JP7107311B2 - 積層体、ディスプレイ用表面材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1に記載された積層体は、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返す試験においては良好な結果を示すものの、長時間折り曲げられた状態が続くと、平坦に戻り難いという問題があり、静的屈曲耐性の向上が求められている。また、特許文献1に記載された積層体は、ポリイミドフィルムと樹脂硬化層との密着性の更なる向上も求められている。また、ポリイミドフィルムと樹脂硬化層との屈折率差により干渉縞が生じ、視認性が低下するという問題もある。
前記相溶層が、前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とを含有し、
前記ポリイミドフィルムが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、積層体を提供する。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出した積層体の試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度が、30以下である、積層体を提供する。
本開示の1実施形態においては、中でも、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される積層体の黄色度を、積層体の膜厚(μm)で割った値が、0.04以下であると、積層体の黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上する点から好ましい。
前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備えるタッチパネル部材を提供する。
前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、
を有する液晶表示装置を提供する。
前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、相溶層を介して、ラジカル重合性合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を有し、
前記相溶層が、前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とを含有し、
前記ポリイミドフィルムが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、積層体である。
この理由については、以下のように推定される。
一方で、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返した場合の復元性は良好であっても、フィルムを長時間折り曲げられた状態が続くと、折り癖がつき、平坦に戻らない場合があり、特に、剛直性の高いポリイミドフィルムでは、フィルムを長時間折り曲げられた状態が続くと、平坦に戻り難いことが確認された。屈曲状態が長時間維持されることで屈曲部外周に引張りの応力が継続的に印加されることによるフィルムの塑性変形が起きており、それにより、屈曲の力を外しても復元し難くなっていると推察される。
また、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ハードコート性等の機能を有する機能層を積層することにより、所望の機能を有する積層体とすることができる。しかし、従来のポリイミドフィルムでは、ポリイミドフィルム自体の静的屈曲耐性が劣るため、更に機能層を積層した積層体では、静的屈曲耐性がより劣るという問題がある。また、従来のポリイミドフィルムでは、機能層を積層する場合、ポリイミドフィルムと機能層との密着性を十分なものにするためには、ポリイミドフィルムと機能層との間に接着層を設ける必要があった。ポリイミドフィルムと機能層との密着性が不十分であると、機能層が剥がれやすく、耐久性に劣り、品質に問題があるとみなされる。加えて、従来のポリイミドフィルムでは、ポリイミドフィルム上に形成される機能層とポリイミドフィルムとの屈折率が異なる場合、その屈折率差に由来する干渉縞が生じ、この干渉縞により、フレキシブルディスプレイ等に組み込んだ際の視認性が低下するという問題もあった。
それに対して、本発明者らは、芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を有する柔軟な分子骨格を特定量導入したポリイミドを用いると、静的屈曲耐性に優れたポリイミドフィルムが得られ、さらに、当該ポリイミドフィルムに、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を積層した積層体においては、ポリイミドフィルムと機能層との間に、ポリイミドフィルムの成分と機能層の成分とを混合して含有する相溶層が介在し、それにより、ポリイミドフィルムと機能層との密着性が向上し、干渉縞の発生が抑制され、屈曲耐性が向上した積層体が得られることを見出した。本開示に用いられるポリイミドフィルムは、芳香族環又は脂肪族環を含んだ剛直な分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を有する柔軟な分子骨格を特定量導入することで、分子運動による応力緩和が可能になったことにより、屈曲時にフィルムにかかる応力を低減できるため、静的屈曲耐性が向上していると推定される。また、本開示においては、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドが、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を特定量含有することにより、当該ポリイミドフィルムの耐溶剤性、及び、当該ポリイミドフィルムと機能層の形成に用いられる機能層用組成物との相溶性が適切になると考えられる。本開示に係る積層体では、機能層を形成する際、ポリイミドフィルム上に機能層用組成物の塗膜を形成する工程において、機能層用組成物中の成分の一部がポリイミドフィルムに浸透することにより相溶層が形成され、更に、形成される相溶層は、ポリイミドフィルムの成分と機能層の成分とが適度に混合したものとなり、光学的にも屈折率の中間層となるため、ポリイミドフィルムと機能層との密着性を向上する効果や干渉縞を抑制する効果に優れた態様になると考えられる。
以下、本開示に係る積層体の各構成について詳細に説明する。
本開示に用いられるポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有するものであり、本開示の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良い。
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
本開示で用いられるポリイミドは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する。
また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基としては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本開示の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6以上12以下のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していてもよい。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
なお、R2の総量の10モル%以上90モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、R2の総量の10モル%以上90モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1)のR2に、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、R2の総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環及び脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。
中でも、R2の総量の10モル%以上90モル%以下、望ましくは12モル%以上90モル%以下、14モル%以上90モル%以下、15モル%以上90モル%以下、10モル%以上50モル%以下、12モル%以上50モル%以下、14モル%以上50モル%以下、又は15モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、R2の総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残余(100%-x%)である10モル%以上90モル%以下、望ましくは10モル%以上88モル%以下、10モル%以上86モル%以下、10モル%以上85モル%以下、50モル%以上90モル%以下、50モル%以上88モル%以下、50モル%以上86モル%以下、又は50モル%以上85モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度と光透過性が向上する点から、前記一般式(1)におけるR1及びR2の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られたポリイミドの分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
前記R1において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
特に光透過性と表面硬度のバランスが良い点から、前記一般式(1)中のR1は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’-オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’-オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることがより好ましい。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、及び3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基の少なくとも一種を用いることが、表面硬度と光透過性の向上の点から好ましい。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することが好ましいが、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10~2000であり、更に15~1000であることが好ましい。
なお、各繰り返し単位におけるR1は各々同一であっても異なっていても良く、各繰り返し単位におけるR2は各々同一でも異なっていても良い。
なお、ポリイミドの数平均分子量は、後述するポリイミド前駆体の数平均分子量と同様にして測定することができる。
ポリイミドの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミドを0.1重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、37℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
また、本開示に用いられるポリイミドは、-150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましく、これにより、ポリイミドフィルムの室温での表面硬度を向上することができる。また、本開示に用いられるポリイミドは、0℃超過150℃未満の温度領域に更にtanδ曲線のピークを有していても良い。
本開示に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度-tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。
本開示に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、後述するポリイミドフィルムのガラス転移温度と同様にして測定することができる。
また、本開示に用いられるポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
本開示に用いられるポリイミドフィルムが、前記ポリイミドの他に添加剤を含有する場合、ポリイミドフィルム中の添加剤の含有量は、添加剤の種類により適宜調整され、特に限定はされないが、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより更に好ましい。
本開示に用いられるポリイミドフィルムは、本開示に係る積層体の屈曲耐性を向上する点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上であることが好ましく、125°以上であることが更に好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本開示に用いられるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
また、本開示に用いられるポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
本開示に用いられるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が30以下であることが好ましく、20以下であることが更に好ましく、15以下であることがより更に好ましく、10以下であることが特に好ましい。
また、本開示に用いられるポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、10以下であることが好ましく、7以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の間の1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
なお、本開示において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
前記ヘイズ値は、JIS K-7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
また、本開示に用いられるポリイミドフィルムは、-150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが、室温での表面硬度に優れる点から好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度-tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を-150℃~400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
本開示において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG-X 1N、ロードセル:SBL-1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが50μm±5μmであることが好ましい。
なお、本開示に用いられるポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、ポリイミドフィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光をポリイミドフィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2-nz}×dと表すことができる。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。
本開示に用いられるポリイミドフィルムの製造方法としては、例えば、第一の製造方法として、
下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
以下、各工程について詳細に説明する。
前記第一の製造方法において調製するポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
本開示に用いられるポリイミドフィルム乃至ポリイミドを製造するのに適した、本開示のポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体である。
前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のR1におけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のR2におけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ここで、前記一般式(1’)のR1、R2及びnは、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1)のR1、R2及びnと同様のものを用いることができる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド-d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
たとえば、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、表面硬度を維持しつつ屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物としては、前記ポリイミド前駆体溶液を用いてもよいし、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられ、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
なお、本開示において固形分とは、溶剤以外の成分をいう。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA-200型)を用いて求めることができる。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが最も好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
前記第一の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分~180分、更に、5分~150分とすることが好ましい。
前記第一の製造方法は、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドが25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合には、当該製造方法を好適に用いることができる。
また、前記第二の方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記第一の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
前記第二の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
また、前記第二の製造方法は、相溶層の厚みを厚くしやすく、機能層との密着性を向上しやすい点から好ましい。前記第二の製造方法によれば、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム及びリン酸タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種で染色した積層体の厚さ方向の断面において、染色された前記相溶層の厚みが5nm以上であり、10nmを超える部分を有するポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
本開示に係る積層体が有する機能層は、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、防汚性等の機能を発揮する層が挙げられ、公知の機能層を用いることができる。
本開示に用いられる機能層としては、中でも、本開示に係る積層体の表面硬度を向上する点から、ハードコート層として機能するものであることが好ましい。ここで、「ハードコート層」とは、表面硬度を向上させるための層であり、具体的には、JIS 5600-5-4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいう。
また、本開示に用いられる機能層は、効果が損なわれない範囲において、バインダー成分として、前記重合物の他、未反応のモノマー及びオリゴマー等を含有していても良い。
ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を、必要に応じて重合開始剤を用い、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等と称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千の多官能(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーを好ましく使用でき、またアクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを好ましく使用できる。前記機能層が、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの重合物を含むことにより、機能層の硬度を向上し、さらに、密着性を向上し、干渉縞の発生を抑制することができる。また、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーも好ましく使用できる。前記機能層が、前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーの重合物を含むことにより、機能層の硬度及び屈曲耐性を向上し、さらに、密着性を向上し、干渉縞の発生を抑制することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られた機能層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られた機能層を、エポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
また、前記機能層が含有するラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物の総量100質量%中、前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの重合物の含有割合が、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、中でも、表面硬度及び屈曲耐性の点から、5官能以上で、重量平均分子量が1000以上1万以下のものが好ましい。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いても良く、例えば、日本合成化学工業(株)製:UV1700B(分子量2000、10官能)、UV6300B(分子量3700、7官能)及びUV7640B(分子量1500、7官能)、日本化薬(株)製:DPHA40H(分子量7000、8官能)、UX5000(分子量1000、5官能)及びUX5001T(分子量6200、8官能)、根上工業(株)製:UN3320HS(分子量5000、15官能)、UN904(分子量4900、10官能)、UN3320HC(分子量1500、6官能)及びUN3320HA(分子量1500、6官能)、荒川化学工業(株)製:BS577(分子量1000、6官能)、並びに新中村化学工業(株)製:U15H(15官能)及びU6H(6官能)等を挙げることができる。
前記任意添加成分は、機能層に付与する機能に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、硬度や屈折率を調整するための無機又は有機微粒子、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、防眩剤、防汚剤、帯電防止剤等が挙げられ、更に、レベリング剤、界面活性剤、易滑剤、各種増感剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を含んでいても良い。
前記無機又は有機微粒子の平均粒径は、前記機能層の電子顕微鏡による断面観察により測定することができ、任意に選択した10個の微粒子の粒径の平均を平均粒径とする。
本開示に係る積層体が有する機能層の厚さは、機能層が有する機能及び積層体の用途により適宜選択されれば良いが、機能層の機能を発揮させる点から、各機能層において、2μm以上であることが好ましく、更に3μm以上であることが好ましく、一方で、積層体の屈曲耐性の点及び薄膜化の点から、50μm以下であることが好ましく、更に30μm以下であることが好ましく、より更に20μm以下であることが好ましく、より更に10μm以下であることが好ましい。
なお、本開示に係る積層体が有する各層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察される積層体の厚さ方向の断面から測定することができる。
本開示に係る積層体が2層以上の機能層を有する場合、機能層の合計厚さは、特に限定はされないが、積層体の屈曲耐性の点及び薄膜化の点から、50μm以下であることが好ましく、更に30μm以下であることが好ましく、より更に20μm以下であることが好ましく、より更に15μm以下であることが好ましい。機能層の合計厚さの下限は、特に限定はされないが、機能層の機能を発揮させる点から、2μm以上であることが好ましく、更に3μm以上であることがより好ましい。
前記マルテンス硬さは、機能層の組成により調整することができ、例えば、無機又は有機微粒子の含有量を多くすることにより、マルテンス硬さを増大させることができる。
なお、前記マルテンス硬さは、ナノインデンテーション法による硬度測定により、圧子を押込んだときの硬度であり、例えば、HYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うことができる。具体的には、積層体の機能層側の表面に三角錐状の圧子を押し込み、一定保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該最大荷重(Pmax(μN))と押し込んだ深さのくぼみ面積(A(nm2))とを用い、Pmax/Aにより、マルテンス硬さを算出することができる。
本開示に係る積層体において、前記機能層は、例えば、
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記機能層用組成物の塗膜を硬化する工程と、を有する方法により形成することができる。
前記機能層の形成に用いられる機能層用組成物は、少なくともラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含み、更に必要に応じて、重合開始剤、溶剤、及びその他の任意添加成分を含有する。
前記機能層用組成物におけるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の合計含有量は、機能層の表面硬度を向上し、相溶層が形成されやすいことにより機能層の密着性を向上し、干渉縞の発生を抑制する点から、前記機能層用組成物が無機又は有機微粒子を含有しない場合は、機能層用組成物の全固形分中に45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、前記機能層が無機又は有機微粒子を含有する場合は、機能層用組成物の全固形分中に30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の合計含有量の上限は特に限定されないが、前記機能層用組成物が無機又は有機微粒子を含有する場合は、前記機能層用組成物の全固形分中に60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
前記機能層用組成物に用いられる溶剤としては、中でも、相溶層が形成されやすく、機能層とポリイミドフィルムとの密着性が向上し、干渉縞の発生が抑制されやすい点から、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンから選ばれる少なくとも1種を含有する溶剤が好ましい。また、溶剤全体に対する、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンから選ばれる少なくとも1種の合計含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより更に好ましい。
任意添加成分として含まれる前記無機又は有機微粒子は、前記機能層用組成物においては、組成物中の微粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)が、硬度向上の点から、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることが好ましく、一方で、透明性の点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
当該メジアン径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
また、前記無機又は有機微粒子は、透明性及び硬度の点から、粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記機能層用組成物の塗膜を硬化する工程においては、前記機能層用組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより、前記塗膜を硬化することができる。前記塗膜を硬化することにより、前記機能層用組成物中の前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種が重合して重合物が生成し、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を形成することができる。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む第一の機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記第一の機能層用組成物の塗膜の表面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む第二の機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記第一の機能層用組成物の塗膜と、前記第二の機能層用組成物の塗膜とを硬化する工程と、を有する方法が挙げられる。
3層以上の多層構成を有する機能層を形成する方法としては、例えば、前述した方法において、前記第二の機能層用組成物の塗膜を形成する工程の後に、当該塗膜上に、更に所望の機能層用組成物の塗膜を積層する工程と、ポリイミドフィルム上に積層した各塗膜を硬化する工程と、を有する方法が挙げられる。
また、多層構成を有する機能層を形成する方法においては、各機能層用組成物の塗膜を形成する工程の後、当該塗膜上に別の機能層用組成物の塗膜を形成する前に、当該塗膜を半硬化又は硬化する工程を有していてもよく、半硬化する工程を有することが、密着性の観点から好ましい。例えば、2層構成を有する機能層を形成する場合、具体的には、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む第一の機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記第一の機能層用組成物の塗膜を半硬化させる工程と、
前記半硬化させた前記第一の機能層用組成物の塗膜の表面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む第二の機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記半硬化させた前記第一の機能層用組成物の塗膜と、前記第二の機能層用組成物の塗膜とを硬化する工程と、を有する方法が好ましい。
本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、相溶層を介して、前記機能層を有し、前記相溶層は、前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とを含有する層である。すなわち、前記相溶層は、前記ポリイミドフィルムの構成成分と同じ成分のうち少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分と同じ成分のうち少なくとも1種の成分とを含有する層である。また、前記機能層が2層以上の多層構成を有する場合は、前記相溶層が含有する前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とは、前記相溶層に隣接して位置する機能層の構成成分と同じ成分のうち少なくとも1種の成分である。
また、ポリイミドフィルムと機能層との密着性の点、及び干渉縞の発生を抑制する点から、前記相溶層が含有する前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分は、ポリイミドを含むことが好ましく、前記相溶層が含有する前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含むことが好ましい。
前記相溶層は、前記機能層を形成する際、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に前記機能層用組成物の塗膜を形成する工程において、前記機能層用組成物中の成分の1部が、前記ポリイミドフィルムに浸透することにより形成される。
本開示に係る積層体は、ポリイミドフィルムと機能層との間に相溶層を有することにより、機能層とポリイミドフィルムとの密着性を向上し、干渉縞の発生を抑制し、更に、屈曲耐性を向上したものである。
四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム及びリン酸タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種は、非晶部位などの分子運動性が大きく、低密度な部位に入り込んで反応しやすい。前記相溶層は、前記一般式(1)で表されるポリイミドを含有するポリイミドフィルム上に機能層を形成する際に、機能層用組成物が前記ポリイミドフィルム表面に浸透することにより形成されるものであり、前記相溶層となる領域は、機能層用組成物が浸透することにより、ポリイミドの密度が適度に低下して、低密度領域になると考えられる。四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム及びリン酸タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種は、当該低密度領域に付着することにより、前記相溶層を選択的に染色することができると考えられる。本開示においては、中でも、四酸化ルテニウム及び四酸化オスミウムから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、四酸化ルテニウムを用いることがより好ましい。
このようにして染色した前記超薄切片を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)等の電子顕微鏡により観察することにより、染色された相溶層を観察することができる。
なお、積層体の任意の箇所において、染色された前記相溶層の厚みが前記範囲内であることが好ましい。
本開示に係る積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に200μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
本開示に係る積層体は、屈曲耐性に優れる点から、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上であることが好ましい。なお、静的屈曲試験の方法は、上述したポリイミドフィルムの静的屈曲試験と同様の方法とすることができる。積層体の静的屈曲試験において、積層体は、機能層側表面が内側になるように屈曲させる。
本開示の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
また、本開示の積層体は、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.04以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましい。
本開示の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本開示の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
[密着性試験方法]
10cm×10cmに切り出した積層体の試験片の機能層について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、機能層の剥がれの有無を観察する。
本開示に係る積層体の製造方法としては、前述した本開示に係る積層体が得られる方法であれば特に限定はされないが、例えば、
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有するポリイミドフィルムを準備する工程と、
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含む機能層用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記機能層用組成物の塗膜を硬化する工程と、を有する、
前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、相溶層を介して、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を有し、前記相溶層が、前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とを含有する積層体の製造方法、を挙げることができる。
なお、前記積層体の製造方法において、前記ポリイミドフィルムは、前述したポリイミドフィルムの製造方法と同様の方法により準備することができる。また、前記機能層用組成物の塗膜を形成する工程、及び、前記機能層用組成物の塗膜を硬化する工程は、前述した機能層の形成方法と同様の方法とすることができる。
本開示の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本開示の積層体は、屈曲耐性が向上し、ポリイミドフィルムと機能層との密着性に優れ、干渉縞の発生が抑制された良好な品質を有するものであり、更に好ましい態様においては優れた表面硬度及び光透過性を有するものであるため、中でも、ディスプレイ用表面材として好適に用いることができ、特に、フレキシブルディスプレイ用の表面材として好適に用いることができ、折り畳み可能なディスプレイ用の表面材としても好適に用いることができる。
また、本開示の積層体は、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本開示の積層体は、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
本開示のディスプレイ用表面材は、前述した本開示の積層体である。
本開示のディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本開示のディスプレイ用表面材は、前述した本開示の積層体と同様に、屈曲耐性が向上し、ポリイミドフィルムと機能層との密着性に優れ、干渉縞の発生が抑制された良好な品質を有するものであり、更に好ましい態様においては優れた表面硬度及び光透過性を有するものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本開示のタッチパネル部材は、前述した本開示の積層体と、
前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備える。
本開示のタッチパネル部材に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に、相溶層を介して機能層を有するものであることが好ましい。
また、本開示のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本開示のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本開示のタッチパネル部材と、表面材としての本開示の積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図12に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図12に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図12では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本開示においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm~500nm程度に形成することができる。
本開示のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm~1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm~200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm~20μm程度に形成され、幅寸法は20μm~300μm程度に形成される。
図15及び図16は、各々本開示の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図15に示す第一の導電性部材201は、本開示の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図16に示す第二の導電性部材202は、本開示の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図17は、本開示のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図17に示すタッチパネル部材20’は、図15に示す第一の導電性部材201と、図16に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本開示において、例えば、本開示の積層体と本開示のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本開示のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本開示のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本開示のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本開示のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
本開示の液晶表示装置は、前述した本開示の積層体と、前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本開示の液晶表示装置に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に、相溶層を介して機能層を有するものであることが好ましい。
また、本開示の液晶表示装置は、前述した本開示のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本開示の液晶表示装置が有する対向基板は、本開示の積層体を備えるものであっても良い。
本開示の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本開示の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本開示の積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本開示の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本開示の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本開示の積層体と、前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本開示の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に、相溶層を介して機能層を有するものであることが好ましい。
また、本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本開示のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本開示の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本開示の積層体を備えるものであっても良い。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本開示の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本開示の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本開示の積層体を備えるものを用いても良い。
[評価方法]
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN-メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3~60時間撹拌することにより、0.1重量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルム又は積層体の試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルム又は積層体の膜厚とした。
2mm×10mmの短冊状に切り出した積層体のサンプルを、エポキシ樹脂により包理固化して固定した後、固定されたサンプルの厚さ方向に、ミクロトーム(ライカ製、LEICA EM UC7)を用いて50nm以上150nm程度の幅で切断して作製した超薄切片を、四酸化ルテニウム(レアメタリック社製)とともに、30mL容量の秤量瓶に入れて密閉し、室温(25℃)で30分間放置した。その後、秤量瓶の蓋を空け、15分間放置した後、超薄切片に含まれるサンプルの厚さ方向の断面をSTEMにて観察した。
一方で、四酸化ルテニウムによる染色を行う前の超薄切片に含まれるサンプルの厚さ方向の断面もSTEMにて観察した。
各実施例及び各比較例において、四酸化ルテニウムによる染色前後のSTEM写真を比較することにより、染色された相溶層を確認して厚みを測定し、下記評価基準により評価した。なお、比較例3は、染色された相溶層の界面が不明瞭で、厚みを測定することができなかった。
(評価基準)
A:染色された相溶層の厚みが、任意の箇所において5nm以上であった。
B:ポリイミドフィルムと機能層との間において、染色された相溶層を観察できない箇所があり、染色された相溶層が海島状であった。
実施例2で得られた積層体の厚さ方向の断面を、四酸化ルテニウムにより染色した後のSTEM画像を図5に示し、染色する前のSTEM画像を図6に示す。
実施例3で得られた積層体の厚さ方向の断面を、四酸化ルテニウムにより染色した後のSTEM画像を図7に示す。
図3に示す実施例1の積層体の染色後のSTEM画像、図5に示す実施例2の積層体の染色後のSTEM画像、図7に示す実施例3の積層体の染色後のSTEM画像からは、各積層体が、ポリイミドフィルム1の一方の面に、四酸化ルテニウムにより染色された相溶層2を介して、機能層3を有していることを観察することができた。
比較例2で得られた積層体の厚さ方向の断面を、四酸化ルテニウムにより染色した後のSTEM画像を図8に示し、染色する前のSTEM画像を図9に示す。図8に示す比較例2の積層体の染色後のSTEM画像からは、ポリイミドフィルム1と機能層3との間において、四酸化ルテニウムにより染色された相溶層2を観察できない箇所があった。
比較例3で得られた積層体の厚さ方向の断面を、四酸化ルテニウムにより染色した後のSTEM画像を図10及び図11に各々示す。図10に示すSTEM画像と、図11に示すSTEM画像とは、撮影時の倍率が異なっている。図10及び図11に示す比較例3の積層体の染色後のSTEM画像からは、ポリイミドフィルムと機能層との界面が不明瞭であり、四酸化ルテニウムにより染色された相溶層を観察することができなかった。
10cm×10cmに切り出した積層体の試験片の機能層について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、機能層の剥がれの有無を観察し、下記評価基準により密着性を評価した。
(評価基準)
A:テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後も機能層の剥がれが生じなかった。
B:テープによる剥離操作を1回実施した後は機能層の剥がれが生じないが、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施するまでに、機能層の剥がれが生じた。
C:テープによる剥離操作を1回実施した後に、機能層がカットの縁に沿って全面的に剥がれた。
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用い、目視にて積層体の干渉縞の有無を検査し、下記評価基準で評価した。なお、積層体のポリイミドフィルム側表面は黒インキで塗りつぶし、機能層側表面に干渉縞検査ランプをあて、反射観察にて評価を行った。
(評価基準)
A:干渉縞の発生が見られなかった。
B:干渉縞が薄く観察された。
C:干渉縞がはっきり観察された。
積層体の作製に用いたポリイミドフィルム、及び積層体の機能層側表面について、鉛筆硬度の測定を行った。
ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をサンプル表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nに変更する以外は同様にして、評価した。
積層体の作製に用いたポリイミドフィルム、及び積層体について、静的屈曲試験を行った。
以下、静的屈曲試験の方法について、図2を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルム又は積層体の試験片11を長辺の半分の位置で折り曲げ、試験片11の長辺の両端部が厚み6mmの金属片12(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、試験片11の両端部と金属片12との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した。試験片11が固定された金属片12を、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)13a、13bで挟み、試験片11を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片12上で試験片11がない部分にダミーの試験片14a、14bを挟み込み、ガラス板13a、13bが平行になるようにテープで固定した。
このようにして屈曲した状態で固定した試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と試験片固定用のテープを外し、試験片11にかかる力を解放した。その後、試験片11の一方の端部を固定し、試験片11にかかる力を解放してから30分後に試験片11の内角を測定した。
なお、積層体は、機能層側表面が内側になるように屈曲させた。当該静的屈曲試験によって試験片が影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光をフィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
YI値は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V-7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X-1.0592Z)/Y
ヘイズ値は、JIS K-7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド3327.9g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)59.7g(240.2mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)53.3g(120.1mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで4時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)472.4g(1475.3mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)663.0g(1492.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は86:14であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度、及びGPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量を表1に示す。
前記合成例1の手順で、表1に記載の原料、固形分濃度になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液2~5及び比較ポリイミド前駆体溶液2とした。
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド169.5g、及び、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)32.0g(100mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)44.2g(99.5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体1が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体溶液1の25℃における粘度、及びGPCによって測定した比較ポリイミド前駆体1の重量平均分子量を表1に示す。
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド345.3g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)49.7g(200mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)88.4g(199mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体3が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液3(固形分40重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体溶液3(固形分40重量%)の25℃における粘度、及びGPCによって測定した比較ポリイミド前駆体3の重量平均分子量を表1に示す。
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
AprTMOS:1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
1.ポリイミドフィルムの準備
ポリイミド前駆体溶液1~5及び比較ポリイミド前駆体溶液1~3を用い、下記(1)~(3)の手順を行うことで、約50μmの厚みのポリイミドフィルムをそれぞれ作製した。
(1)各ポリイミド前駆体溶液をガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラス板より剥離し、各ポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの一方の面に、機能層1の硬化後の厚みが7μmとなるように、下記組成の機能層用組成物1を塗布し、70℃で1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を空気中にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜をハーフキュアーさせ、機能層用組成物1の半硬化膜を形成した。次いで、当該半硬化膜の表面に、機能層2の硬化後の厚みが3μmとなるように、下記組成の機能層用組成物2を塗布し、70℃で1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を酸素濃度が200ppm以下の条件下にて積算光量が200mJ/cm2になるように照射して塗膜を完全硬化させることにより、ポリイミドフィルム上に、厚さ7μmの機能層1と、厚さ3μmの機能層2とをこの順で形成し、全体厚みが約60μmの積層体を作製した。各積層体の膜厚を表2に示す。
<機能層用組成物1の組成>
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部
・ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 25質量部
・異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形分換算)
・光重合開始剤(イルガキュア184、BASF製) 4質量部
・フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2重量部(固形分換算)
・溶剤(メチルイソブチルケトン(MIBK)) 150質量部
<機能層用組成物2の組成>
・ウレタンアクリレート(UX5000、日本化薬社製) 25質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 50質量部
・多官能アクリレートポリマー(アクリット8KX-012C、大成ファインケミカル社製) 25質量部(固形分換算)
・防汚剤(BYKUV3500、ビックケミー社製) 1.5質量部(固形分換算)
・光重合開始剤(イルガキュア184、BASF製) 4質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン(MIBK)) 150質量部
それに対して、比較例1、2の積層体は、機能層の密着性に劣り、干渉縞が観察され、静的屈曲耐性も劣っていた。比較例3の積層体は、静的屈曲耐性が大きく劣り、表面硬度にも劣っていた。
1.ポリイミドフィルムの準備
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
合成例1と同様にして、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。
上記ポリイミド前駆体溶液500gを室温に下げ、触媒であるピリジン(42.0g、531mmol)と無水酢酸(54.2g、531mol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液(596.2g)を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(403.8g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(3000g)を徐々に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド6(100g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は114322であった。
(2)ポリイミドフィルムの製造
ポリイミド6の粉体を溶剤(ジクロロメタン)に溶かし、固形分17質量%のポリイミド溶液6を作製した。ポリイミド溶液6(固形分17質量%)の25℃における粘度は4801cpsであった。
上述のように得られたポリイミド溶液6を用いて、下記(i)~(iii)の手順を行うことで、約50μmの厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド溶液6をガラス板上に塗布し、自然乾燥後、フィルムをガラス板より剥離した。
(ii)フィルムを50℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(iii)フィルムを、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの一方の面に、実施例1と同様にして、厚さ7μmの機能層1と、厚さ3μmの機能層2とをこの順で形成し、全体厚みが約60μmの積層体を作製した。積層体の膜厚を表4に示す。
1.ポリイミドフィルムの準備
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
前記実施例6のポリイミドを合成した手順で、合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1の代わりに、それぞれ合成例2~5と同様にして得られたポリイミド前駆体溶液2~5を用いた以外は同様に反応させて、ポリイミド7~10を得た。
(2)ポリイミドフィルムの製造
実施例6において、ポリイミド6の代わりに、ポリイミド7~10を用い、表3に記載の固形分濃度になるように調整した以外は実施例6と同様にして、表3に示すポリイミド溶液7~10を得た。
実施例6においてポリイミド溶液6を用いる代わりに、ポリイミド溶液7~10を用いた以外は実施例6と同様にして、実施例7~10のポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムの一方の面に、実施例1と同様にして、厚さ7μmの機能層1と、厚さ3μmの機能層2とをこの順で形成し、全体厚みが約60μmの積層体を作製した。各積層体の膜厚を表4に示す。
2 相溶層
3 機能層
10、10’、10” 積層体
11 試験片
12 金属片
13a、13b ガラス板
14a、14b ダミーの試験片
4 第一の透明電極
41 第一の導電部
5 第二の透明電極
51 第二の導電部
6 接着層
7 第一の取出し線
71 第一の端子
8 第二の取出し線
81 第二の端子
20、20’ タッチパネル部材
21 積層体の端縁
22 アクティブエリア
23 非アクティブエリア
24 接続部
201 第一の導電性部材
202 第二の導電性部材
30 液晶表示部
40 有機エレクトロルミネッセンス表示部
100、200 液晶表示装置
300、400 有機エレクトロルミネッセンス表示装置
Claims (16)
- ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、相溶層を介して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する機能層を有し、
前記相溶層が、前記ポリイミドフィルムの構成成分の少なくとも1種の成分と、前記機能層の構成成分の少なくとも1種の成分とを含有し、
前記ポリイミドフィルムが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、積層体。
- 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR2における、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基である、請求項1に記載の積層体。
- 四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム及びリン酸タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種で染色した積層体の厚さ方向の断面において、前記ポリイミドフィルムと前記機能層との間に前記相溶層が途切れた箇所がなく、染色された前記相溶層の厚みが任意の箇所において5nm以上である、請求項1又は2に記載の積層体。
- 下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出した積層体の試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。 - JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度が、30以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。 - 前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度を、膜厚(μm)で割った値が、0.04以下である、請求項5に記載の積層体。
- 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR1が、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’-オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’-オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR2における、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、1,4-シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記機能層が、多官能(メタ)アクリレートモノマーの重合物を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記ポリイミドフィルムが位置する側とは反対側の前記機能層の表面のマルテンス硬さが、350MPa以上1000MPa未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体。
- 前記請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
- フレキシブルディスプレイ用である、請求項12に記載のディスプレイ用表面材。
- 前記請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体と、
前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部を有する透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を備えるタッチパネル部材。 - 前記請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体と、
前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、
を有する液晶表示装置。 - 前記請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体と、
前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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