例1のポリイミドフィルムは、引張弾性率が1.8GPa未満であり、静的屈曲試験の結果が0度となり、フィルムに静的屈曲試験の折り癖のまま全く戻らない程、屈曲耐性が劣り、鉛筆硬度が大きく劣っていた。
比較例2のポリイミドフィルムは、支持体からの剥離に起因する不良が生じた。これは、支持体を剥離する際に塗膜の強度が不十分であったためと推定される。比較例2のポリイミドフィルムは、引張弾性率が1.8GPa未満であり、静的屈曲耐性に劣り、鉛筆硬度が大きく劣っていた。また、比較例2の積層体は、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との密着性に劣っていた。比較例2では、雰囲気面のケイ素原子濃度が10原子%超過であったため、樹脂含有層形成用組成物中の溶剤によりポリイミドフィルムの表面が溶解しすぎたことにより、ポリイミドフィルムと樹脂含有層との界面に脆弱な部分を生じたためと考えられる。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
    JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
    JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
    15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
    一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、ケイ素原子濃度が相対的に大きい面のケイ素原子濃度が10.0原子%以下である、ポリイミドフィルム。
    Figure 0006939319

    (一般式(1−1)において、R1’は芳香族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2’は、ジアミン残基である2価の基を表し、R2’の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である。n’は繰り返し単位数を表す。)
    Figure 0006939319

    (一般式(2)において、R 及びR はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
  2. 下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
    JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
    JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、30以下であり、
    15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
    一方の面ともう一方の面のいずれにもケイ素原子を含むが、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度とが異なり、少なくとも一方の面のケイ素原子濃度が1.0原子%以上である、ポリイミドフィルム。
    Figure 0006939319

    (一般式(1)において、Rは芳香族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rは、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の10モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、50モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であり、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である。nは繰り返し単位数を表す。)
    Figure 0006939319

    (一般式(2)において、R 及びR はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
  3. 前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の割合が、R 2’ の総量の20モル%以上50モル%以下であり、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度の差の絶対値が0.8原子%以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  4. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の割合が、R の総量の20モル%以上50モル%以下であり、一方の面のケイ素原子濃度と、もう一方の面のケイ素原子濃度の差の絶対値が0.8原子%以上である、請求項2に記載のポリイミドフィルム。
  5. 前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  6. 前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1−1)中のR1’、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基である、請求項1又は3に記載のポリイミドフィルム。
  7. 前記一般式(1−1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1−1)中のR2’における、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である、請求項1、3及び6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  8. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基である、請求項2又は4に記載のポリイミドフィルム。
  9. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRにおける、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である、請求項2、4及び8のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  10. ケイ素原子濃度が相対的に大きい面を、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層との密着面に用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  11. 前記請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する樹脂含有層とが隣接して位置する積層体。
  12. 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項11に記載の積層体。
  13. 前記請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項11又は12に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
  14. フレキシブルディスプレイ用である、請求項13に記載のディスプレイ用表面材。
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