JP2019137865A - ポリイミド組成物、ポリイミド組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ディスプレイ用光学部材の製造方法、タッチパネル部材の製造方法、液晶表示装置の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法 - Google Patents

ポリイミド組成物、ポリイミド組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ディスプレイ用光学部材の製造方法、タッチパネル部材の製造方法、液晶表示装置の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法 Download PDF

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【課題】含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、不純物含有量が少なく、所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたポリイミド組成物を提供する。【解決手段】繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有し、且つアミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であり、前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量であるポリイミド組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド組成物、ポリイミド組成物の製造方法、ポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ディスプレイ用光学部材の製造方法、タッチパネル部材の製造方法、液晶表示装置の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
一般に、ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸とジアミンとの反応により得られたポリアミド酸を、脱水閉環反応(イミド化反応)させて得られる高耐熱性の樹脂である。中でも、繰り返し単位中にフッ素原子を有する含フッ素ポリイミドは、一般に、高い光学特性を得られる等の優れた特性を有するため、例えばディスプレイ用表面材等の素材として注目されている。
上記した脱水閉環反応(イミド化反応)は、一般には塩基性触媒及び脱水剤を用いて行われており、イミド化反応後には、反応に使用した触媒やその分解物が、溶液中に不純物として残留する。このような不純物の含有量が多いポリイミドを用いてフィルム等を成膜すると、成膜体の光学特性が悪化する等の現象が発生し、成膜体において所望の特性が得られなくなる。
このため、イミド化反応後、精製処理を行って、溶液中に残留する不純物を除去することが、一般に行われている。
例えば特許文献1には、耐熱性が高く、かつヘイズ値が小さいフィルムを提供することを目的として、粉末状のフッ素化ポリイミドを良溶媒に溶解させた溶液を貧溶媒に滴下してフッ素化ポリイミドを沈殿させ、精製されたフッ素化ポリイミドを回収する技術が開示されている。
また、特許文献2には、ポリイミドとフェノール系溶剤とから構成されるポリイミド溶液に貧溶媒を接触させて、析出する固形分を分離する、ポリイミド粉の製造方法が開示されている。
特開2016−27146号公報 特許3591979号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、精製対象が含フッ素ポリイミドである場合、精製後に得られるポリイミド組成物が構造変化し、所望の特性が得られない又は長期間保存後に特性が変化し易い等の不具合が生じたり、不純物の含有量が十分に低減された良好な粉末体が得られない等の不具合が生じ易いものであった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、不純物含有量が少なく、所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたポリイミド組成物、前記ポリイミド組成物の製造方法、並びに前記ポリイミド組成物を用いたポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ディスプレイ用光学部材の製造方法、タッチパネル部材の製造方法、液晶表示装置の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のポリイミド組成物は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有し、且つアミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であり、前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である。
本発明のポリイミド組成物においては、前記アルコール成分として、二級アルコール又は三級アルコールを含有することが、ポリイミド組成物において所望の特性を得る点及び保存安定性を向上させる点から好ましい。
本発明のポリイミド組成物においては、前記塩基性触媒は、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
本発明のポリイミド組成物においては、前記含フッ素ポリイミドのイミド化率が99%以上であることが、ポリイミド組成物において所望の特性を得る点から好ましい。
本発明のポリイミド組成物においては、前記ポリイミド組成物は、平均粒径が1000μm以下の粉末体であることが、前記ポリイミド組成物における不純物含有量の低減の点から好ましい。
本発明のポリイミド組成物においては、含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物であって、下記測定法による黄色度の値が、10以下であることが、ポリイミド組成物において所望の特性を得る点から好ましい。
[測定法]
含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物を、室温(25℃)のジメチルアセトアミドに20質量%となるように溶解させた試験用溶液を、10mm×10mm×43mmの石英セルに入れた状態で、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で透過率を測定する。当該透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より黄色度を算出する。
黄色度(YI)=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
本発明のポリイミド組成物の製造方法は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有する含フッ素ポリイミドと、前記含フッ素ポリイミドの良溶媒と、塩基性触媒とを含有する含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程と、前記含フッ素ポリイミド溶液に、含フッ素ポリイミドの貧溶媒として、アルコールを滴下し、前記含フッ素ポリイミド溶液に、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを析出させる工程と、前記析出した含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する工程と、を有し、前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である。
前記含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有するポリイミド前駆体を、塩基性触媒を用いてイミド化して含フッ素ポリイミドを合成する工程であってもよい。
本発明のポリイミド組成物の製造方法においては、前記貧溶媒として、二級アルコール又は三級アルコールを用いることが、ポリイミド組成物において所望の特性を得る点及び保存安定性を向上させる点から好ましい。
本発明のポリイミド組成物の製造方法においては、前記塩基性触媒は、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
本発明のポリイミド組成物の製造方法においては、前記回収されたポリイミド組成物は、前記含フッ素ポリイミドのイミド化率が99%以上であることが、ポリイミド組成物において所望の特性を得る点から好ましい。
本発明のポリイミド組成物の製造方法においては、前記回収されたポリイミド組成物は、粒径が1000μm以下の粉末体であることが、前記ポリイミド組成物における不純物含有量の低減の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミド組成物を製造する工程と、前記工程により得られるポリイミド組成物と、有機溶媒とを含有するポリイミド塗工液を調製する工程と、前記ポリイミド塗工液を支持体に塗布することにより、前記ポリイミド塗工液の塗膜を形成する工程と、を含む。
本発明の積層体の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程と、前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、前記塗膜を硬化する工程と、を含む。
本発明のディスプレイ用光学部材の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む。
本発明のタッチパネル部材の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材の製造方法である。
本発明の液晶表示装置の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置の製造方法である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、前記本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法である。
本発明によれば、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、不純物含有量が少なく、所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたポリイミド組成物、前記ポリイミド組成物の製造方法、並びに前記ポリイミド組成物を用いたポリイミドフィルムの製造方法、積層体の製造方法、ディスプレイ用光学部材の製造方法、タッチパネル部材の製造方法、液晶表示装置の製造方法、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図1に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図1及び図2に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。 本発明の製造方法により得られる積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の製造方法により得られる積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
I.ポリイミド組成物
本発明のポリイミド組成物は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有し、且つアミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であり、前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である。
本発明によれば、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、不純物含有量が少なく、所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたポリイミド組成物を提供することができる。
ポリイミドを合成する際には、一般に、塩基性触媒等のイミド化触媒を用いて、ポリアミド酸をイミド化(脱水閉環反応)することが行われている。このため、イミド化後のポリイミドを含むポリイミド溶液中には、イミド化に用いた塩基性触媒等の不純物が含まれており、これらの不純物を除去するため、前記ポリイミド溶液を精製処理し、精製処理により析出したポリイミドを含むポリイミド組成物を回収することが行われている。ポリイミド溶液の精製処理は、一般に、ポリイミドに対する貧溶媒を用いて行われており、一般的な貧溶媒として、例えば、エステル系有機溶媒、脂肪族系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒等が用いられている。
一方、含フッ素ポリイミドは、有機溶媒に対する溶解性が高いため、精製処理に用いる貧溶媒として、上記したエステル系有機溶媒等を貧溶媒として用いると、含フッ素ポリイミドを析出させることができない、又は含フッ素ポリイミドが凝集体として析出してしまい、不純物残留量が低減された良好な粉末体として、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物を回収できない、等の不具合が発生する。これに対し、含フッ素ポリイミドの精製処理の貧溶媒として、アルコール系の有機溶媒を用いると、不純物残留量が低減された良好な粉末体として、ポリイミド組成物を回収することが可能となる。
貧溶媒として使用したアルコール系の有機溶媒は、精製処理やその後の乾燥処理により、その大半が、ポリイミド組成物から除去されているが、精製処理や乾燥処理で除去しきれなかったアルコール系の有機溶媒の一部が、回収後のポリイミド組成物中に残留することがある。また、ポリアミド酸のイミド化に用いた塩基性触媒は、精製処理により、その大半がポリイミド組成物から除去されているものの、回収されたポリイミド組成物中には、精製処理により除去しきれなかった塩基性触媒が微量に残留することがある。このため、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物中には、貧溶媒として使用した、アルコール系の有機溶媒であるアルコール成分と、精製処理により除去しきれなかった塩基性触媒とが、それぞれ所定量ずつ残留して、ポリイミド組成物中で共存することがある。
上述のポリイミド精製工程も含め、アルコール成分と塩基性触媒とが共存する場合、アルコール成分(即ち、アルコール分子)は、塩基性触媒によって活性化され、求核性が高くなる。その状態で、アルコール成分が、含フッ素ポリイミドと共存すると、当該アルコール成分は、含フッ素ポリイミドと反応し、アミド酸エステルを生成する。
ポリイミドは、一般には安定構造であることが知られているが、含フッ素ポリイミドは、フッ素原子を有することによる嵩高さと電子吸引性とにより、一般的なポリイミドと比較して、イミド体としての安定性が低くなっている。
従って、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物中に、塩基性触媒とアルコール成分とが共存する状態にあると、塩基性触媒によってプロトンが引き抜かれ求核性が高められたアルコール成分(以下、活性化アルコール成分という)により、含フッ素ポリイミドのイミド結合(カルボニル基)が攻撃され、当該イミド結合がエステル化反応してアミド酸エステル構造に変化して(例えば、下記式(I)参照)、含フッ素ポリイミドの分子構造が変化する。
また、精製処理後に回収されたポリイミド組成物中に、アルコール成分及び塩基性触媒が、それぞれ所定量以上含まれると、前記ポリイミド組成物中における、活性化アルコール成分の相対的な濃度が高まり、よりポリイミドとの反応が進行しやすくなる。含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物中において、活性化アルコール成分の相対的な濃度が高くなると、当該活性化アルコール成分により求核攻撃されるイミド結合が多くなるため、イミド結合のエステル化反応により、アミド酸エステル構造に構造変化した状態で、ポリイミド組成物中に含まれる繰り返し単位の割合が増加し、イミド化率が低下する。この場合には、当該ポリイミド組成物を用いて作製したポリイミドフィルムにおいて、例えば、強度が低下したり、光学特性が低下したりして、所望の特性が得られないという不具合が発生する。
加えて、精製処理後に回収されたポリイミド組成物中に、アルコール成分及び塩基性触媒が、それぞれ所定量以上含まれると、精製処理後、所定期間経過後のポリイミド組成物中において、上記した、活性化アルコール成分の生成が生じたり、当該活性化アルコール成分によるイミド結合への求核攻撃が生じたりすることがある。この場合には、精製処理後、所定期間経過後のポリイミド組成物中において、上記したイミド結合のエステル化反応が発生するため、当該エステル化反応により、例えばアミド酸エステル構造に構造変化した状態でポリイミド組成物中に含まれる繰り返し単位の割合が、経時的に増加し、イミド化率が経時的に低下する。この場合にも、当該ポリイミド組成物を用いて作製したポリイミドフィルムでは、例えば光学特性が低下したり、強度が低下したりして、所望の特性が得られなくなるため、ポリイミド組成物としての保存安定性に劣るものとなる。
本発明のポリイミド組成物は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有し、且つアミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下とすることで、当該ポリイミド組成物中における、活性化アルコール成分の生成量を少なく抑えることができる。このため、当該ポリイミド組成物中における、活性化アルコール成分によるイミド結合(カルボニル基)への求核攻撃や、これに伴う、イミド結合のエステル化反応を抑制することができる。従って、アルコール系有機溶媒を用いた精製処理を経ることで、不純物残量を低減させた、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物において、上記したイミド結合のエステル化反応により構造変化した状態で含まれる繰り返し単位(例えば、アミド酸エステル構造)の含有割合を、少ない量に抑制することができ、且つ、このように構造変化した状態でポリイミド組成物中に含まれる繰り返し単位が、経時的に増加するのを抑制することができる。従って、不純物含有量が少なく、所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたポリイミド組成物を提供することができる。
(a)含フッ素ポリイミド
本発明のポリイミド組成物は、含フッ素ポリイミドを含有する。本発明のポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドは、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有するものである。
本発明のポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものであって、前記テトラカルボン酸成分と前記ジアミン成分の少なくとも一方として、フッ素原子を有する成分を用いて得られるものである。
前記含フッ素ポリイミドは、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していもよい。
本発明のポリイミド組成物は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を、イミド化触媒によりイミド化して得られた含フッ素ポリイミドを含む。
イミド化触媒によりイミド化して得られた含フッ素ポリイミドに含まれる、アミド酸エステルとしては、前記イミド化の際にイミド化触媒として用いた塩基性触媒と、アルコール成分との共存下において、塩基性触媒によって活性化された活性化アルコールにより、含フッ素ポリイミドに含まれるイミド結合が攻撃されて開環反応することにより形成されたものが挙げられる。
なお、含フッ素ポリイミドに含まれる、アミド酸エステルを含む繰り返し単位の有無は、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)による測定において、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、又はアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルにより確認することができる。
なお、以下の説明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
(テトラカルボン酸成分)
(a−1−1)フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分
フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分としては、フッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物が好適に用いられる。フッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。
(a−1−2)フッ素原子含有置換基を有するテトラカルボン酸成分
フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分としては、例えば、下記に示す、フッ素原子を有しないテトラカルボン酸二無水物の水素原子の一部若しくは全てを、フッ素原子を有する置換基で置換したものを用いることもできる。
フッ素原子を有する置換基としては、例えばフルオロ基、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基等が挙げられる。フッ素原子を有する置換基としては、フルオロ基又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基が好ましく、フルオロ基又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基がより好ましい。
フッ素原子を有する置換基としては、具体的には、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、HCFCF−、CFCF−、CFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCFCH−が好ましく、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、CFCF−、HCFCF−がより好ましい。特に好ましくは、トリフルオロメチル基である。
中でも、パーフルオロアルキル基を含有する芳香族テトラカルボン酸成分は、後述するジアミン成分と反応して生成した含フッ素ポリイミドが、前記した活性化アルコールに対して高い反応性を示すため、本発明において用いた場合に、特に有効である。
なお、「パーフルオロアルキル基を含有する芳香族テトラカルボン酸成分」の芳香族テトラカルボン酸成分は、4つのカルボキシル基が、全て芳香環に直接結合しているものをいう。但し、4つのカルボキシル基は、全てが同一の芳香環に結合していてもよく、異なる芳香環に結合していてもよい。
フッ素原子を有しないテトラカルボン酸二無水物としては、例えばシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(メチリデン)ジフタル酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
(a−1−3)フッ素原子を有しないテトラカルボン酸成分
前記ジアミン成分として、後述するフッ素原子を有するジアミン成分を用いる場合には、テトラカルボン酸成分としては、フッ素原子を有しないテトラカルボン酸成分を用いることもできる。フッ素原子を有しないテトラカルボン酸成分としては、上述した、フッ素原子を有しないテトラカルボン酸二無水物を、フッ素原子を有する置換基で置換することなく用いることができる。なお、フッ素原子を有するジアミン成分の具体例は、後に詳述する。
上記した、フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分及びフッ素原子を有しないテトラカルボン酸成分は、それぞれ単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。また、フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分とフッ素原子を有しないテトラカルボン酸成分とを、混合して用いることもできる。
(ジアミン成分)
(a−2−1)フッ素原子を有するジアミン成分
フッ素原子を有するジアミン成分としては、例えば2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’−ビス(ヘキサフルオロエチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、2−(ヘキサフルオロエチル)−1,4−フェニレンジアミン等が挙げられる。
(a−2−2)フッ素原子含有置換基を有するジアミン成分(芳香族含有ジアミン)
フッ素原子を有するジアミン成分としては、例えば、下記に示すフッ素原子を有しないジアミンの芳香族環上の水素原子の一部若しくは全てを、フッ素原子を有する置換基で置換したものを用いることもできる。フッ素原子を有する置換基としては、「(a−1−2)フッ素原子含有置換基を有するテトラカルボン酸成分」の項で説明したのと同様のものを用いることができる。
フッ素原子を有しないジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てを、メチル基及びメトキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換したジアミン等が挙げられる。
(a−2−3)フッ素原子含有置換基を有するジアミン成分(芳香族を含有しないジアミン)
また、フッ素原子を有するジアミン成分としては、例えば、下記に示す、フッ素原子を有しないジアミンの水素原子の一部若しくは全てを、フッ素原子を有する置換基で置換したものを用いることもできる。フッ素原子を有する置換基としては、「(a−1−2)フッ素原子含有置換基を有するテトラカルボン酸成分」の項で説明したのと同様のものを用いることができる。
フッ素原子を有しないジアミンとしては、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、等が挙げられる。
(a−2−4)フッ素原子を有しないジアミン成分
前記テトラカルボン酸として、フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分を用いる場合には、ジアミン成分としては、フッ素原子を有しないジアミン成分を用いることもできる。フッ素原子を有しないジアミン成分としては、例えば、上述した、フッ素原子を有しないジアミンを、フッ素原子を有する置換基で置換することなく用いることができる。
上記した、フッ素原子を有するジアミン成分及びフッ素原子を有しないジアミン成分は、それぞれ単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。また、フッ素原子を有するジアミン成分とフッ素原子を有しないジアミン成分とを、混合して用いることもできる。
前記含フッ素ポリイミドとしては、例えばポリイミドフィルムとしたときの光透過性を向上させ、且つ、耐衝撃性を向上させる点から、フッ素原子を含み、かつ芳香族環を含むことが好ましい。
ポリイミドに芳香族環を含むと配向性が高まり、剛性が向上するため、耐衝撃性が向上するが、芳香族環の吸収波長によって透過率が低下する傾向がある。一方、ポリイミドがフッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。従って、フッ素原子を含み、且つ芳香族環を含むことで、耐衝撃性が向上し、且つ、光透過性が向上する。
前記含フッ素ポリイミドにおけるフッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による各原子の比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
前記含フッ素ポリイミドとしては、例えばポリイミドフィルムとしたときの光透過性を向上させ、且つ、耐衝撃性を向上させる点から、芳香族環を含み、さらに、(i)脂肪族環、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
ポリイミドに(i)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素原子で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
また、前記含フッ素ポリイミドは、耐衝撃性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、前記含フッ素ポリイミドは、例えばポリイミドフィルムとしたときの耐衝撃性と光透過性が向上する点から、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
前記含フッ素ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、前記含フッ素ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である含フッ素ポリイミドであることが、ポリイミドフィルムとしたときの光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。含フッ素ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、より更に70%以上であることが好ましい。
含フッ素ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である含フッ素ポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。含フッ素ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である含フッ素ポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、含フッ素ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。
ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、含フッ素ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である含フッ素ポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
(ケイ素原子を含むポリイミド)
また前記含フッ素ポリイミドとしては、例えばポリイミドフィルムとしたときに、前記ポリイミドフィルム上に更にハードコート層等の別の層を積層する場合の層間密着性を向上させる観点から、ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドを用いてもよい。
ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドとしては、中でも、ケイ素原子を有するジアミン残基を、ジアミン残基総量のうち、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは2.5モル%以上40モル%以下、より更に好ましくは5モル%以上30モル%以下の割合で含むポリイミドが好適に用いられる。
(ケイ素原子を有するジアミン残基)
ケイ素原子を有するジアミン残基としては、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、光透過性の点、屈曲耐性及び表面硬度の両立の点から好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(B)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A)及び一般式(B)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。)
10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基としては、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基であることがより好ましく、前記炭素数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基であることがより好ましい。
11で表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
11で表される2価の炭化水素基としては、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であることが好ましく、更に、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンとしては、中でも、ケイ素原子を2個有するジアミンが、光透過性の点、及び耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン等が、入手容易性や光透過性と耐衝撃性の両立の観点から好ましい。
ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドが、ジアミン残基として、上記一般式(A)で表されるジアミンのジアミン残基を含むものである場合に、当該一般式(A)で表されるジアミンがフッ素原子を有しない場合には、ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドとしては、その他のジアミン残基がフッ素原子を有するか、又はテトラカルボン酸残基として、前記フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分として列挙したテトラカルボン酸二水物の残基を含んでいればよい。
また、ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドが、ジアミン残基として、上記一般式(B)で表されるジアミンのジアミン残基を含むものである場合に、当該一般式(B)で表されるジアミンが、フッ素原子を有しない場合には、ケイ素原子を含む含フッ素ポリイミドとしては、その他のジアミン残基がフッ素原子を有するか、又はテトラカルボン酸残基として、前記フッ素原子を有するテトラカルボン酸成分として列挙したテトラカルボン酸二水物の残基を含んでいればよい。
耐衝撃性及び屈曲耐性の点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンの分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
本発明のポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する含フッ素ポリイミドが挙げられる。
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、Rはジアミン残基である2価の基を表す。但し、R及びRのうちの少なくとも一方は、フッ素原子を有する基である。nは繰り返し単位数を表す。)
前記一般式(1)におけるRとしては、例えば、上述したテトラカルボン酸成分から4つのカルボキシル基又は酸二無水物構造を除いた残基が挙げられ、前記一般式(1)におけるRとしては、例えば、上述したジアミン成分から2つのアミノ基を除いた残基が挙げられる。
また、前記一般式(1)のRとしては、下記一般式(1−1)で表される4価の基であることが、光学特性の向上の点から好ましい。
(一般式(1−1)中、Rf及びRfは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表す。)
前記一般式(1−1)において、Rf及びRfは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表すが、Rf及びRfは、フルオロ基又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基が好ましく、フルオロ基又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基がより好ましい。
Rf及びRfは、具体的には、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、HCFCF−、CFCF−、CFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCFCH−が好ましく、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、HCFCF−、CFCF−がより好ましい。特に好ましくは、トリフルオロメチル基である。
前記一般式(1−1)で表されるフッ素含有テトラカルボン酸残基の中でも、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物残基が特に好ましい。
また、前記一般式(1)のRとしては、下記一般式(1−2)で表される2価の基であるか、又は下記一般式(1−3)で表される2価の基であることが、光学特性の向上の点から好ましい。
(一般式(1−2)中、Rf及びRfは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表す。)
(一般式(1−3)中、Rfは、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表す。)
前記一般式(1−2)中、Rf及びRfは芳香環の置換基を表す。前記一般式(1−2)は、芳香環1つあたり4つの置換可能部位のうちのいずれか1つが、Rf又はRfで置換されていることを表す。
前記一般式(1−2)において、Rf及びRfは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表すが、Rf及びRfは、フルオロ基又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基が好ましく、フルオロ基又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基がより好ましい。
Rf及びRfは、具体的には、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、HCFCF−、CFCF−、CFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCFCH−が好ましく、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、CFCF−、HCFCF−がより好ましい。特に好ましくは、トリフルオロメチル基である。
前記一般式(1−2)で表される含フッ素ジアミン残基としては、具体的には、フッ素化されたビフェニルジアミンの残基が好適な例として挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル残基、2,2’−ビス(ヘキサフルオロエチル)−4,4’−ジアミノビフェニル残基がより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル残基が特に好ましい。
前記一般式(1−3)中、Rfは芳香環の置換基を表す。前記一般式(1−3)は、芳香環の4つの置換可能部位のうちのいずれか1つが、Rfで置換されていることを表す。
前記一般式(1−3)において、Rfは、フルオロ基又は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基を表すが、Rfは、フルオロ基又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基が好ましく、フルオロ基又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基がより好ましい。
は、具体的には、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、HCFCF−、CFCF−、CFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCFCH−が好ましく、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、HCFCF−、CFCF−がより好ましい。特に好ましくは、トリフルオロメチル基である。
前記一般式(1−3)で表される含フッ素ジアミン残基としては、具体的には、2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン残基、2−(ヘキサフルオロエチル)−1,4−フェニレンジアミン残基が好適な例として挙げられる。これらの中でも2−(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン残基が特に好ましい。
前記一般式(1)で表される構造において、nは繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミド前駆体における繰り返し単位数nは、例えばポリイミドフィルムが後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
また、本発明のポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドとしては、前記一般式(1)で表される構造が、含フッ素ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記含フッ素ポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、ポリアミド構造が挙げられる。但し、ポリアミド構造は、可能な限り含フッ素ポリイミド中に含まれないことが好ましい。含フッ素ポリイミドがポリアミド構造を含む場合には、後述するイミド化率で許容される範囲を超えない範囲で含むことが好ましい。含んでいても良いポリアミド構造としては、前述のアミド酸エステル構造の他、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
なお、含フッ素ポリイミド中の各繰り返し単位の含有割合、各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、含フッ素ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができる。また、含フッ素ポリイミド中の各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、上記と同様に、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解して得られたポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
(イミド化率)
本発明のポリイミド組成物に含まれる、含フッ素ポリイミドのイミド化率は、95%以上であることが好ましい。
本開示において、ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率とは、ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミド全体の全繰り返し単位中のイミド結合、アミド酸エステル、及びアミド酸の合計モルに対する、イミド結合のモル分率をいう。
ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率が95%以上であることで、前記含フッ素ポリイミドのイミド結合が構造変化して生成する構造、例えば前記イミド結合のエステル化反応により生成するアミド酸エステル構造が、前記ポリイミド組成物中に含まれる量が、少量に抑えられており、含フッ素ポリイミドが高い割合で、イミド体から構造変化することなく前記ポリイミド組成物中に存在する。従って、ポリイミド組成物として、所望の特性を得られるものとすることができる。
ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率は、99%以上であることが好ましく、99.5%以上であることがより好ましい。
なお、含フッ素ポリイミドのイミド化率は、H NMRにて以下のようにして測定することができる。
例えば、サンプル20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させる。この溶液について、BRUKER製NMR測定器(AVANCE)にて500MHzのH NMRを測定する。イミド化率は、イミド化前後及びエステル化前後で変化しない構造に由来するプロトンを決め、このプロトンのピーク積算値と、9.0−12.0ppm付近に現れるアミド酸又はアミド酸エステルのNH基に由来するプロトンピーク積算値、及び1.0−6.0ppm付近に現れるエステル基に由来するプロトンピーク積算値とを用いて、その比率から求めることができる。
本発明のポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドは、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、ベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましい。
ポリイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求める動的粘弾性測定装置の測定条件は以下のように設定する。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とする。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いる。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録する。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しない。
(b)塩基性触媒
本発明のポリイミド組成物に含まれる塩基性触媒の含有量は、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下である。
塩基性触媒の含有量を、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下とすることにより、ポリイミド組成物中に残留するアルコール分子の、塩基性触媒による活性化を抑制することができる。このため、ポリイミド組成物中において、活性化アルコールによる、含フッ素ポリイミドのイミド結合への求核攻撃や、これに伴うイミド結合の構造変化が抑制される。従って、含フッ素ポリイミドを、高いイミド化率で含有するポリイミド組成物とすることができる。
また、塩基性触媒の含有量を、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下とすることにより、前記含フッ素ポリイミドの経時的な構造変化が抑制されるため、当該含フッ素ポリイミドを、長期間にわたって高いイミド化率で含有し、保存安定性の高いポリイミド組成物とすることができる。
含フッ素ポリイミドを高いイミド化率で含有し、かつポリイミド組成物としての保存安定性を向上させる点から、塩基性触媒の含有量は、前記含フッ素ポリイミドに対して10質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、塩基性触媒の含有量は、理想的には、検出限界未満まで低減されていることが好ましく、究極的には、前記含フッ素ポリイミドに対して0質量ppmであることが好ましい。
ポリイミド組成物中における塩基性触媒の含有量は、GC及びGC−MSの測定によって定量することができる。GC及びGC−MSによる測定は、例えば、ポリイミド組成物の濃度が5%質量濃度となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にポリイミド組成物を添加して、ポリイミド組成物/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整し、この溶液に、内部標準液(例えば0.2%濃度アニソール/DMF溶液)を添加してサンプル溶液を調製し、GC−MS装置(例えば、Agilent社、6890 GC/MS)を用いて、サンプル打ち込み量0.2uL、スプリット比50:1、ヘリウム流量89.6mL/min、注入口温度250℃、オーブン温度40−240℃の条件で行うことができる。
塩基性触媒の含有量は、塩基性触媒の含有量が0.1質量%となるように調製した、塩基性触媒(測定対象化合物)/DMF溶液を検量線液とし、この検量線液に、上記したサンプル溶液と同様に内部標準液を添加して調製した溶液についてのGC−MS測定を行い、その測定結果を基準として、算出することができる。
塩基性触媒としては、ポリアミド酸のイミド化に、一般に用いられる塩基性触媒が挙げられる。塩基性触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5等のアミンが挙げられる。
上記した塩基性触媒は、それぞれ単独で、ポリイミド組成物中に含まれていてもよく、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
(c)アルコール成分
本発明のポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量は、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下である。
本開示において、「アルコール成分の含有量」とは、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である。
なお、「前記ポリイミド組成物中に存在するアルコール」とは、他の成分と反応せずに、アルコール分子としてポリイミド組成物中に存在する、所謂遊離アルコールを意味するものである。
また、「ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」とは、含フッ素ポリイミドのイミド結合とアルコール分子とが反応して形成されるアミド酸エステル構造が、ポリイミド組成物中に含まれる場合に、「含フッ素ポリイミドのイミド結合を構成していた炭素原子と結合して、アミド酸エステル構造に取り込まれたアルコキシ基」及び「含フッ素ポリイミドのイミド結合を構成していた窒素原子と結合して、アミド酸エステル構造に取り込まれた水素原子」をいう。
従って、例えば上記式(I)に示すように、含フッ素ポリイミドの一個のイミド結合当たり、一個のアルコールが反応してエステル化することにより、アミド酸エステル構造が形成された場合、アミド酸エステル構造の一個当たり、一個のアルコキシ基及び一個の水素原子が、「ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」として、ポリイミド組成物中に含まれているものとする。
なお、ポリイミド組成物中に含まれる、「前記ポリイミド組成物中に存在するアルコール」の含有量は、例えば、GC及びGC−MS測定により定量することができる。
GC及びGC−MS測定によるアルコールの定量は、検量線液として、例えば、アルコールの含有量が0.1質量%となるように調製した、アルコール(測定対象化合物)/DMF溶液を用いる点以外は、前述した、ポリイミド組成物中における塩基性触媒の含有量を定量する方法と同様にして行うことができる。
また、ポリイミド組成物中に含まれる、「ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の量は、核磁気共鳴装置(NMR)(BRUKER製、AVANCE)を用いて測定することができる。
具体的には、例えば、アミド酸エステルに含まれる基としてH NMRスペクトル測定で検出される、アルコキシ基由来のプロトンシグナル、又はアミド基由来のプロトンシグナルにより定量することができる。
ポリイミド組成物中に残留するアルコール成分の含有量を、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下とすることにより、ポリイミド組成物中に含まれるアルコール分子(遊離アルコール)の含有量が、少なくとも前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppm以下と少量に抑えられるため、ポリイミド組成物中における、活性化アルコールの生成が抑制される。このため、活性化アルコールによる含フッ素ポリイミドへの求核攻撃が抑制され、ポリイミド組成物中における、含フッ素ポリイミドの構造変化が抑制される。従って、含フッ素ポリイミドを、高いイミド化率で含有するポリイミド組成物とすることができる。
また、ポリイミド組成物中に残留するアルコール成分の含有量を、前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppm以下とすることにより、ポリイミド組成物中に含まれるアルコール分子(遊離アルコール)の含有量が、少なくとも前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppm以下と少量であり、ポリイミド組成物中における、活性化アルコールの生成が抑制されるため、前記含フッ素ポリイミドの経時的な構造変化が抑制される。従って、当該含フッ素ポリイミドを、長期間にわたって高いイミド化率で含有し、保存安定性の高いポリイミド組成物とすることができる。
また、ポリイミド組成物中に残留するアルコール成分の含有量を、前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppm以下とすることにより、「ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の含有量が、少なくとも前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppm以下と少量に抑えられている。このため、ポリイミド組成物中に含まれる、含フッ素ポリイミドのイミド結合から構造変化したアミド酸エステル構造の含有量が、少量に抑えられている。従って、含フッ素ポリイミドを高いイミド化率で含有するポリイミド組成物とすることができる。
含フッ素ポリイミドを高いイミド化率で含有し、かつポリイミド組成物としての保存安定性を向上させる点から、ポリイミド組成物中に残留するアルコール成分の含有量は、前記含フッ素ポリイミドに対して、4000質量ppm以下であることが好ましく、600質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、20質量ppm以下であることがより好ましい。
前記ポリイミド組成物中に含まれる含フッ素ポリイミドの全繰り返し単位中のイミド結合、アミド酸エステル、及びアミド酸の合計モルに対する、アミド酸エステルのモル分率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.07%以下であり、更に好ましくは0.03%以下である。
アルコール成分の含有量は、より少ない量まで低減されていることが好ましいが、後述する化学イミド化により合成され、アルコールにより精製された含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物は、乾燥処理によりアルコールを極限まで除去した場合でも、通常、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上のアルコール成分を含有している。
前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量のうち、ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基の量は、可能な限り少ないことが好ましく、好ましくは、前記含フッ素ポリイミドに対して3000質量ppm以下であり、より好ましくは、前記含フッ素ポリイミドに対して500質量ppm以下であり、より好ましくは、前記含フッ素ポリイミドに対して100質量ppm以下である。
前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量のうち、ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基の量は、理想的には、検出限界未満まで低減されていることが好ましく、究極的には0質量ppmであることが好ましい。
なお、「ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の量が検出限界未満であるとは、上記したH NMRスペクトル測定により、アルコキシ基由来のプロトンシグナル及びアミド基由来のプロトンシグナルが確認されないことをいう。
アルコール成分としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール等が挙げられる。
これらの中でも、含フッ素ポリイミドを高いイミド化率で含有し、かつ長期間にわたって高いイミド化率を維持する点から、アルコール成分としては、二級アルコール又は三級アルコールが好ましく、三級アルコールがより好ましい。具体的には、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール等が好ましい。
本発明のポリイミド組成物は、含フッ素ポリイミドと、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下のアルコール成分とを含み、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下の塩基性触媒を含んでいても良いものである。
本発明のポリイミド組成物は、本発明の効果を損なわない限り更に他の成分を含んでいても良いが、前記含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物であることが好ましい。
本発明のポリイミド組成物は、前記含フッ素ポリイミドを99質量%以上含むことが好ましく、99.5質量%以上含むことが更に好ましく、99.9質量%以上含むことがより更に好ましい。本発明のポリイミド組成物は、前記アルコール成分と前記塩基性触媒の残余は、前記含フッ素ポリイミドであることが好ましい。
ポリイミド組成物は、平均粒径が1000μm以下の粉末体であることが好ましい。ポリイミド組成物が、平均粒径が1000μm以下の粉末体であることにより、当該ポリイミド組成物が、塩基性触媒等の不純物含有量が少なく、所望の特性を有するものとして得られ易い。
ポリイミド組成物は、平均粒径が500μm以下の粉末体であることが、より不純物含有量が低減されたポリイミド組成物とする点から好ましい。ポリイミド組成物は、不純物含有量の低減と、粉体としての取り扱い易さとの両立の点から、平均粒径100〜500μm以下の粉末体であることが、より好ましい。
(粒径の測定方法) 上記平均粒子径の測定は、光学顕微鏡により観察し、無作為に、例えば150個のポリイミド組成物の粒子を任意に抽出し、抽出した粒子の粒子径を測定し、それを平均したものである。
なお、ポリイミド組成物の粒子形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものとする。
本発明のポリイミド組成物は、含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物であって、下記測定法による黄色度の値が、10以下であることが、光学特性の点から好ましい。
[測定法]
含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物を、室温(25℃)のジメチルアセトアミドに20質量%となるように溶解させた試験用溶液を、10mm×10mm×43mmの石英セルに入れた状態で、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で透過率を測定する。
なお、前記黄色度の算出は、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用いる点以外は、後述するポリイミドフィルムの黄色度(YI値)の算出と同様にして行った。
本発明に係るポリイミド組成物は、該ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドが、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を、イミド化触媒によりイミド化する、所謂化学イミド化により合成されたものである。このため、本発明に係るポリイミド組成物は、上記した測定法により算出される黄色度(YI値)が、10以下であるものとすることができる。
本発明のポリイミド組成物を製造する方法としては、上述したポリイミド組成物を得ることができる製造方法であればよいが、後述の本発明のポリイミド組成物の製造方法を用いることが好ましい。
II.ポリイミド組成物の製造方法
本発明のポリイミド組成物の製造方法は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有する含フッ素ポリイミドと、前記含フッ素ポリイミドの良溶媒と、塩基性触媒とを含有する含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程と、
前記含フッ素ポリイミド溶液に、含フッ素ポリイミドの貧溶媒として、アルコールを滴下し、前記含フッ素ポリイミド溶液に、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを析出させる工程と、
前記析出した含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する工程と、を有し、
前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である、ポリイミド組成物の製造方法である。
前記含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有するポリイミド前駆体を、塩基性触媒を用いてイミド化して含フッ素ポリイミドを合成する工程であってよい。
本発明のポリイミド組成物の製造方法は、具体的には例えば、下記の工程(α)〜工程(δ)を有するものとすることができる。
工程(α);ポリイミド前駆体溶液を準備する工程(以下、ポリイミド前駆体溶液準備工程(α)という)。
工程(β);前記ポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド前駆体を、塩基性触媒を用いてイミド化して含フッ素ポリイミドを合成し、含フッ素ポリイミド溶液を得る工程(以下、イミド化工程(β)という)。
工程(γ);前記含フッ素ポリイミド溶液に、含フッ素ポリイミドの貧溶媒として、アルコールを滴下し、前記含フッ素ポリイミド溶液に、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを析出させる工程(以下、貧溶媒滴下工程(γ)という)。
工程(δ);前記析出した含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する工程(以下、ポリイミドの回収工程(δ)という)。
(α)ポリイミド前駆体溶液準備工程
工程(α)において準備するポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体と、溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
本発明のポリイミドにおいて用いられるポリイミド前駆体溶液は、例えば、少なくともいずれか一方がフッ素原子を有するテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、溶剤中で反応させて、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有する、含フッ素ポリイミド前駆体を合成することにより得ることができる。或いは、予め合成された、固体のフッ素原子を有するポリイミド前駆体を溶剤に溶解させることにより、含フッ素ポリイミド前駆体溶液を準備してもよい。
工程(α)において、ポリイミド前駆体の合成に用いられるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分は特に限定はされず、例えば、上述したテトラカルボン酸二無水物、及びジアミンをそれぞれ挙げることができる。
工程(α)においては、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分として、少なくともそのいずれか一方がフッ素原子を有するように、前述したテトラカルボン酸成分及び前述したジアミン成分からそれぞれ選択して用いればよい。
前記ポリイミド前駆体溶液が含有するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、フィルムとした際の強度の点から、2000以上であることが好ましく、更に4000以上であることが好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると、高粘度となり作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
また、ポリイミド前駆体は、フィルムとした際の強度の点から、重量平均分子量が、2000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましい。一方、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行う。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とする。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求める。
前記ポリイミド前駆体溶液が含有するポリイミド前駆体としては、例えば、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体が挙げられる。
(一般式(1’)において、R、R及びnは、前記一般式(1)と同様である。)
前記一般式(1’)において、好適なR、R及びnは、前記一般式(1)と同様である。
前記ポリイミド前駆体溶液が含有するポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)で表される構造が、ポリイミド前駆体の全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液が含有するポリイミド前駆体は、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1’)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。前記一般式(1’)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、トリメリット酸無水物を用いた場合のようなトリカルボン酸由来の構造や、テレフタル酸を用いた場合のようなジカルボン酸由来の構造が挙げられる。
前記ポリイミド前駆体溶液は、例えば上述のテトラカルボン酸二無水物と上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。
中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン若しくはこれらの組み合わせを用いることがより好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液を、2種以上のジアミンを組み合わせて調製する場合、2種以上のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、2種以上のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンを用いる場合は、たとえば、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンの0.5当量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、耐衝撃性及び屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
塗膜形成工程において、支持体からの塗膜剥離を容易にするために末端をジアミン残基にすることが好ましく、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を合成する際に、前述した溶剤中で重合させる、ジアミン成分のモル数をX、テトラカルボン酸成分のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.0未満とすることが好ましく、0.95以上1.0未満とすることがより好ましく、0.97以上1.0未満とすることがさらに好ましく、0.99以上1.0未満とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。また、塗膜形成工程での支持体からの剥離を容易にすることができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、ポリイミド前駆体溶液としては、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた反応液を、そのままポリイミド前駆体溶液として用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた反応液の溶剤を乾燥させてポリイミド前駆体を単離し、別の溶剤に溶解したものを、ポリイミド前駆体溶液として用いても良い。
前記ポリイミド前駆体溶液の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
(β)イミド化工程
工程(β)では、前記ポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド前駆体を、塩基性触媒を用いてイミド化して、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有する含フッ素ポリイミドを合成し、含フッ素ポリイミド溶液を得る。
ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)のイミド化は、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)を、イミド化触媒を用いて脱水開環反応させる、化学イミド化により行うことができる。
本発明のポリイミド組成物の製造方法では、化学イミド化を行う場合、イミド化触媒としては、少なくとも塩基性触媒を用いる。塩基性触媒としては、上記「I.ポリイミド組成物」において、ポリイミド組成物に含まれる塩基性触媒として例示したものと同様の物を用いることができる。
塩基性触媒としては、具体的には、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5等のアミンが挙げられる。
また、イミド化触媒としては、必要に応じて、酸無水物等を脱水剤として用いることができる。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物、リン酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド等を用いることができる。
上記したイミド化触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、イミド化触媒としてβ―ピコリン酸等の三級アミンを用いる場合、酸無水物を併用してもよい。
脱水閉環反応を化学イミド化により行う場合、反応温度は10〜200℃、より好ましくは10〜40℃として行うことができる。
ポリイミド前駆体溶液に添加するイミド化触媒の量は、ポリアミド酸の脱水閉環反応を行える範囲であれば、特に限定されないが、ポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド前駆体に対して、0.0001質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
工程(β)では、前述のようにして得られた含フッ素ポリイミドと、前記含フッ素ポリイミドの良溶媒と、塩基性触媒とを含有する含フッ素ポリイミド溶液を得る。
含フッ素ポリイミド溶液は、前記塩基性触媒を、前記含フッ素ポリイミドに対して、20質量ppmを超えて含有するものであってよい。
前記工程(α)において、ポリイミド前駆体溶液の合成に用いる溶剤として、後述する、含フッ素ポリイミドの良溶媒を用いた場合には、含フッ素ポリイミドの合成反応により得られた反応液を、そのまま含フッ素ポリイミド溶液とし、そこに必要に応じて他の成分を混合してもよい。
また、含フッ素ポリイミドの合成反応により得られた反応液の溶剤を乾燥させた後、後述する、含フッ素ポリイミドの良溶媒に溶解させたものを、含フッ素ポリイミド溶液として用いても良い。
本開示において、良溶媒及び貧溶媒とは、互いに相対的な関係であればよく、例えば含フッ素ポリイミドの溶媒として二種の使用候補がある場合に、これら二種の溶媒の関係において、含フッ素ポリイミドの溶解性が高いものを良溶媒、含フッ素ポリイミドの溶解性が低いものを貧溶媒とすることができる。
(前記含フッ素ポリイミドの良溶媒)
前記含フッ素ポリイミドの良溶媒としては、例えば、前記含フッ素ポリイミドの溶解度が25℃で20g/100g以上である溶媒を用いることができる。
前記良溶媒としては、含フッ素ポリイミドの溶解性や後述する貧溶媒との相溶性の点から、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、乳酸エチル、等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
前記良溶媒としては、中でも、含フッ素ポリイミドの溶解性や前記貧溶媒との相溶性の点から、窒素原子を含む有機溶剤が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類がより好ましい。なお、本発明において有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
なお、後述する貧溶媒滴下工程を2回以上行う場合、各工程に用いるポリイミド溶液の良溶媒は、それぞれ同じ溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。
なお、塩基性触媒は、前述したポリイミド前駆体(ポリアミド酸)のイミド化に用いた塩基性触媒である。
(γ)貧溶媒滴下工程
工程(γ)では、工程(β)で得られた前記含フッ素ポリイミド溶液に、含フッ素ポリイミドの貧溶媒として、アルコールを滴下し、前記含フッ素ポリイミド溶液に含フッ素ポリイミドを析出させる。
前記含フッ素ポリイミド溶液に析出される含フッ素ポリイミドは、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい。
(前記含フッ素ポリイミドの貧溶媒)
前記含フッ素ポリイミドの貧溶媒としては、前記含フッ素ポリイミドの溶解度が前述した良溶媒よりも低く、25℃で19g/100g以下の溶媒のなかから適宜選択して用いることができる。
前記貧溶媒としては、不純物含有量が十分に低減されたものとして、ポリイミド組成物を回収する点から、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール等のアルコール系の有機溶媒を用いることができる。
なお、これらのアルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を混合した混合溶媒として用いてもよい。
貧溶媒として、上記したアルコール系の有機溶媒を用いることで、含フッ素ポリイミドがポリイミド溶液中で凝集したり、貧溶媒に対する含フッ素ポリイミドの溶解性が高過ぎて、貧溶媒を滴下しても含フッ素ポリイミドを析出させることができない、等の不具合が生じるのを抑制することができ、良好な粉末体として、含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物を回収することが可能となる。
上記したアルコール系の有機溶媒の中でも、二級アルコール又は三級アルコールが好ましく、三級アルコールがより好ましく、具体的には、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、2−ブタノール等の二級アルコールや、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール等の三級アルコールを、貧溶媒として好適に用いることができる。
二級アルコール及び三級アルコールは、一級アルコールと比較して、塩基性触媒との反応性が低いため、二級アルコール及び/又は三級アルコールを貧溶媒として用いることにより、前記含フッ素ポリイミド溶液中や、後述するポリイミドの回収工程(δ)で回収されるポリイミド組成物中における、活性化アルコールの生成が抑制され易い。
また、仮に、二級アルコール又は三級アルコールが、含フッ素ポリイミドのイミド結合と反応してアミド酸エステルが生成した場合でも、二級アルコール又は三級アルコールとの反応により生成したアミド酸エステル構造からは、アルコキシ基が脱離し易い傾向にあるため、イミド化率の低下が抑制され易い傾向にある。
従って、二級アルコール及び/又は三級アルコールを貧溶媒として用いることにより、含フッ素ポリイミドのイミド結合のエステル化反応が発生するのを抑制することができ、後述するポリイミド組成物の回収工程(δ)において、含フッ素ポリイミドを、より高いイミド化率で含むポリイミド組成物を回収することができる。このため、当該ポリイミド組成物を用いて例えばポリイミドフィルムを製造した場合、得られたポリイミドフィルムにおいて、所望の特性を得ることができる。
また、貧溶媒として、二級アルコール及び/又は三級アルコールを用いることにより、一級アルコールを用いた場合と比較して、活性化アルコールの生成がより抑制されるため、ポリイミド組成物の回収工程(δ)において回収された後、所定期間経過後のポリイミド組成物中における、含フッ素ポリイミドのイミド結合のエステル化反応の発生や、これに伴うイミド化率の低下を抑制することができる。従って、後述するポリイミド組成物の回収工程(δ)において、前記含フッ素ポリイミドを、長期間にわたって高いイミド化率で含有することができ、保存安定性により優れたポリイミド組成物を回収することができる。
なお、貧溶媒滴下工程を2回以上行う場合、各工程に用いる貧溶媒は、それぞれ同じ溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。
ポリイミドを良溶媒に溶解させたポリイミド溶液を、貧溶媒に滴下する従来の方法では、ポリイミド溶液を貧溶媒に滴下した直後に、ポリイミドを含む組成物が、瞬時に凝集体として析出する。このため、塩基性触媒等の不純物は、溶液中に分散されることなく、ポリイミド組成物の凝集体の内部に取り込まれ易かった。
これに対し、含フッ素ポリイミドを良溶媒に溶解させた含フッ素ポリイミド溶液に、貧溶媒を滴下する本発明の方法では、含フッ素ポリイミドは、貧溶媒の滴下直後に溶液中に一旦析出するが、すぐに再溶解する。貧溶媒の滴下を継続的に又は断続的に所定時間行うことにより、この現象が繰り返され、含フッ素ポリイミドが溶液中に広く分散されるとともに、不純物も溶液中に広く分散され、かつ含フッ素ポリイミドの溶解度が徐々に低下する。その後所定の時点で一気に含フッ素ポリイミドを析出させることで、従来の方法と比較して、ポリイミド組成物の内部に取り込まれる不純物の量が大幅に低減された状態で、ポリイミド組成物を回収することができる。
また、これにより、ポリイミドを析出させる精製作業1回当たりのポリイミドの精製効率が向上するため、精製作業回数を削減することができ、また精製に要する貧溶媒の使用量を低減することができる。また、従来の製造方法と比較して、精製作業におけるポリイミド溶液の損失量を抑えることができるため、ポリイミドの収率を向上させることができる。
含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下は、滴下速度を適宜調整しながら行ってよい。例えば、ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下は、滴下開始から滴下終了まで、一定の滴下速度で行ってもよく、所定の時点において滴下速度を増加又は減少させるように調整して行ってもよい。また、ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下は、滴下終了まで中断することなく継続的に行っても良く、一定時間の滴下と一定時間の中止とを繰り返して断続的に行っても良い。
含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下速度は、含フッ素ポリイミド溶液に対して0.0005質量倍量/min〜0.5質量倍量/minであってよく、急激な析出を抑える点から、0.0005質量倍量/min〜0.3質量倍量/minであることが好ましい。
例えば、含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下速度は、二段階であってよく、一段階目は固体が析出しても、1秒〜10時間など、所定の時間をかけると再度溶解する段階、二段階目は固体を完全に析出させる滴下、すなわち固体が増加しなくなるまで析出させる段階であることが挙げられる。この場合の含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下速度は、含フッ素ポリイミド溶液に対して、一段階目では0.0005質量倍量/min〜0.1質量倍量/minで滴下、二段階目では、0.05質量倍量/min〜0.5質量倍量/minで滴下して精製することが、残留物の除去及び生産性の点から好ましい。
また、含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下速度は、所定の時間をかけると再度溶解する段階を、更に二段階に分けた、三段階であってもよい。この場合、一段階目は固体が析出しても比較的短時間で再度溶解する段階、二段階目は一段階目よりも長い時間をかけて再度溶解する段階であることが挙げられる。例えば、1Lの含フッ素ポリイミド溶液中に貧溶媒を滴下する場合、一段階目が固体が析出しても10秒以内で再度溶解する段階、二段階目は固体が析出しても10秒超過10時間以内など、所定の時間をかけると再度溶解する段階、三段階目は固体を完全に析出させる滴下、すなわち固体が増加しなくなるまで析出させる段階であることが挙げられる。この場合の含フッ素ポリイミド溶液中への貧溶媒の滴下速度は、含フッ素ポリイミド溶液に対して、一段階目では0.0005質量倍量/min〜0.1質量倍量/minで滴下、二段階目では0.001質量倍量/min〜0.05質量倍量/minで滴下、三段階目では、0.05質量倍量/min〜0.5質量倍量/minで滴下して精製することが、残留物の除去及び生産性の点から好ましい。
含フッ素ポリイミド溶液に貧溶媒を滴下する際の、含フッ素ポリイミド溶液の温度は、特に限定されないが、50℃未満とすることが好ましい。
含フッ素ポリイミド溶液の温度を50℃未満として貧溶媒を滴下することで、前記含フッ素ポリイミド溶液における含フッ素ポリイミドの溶解性の上昇や、これに伴い、含フッ素ポリイミドを析出させるのに要する貧溶媒の量が増大するのを抑制することができる。また、含フッ素ポリイミド溶液の温度を50℃未満として貧溶媒を滴下することで、貧溶媒の滴下中における、良溶媒の揮発を抑制し、含フッ素ポリイミドが良溶媒中に十分に分散されていない状態で析出するのを抑制することができる。
前記貧溶媒を滴下するときの、前記含フッ素ポリイミド溶液の固形分濃度は、収率の点及び不純物を効率良く除去する点から、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
前記貧溶媒の滴下により、含フッ素ポリイミドを析出させるのに要する貧溶媒の滴下量は、特には限定されないが、概ね、含フッ素ポリイミド溶液の量に対して、0.5質量倍〜10質量倍であり、好ましくは0.5質量倍〜6質量倍、より好ましくは0.5質量倍〜4質量倍である。
なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
(δ)ポリイミドの回収工程
工程(δ)では、前記工程(γ)で析出させた含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する。
ポリイミド組成物を回収する方法は、特に限定されず、例えば、濾過による方法が挙げられる。濾過の方法としては、例えば、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の公知の方法を適用することができ、特に限定されない。また、濾過に用いるフィルターとしては、特に限定されず、残留モノマー等の不純物を除去することができ、且つポリイミド組成物を回収できる孔径及び材質のものを適宜選択することができる。
また、析出させた含フッ素ポリイミドを濾過後、濾過物を洗浄溶媒で洗浄する工程を有することが、塩基性触媒の含有量を低減させる点から好ましい。洗浄溶媒としては、前記貧溶媒を用いることが好ましく、活性水素を含まない貧溶媒がより好ましく、アルコールが更に好ましく、二級又は三級アルコールがより更に好ましく、三級アルコールが最も好ましい。洗浄する工程としては、濾過物を1〜100質量倍程度の洗浄溶媒中で、15分〜60分程度撹拌後、再度濾過する工程が挙げられる。洗浄する工程は、塩基性触媒の含有量を前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下とするのに十分な回数であれば良く、1回でも良いが、塩基性触媒の含有量をほぼゼロにすることでアミド酸エステル化を抑制し、保存安定性をより向上する点から、3回以上であることが好ましい。
前述した濾過等の方法により、ポリイミド溶液から回収したポリイミド組成物は、適宜乾燥して、前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分を除去することが好ましい。乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されないが、0℃〜150℃の温度範囲、光学特性の保持の点及びアルコール成分を効率良く除去する観点から、中でも60℃〜150℃の温度範囲で、1〜120時間行うことが好ましい。
このようにして回収されたポリイミド組成物は、当該ポリイミド組成物中に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率が、95%以上、更に99%以上、より更に99.5%以上であることが好ましい。
前記ポリイミド組成物中に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率が、95%以上であることが好ましい理由、及びイミド化率の測定方法は、上記「I.ポリイミド組成物」の項で説明したのと同様であるため、ここでの説明を省略する。
このようにして回収されたポリイミド組成物は、より小粒径の粉末状で得られることが好ましい。小粒径の粉末状のポリイミドは、ポリイミド溶液中に広く均一に分散された状態で析出することにより得られるため、触媒等の不純物の含有量が少ないポリイミド組成物を得ることができる。
回収されたポリイミド組成物は、不純物含有量の低減の点から、平均粒径が1000μm以下、より好ましくは、500μm以下の粉末体であることがより好ましい。
また、回収されたポリイミド組成物の平均粒径は、不純物含有量の低減と、粉体としての取り扱い易さとの両立の点から、平均粒径100〜500μm以下の粉末体であることが、より好ましい。
なお、工程(δ)で回収したポリイミド組成物において、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下まで低減されていない場合や、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下まで低減されていない場合には、ポリイミド組成物における塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下に低減され、かつアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下に低減されるまで、貧溶媒滴下工程(γ)及びポリイミドの回収工程(δ)を、複数回繰り返してもよい。
III.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、
前述した本発明の製造方法によりポリイミド組成物を製造する工程(以下、ポリイミド組成物製造工程という)と、
前記工程により得られるポリイミド組成物と、有機溶媒とを含有するポリイミド塗工液を調製する工程(以下、ポリイミド塗工液調製工程という)と、
前記ポリイミド塗工液を支持体に塗布することにより、前記ポリイミド塗工液の塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド塗工液の塗膜形成工程という)と、を有する。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミド組成物を用いるため、不純物含有量が少なく、保存安定性に優れ、イミド化率の低下が抑制されたポリイミド組成物を用いてポリイミドフィルムを製造する。そのため、製造されるポリイミドフィルムは、不純物含有量が低減され、イミド化率の低下が抑制されており、例えば光学特性や強度等本来のポリイミドが有する特性の低下が抑制されて、所望の特性が得られるものである。
1.ポリイミド組成物製造工程
本発明のポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミド組成物を製造する工程では、前述した本発明のポリイミド組成物の製造方法を用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.ポリイミド塗工液調製工程
本発明において調製するポリイミド塗工液は、前記ポリイミド組成物製造工程により得られるポリイミド組成物と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて更に添加剤等を含有していてもよい。
本工程において調製するポリイミド塗工液は、前記ポリイミド組成物製造工程において、貧溶媒の滴下により析出させて回収したポリイミド組成物を含むものであるため、塩基性触媒等の不純物含有量が低減されたものである。
前記ポリイミド塗工液に用いられる有機溶剤は、本発明のポリイミド組成物の製造方法により得られる前記ポリイミド組成物が溶解可能であれば特に制限はない。前記有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;及びこれらの混合溶媒を用いることができる。中でも、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましい。
前記ポリイミド塗工液は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
前記ポリイミド塗工液中の前記含フッ素ポリイミドの含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、前記ポリイミド塗工液の固形分中に50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド塗工液中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、前記ポリイミド塗工液中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド塗工液は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド塗工液の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド塗工液中に水分を多く含むと、含フッ素ポリイミドが分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド塗工液の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前記ポリイミド塗工液の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
前記ポリイミド塗工液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
3.ポリイミド塗工液の塗膜形成工程
前記ポリイミド塗工液を支持体に塗布して、ポリイミド塗工液の塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性及び耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする層厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
前記ポリイミド塗工液を支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥して、ポリイミド塗工液の塗膜を得る。
ポリイミド塗膜を更に乾燥させるために加熱する工程を有していても良い。当該加熱温度としては、熱イミド化を行う加熱温度ほど高くする必要はなく、塗膜形成時に用いられた有機溶剤の種類や量で適宜調整すればよい。常圧下では80℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましい。
乾燥時間は、前記ポリイミド塗工液の塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常5分〜120分、好ましくは10分〜60分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
4.延伸工程
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、前記ポリイミド塗工液の塗膜形成工程で形成したポリイミド塗工液の塗膜を延伸する延伸工程を有していてもよい。
本発明の製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミドのガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸又は横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、若しくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
5.ポリイミドフィルム
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、少なくとも上述したポリイミド組成物製造工程により得られるポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドを含有し、本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いものである。その他の成分としては、例えば、前述のポリイミド組成物において説明した添加剤等と同様のものが挙げられる。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、不純物含有量が少なく、また、含フッ素ポリイミドを高いイミド化率で含むポリイミド組成物を用いているため、ポリイミドフィルムにおいて、不純物による光学特性の低下が抑制されており、また、例えば光学特性(例えばヘイズ値、透過率、YI値等)や強度等に関して、含フッ素ポリイミドの所望の特性を得ることができる。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、ポリイミド組成物として、精製処理後所定期間経過後のものを用いた場合でも、当該ポリイミド組成物に含まれる含フッ素ポリイミドのイミド化率の、経時的な低下が抑制されているため、ポリイミドフィルムにおいて、不純物による光学特性の低下が抑制され、かつ、例えば光学特性(例えばヘイズ値、透過率、YI値等)や強度等に関して、含フッ素ポリイミドの所望の特性を得ることができる。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム1gあたりの塩基性触媒の含有量が0.01μg未満であることが好ましい。
ポリイミドフィルム1gあたりの塩基性触媒の含有量は、例えば、ポリイミドフィルム中の塩基性触媒を水中に溶出させて測定することができる。具体的には、重さ約0.4gのポリイミドフィルムの試験片をポリプロピレン袋に入れ、袋内で、50mLの超純水に浸し、ヒートシーラーにて封入する。それを60℃のウォーターバス浴内に入れ、1時間以上静置することにより、ポリイミドフィルム中の塩基性触媒を溶出させる。得られた溶出液のイオン濃度をイオンクロマトグラフ(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、ICS−3000)にて測定し、試験片1gあたりの塩基性触媒量を算出する。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム全量に対する前記含フッ素ポリイミドの含有量が、50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましい。前記含フッ素ポリイミドの含有量の上限は含有成分により適宜調整されればよい。
(全光線透過率)
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率を90%以上とすることができ、より好適な実施形態においては91%以上とすることができる。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料とすることができる。
なお、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、更に91%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
(ヘイズ値)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、JIS K−7105に準拠したヘイズ値が、光透過性の点から、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。
当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
なお、ある厚みのヘイズ値の測定値から、異なる厚みのヘイズ値は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長におけるヘイズ値と、前記方法により測定される各波長の全光線透過率から、各波長の拡散透過率を算出し、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における拡散透過率の換算値を求め、ヘイズ値を全光線透過率に対する拡散透過率の比として算出し用いることができる。
(黄色度(YI値))
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。このように黄色度が低いことにより、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定した透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
(F/C)
また、本発明のポリイミドフィルムの好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、少なくとも一方のフィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、少なくとも一方のフィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
(ガラス転移温度)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムのガラス転移温度は、耐熱性の点から150℃以上であることが好ましく、更に、200℃以上であることが好ましく、ベーク温度を低減できる点から、400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、150℃以上400℃以下の温度領域に1つのガラス転移温度を有することが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求める。動的粘弾性測定装置の測定条件は以下のように設定する。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とする。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いる。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録する。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しない。
(引張弾性率)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、0.5GPa以上1.8GPa以上であることが、耐衝撃性及び屈曲耐性の点から好ましく、1.0GPa以上であることがより好ましい。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが50μm±5μmであることが好ましい。
(静的屈曲試験方法)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が90°以上であることが好ましく、100°超過であることがより好ましく、130°以上であることがより更に好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。
その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
(動的屈曲試験方法)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムにおいては、耐吸湿性に優れ、高湿下での屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が155°以上であることが好ましく、160°以上であることが更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。試験片を前記静的屈曲試験と同様の屈曲した状態、すなわち、屈曲した状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定(内径6mmで屈曲した状態で固定)した後、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
(密着性試験)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムにおいては、下記密着性試験方法に従って、密着性試験を行った場合に、塗膜の剥がれが生じないことが、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性の点及びポリイミドフィルムに隣接してハードコート層を積層した積層体の表面硬度の点から好ましい。
[密着性試験方法]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加して調製した密着性評価用組成物を、10cm×10cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片上に塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させることにより、10μm膜厚の硬化膜を形成する。当該硬化膜について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、塗膜の剥がれの有無を観察する。
(鉛筆硬度)
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムにおいて、耐衝撃性の点から、鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
(複屈折率)
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.040以下であることが好ましい。
前記複屈折率が小さいことにより、光学的歪みが低減するため、ポリイミドフィルムをディスプレイ用表面材として用いた場合に、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.020以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
なお、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し破断しやすくなり、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、例えば、従来ガラス基材等ガラス製品が用いられていた基材や部材として用いることができる。
例えば、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、不純物含有量が低減され、例えば光学特性が向上したものであるため、ディスプレイの表面材として好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、曲面に対応できるディスプレイとして、例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
IV.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程(以下、ポリイミドフィルム製造工程という)と、
前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程(以下、ハードコート層用塗膜形成工程という)と、
前記塗膜を硬化する工程(以下、ハードコート層用塗膜硬化工程という)と、を含む。
本発明の積層体の製造方法は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムを用いるため、製造される積層体は、光学特性が向上し、更にハードコート層を有することにより表面硬度が向上したものである。
1.ポリイミドフィルム製造工程
本発明の積層体の製造方法において、ポリイミドフィルムを製造する工程では、前述した本発明のポリイミドフィルムの製造方法を用いることができる。
2.ハードコート層用塗膜形成工程
本発明の積層体の製造方法においては、前記本発明のポリイミドフィルムの製造方法により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等その他の成分を含有していてもよい。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、
例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。
また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、
脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、
トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX―212)、
ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、
フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
本発明に用いられる前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカル若しくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、
更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6−ベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、
ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記ハードコート層形成用組成物に用いられる溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レベリング剤、各種増感剤等が挙げられる。
ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
また、前記ハードコート層形成用組成物の塗工量としては、得られる積層体が要求される性能により異なるものであるが、乾燥後の膜厚が3μm以上25μm以下になるように適宜調節することが好ましく、塗工量が3g/m以上30g/m以下の範囲内、特に5g/m以上25g/m以下の範囲内であることが好ましい。
なお、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜は、ポリイミドフィルムの一方の面のみに形成してもよいし、ポリイミドフィルムの両面に形成してもよい。
前記ハードコート層用硬化性組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
3.ハードコート層用塗膜硬化工程
前記ハードコート層用硬化性組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
また、本発明の積層体の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層を形成する工程、及び、公知の表面処理を施す工程等を含むものであってもよい。
4.積層体
本発明の製造方法により得られる積層体は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とが隣接して位置する積層体である。
本発明の製造方法により得られる積層体は、前記ポリイミドフィルムの一方の面のみに前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよい。
また、本発明の製造方法により得られる積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層が積層されたものであってもよい。
例えば、本発明の製造方法により得られる積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよい。
また、前記ハードコート層は、反射防止性、防眩性等の機能が付与されたものであってもよい。当該機能は、例えば、前記ハードコート層に公知の表面処理を施したり、無機又は有機微粒子等の添加剤を含有させること等により付与することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
本発明の製造方法により得られる積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。
前記積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nに変更する以外は同様にして、評価することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体は、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがより更に好ましい。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体のJIS K−7105に準拠したヘイズ値は、光透過性の点から、5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることが更に好ましく、1.0以下であることがより更に好ましい。
本発明の製造方法により得られる積層体のJIS K−7105に準拠したヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.020以下であることが好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
V.ディスプレイ用表面材の製造方法
本発明のディスプレイ用表面材の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む。すなわち、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体である。
本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム及び本発明の製造方法により得られる積層体と同様に、光学特性が向上したものである。
本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材が前記本発明の製造方法により得られる積層体である場合、ディスプレイの表面に配置した後の最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよいが、ハードコート層側の表面が表面となるように本発明のディスプレイ用表面材を配置することが好ましい。また、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用表面材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
VI.タッチパネル部材の製造方法
本発明のタッチパネル部材の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材の製造方法である。すなわち、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものである。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものであることから、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム及び本発明の製造方法により得られる積層体と同様に、例えば光学特性が向上したものである。
本発明のタッチパネル部材の製造方法に含まれる本発明の積層体の製造方法においては、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程を含むことが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して配置されてなるものであることが好ましい。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材と、表面材としての本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
以下、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材について、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の製造方法により得られる積層体の代わりに、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図1は、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図2は、図1に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図3は、図1及び図2に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。図1、図2及び図3に示すタッチパネル部材20は、本発明の製造方法により得られる積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図1に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図1に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図1では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図2に示すように、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材20は、本発明の製造方法により得られる積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第二の透明電極5においては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図1及び図2に示すような、第1取出し線7を長尺配線とし、第2取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図1及び図2に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図1及び図2に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材は、図1〜図3に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図4及び図5は、各々本発明の製造方法により得られる積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図4に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図5に示す第二の導電性部材202は、本発明の製造方法により得られる積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図6は、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図6に示すタッチパネル部材20’は、図4に示す第一の導電性部材201と、図5に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の製造方法により得られる積層体と本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
VII.液晶表示装置の製造方法
本発明の液晶表示装置の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置の製造方法である。すなわち、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものである。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものであることから、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム及び本発明の製造方法により得られる積層体と同様に、例えば光学特性が向上したものである。
本発明の液晶表示装置の製造方法に用いられる本発明の積層体の製造方法においては、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程を含むことが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置が有する対向基板は、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
以下、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置について、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の製造方法により得られる積層体の代わりに、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図7は、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図7に示す液晶表示装置100は、本発明の製造方法により得られる積層体10と、本発明の製造方法により得られる積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図8は、本発明の製造方法により得られる液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図8に示す液晶表示装置200は、本発明の製造方法により得られる積層体10と、本発明の製造方法により得られる積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体10と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図6に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の製造方法により得られる液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
VIII.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法である。すなわち、本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものである。
本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は前述した本発明の製造方法により得られる積層体を備えるものであることから、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム及び本発明の製造方法により得られる積層体と同様に、例えば光学特性が向上したものである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に用いられる本発明の積層体の製造方法においては、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成する工程を含むことが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明の製造方法により得られるタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
図9は、本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図9に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明の製造方法により得られる積層体10と、本発明の製造方法により得られる積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図10は、本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図10に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明の製造方法により得られる積層体10と、本発明の製造方法により得られる積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の製造方法により得られる積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体10と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図6に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の製造方法により得られる有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
[評価方法]
<ピリジン含有量>
回収したポリイミド組成物に含まれるピリジン含有量の定量は、以下のようにして行った。
まず、ポリイミド組成物の濃度が5%質量濃度となるように、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にポリイミド組成物を添加して、ポリイミド組成物/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調整し、この溶液に、内部標準液(0.2%濃度アニソール/DMF溶液)を添加してサンプル溶液を調製し、GC−MS装置(Agilent社、6890 GC/MS)を用いて、サンプル打ち込み量0.2uL、スプリット比50:1、ヘリウム流量89.6mL/min、注入口温度250℃、オーブン温度40−240℃の条件で、GC−MS測定を行った。
ピリジンの含有量は、ピリジン含有量が0.1質量%となるように調製した、ピリジン(測定対象化合物)/DMF溶液を検量線液とし、この検量線液に、上記したサンプル溶液と同様に内部標準液を添加して調製した溶液についての、GC−MS測定による測定結果を基準として、ポリイミド組成物中の含フッ素ポリイミドに対する質量比として算出した。
<イミド化率>
イミド化率の測定は、以下のようにして行った。
まず、ポリイミド組成物20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液について、BRUKER製NMR測定器(AVANCE)にて500MHzのH NMRの測定を行った。
イミド化率は、イミド化前後及びエステル化前後で変化しない構造に由来するプロトンを決め、このプロトンのピーク積算値と、9.0−12.0ppm付近に現れる、アミド酸又はアミド酸エステルのNH基に由来するプロトンピーク積算値、及び1.0−6.0ppm付近に現れるエステル基に由来するプロトンピーク積算値とを用いて、その比率からイミド化率を算出し、mol%で示した。
なお、イミド化率の測定は、後述する「(2)ポリイミド組成物の回収」工程により回収した直後のポリイミド組成物、及び、経時後のポリイミド組成物について行った。経時後のポリイミド組成物のイミド化率の測定は、製造直後〜1週間は1日置きに行い、その後3週までは1週間置きに行い、それ以降は1ヶ月置きに行った。
<平均粒子径>
ポリイミド組成物の平均粒径の測定は、以下のようにして行った。
まず、ポリイミド組成物を光学顕微鏡により倍率100倍で観察し、その観察画像から無作為に、例えば150個のポリイミド組成物の粒子を任意に抽出し、抽出した粒子のそれぞれの粒子径を測定し、その平均値を算出して、ポリイミド組成物の平均粒径とした。
なお、ポリイミド組成物の粒子形状が球形でない場合には、その長径を測定した。
<アルコール成分含有量>
表中のアルコール成分の含有量(1)は、回収されたポリイミド組成物中に存在するアルコール分子の含有量(2)と、アルコール由来の基の含有量(3)との合計量を表記した。
なお、アルコール分子の含有量(2)は、他の成分と反応せずにポリイミド組成物中に遊離して存在するアルコールの量を示す。アルコール分子の含有量(2)の定量は、GC及びGC−MS測定により行った。GC及びGC−MS測定によるアルコール分子の含有量(2)の定量は、検量線液として、0.1質量%のピリジン(測定対象化合物)/DMF溶液に代えて、0.1質量%のアルコール(対象化合物)/DMF溶液を用いた点以外は、前述した、ピリジン含有量を定量する方法と同様の手順により行い、ポリイミド組成物中の含フッ素ポリイミドに対する質量比として、アルコール分子の含有量(2)を算出した。
<アルコール由来の基の含有量(3)>
表1において、アルコール由来の基の含有量(3)は、「アミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」としての含有量を示すものである。「アミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の含有量の測定は、以下のようにして行った。
まず、ポリイミド組成物20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液について、BRUKER製NMR測定器(AVANCE)にて500MHzのH NMRの測定を行った。
「アミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の含有量は、9.0−12.0ppm付近に現れるアミド酸エステルのNH基に由来するプロトンピーク積算値、1.0−6.0ppm付近に現れるエステル基に由来するプロトンピーク積算値、及び12.0−13.0ppm付近に現れるアミド酸のカルボキシル基に由来するプロトンピーク積算値とを用いて、その比率からmol%を算出し、質量ppmで示した。
なお、「アミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基」の含有量の測定は、後述する「(2)ポリイミド組成物の回収」工程により回収した直後のポリイミド組成物について行った。
前記H NMRの測定では、12.0−13.0ppm付近に現れる、アミド酸のカルボキシル基に由来するプロトンシグナルは確認されなかった。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ガラス転移温度>
動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求めた。装置の測定条件は以下のように設定した。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とした。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析した。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いた。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録した。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しなかった。
(合成例1)
(1)ポリイミド前駆体溶液の合成
5000mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド2560g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)16.0g(0.07mol)を溶解させた溶液を、液温30℃に制御したところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)14.6g(0.03mol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)400g(1.25mol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)565g(1.27mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体(1)が溶解したポリイミド前駆体溶液(1)(固形分28質量)を合成した。ポリイミド前駆体(1)に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。ポリイミド前駆体溶液(1)(固形分28質量%)の25℃における粘度は95300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体(1)の重量平均分子量は183000であった。
(2)ポリイミド前駆体のイミド化
ポリイミド前駆体溶液(1)358.32gに、ピリジンを41.33g(523 mmol)、無水酢酸を53.35g(523mmol)投入し、20℃の温度条件下で、メカニカルスターラーで4時間撹拌し、ポリイミド前駆体(1)の脱水閉環反応を行って含フッ素ポリイミド1を合成し、酢酸ブチル 505.3gを投入し含フッ素ポリイミド溶液1を得た。含フッ素ポリイミド溶液1におけるポリイミド濃度は10質量%であった。
(合成例2)
ポリイミド前駆体溶液(1)に投入するピリジンの量を、41.33g(523mmol)から10.33g(131mmol)に変更し、酢酸ブチル投入量を505.3gから536.3gに変更して含フッ素ポリイミド2を合成したこと以外は、合成例1と同様にして、含フッ素ポリイミド溶液2を得た。含フッ素ポリイミド溶液2におけるポリイミド濃度は10質量%であった。
[ポリイミド組成物の製造]
(実施例1)
(1)貧溶媒滴下
合成例1で得られた含フッ素ポリイミド溶液1(固形分10質量%)の500gを、ビーカーに入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、そこにメタノール(貧溶媒)1400gを、25℃、平均速度 100g/min以下の条件下で滴下して、含フッ素ポリイミド1を析出させた(精製方法1)。
(2)ポリイミド組成物の回収
析出した含フッ素ポリイミド1を、吸引濾過し、洗浄溶媒としてメタノール 200 gで洗浄し、吸引濾過し、実温100℃で乾燥することにより、白色粉末状のポリイミド組成物1を回収した。
また、ポリイミド組成物1について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル又はアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルを確認した。
(実施例2)
含フッ素ポリイミド溶液1に滴下する貧溶媒及び洗浄溶媒を、メタノールから、イソプロピルアルコールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白色粉末状のポリイミド組成物2を回収した。
また、ポリイミド組成物2について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル又はアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルを確認した。
(実施例3)
含フッ素ポリイミド溶液1に滴下する貧溶媒及び洗浄溶媒を、メタノールから、t−ブチルアルコールに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、白色粉末状のポリイミド組成物3を回収した。
また、ポリイミド組成物3について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(実施例4)
実施例3で回収したポリイミド組成物3を、酢酸ブチルに溶解させた溶液(固形分10質量%)を用いて、更に、実施例3における前記「(1)貧溶媒滴下」及び「(2)ポリイミド組成物の回収」と同様の操作を更に1回繰り返し、白色粉末状のポリイミド組成物4を回収した。
また、ポリイミド組成物4について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(実施例5)
含フッ素ポリイミド溶液1に代えて、含フッ素ポリイミド溶液2を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、白色粉末状のポリイミド組成物5を回収した。
また、ポリイミド組成物5について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(比較例1)
含フッ素ポリイミド溶液1に滴下する貧溶媒を、メタノールから、水に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド組成物6を回収した。
比較例1では、貧溶媒の滴下に伴い、含フッ素ポリイミド1が凝集体として析出した。即ち、ポリイミド組成物6は、凝集体として回収された。
(比較例2)
ビーカーにメタノール5000gを入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、そこに含フッ素ポリイミド溶液1(固形分10質量%)500gを50g/minで滴下して、含フッ素ポリイミド1を析出させた(精製方法2)。
析出した含フッ素ポリイミド1を、吸引濾過し、メタノール200mlで洗浄することにより、白色粉末状のポリイミド組成物7を回収した。
(実施例6)
(1)貧溶媒滴下
合成例で得られた含フッ素ポリイミド溶液1(固形分10質量%)の500gを、ビーカーに入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、そこにメタノール(貧溶媒)を、25℃で、はじめの一段階目では300gを0.03倍量/minで滴下、次の二段階目では150gを0.007倍量/minで滴下、最後の三段階目では950gを0.1倍量/minで滴下して、含フッ素ポリイミド6を析出させた。
(2)ポリイミド組成物の回収
析出した含フッ素ポリイミド6を、吸引濾過し、洗浄溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)200gで洗浄(含フッ素ポリイミドをIPA中で15分間撹拌)後に吸引濾過する洗浄工程を3回繰り返した後、実温100℃で乾燥することにより、白色粉末状のポリイミド組成物8を回収した。
また、ポリイミド組成物8について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたポリイミド組成物1〜8について、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表1に示す。
なお、表1中の略記は以下の化合物を示す
MeOH;メタノール
IPA;イソプロピルアルコール
t−BtOH;tert−ブチルアルコール
表1から明らかなように、本発明の製造方法に係る実施例1〜6では、本発明の製造方法に係る精製方法1により含フッ素ポリイミドを析出させているため、回収されたポリイミド組成物1〜6は、いずれも、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して10質量ppm以下と低い値まで低減されており、また、当該ポリイミド組成物1〜6は、いずれも500μm以下と小粒径の、良好な粉末体であった。
また、本発明のポリイミド組成物に係る実施例1〜6のポリイミド組成物1〜5及び8は、いずれも、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるため、含フッ素ポリイミドのイミド化率が、製造直後において、いずれも96%以上と高い値を示しており、また、精製方法1による回収後、三日間放置した後においても、イミド化率が大幅に低下することなく、高いイミド化率を保っていた。イミド化率が5%低下する日数についても、約600日や、600日超過と、長期保存安定性に優れていた。従って、ポリイミド組成物1〜5及び8は、含フッ素ポリイミドのポリイミド組成物として所望の特性を得ることができ、かつ保存安定性に優れたものであった。
特に、二級アルコール又は三級アルコールを用いた精製方法1により得られた、実施例2〜6に係るポリイミド組成物は、製造直後にイミド化率が、99.7%以上と極めて高い値を得られており、また、3日間放置した後のイミド化率の減少も、殆ど確認されなかった。中でも、精製時の滴下速度を所定の速度となるように3段階で制御し、3回洗浄した実施例6では、同じイソプロピルアルコールを用いて精製及び洗浄した実施例2に比べても、ピリジン含有量及びアルコール成分含有量が低減し、製造直後のイミド化率が更に高まった。
これに対し、比較例1では、貧溶媒として水を使用しているため、貧溶媒の滴下に伴い、含フッ素ポリイミドが凝集体として析出し、良好な粉末体として、ポリイミド組成物6を回収することができなかった。
また、比較例2では、含フッ素ポリイミドの精製を、従来の製造方法に係る精製方法2により行ったため、回収されたポリイミド組成物7は、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppmを大幅に超過しており、不純物含有量が十分に低減されたポリイミド組成物を得ることができなかった。また、比較例2では、含フッ素ポリイミドの精製を、従来の精製方法2により行ったため、回収されたポリイミド組成物の粒子径が、2〜4mmであり、実施例1〜6で得られたポリイミド組成物と比較して、粒径が大幅に大きいものであった。
また、比較例2のポリイミド組成物7は、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppmを大幅に超過し、また、アルコール含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して10000質量ppmを大幅に超過しているため、3日間放置した後では、含フッ素ポリイミドのイミド化率が、5%程度低下しており、保存安定性に劣るものであった。
(実施例7)
実施例6と同様にして得た含フッ素ポリイミド6を、吸引濾過し、洗浄溶媒としてIPA 150gで1回洗浄を行い、実温100℃で乾燥することにより、白色粉末状のポリイミド組成物9を回収した。
また、ポリイミド組成物9について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(実施例8)
実施例6と同様にして得た含フッ素ポリイミド6を、吸引濾過し、洗浄溶媒としてIPA 100gで1回洗浄を行い、実温100℃で乾燥することにより、白色粉末状のポリイミド組成物10を回収した。
また、ポリイミド組成物10について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(比較例3)
実施例6と同様にして得た含フッ素ポリイミド6を、吸引濾過し、洗浄溶媒としてIPA 50gで1回洗浄を行い、実温100℃で乾燥することにより、白色粉末状のポリイミド組成物11を回収した。
また、ポリイミド組成物11について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
(比較例4)
実施例7のポリイミド組成物の回収において、洗浄を行わなかったこと以外は、実施例7と同様にして、白色粉末状のポリイミド組成物12を回収した。
また、ポリイミド組成物12について、核磁気共鳴装置(NMR、BRUKER製、 AVANCE)によりH−NMR測定を行ったところ、アミド酸エステルに含まれるエステル基由来のプロトンシグナル、及びアミド酸エステルに含まれるアミド基由来のプロトンシグナルのいずれも、確認されなかった。
本発明の製造方法に係る実施例7〜8では、本発明の製造方法に係る精製方法1により、精製時の滴下速度を所定の速度となるように3段階で制御し、含フッ素ポリイミドを析出させて、析出した含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する工程を有する。そのため、実施例7〜8のポリイミド組成物では、含フッ素ポリイミドのイミド化率が、製造直後において、いずれも99.9%超過と高い値を示しており、また、放置した後においても、イミド化率が大幅に低下することなく、高いイミド化率を保っていた。従って、ポリイミド組成物7〜8は、含フッ素ポリイミドのポリイミド組成物として所望の特性を得ることができ、かつ長期保存安定性に優れたものであった。
これに対し、比較例3〜4では、本発明の製造方法に係る精製方法1により含フッ素ポリイミドを析出させているものの、洗浄工程における洗浄溶媒が少ない又は洗浄工程を有しないため、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppmを超えて含有してしまい、“塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物”を回収することができなかった。そのため、比較例3〜4のポリイミド組成物は、放置した後、イミド化率が早期に5%低下してしまい、保存安定性に劣るものであった。
(合成例3)
ポリイミド前駆体溶液(1)をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分間乾燥した。次いで、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、330℃まで昇温し、330℃で1時間保持後、室温まで冷却した。ガラスより剥離し、含フッ素ポリイミド3を含むポリイミド組成物13として、フィルム状のポリイミドフィルムを得た(熱イミド化による含フッ素ポリイミドの合成)。
ポリイミド組成物13に含まれる含フッ素ポリイミド3のイミド化率は、99.9%であった。
(参考実験1)
熱イミド化により合成された含フッ素ポリイミド3を含むポリイミド組成物8について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、16.45であった。
なお、ポリイミド組成物13は、含フッ素ポリイミド3を98.7質量%含むものであった。
(参考実験2)
化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド1を含むポリイミド組成物1(実施例1)について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、3.48であった。
なお、ポリイミド組成物1は、含フッ素ポリイミド1を99.9質量%含むものであった。
(参考実験3)
化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド1を含むポリイミド組成物2(実施例2)について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、3.15であった。
なお、ポリイミド組成物2は、含フッ素ポリイミド1を99.9質量%含むものであった。
(参考実験4)
化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド1を含むポリイミド組成物3(実施例3)について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、3.05であった。
なお、ポリイミド組成物3は、含フッ素ポリイミド1を99.9質量%含むものであった。
(参考実験5)
化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド1を含むポリイミド組成物4(実施例4)について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、2.98であった。
なお、ポリイミド組成物4は、含フッ素ポリイミド1を99.9質量%含むものであった。
(参考実験6)
化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド2を含むポリイミド組成物5(実施例5)について、下記の黄色度測定を行った。YI値は、2.93であった。
なお、ポリイミド組成物5は、含フッ素ポリイミド2を99.9質量%含むものであった。
[ポリイミド組成物の黄色度測定法]
含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物を、室温(25℃)のジメチルアセトアミドに20質量%となるように溶解させた試験用溶液を、10mm×10mm×43mmの石英セルに入れた状態で、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で透過率を測定した。
なお、前記黄色度の算出は、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用いる点以外は、後述するポリイミドフィルムの黄色度(YI値)の算出と同様にして行った。
以上の参考実験1〜6より、化学イミド化により合成された含フッ素ポリイミド1〜5を含む、ポリイミド組成物1〜5は、YI値が10以下であったのに対し、熱イミド化により合成された含フッ素ポリイミド3を含むポリイミド組成物13は、YI値が16.45であり、10を大きく超えていた。
[ポリイミドフィルムの製造]
(1)ポリイミド塗工液調製工程
ポリイミド組成物1を、ジクロロメタンに固形分17質量%になるように溶解させ、ポリイミド塗工液1を得た。
(2)ポリイミドフィルムの作製
ポリイミド塗工液1をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。次いで、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、250℃まで昇温し、250℃で1時間保持後、室温まで冷却した。ガラスより剥離し、実施例1のポリイミドフィルム1を得た。得られたポリイミドフィルム1を用いて測定したところ、ポリイミドのガラス転移温度は312℃であった。
実施例2〜8で得られたポリイミド組成物2〜8についても同様にして、ポリイミドフィルム2〜8を得た。
得られたポリイミドフィルムについて、下記評価を行った。評価結果を表3に示す。
<全光線透過率>
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
<YI値(黄色度)>
YI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定した透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
<ヘイズ値>
JIS K−7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
表3から明らかなように、本発明のポリイミド組成物に係る実施例1〜8のポリイミド組成物1〜5及び8〜10を用いて作製した、ポリイミドフィルム1〜8は、いずれも、全光線透過率が90%以上と高く、YI値(黄色度)が1.6以下、ヘイズ値が1.2以下と低く、光学特性に優れたものであった。従って、実施例1〜8のポリイミド組成物1〜5及び8〜10が、含フッ素ポリイミドを含む組成物として、所望の特性を得られていることが確認できた。
[積層体の作製]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
実施例1で得られたポリイミド組成物1を用いて得られたポリイミドフィルム1を10cm×10cmに切り出し、切り出したポリイミドフィルム1の表面に前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体のハードコート層側表面について、下記方法により、鉛筆硬度の評価を行った結果、3Hであった。
<鉛筆硬度>
積層体のハードコート層側表面について、鉛筆硬度の測定を行った。
積層体の鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(9.8N荷重)をサンプル表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。

Claims (18)

  1. 繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有し、且つアミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを含むポリイミド組成物であって、
    塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、
    前記ポリイミド組成物中に残存するアルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であり、
    前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である、ことを特徴とするポリイミド組成物。
  2. 前記アルコール成分として、二級アルコール又は三級アルコールを含有する、請求項1に記載のポリイミド組成物。
  3. 前記塩基性触媒は、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載のポリイミド組成物。
  4. 前記含フッ素ポリイミドのイミド化率が99%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリイミド組成物。
  5. 前記ポリイミド組成物は、平均粒径が1000μm以下の粉末体である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリイミド組成物。
  6. 前記ポリイミド組成物は、含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物であって、下記測定法による黄色度の値が、10以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリイミド組成物。
    [測定法]
    含フッ素ポリイミドを98質量%以上含むポリイミド組成物を、室温(25℃)のジメチルアセトアミドに20質量%となるように溶解させた試験用溶液を、10mm×10mm×43mmの石英セルに入れた状態で、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−2700」)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で透過率を測定する。当該透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より黄色度を算出する。
    黄色度(YI)=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
  7. 繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有する含フッ素ポリイミドと、前記含フッ素ポリイミドの良溶媒と、塩基性触媒とを含有する含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程と、
    前記含フッ素ポリイミド溶液に、含フッ素ポリイミドの貧溶媒として、アルコールを滴下し、前記含フッ素ポリイミド溶液に、アミド酸エステルを含む繰り返し単位を1個以上有していてもよい含フッ素ポリイミドを析出させる工程と、
    前記析出した含フッ素ポリイミドを分離することにより、塩基性触媒の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して20質量ppm以下であり、アルコール成分の含有量が、前記含フッ素ポリイミドに対して1質量ppm以上10000質量ppm以下であるポリイミド組成物を回収する工程と、を有し、
    前記アルコール成分の含有量は、前記ポリイミド組成物中に存在するアルコールと、前記ポリイミド組成物中に存在するアミド酸エステルに含まれるアルコール由来の基との合計の含有量である、ポリイミド組成物の製造方法。
  8. 前記含フッ素ポリイミド溶液を準備する工程は、繰り返し単位中に1個以上のフッ素原子を有するポリイミド前駆体を、塩基性触媒を用いてイミド化して含フッ素ポリイミドを合成する工程である、請求項7に記載のポリイミド組成物の製造方法。
  9. 前記貧溶媒として、二級アルコール又は三級アルコールを用いる、請求項7又は8に記載のポリイミド組成物の製造方法。
  10. 前記塩基性触媒は、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン酸、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のポリイミド組成物の製造方法。
  11. 前記回収されたポリイミド組成物は、前記含フッ素ポリイミドのイミド化率が99%以上である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載のポリイミド組成物の製造方法。
  12. 前記回収されたポリイミド組成物は、粒径が1000μm以下の粉末体である、請求項7乃至11のいずれか一項に記載のポリイミド組成物の製造方法。
  13. 前記請求項7乃至12のいずれか一項に記載の製造方法によりポリイミド組成物を製造する工程と、
    前記工程により得られるポリイミド組成物と、有機溶媒とを含有するポリイミド塗工液を調製する工程と、
    前記ポリイミド塗工液を支持体に塗布することにより、前記ポリイミド塗工液の塗膜を形成する工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
  14. 前記請求項13に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程と、
    前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
    前記塗膜を硬化する工程と、を含む積層体の製造方法。
  15. 前記請求項13に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項14に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、ディスプレイ用光学部材の製造方法。
  16. 前記請求項13に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項14に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材の製造方法。
  17. 前記請求項13に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項14に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置の製造方法。
  18. 前記請求項13に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項14に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、
    前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
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