JP2019073013A - ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】耐候性に優れ、屈曲耐性の低下を抑制した樹脂フィルムを提供する。【解決手段】ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、前記紫外線吸収剤が、一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在しており、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
ポリイミド樹脂は、耐熱性、寸法安定性、絶縁特性といった性能に優れることから、半導体素子の中のチップコーティング膜や、フレキシブルプリント配線板の基材等、電子部品の絶縁材料として盛んに利用されており、近年においては、ガラス代替製品として、透明性を向上したポリイミド樹脂を用いた樹脂製品の研究も行われている。
しかし、ポリイミド樹脂は一般に紫外線領域に吸収を有しているため、屋外で使用した場合に変色しやすいという問題があり、耐候性の向上が求められている。
特許文献1には、光照射試験後にも高い透明性を有する樹脂フィルムとして、例えば、高い透明性を有するポリイミド系高分子を使用するとともに、紫外線吸収剤を樹脂フィルム中に含ませることが記載されている。
国際公開第2017/014279号
しかしながら、従来のポリイミドフィルムでは耐候性が不十分であり、ポリイミドフィルムの耐候性は、更なる向上が求められている。
また、本発明者らは、紫外線吸収剤を含有する従来のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を含有しないポリイミドフィルムに比べ、折り曲げられた場合に折り癖がつきやすいことを知見した。
一方で、画面が折り畳めるモバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、長時間折り曲げられた状態が続いた場合や、繰り返し折り曲げられた場合でも、平坦に戻した時に元通りになることが求められる。そのため、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材にも、長時間折り曲げられた状態が続いた後の復元性(以下、静的屈曲耐性という場合がある)、及び折り曲げを繰り返し行った後の復元性(以下、動的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下を抑制した樹脂フィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記樹脂フィルムの製造方法、前記樹脂フィルムを有する積層体、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を有するタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、前記紫外線吸収剤が、一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在しており、
波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、一方の面側に、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を少なくとも1層有することが、耐候性及び屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミド層(a)の合計厚みが、前記ポリイミド層(b)の合計厚みと同じ、又は前記ポリイミド層(b)の合計厚みよりも厚いことが、屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミド層(b)の合計厚みが0.5μm以上であることが、耐候性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量が、0.8質量%以上60質量%以下であることが、耐候性の点、光透過性の点及び屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一であると、密着性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一である場合は、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが、各々下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、屈曲耐性及び密着性の点から好ましい。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)中のRにおける前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であることが、屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なると、屈曲耐性及び表面硬度を向上しやすい点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なる場合は、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、屈曲耐性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なる場合は、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が、下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、表面硬度の点から好ましい。
(一般式(2)において、Rはピロメリット酸二無水物残基、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種の4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表す。)
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(2)中のRが、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含むことが、表面硬度の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有することが、光透過性の点及びヘイズ値を低減する点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、一方の面のヤング率と、もう一方の面のヤング率が、ともに2.4GPa以上であることが、表面硬度の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記紫外線吸収剤の融点が100℃以上であることが、耐候性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記紫外線吸収剤が、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有することが、光透過性の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記紫外線吸収剤が、下記一般式(I)で表される化合物であることが、光透過性の点から好ましい。
(一般式(I)において、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、R30は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Aはフェニレン基又は2価のポリシロキサン基を表し、R31は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29の少なくとも1つが、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表す。前記フェニル基及び前記フェニレン基は、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基で置換されていても良い。)
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を形成する工程と、
ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を、前記ポリイミド層(a)と隣接して位置するように形成する工程とを有し、
前記ポリイミド層(b)を形成する工程が、
ポリイミドと、紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含む紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を調製する工程と、
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を塗布して紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を有する、
一方の面側に前記ポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に前記ポリイミド層(b)を少なくとも1層有し、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法である。
本発明の積層体は、前記本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層とを有する積層体である。
本発明の積層体においては、前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物であることが、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から好ましい。
本発明のディスプレイ用表面材は、前記本発明のポリイミドフィルム、又は、前記本発明の積層体である。
本発明のディスプレイ用表面材は、フレキシブルディスプレイ用とすることができる。
また、本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材を提供する。
また、本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置を提供する。
また、本発明は、前記本発明のポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本発明によれば、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下を抑制した樹脂フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂フィルムの製造方法、前記樹脂フィルムを有する積層体、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を有するタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
本発明に係るポリイミドフィルムの一例を示す概略断面図である。 本発明に係るポリイミドフィルムの別の一例を示す概略断面図である。 静的屈曲試験の方法を説明するための図である。 本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図4に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図4及び図5に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
I.ポリイミドフィルム
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、前記紫外線吸収剤が、一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在しており、
波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である。
このような本発明のポリイミドフィルムについて図を参照して説明する。
図1は、本発明のポリイミドフィルムの一例を示す概略断面図である。図1に示す本発明のポリイミドフィルム10は、一方の面S1には紫外線吸収剤が存在せず、もう一方の面S2側に紫外線吸収剤が偏在している。
本発明のポリイミドフィルムは、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である。これにより、透明性が良好になり、透明樹脂材料として好適に用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムの波長380nmにおける透過率は、耐候性を向上する点から、更に15%以下であることが好ましく、11%以下であることがより好ましく、7%以下であることがより更に好ましい。本発明のポリイミドフィルムにおいて、波長380nmにおける透過率は、例えば、ポリイミドフィルムが含有する紫外線吸収剤の種類及び含有量、並びに紫外線吸収剤を含有するポリイミド層の厚み等により調整することができる。具体的には、例えば、紫外線吸収剤を含有するポリイミド層の紫外線吸収剤濃度を上げたり、紫外線吸収剤を含有するポリイミド層の厚みを厚くすることにより、波長380nmにおける透過率を下げることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムの波長450nmにおける透過率は、透明性を向上する点から、更に86%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましい。本発明のポリイミドフィルムにおいて、波長450nmにおける透過率は、例えば、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドの種類等により調整することができる。具体的には、例えば、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドとして、後述する光透過性の点から好ましいものを用いることにより、波長450nmにおける透過率を上げることができる。
前記透過率は、本発明のポリイミドフィルムが厚み20μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
なお、本発明において、波長380nmにおける透過率、及び波長450nmにおける透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光製(株)、型番:V−7100)を用いて測定することができる。
本発明のポリイミドフィルムが、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下を抑制する理由については、以下のように推定される。
従来の紫外線吸収剤を含有するポリイミドフィルムでは、耐候性を向上するために紫外線吸収剤の含有量を増やすと、屈曲耐性が劣るため、屈曲耐性を維持するためには、耐候性を十分に向上することが困難であった。従来の紫外線吸収剤を含有するポリイミドフィルムが、紫外線吸収剤を含有しないポリイミドフィルムに比べて屈曲耐性が劣るのは、紫外線吸収剤が可塑剤として働き、ポリイミドフィルム全体が塑性変形しやすくなるためと推定される。
それに対し、本発明のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤が一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在していることにより、一方の面側に、紫外線吸収剤を含有しない又は紫外線吸収剤の含有量が十分少ない領域を有し、もう一方の面側において、紫外線吸収剤の含有量が相対的に多くなると考えられる。そして、紫外線吸収剤を含有しない又は紫外線吸収剤の含有量が十分少ない領域が、塑性変形を抑制して、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上するため、従来の紫外線吸収剤を含有するポリイミドフィルムに比べて屈曲耐性の低下を抑制すると考えられる。また、本発明のポリイミドフィルムは、フィルム全体に均一に紫外線吸収剤を含有していなくても、紫外線吸収剤が偏在している側の面で、紫外線領域の光を効率良く吸収することができるため、耐候性に優れると考えられる。
以下、本発明のポリイミドフィルムについて詳細に説明する。
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、前記紫外線吸収剤が、一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在しており、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上であり、本発明の効果が損なわれない限り、他の構成を有していても良い。
1.ポリイミドフィルムの構成
本発明のポリイミドフィルムは、一方の面には紫外線吸収剤が存在せず、もう一方の面側に紫外線吸収剤が偏在している。ポリイミドフィルムの一方の面に紫外線吸収剤が存在しないことは、ポリイミドフィルムの一方の面を切り出した試験片から、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC−MS)を用いて分析することができる。具体的には、ポリイミドフィルムを10mm×10mmの大きさに切り出した切片を、紫外線吸収剤が存在するか否かを測定する面が残るように削り、試験片を作製する。作製した試験片をGC−MSで分析し、紫外線吸収剤が検出限界(1ppm)未満の場合に、ポリイミドフィルムの当該面には紫外線吸収剤が存在しないとする。前記試験片の厚さは、例えば10μm程度とすることができる。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、中でも、耐候性の点及び屈曲耐性の点から、フィルム全体に含まれる紫外線吸収剤の合計含有量を100質量%としたときに、紫外線吸収剤が偏在している前記もう一方の面からフィルムの全体厚みの50%の厚みとなる面までに含まれる紫外線吸収剤の合計含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。更に屈曲耐性を向上する点から、紫外線吸収剤が偏在している前記もう一方の面から、フィルムの全体厚みの40%の厚みとなる面までに含まれる紫外線吸収剤の合計含有量が、フィルム全体に含まれる紫外線吸収剤の合計含有量を100質量%としたときに、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。より更に、紫外線吸収剤が偏在している前記もう一方の面から、フィルムの全体厚みの25%の厚みとなる面までに含まれる紫外線吸収剤の合計含有量が、フィルム全体に含まれる紫外線吸収剤の合計含有量を100質量%としたときに、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより更に好ましい。
なお、フィルムの所定の厚みまでの領域に含有される紫外線吸収剤の量は、フィルムを所定の厚みで切断したサンプルを用いて、GC−MSにより測定することができる。GC−MSによるサンプル中の紫外線吸収剤の定量は、例えば、以下の方法により行う。
ポリイミドフィルムを所定の厚みで切断したサンプルを、5質量%濃度となる量で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に添加し、サンプルをDMF中に溶解させて、サンプル溶液を調製する。当該サンプル溶液について、GC−MS装置(例えば、Agilent社、6890/5973 GC/MS)を用いて、カラム:InertCapWax 内径250μm×長さ30m×膜厚0.25μm(ジーエルサイエンス製)、サンプル打ち込み量:0.2μL、イオン化法:EIの条件で、GC−MS測定を行う。当該GC−MS測定は3回行い、測定結果は3回の平均値とする。また、サンプルが含有する紫外線吸収剤と同じ構造を有する紫外線吸収剤について、検量線を作成し、当該検量線を基準として、サンプル中の紫外線吸収剤の含有量を求めることができる。なお、サンプルが含有する紫外線吸収剤の構造は、パージ&トラップ装置(加熱脱着装置)が連結したGC−MSにより特定することができる。
また、屈曲耐性の点から、フィルム全体に含まれる紫外線吸収剤の合計含有量を100質量%としたときに、紫外線吸収剤が存在しない前記一方の面から、フィルムの全体厚みの50%の厚みとなる面までに含まれる紫外線吸収剤の合計含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがより更に好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいて、紫外線吸収剤は、一方の面に存在せず、もう一方の面側に偏在していればよく、特に限定はされないが、耐候性の点、及び屈曲耐性の点から、一方の面側に、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を少なくとも1層有することが好ましい。
なお、本発明においては、異なる種類の成分を含有する層を、互いに異なる層とする。本発明において、前記ポリイミド層(a)を2層以上有する場合とは、例えば、含有するポリイミドの種類が互いに異なり、紫外線吸収剤を含有しない2層以上のポリイミド層が積層した構成を一方の面側に有する場合が挙げられる。また、前記ポリイミド層(b)を2層以上有するとは、例えば、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、含有するポリイミド及び紫外線吸収剤の少なくともいずれかの種類が互いに異なる2層以上のポリイミド層が積層した構成を、もう一方の面側に有する場合が挙げられる。本発明のポリイミドフィルムにおいては、中でも、一方の面側に、前記ポリイミド層(a)を1層のみ有し、当該ポリイミド層(a)と隣接して、もう一方の面側に、前記ポリイミド層(b)を1層のみ有することが、薄膜化の点、及び光学特性の点から好ましい。
図1に示す本発明のポリイミドフィルム10は、一方の面S1側に、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)1を有し、もう一方の面S2側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)2を有する。
図2に示す本発明のポリイミドフィルム10’は、一方の面S1側に、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)1a、1bを当該面S1側からこの順で有し、もう一方の面S2側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)2a、2bを当該面S2側からこの順で有する。
なお、本発明のポリイミドフィルムにおいて、各層間の界面は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)等の電子顕微鏡を用いて観察される厚さ方向の断面から求めることができる。典型的には、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物又は紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用いて形成される層は、紫外線吸収剤を含有するため、前記ポリイミド層(b)となり、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド前駆体樹脂組成物又はポリイミド樹脂組成物を用いて形成されるポリイミド層は、紫外線吸収剤を含有しないため、前記ポリイミド層(a)となる。紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)と、紫外線吸収剤を含有するポリイミド層(b)との界面付近において、紫外線吸収剤の含有量に勾配があり界面が不明瞭な場合、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)との境界は、ポリイミドフィルムの厚さ方向に対して垂直な方向の平面のうち、紫外線吸収剤を含有する領域と含有しない領域とを分けることができ、且つ紫外線吸収剤を含有する領域と接する平面とすることができる。
本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合、前記ポリイミド層(a)の合計厚みが、前記ポリイミド層(b)の合計厚みと同じ、又は前記ポリイミド層(b)の合計厚みよりも厚いことが、耐候性の点、及び屈曲耐性の点から好ましい。中でも、屈曲耐性を向上する点からは、ポリイミドフィルムの全体厚みに対する前記ポリイミド層(b)の合計厚みが、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがより更に好ましく、20%以下であることが特に好ましい。一方、耐候性を向上する点からは、ポリイミドフィルムの全体厚みに対する前記ポリイミド層(b)の合計厚みが、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがより更に好ましく、5%以上であることが特に好ましい。
なお、各ポリイミド層及びポリイミドフィルムの膜厚は、ポリイミドフィルムを厚み方向に切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。本発明では、ポリイミドフィルムを5mm×5mmに切り出した試験片を、樹脂により包理固化して固定した後、固定されたサンプルの厚さ方向に、ミクロトームを用いて50nm以上150nm以下程度の間隔で切断し、各断面において、各ポリイミド層又はポリイミドフィルムについて、任意の3点の厚みを測定し、数平均して求めた値を膜厚とする。
本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合、前記ポリイミド層(a)の合計厚みは、屈曲耐性の点から、10μm以上120μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、前記ポリイミド層(b)の合計厚みは、耐候性の点から、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがより更に好ましく、一方、屈曲耐性の点から、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがより更に好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
本発明のポリイミドフィルム厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、フィルムの機械的強度の点及び耐候性の点から、20μm以上であることが好ましく、更に30μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより更に好ましい。
フィルム全体の厚みが薄すぎると、強度が低下する恐れや、紫外線吸収剤が偏在し難くなる恐れがあり、フィルム全体の厚みが厚すぎると、屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
2.ポリイミドフィルムの成分
本発明のポリイミドフィルムは、少なくともポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、紫外線吸収剤とは異なるその他の添加剤やポリイミド樹脂以外のその他の樹脂等の任意添加成分を含有していても良い。
(1)ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
なお、本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミドを1種又は2種以上混合して含有することができる。本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有する場合は、各ポリイミド層において、ポリイミドを1種又は2種以上混合して含有することができる。
テトラカルボン酸成分の具体例としては、テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられ、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ジアミン成分の具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
1,4−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
なお、これらのジアミンは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から、前記ポリイミドとしては、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドを含有することが好ましい。ポリイミドに芳香族環を含むと配向性が高まり、剛性が向上するため、表面硬度が向上するが、芳香族環の吸収波長によって透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からの点から光透過性が向上する。
中でも、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から好ましく用いられる。
本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合は、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から、前記ポリイミド層(a)及び前記ポリイミド層(b)の少なくともいずれかが、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミドを含有することが好ましく、前記ポリイミド層(a)及び前記ポリイミド層(b)の両方が、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミドを含有することがより好ましい。
また、前記ポリイミドは、表面硬度が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
ここで、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
また、前記ポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
中でも、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
更に、光透過性を向上し、ヘイズ値を低減しやすい点から、本発明に用いられるポリイミドは、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有することが好ましい。本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合は、光透過性を向上し、ヘイズ値を低減しやすい点から、少なくとも紫外線吸収剤を含有する前記ポリイミド層(b)が、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有することが好ましい。
ポリイミドにパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むと、ポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が向上し、フィルム化した際のヘイズ値が低減しやすく、光学フィルムとしての特性を向上することができる。ポリイミドにパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むことで、嵩高く疎(低密度)な構造になりやすく、ポリイミド樹脂の分子鎖間の距離が広がり易くなり、ポリイミド樹脂の分子鎖間の相互作用が低下し易いことから、紫外線吸収剤がポリイミド樹脂の分子鎖間に生じる隙間に存在し易くなることで、ポリイミドと紫外線吸収剤との相溶性が向上するため、フィルム化した際のヘイズ値が低減すると推察される。
前記パーフルオロアルキル基としては、特に限定はされないが、炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基が好ましい。
また、フィルムの光透過性をより向上する点から、本発明のポリイミドフィルムは、前記ポリイミド層(a)及び前記ポリイミド層(b)の両方が、前記パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有していても良い。
中でも、本発明に用いられるポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むテトラカルボン酸残基及びパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、フッ素原子を含むポリイミドを含有しなくても良いが、フッ素原子を含むポリイミドを含有する場合、フッ素原子の含有割合は、光透過性の点及びヘイズ値を低減する点から、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
本発明において、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムが、フッ素原子を含むポリイミドを含有する場合、本発明に係るポリイミドフィルムが含有する全ポリイミド中のフッ素原子の含有割合(質量%)は、ポリイミドフィルムの光透過性を向上し、且つ、ヘイズ値を低減しやすい点から、5質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより更に好ましい。
本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合は、ヘイズ値を低減しやすい点から、前記ポリイミド層(b)が含有する全ポリイミド中のフッ素原子の含有割合(質量%)は、5質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより更に好ましい。
ここで、ポリイミドフィルムが含む全ポリイミド中のフッ素原子の含有割合(質量%)は、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができ、また、サンプルをアルカリ水溶液又は超臨界メタノールにより分解して得られるポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
また、前記ポリイミドとしては、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドが、光透過性及び耐熱性の点から好ましく用いられる。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、より更に70%以上であることが好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドを含有する場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドは、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドを用いる場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
本発明において、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られたポリイミドの分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することで、ポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
また、前記ポリイミドとしては、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上する点から、ケイ素原子を含むポリイミドを好ましく用いることができる。
ケイ素原子を含むポリイミドとしては、例えば、ケイ素原子を有するテトラカルボン酸残基又はケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドが挙げられ、中でも、屈曲耐性の点から、ケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドが好ましい。
ケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドにおいて、ジアミン残基の総量100モル%中、ケイ素原子を有するジアミン残基の割合は、ポリイミドフィルムの表面硬度と屈曲耐性を両立する点から、好ましくは2.5モル%以上50モル%以下であり、より好ましくは3モル%以上45モル%以下であり、より更に好ましくは5モル%以上40モル%以下である。
ケイ素原子を有するジアミン残基としては、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が好ましい。主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、主鎖にケイ素原子を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基としては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。kは0以上200以下の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基であることがより好ましく、前記炭素数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基であることがより好ましい。
11で表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6以上12以下のアリーレン基であることが好ましく、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
11で表される2価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であることが好ましく、更に、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましく、当該アルキレン基は、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。
前記一般式(A)中のkは、0以上200以下の数であり、好ましくは0以上100以下の数であり、より好ましくは0以上10以下の数であり、更に好ましく0以上6以下の数であり、更に好ましくは0以上4以下の数であり、より更に好ましくは0以上2以下の数であり、特に好ましくは0又は1である。
前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基としては、中でも、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が好ましい。主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=0である下記一般式(A−1)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=1である下記一般式(A−2)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A−1)及び一般式(A−2)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
分子の運動性を抑制しつつ屈曲耐性を付与する点、表面硬度の両立性の点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の分子量は、3000以下であることが好ましく、更に2000以下であることが好ましく、更に1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
また、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基としては、ケイ素原子を2個有するジアミン残基が、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン残基及び1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種が、入手容易性や光透過性と表面硬度の両立の観点から好ましい。
なお、これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ポリイミド中の各繰り返し単位の含有割合、各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができ、また、上記と同様にして得られるポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
また、本発明に係るポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有する場合は、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一であると、当該隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)との密着性に優れる点から好ましい。
本発明に係るポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有し、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一である場合、当該ポリイミドとしては、中でも、屈曲耐性を向上する点、層間密着性の点、及び光透過性の点から、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが好ましい。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
前記一般式(1)のRは、上述したテトラカルボン酸成分の中から、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基、又は、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基を適宜選択することができ、特に限定はされないが、中でも、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが、屈曲耐性の点から好ましい。
前記Rにおいて、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
特に光透過性と表面硬度の点から、前記Rは、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることがより好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の割合は、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下であり、屈曲耐性を向上する点、及び、層間密着性を向上する点から、Rの総量の5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であってもよい。一方、前記一般式(1)のRは、硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、Rの総量の45モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることが好ましい。
なお、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1)のRに、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、Rの総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環又は脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。また、引張弾性率を高くし、表面硬度を向上する点から、主鎖にケイ素原子を3個以上有するジアミン残基を含まない方が好ましい。
中でも、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下、望ましくは3モル%以上45モル%以下、5モル%以上40モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残余(100%−x%)である50モル%以上97.5モル%以下、望ましくは55モル%以上97モル%以下、60モル%以上95モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
前記Rにおける、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基については、前記ケイ素原子を含むポリイミドにおいて説明したものと同様であり、中でも、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が好ましい。
前記Rにおける、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のRにおける、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミン残基は、ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
ケイ素原子を有さず脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)のRにおける、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基としては、中でも、1,4−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(3)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の点、並びにフィルム中のケイ素原子が偏在しやすい点から好ましく、特に光透過性と表面硬度の両立の点から、更に、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン残基、及び、下記一般式(3)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましく、下記一般式(3)で表される2価の基であることがより好ましい。下記一般式(3)で表される2価の基としては、R及びRがパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、中でも、炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基又はパーフルオロエチル基がより好ましい。また、下記一般式(3)中のR及びRにおけるアルキル基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
(一般式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
前記一般式(1)で表される構造におけるnは、繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、所望のヤング率及びガラス転移温度等を示すように、構造に応じて適宜選択することが好ましく、特に限定されないが、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるRは各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるRは各々同一であっても異なっていても良い。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、フィルムとした際の強度及び屈曲耐性の点から、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、30000以上であることがより更に好ましく、50000以上であることが特に好ましい。上限は特に限定はされないが、合成が容易であり、入手し易い点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
なお、ポリイミドの数平均分子量は、後述するポリイミド前駆体の数平均分子量と同様にして測定することができる。
また、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、フィルムとした際の強度及び屈曲耐性の点から、重量平均分子量が、20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがより更に好ましく、80000以上であることが特に好ましい。上限は特に限定はされないが、合成が容易であり、入手し易い点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミドの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミドを0.2重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
本発明のポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有し、互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一である場合は、本発明のポリイミドフィルムが含有する全てのポリイミドのうち、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドの含有割合は、光透過性と屈曲耐性との点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明に係るポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有する場合は、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なると、当該ポリイミド層(a)及び当該ポリイミド層(b)が各々含有するポリイミドを適宜選択して各ポリイミド層の性質を調整することにより、屈曲耐性及び表面硬度を向上しやすい点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有し、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なる場合は、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、層間密着性の点、屈曲耐性の点、光透過性の点から好ましい。この場合、当該ポリイミド層(a)が含有する全てのポリイミドのうち、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドの含有割合は、光透過性と屈曲耐性との点及び層間密着性の点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムが、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有し、一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なる場合は、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が、下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、表面硬度の点から好ましい。この場合、前記ポリイミド層(b)が含有する全てのポリイミドのうち、下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドの含有割合が、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより更に好ましい。
(一般式(2)において、Rはピロメリット酸二無水物残基、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種の4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表す。)
前記一般式(2)のRにおけるジアミン残基は、特に限定はされないが、屈曲耐性の点、光透過性の点、及び表面硬度の点から、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含むことが好ましく、ケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含むことがより好ましい。前記一般式(2)のRにおける芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基としては、例えば、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドに用いられる、ケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基として説明したものと同様のものを、好ましく用いることができる。
前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドにおいて、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基の割合は、屈曲耐性の点、光透過性の点、及び表面硬度の点から、Rの総量の50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがより更に好ましい。
前記一般式(2)で表される構造において、n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数n’は、所望のヤング率及びガラス転移温度等を示すように、構造に応じて適宜選択することが好ましく、特に限定されないが、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるRは各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるRは各々同一であっても異なっていても良い。
また、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドは、フィルムとした際の強度及び屈曲耐性の点から、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、30000以上であることがより更に好ましく、50000以上であることが特に好ましい。上限は特に限定はされないが、合成が容易であり、入手し易い点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
また、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドは、フィルムとした際の強度及び屈曲耐性の点から、重量平均分子量が、20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、40000以上であることがより更に好ましく、80000以上であることが特に好ましい。上限は特に限定はされないが、合成が容易であり、入手し易い点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
また、本発明において、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層が含有するポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。本発明において、前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミド層が含有するポリイミドは、前記一般式(2)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。前記一般式(1)で表される構造又は前記一般式(2)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドは、耐熱性と適度なベーク温度を両立する点から、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度が150℃以上であることにより、耐熱性に優れ、更に、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより更に好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。また、ガラス転移温度が400℃以下であることにより、ベーク温度を低減することができ、更に、380℃以下であることが好ましい。また、本発明に用いられるポリイミドは、150℃以上400℃以下の温度領域に1つのtanδ曲線のピークを有することが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましく、これにより、ポリイミドフィルムの室温での引張弾性率を向上することができ、表面硬度を向上することができる。また、本発明に用いられるポリイミドは、0℃超過150℃未満の温度領域に更にtanδ曲線のピークを有していても良い。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度−tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。
動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
本発明において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
本発明のポリイミドフィルムの全固形分中のポリイミドの含有割合は、屈曲耐性及び表面硬度の点から、90質量%以上であることが好ましく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させ、耐候性を向上する点から、99.9質量%以下であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを有する場合、前記ポリイミド層(a)の全固形分中のポリイミドの含有割合は、屈曲耐性の点から、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがより更に好ましい。また、前記ポリイミド層(b)の全固形分中のポリイミドの含有割合は、屈曲耐性の点から、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがより更に好ましく、更に65質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させ、耐候性を向上する点から、99.2質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがより更に好ましく、更に91質量%以下であることが好ましく、より更に87質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
(2)紫外線吸収剤
本発明に用いられる紫外線吸収剤については、本発明のポリイミドフィルムの波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上となるように、種類及び含有量を適宜設定することができ、特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、波長250nm以上380nm以下に極大吸収波長を有し、且つ下記条件(i)、(ii)のいずれか一方を満たしさえすれば、一般的に紫外線吸収剤として括られるものに限らず用いることができる。
条件(i) 波長380nmの吸光度が0.005以上であり、波長380nm超過780nm以下の可視光領域における吸光度が、波長380nmの吸光度よりも小さく、波長450nmの吸光度が0.1以下
条件(ii) 波長380nmにおけるモル吸光係数が50以上500000以下であり、且つ波長450nmにおけるモル吸光係数が、波長380nmにおけるモル吸光係数以下で、10以上500000以下
なお、紫外線吸収剤の吸光度及びモル吸光係数は、紫外線吸収剤を溶媒に溶解させて、紫外可視分光法(UV‐vis)を用いて求めることができる。吸光度を求める際に紫外線吸収剤を溶解する溶媒としては、波長380nm以上780nm以下に吸光度が検出されない溶媒の中から、紫外線吸収剤を溶解可能なものを適宜選択して用いることができる。具体的には、吸収波長が紫外線領域でより短波長側にある溶媒、例えば、アセトニトリル等を好ましく用いることができ、更にジメチルアセトアミド(DMAc)等を適宜用いてもよい。また、吸光度の測定に用いる溶液の濃度は、通常、紫外線吸収剤1mgに対して溶媒100mlになるように調整を行う。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノクリエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられ、市販品を用いても良い。中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、透過率と紫外線吸収性、黄色度の低減の点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより更に好ましい。
なお、本発明において紫外線吸収剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、Tinuvin PS、Tinuvin 109、Tinuvin 1130、Tinuvin 171、Tinuvin 326、Tinuvin 328、Tinuvin 384−2、Tinuvin 99−2、Tinuvin 900、Tinuvin 928、Tinuvin Carboprotect(以上、BASF社製);Sumisorb 200、Sumisorb 250、Sumisorb 300、Sumisorb 340、Sumisorb 350(以上、住化ケムテックス(株)製);LA−29、LA−31、LA−32、LA−36(以上、(株)ADEKA社製);JF−77、JF−79、JF−80、JF−83、JF−832、JAST−500(以上、城北化学工業(株)製);KEMISORB 71、KEMISORB 73、KEMISORB 74、KEMISORB 79、KEMISORB 279(以上、ケミプロ化成(株)製);SEESORB 701、SEESORB 703、SEESORB 704、SEESORB 706、SEESORB 707、SEESORB 709(以上、シプロ化成(株)製)等を挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、Chimassorb8a−3himassorb 90(BASF社製);アデカスタブ1413(ADEKA社製);SEESORB 100、SEESORB 101、SEESORB 101S、SEESORB 102、SEESORB 103、SEESORB 105、SEESORB 106、SEESORB 107、SEESORB 151(以上、シプロ化成(株)製);Sumisorb 130(住化ケムテックス(株)製);KEMISORB 10、KEMISORB 11、KEMISORB 11S、KEMISORB 12(以上、ケミプロ化成(株)製)等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、Tinuvin 460、Tinuvin 479、Tinuvin 477、Tinuvin 400、Tinuvin 405、Tinuvin 1577ED(以上、BASF社製);アデカスタブLA−46、アデカスタブLA−F70(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。
前述した紫外線吸収剤は、通常、波長250nm以上380nm以下に極大吸収波長を有し、且つ波長380nmの吸光度が0.005以上であり、波長380nm超過780nm以下の可視光領域における吸光度が、波長380nmの吸光度よりも小さく、波長450nmの吸光度が0.1以下である。前記紫外線吸収剤の波長380nmの吸光度は、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがより更に好ましい。また、前記紫外線吸収剤の波長450nmの吸光度は、0.01以下であることがより好ましく、0.005以下であることがより更に好ましい。
また、前記紫外線吸収剤としては、製造上溶剤を乾燥させる点から、融点が75℃以上のものが好ましく、100℃以上のものがより好ましい。一方で、溶解性の点から前記紫外線吸収剤の融点は、200℃以下であることが好ましい。
また、前記紫外線吸収剤としては、ポリイミドとの相溶性が良好で、特にケイ素原子を含むポリイミドとの相溶性が良好であることにより、本発明のポリイミドフィルムの光透過性を向上しやすい点から、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有するものが好ましい。紫外線吸収剤とポリイミドとの相溶性がより良好となり、紫外線吸収剤を含有させたポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制しやすく、光透過性を向上しやすい点から、前記飽和脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルキレン基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。また、前記飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、6以上であることがより好ましく、7以上であることがより更に好ましく、8以上であることが特に好ましい。
炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤としては、中でも、ポリイミドとの相溶性が良好であり、ポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制しやすく、光透過性を向上しやすい点から、下記一般式(I)で表される化合物を好ましく用いることができる。
(一般式(I)において、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、R30は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Aはフェニレン基又は2価のポリシロキサン基を表し、R31は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29の少なくとも1つが、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表す。前記フェニル基及び前記フェニレン基は、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基で置換されていても良い。)
前記一般式(I)中のR21、R22、R23及びR24におけるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。
前記一般式(I)中のR21、R22、R23及びR24における炭素数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても良いが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
前記一般式(I)中のR21、R22、R23及びR24は、中でも、ポリイミドとの相溶性の点から、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましく、R21、R23及びR24が水素原子であり、R22が水素原子又はハロゲン原子であることがより好ましく、全てが水素原子であることがより更に好ましい。
前記一般式(I)中のR25、R26、R27、R28及びR29におけるアルキル基、R30におけるアルキレン基及びR31におけるアルキル基は、ポリイミドとの相溶性が良好となり、ポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制しやすく、光透過性を向上しやすい点から、炭素数が6以上であることがより好ましく、7以上であることがより更に好ましく、8以上であることが特に好ましい。また、前記一般式(I)中のR25、R26、R27、R28及びR29におけるアルキル基、R30におけるアルキレン基及びR31におけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、ポリイミドとの相溶性の点から、分岐状であることが好ましい。
前記一般式(I)中のR25、R26、R27、R28及びR29における1価のポリシロキサン基とは、ポリシロキサンの主鎖の末端の水素原子1個を除いた残りの基であり、Aにおける2価のポリシロキサン基とは、ポリシロキサンの主鎖の両末端から各々水素原子1個ずつを除いた残りの基である。前記1価又は2価のポリシロキサン基は、中でもポリイミドとの相溶性の点から、1価又は2価のジメチルポリシロキサン基が好ましい。また、前記ポリシロキサン基におけるシロキサン単位の繰り返し数は、1以上200以下であることが好ましく、3以上200以下であることがより好ましい。
前記一般式(I)中のR25は、中でも、水素原子又は水酸基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
前記一般式(I)中のR26、R27、R28及びR29は、少なくとも1つが、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、残りが水素原子を表すことが好ましい。中でも、R28が、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、R26、R27及びR29がそれぞれ独立に、水素原子、或いは、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表すことが好ましく、中でも、R26は水素原子、或いは、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、R27及びR29は水素原子を表すことがより好ましい。更に、R28がフェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R26が水素原子、又はフェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R27及びR29が水素原子を表すことがより更に好ましい。
前記フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基は、中でも、ポリイミドとの相溶性の点から、アルキル基中の1個又は2個の水素原子がフェニル基若しくは1価のポリシロキサン基に置換されたもの、又は置換基を有しないものであることが好ましく、アルキル基中の1個の水素原子がフェニル基若しくは1価のポリシロキサン基に置換されたもの、又は置換基を有しないものであることがより好ましく、置換基を有しないものであることが特に好ましい。
なお、前記一般式(I)中のR25、R26、R27、R28及びR29におけるフェニル基、及びAにおけるフェニレン基は、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基で置換されていても良い。
前記一般式(I)で表される化合物としては、中でも、ポリイミドとの相溶性が良好であり、ポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制しやすく、光透過性を向上しやすい点から、下記一般式(I−1)で表される化合物が好ましい。
(一般式(I−1)において、Xは水素原子又は塩素原子を表し、Yは水素原子、又は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Yは炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。)
前記一般式(I−1)中のY及びYにおけるアルキル基は、中でも、ポリイミドとの相溶性が良好となり、ポリイミドフィルムの光学特性の低下を抑制しやすく、光透過性を向上しやすい点から、炭素数が6以上であることがより好ましく、7以上であることがより更に好ましく、8以上であることが特に好ましい。また、前記一般式(I−1)中のY及びYにおけるアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、ポリイミドとの相溶性の点から、分岐状であることが好ましい。
同様の点から、前記一般式(I−1)中のXは、水素原子であることが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、紫外線吸収剤を片面側に偏在して含有していることにより、紫外線吸収剤の含有量が少なくても優れた耐候性を発揮することができ、例えば、ポリイミドフィルムの全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を、10質量%以下とすることができ、より好ましい態様においては8質量%以下とすることができ、より更に好ましい態様においては5質量%未満とすることができる。ポリイミドフィルム中の紫外線吸収剤の含有量が少ないことにより、透明性及び光学特性を向上することができ、屈曲耐性の低下を抑制することができる。また、ポリイミドフィルムの全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合は、耐候性の点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがより更に好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムが前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)を有する場合、前記ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量は、耐候性を向上する点から、0.8質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、更に9質量%以上であることが好ましく、より更に13質量%以上であることが好ましく、一方、屈曲耐性の低下を抑制する点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがより更に好ましい。更にポリイミドフィルムの透明性及び光学特性を向上する点からは、前記ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量は、35質量%以下であることが好ましい。
ポリイミドフィルムの全体厚みに対する前記ポリイミド層(b)の合計厚みが、10%以下の場合は、当該ポリイミド層(b)中の紫外線吸収剤の含有量を多くしても屈曲耐性の低下を抑制しやすいため、例えば、当該ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量が40質量%以上であってもよいし、50質量%以上であってもよい。
なお、前記ポリイミド層(b)に含まれる前記紫外線吸収剤の含有量は、前記ポリイミド層(b)の製造時には、仕込み量から求めることができ、ポリイミドフィルムからは、SEM等の電子顕微鏡を用いた断面観察による前記ポリイミド層(b)の膜厚確認と、前述したGC-MSによる紫外線吸収剤の定量分析により求めることができる。
(3)任意添加成分
本発明のポリイミドフィルムは、前記ポリイミド及び前記紫外線吸収剤の他に、必要に応じて、前記紫外線吸収剤とは異なるその他の添加剤や、前記ポリイミド以外のその他の樹脂等の任意添加成分を含有していても良い。
前記その他の添加剤としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
前記その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン等が挙げられる。
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド以外のその他の樹脂を含有しないことが好ましいが、本発明のポリイミドフィルムがポリイミド以外のその他の樹脂を含有する場合は、当該その他の樹脂の含有量は、ポリイミドフィルムの全固形分に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
4.ポリイミドフィルムの特性
本発明のポリイミドフィルムは、前記特定の透過率を有するものであり、更に後述する特性を有することが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましい。このように透過率が高いと、透明性が良好になり、ガラス代替材料として好適に用いることができる。本発明のポリイミドフィルムの前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。当該全光線透過率は、ポリイミドフィルムの厚みが20μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。単層のポリイミドフィルムにおいては、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率を、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができる。
本発明のポリイミドフィルムは、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、30以下であることが好ましい。このように黄色度が低いことから、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、中でも、20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることがより更に好ましく、更に8以下であることが好ましく、更に6以下であることが好ましい。当該黄色度(YI値)は、ポリイミドフィルムの厚みが厚み20μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
また、本発明のポリイミドフィルムは、後述する耐候性試験前において、前記黄色度(YI値)が、前記上限値以下であることが好ましい。耐候性試験前のポリイミドフィルムとは、典型的には作製直後のものをいうが、作製直後から、ポリイミドフィルムのYI値の変化が±0.2の範囲内となるように保管されていたものであれば良い。
なお、単層のポリイミドフィルムにおいては、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、QUV耐候性試験機を用い、1W/m/nmに設定した出力で、UVB313nmランプを使用して、紫外線吸収剤が偏在している側の面を、24時間照射することにより行う耐候性試験前後のYI値の差(△YI)が、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがより更に好ましい。前記YI値の差(△YI)は、下記式
△YI=(耐候性試験後のYI値)−(耐候性試験前のYI値)
により算出される。前記式において、耐候性試験前後のYI値は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた測定値とし、△YIの値は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第1位に丸めた値とする。
また、本発明のポリイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.10以下であることが好ましく、更に0.07以下であることが好ましく、更に0.05以下であることが好ましく、更に0.04以下であることが好ましく、更に0.03以下であることが好ましい。ここで、前記黄色度(YI値)は、耐候性試験前のポリイミドフィルムの黄色度(YI値)である。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
本発明のポリイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましく、更に2以下であることが好ましい。当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが20μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7136に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、一方の面のヤング率と、もう一方の面のヤング率が、ともに2.4GPa以上であることが、表面硬度の点から好ましく、ともに3.0GPa以上であることがより好ましい。
中でも、少なくとも一方の面の表面硬度をより向上する点から、少なくとも一方の面のヤング率が、4.0GPa以上であることが好ましく、5.0GPa以上であることがより好ましく、6.0GPa以上であることがより更に好ましい。
なお、本発明においてヤング率は、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定する。具体的には、測定装置は(株)フィッシャー・インストルメンツ社製、PICODENTOR HM500を用い、測定圧子としてビッカース圧子を用いる。ポリイミドフィルム表面の任意の点を8ヶ所測定して数平均して求めた値をヤング率とする。なお、測定条件は、最大押込み深さ:1000nm、加重時間:20秒、クリープ時間:5秒とする。
また、本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、1.8GPa以上であることが好ましい。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いと、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持しやすいため、表面材として好適に用いることができる。前記引張弾性率は、中でも、2.0GPa以上であることが好ましく、2.2GPa以上であることが更に好ましく、2.4GPa以上であることが更に好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、5.2GPa以下であることが好ましい。屈曲耐性を向上させる点から、前記引張弾性率は4.0GPa以下であっても良く、3.5GPa以下であっても良い。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mm(引張方向40mm×引張方向と直交する方向15mm)の試験片をポリイミドフィルムから切り出して、当該試験片を、JIS K7127に準拠し、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定する。試験片をフィルムから切り出す際には、フィルムの膜厚が均一な部分を切り出すようにすることが好ましく、例えばフィルムの中央部付近から切り出すことが好ましい。フィルムの膜厚が均一である目安としては、例えば、切り出したフィルムの四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、5点の平均膜厚と各点の膜厚の差が、平均膜厚の6%以内であることが挙げられる。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、前記紫外線吸収剤が偏在している側の面の鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)を、ポリイミドフィルムの前記紫外線吸収剤が偏在している側の面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上であることが好ましく、125°以上であることが更に好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、前記紫外線吸収剤が偏在している側の面が内側になるように、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が140°以上であることが好ましく、150°以上であることがより好ましく、155°以上であることがより更に好ましく、160°以上であることが更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。試験片を前記静的屈曲試験と同様の屈曲した状態、すなわち、前記紫外線吸収剤が偏在している側の面が内側になるように屈曲した状態で、試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定(内径6mmで屈曲した状態で固定)した後、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
本発明のポリイミドフィルムは、耐熱性と適度なベーク温度を両立する点から、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましく、中でも耐熱性を向上する点から、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがより更に好ましく、一方、ベーク温度を低減することができる点から、380℃以下であることがより好ましい。また、本発明のポリイミドフィルムは、150℃以上400℃以下の温度領域に1つのtanδ曲線のピークを有することが好ましい。
なお、ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、前述したポリイミドのガラス転移温度と同様の方法により求めることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましい。主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有する場合にはこのように低い温度領域にtanδ曲線のピークを有するが、そのような、主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムに比べて、室温での引張弾性率の低下が抑制され、保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、光学的歪みを低減する点から、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040以下であることが好ましく、0.020以下であることがより好ましい。これにより、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。また、波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040超過のフィルムをディスプレイ表面に設置して、偏光サングラスをかけてディスプレイを見た場合、虹ムラが発生し、視認性が低下する場合がある。一方、ディスプレイ表面に設置したフィルムの前記厚み方向の複屈折率が0.040以下であれば、偏光サングラスをかけてディスプレイを見た時の虹ムラの発生が抑制される。さらに、ディスプレイ表面に設置したフィルムの前記厚み方向の複屈折率が0.020以下であれば、ディスプレイを斜めから見たときの色再現性が向上する。
なお、本発明のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光をフィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
また好ましい一形態としては、紫外線吸収剤が存在しないフィルム表面において、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましく、より更に0.1以上0.8以下であることが好ましい。
紫外線吸収剤が偏在している側のフィルム表面においては、光透過性の点及びヘイズ値を低減する点から、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上1以下であることが好ましく、より更に0.1以上0.9以下であることが好ましい。
また、紫外線吸収剤が存在しないフィルム表面において、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
紫外線吸収剤が偏在している側のフィルム表面においては、光透過性の点及びヘイズ値を低減する点から、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.01以上20以下であることが好ましく、更に0.1以上15以下であることが好ましい。
また、紫外線吸収剤が存在しないフィルム表面において、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上150以下であることが好ましく、更に3以上120以下であることが好ましい。
紫外線吸収剤が偏在している側のフィルム表面においては、光透過性の点及びヘイズ値を低減する点から、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定されるフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上150以下であることが好ましく、更に3以上120以下であることが好ましい。
5.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本発明のポリイミドフィルムは、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであるため、中でも、屋外でも使用可能な曲面に対応できるディスプレイ用の基材や表面材等の部材として好適に用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムを表面材として用いる場合は、前記紫外線吸収剤が偏在している側の面を外側として用いることが、耐候性を発揮しやすい点から好ましい。本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いる場合は、前記紫外線吸収剤が偏在している側の面を視認側として用いることが、耐候性を発揮しやすい点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
II.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、上述した本発明のポリイミドフィルムを得ることができる製造方法であれば良く、特に限定はされないが、例えば、
ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を形成する工程(以下、ポリイミド層(a)形成工程という)と、
ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を、前記ポリイミド層(a)と隣接して位置するように形成する工程(以下、ポリイミド層(b)形成工程という)と、を有する、
一方の面側に前記ポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に前記ポリイミド層(b)を少なくとも1層有し、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法を挙げることができる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体のイミド化は、熱イミド化又は化学イミド化のいずれで行ってもよい。熱イミド化によりイミド化を行う方法は、ポリイミドフィルムの複屈折率を低減する点から好ましく、化学イミド化によりイミド化を行う方法は、熱イミド化のような高温加熱処理がなく、比較的低温で行われるため、ポリイミドの酸化が抑制される結果、ポリイミドフィルムの黄色度を低減する点から好ましい。
前記ポリイミド層(b)の形成は、熱による紫外線吸収剤の分解を抑制してポリイミドフィルムの耐候性を向上する点から、予め合成したポリイミドと、紫外線吸収剤とを含有する紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用いる方法が好ましい。ポリイミドを予め合成する方法としては、ポリイミド前駆体を化学イミド化によりイミド化する方法を好適に用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムの好ましい製造方法としては、例えば、
ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を形成する工程と、
ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を、前記ポリイミド層(a)と隣接して位置するように形成する工程とを有し、
前記ポリイミド層(b)を形成する工程が、
ポリイミドと、紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含む紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を調製する工程と、
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を塗布して紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を有する、
一方の面側に前記ポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に前記ポリイミド層(b)を少なくとも1層有し、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法を挙げることができる。
なお、本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、各ポリイミド層の形成は1層ずつ行っても良いし、ポリイミド前駆体を含有する塗膜を積層した多層塗膜を形成した後、当該多層塗膜中のポリイミド前駆体のイミド化を行うことにより、各ポリイミド層の形成を並行して行っても良い。
例えば、本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、前記ポリイミド層(a)を形成した後に、前記ポリイミド層(a)の一面に前記ポリイミド層(b)を形成しても良いし、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを並行して形成しても良い。前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを並行して形成する場合は、前記ポリイミド層(a)を形成する際のイミド化と、前記ポリイミド層(b)を形成する際のイミド化とを、同じ方法で行うことが好ましい。前記ポリイミド層(a)及び前記ポリイミド層(b)の形成において熱イミド化を行う場合に、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを並行して形成する方法としては、例えば、前記ポリイミド層(a)用のイミド化前塗膜の一面に、前記ポリイミド層(b)用のイミド化前塗膜を形成した後、全体を加熱をすることにより各イミド化前塗膜中のポリイミド前駆体をイミド化して、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを形成する方法が挙げられる。
また、例えば、多層押出法等を用いて、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを同時に形成することもできる。例えば、前記ポリイミド層(a)及び前記ポリイミド層(b)の形成において熱イミド化を行う場合は、前記ポリイミド層(a)用のイミド化前塗膜と、前記ポリイミド層(b)用のイミド化前塗膜をとを多層押出法等により同時に形成した後、全体を加熱をすることにより各イミド化前塗膜中のポリイミド前駆体をイミド化して、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを同時に形成することができる。また、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド樹脂塗膜と、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜とを、多層押出法等により同時に形成することにより、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とを同時に形成することもできる。
1.ポリイミド層(a)形成工程
<方法a−1>
前記ポリイミド層(a)を形成する方法としては、例えば、方法a−1として、
ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を有する方法が挙げられる。
前記方法a−1は、ポリイミド層(a)の複屈折率を低減できることにより、ポリイミドフィルム全体としても複屈折率を低減できる点、及びポリイミド層(a)中の残留溶剤量を低減しやすいことにより、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上しやすい点から好ましい。
以下、前記方法a−1における各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて任意添加成分を含有していてもよい。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。ポリイミド前駆体に用いられるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分は特に限定はされず、例えば、上述したポリイミドのテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸二無水物、及びジアミン残基となるジアミンをそれぞれ挙げることができる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、フィルムとした際の強度の点から、2000以上であることが好ましく、更に4000以上であることが好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると、高粘度となり作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
また、ポリイミド前駆体は、フィルムとした際の強度の点から、重量平均分子量が、2000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
前記ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンもしくはこれらの組み合わせを用いることがより好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液を、2種以上のジアミンを組み合わせて調製する場合、2種以上のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、2種以上のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
ケイ素原子を有するジアミンを用いる場合は、たとえば、ケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、ケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、ケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。このような方法でポリアミド酸を重合することは、ケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
前記ポリイミド前駆体溶液の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、必要に応じて任意添加成分を含有していてもよい。前記任意添加成分としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられ、前述のポリイミドフィルムにおいて説明した紫外線吸収剤以外の任意添加成分と同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることができるが、中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物の固形分中に90質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、前記ポリイミド前駆体溶液の粘度と同様にして測定することができる。
(2)ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、使用される支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布した後は、表面がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で乾燥し、前記組成物中の溶剤を除去する。前記乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
乾燥時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常1分〜60分、好ましくは2分〜30分とする。前記上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、前記下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
(3)イミド化工程
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程において、イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
昇温速度は、形成するポリイミド層の膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミド層の膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
前記方法a−1においては、更に前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。
前記方法a−1において、延伸工程を行う場合、前記イミド化工程では、中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから強度及び表面硬度が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
前記方法a−1において延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの強度及び表面硬度が向上する点から好ましい。
前記方法a−1が延伸工程を有する場合は、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミド層の強度及び表面硬度を向上する点から好ましい。
前記延伸工程で行う延伸の延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、ポリイミド層の強度及び表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミド層の固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミド層は、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
<方法a−2>
前記ポリイミド層(a)を形成する別の方法としては、例えば、方法a−2として、
ポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を有する方法が挙げられる。
前記方法a−2は、ポリイミド層(a)の黄色度(YI値)を低減しやすく、ポリイミドフィルム全体としても黄色度(YI値)を低減できる点から好ましい。
以下、前記方法a−2における各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド樹脂組成物調製工程
ポリイミド樹脂組成物調製工程において用いられるポリイミドは、前述したポリイミドの中から、25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有するポリイミドを選択して用いることが好ましい。
ポリイミドのイミド化は、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化により行うことが好ましい。化学イミド化を行う際には、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。これらの脱水触媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。アミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、前記アミンを用いる場合は、前駆体からポリイミドへと反応させた反応液をそのままキャストして製膜するのではなく、再沈殿などにより精製し、ポリイミド以外の成分をそれぞれ、ポリイミド全重量の100ppm以下まで除去することが好ましい。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、ポリイミド前駆体の化学イミド化を行う反応液に用いられる有機溶剤としては、例えば、前記方法a−1における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。ポリイミド樹脂組成物調製工程において、反応液から精製したポリイミドを再溶解させる際に用いられる有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、オルト−ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1.4−ジオキサン、テトラクロルエチレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びこれらの混合溶剤等が挙げられ、中でも、ジクロロメタン、酢酸ノルマル−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて任意添加成分を含有していてもよい。前記任意添加成分としては、前記方法a−1における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物の固形分中のポリイミドの含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物の固形分中に90質量%以上であることが好ましく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させる点から、99.9質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記方法a−1における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
(2)ポリイミド樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布してポリイミド樹脂塗膜を形成する工程において、前記支持体及び前記塗布の方法としては、前記方法a−1のポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物を塗布した後は、表面がタックフリーとなるまで乾燥することが好ましい。乾燥温度としては、常圧下では40℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
表面がタックフリーとなるまで乾燥した後は、更に、残留溶媒を低減させるため、不活性ガス雰囲気下において、100℃以上300℃以下で加熱することが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で260℃以上の熱処理を行うと、ポリイミドが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
前記方法a−2においては、更に前記ポリイミド樹脂塗膜を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程は、前記方法a−1において説明した延伸工程と同様の方法で行うことができる。
前記ポリイミド層(a)を2層以上有するポリイミドフィルムの製造方法においては、例えば、前述した前記ポリイミド層(a)の形成方法のいずれかによって前記ポリイミド層(a)の形成を更に行うことにより、前記ポリイミド層(a)を2層以上形成することができる。
また、本発明においては、予め形成されたフィルム状のポリイミド成形体を前記ポリイミド層(a)として用いても良い。
2.ポリイミド層(b)形成工程
<方法b−1>
前記ポリイミド層(b)を形成する方法としては、例えば、方法b−1として、
ポリイミド前駆体と、紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含む紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して、紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を有する方法が挙げられる。
なお、前記ポリイミド層(b)に用いられる紫外線吸収剤は、前記本発明のポリイミドフィルムにおいて説明した紫外線吸収剤と同様である。
前記方法b−1における紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程は、前記方法a−1におけるポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において、ポリイミド前駆体樹脂組成物に更に紫外線吸収剤を含有させ、各成分の含有量を適宜調整する以外は、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程と同様にすることができる。なお、紫外線吸収剤は、ポリイミド前駆体を合成した後に添加することが好ましい。
前記方法b−1は、前記方法a−1と同様に、ポリイミド層(b)の複屈折率を低減できることにより、ポリイミドフィルム全体としても複屈折率を低減できる点、及びポリイミド層(b)中の残留溶剤量を低減しやすいことにより、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上しやすい点から好ましい。
前記方法b−1において、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミド層を形成する点及びポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上する点から、樹脂組成物の固形分中に40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがより更に好ましく、更に65質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させる点から、99.2質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがより更に好ましく、更に91質量%以下であることが好ましく、より更に87質量%以下であることが好ましい。
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の点から、樹脂組成物の固形分中に0.8質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、更に9質量%以上であることが好ましく、より更に13質量%以上であることが好ましく、一方、屈曲耐性の低下を抑制する点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがより更に好ましく、更にポリイミドフィルムの透明性及び光学特性を向上する点からは、35質量%以下であることが好ましい。
また、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物中のポリイミド前駆体100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の点から、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがより更に好ましく、更に10質量部以上であることが好ましく、より更に15質量部以上であることが好ましい。一方で、屈曲耐性の点及びポリイミドフィルムの白化を抑制する点から、150質量部以下であることが好ましく、120質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがより更に好ましく、更に70質量部以下であることが好ましく、更にポリイミドフィルムの透明性及び光学特性を向上する点からは、50質量部以下であることが好ましい。
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
前記方法b−1における紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程は、前記方法a−1におけるポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程と同様にすることができる。なお、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記ポリイミド層(a)又は前記ポリイミド層(a)となる塗膜の上に塗布する。
また、前記方法b−1におけるイミド化工程は、前記方法a−1におけるイミド化工程と同様にすることができる。
例えば、前記ポリイミド層(a)の形成を前記方法a−1により行い、前記ポリイミド層(b)の形成を前記方法b−1により行う場合は、前記ポリイミド層(a)を形成した後に、前記ポリイミド層(b)を形成しても良いし、前記ポリイミド層(a)の形成と並行して前記ポリイミド層(b)を形成しても良い。
一方で、前記ポリイミド層(a)の形成を前記方法a−2により行い、前記ポリイミド層(b)の形成を前記方法b−1により行う場合は、前記ポリイミド層(a)を形成した後、形成された前記ポリイミド層(a)上に、前記ポリイミド層(b)を形成することが好ましい。
<方法b−2>
また、前記ポリイミド層(b)を形成する別の方法としては、例えば、方法b−2として、
ポリイミドと、紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含む紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を塗布して紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物塗膜を形成する工程(以下、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、
を有する方法が挙げられる。
前記ポリイミド層(b)を形成する方法としては、中でも、紫外線吸収剤の分解を抑制し、ポリイミドフィルムの耐候性を向上する点から、前記方法b−2が好ましい。
前記方法b−2における紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物調製工程は、前記方法a−2におけるポリイミド樹脂組成物調製工程において、ポリイミド樹脂組成物に、更に紫外線吸収剤を含有させ、各成分の含有量を適宜調整する以外は、前記ポリイミド樹脂組成物調製工程と同様にすることができる。
前記方法b−2は、前記方法a−2と同様に、ポリイミド層(b)の黄色度(YI値)を低減しやすく、ポリイミドフィルム全体としても黄色度(YI値)を低減できる点から好ましい。
前記方法b−2において、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物中のポリイミドの含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミド層を形成する点及びポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上する点から、樹脂組成物の固形分中に40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがより更に好ましく、更に65質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、一方で、紫外線吸収剤を十分に含有させ、耐候性を向上する点から、99.2質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、96質量%以下であることがより更に好ましく、更に91質量%以下であることが好ましく、より更に87質量%以下であることが好ましい。
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の点から、樹脂組成物の固形分中に0.8質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、更に9質量%以上であることが好ましく、より更に13質量%以上であることが好ましく、一方、屈曲耐性の低下を抑制する点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがより更に好ましく、更にポリイミドフィルムの透明性及び光学特性を向上する点からは、35質量%以下であることが好ましい。
また、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物中のポリイミド100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、耐候性の点から、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがより更に好ましく、更に10質量部以上であることが好ましく、より更に15質量部以上であることが好ましい。一方で、屈曲耐性の点及びポリイミドフィルムの白化を抑制する点から、150質量部以下であることが好ましく、120質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがより更に好ましく、更に70質量部以下であることが好ましく、更にポリイミドフィルムの透明性及び光学特性を向上する点からは、50質量部以下であることが好ましい。
前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミド層を形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
前記方法b−2における紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜形成工程は、前記方法a−2におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程と同様にすることができる。なお、前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物は、前記ポリイミド層(a)又は前記ポリイミド層(a)となる塗膜の上に塗布する。
前記ポリイミド層(a)の形成を前記方法a−1により行い、前記ポリイミド層(b)の形成を前記方法b−2により行う場合は、前記ポリイミド層(a)を形成した後、形成された前記ポリイミド層(a)上に、前記ポリイミド層(b)を形成することが、前記ポリイミド層(b)中の紫外線吸収剤の分解を抑制し、ポリイミドフィルムの耐候性を向上する点から好ましい。
前記ポリイミド層(a)の形成を前記方法a−2により行い、前記ポリイミド層(b)の形成を前記方法b−2により行う場合は、前記ポリイミド層(a)となるポリイミド樹脂塗膜上に、前記ポリイミド層(b)となる紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜を形成しても良いし、前記ポリイミド層(a)となるポリイミド樹脂塗膜と前記ポリイミド層(b)となる紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜とを、多層押出法等を用いて同時に形成しても良い。多層押出法を用いて、化学イミド化を行うことにより本発明に係るポリイミドフィルムを製造する方法では、例えば、支持体上に、化学イミドを行って合成したポリイミドを含有するポリイミド樹脂組成物と紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物とを同時に押し出して、当該支持体上に流延塗布することにより、前記ポリイミド層(a)となるポリイミド樹脂塗膜と、前記ポリイミド層(b)となる紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜とを有する多層構造の多層塗膜を形成し、当該多層塗膜を必要に応じて加熱して残留溶剤を除去することにより、本発明のポリイミドフィルムを得ることができる。
また、前記ポリイミド層(b)の形成において、フィルム化した際のヘイズ値が低減しやすく、光学フィルムとしての特性を向上する点から、前記方法b−1では、前記ポリイミド前駆体がパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミド前駆体を含有することが好ましく、前記方法b−2では、前記ポリイミドがパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有することが好ましい。ポリイミド前駆体又はポリイミドがパーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むと、嵩高く疎(低密度)な構造になりやすく、組成物中でポリイミド前駆体又はポリイミドの分子鎖間の距離が広がり易くなり、ポリイミド前駆体又はポリイミドの分子鎖間の相互作用が低下し易いことから、ポリイミド前駆体又はポリイミドと有機溶剤との相溶性が向上し易く、紫外線吸収剤がポリイミド前駆体又はポリイミドの分子鎖間に生じる隙間に存在し易くなることで、フィルム化した際のヘイズ値が低減すると推察される。
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記ポリイミド層(a)となるイミド化前又はイミド化後の塗膜と、前記ポリイミド層(b)となるイミド化前又はイミド化後の塗膜とを有する積層体を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程は、前記方法a−1において説明した延伸工程と同様の方法で行うことができる。
また、前記ポリイミド層(b)を2層以上有するポリイミドフィルムの製造方法においては、例えば、前述した前記ポリイミド層(b)の形成方法のいずれかによって前記ポリイミド層(b)の形成を更に行うことにより、前記ポリイミド層(b)を2層以上形成することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理を施す工程を更に有していてもよい。
III.積層体
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層とを有する積層体である。
本発明の積層体は、前述した本発明のポリイミドフィルムを用いたものであるため、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであり、更に機能層を有することにより、所望の機能が付与されたものである。
1.ポリイミドフィルム
本発明の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本発明のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.機能層
本発明に係る積層体が有する機能層は、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、防汚性等の機能を発揮する層が挙げられ、公知の機能層を用いることができる。
本発明に用いられる機能層としては、中でも、本発明に係る積層体の表面硬度を向上する点から、ハードコート層として機能するものであることが好ましい。ここで、「ハードコート層」とは、表面硬度を向上させるための層であり、具体的には、JIS 5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。
本発明に用いられる機能層は、バインダー成分としてラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するものであり、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて、任意添加成分を含有していても良い。ここで、機能層が含有する重合物には、後述する機能層用組成物中のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種が、機能層を形成する際の硬化工程で重合することにより得られる重合物、及び、機能層を形成する前に予めラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を重合して得られる重合物のいずれも含まれるが、機能層用組成物中のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種が、機能層を形成する際の硬化工程で重合することにより得られる重合物であることが好ましい。
また、前記機能層は、効果が損なわれない範囲において、バインダー成分として、前記重合物の他、未反応のモノマー及びオリゴマー等を含有していても良い。
(1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、機能層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、更に、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマー又はオリゴマーと称される化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千の多官能モノマー及びオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーを好ましく使用できる。また(メタ)アクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。機能層が、前記多官能(メタ)アクリレートモノマー、オリゴマー及びポリマーから選ばれる少なくとも1種の重合物を含むことにより、機能層の硬度及び屈曲耐性を向上し、更にポリイミドフィルムとの密着性を向上することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、機能層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られた機能層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られた機能層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX―212)、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
(3)重合開始剤
前記機能層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(4)添加剤
本発明に用いられる機能層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レベリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
なお、本発明に用いられる機能層に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物等は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC−MS)や、重合物の分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMS等の組み合わせを用いて分析することができる。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記機能層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記機能層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記機能層が積層されたものであってもよい。また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記機能層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記機能層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよい。また、本発明の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記機能層とが隣接して位置するものであってもよい。中でも、前記機能層が、ポリイミドフィルムの前記ポリイミド層(b)側の面上に位置することが、耐候性の点及び耐擦傷性の点から好ましい。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、30μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各機能層の厚さは、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
4.積層体の特性
本発明の積層体は、前記機能層側の表面の鉛筆硬度がHB以上であることが好ましく、F以上であることがより好ましく、H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、16以下であることが更に好ましい。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムの前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の積層体のヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.040以下であることが好ましく、0.020以下であることがより好ましく、0.015以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
6.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本発明のポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有する機能層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記機能層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記機能層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記機能層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記機能層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記機能層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
また、機能層用硬化性樹脂組成物の塗工量としては、得られる積層体が要求される性能により異なるものであるが、乾燥後の膜厚が3μm以上25μm以下になるように適宜調節することが好ましく、塗工量が3g/m以上30g/m以下の範囲内、特に5g/m以上25g/m以下の範囲内であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムの紫外線吸収剤が偏在している側の面に、前記機能層形成用組成物を塗布することが、耐候性の点及び耐擦傷性の点から好ましい。
前記機能層用硬化性樹脂組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記機能層用硬化性樹脂組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
IV.ディスプレイ用表面材
本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体である。
本発明のディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられ、中でも、本発明のポリイミドフィルムの紫外線吸収剤が偏在している側が視認側となるように配置して用いられることが好ましい。本発明のディスプレイ用表面材は、前述した本発明のポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであるため、屋外に使用するディスプレイ用として好適に用いることができ、また、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。
本発明のディスプレイ用表面材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明のディスプレイ用表面材が前記本発明の積層体である場合は、前記機能層側の表面が、より表側の面となるように本発明のディスプレイ用表面材を配置することが、耐候性及び耐擦傷性の点から好ましい。また、本発明のディスプレイ用表面材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明のディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用表面材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
V.タッチパネル部材
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有する。
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができ、特に、屋外でも使用可能なフレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。また、本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、光学特性に優れる。
本発明のタッチパネル部材に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本発明のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明のタッチパネル部材と、表面材としての本発明のポリイミドフィルム又は積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
以下、本発明のタッチパネル部材について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図4は、本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図5は、図4に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図6は、図4及び図5に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。図4、図5及び図6に示すタッチパネル部材20は、本発明の積層体11と、積層体11の一方の面に接して配置された第一の透明電極4Eと、積層体11のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5Eとを備える。第一の透明電極4Eにおいては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体11の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図4に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図4に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図4では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図5に示すように、タッチパネル部材20は、積層体11のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5Eとを備える。第二の透明電極5Eにおいては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体11の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体11の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図4及び図5に示すような、第一の取出し線7を長尺配線とし、第二の取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図4及び図5に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明のタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図4及び図5に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。
本発明のタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
本発明のタッチパネル部材は、図4〜図6に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図7及び図8は、各々本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図7に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体11と、当該積層体11の一方の面に接して配置された第一の透明電極4Eとを有し、当該第一の透明電極4Eは、複数の第一の導電部41を有する。図8に示す第二の導電性部材202は、本発明の積層体11’と、当該積層体11’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5Eとを有し、当該第二の透明電極5Eは、複数の第二の導電部51を有する。
図9は、本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図9に示すタッチパネル部材20’は、図7に示す第一の導電性部材201と、図8に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4Eを有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5Eを有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の積層体と本発明のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
VI.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、特に、屋外でも使用可能なフレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。また、本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、光学特性に優れる。
本発明の液晶表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の液晶表示装置が有する対向基板は、本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
以下、本発明の液晶表示装置について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図10は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図10に示す液晶表示装置100は、本発明の積層体11と、本発明の積層体11’の一方の面に第一の透明電極4Eを備え、もう一方の面に第二の透明電極5Eを備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体11は表面材として用いられており、積層体11とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく、一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図11は、本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図11に示す液晶表示装置200は、本発明の積層体11と、本発明の積層体11’の一方の面に第一の透明電極4Eを備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体11”の一方の面に第二の透明電極5Eを備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体11と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図9に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
VII.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、耐候性に優れ、屈曲耐性の低下が抑制されたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、特に、屋外でも使用可能なフレキシブルディスプレイ用として好適に用いることができる。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、光学特性に優れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
図12は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図12に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明の積層体11と、本発明の積層体11’の一方の面に第一の透明電極4Eを備え、もう一方の面に第二の透明電極5Eを備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体11は表面材として用いられており、積層体11とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図13は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図13に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明の積層体11と、本発明の積層体11’の一方の面に第一の透明電極4Eを備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体11”の一方の面に第二の透明電極5Eを備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体11と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図9に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
[評価方法]
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5質量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミドの重量平均分子量は、ポリイミドを0.2重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド溶液の粘度>
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドのフッ素原子含有割合(質量%)>
ポリイミド層(b)が含有するポリイミドのフッ素原子含有割合(質量%)を、仕込みの分子量から算出した。
実施例1〜15のポリイミド層(b)に用いたポリイミドは、酸二無水物成分として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)1モルに対して、ジアミン成分として2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)0.95モルと、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)0.05モルを用いたため、以下のように算出することができる。
ポリイミド繰り返し単位1モル分の分子量は、
6FDA由来:(C)12.01×19+(F)19.00×6+(O)16.00×4+(H)1.01×6=412.25
TFMB由来:{(C)12.01×14+(F)19.00×6+(N)14.01×2+(H)1.01×6}×0.95=300.41
AprTMOS由来:{(C)12.01×10+(O)16.00×1+(N)14.01×2+(Si)28.09×2+(H)1.01×24}×0.05=12.23
から、412.25+300.41+12.23=724.89と算出される。
ポリイミド繰り返し単位1モル中のフッ素原子含有割合(質量%)は、
{(19.00×6)+(19.00×6×0.95)}/724.89×100=30.7(質量%)と求められる。
<膜厚>
ポリイミドフィルムを厚み方向に切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、各ポリイミド層及びポリイミドフィルム全体の膜厚を測定した。具体的には、ポリイミドフィルムを5mm×5mmに切り出した試験片を、エポキシ樹脂により包理固化して固定した後、固定されたサンプルの厚さ方向に、ミクロトーム(ライカ製、LEICA EM UC7)を用いて50nm以上150nm程度の幅で切断し、各断面において、各ポリイミド層とポリイミドフィルムについて、それぞれ任意の3点の厚みを測定し、数平均して求めた値を膜厚とした。
<耐候性試験>
ポリイミドフィルムを55mm×75mmに切り出した試験片のポリイミド層(b)側の面を、QUV耐候性試験機(Q−LAB社製 QUV Accelerated Weathering Tester)を用い、1W/m/nmに設定した出力で、UVB313nmランプを使用して、24時間照射することにより、耐候性試験を行った。耐候性試験前後において、ポリイミドフィルムのYI値(黄色度)を測定し、YI値の差(ΔYI)を求めた。なお、比較例1、9、10では、比較ポリイミド層(b)側の面を照射し、比較例2〜8、11では、ポリイミドフィルムを形成する際にガラス板と接していなかった面を照射した。
YI値(黄色度)は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
<透過率>
前記耐候性試験前にポリイミドフィルムのYI値を測定する過程で、波長380nmにおける透過率及び波長450nmにおける透過率を測定した。
<ヘイズ>
ヘイズ値は、JIS K−7136に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<静的屈曲試験>
以下、静的屈曲試験の方法について、図3を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片10を、ポリイミド層(b)側が内側になるように、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片10の長辺の両端部が厚み6mmの金属片3(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片10の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)4a、4bで挟み、当該試験片10を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片3とガラス板4a、4bの間で当該試験片10がない部分には、ダミーの試験片5a、5bを挟み込み、ガラス板4a、4bが平行になるようにテープで固定した。なお、比較例1、9、10においては、比較ポリイミド層(b)側が内側になるように折り曲げ、比較例2〜8、11においては、ポリイミドフィルムを形成する際にガラス板と接していなかった面が内側になるように折り曲げた。
このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片10を、60℃、93%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片10にかかる力を解放した。その後、当該試験片10の一方の端部を固定し、試験片10にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定した。
当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<動的屈曲試験>
20mm×100mmの大きさに切り出した試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定した。試験片を前記静的屈曲試験と同様の折り畳まれた状態、すなわち、ポリイミド層(b)側が内側になるように折り畳まれた状態で、試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定した後、60℃で93%相対湿度(RH)の環境下で、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返した。なお、比較例1、9、10においては、比較ポリイミド層(b)側が内側になるように折り曲げ、比較例2〜8、11においては、ポリイミドフィルムを形成する際にガラス板と接していなかった面が内側になるように折り曲げた。
その後、試験片を取り外してから30分後に、得られた試験片の一方の端部を固定し、試験片の内角を測定した。
当該動的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<ヤング率>
15mm×15mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片の表裏面について、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定した。具体的には、測定装置は(株)フィッシャー・インストルメンツ社製、PICODENTOR HM500を用い、測定圧子としてビッカース圧子を用いた。試験片の表裏面について、各々任意の点を8ヶ所測定して数平均して求めた値を各層のヤング率とした。なお、測定条件は、最大押込み深さ:1000nm、加重時間:20秒、クリープ時間:5秒とした。
<引張弾性率>
ポリイミドフィルムを15mm×40mmに切り出した試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
また、前記引張弾性率を測定する際に、フィルムが破断したときの破断強度を測定した。
前記試験片は、フィルムの中央部付近から切り出した。切り出したフィルムの四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、5点の平均膜厚と各点の膜厚の差が、平均膜厚の6%以内である試験片を用いた。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をポリイミド層(b)側の表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。なお、比較例1、9、10においては、比較ポリイミド層(b)側の表面、比較例2〜8、11においては、ポリイミドフィルムを形成する際にガラス板と接していなかった面について、鉛筆硬度試験を行った。
(合成例1)
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド2903g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)16.0g(0.07mol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)14.6g(0.03mol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)400g(1.25mol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)565g(1.27mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)の25℃における粘度は95300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は183000であった。
(合成例2)
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(200g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)1.27g(5.11mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)1.14g(2.56mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)31.1g(97.1mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)43.9g(98.7mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1’が溶解したポリイミド前駆体溶液1’(固形分28重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1’に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。上記ポリイミド前駆体溶液1’を室温に下げ、脱水されたジメチルアセトアミド109gを加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン32.1g(405mmol)と無水酢酸41.4g(405mmol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル313gを加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール696gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りの見られる溶液にメタノール1620gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド1(69.6g)を得た。GPCによって測定したポリイミド1の重量平均分子量は192000であった。
ポリイミド1を酢酸ブチルに溶かし、固形分15重量%のポリイミド溶液1を作製した。ポリイミド溶液1(固形分15重量%)の25℃における粘度は5000cpsであった。
また、ポリイミド1を酢酸ブチル/PGMEA=8/2の割合で混合した混合溶媒に溶かし、固形分25質量%のポリイミド溶液1’を作製した。ポリイミド溶液1’(固形分25重量%)の25℃における粘度は40000cpsであった。
(合成例3)
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド300g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)44.61g(139mmol)を溶解させた。上記溶液の液温を30℃に制御し、ピロメリット酸二無水物(PMDA)29.99g(138mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液2’(固形分20重量%)を合成した。上記溶液を室温に下げ、触媒であるピリジン43.5g(550mmol)と無水酢酸56.2g(550mmol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル273gを加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール671gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール1570gを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド2(67.1g)を得た。GPCによって測定したポリイミド2の重量平均分子量は83000であった。
ポリイミド2を酢酸ブチルに溶かし、固形分15重量%のポリイミド溶液2を作製した。ポリイミド溶液2(固形分15重量%)の25℃における粘度は4000cpsであった。
以下において、各表中の略称はそれぞれ以下のとおりである。
・TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
・AprTMOS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
・6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
・PMDA:ピロメリット酸二無水物
(実施例1)
合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1を用い、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、ポリイミド層(a)となる80μmの厚みの単層のポリイミドフィルム1を作製した。
(1)ポリイミド前駆体溶液1をガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、350℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラス板より剥離し、単層のポリイミドフィルム1を得た。
次に、合成例2で得られたポリイミド溶液1に、下記化学式(i)で表される紫外線吸収剤(住化ケムテックス(株)製、商品名:Sumisorb 340、融点102℃、380nmでの吸光度0.023、450nmでの吸光度0.002)を、100質量部のポリイミド1に対して3.0質量部となるように加え、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1を得た。得られた紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1を、前記で得られた単層ポリイミドフィルム1の上に、下記(4)、(5)の手順を行うことで、単層ポリイミドフィルム1の一方の面にポリイミド層(b)を形成し、実施例1のポリイミドフィルム1を作製した。
(4)紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1を単層のポリイミドフィルム1上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(5)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
なお、実施例1のポリイミドフィルム1の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合は0.14質量%であった。また、ポリイミドフィルム1が有するポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有量は2.91質量%であった。
(実施例2〜7)
実施例1において、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して5質量部、10質量部、15質量部、20質量部、25質量部、50質量部の量でそれぞれ加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物2〜7をそれぞれ用い、表2に示す厚みとなるようにポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7のポリイミドフィルム2〜7を作製した。ポリイミドフィルム2〜7の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
(比較例1)
実施例1において、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド溶液1を用い、表2に示す厚みとなるように比較ポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の比較ポリイミドフィルム1を作製した。
(実施例8〜10)
実施例1において、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して50質量部の量で加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用い、それぞれ表2に示す厚みとなるようにポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例8〜10のポリイミドフィルム8〜10を作製した。ポリイミドフィルム8〜10の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
(比較例2)
合成例2で得られたポリイミド溶液1’を用い、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、表2に示す厚みの単層の比較ポリイミドフィルム2を作製した。
(1)ポリイミド溶液1’をガラス板上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラス板より剥離し、単層の比較ポリイミドフィルム2を得た。
(比較例3〜8)
比較例2において、ポリイミド溶液1’に代えて、ポリイミド溶液1’に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、5質量部、10質量部の量でそれぞれ加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物をそれぞれ用いた以外は、比較例2と同様にして、単層の比較ポリイミドフィルム3〜8を得た。比較ポリイミドフィルム3〜8の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及び比較ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
(実施例11〜14)
合成例2で得られたポリイミド溶液1を用い、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、ポリイミド層(a)となる80μm±5μmの厚みの単層のポリイミドフィルムを作製した。
(1)ポリイミド溶液1をガラス板上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラス板より剥離し、単層のポリイミドフィルム2を得た。
次に、合成例2で得られたポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を100質量部のポリイミド1に対して5質量部、10質量部、20質量部、25質量部の量でそれぞれ加えて得た前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物2、3、5、6と同様の組成物を、それぞれ前記で得られた単層のポリイミドフィルム2の上に、下記(4)、(5)の手順を行うことで、単層ポリイミドフィルム2の一方の面にポリイミド層(b)を形成し、実施例11〜14のポリイミドフィルム11〜14を作製した。
(4)紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を前記で得られた単層のポリイミドフィルム2上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(5)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
なお、ポリイミドフィルム11〜14の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
(比較例9)
実施例11において、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物に代えて、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド溶液1を用い、表2に示す厚みとなるように比較ポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例11と同様にして、比較例9の比較ポリイミドフィルム9を得た。
(比較例10)
実施例1において、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して0.7質量部の量で加えて得た比較紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物10を用い、表2に示す厚みとなるように比較ポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例10の比較ポリイミドフィルム10を作製した。比較ポリイミドフィルム10の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及び比較ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
(比較例11)
実施例1において、ポリイミド層(b)の形成を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例11の比較ポリイミドフィルム11を作製した。
(実施例15)
実施例1において、ポリイミド層(b)の形成の際に、ポリイミド溶液1に代えて、合成例3で得られたポリイミド溶液2を用い、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド2に対して25質量部となるように加えた紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例15のポリイミドフィルム15を得た。ポリイミドフィルム15の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表2に示す。
なお、表中、UVAは紫外線吸収剤を意味し、PIはポリイミドを意味する。
表2より、紫外線吸収剤が一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在している実施例1〜15のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を含有しない比較ポリイミドフィルム1、2、9、11や、紫外線吸収剤の含有量が少なく、波長380nmにおける透過率が18%超過である比較ポリイミドフィルム10に比べ、耐候性試験前後におけるYIの変化(△YI)が小さく、耐候性が向上したものであった。また、単層のポリイミドフィルムに紫外線吸収剤を均一に含有させた比較例3〜8の比較ポリイミドフィルムに対し、実施例1〜15のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤の含有量が非常に少ないものの、優れた耐候性を有するものであることが示された。更に、実施例1〜15のポリイミドフィルムは、比較例3〜8の比較ポリイミドフィルムに比べ、屈曲耐性に優れており、屈曲耐性の低下が抑制されたものであることが示された。
中でも、実施例1〜10のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を、熱イミド化によりイミド化させて形成したことにより、屈曲耐性がより向上していた。これは、ポリイミド層(a)中の残留溶剤量がより低減されたためと推定される。
また、実施例15で得られたポリイミドフィルムは、引張弾性率及びポリイミド層(b)側の面のヤング率が高く、当該ポリイミド層(b)側の表面硬度が向上したものであった。
(実施例16)
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層用樹脂組成物を調製した。
実施例4のポリイミドフィルムを10cm×10cmに切り出し、ポリイミド層(b)側の面に前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体を作製した。
(実施例17〜21)
実施例1において、ポリイミド層(a)が表3に示す厚みとなるように、ポリイミド前駆体溶液1の塗布量を調整し、更に、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して20質量部の量で加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用い、表3に示す厚みとなるようにポリイミド層(b)を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例17〜21のポリイミドフィルム17〜21を作製した。ポリイミドフィルム17〜21の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表3に示す。
表3より、一方の面側に、ポリイミドを含有し紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を有し、もう一方の面側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を有する本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)の厚みの比率を変えても、耐候性試験前後におけるYIの変化(△YI)が小さく、耐候性に優れ、紫外線吸収剤を含有する単層のポリイミドフィルムに比べて、屈曲耐性の低下が抑制されることが明らかにされた。また、前記ポリイミド層(b)中の紫外線吸収剤の含有割合が同じ場合は、前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)の厚みの比率が異なっていても、△YIは同等であり、一方、前記ポリイミド層(b)の厚みの比率が小さいほど、ポリイミドフィルムの屈曲耐性は向上していた。
(実施例22〜25)
実施例1において、ポリイミド層(a)が表4に示す厚みとなるように、ポリイミド前駆体溶液1の塗布量を調整し、更に、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、紫外線吸収剤(Sumisorb 340)を、100質量部のポリイミド1に対して120質量部の量で加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用い、ポリイミド層(b)が表4に示す厚みとなるように、当該紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物の塗布量を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例22〜25のポリイミドフィルム22〜25を得た。ポリイミドフィルム22〜25の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表4に示す。
(実施例26〜28)
実施例1において、ポリイミド層(a)が表4に示す厚みとなるように、ポリイミド前駆体溶液1の塗布量を調整し、更に、紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物1に代えて、ポリイミド溶液1に、下記化学式(ii)で表される紫外線吸収剤(住化ケムテックス(株)製、商品名:Sumisorb 350、融点77℃)を、100質量部のポリイミド1に対して70質量部の量で加えて得た紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を用い、ポリイミド層(b)が表4に示す厚みとなるように、当該紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物の塗布量を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例26〜28のポリイミドフィルム26〜28を得た。ポリイミドフィルム26〜28の全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合、及びポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の紫外線吸収剤の含有割合を表4に示す。
表4より、本発明のポリイミドフィルムは、紫外線吸収剤の種類及び含有量を変えても、耐候性試験前後におけるYIの変化(△YI)が小さく、耐候性に優れ、紫外線吸収剤を含有する単層のポリイミドフィルムに比べて、屈曲耐性の低下が抑制されることが明らかにされた。中でも、炭素数6以上15以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する紫外線吸収剤であるSumisorb340を用いた場合には、ポリイミド層(b)中の紫外線吸収剤の含有量を増やしたときの光学特性が悪化し難くかった。そのため、ポリイミド層(b)中の紫外線吸収剤の含有量と、ポリイミド層(b)の厚みを調整することにより、ポリイミドフィルムの耐候性と屈曲耐性を共に向上しやすい態様であることが明らかにされた。
更に、実施例1〜28で得たポリイミドフィルム1〜28及び比較例3〜8、10で得た比較ポリイミドフィルム3〜8、10から、10mm×10mmの領域を2ヶ所ずつ切り出して、1つのフィルムつき2つの切片を作製した。2つの切片のうちの1つは、一方の面が残るように削り、もう1つは、もう一方の面が残るように削り、試験片を作製した。
各試験片中の紫外線吸収剤の有無を、パージ&トラップ装置(加熱脱着装置)が連結したGC−MSを用いて行った。具体的には、パージ&トラップ装置(製品名JTD505−III、日本分析工業株式会社)に、試験片を入れた試料管をセットし、200℃で30分保持して加熱して発生したガスを、−60℃のトラップ管で捕集し、捕集したものを315℃で加熱して飛ばしてGC−MS装置(Agilent社、6890/5973 GC/MS)へ送り込み、発生した有機ガスの成分の定性分析を行うことにより、紫外線吸収剤の有無を確認した。なお、分析条件は以下のようにした。
(パージ&トラップ装置条件)
総スプリット比(導入量/排気量): 1:10
キャリアガス: ヘリウム1.0ml/min定量
(GC−MS条件)
カラム: UA−5 内径250μm×長さ30m×膜厚0.25μm(フロンティア・ラボ製)
昇温条件: 50℃で5分保持後、10℃/分で320℃まで昇温し、320℃で3分間保持した
その結果、実施例1〜28のポリイミドフィルム1〜28及び比較例10の比較ポリイミド10では、一方の面では紫外線吸収剤が検出されず、片方の面でのみ紫外線吸収剤が検出された。比較例3〜8の比較ポリイミドフィルム3〜8は、両面で紫外線吸収剤が検出された。
1、1a、1b ポリイミド層(a)
2、2a、2b ポリイミド層(b)
10、10’ ポリイミドフィルム
3 金属片
4a、4b ガラス板
5a、5b ダミーの試験片
11、11’、11” 積層体
4E 第一の透明電極
41 第一の導電部
5E 第二の透明電極
51 第二の導電部
6 接着層
7 第一の取出し線
71 第一の端子
8 第二の取出し線
81 第二の端子
20、20’ タッチパネル部材
21 積層体の端縁
22 アクティブエリア
23 非アクティブエリア
24 接続部
201 第一の導電性部材
202 第二の導電性部材
30 液晶表示部
40 有機エレクトロルミネッセンス表示部
100、200 液晶表示装置
300、400 有機エレクトロルミネッセンス表示装置

Claims (26)

  1. ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有し、前記紫外線吸収剤が、一方の面には存在せず、もう一方の面側に偏在しており、
    波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルム。
  2. 一方の面側に、ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に、ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を少なくとも1層有する、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 前記ポリイミド層(a)の合計厚みが、前記ポリイミド層(b)の合計厚みと同じ、又は前記ポリイミド層(b)の合計厚みよりも厚い、請求項2に記載のポリイミドフィルム。
  4. 前記ポリイミド層(b)の合計厚みが0.5μm以上である、請求項2又は3に記載のポリイミドフィルム。
  5. 前記ポリイミド層(b)に含まれる全固形分中の前記紫外線吸収剤の含有量が、0.8質量%以上60質量%以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  6. 互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが各々含有するポリイミドが互いに同一である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  7. 互いに隣接して位置する前記ポリイミド層(a)と前記ポリイミド層(b)とが、各々下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、請求項6に記載のポリイミドフィルム。

    (一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
  8. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRにおける前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基である、請求項7に記載のポリイミドフィルム。
  9. 一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が含有するポリイミドと、もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が含有するポリイミドとが互いに異なる、請求項2〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  10. 一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(a)が、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、請求項9に記載のポリイミドフィルム。

    (一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である。nは繰り返し単位数を表す。)
  11. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRにおける前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基である、請求項10に記載のポリイミドフィルム。
  12. もう一方の面側の最表面に位置する前記ポリイミド層(b)が、下記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドを含有する、請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。

    (一般式(2)において、Rはピロメリット酸二無水物残基、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基からなる群から選択される少なくとも1種の4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表す。)
  13. 前記一般式(2)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(2)中のRが、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含む、請求項12に記載のポリイミドフィルム。
  14. パーフルオロアルキル基を有する芳香族環を含むポリイミドを含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  15. 一方の面のヤング率と、もう一方の面のヤング率が、ともに2.4GPa以上である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  16. 前記紫外線吸収剤の融点が100℃以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  17. 前記紫外線吸収剤が、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
  18. 前記紫外線吸収剤が、下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。



    (一般式(I)において、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表し、R30は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Aはフェニレン基又は2価のポリシロキサン基を表し、R31は炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、R25、R26、R27、R28及びR29の少なくとも1つが、フェニル基若しくは1価のポリシロキサン基で置換されていても良い炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は−R30−A−R31を表す。前記フェニル基及び前記フェニレン基は、炭素数1以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基で置換されていても良い。)
  19. ポリイミドを含有し、紫外線吸収剤を含有しないポリイミド層(a)を形成する工程と、
    ポリイミドと紫外線吸収剤とを含有するポリイミド層(b)を、前記ポリイミド層(a)と隣接して位置するように形成する工程とを有し、
    前記ポリイミド層(b)を形成する工程が、
    ポリイミドと、紫外線吸収剤と、有機溶剤とを含む紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を調製する工程と、
    前記紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂組成物を塗布して紫外線吸収剤含有ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程と、を有する、
    一方の面側に前記ポリイミド層(a)を少なくとも1層有し、もう一方の面側に前記ポリイミド層(b)を少なくとも1層有し、波長380nmにおける透過率が18%以下、且つ波長450nmにおける透過率が85%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法。
  20. 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層とを有する、積層体。
  21. 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項20に記載の積層体。
  22. 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、請求項20又は21に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
  23. フレキシブルディスプレイ用である、請求項22に記載のディスプレイ用表面材。
  24. 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項20又は21に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
    前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材。
  25. 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項20又は21に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置。
  26. 請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項20又は21に記載の積層体と、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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