JP2011205072A - 電子回路基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子回路基板の製造工程において、熱伝導性および密着性に優れた液晶ポリエステルフィルムを形成する技術を提供する。
【解決手段】放熱用基板101と絶縁フィルム102と導電箔103とを有する電子回路基板100を製造する際に、絶縁フィルム102を次の手順で形成する。まず、溶媒と液晶ポリエステルと熱伝導充填材とを少なくとも含み、所定温度以下の状態で粘度が3000cP以上である液晶ポリエステル組成物を、所定温度以下の温度で、導電箔103上に流延する。その後、所定温度以下の温度で、溶媒の残存量が30質量%以下になるまで、液晶ポリエステル組成物を乾燥する。これにより、熱伝導充填材の沈降が抑制されるので、液晶ポリエステルフィルムの熱伝導性および密着性が向上する。
【選択図】図1
【解決手段】放熱用基板101と絶縁フィルム102と導電箔103とを有する電子回路基板100を製造する際に、絶縁フィルム102を次の手順で形成する。まず、溶媒と液晶ポリエステルと熱伝導充填材とを少なくとも含み、所定温度以下の状態で粘度が3000cP以上である液晶ポリエステル組成物を、所定温度以下の温度で、導電箔103上に流延する。その後、所定温度以下の温度で、溶媒の残存量が30質量%以下になるまで、液晶ポリエステル組成物を乾燥する。これにより、熱伝導充填材の沈降が抑制されるので、液晶ポリエステルフィルムの熱伝導性および密着性が向上する。
【選択図】図1
Description
本発明は、放熱用基板を用いた電子回路基板の熱伝導性を改良する技術に関する。
従来より、放熱用基板を用いた電子回路基板が知られている。図3は、かかる電子回路基板300の構造例を示す断面図である。図3の例では、放熱用基板301上に絶縁フィルム302が形成され、絶縁フィルム302上に配線パターンとしての導電箔303が形成されている。電子回路基板300上には、IC(集積回路)等の電子部品を用いて実装回路304が形成される。各電子部品は、導電箔303で形成された配線パターンと、電気的に接続される。実装回路304は動作時に発熱するが、この熱は、電子部品から直接放熱されるほか、絶縁フィルム302を介して放熱用基板301に伝導し、この放熱用基板301からも放熱される。このため、放熱用基板301を使用した電子回路基板では、高い放熱効果を得ることができる。
放熱用基板301の放熱効果を十分に発揮させるためには、絶縁フィルム302の熱伝導性を十分に高くすることが望まれる。加えて、かかる絶縁フィルム302には、耐熱性や導電箔303との密着性についても、十分な性能が望まれる。
液晶ポリエステルは、熱伝導性が高いことや耐熱性に優れていることに加えて、吸湿性が低いこと等の理由から、電子回路基板用の絶縁フィルム形成材料として注目されている。また、液晶ポリエステルフィルムを用いた電子回路基板や、これに使用できる液晶ポリエステルフィルムは、例えば下記特許文献1および2に記載されている。
特許文献1には、液晶ポリエステルと充填材との混合物を板状に押し出し成形して平板を作成し、この平板の表面に銅を積層することによって、プリント配線基板を作製する技術が開示されている(特許文献1の第12頁左欄第17行〜第44行等参照)。
また、特許文献2には、芳香族ジアミン由来の構造単位等を10〜35モル%含有する液晶ポリエステルを非プロトン性溶媒に溶解させることで、液晶ポリエステル溶液の耐腐食性を改善する技術や、この溶液の流延物から溶媒を除去することで、電子回路基板用液晶ポリエステルフィルムの異方性や機械的強度を改善する技術が開示されている(特許文献2の段落0002、0039等参照)。
しかしながら、特許文献1の技術には、押し出し成形法を用いているので、100〜200μm程度の薄いフィルムを成形できないという欠点がある。これは、液晶ポリエステル樹脂の粘度が高いためである。上述のような、放熱用基板を用いた電子回路基板に使用する場合、液晶ポリエステルフィルムを薄く形成することが望まれる。フィルムが薄いほど、かかるフィルムの熱抵抗が減少して、金属箔303や実装回路304と放熱用基板301との間の熱伝導性を高めることができるからである。特許文献1の実施例1で開示された液晶ポリエステルフィルムは、押し出し厚さが0.4mmであり、熱伝導率は1.5W/(m・K)(Wは「ワット」、mは「メートル」、Kは「ケルビン」、以下同じ)であるが、これらの値は放熱用基板を用いた電子回路基板には不十分である。
加えて、押し出し成形法を用いて液晶ポリエステルフィルムを作製する場合、押し出し方向に著しく配向するため、熱伝導率は押し出し方向(すなわちフィルム面に平行な方向)に対して高くなり、フィルム厚さ方向に対して低くなってしまう。これに対して、上述の電子回路基板300では、絶縁フィルム302の厚さ方向に熱を伝搬させる。この点でも、押し出し成形法で作製した液晶ポリエステルフィルムは、放熱用基板を用いた電子回路基板に適さない。
一方、特許文献2に係る液晶ポリエステルフィルムは、押し出し成形法を用いていないため、薄く形成することができ、また、フィルム面に平行な方向とフィルム厚さ方向とで熱伝導率は同等である。しかしながら、本願発明者等の検討の結果、特許文献2の液晶ポリエステルフィルムには、熱伝導充填材を充填した場合に、この充填材が沈降してしまうという欠点があった。熱伝導充填材が沈降すると、熱伝導率の十分な向上が望めなくなるとともに、フィルムが剥がれやすくなってしまう。このような欠点は、粘度の低い液晶ポリエステル組成物を使用する場合ほど、顕著であった。
本発明の目的は、電子回路基板の製造工程において、熱伝導性および密着性に優れた液晶ポリエステルフィルムを形成する技術を提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明者は、電子回路基板の絶縁フィルムを形成する製造工程について検討し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放熱用基板と、該放熱用基板上に設けられた絶縁フィルムと、該絶縁フィルム上に設けられた配線パターン形成用の導電箔とを有する電子回路基板の製造方法であって、前記絶縁フィルムを形成する工程が、溶媒と液晶ポリエステルと熱伝導充填材とを少なくとも含み、所定温度以下の状態で粘度が3000cP以上である液晶ポリエステル組成物を、該所定温度以下の温度で、前記導電箔上に流延する第1工程と、該所定温度以下の温度で、前記溶媒の残存量が30質量%以下になるまで、前記液晶ポリエステル組成物を乾燥する第2工程とを含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが前記溶媒に溶解していることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記熱伝導充填材の一部または全部が窒化ホウ素粉末であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、熱伝導充填材の沈降を抑制することができるので、熱伝導性および密着性に優れた液晶ポリエステルフィルムを形成することができる。
請求項2に記載の発明によれば、溶解性の液晶ポリエステルを使用するので、熱伝導性などの特性に優れた液晶ポリエステルフィルムを形成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、熱伝導充填材として窒化ホウ素粉末を使用するので、非常に優れた熱伝導性を得ることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る液晶ポリエステル組成物およびこれを用いた電子回路基板について説明する。
<電子回路基板の構造>
<電子回路基板の構造>
図1は、本実施形態に係る電子回路基板の構造を示す概念的断面図である。
図1に示したように、本実施形態の電子回路基板100は、放熱用基板101、絶縁フィルム102および導電箔103を含む積層構造を有している。
放熱用基板101は、例えばアルミニウム、銅、ステンレス等或いはこれらの合金などの金属板である。放熱用基板101としては、従来の電子回路基板と同じものを使用することができる。放熱用基板101の厚さは例えば0.5〜5mmである。放熱用基板101は平板である必要はなく、例えば曲げ加工することも可能である。
絶縁フィルム102としては、後述のような液晶ポリエステルフィルムが使用される。
導電箔103としては、例えば金属箔(銅箔等)が使用される。導電箔103には、例えばエッチング等により回路の配線パターンが形成される。そして、この配線パターンを用いて、電子回路基板100上に、図3と同様の電子部品が実装される(図1では示さず)。導電箔103としては、従来の電子回路基板と同じものを使用することができる。導電箔103の厚さは、例えば30〜500μmである。
<液晶ポリエステル>
<液晶ポリエステル>
液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成する。本実施形態の液晶ポリエステルは、構造単位として以下の式(1)、(2)、(3)で示される構造単位を含み、式(1)で示される構造単位の含有量が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位の含有量が35〜10モル%、式(3)で示される構造単位の含有量が35〜10モル%であることが好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
ここで、Ar1 は、1,4−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、または4,4’−ビフェニレン基を表す。Ar2 は、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、または2,6−ナフチレン基を表す。Ar3 は、1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基を表す。Xは−NH−であり、Yは、−O−または−NH−を表す。
構造単位(1)は芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位、構造単位(2)は芳香族ジカルボン酸由来の構造単位、構造単位(3)は芳香族ジアミン、ヒドロキシル基(水酸基)を有する芳香族アミン、芳香族アミノ酸由来の構造単位であるが、これらの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を用いてもよい。
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基がポリエステルを生成する反応を促進するような酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基がエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
フェノール性ヒドロキシル基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性ヒドロキシル基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
アミノ基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
本発明に使用される液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
構造単位(1)としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(1)は、全構造単位に対して、30〜80モル%であることが好ましく、40〜70モル%であることがより好ましく、45〜65モル%であることがさらに好ましい。構造単位(1)が80モル%を超えると溶解性が著しく低下する傾向があり、30モル%未満では液晶性を示さない傾向がある。
構造単位(2)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、溶解性の観点から、イソフタル酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(2)は、全構造単位に対して、35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(2)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
構造単位(3)としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の前記構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、反応性の観点から4−アミノフェノール由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(3)は、全構造単位に対して、35〜10モル%であることが好ましく、30〜15モル%であることがより好ましく、27.5〜17.5モル%であることがさらに好ましい。構造単位(3)が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、10モル%未満では溶解性が低下する傾向がある。
構造単位(3)は、構造単位(2)と実質的に等量用いられることが好ましい。但し、構造単位(3)を、構造単位(2)に対して−10モル%〜+10モル%とすることにより、液晶ポリエステルの重合度を制御することもできる。
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は、後述の乾燥工程を除いて、特に限定されない。例えば、構造単位(1)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、構造単位(3)に対応するヒドロキシル基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンのフェノール性ヒドロキシル基およびアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得、得られたアシル化物と構造単位(2)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる。アシル化物としては、予めアシル化して得た脂肪酸エステルを用いてもよい(特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報参照)。
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の添加量は、フェノール性ヒドロキシル基とアミノ基の合計に対して、1〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の添加量が1倍当量未満では、エステル交換(重縮合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華して反応系が閉塞しやすくなる傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は、特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格と取扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは無水酢酸である。
エステル交換においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
エステル交換は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
アシル化して得た脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換させる際、ル・シャトリエ‐ブラウンの法則(平衡移動の原理)により、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行なってもよい。この触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
かかる触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、この触媒を除去しない場合にはそのままエステル交換を行なうことができる。
エステル交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固層重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理する方法などが挙げられる。固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお適当な攪拌機構を備えることにより溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。固相重合後、得られた液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化し、成形してもよい。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
<溶媒>
<溶媒>
本発明の液晶ポリエステル組成物に用いる溶媒(溶剤)は、非プロトン性溶媒であることが好ましい。溶媒としては、液晶ポリエステルが溶解するものが望ましいが、溶解しないものも使用できる。溶媒の使用量は、特に限定されるものでなく、用途に応じて適宜選択することができるが、溶媒100質量部に液晶ポリエステル0.01〜100質量部を使用することが好ましい。液晶ポリエステルが0.01質量部未満であると粘度が低すぎて均一に塗工できない傾向があり、100質量部を超えると、高粘度化する傾向がある。作業性や経済性の観点から、溶媒100質量部に対して、液晶ポリエステルが1〜50質量部であることより好ましく、2〜40質量部であることがさらに好ましい。
非プロトン性溶媒としては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響面から好ましく使用され、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましく使用される。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく使用され、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
<熱伝導充填材>
<熱伝導充填材>
本実施形態では、液晶ポリエステル組成物に、熱伝導充填材を含有させる。熱伝導充填材の含有量、粒径等は、特に限定されない。
熱伝導充填材としては、その熱伝導率が通常10W/(m・K)以上、好ましくは30W/(m・K)以上であるものが使用され、例えば、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物から選ばれた1種または2種以上の化合物を使用することができる。熱伝導充填材は、周期律表第II、III、IV属のそれぞれ第7列までの元素の酸化物、窒化物および炭化物から選択することが望ましい。具体的には、例えば、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化トリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの1種以上を使用できる。
中でも、窒化ホウ素は、熱伝導率は高いが、離型剤としての機能を有しているため、沈降すると、フィルムが特に剥がれやすくなるが、本実施形態では、沈降が抑制されるので、高い熱伝導率を有しながら、フィルムの剥がれを防止することができる。
<他の成分>
<他の成分>
上述の熱伝導充填材に加えて、液晶ポリエステル組成物に、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の充填材、添加剤等を含有させてもよい。
充填材としては、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、スチレン樹脂などの有機系フィラー、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウムなどの無機フィラーなどが挙げられる。
添加剤としては、公知のカップリング剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
また、液晶ポリエステル組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体などのエラストマーなどを1種または2種以上含有させてもよい。
<液晶ポリエステルフィルム>
<液晶ポリエステルフィルム>
液晶ポリエステルフィルムの作製にあたっては、まず、液晶ポリエステルを溶媒に溶解して得た溶液を、必要に応じて、フィルターなどによってろ過して溶液中に含まれる微細な異物を除去した後、熱伝導充填材を加えることにより、液晶ポリエステル組成物を得る。その際、液晶ポリエステル組成物の粘度が、所定温度以下の状態で3000cP以上となるようにする。これにより、熱伝導充填材が沈降し難い液晶ポリエステル組成物を得ることができる。
図2は、液晶ポリエステル組成物の温度と粘度との関係を模式的に示すグラフである。図2に示されたように、温度が高くなるほど、液晶ポリエステル組成物の粘度は低くなる。前記所定温度、すなわち粘度が3000cP以上になる温度は、液晶ポリエステルの組成や含有量、溶媒の種類や含有量、熱伝導充填材の種類や含有量、他の成分の種類や含有量などの各種条件によって異なる。後述のように、液晶ポリエステル組成物の流延およびその後の乾燥は、前記所定温度以下で行われるので、これら流延および乾燥の温度をあまり低くしなくてもよいように、前記所定温度は、好ましくは30℃であり、より好ましくは50℃である。
そして、この液晶ポリエステル組成物を、支持基材(本実施形態では導電箔103を使用できる)上に、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法などの各種手段により表面平坦かつ均一に流延する。この流延は、前記所定温度以下の温度で、すなわち液晶ポリエステル組成物の粘度が3000cP以上の状態で行われ、これにより、熱伝導充填材の沈降が抑制された状態で、液晶ポリエステル組成物を流延することができる。その後、溶媒を除去することで、液晶ポリエステルフィルムを得ることができる。なお、この流延は、表面平坦性や均一性の観点から、液晶ポリエステル組成物の粘度が20000cP以下となる温度で行うことが好ましい。
溶媒の除去方法としては溶媒を蒸発させる方法が知られており、溶媒を蒸発する方法としては加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。本実施形態では、加熱により、溶媒の除去、すなわち液晶ポリエステル組成物の乾燥を行うことが望ましい。加熱による乾燥は、生産効率、取扱い性の点で優れている。また、加熱乾燥に加えて通風乾燥を併用することとすれば、生産効率をさらに高めることができる。
本実施形態の乾燥工程では、乾燥温度を前記所定温度以下の温度に、すなわち液晶ポリエステル組成物の粘度が3000cP(センチポアズ)以上となるような温度に設定する。そして、この乾燥工程は、液晶ポリエステル組成物に残存する溶媒が、かかる液晶ポリエステル組成物全体の30質量%以下になるまで実施される。本発明者の検討によれば、前記所定温度以下の温度で、すなわち乾燥開始時の粘度を3000cP以上として残存溶媒量が30質量%以下となるまで乾燥を行うことにより、その間、液晶ポリエステル組成物の粘度が3000cP未満になることはないので、熱伝導充填材の沈降を抑えることができる。すなわち、本実施形態の乾燥工程によれば、熱伝導充填材を液晶ポリエステルフィルムに均一性良く分散させることができ、このため、支持基材と液晶ポリエステルフィルムとの間のピール強度や、液晶ポリエステルフィルムの熱伝導性を向上させることができる。
乾燥工程の後で、例えば200〜400℃で、30分〜5時間の熱処理工程を行っても良い。
液晶ポリエステルフィルムの厚さは、特に限定されることはないが、成膜性や機械特性の観点から、0.5〜500μmであることが好ましく、熱抵抗を低く抑えるという観点からは200μm以下であることがより好ましい。
本発明の液晶ポリエステルフィルムは、縦方向(流延方向)と横方向(流延方向に対して直角方向)の異方性が小さく、機械的強度に優れており、また液晶ポリエステルが本来有する高周波特性、低吸水性などの性能にも優れていることから、本実施形態の電子回路基板だけでなく、他の電子部品用の絶縁フィルムにも非常に望ましい。
なお、明細書中において使用される用語「フィルム」とは、シート状の極薄のフィルムから肉厚のフィルムまでを含有するものであり、シート状のみならず、瓶状の容器形態などをも含有するものである。
以下、本発明を実施例として、上述の実施形態に係る電子回路基板の評価結果を説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものでないことは言うまでもない。
以下、本実施例の評価で使用した実施例サンプルおよび比較例サンプルの製造方法を説明する。
(1)液晶ポリエステルの製造
(1)液晶ポリエステルの製造
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)および無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。そして、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、この温度を保持しつつ3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。得られた粉末の流動開始温度を(株)島津製作所製のフローテスター「CFT−500型」で測定したところ、235℃であった。この液晶ポリエステル粉末に、窒素雰囲気において223℃、3時間の加熱処理を施すことによって、固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
(2)液晶ポリエステル溶液の製造
(2)液晶ポリエステル溶液の製造
上記(1)で得られた液晶ポリエステル2200gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して、液晶ポリエステル溶液を得た。このときの粘度は320cP(センチポアズ)であった。この粘度値は、東機産業(株)製のB型粘度計「TVL−20型」(ローターNo.21、回転速度5rpm)を用い、測定温度23℃で測定したときの値である。
(3)電子回路基板の製造
実施例1
(3)電子回路基板の製造
実施例1
上記(2)で得た液晶ポリエステル溶液(固形分22質量%)に、熱伝導充填材として水島合金鉄(株)製の窒化ホウ素粉末「HP−40P」を加えた。ここで、熱伝導充填材の充填量は、液晶ポリエステルおよび熱伝導充填材の総和に対して、65体積%とした。
次に、この液晶ポリエステル組成物を遠心脱泡機で5分間攪拌した後、23℃で厚さ70μmの銅箔上に厚さ350μmとなるように流延した。続いて、これを40℃で1時間乾燥した後、320℃で3時間熱処理した。ここで、40℃での液晶ポリエステル組成物の粘度は、8000cPであった。これにより、表面に銅箔(すなわち導電箔103)が形成された液晶ポリエステルフィルム(すなわち絶縁フィルム102)を得た。この液晶ポリエステルフィルムの残存溶媒量は、22質量%であった。
その後、熱伝導率140W/(m・K)、厚さ2.0mmのアルミニウム合金板(すなわち放熱用基板101)に、上述の液晶ポリエステルフィルムを積層した。このとき、液晶ポリエステルフィルムの裏面(銅箔が形成されていない面)が、アルミニウム合金板の表面と接するようにした。そして、圧力19.6MPa(200kgf/cm2 )、温度340℃で20分間の加圧加熱処理を行うことにより、これらアルミニウム合金板と液晶ポリエステルフィルムとを熱接着した。
以上により、本実施例の電子回路基板100を作製した(図1参照)。完成後の液晶ポリエステルフィルムの厚さは、120μmであった。
実施例2
実施例2
液晶ポリエステル組成物を乾燥する温度および時間を50℃、1時間としたこと以外は、実施例と同様にして、電子回路基板を作製した。60℃での液晶ポリエステル組成物の粘度は、4000cPであった。乾燥終了時の残存溶媒量は、19質量%であった。
比較例1
比較例1
液晶ポリエステル組成物を乾燥する温度および時間を70℃、30分間としたこと以外は、実施例と同様にして、電子回路基板を作製した。70℃での液晶ポリエステル組成物の粘度は、2500cPであった。乾燥終了時の残存溶媒量は、10質量%であった。
比較例2
比較例2
液晶ポリエステル組成物を乾燥する温度および時間を100℃、20分間としたこと以外は、実施例と同様にして、電子回路基板を作製した。100℃での液晶ポリエステル組成物の粘度は、1000cPであった。乾燥終了時の残存溶媒量は、5質量%であった。
比較例3
比較例3
液晶ポリエステル組成物を乾燥する温度および時間を150℃、10分間としたこと以外は、実施例と同様にして、電子回路基板を作製した。150℃での液晶ポリエステル組成物の粘度は、100cPであった。乾燥終了時の残存溶媒量は、5質量%であった。
(4)評価試験
(4)評価試験
以上のようにして得られた電子回路基板(以下、実施例基板および比較例基板と記す)に対して、以下のような評価試験を行った。
A.ピール強度試験
A.ピール強度試験
実施例基板および比較例基板に対し、導電箔をエッチングすることにより幅10mmの導電パターンを形成して、評価サンプルとした。そして、これら評価サンプルについて、導電箔が垂直になるように50mm/分の速度で引き剥がす際のピール強度(N/cm)を測定した。
B.熱抵抗測定
B.熱抵抗測定
30mm×40mmの実施例基板および比較例基板を準備し、それぞれに対して、導電箔をエッチングすることにより14mm×10mmの導電パターンを形成して、評価サンプルとした。そして、これら評価サンプルに対して、はんだ付けによって、トランジスタC2233を実装した。さらに、シリコーングリースを用いた水冷却装置を、放熱用基板の裏面にセットした。その後、トランジスタC2233に30ワットの電力を供給して発熱させるとともに、このときのトランジスタの表面温度および水冷却装置の表面温度を測定した。
測定の後で、下式を用いて、熱抵抗値を計算した。
測定の後で、下式を用いて、熱抵抗値を計算した。
(熱抵抗値)={(トランジスタ表面温度)−(水冷却装置表面温度)}/(負荷電力)
C.熱伝導充填材の分散状態評価
C.熱伝導充填材の分散状態評価
実施例基板および比較例基板の断面をそれぞれ研磨した後、両基板の断面をそれぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、熱伝導充填材の分散状態(フィラー分散状態)を目視で評価した。
D.はんだ耐熱
D.はんだ耐熱
50mm×50mmの実施例基板および比較例基板を準備し、それぞれについて、導電箔の右半分をエッチング除去して25mm×50mmの導電パターンを形成することにより、評価サンプルを作製した。そして、これらの評価サンプルを300℃のはんだ浴に4分間乗せて、膨れや剥がれの発生を目視観察で評価した。
表1は、これら評価試験の結果を示している。
表1からわかるように、実施例1、2の電子回路基板は、熱抵抗値が0.14℃/Wと十分に低く、且つ、ピール強度が6〜7N/cmと非常に高かった。また、熱伝導充填材の沈降は観察されず、はんだ耐熱試験でも外観不良は観察されなかった。
これに対して、比較例1〜3の電子回路基板は、熱抵抗値が0.16℃/W、つまり実施例1、2に比べて高い値を示し、ピール強度が2〜3N/cm、つまり実施例1、2に比べて大幅に低い値を示した。また、熱伝導充填材の沈降が観察された。はんだ耐熱試験では、外観不良は観察されなかった。
100 電子回路基板
101 放熱用基板
102 絶縁フィルム
103 導電箔
101 放熱用基板
102 絶縁フィルム
103 導電箔
Claims (3)
- 放熱用基板と、該放熱用基板上に設けられた絶縁フィルムと、該絶縁フィルム上に設けられた配線パターン形成用の導電箔とを有する電子回路基板の製造方法であって、
前記絶縁フィルムを形成する工程が、
溶媒と液晶ポリエステルと熱伝導充填材とを少なくとも含み、所定温度以下の状態で粘度が3000cP以上である液晶ポリエステル組成物を、該所定温度以下の温度で、前記導電箔上に流延する第1工程と、
該所定温度以下の温度で、前記溶媒の残存量が30質量%以下になるまで、前記液晶ポリエステル組成物を乾燥する第2工程と
を含むことを特徴とする電子回路基板の製造方法。 - 前記液晶ポリエステルが前記溶媒に溶解していることを特徴とする請求項1に記載の電子回路基板の製造方法。
- 前記熱伝導充填材の一部または全部が窒化ホウ素粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子回路基板の製造方法。
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JP2011024639A JP2011205072A (ja) | 2010-03-03 | 2011-02-08 | 電子回路基板の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013061975A1 (ja) * | 2011-10-24 | 2013-05-02 | 住友化学株式会社 | 回路基板用積層板及び金属ベース回路基板 |
-
2011
- 2011-02-08 JP JP2011024639A patent/JP2011205072A/ja not_active Withdrawn
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