JP2011181833A - 金属ベース回路基板およびパワーモジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】金属基板、絶縁層および導電箔を具備するパワーモジュール用の金属ベース回路基板において、その放熱性を大幅に向上させる。
【解決手段】金属基板2と導電箔5との間に介在する絶縁層3は、溶媒可溶性の液晶ポリエステルから形成されている。この絶縁層3には、熱伝導率が30W/(m・K)以上の無機充填剤が含まれている。これにより、金属ベース回路基板4の放熱性を大幅に向上させ、金属ベース回路基板4上の発熱素子6の動作を安定させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属基板、絶縁層および導電箔を具備する金属ベース回路基板と、この金属ベース回路基板を用いたパワーモジュールとに関するものである。
近年、電子機器の高性能化、小型化の進展に伴い、半導体の高密度・高機能化が要求される傾向にある。こうした流れの中、パワー半導体素子などの発熱素子を内部に有するパワーモジュールでは、その発熱素子に大電流が流れて温度が上昇するため、発熱素子の動作が不安定になる恐れがある。
そこで、このような不都合に対処すべく、発熱素子を実装するための金属ベース回路基板において、エポキシ樹脂などからなる絶縁層に無機充填剤(アルミナ、窒化ホウ素など)を添加して絶縁層の熱伝導率を高めることにより、金属ベース回路基板の放熱性を改善しようとする技術が提案されていた(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2002−170911号公報(段落〔0003〕〔0024〕〔0025〕の欄) 特開2008−218907号公報(段落〔0013〕の欄)
しかしながら、絶縁層に対する無機充填剤の添加量には自ずと上限があるため、絶縁層の熱伝導率の向上、ひいては金属ベース回路基板の放熱性の向上にも限界があった。
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、放熱性を大幅に向上させることが可能な金属ベース回路基板を提供することを第1の目的とし、また、このような金属ベース回路基板を用いることにより、発熱素子の動作を安定させることが可能なパワーモジュールを提供することを第2の目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明者は、絶縁層の熱伝導率を高めるべく、従来の絶縁層の材料(エポキシ樹脂など)より熱伝導率が高く、しかも無機充填剤の高充填が可能な溶媒可溶性の液晶ポリエステルを絶縁層の材料として採用することに着目し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に記載の発明は、金属基板と、この金属基板上に設けられた絶縁層と、この絶縁層上に設けられた回路形成用の導電箔とを具備し、パワーモジュールに適用される金属ベース回路基板であって、前記絶縁層が、溶媒可溶性の液晶ポリエステルから形成されている金属ベース回路基板としたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが、下式(1)で示される構造単位と、下式(2)で示される構造単位と、下式(3)で示される構造単位とを有し、全構造単位の合計含有量に対して、下式(1)で示される構造単位の含有量が30〜60モル%、下式(2)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%、下式(3)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下式(4)で示される基を表し、Ar3 は、フェニレン基または下式(4)で示される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記絶縁層に無機充填剤が含まれていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記無機充填剤は、熱伝導率が30W/(m・K)以上であることを特徴とする。
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の金属ベース回路基板に発熱素子が実装されて封止樹脂で封止されているパワーモジュールとしたことを特徴とする。
本発明によれば、溶媒可溶性の液晶ポリエステルから絶縁層を形成することにより、放熱性を大幅に向上させることが可能な金属ベース回路基板を提供することができる。
また、このような金属ベース回路基板を用いることにより、発熱素子の動作を安定させることが可能なパワーモジュールを提供することができる。
本発明の実施の形態1に係るパワーモジュールを示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
図1には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、導電箔の一例として銅箔5を用い、発熱素子の一例としてパワー半導体素子6を用い、封止樹脂の一例としてシリコーン樹脂7を用いている。
<パワーモジュールの構成>
この実施の形態1に係るパワーモジュール1は、図1に示すように、金属ベース回路基板4を有しており、この金属ベース回路基板4は、金属基板2、絶縁層3および銅箔5から構成されている。ここで、金属基板2の表面(図1上面)には絶縁層3が積層されており、絶縁層3の表面(図1上面)には銅箔5が積層されている。また、金属ベース回路基板4には、パワー半導体素子6が表面実装されてゲル状のシリコーン樹脂7で封止されている。さらに、シリコーン樹脂7の上側には樹脂モールド(図示せず)が実施されている。
ここで、金属基板2は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスまたはこれらの合金などからなり、従来の金属ベース回路基板の金属基板と同じものを使用することができる。この金属基板2の厚さは、例えば0.5〜5mmである。なお、金属基板2は平板状のものであっても、任意の曲面状に曲げ加工されたものであってもよい。
また、絶縁層3は、無機充填材(無機フィラー)を含有する溶媒可溶性の液晶ポリエステルから形成されている。この液晶ポリエステルおよび無機充填材については後述する。
さらに、銅箔5には、例えばエッチング等により、回路の配線パターンが形成される。そして、この配線パターンを介して、金属ベース回路基板4上にパワー半導体素子6がはんだ付けされている。この銅箔5の厚さは、例えば30〜500μmである。
<液晶ポリエステル>
絶縁層3を構成する液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。この液晶ポリエステルを溶媒に溶解して得た溶液(液晶ポリエステル溶液)を用いて、絶縁層3を形成することができる。
この液晶ポリエステルは、下式(1)で示される構造単位(以下、構造単位(1)という。)と、下式(2)で示される構造単位(以下、構造単位(2)という。)と、下式(3)で示される構造単位(以下、構造単位(3)という。)とを有し、全構造単位の合計含有量に対して、下式(1)で示される構造単位の含有量が30〜60モル%、下式(2)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%、下式(3)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%の液晶ポリエステルであることが好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下式(4)で示される基を表し、Ar3 は、フェニレン基または下式(4)で示される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12
(式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
構造単位(1)は芳香族ヒドロキシ酸由来の構造単位であり、構造単位(2)は芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、構造単位(3)は芳香族ジアミン、ヒドロキシル基(水酸基)を有する芳香族アミン、芳香族アミノ酸由来の構造単位であるが、これらの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を用いてもよい。
カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基がポリエステルを生成する反応を促進するような酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基がエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
フェノール性ヒドロキシル基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性ヒドロキシル基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
アミノ基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
本発明に使用される液晶ポリエステルの繰り返し構造単位としては、下記のものを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
構造単位(1)としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(1)の含有量は、全構造単位の含有量に対して、30〜60モル%であることが好ましく、40〜55モル%であることがより好ましく、45〜50モル%であることがさらに好ましい。構造単位(1)の含有量が60モル%を超えると、溶解性が著しく低下する傾向があり、構造単位(1)の含有量が30モル%未満では、液晶性を示さない傾向がある。
構造単位(2)としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、溶解性の観点から、イソフタル酸由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(2)の含有量は、全構造単位の含有量に対して、20〜35モル%であることが好ましく、22.5〜32.5モル%であることがより好ましく、25〜30モル%であることがさらに好ましい。構造単位(2)の含有量が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、構造単位(2)の含有量が20モル%未満では、溶解性が低下する傾向がある。
構造単位(3)としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸由来の構造単位などが挙げられ、2種以上の構造単位が全構造単位中に含まれていてもよい。これらの構造単位の中で、反応性の観点から、4−アミノフェノール由来の構造単位を含む液晶ポリエステルを使用することが好ましい。構造単位(3)の含有量は、全構造単位の含有量に対して、20〜35モル%であることが好ましく、22.5〜32.5モル%であることがより好ましく、25〜30モル%であることがさらに好ましい。構造単位(3)の含有量が35モル%を超えると、液晶性が低下する傾向があり、構造単位(3)の含有量が20モル%未満では、溶解性が低下する傾向がある。
構造単位(3)は、構造単位(2)と実質的に等量用いられることが好ましい。但し、構造単位(3)の含有量を構造単位(2)の含有量に対して−10モル%〜+10モル%とすることにより、液晶ポリエステルの重合度を制御することもできる。
本発明で使用される液晶ポリエステルの製造方法は、特に限定されない。例えば、構造単位(1)に対応する芳香族ヒドロキシ酸、構造単位(3)に対応するヒドロキシル基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンのフェノール性ヒドロキシル基およびアミノ基を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化してアシル化物を得た後、得られたアシル化物と構造単位(2)に対応する芳香族ジカルボン酸とをエステル交換(重縮合)して溶融重合する方法などが挙げられる。アシル化物としては、予めアシル化して得た脂肪酸エステルを用いてもよい(特開2002−220444号公報、特開2002−146003号公報参照)。
アシル化反応においては、脂肪酸無水物の使用量は、フェノール性ヒドロキシル基とアミノ基の合計含有量に対して、1〜1.2倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.1倍当量である。脂肪酸無水物の使用量が1倍当量未満では、エステル交換(重縮合)時にアシル化物や原料モノマーなどが昇華して反応系が閉塞しやすくなる傾向がある。逆に、脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化反応は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化反応に使用される脂肪酸無水物は、特に限定されないが、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸などが挙げられ、これらは2種類以上を混合して用いてもよい。価格および取扱い性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
エステル交換においては、アシル化物のアシル基の含有量がカルボキシル基の含有量の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
エステル交換は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なうことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なうことがより好ましい。
アシル化して得た脂肪酸エステルとカルボン酸とをエステル交換させる際には、ル・シャトリエ‐ブラウンの法則(平衡移動の原理)により、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は、蒸発させるなどして系外へ留去することが好ましい。
なお、アシル化反応、エステル交換は、触媒の存在下に行なってもよい。この触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒などを挙げることができる。
これらの触媒の中で、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)。
この触媒は、通常、モノマー類の投入時に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、この触媒を除去しない場合には、そのままエステル交換を行なうことができる。
エステル交換による重縮合は、通常、溶融重合により行なわれるが、溶融重合と固層重合とを併用してもよい。固相重合は、溶融重合工程からポリマーを抜き出し、その後、粉砕してパウダー状またはフレーク状にした後、公知の固相重合方法により行うことが好ましい。具体的には、例えば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で熱処理するという操作により、固相重合を実施することができる。この固相重合は、攪拌しながら行ってもよく、攪拌することなく静置した状態で行っても構わない。なお、適当な攪拌機構を備えることにより、溶融重合槽と固相重合槽とを同一の反応槽とすることもできる。また、こうして固相重合した後、得られた液晶ポリエステルは、公知の方法によりペレット化してもよい。
液晶ポリエステルの製造は、例えば、回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
<溶媒>
このようにして得られた液晶ポリエステルを所定の溶媒に溶解して液晶ポリエステル溶液を調製する。
この溶媒としては、非プロトン性溶媒であることが好ましい。溶媒としては、液晶ポリエステルが溶解するものが望ましいが、溶解しないもの(分散するもの)も使用することができる。溶媒の使用量は、特に限定されるものでなく、用途に応じて適宜選択することができるが、溶媒100質量部に液晶ポリエステル0.01〜100質量部を使用することが好ましい。液晶ポリエステルが0.01質量部未満であると、溶液粘度が低すぎて均一に塗工できない傾向があり、液晶ポリエステルが100質量部を超えると、高粘度化する傾向がある。作業性や経済性の観点からは、溶媒100質量部に対して、液晶ポリエステルが1〜50質量部であることがより好ましく、2〜40質量部であることがさらに好ましい。
非プロトン性溶媒としては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
これらの中で、ハロゲン原子を含まない溶媒が環境への影響面から好ましく使用され、双極子モーメントが3以上5以下の溶媒が溶解性の観点から好ましく使用される。具体的には、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒がより好ましく使用され、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンがさらに好ましく使用される。
<無機充填剤>
このようにして得られた液晶ポリエステル溶液に無機充填材を添加して液状組成物を得る。無機充填材の含有量、粒径などは、特に限定されない。
この無機充填材としては、熱伝導率が10W/(m・K)以上のものが好ましく、熱伝導率が30W/(m・K)以上のものがさらに好ましい。このような無機充填材としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物から選ばれた1種または2種以上の化合物を使用することができる。無機フィラーは、周期律表第II、III、IV属のそれぞれ第7列までの元素の酸化物、窒化物および炭化物から選択することが望ましい。具体的には、例えば、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化トリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの1種類以上を使用することができる。
熱伝導率を高めるという観点で、無機充填材として窒化ホウ素粉末を使用することが特に望ましい。
<他の成分>
この液状組成物には、上述した無機充填剤に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の充填材、添加剤などを含有させてもよい。
充填材としては、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、スチレン樹脂などの有機フィラー、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウムなどの無機フィラーなどが挙げられる。
添加剤としては、公知のカップリング剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。
また、この液状組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性物、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂、グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体などのエラストマーなどを1種または2種以上含有させてもよい。
<絶縁層>
このようにして得られた液状組成物は、必要に応じて、フィルターなどによってろ過して、液状組成物中に含まれる微細な異物を除去した後、この液状組成物を支持体上に表面平坦かつ均一に流延し、その後、この液状組成物から溶媒を除去してフィルム化することにより、本発明の絶縁層3を形成する。
ここで、液状組成物の流延方法としては、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコート法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法など各種の方法を採用することができる。
また、溶媒の除去方法としては、特に限定されないが、溶媒の蒸発によって行うことが好ましい。溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。これらの中でも、生産効率、取扱い性の点から、加熱して蒸発させることが好ましく、通風しつつ加熱して蒸発させることが一層好ましい。このときの加熱条件としては、60〜200℃で10分〜2時間予備乾燥を行う工程と、200〜400℃で30分〜5時間熱処理を行う工程とを含むことが好ましい。
この絶縁層3の厚さは、特に限定されることはないが、成膜性や機械特性の観点からは、0.5〜500μmであることが好ましく、熱抵抗を低く抑えるという観点からは、200μm以下であることがより好ましい。
そして、金属基板2の表面に、この絶縁層3および銅箔5を順に積層することにより、金属基板2、絶縁層3および銅箔5からなる3層構造の金属ベース回路基板4が得られる。
このようにして得られた金属ベース回路基板4においては、上述したとおり、絶縁層3の材料として溶媒可溶性の液晶ポリエステルが用いられており、しかも、この液晶ポリエステルに無機充填剤が含まれているため、絶縁層3の熱伝導率を高めることができる。その結果、金属ベース回路基板4の放熱性を大幅に向上させて、この金属ベース回路基板4上のパワー半導体素子6の動作を安定させることができる。
このとき、パワー半導体素子6で発生した熱は、絶縁層3および金属基板2を通じて放熱される。なお、絶縁層3の厚さは任意にコントロールでき、この厚さを減少させることにより、絶縁層3の熱抵抗を一層低減することも可能である。
また、本発明の液状組成物は、腐食性が低く、取扱いが容易であり、この液状組成物を用いて得られる絶縁層3は、縦方向(流延方向)と横方向(流延方向に対して直角な方向)の異方性が小さく、機械的強度に優れており、また、液晶ポリエステルが本来有する高周波特性、低吸水性などの性能にも優れている。したがって、金属ベース回路基板4だけでなく、他の電子部品用の絶縁フィルムにも適している。
[発明のその他の実施の形態]
なお、上述した実施の形態1では、導電箔として銅箔5を用いた金属ベース回路基板4について説明した。しかし、導電性を有するものである限り、銅箔5以外の金属箔(例えば、金箔、銀箔、アルミニウム箔、ステンレス箔など)やカーボングラファイトシートその他を導電箔として代用または併用することもできる。
また、上述した実施の形態1では、発熱素子としてパワー半導体素子6を用いたパワーモジュール1について説明した。しかし、パワー半導体素子6以外の発熱素子(例えば、パワートランジスタ、サイリスタ、GTO(ゲート・ターンオフ・サイリスタ)、LSIチップなど)を代用または併用したパワーモジュール1に本発明を同様に適用することも可能である。
さらに、上述した実施の形態1では、金属ベース回路基板4にパワー半導体素子6が1個だけ実装されたパワーモジュール1について説明した。しかし、パワー半導体素子6の個数は1個に限るわけではなく、複数個(2個以上)のパワー半導体素子6を実装しても構わない。
また、上述した実施の形態1では、封止樹脂としてシリコーン樹脂7を用いたパワーモジュール1について説明した。しかし、シリコーン樹脂7以外の封止樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂など)を代用または併用したパワーモジュール1に本発明を同様に適用することもできる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
(a)液晶ポリエステルの製造
まず、攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)および無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。そして、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持しつつ3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら、170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了点とみなし、内容物を取り出した。こうして取り出した内容物を室温まで冷却し、粉砕機で粉砕した後、比較的低分子量の液晶ポリエステル粉末を得た。こうして得られた液晶ポリエステル粉末について、(株)島津製作所製のフローテスター「CFT−500型」を用いて、流動開始温度を測定したところ、235℃であった。この液晶ポリエステル粉末に対して、窒素雰囲気において223℃で3時間の加熱処理を施すことにより、固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。
(b)液晶ポリエステル溶液の調製
上記(a)で得られた液晶ポリエステル2200gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して、液晶ポリエステル溶液を得た。このときの溶液粘度は320cPであった。この溶液粘度は、東機産業(株)製のB型粘度計「TVL−20型」(ローターNo.21、回転速度5rpm)を用いて、室温(23℃)で測定したときの値である。
(c)金属ベース回路基板の作製
無機充填材として、体積平均粒径0.3μmの球状α−アルミナ粉末(住友化学(株)製の酸化アルミニウム「スミコランダムAA−0.3」)を9体積%、体積平均粒径1.5μmの球状α−アルミナ粉末(住友化学(株)製の酸化アルミニウム「スミコランダムAA−1.5」)を14体積%、体積平均粒径18μmの球状α−アルミナ粉末(住友化学(株)製の酸化アルミニウム「スミコランダムAA−18」)を77体積%の割合で用いた。
上記(b)で得た液晶ポリエステル溶液(固形分22質量%)に、この無機充填材を加えて、液状組成物を得た。ここで、無機充填材の充填量は、液晶ポリエステルおよび無機充填材の合計含有量に対して、70体積%とした。
次に、こうして得られた液状組成物を遠心脱泡機で5分間攪拌した後、厚さ70μmの銅箔上に厚さ200μmとなるように塗布した。続いて、これを100℃で20分間乾燥させた後、320℃で3時間熱処理した。これにより、表面に銅箔が形成された絶縁層を得た。
その後、熱伝導率140W/(m・K)、厚さ2mmのアルミニウム合金板(金属基板)上に、上記の絶縁層を積層した。このとき、絶縁層の裏面(銅箔が形成されていない面)が、アルミニウム合金板の表面と接するようにした。そして、圧力19.6MPa(200kgf/cm2 )、温度340℃で20分間の加熱処理を行うことにより、これらアルミニウム合金板と絶縁層とを熱接着して、金属ベース回路基板を作製した。
このようにして作製した金属ベース回路基板は、絶縁層の熱伝導率が約8.7W/(m・K)であった。これに対して、従来のエポキシ樹脂製の絶縁層の熱伝導率は5W/(m・K)程度である。この結果、従来品と比較して絶縁層の熱伝導率を大幅に向上させ、金属ベース回路基板の放熱性を大幅に向上させることができた。
本発明は、例えば、自動車や冷蔵庫など各種の製品に組み込まれるパワーエレクトロニクス機器に広く適用することができる。
1……パワーモジュール
2……金属基板
3……絶縁層
4……金属ベース回路基板
5……銅箔(導電箔)
6……パワー半導体素子(発熱素子)
7……シリコーン樹脂(封止樹脂)

Claims (5)

  1. 金属基板と、この金属基板上に設けられた絶縁層と、この絶縁層上に設けられた回路形成用の導電箔とを具備し、パワーモジュールに適用される金属ベース回路基板であって、
    前記絶縁層が、溶媒可溶性の液晶ポリエステルから形成されていることを特徴とする金属ベース回路基板。
  2. 前記液晶ポリエステルが、下式(1)で示される構造単位と、下式(2)で示される構造単位と、下式(3)で示される構造単位とを有し、全構造単位の合計含有量に対して、下式(1)で示される構造単位の含有量が30〜60モル%、下式(2)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%、下式(3)で示される構造単位の含有量が20〜35モル%の液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の金属ベース回路基板。
    (1)−O−Ar1 −CO−
    (2)−CO−Ar2 −CO−
    (3)−X−Ar3 −Y−
    (式中、Ar1 は、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar2 は、フェニレン基、ナフチレン基または下式(4)で示される基を表し、Ar3 は、フェニレン基または下式(4)で示される基を表し、XおよびYは、それぞれ独立に、OまたはNHを表す。なお、Ar1 、Ar2 およびAr3 の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
    (4)−Ar11−Z−Ar12
    (式中、Ar11、Ar12は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し、Zは、O、COまたはSO2 を表す。)
  3. 前記絶縁層に無機充填剤が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の金属ベース回路基板。
  4. 前記無機充填剤は、熱伝導率が30W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項3に記載の金属ベース回路基板。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の金属ベース回路基板に発熱素子が実装されて封止樹脂で封止されていることを特徴とするパワーモジュール。
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