上述の液晶ポリエステルポリマー(LCP)は,ポリイミド(PI)に類似する物性を幾らか有していることから,液晶ポリエステルフィルムを使用した金属張積層板の製造には,ポリイミドフィルムを使用した金属張積層板の製造に用いられる既存の製造方法(製造装置及び製造条件を含む。)を適用することが可能であった。
しかし,ポリイミドフィルムを使用した金属張積層板の従来の製造方法には後述する問題があるため,液晶ポリエステルフィルムの金属張積層板の製造への適用に難があった。
以下,ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせた銅張積層板を例に述べる。
通常,ポリイミド(PI)と銅との接着が弱いため,銅箔とポリイミドフィルムを貼り合わせた銅張積層体(CCL)は,界面で剥がれやすい。これは,ポリイミドフィルムと銅箔の界面に接着が完全ではない箇所が存在するためである。また,ポリイミドフィルムのみならずポリイミドフィルムの前駆体であるアミック酸についても銅箔との接着が弱い。
ここで,銅箔と樹脂との接着力が発揮されるメカニズムを端的に言えば,化学的な接着力と物理的接着力との総合力で接着力のレベルが決定される。
まず,前記化学的な接着力を安定化させる方法として,銅箔にポリイミド等の熱硬化性樹脂を貼り合わせる場合には,接着力を強化するために,銅箔表面にシランカップリング剤層を形成し,樹脂の硬化反応とのマッチングを図る方法(プライマー処理)がある。
しかし,例えば,前記ポリイミドの前駆体であるアミック酸の反応機構には,イミド化収縮と脱水反応の反応硬化機構があるために被着体界面における最終の固定場において結合ズレ又は投錨ズレがあると推察され,実際,界面域において分子鎖域での絡み(投錨)が充分に得られない。ゆえに,プライマー処理をしても,ポリイミド(PI)と銅は親和的とは云えず,銅箔とポリイミドフィルムの二層は,歴然として異相(PIと銅)となる。
そこで,上述のプライマー処理により化学的接着力を安定化させる他に,前記物理的接着力を安定化させるために,前記銅箔にポリイミド前駆体を塗膜する前に,銅面を黒化処理(特許文献1)して凹凸を加えて表面積を大きくする方法が行われている。
しかし,塗膜前に銅箔表面に前記黒化処理をしても,剥離値7〜8N/10mm幅値(PI厚み25μm:銅箔厚み12μm)であり,また,塗膜前に前記プライマー処理を行っても剥離値10〜15N/10mm(PIの厚み:25μm。銅箔の厚み:12μm)程度である。
前記黒化処理を行ってもポリイミドフィルムが銅箔に対して剥離値が望むほどに向上しない要因としては,上述の縮合脱水反応による界面結合破綻の他に,吸水性(約2%)によるPIと銅箔の界面において加水分解が生じることが知られている。
また,前記黒化処理について,通常,硫酸液により銅箔表面を表面粗度値Rzが1.0〜6.5μm凹凸となるように黒化処理(酸化,粗化)を実施しているが,形成された黒化面は脆くて,脱落しやすく,コーター等におけるガイドロールとの接触面に付着(銅箔黒化処理による積層コーターマシンの汚れが発生)し,黒色異物の成長の原因となり,誘電不良,清掃等工程負荷の原因となっていた。
このように黒化処理工程は環境負荷が大きく,さらに,銅箔の黒化処理により銅箔の表面が酸化されると黒化処理層における誘電率が更に高まる問題があった。
また,銅箔の黒化処理により銅箔表面の凹凸が増すため,導体パターンを形成する際,導体パターン幅を15μmから更に極小幅を形成しようとすると,エッチング処理後に結晶粒の析出を生む因子が増え,ノイズや短絡の原因となった。
さらに,銅箔に黒化処理(粗化処理)を施すと,微細導体パターン形成のためのエッチング時に,脆くなった黒化処理層が浸蝕を受けることで,サイドエッチング(アンダーカット)が発生し,形成される導体パターンが断面視において台形状となる(基板に対し直角に形成されない)ため,微細導体パターンの形成が難しく,また,高周波対応におけるノイズの原因ともなった。
なお,使用される銅箔の種類については電解銅箔や圧延銅箔等があり,前記電解銅箔や圧延銅箔は,共に前記ポリイミドフィルムとの接着向上を図るため,上述した通り,銅箔の製造工程において表面に凹凸を形成させる黒化処理(表面粗化処理)を施す必要がある。しかし,例えば,電解銅箔では銅箔ベースをロール状に巻き取った後に表面処理ラインにて黒化処理(粗化処理)を施すが,該黒化処理により,もともと粗い電界銅箔のマット面(メッキ面)が,さらに粗くなる問題があった。
また,銅張積層板の銅箔の厚みについて,近年の傾向は,前記圧延銅箔,前記電解銅箔いずれも35μmから12μm,更に8μmへと薄くなり,電解銅箔に準じた,メッキ法又はスパッタ法にて厚み1〜2μmの利用が始まり,さらには,回路幅についても20μm以下のファインピッチ化が始まっている。
加えて,フィルム配線板上に半導体チップを実装するCOF(Chip On Film)技術に応えるべく,基板は,軽量,厚みは薄く,折りたたみ,曲げ,ねじりなどの要求に答えてゆかなければならない。なお,COF(Chip On Film)として耐屈曲性から,圧延銅箔が好まれ,ファインピッチ化から銅箔厚1〜3μmが検討されている。
しかしながら,銅箔の厚さが35μm以下で,導体パターンのピッチが200μm以下のフレキシブルプリント配線板(FPC)の製造は依然として難しく,さらに,箔厚が9μm以下になるとラミネート法やキャスティング法で銅張積層体を形成するときのハンドリング性が極めて悪化する問題があった。
以上の問題点を鑑み,本発明は,液晶ポリエステル層と,該液晶ポリエステル層の表面に積層された金属層とを有する金属張積層板であって,上述したポリイミドと銅箔のように接着性の問題が発生せず互いの接合が良好である金属張積層板を提供し,さらには,前記金属張積層板の製造方法であって,上述したポリイミド(PI)の銅張積層板を製造する際の問題が生じないように,特に黒化処理をせずとも,金属層と液晶ポリエステルフィルム層の接合が強固となる金属張積層板の製造方法である。特に,近年,前記金属層に銅箔を使用した銅張積層板に求められている,銅箔の種類が限定されず,電解銅箔,圧延銅箔など種々に対応し,また,使用する銅箔の厚みが極めて薄いものにも対応できる金属張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
また,本発明の金属張積層板1の製造方法は,液晶ポリエステルおよび溶媒が含まれる液状組成物3を金属層8に流延して乾燥することにより,前記溶媒が含まれた状態の液晶ポリエステル前駆体層4と前記金属層8を有する前駆積層体2を調製する工程と,
焼成炉11内で,前記前駆積層体2に作用する張力を解放した状態で,前記焼成炉11内に,連続して搬送される前記前駆積層体2を挟んで上方及び下方に前記前駆積層体2の搬送方向に対して交互に配設されたエアーノズル(図示せず)から,前記前駆積層体2に向けてエア(不活性ガス)を吹き付けて,前記前駆積層体2を,該前駆積層体2の水平面(搬送方向)に対して垂直方向で上下動(屈曲)させつつ熱処理することにより,液晶ポリエステル層5と前記金属層8を有する金属張積層板1を調製する工程と,を含むことを特徴とする(請求項1)。
前記焼成炉11内を不活性ガスで充満させることが好ましい(請求項2)。
前記熱処理を遠赤外加熱により行うことが好ましい(請求項3)。
前記前駆積層体2を,ゴム弾性層を有する金属基材(金属箔)にキャスト(担持)させてから,前記焼成炉11内で熱処理しても良い(請求項4)。
以上で説明した本発明の金属張積層板1は,界面が入り組んだ構造になっているので,所謂投錨効果により,液晶ポリエステル層と金属基材層との密着性及び接合強度が著しく高い。
また,本発明の金属張積層板1に導体パターンが形成されたプリント配線板は,サイドエッチングも少なく配線パターン密度も高められ,5G通信に向け,誘電損失も少ない,低ノイズの高機能を有する。
また,本発明の製造方法によれば,前記焼成炉11内で前記前駆積層体2を,該前駆積層体2の水平面(搬送方向)に対して垂直方向で上下動させつつ熱処理することで,まず,液晶ポリエステル層の脱溶媒の際に収縮反応が緩和され,そして,液晶ポリエステル層5と金属層8との層間において分子間挙動が与えられ,液晶ポリエステル層5と金属層8との界面が入り組んだ構造と成り,仕上がりにおいて液晶ポリエステル層5が金属層8との界面域においてナノ域で投錨効果を得た如く,剥離測定不能な金属層8と液晶ポリエステル層5の一体化(つまり,液晶ポリエステル層5と金属層8の互いの密着性,接合強度が著しく高い状態)が得られる。
さらに,通常,熱処理により前記液晶ポリエステル前駆体層4の非結晶から液晶ポリエステル層5が調製(結晶化)される際に,収縮,反り,ポリマー内で歪み等が発生するところ,本発明のように,熱処理中の上下動により前記前駆積層体2(フィルム)がほぐされ,結晶化される液晶ポリエステル層が無配向となると共に,ポリマー内の歪みやフィルムのストレスが除去されるため,得られる金属張積層板1は,収縮,反り,ポリマーの歪みが発生せず真っ直ぐとなる。
加えて,上述の上下動により液晶ポリエステル層がほぐされることで,液晶ポリエステルポリマー内の溶剤,脱水,その他残留物(不純ガス含む)等の脱気を促し,液晶ポリエステル層5の収縮又は発泡(脱溶剤の気泡)を回避し,気泡やピンホール等の残渣痕が生じる事態を阻止できる。
以上,上述した焼成炉11内で前駆積層体2を上下動させつつ熱処理することで得られる効果を,以下,タンブラー効果という。
本発明の製造方法によれば,工程負荷,環境負荷のかかる,銅箔表面に接着向上を図るための黒化処理又は,密着向上剤のプライマー処理も無用である。
また,本発明の製造方法は,前記金属層に使用される銅箔の種類が限定されず,電解銅箔,圧延銅箔など種々に対応し,また,使用する銅箔の厚みが極めて薄いもの(厚み1〜50μm)にも対応できる。
なお,前記焼成炉11内を不活性ガスで充満させて不活性ガス雰囲気下で熱処理を行うことで,液晶ポリエステルの酸化による液晶ポリエステル層5の劣化を未然に防止することができる。
また,前記焼成炉11内で,遠赤外加熱により熱処理を行うと,液晶ポリエステルは,遠赤外線を容易に内部まで吸収するため,吸収された遠赤外線(エネルギー)がモノマー又はポリマーを揺さぶり,液晶ポリエステル層5内の不純ガスを放出(脱気)し,さらには,ポリマー歪が緩和される。
また,前記前駆積層体2を前記ゴム状弾性層を有する金属基材に担持させることにより,例えば,前記金属層8が銅箔8’であれば,銅箔厚み1〜12μmと薄い銅張積層体1’が焼成でき,ゴム状弾性層により金属張積層板1と互着せず,加えて収縮歪やフレア(面歪み)を低減可能であり,さらに,前述の第2工程での前駆積層体2を上下動させつつ熱処理することで前記タンブラー効果も得て面発泡も少なく生産性も高められる。
以下,本発明の金属張積層板1の実施の形態について説明する。
本発明の金属張積層板は,液晶ポリエステル層5と,該液晶ポリエステル層5の表面に積層された金属層8とを有する金属張積層板1である。
なお,本発明の金属張積層板1は,前記液晶ポリエステル層5が二層塗布以上でも構わない。また,本発明の金属張積層板1の表面又は裏面に,さらに,種々のフィルムを積層しても良い。
<液晶ポリエステル>
本発明に係る液晶ポリエステル層5は,後述する液晶ポリエステルからなる好ましくは厚さ0.001〜0.1mmのフィルムであり,透湿度が0.5g/m2・24h以下である。
前記液晶ポリエステルは,溶融時に光学異方性を示し,450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。この液晶ポリエステルとしては,以下の式(1)で示される構造単位(以下,「式(1)構造単位」という。),以下の式(2)で示される構造単位(以下,「式(2)構造単位」という。)および以下の式(3)で示される構造単位(以下,「式(3)構造単位」という。)を有し,全構造単位の合計含有量に対して,式(1)で示される構造単位の含有量が30〜80モル%,式(2)で示される構造単位の含有量が35〜10モル%,式(3)で示される構造単位の含有量が35〜10モル%の液晶ポリエステルであることが好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中,Ar1 は,フェニレン基またはナフチレン基を表し,Ar2 は,フェニレン基,ナフチレン基または下記式(4)で示される基を表し,Ar3 はフェニレン基または下記式(4)で示される基を表し,XおよびYは,それぞれ独立に,OまたはNHを表す。なお,Ar1,Ar2およびAr3の芳香環に結合している水素原子は,ハロゲン原子,アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中,Ar11,Ar12は,それぞれ独立に,フェニレン基またはナフチレン基を表し,Zは,O,COまたはSO2 を表す。)
式(1)構造単位は,芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位であり,この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては,例えば,p−ヒドロキシ安息香酸,m−ヒドロキシ安息香酸,6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸,3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸,4−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸などが挙げられる。
式(2)構造単位は,芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり,この芳香族ジカルボン酸としては,例えば,テレフタル酸,イソフタル酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸,1,5−ナフタレンジカルボン酸,ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸,ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸,ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸などが挙げられる。
式(3)構造単位は,芳香族ジオール,フェノール性ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)を有する芳香族アミンまたは芳香族ジアミンに由来する構造単位である。この芳香族ジオールとしては,例えば,ハイドロキノン,レゾルシン,2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン,ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル,ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン,ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
また,このフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンとしては,4−アミノフェノール(p−アミノフェノール),3−アミノフェノール(m−アミノフェノール)等が挙げられ,この芳香族ジアミンとしては,1,4−フェニレンジアミン,1,3−フェニレンジアミン等が挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルは溶媒可溶性であり,かかる溶媒可溶性とは,温度50℃において,1質量%以上の濃度で溶媒(溶剤)に溶解することを意味する。この場合の溶媒とは,後述する液状組成物3の調製に用いる好適な溶媒のいずれか1種であり,詳細は後述する。
このような溶媒可溶性を有する液晶ポリエステルとしては,前記式(3)構造単位として,フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミンに由来する構造単位および/または芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち,式(3)構造単位として,XおよびYの少なくとも一方がNHである構造単位(式(3’)で示される構造単位,以下,「式(3’)構造単位」という。)を含むと,後述する好適な溶媒(非プロトン性極性溶媒)に対する溶媒可溶性が優れる傾向がある点で好ましい。特に,実質的に全ての式(3)構造単位が式(3’)構造単位であることが好ましい。また,この式(3’)構造単位は液晶ポリエステルの溶媒溶解性を十分にすることに加え,液晶ポリエステルがより低吸水性となる点でも有利である。
(3’)−X−Ar3 −NH−
(式中,Ar3およびXは前記と同義である。)
式(3)構造単位は全構造単位の合計含有量に対して,33〜25モル%の範囲で含むことがより好ましく,こうすることにより,溶媒可溶性は一層良好になる。このように,式(3’)構造単位を式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは,溶媒に対する溶解性がより良好になり,低吸水性の液晶ポリエステルフィルムが得られるという利点もある。
式(1)構造単位は全構造単位の合計含有量に対して,30〜80モル%の範囲で含むと好ましく,35〜50モル%の範囲で含むとより好ましい。このようなモル分率で式(1)構造単位を含む液晶ポリエステルは,液晶性を十分維持しながらも,耐熱性がより優れる傾向にある。さらに,式(1)構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸の入手性も併せて考慮すると,この芳香族ヒドロキシカルボン酸としては,p−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が好適である。
式(2)構造単位は全構造単位の合計含有量に対して,35〜10モル%の範囲で含むと好ましく,33〜25モル%の範囲で含むとより好ましい。このようなモル分率で式(2)構造単位を含む液晶ポリエステルは,液晶性を十分維持しながらも,耐熱性がより優れる傾向にある。さらに,式(2)構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸の入手性も併せて考慮すると,この芳香族ジカルボン酸としては,テレフタル酸,イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくも1種であると好ましい。
また,得られる液晶ポリエステルがより高度の液晶性を発現する点では,式(2)構造単位と式(3)構造単位とのモル分率は,[式(2)構造単位]/[式(3)構造単位]で表して,0.9/1〜1/0.9の範囲が好適である。
次に,液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
この液晶ポリエステルは,種々公知の方法により製造可能である。好適な液晶ポリエステル,すなわち,式(1)構造単位,式(2)構造単位および式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合,これら構造単位を誘導するモノマーをエステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後,重合させて液晶ポリエステルを製造する方法が,操作が簡便である点で好ましい。
前記エステル形成性・アミド形成性誘導体について,例を挙げて説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のように,カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては,当該カルボキシル基が,ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように,酸塩化物,酸無水物等の反応活性の高い基になっているものや,当該カルボキシル基が,エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のように,フェノール性ヒドロキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては,エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように,フェノール性ヒドロキシル基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
また,芳香族ジアミンのように,アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては,例えば,アミド交換反応によりポリアミドを生成するように,アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
これらの中でも液晶ポリエステルをより簡便に製造する上では,芳香族ヒドロキシカルボン酸と,芳香族ジオール,フェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アミン,芳香族ジアミンといったフェノール性ヒドロキシル基および/またはアミノ基を有するモノマーとを脂肪酸無水物でアシル化してエステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)とした後,このアシル化物のアシル基と,カルボキシル基を有するモノマーのカルボキシル基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させ,液晶ポリエステルを製造する方法が特に好ましい。
このような液晶ポリエステルの製造方法は,例えば,特開2002−220444号公報または特開2002−146003号公報に記載されている。
アシル化においては,フェノール性ヒドロキシル基とアミノ基との合計に対して,脂肪酸無水物の添加量が1〜1.2倍当量であることが好ましく,1.05〜1.1倍当量であるとより好ましい。脂肪酸無水物の添加量が1倍当量未満では,重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して反応系が閉塞しやすい傾向があり,また,1.2倍当量を超える場合には,得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化は,130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく,140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化に使用される脂肪酸無水物は,価格と取扱性の観点から,無水酢酸,無水プロピオン酸,無水酪酸,無水イソ酪酸またはこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく,特に好ましくは,無水酢酸である。
アシル化に続く重合は,130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく,150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
また,重合においては,アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
アシル化および/または重合の際には,ル・シャトリエ‐ブラウンの法則(平衡移動の原理)により,平衡を移動させるため,副生する脂肪酸や未反応の脂肪酸無水物は蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
なお,アシル化や重合においては触媒の存在下に行ってもよい。この触媒としては,従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ,例えば,酢酸マグネシウム,酢酸第一錫,テトラブチルチタネート,酢酸鉛,酢酸ナトリウム,酢酸カリウム,三酸化アンチモン等の金属塩触媒,N,N−ジメチルアミノピリジン,N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
これらの触媒の中でも,N,N−ジメチルアミノピリジン,N−メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
この触媒は,通常モノマーの投入時に一緒に投入され,アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく,この触媒を除去しない場合には,アシル化からそのまま重合に移行することができる。
このような重合で得られた液晶ポリエステルは,そのまま本発明に用いることができるが,耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには,より高分子量化させることが好ましく,かかる高分子量化には固相重合を行うことが好ましい。この固相重合に係る一連の操作を説明する。前記の重合で得られた比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出し,粉砕してパウダー状またはフレーク状にする。続いて,この粉砕後の液晶ポリエステルを,例えば,窒素などの不活性ガスの雰囲気下,20〜350℃で,1〜30時間固相状態で熱処理するという操作により,固相重合は実施できる。この固相重合は,攪拌しながら行ってもよく,攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお,後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るという観点から,この固相重合の好適条件を詳述すると,反応温度として210℃を越えることが好ましく,より一層好ましくは220℃〜350℃の範囲である。反応時間は1〜10時間から選択されることが好ましい。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては,その流動開始温度が250℃以上であると好ましい。この液晶ポリエステルの流動開始温度がこの範囲であると,この液晶ポリエステルを含む層上に導電層(電極)を形成した場合に,この液晶ポリエステルを含む層とこの導電層との間に,より高度の密着性が得られる傾向がある。ここでいう流動開始温度とは,フローテスターによる溶融粘度の評価において,9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・s以下になる温度をいう。なお,この流動開始温度は,液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(例えば,小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁,シーエムシー,1987年6月5日発行を参照)。
液晶ポリエステルの流動開始温度の上限は,この液晶ポリエステルが溶媒に可溶である範囲で決定されるが,350℃以下であることが好ましい。流動開始温度の上限がこの範囲であれば,液晶ポリエステルの溶媒に対する溶解性がより良好になることに加え,後述する液状組成物3を得たとき,その粘度が著増しないので,この液状組成物3の取扱性が良好となる傾向がある。なお,液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲に制御するには,前記固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
<液状組成物の説明>
次に,液状組成物3について説明する。
前記液状組成物3は,上述した液晶ポリエステル及び溶媒の2成分からなるものである。
前記溶媒としては,液晶ポリエステルを溶解するものであれば特に限定されないが,例えば,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチル−2−ピロリドン,N−メチルカプロラクタム,N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジエチルホルムアミド,N,N−ジエチルアセトアミド,N−メチルプロピオンアミド,ジメチルスルホキシド,γ−ブチロラクトン,ジメチルイミダゾリジノン,テトラメチルホスホリックアミドおよびエチルセロソルブアセテート,並びにp−フルオロフェノール,p−クロロフェノール,ペルフルオロフェノールなどのハロゲン化フェノール類などが挙げられる。これらの溶媒は,単独で用いてもよく,2種以上を組み合わせて用いても構わない。
かかる溶媒の中でも,取扱いの観点から,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチル−2−ピロリドン,N−メチルカプロラクタム,N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジエチルホルムアミド,N,N−ジエチルアセトアミド,N−メチルプロピオンアミド,ジメチルスルホキシド,γ−ブチロラクトン,ジメチルイミダゾリジノン,テトラメチルホスホリックアミドおよびエチルセロソルブアセテートからなる群から選択される非プロトン性極性溶媒が好適である。
この溶媒の使用量は,液晶ポリエステルを0.1質量%以上含有する液状組成物3を調製するような量であれば,適用する溶媒の種類に応じて適宜選択することができるが,溶媒100質量部に対して液晶ポリエステル0.5〜50質量部であることが好ましく,10〜30質量部であることがより好ましい。液晶ポリエステルが0.5質量部未満であると,液状組成物1の粘度が低すぎて均一に塗工できない傾向があり,50質量部を超えると,高粘度化する傾向がある。このようにして得られた液状組成物3を前記有機溶媒で希釈してこの液晶ポリエステルの0.5g/dl溶液としたときの25℃における固有粘度は,0.1〜10である。
<金属層>
本発明の金属張積層板1の金属層8に用いられる金属の種類としては,導電性を有していれば特に制限はなく,例えば,アルミニウム,銅,ステンレス,鉄,銀,パラジウム,ニッケル,クロム,モリブテン,タングステン,ジルコニウム,金,コバルト,チタン,タンタル,亜鉛,鉛,錫,シリコン,ビスマス,インジウム,及びこれらの合金等が挙げられる。これらの中では,銅又はその合金が好ましく使用する事ができる。
また,本発明の金属層8の厚みは,1〜50μmが好ましい。なお,銅箔を使用する場合,銅箔の製膜上と巻重体の繰り出しから,厚みが1μm以上であることが好ましい。
<金属張積層板1の製造方法>
本発明の金属張積層板1の製造方法に関し,例として前記金属層8に銅箔8’を使用した銅張積層体(CCL)1’の製造方法について以下,述べる。
銅張積層体(CCL)1’の製造方法の概要は,液晶ポリエステル前駆体フィルム(液晶ポリエステル前駆体層)4と銅箔8’を有する前駆積層体2を調製する工程(第1工程)と,前記前駆積層体2を熱処理(連続焼成)して,液晶ポリエステルフィルム(液晶ポリエステル層)5と前記銅箔8’を有する銅張積層体1’を調製する工程(第2工程)とを有する。
まず,前記前駆積層体2を調製する工程(第1工程)は,上述した液状組成物3を塗工機から銅箔8’に流延し,所定の温度で所定の時間だけ,乾燥機12にて乾燥(1次乾燥)する。
前記乾燥(1次乾燥)により前記銅箔8’上の液状組成物3は,溶媒が含まれた状態の液晶ポリエステル前駆体フィルム4と成り,これにより,銅箔8’の表面に前記液晶ポリエステル前駆体フィルム4が積層された前記前駆積層体2が得られる。
なお,前記液晶ポリエステル前駆体フィルム4とは,銅張積層体(CCL)の製造過程において,最終目的物である銅張積層体1’が有する液晶ポリエステルフィルム5の前段階にある物質であって,後述する熱処理(第2工程)によって液晶ポリエステルフィルム5に変わりうるフィルムを意味する。
上述の液状組成物3を銅箔8’に流延する手段としては,例えば,ローラーコート法,グラビアコート法,ナイフコート法,ブレードコート法,ロッドコート法,ディップコート法,スプレイコート法,カーテンコート法,スロットTダイコート法,スクリーン印刷法などを挙げることができる。これらの中でも,制御が容易であるとともに,膜厚を精度よく均一にできる観点から,ナイフコート法またはスロットTダイコート法が好ましい。
また,前記液状組成物3を乾燥するときの温度および時間は特に制限されない。例えば,乾燥温度は,160℃以下とすることが好ましく,150℃以下とすることがより好ましく,140℃以下とすることがさらに好ましい。この温度が高すぎると,塗膜面に欠陥が生じる可能性がある。一方,この温度が低すぎると,溶媒除去にかかる時間が長くなり,生産性が低下する恐れがある。そのため,液状組成物3の乾燥は,少なくとも60℃以上で行うことが好ましい。
次に,図1に示すように,上述の乾燥機12による乾燥(一次乾燥)後,調製された前記前駆積層体2を所定の温度で所定の時間だけ焼成炉11で連続的に熱処理(連続焼成)して,液晶ポリエステルフィルム5と前記銅箔8’を有する銅張積層体1’を調製する(第2工程)。
このとき,前記焼成炉11内を窒素で充満させて窒素雰囲気下で熱処理を行うため,液晶ポリエステルの酸化による液晶ポリエステルフィルム5の劣化を未然に防止することができる。なお,前記窒素以外の不活性ガス(例えば,ヘリウム,アルゴンなど)の雰囲気下で熱処理を行うようにしても構わない。
また,焼成炉11内に酸素が入ってこないように,前記焼成炉11の搬送入口及び搬送出口の開口(クリアランス)に不活性ガスを常時吹き付けるのが好ましい。
また,前記前駆積層体2の熱処理温度は,200〜350℃の範囲内であることが好ましい。この熱処理温度が200℃以上であれば,熱処理によって液晶ポリエステルフィルム5と銅箔8’との界面における溶融結合(投錨)と分子間結合が増大し,液晶ポリエステル前駆体フィルム4から液晶ポリエステルフィルム5としての特性を発現することができる。また,熱処理温度が350℃以下であれば,液晶ポリエステルフィルム5の熱分解を抑制することができる。
また,焼成炉11内は,連続して搬送される前記前駆積層体2を挟んで上方及び下方に,前記前駆積層体2の進行方向に対して交互にエアーノズル(図示せず)が配設されており,前記焼成炉11内で,前記前駆積層体2に作用する張力を解放した状態で前記前駆積層体2を保持し(無接触搬送),前記前駆積層体2の上方及び下方から該前駆積層体2に向けて前記エアーノズルからエア(不活性ガス)を吹き付けて,前記前駆積層体2を搬送方向(前駆積層体の平面)に対して垂直方向で上下動させつつ搬送させている。これにより,焼成炉11内の前記前駆積層体2は,図1に示すように,搬送方向に対して連続した略波状に浮上させた状態で搬送されつつ熱処理される。
上述のように前駆積層体2を上下動させつつ熱処理することで,まず,液晶ポリエステルフィルム5の脱溶媒の際に収縮反応が緩和され,そして,液晶ポリエステルフィルム5と銅箔8’との層間において分子間挙動が与えられ,液晶ポリエステルフィルム5と銅箔8’との界面が入り組んだ構造と成り,仕上がりにおいて液晶ポリエステルフィルム5が銅箔8’との界面域においてナノ域で投錨効果を得た如く剥離測定不能な銅箔(金属)と液晶ポリエステルフィルムの一体化(つまり,互いの密着性及び接合強度が著しく向上した状態)が得られる。
さらに,通常,熱処理により前記液晶ポリエステル前駆体フィルム4から液晶ポリエステルフィルム5が調製される際に,収縮,反り,ポリマー内で歪み等が発生するところ,熱処理中に上述の上下動によりフィルムがほぐされることで,調製される液晶ポリエステルフィルム5が無配向となると共に,ポリマー内の歪みやフィルムのストレスが除去され,調製される液晶ポリエステルフィルム5を有する銅張積層体1’は,収縮,反り,ポリマーの歪みが発生せず真っ直ぐとなる。
従って,反りの発生を防ぐために,従来使用されていたクリップテンターを使用する必要がなくなる。
加えて,上述の上下動により液晶ポリエステルフィルム5がほぐされることで,液晶ポリエステルポリマー内の溶剤,脱水,その他残留物(不純ガス含む)等の脱気を促し,フィルムの収縮又は発泡(脱溶剤の気泡)を回避し,気泡やピンホール等の残渣痕が生じる事態を阻止できる。
前記液晶ポリエステルポリマー内の残留物や不純物は発泡の原因となり,ひいては電子機器のノイズの発生の原因となる。
なお,焼成炉11内における,前記前駆積層体2の上下動の高さは,3mm〜900mm,好ましくは,20mm〜200mm,より好ましくは,上述した前記上下エアーノズル間にて前記前駆積層体2を浮上させて搬送する無接触搬送にて,前記前駆積層体の上下動の高さ(波の高さ)50mm〜200mmである。
また,前記エアーノズルの設置間隔は,3mm〜900mmが好ましく,エアーノズルの設置コスト等から100mm〜500mm,より好ましくは,200mm〜300mmである。
また,前記焼成炉11内では遠赤外加熱により熱処理を行っており,液晶ポリエステルは,遠赤外線を容易に内部まで吸収するため,吸収された遠赤外線(エネルギー)がモノマー又はポリマーを励起すると共に揺さぶり,フィルム内の不純ガスを放出(脱気)さらには,ポリマー歪を緩和させる。
なお,遠赤外ヒータが放射する赤外線の波長域は,概ね3〜25μmであり,これは金属を除くほとんど全ての物質の熱振動(分子振動あるいは結晶の格子振動)の波長域と一致する。
上述の通り,前記前駆積層体2を熱処理して(第2工程),銅箔8’と液晶ポリエステルフィルム5を有する銅張積層体(CCL)1’を得た後,次に,面平滑を高める為に,加熱カレンダー13(150〜200℃)で連続加圧し,室温冷却を経て巻取り完了とする。
なお,前記加熱カレンダー13を通過した銅張積層体1’をプレス機(図示せず)により加圧して,前記銅箔8’と液晶ポリエステルフィルム5を,さらに圧着させても良い。
なお,銅箔8’に前記液状組成物3(液晶ポリエステル前駆体ワニス)を塗布し,熱乾燥(前記第1工程)と熱焼成(前記第2工程)を経て調製した銅張積層板1(銅箔と液晶ポリエステルフィルム)の固形分厚みの範囲は,好ましくは,固形分3〜100μmで,絶縁性と生産性から10〜70μmがより好ましい。
また,銅箔8’と液晶ポリエステルフィルム5の剥離値は,15〜45N/10mm以上(液晶ポリエステル厚み12μm:銅箔厚み12μm)又は破断である(15〜45N≧破断/10mm)。
上述のように製造された金属張積層板1は,熱時の機械物性に優れる。
また,本発明の製造方法によれば,工程負荷,環境負荷のかかる,銅箔表面に接着向上を図るための黒化処理又は,密着向上剤のプライマー処理も無用である。
そして,本発明の金属張積層板1に,前記金属層8の一部を除去して,導体パターンが形成されたプリント配線板は,サイドエッチングも少なく配線パターン密度も高められ,5G通信に向け,誘電損失も少ない,低ノイズの高機能を有する。
次に,本発明の他の製造方法は,液晶ポリエステルフィルムの収縮緩和と脱溶媒の促進を図る為に,前記第1工程により調製された前駆積層体2を,ゴム弾性層を有する金属基材(金属箔)にキャスト(担持)させてから,前記第2工程の連続焼成を経て本発明の金属張積層板1を調製する事を特徴とする。
詳しくは,前記金属基材にゴム弾性層を形成せしめた面に,前記前駆積層体2を金属層8(銅箔)面が自着するように貼合し,焼成して(第2工程),金属張積層板1を調整した後,前記金属基材から金属張積層板1を剥離する。
前記ゴム状弾性層を有する金属基材に担持させることにより,例えば,前記金属層8が銅箔8’であれば,銅箔厚み1〜12μmと薄い銅張積層体1’が焼成でき,ゴム状弾性層により金属張積層板1と互着せず,加えて収縮歪やフレア(面歪み)を低減可能であり,さらに,前述の第2工程での前駆積層体2を上下動させつつ熱処理することで前記タンブラー効果も得て面発泡も少なく生産性も高められる。
前記金属基材の材質としては,アルミニウム,ステンレス,鉄,銅などを挙げることができる。これらの中でも,強度および耐蝕性の観点から,ステンレスが好ましい。
また,前記金属基材の厚さは,20〜200μmの範囲内であることが好ましい。金属基材の厚さが20μm以上であれば,金属基材の打痕に対する耐性が高く,リサイクル性に優れる。金属基材の厚さが200μm以下であれば,ロール状に巻き取ることが容易になる。
前記ゴム状弾性層としては,シリコーン系ゴム弾性層,フッ素系ゴム弾性層,アクリル系ゴム弾性層などを挙げることができる。これらの中でも,特に耐熱自着性からシリコーン系ゴム弾性層が好ましい。
このゴム状弾性層の厚さは,5〜100μmの範囲内であることが好ましい。ゴム状弾性層の厚さが5μm以上であれば,金属基材の弾性率差を十分に緩和することができる。ゴム状弾性層の厚さが100μm以下であれば,金属基材の取扱い時にゴム状弾性層のチッピングを防ぐことができる。
表面にゴム状弾性層を有する金属基材(金属箔)の製造例として,例えば,シリコーン系離型処理剤「SD7226ディスパージョン」15kg,トルエン15kg,キャタリスト「SRX212」150gを混合して攪拌し,離型処理剤S1を調製する。そして,幅1200mmのコーターダイ,連続乾燥炉を備え付けた塗工機を用いて,この離型処理剤S1を厚さ100μmの軟質アルミニウム箔(サン・アルミニウム工業(株)製)上にコーティングし,温度110℃〜130℃の乾燥炉で処理することにより,表面に10μmのゴム状弾性層を有するアルミニウム基材が得られる。さらに,このアルミニウム基材の裏面に,上記と同様の方法で1μmのゴム状弾性を有する層を形成し,表面10μm,裏面1μmのゴム状弾性層を有するアルミニウム基材(M1)が得られる。
表面にゴム状弾性層を有する金属基材の他の製造例として,例えば, 上述の製造例の厚さ100μmの軟質アルミニウム箔を,厚さ50μmのステンレス箔(日本金属(株)製)に替えて,上記製造例と同様にして,表面10μm,裏面1μmのゴム状弾性層を有するステンレス基材(M1)を得る方法がある。