JP7226312B2 - ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents
ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDFInfo
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Description
例えば、特許文献1には、高耐熱性、高透明性、低吸水性のポリイミド樹脂として、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物およびこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル含有化合物と、特定の式で表される、少なくとも一つのフェニレン基とイソプロピリデン基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種のイミノ形成化合物とを反応させてなるポリイミド樹脂が発明されており、フラットパネルディスプレイや携帯電話機器等の基板材料に好適であると記載されている。
しかしながら、本開示者らは、従来の透明ポリイミドを用いた樹脂フィルムは、光学的歪みが大きく、特に膜厚方向の位相差が大きいという問題があることを知見した。
また、本開示は、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上である、ポリイミドフィルムを提供する。
本開示の1実施形態は、前記第1ピークの高温側極小値の温度以上であって、350℃以上450℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上である、前記ポリイミドフィルムを提供する。
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材を提供する。
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置を提供する。
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
また、本開示によれば、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材、並びに、前記樹脂フィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
本開示の1実施態様のポリイミドフィルムは、動的粘弾性測定により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線において、極大値が最大である第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上であり、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上である。
位相差は、屈折率の異方性が原因で発生する。高分子の場合、屈折率の異方性は、一般に固体中で高分子鎖がランダムに存在せず、方向性を持って規則正しく並んでいる場合に生じる。
ポリイミドは、他の樹脂と比較して、前記化学構造中に折れ曲がり可能な結合箇所が少ないため、高分子鎖中に直線状の分子構造が多くなりやすい。このような構造は、弾性率を高めることができる要因であるが、直線状の分子構造が膜厚方向に配向した状態で規則的に折り重なりやすくなる要因ともなるため、そのようなポリイミドフィルムでは膜厚方向の位相差が大きくなると想定される。
本発明者らは、ポリイミドフィルムの動的粘弾性測定により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線(以下、単にtanδ曲線と称することがある。)において、第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域(以下、単に、第1ピーク高温側温度領域と称することがある。)におけるtanδの最大値が所定より大きいと、膜厚方向の位相差が小さくなる傾向を見出した。この理由は定かではないが、以下のように推測している。
tanδとは、損失弾性率を貯蔵弾性率によって除することによって得られる値であり、高分子材料の粘弾性特性を示す。図1に本開示のポリイミドフィルムのtanδ曲線、貯蔵弾性率曲線、及び損失弾性率曲線の一例を示す。図1において、tanδ曲線の極大値が最大である第1ピーク(1)の極大値の温度は、ポリイミドフィルムのガラス転移点を示している。そのため、第1ピーク(1)の極大値の温度以上の領域では、高分子鎖の多くは熱振動している状態である。
第1ピーク高温側温度領域において、tanδの値が大きいということは、粘性が高いことを表し、すなわちそれは高分子の分子間相互作用が小さいことを示していると考えられる。ここで、ポリイミドフィルム中に、直線状の分子構造が規則正しく並んで存在する場合には、分子間相互作用が相対的に大きくなって、第1ピーク高温側温度領域において高分子鎖の運動性が低下し、tanδの値が小さくなると考えられる。
ガラス転移温度以上の温度領域でtanδの値が小さいということは、分子間の相互作用が強く働くような位置関係に高分子鎖があることを表しており、その位置関係を取る場合に位相差が大きくなると考えられる。
一方、一般に位相差が小さいと言われる、高分子鎖が不規則に偏りなく存在しているポリイミドフィルムでは、分子間力が相対的に小さくなって、第1ピーク高温側温度領域において高分子鎖が振動しやすくなっていると考えられる。
このような理由から、tanδ曲線において、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値が大きいポリイミドフィルムは、不規則に存在している高分子鎖の比率が高いため、低い位相差を示すと考えられる。
なお、後述の実施例4と比較例1で、同じ分子構造を有するポリイミド前駆体を用いてポリイミドフィルムを製造した場合であっても、製造方法が異なりポリイミドフィルム中の高分子鎖の状態が異なると、tanδ曲線において、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値は大きく異なり、それに伴って位相差の大きさが大きく異なることが示されている。このことは、ポリイミドフィルムの位相差は、ポリイミドの組成のみに依存するわけではないこと、また、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値は、位相差に関連したポリイミドフィルム中の高分子鎖の状態を表すことを示していると考えられる。
本発明者らは、上記知見に基づいて検討を進めた結果、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上であるポリイミドフィルムでは、十分に低減された位相差が得られることを知見した。
本開示のポリイミドフィルムは、動的粘弾性測定により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線において極大値が最大である第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上である。本開示のポリイミドフィルムは、tanδ)曲線において極大値が最大である第1ピークの高温側極小値の温度以上460℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上であっても良い。
本開示のポリイミドフィルムのtanδ曲線は、極大値が最大である第1ピークを有する。上述のように、第1のピークの極大値における温度はポリイミドフィルムのガラス転移温度を示す。本開示のポリイミドフィルムにおいて、第1ピークが存在する温度範囲に特に制限はないが、透明性の点から、400℃以下であることが好ましい。一方で、ポリイミドフィルムの耐熱性の点から、第1ピークが存在する温度範囲は、200℃以上であることが好ましく、更に250℃以上であることが好ましい。
図1に示されるように、本開示のポリイミドフィルムは、tanδ曲線において極大値が最大である第1ピーク(1)の高温側極小値(2)の温度(2t)以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値(3)が0.18以上であることを特徴とする。上述のように、前記tanδの最大値がこのような大きい値をとるポリイミドフィルムでは、不規則に存在する折れ曲がった高分子鎖の割合が増加していると推定され、十分に低減された位相差を得ることが可能になる。更に低減された位相差を得る点から、前記tanδの最大値は0.20以上であることが好ましく、0.21以上であることがより好ましい。前記tanδの最大値の上限は、特に限定されるものではないが、0.50以下であることが好ましく、0.30以下であることがより好ましい。
なお、前記第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値には、第1ピークの極大値から高温側極小値の温度範囲、即ち、第1ピークの減少局面におけるtanδの値は含まれない。
前記第1ピークの高温側極小値の温度以上の温度領域は、第1ピークが存在する好ましい温度範囲との関係、即ち、ポリイミドフィルムの透明性及び耐熱性の点から、200℃以上450℃以下の温度領域であることが好ましく、250℃以上450℃以下の温度領域であることがより好ましく、300℃以上450℃以下の温度領域であることがより好ましく、350℃以上450℃以下の温度領域であることがより更に好ましい。
tanδ曲線において、前記第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域にピークが確認される場合には、当該ピークの極大値が0.18以上であってもよく、当該ピークの極大値は、0.20以上であることがより好ましく、0.21以上であることがより更に好ましい。
また、前記第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域に存在する当該ピークは、tanδ曲線において、極大値が2番目に大きい第2ピークであることが、位相差を低減する点から好ましい。
また、tanδ曲線において、極大値が最大である第1ピークを有し、当該第1ピークの極大値の温度より高い温度領域に、極大値が2番目に大きく、0.18以上である第2ピークを有することが、位相差を低減する点から好ましい。更に、tanδ曲線において、極大値が最大である第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域に、極大値が2番目に大きい第2ピークを有し、当該第2ピークの極大値が0.18以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.21以上であることがより更に好ましい。
なお、本開示において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
また、第1ピーク高温側温度領域において、測定対象であるポリイミドフィルムの試験片が溶融すると、tanδの値を正確に測定できなくなるため、数値に連続性が無くなり、極めて高いtanδの値を示すことがある。フィルムが溶融してtanδの数値が不連続になる場合とは、1℃ピッチで0.3以上大きさが変化した場合を目安とすることができる。しかし、このような値は、tanδ曲線の値とはいえないため、第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値とは解釈しない。即ち、第1ピークの高温側極小値の温度以上フィルムが溶融する温度未満の領域における値をtanδの最大値として解釈する。
本開示のポリイミドフィルムは、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上である。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。本開示のポリイミドフィルムの前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
また、本開示のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
本開示において、ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によって前駆体であるポリアミド酸を得た後、この前駆体をイミド化する。従って、本開示で用いられるポリイミドは、主鎖にテトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含むものである。なお、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
一般に、ポリイミドよりもポリイミド前駆体の方が骨格の柔軟性が高く、フィルム中に不規則な形で存在しやすい。そういった不規則な状態で存在しているポリイミド前駆体から、実質的な固層中でイミド化をすることで、ポリイミドとした後でも、不規則な構造を取りやすい。その結果、ポリイミド前駆体の製膜後に加熱によりポリイミドフィルムとする製造方法の方が、位相差が低くなりやすいと推定される。
化学イミド化により溶液中でポリイミド前駆体(ポリアミド酸)をイミド化して得られたポリイミドは、製膜時に、分子構造の折れ曲がり可能な可動部が減少しているためにより直線状の分子構造になりやすい。得られるポリイミドフィルム中のポリイミドが、膜厚に平行方向に配向した状態で規則的に折り重なりやすくなることから、分子間相互作用が大きくなるとともに、位相差が大きくなりやすい。ただし、ポリイミド溶液からの製膜でも、ポリイミドが柔軟な骨格を有していたり、瞬間的に溶媒を除去するなど手法で、不規則な状態を作り出すことができる場合もある。
このような理由から、tanδ曲線において、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値を0.18以上の範囲にするためには、熱イミド化を用いることが好ましい。
芳香族環を有するテトラカルボン酸成分としては、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
なお、上述したテトラカルボン酸成分は、単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、本開示に用いるジアミン成分としては、ポリイミドフィルムの光透過性の点から、脂肪族環を有するジアミンも好ましい。
また、本開示に係るポリイミドフィルムは、中でも、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドを含有することが好ましい。主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含むポリイミドでは、ケイ素原子部分が折れ曲がり構造となり得るため、より多くの折れ曲がった分子構造を含む高分子鎖を有するポリイミドを得やすく、本開示のポリイミドフィルムを得やすい点から好ましい。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本開示の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6~12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
ジアミン残基が主鎖に有するケイ素原子の個数に特に制限はないが、1個又は2個であることが好ましく、2個であるとより好ましい。珪素原子が3個以上になると、低位相差を実現するための効果が飽和するうえに、ポリイミドの柔軟性が高くなりすぎて耐熱性に影響がでる可能性があるためである。
ジアミン残基の分子量は、ジアミンの分子量からアミノ基(-NH2)2個の分子量(32)を減じて算出される。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
本開示においては、前記ポリイミドが、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基から選ばれる少なくとも一種を含むことにより、分子骨格が剛直となり耐久性が高まり、表面硬度が向上するが、剛直な芳香族環骨格は吸収波長が長波長に伸びる傾向があり、可視光領域の透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
得られるポリイミドの表面硬度と光透過性の点、及び屈曲耐性の点から、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の総量を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミンの総量が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
テトラカルボン酸成分及びジアミン成分にそれぞれ含まれる、炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点、及び屈曲耐性の低下を抑制する点から好ましい。炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、酸素との反応性が低いため、得られるポリイミドの化学構造が変化し難く、酸化によるポリイミドフィルムの劣化が抑制されることが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分にそれぞれ含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物の少なくとも一種を用いることが、得られるポリイミドにおける光透過性の向上の点から好ましい。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
なお、R2の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、R2の総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1)のR2に、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、R2の総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環又は脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。
中でも、R2の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、R2の総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残り(100%-x%)である50モル%以上99モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
中でも、R2の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、R2の総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残余(100%-x%)である50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
前記一般式(1)のR2は、位相差を低減し、且つ、屈曲耐性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、R2の総量の3モル%以上であることが好ましく、より更に5モル%以上であることが好ましく、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基は、上記に対応して、R2の総量の97モル%以下であることが好ましく、より更に95モル%以下であることが好ましい。
前記一般式(1)のR2は、位相差が低減する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、R2の総量の10モル%以上、更に20モル%以上であっても良く、この場合、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基は、上記に対応して、R2の総量の90モル%以下、更に80モル%以下であって良い。
一方、前記一般式(1)のR2は、位相差を低減しながら、表面硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、R2の総量の45モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることが好ましく、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基は、上記に対応して、R2の総量の55モル%以上であることが好ましく、より更に60モル%以上であることが好ましい。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、適宜選択されれば良く、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10~2000であり、更に15~1000であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるR1は各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるR2は各々同一でも異なっていても良い。
なお、ポリイミドの数平均分子量は、後述するポリイミド前駆体の数平均分子量と同様にして測定することができる。
ポリイミドの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミドを0.1重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
また、本開示に用いられるポリイミドは、本開示の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。本開示に用いられるポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
本開示のポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
本開示のポリイミドフィルムにおける、前記tanδ曲線、全光線透過率については、前述したのでここでの記載を省略する。
本開示のポリイミドフィルムにおいて、波長590nmにおける膜厚方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、中でも、0.008未満であることが好ましく、0.005以下であることが更に好ましく、0.004以下であることがより更に好ましい。
位相差が低減された本開示のポリイミドフィルムは、ディスプレイ用表面材として用いた場合に、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。
なお、本開示のポリイミドフィルムの波長590nmにおける膜厚方向の位相差及び複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの膜厚方向位相差値(Rth)を測定する。膜厚方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から膜厚方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの膜厚方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、膜厚方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの膜厚方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2-nz}×dと表すことができる。
本開示のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が30以下であることが好ましく、20以下であることが更に好ましく、15以下であることがより更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
また、本開示のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、10以下であることが好ましく、7以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
前記ヘイズ値は、JIS K-7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG-X 1N、ロードセル:SBL-1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度8mm/分、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが55μm±5μmであることが好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。試験機としては、例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本開示のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法は、前記本開示のポリイミドフィルムを製造できる方法であれば特に制限はないが、例えば、前述のように、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を加熱によりイミド化する方法であることが好ましく、下記第1の製造方法が好ましい。
<第1の製造方法>
本開示のポリイミドフィルムの製造方法としては、第1の製造方法として、
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、熱イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
以下、熱イミド化工程を有する本開示のポリイミドフィルムの製造方法の例について工程ごとに詳細に説明する。
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。前記ポリイミド前駆体としては、例えば、下記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体が挙げられる。前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のR1におけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のR2におけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド-d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
たとえば、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、表面硬度を維持しつつ低位相差な膜を得易い点から好ましい。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA-200型)を用いて求めることができる。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mLとして測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法では加熱によりイミド化することが好ましい。上述のように、熱イミド化では、ポリイミド前駆体の状態で塗膜を形成後イミド化するが、製膜された状態では熱による分子鎖の運動の影響でポリイミド前駆体のアミド結合が折れ曲がり形状になりやすいため、得られるポリイミド中の高分子鎖が折れ曲がり形状の分子構造をとりやすい。
そのため、tanδ曲線において、第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値を0.18以上のポリイミドフィルムを得るために、イミド化は当該熱イミド化工程を行うことが好ましい。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、熱イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分以下とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分~180分、更に、5分~150分とすることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法は、tanδ曲線において、第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値を0.18以上のポリイミドフィルムを得ることができれば、下記第2の製造方法を用いても良い。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法としては、第2の製造方法として、
ポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
また、前記第2の製造方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法、前記無機粒子を有機溶剤中に分散させる方法としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
当該加熱工程は、前記第1の製造方法における加熱によるイミド化工程と同様にすることができる。
本開示のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本開示のポリイミドフィルムは、透明性に優れ且つ低位相であるため、中でも、ディスプレイ用表面材として好適に用いることができ、特に、大型ディスプレイ用の表面材として好適に用いることができる。
また、本開示のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
本開示の積層体は、前述した本開示のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本開示の積層体は、前述した本開示のポリイミドフィルムを用いたものであるため、透明性に優れ、位相差が低減されたものである。
本開示の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本開示のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
本開示の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素-炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
本開示に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
本開示に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本開示の積層体は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよく、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層とがプライマー層等の他の層を介して積層されたものであっても良い。また、本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。
また、本開示の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
本開示の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。
本開示の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本開示の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける膜厚方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本開示のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
本開示の積層体の製造方法としては、例えば、
前記発明のポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
本開示のディスプレイ用表面材は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は本開示の積層体である。
本開示のタッチパネル部材は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は前述した本開示の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有する。
本開示のタッチパネル部材に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本開示のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本開示のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本開示のタッチパネル部材と、表面材としての本開示のポリイミドフィルム又は積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
図2は、本開示のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図3は、図2に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図4は、図2及び図3に示すタッチパネル部材のA-A’断面図である。図2、図3及び図4に示すタッチパネル部材20は、本開示の積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図2に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図2に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図2では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本開示においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm~500nm程度に形成することができる。
本開示のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm~1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm~200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm~20μm程度に形成され、幅寸法は20μm~300μm程度に形成される。
図5及び図6は、各々本開示の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図5に示す第一の導電性部材201は、本開示の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図6に示す第二の導電性部材202は、本開示の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図7は、本開示のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図7に示すタッチパネル部材20’は、図5に示す第一の導電性部材201と、図6に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本開示において、例えば、本開示の積層体と本開示のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本開示のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本開示のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本開示のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本開示のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
本開示の液晶表示装置は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は前述した本開示の積層体と、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本開示の液晶表示装置に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本開示の液晶表示装置は、前述した本開示のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本開示の液晶表示装置が有する対向基板は、本開示のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
図8は、本開示の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図8に示す液晶表示装置100は、本開示の積層体10と、本開示の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本開示の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本開示の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本開示のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本開示の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本開示の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は前述した本開示の積層体と、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本開示のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本開示のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本開示の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本開示の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本開示の積層体を備えるものを用いても良い。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mLとして測定した。
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルムの膜厚とした。
23℃、56%RHの測定室で動的粘弾性測定装置 RSA-G2(TAインスツルメント製)によって、測定範囲を-40℃以上500℃以下として、変形様式として引張りを選定し、窒素雰囲気下、周波数1Hz、昇温速度10℃/min、最小荷重2g、Axial force>Dynamic Force 1.5%、Strain 0.1%により行うことができる。また、試験片は長さ40mm、幅5mmを用意し、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得た。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析した。
<RSA-G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30~50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いた。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録した。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しなかった。ポリイミドフィルムの厚みは、前記膜厚測定法で測定した値を用いた。
JIS K7361-1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの膜厚方向位相差値(Rth)を測定した。膜厚方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から膜厚方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
YI値は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
JIS K-7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド302.0g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)2.49g(10mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)2.22g(5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで4時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)28.8g(90mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)42.0g(94.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は90:10であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20質量%)の25℃における粘度は40150cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は253000であった。
前記合成例1の手順で、TFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)が80:20になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液2とした。ポリイミド前駆体溶液2(固形分25質量%)の25℃における粘度は10180cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体2の重量平均分子量は109000であった。
前記合成例1の手順で、TFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)が60:40になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液3とした。ポリイミド前駆体溶液3(固形分30質量%)の25℃における粘度は17300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体3の重量平均分子量は86000であった。
前記合成例1の手順で、TFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)が95:5になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液4とした。ポリイミド前駆体溶液4(固形分25質量%)の25℃における粘度は95300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体4の重量平均分子量は186500であった。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド3081g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)322g(1.00mol)を入れ、TFMBを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)443g(1.00mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体5が溶解したポリイミド前駆体溶液5(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液5(固形分20重量%)の25℃における粘度は34920cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体5の重量平均分子量は408500であった。
表1に示すポリイミド前駆体溶液を用いて、下記(1)~(3)の手順に従って熱イミド化を行うことで、実施例1~4、及び、比較例2のポリイミドフィルムをそれぞれ作製した。
(1)各ポリイミド前駆体溶液をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、350℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラスより剥離し、各ポリイミドフィルムを得た。
ポリイミド前駆体溶液4を用い、下記(1)~(3)の手順に従って熱イミド化を行うことで、実施例5のポリイミドフィルムを作製した。
(1)連続した耐熱性ポリイミドフィルム上にポリイミド前駆体溶液4を塗布した。
(2)熱風式の連続加熱炉を用いて80℃~180℃まで段階的に昇温させ、合計120分程度乾燥する。
(3)窒素気流下、酸素濃度(100~1,000ppm)、遠赤外ヒーターを備えた連続加熱炉で昇温速度8℃/分で、330℃まで昇温し、330℃で15分間保持後、室温まで冷却した。その後、連続した基材からポリイミドフィルムを剥離し、実施例5のポリイミドフィルムを得た。
500mLのセパラブルフラスコにポリイミド前駆体溶液4(300.0g)と脱水されたジメチルアセトアミド(120.0g)を加え均一になるまで撹拌した。攪拌終了後、当該セパラブルフラスコに、触媒であるピリジン34.9g(0.22mol)と無水酢酸45.1g(0.22mol)を加え24時間室温で撹拌した。
得られた溶液(400.0g)を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(272.0g)を加え均一になるまで撹拌した。攪拌終了後、当該セパラブルフラスコにメタノール(672.0g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。得られた溶液にメタノール(2.016kg)を一気に加え白色スラリーを得た。得られたスラリーをろ過後、メタノールで5回洗浄することによって、ポリイミド1(60.5g)を得た。ポリイミド1をDMAcに溶かし、固形分20質量%のポリイミド溶液1を作製した。
上述のように得られたポリイミド溶液1を用いて、下記(1)~(3)の手順を行うことで、50μmの厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(1)ポリイミド溶液1をガラス上に塗布し、40℃の循環オーブンで60分乾燥した後、100℃の循環オーブンで30分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、250℃まで昇温し、250℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラスより剥離し、比較例1のポリイミドフィルムを得た。
表1より、tanδ曲線において、極大値が最大である第1ピークを有し、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値が0.18未満である比較例1及び2のポリイミドフィルムは、全光透過率が90%以上で透明性に問題は無いものの、複屈折率が0.008以上と位相差が大きいフィルムであった。
これらに対してtanδ曲線において、極大値が最大である第1ピークを有し、第1ピーク高温側温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上であり、本開示のポリイミドフィルムに相当する実施例1~5のポリイミドフィルムは、全光透過率が90%以上であり、且つ、複屈折率が0.004以下であることから、透明性に優れ、低位相差な樹脂フィルムであることが示された。
2 第1ピークの高温側極小値
2t 第1ピークの高温側極小値の温度
3 第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値
10、10’、10” 積層体
4 第一の透明電極
41 第一の導電部
5 第二の透明電極
51 第二の導電部
6 接着層
7 第一の取出し線
71 第一の端子
8 第二の取出し線
81 第二の端子
20、20’ タッチパネル部材
21 積層体の端縁
22 アクティブエリア
23 非アクティブエリア
24 接続部
201 第一の導電性部材
202 第二の導電性部材
30 液晶表示部
40 有機エレクトロルミネッセンス表示部
100、200 液晶表示装置
300、400 有機エレクトロルミネッセンス表示装置
Claims (9)
- 動的粘弾性測定により得られる温度-損失正接(tanδ)曲線において、極大値が最大である第1ピークの高温側極小値の温度以上500℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上であり、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’-オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’-オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物残基と
trans-シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン残基、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-[(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(4,1-フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン残基と、
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基とを含む、ポリイミド(但し、下記化学構造式のいずれかの酸二無水物の残基を含むポリイミドを除く)を含有する、ポリイミドフィルム。
- 前記第1ピークの高温側極小値の温度以上であって、300℃以上450℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
- 前記第1ピークの高温側極小値の温度以上であって、350℃以上450℃以下の温度領域におけるtanδの最大値が0.18以上である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
- 前記芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドであり、
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR 2 は、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、R 2 の総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は、請求項5に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム又は請求項5に記載の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム又は請求項5に記載の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム又は請求項5に記載の積層体と、
前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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