JP2010080480A - 多層プリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】配線と絶縁層との間に良好な密着性を有し、高温吸湿環境下に曝露した場合であっても、該密着性の低下を十分抑制できるという特性を備えた多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有することを特徴とする多層プリント配線板の提供。前記絶縁層は、液晶ポリエステルと溶剤とを含む溶液組成物を該ガラスクロスに含浸することで形成される樹脂含浸基材10を用いて製造されることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有することを特徴とする多層プリント配線板の提供。前記絶縁層は、液晶ポリエステルと溶剤とを含む溶液組成物を該ガラスクロスに含浸することで形成される樹脂含浸基材10を用いて製造されることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、多層プリント配線板に関する。
近年の電子機器は一層の多機能化が要求されており、それに伴って当該電子機器に搭載されるプリント配線板においても高速・低損失信号伝送性、配線高密度化、薄化、軽量化等をより高度化することが求められている。これらの要求を解決する手段の一つとして、ビルドアップ方式による多層プリント配線板の高性能化が挙げられ、該多層プリント配線板の実用化のための検討がより一層加速している。
従来のビルドアップ方式による多層プリント配線板では、層間絶縁材料(絶縁層)として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いたものが主流であった。しかしながら、このような多層プリント配線板では前記の要求に応えることは困難であり、より低誘電正接の液晶ポリエステルを絶縁材料として用いた多層プリント配線板が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、従来提案されている多層プリント配線板は、液晶ポリエステルを含む絶縁層と導体層との間の密着性が必ずしも十分でなく、特に、該多層プリント配線板を高温高湿環境下に曝露した場合には、その密着性は顕著に低下するという問題を有していた。該密着性を向上させるために密着助剤を使用すると、液晶ポリエステルの低誘電正接等の電気特性を著しく損なうことがあり、その使用には限界があった。
そこで本発明の目的は、液晶ポリエステルの優れた電気特性を損なうような密着助剤を使用しなくとも、絶縁層と導体層との間に高度の密着性を有する多層プリント配線板を提供することにある。
そこで本発明の目的は、液晶ポリエステルの優れた電気特性を損なうような密着助剤を使用しなくとも、絶縁層と導体層との間に高度の密着性を有する多層プリント配線板を提供することにある。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の<1>を提供するものである。
<1>無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有する多層プリント配線板
<1>無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有する多層プリント配線板
また、本発明は前記<1>に係わる好適な実施態様として、以下の<2>〜<7>を提供する。
<2>前記液晶ポリエステルが、以下の式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で表される構造単位が30.0〜45.0モル%、式(2)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%、式(3)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%からなるものである、<1>の多層プリント配線板
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立に、O又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
<3>前記式(3)で表される構造単位として、X及びYの少なくとも一方が、NHである構造単位を含む、<2>の多層プリント配線板
<4>前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜45.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が27.5〜35.0モル%、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる化合物に由来する構造単位の合計が27.5〜35.0モル%からなるものである、<1>〜<3>の何れかの多層プリント配線板
<5>電気信号を伝達する配線が、銅箔から形成されたものである、<1>〜<4>の何れかの多層プリント配線板
<6>前記絶縁層が、厚み10〜200μmのガラスクロスに、前記液晶ポリエステル及び溶剤を含む溶液組成物を含浸せしめて形成されたものである、<1>〜<5>の何れかの多層プリント配線板
<7>前記シートがガラスクロスである、<1>〜<6>の何れかの多層プリント配線板
<2>前記液晶ポリエステルが、以下の式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で表される構造単位が30.0〜45.0モル%、式(2)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%、式(3)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%からなるものである、<1>の多層プリント配線板
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立に、O又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
<3>前記式(3)で表される構造単位として、X及びYの少なくとも一方が、NHである構造単位を含む、<2>の多層プリント配線板
<4>前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜45.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が27.5〜35.0モル%、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる化合物に由来する構造単位の合計が27.5〜35.0モル%からなるものである、<1>〜<3>の何れかの多層プリント配線板
<5>電気信号を伝達する配線が、銅箔から形成されたものである、<1>〜<4>の何れかの多層プリント配線板
<6>前記絶縁層が、厚み10〜200μmのガラスクロスに、前記液晶ポリエステル及び溶剤を含む溶液組成物を含浸せしめて形成されたものである、<1>〜<5>の何れかの多層プリント配線板
<7>前記シートがガラスクロスである、<1>〜<6>の何れかの多層プリント配線板
本発明によれば、絶縁層と導体層との間に高度の密着性を有する多層プリント配線板、特に該多層プリント配線板を高温高湿環境下に曝露した場合であっても、該密着性の低下を十分抑制できるという特性を備えた多層プリント配線板を提供できる。また、該多層プリント配線板にある絶縁層は、液晶ポリエステルを含有することから優れた電気特性を有するという利点もある。したがって、該多層プリント配線板は、一層の多機能化が求められる電子機器に好適に使用できるため、産業上極めて有用である。
本発明の多層プリント配線板は、無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有することを特徴とする。
以下、本発明において、絶縁層に用いられる液晶ポリエステル及び無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシート、これらを用いた絶縁層の製造方法、多層プリント配線板に関し、順次説明する。なお、必要に応じて図面を参照するが、同一構成要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図面中の構成要素の寸法等は見易さのため任意になっている。
以下、本発明において、絶縁層に用いられる液晶ポリエステル及び無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシート、これらを用いた絶縁層の製造方法、多層プリント配線板に関し、順次説明する。なお、必要に応じて図面を参照するが、同一構成要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、図面中の構成要素の寸法等は見易さのため任意になっている。
<液晶ポリエステル>
本発明に用いる液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される構造単位(以下、「式(1)構造単位」という)と、下記式(2)で表される構造単位(以下、「式(2)構造単位」という)と、下記式(3)で表される構造単位(以下、「式(3)構造単位」という)とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)構造単位が30.0〜45.0モル%、式(2)構造単位が27.5〜35.0モル%、式(3)構造単位が27.5〜35.0モル%からなるものが好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立に、O又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
本発明に用いる液晶ポリエステルとは、溶融時に光学異方性を示し、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するという特性を有するポリエステルである。本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、下記式(1)で表される構造単位(以下、「式(1)構造単位」という)と、下記式(2)で表される構造単位(以下、「式(2)構造単位」という)と、下記式(3)で表される構造単位(以下、「式(3)構造単位」という)とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)構造単位が30.0〜45.0モル%、式(2)構造単位が27.5〜35.0モル%、式(3)構造単位が27.5〜35.0モル%からなるものが好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYはそれぞれ独立に、O又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。)
式(1)構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位であり、該芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸等が挙げられる。
式(2)構造単位は、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位であり、該芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。
式(3)構造単位は、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族ジアミンに由来する構造単位である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
また、該フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、p−アミノフェノール、3−アミノフェノール等が挙げられ、該芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン等が挙げられる。
また、該フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、p−アミノフェノール、3−アミノフェノール等が挙げられ、該芳香族ジアミンとしては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン等が挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルは溶剤可溶性であり、かかる溶剤可溶性とは、温度50℃において、1重量%以上の濃度で溶剤に溶解することを意味する。この場合の溶剤とは、後述する溶液組成物の調製に用いる好適な溶剤の何れか1種であり、詳細は後述する。
このような溶剤可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、前記式(3)構造単位として、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンに由来する構造単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち、式(3)構造単位として、X及びYの少なくとも一方がNHである構造単位(式(3’)で表される構造単位、以下、「式(3’)構造単位」という)を含むと、後述する好適な溶剤(非プロトン性極性溶剤)に対する溶剤可溶性が優れる傾向があるため好ましい。特に、実質的に全ての式(3)構造単位が式(3’)構造単位であることが好ましい。また、この式(3’)構造単位は液晶ポリエステルの溶剤溶解性を十分にすることに加え、液晶ポリエステルがより低吸水性となる点でも有利である。
(3’)−X−Ar3−NH−
(式中、Ar3及びXは前記式(3)と同義である。)
式(3)構造単位は全構造単位の合計に対して、30.0〜32.5モル%の範囲で含むとより好ましく、こうすることにより、溶剤可溶性は一層良好になる。このように式(3’)構造単位を、式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは、溶剤に対する溶解性、低吸水性という点に加え、該溶液組成物を用いて絶縁層の製造がより容易となるという利点もある。
このような溶剤可溶性を有する液晶ポリエステルとしては、前記式(3)構造単位として、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンに由来する構造単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する構造単位を含むものが好ましい。すなわち、式(3)構造単位として、X及びYの少なくとも一方がNHである構造単位(式(3’)で表される構造単位、以下、「式(3’)構造単位」という)を含むと、後述する好適な溶剤(非プロトン性極性溶剤)に対する溶剤可溶性が優れる傾向があるため好ましい。特に、実質的に全ての式(3)構造単位が式(3’)構造単位であることが好ましい。また、この式(3’)構造単位は液晶ポリエステルの溶剤溶解性を十分にすることに加え、液晶ポリエステルがより低吸水性となる点でも有利である。
(3’)−X−Ar3−NH−
(式中、Ar3及びXは前記式(3)と同義である。)
式(3)構造単位は全構造単位の合計に対して、30.0〜32.5モル%の範囲で含むとより好ましく、こうすることにより、溶剤可溶性は一層良好になる。このように式(3’)構造単位を、式(3)構造単位として有する液晶ポリエステルは、溶剤に対する溶解性、低吸水性という点に加え、該溶液組成物を用いて絶縁層の製造がより容易となるという利点もある。
式(1)構造単位は全構造単位の合計に対して、30.0〜45.0モル%の範囲で含むと好ましく、35.0〜40.0モル%の範囲で含むとより好ましい。このようなモル分率で式(1)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶剤に対する溶解性がより優れる傾向にある。さらに、式(1)構造単位を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸の入手性も合わせて考慮すると、該芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸及び/又は2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が好適である。
式(2)構造単位は全構造単位の合計に対して、27.5〜35.0モル%の範囲で含むと好ましく、30.0〜32.5モル%の範囲で含むとより好ましい。このようなモル分率で式(2)構造単位を含む液晶ポリエステルは、液晶性を十分維持しながらも、溶剤に対する溶解性がより優れる傾向にある。さらに、式(2)構造単位を誘導する芳香族ジカルボン酸の入手性も合わせて考慮すると、該芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくも1種であると好ましい。
また、得られる液晶エステルがより高度の液晶性を発現する点では、式(2)構造単位と式(3)構造単位とのモル分率は、[式(2)構造単位]/[式(3)構造単位]で表して、0.9/1.0〜1.0/0.9の範囲が好適である。
次に液晶ポリエステルの製造方法について簡単に説明する。
該液晶ポリエステルの製造方法は種々公知の方法により製造可能であるが、好適な液晶ポリエステルである、式(1)構造単位、式(2)構造単位及び式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーを、エステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後、重合させる方法が、操作が簡便である点で好ましい。
該液晶ポリエステルの製造方法は種々公知の方法により製造可能であるが、好適な液晶ポリエステルである、式(1)構造単位、式(2)構造単位及び式(3)構造単位からなる液晶ポリエステルを製造する場合、これら構造単位を誘導するモノマーを、エステル形成性・アミド形成性誘導体に転換した後、重合させる方法が、操作が簡便である点で好ましい。
前記エステル形成性・アミド形成性誘導体について、例を挙げて説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のような、カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、当該カルボキシル基が、ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように、酸塩化物、酸無水物等の反応活性の高い基になっているものや、当該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のような、フェノール性水酸基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
また、芳香族ジアミンのように、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のような、カルボキシル基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、当該カルボキシル基が、ポリエステルやポリアミドを生成する反応を促進するように、酸塩化物、酸無水物等の反応活性の高い基になっているものや、当該カルボキシル基が、エステル交換・アミド交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するようにアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているもの等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール等のような、フェノール性水酸基を有するモノマーのエステル形成性・アミド形成性誘導体としては、エステル交換反応によりポリエステルやポリアミドを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているもの等が挙げられる。
また、芳香族ジアミンのように、アミノ基を有するモノマーのアミド形成性誘導体としては、例えば、アミド交換反応によりポリアミドを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とアミドを形成しているもの等が挙げられる。
これらの中でも液晶ポリエステルをより簡便に製造するうえでは、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミンといったフェノール性水酸基及び/又はアミノ基を有するモノマーとを、脂肪酸無水物でアシル化してエステル形成性・アミド形成性誘導体(アシル化物)とした後、該アシル化物のアシル基と、カルボキシ基を有するモノマーのカルボキシ基とがエステル交換・アミド交換を生じるようにして重合させ、液晶ポリエステルを製造する方法が特に好ましい。
このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報又は特開2002−146003号公報に記載されている。
このような液晶ポリエステルの製造方法は、例えば、特開2002−220444号公報又は特開2002−146003号公報に記載されている。
アシル化においては、フェノール性水酸基とアミノ基との合計に対して、脂肪酸無水物の添加量が1.0〜1.2倍当量であることが好ましく、1.05〜1.1倍当量であるとより好ましい。脂肪酸無水物の添加量が1.0倍当量未満では、重合時にアシル化物や原料モノマーが昇華して反応系が閉塞し易い傾向があり、また、1.2倍当量を超える場合には、得られる液晶ポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
アシル化は、130〜180℃で5分〜10時間反応させることが好ましく、140〜160℃で10分〜3時間反応させることがより好ましい。
アシル化に使用される脂肪酸無水物は、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸又はこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく、特に好ましくは無水酢酸である。
アシル化に使用される脂肪酸無水物は、価格と取扱性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸又はこれらから選ばれる2種以上の混合物が好ましく、特に好ましくは無水酢酸である。
アシル化に続く重合は、130〜400℃で0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行うことが好ましく、150〜350℃で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行うことがより好ましい。
また、重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
また、重合においては、アシル化物のアシル基がカルボキシル基の0.8〜1.2倍当量であることが好ましい。
アシル化及び/又は重合の際には、平衡を移動させるため、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物とは蒸発させる等して系外へ留去することが好ましい。
なお、アシル化や重合においては触媒の存在下に行ってもよい。該触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
これらの触媒の中でも、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)
該触媒は、通常モノマーの投入時に一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合には、アシル化からそのまま重合に移行することができる。
これらの触媒の中でも、N,N-ジメチルアミノピリジン、N―メチルイミダゾールなどの窒素原子を2個以上含む複素環状化合物が好ましく使用される(特開2002−146003号公報参照)
該触媒は、通常モノマーの投入時に一緒に投入され、アシル化後も除去することは必ずしも必要ではなく、該触媒を除去しない場合には、アシル化からそのまま重合に移行することができる。
このような重合で得られた液晶ポリエステルはそのまま、本発明に用いることができるが、耐熱性や液晶性という特性の更なる向上のためには、より高分子量化させることが好ましく、かかる高分子量化には固相重合を行うことが好ましい。この固相重合に係る一連の操作を説明する。前記の重合で得られた、比較的低分子量の液晶ポリエステルを取り出し、粉砕してパウダー状もしくはフレーク状にする。続いて、粉砕後の液晶ポリエステルを、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、20〜350℃で、1〜30時間固相状態で加熱処理するという操作により固相重合は実施できる。該固相重合は、攪拌しながらでも、攪拌することなく静置した状態で行ってもよい。なお、後述する好適な流動開始温度の液晶ポリエステルを得るといった観点から、該固相重合の好適条件を詳述すると、反応温度として210℃を越えることが好ましく、より一層好ましくは220℃〜350℃の範囲である。反応時間は1〜10時間から選択されることが好ましい。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、その流動開始温度が250℃以上であると、絶縁層と、多層プリント配線板中にある配線パターンが形成された導体層(以下、場合により「配線」という)との間に、より高度の密着性が得られるため好ましい。ここでいう流動開始温度とは、フローテスターによる溶融粘度の評価において、9.8MPaの圧力下で液晶ポリエステルの溶融粘度が4800Pa・s以下になる温度をいう。なお、この流動開始温度とは、液晶ポリエステルの分子量の目安として当業者には周知のものである(小出直之編,「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」,95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行)。
液晶ポリエステルの流動開始温度は、250℃以上300℃以下であることが更に好ましい。流動開始温度が300℃以下であれば、液晶ポリエステルの溶剤可溶性がより良好になることに加え、後述する溶液組成物を得たとき、その粘度が著しく大にならないので、該溶液組成物の取扱性が良好となる傾向がある。かかる観点から、より好ましくは流動開始温度が260℃以上290℃以下の範囲である。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度をこのような好適な範囲に制御するには、前記固相重合の重合条件を適宜最適化すればよい。
<溶液組成物>
本発明の多層プリント配線板用基板の絶縁層を得るには、液晶ポリエステル及び溶剤を含む溶液組成物、特に溶剤に液晶ポリエステルを溶解せしめた溶液組成物を用いることが好ましい。
本発明に用いる液晶ポリエステルとして、上述の好適な液晶ポリエステル、特に前記式(3’)構造単位を有する液晶ポリエステルを用いた場合、該液晶ポリエステルはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤に対して十分な溶剤可溶性を発現する。
ここでハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;γ―ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶剤;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン系溶剤が挙げられる。なお、上述の液晶ポリエステルの溶剤可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの溶媒に可溶であることを指すものである。
本発明の多層プリント配線板用基板の絶縁層を得るには、液晶ポリエステル及び溶剤を含む溶液組成物、特に溶剤に液晶ポリエステルを溶解せしめた溶液組成物を用いることが好ましい。
本発明に用いる液晶ポリエステルとして、上述の好適な液晶ポリエステル、特に前記式(3’)構造単位を有する液晶ポリエステルを用いた場合、該液晶ポリエステルはハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤に対して十分な溶剤可溶性を発現する。
ここでハロゲン原子を含まない非プロトン性溶剤とは、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;γ―ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶剤;アセトニトリル、サクシノニトリル等のニトリル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン系溶剤が挙げられる。なお、上述の液晶ポリエステルの溶剤可溶性とは、これらから選ばれる少なくとも1つの溶媒に可溶であることを指すものである。
液晶ポリエステルの溶剤可溶性をより一層良好にして、溶液組成物が得られやすい点では、例示した溶剤の中でも、双極子モーメントが3以上5以下の非プロトン性極性溶剤を用いることが好ましい。具体的にいえば、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤が好ましく、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)を用いることがより好ましい。更には、前記溶剤が、1気圧における沸点が180℃以下の揮発性の高い溶剤であると、前記シートに該溶液組成物を含浸させた後、除去しやすいという利点もある。この観点からはDMF、DMAcが特に好ましい。また、このようなアミド系溶剤の使用は、絶縁層の製造時に、該絶縁層の厚みムラ等が生じ難くなるため、該絶縁層上に導体層が形成し易いという利点もある。
前記溶液組成物に、前記のような非プロトン性溶剤を用いた場合、該非プロトン性溶剤100重量部に対して、液晶ポリエステルを20〜50重量部、好ましくは22〜40重量部溶解させると好ましい。該溶液組成物に対する液晶ポリエステル含有量がこのような範囲であると、絶縁層を製造する際に、前記シートに該溶液組成物を含浸させる効率が良好になり、含浸後の溶剤を乾燥除去する際に、厚みムラ等が生じるといった不都合も起こり難い傾向がある。
また、前記溶液組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル及びその変性物、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂;グリシジルメタクリレートとポリエチレンの共重合体に代表されるエラストマー;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂等、液晶ポリエステル以外の樹脂を一種又は二種以上を添加してもよい。ただし、このような他の樹脂を用いる場合においては、これら他の樹脂も該溶液組成物に使用した溶剤に可溶であることが好ましい。
さらに、前記溶液組成物には、寸法安定性、熱電導性、電気特性の改善等を目的として、本発明の効果を損なわない範囲であれば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機フィラー;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマー等の有機フィラー;シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が、一種又は二種以上添加されていてもよい。
また、該溶液組成物は必要に応じて溶液中に含まれる微細な異物を、フィルター等を用いたろ過処理により除去してもよい。
さらに、該溶液組成物は必要に応じ、脱泡処理を行ってもよい。
また、該溶液組成物は必要に応じて溶液中に含まれる微細な異物を、フィルター等を用いたろ過処理により除去してもよい。
さらに、該溶液組成物は必要に応じ、脱泡処理を行ってもよい。
<無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシート>
本発明に用いるシートは、通気性のあるペーパー、織物、不織布シート等であって無機繊維及び/又は炭素繊維からなるものを意味する。ここで、無機繊維としては、ガラスに代表されるセラミック繊維であり、ガラス繊維、アルミナ系繊維、ケイ素含有セラミック系繊維が挙げられる。これらの中でも、入手性が良好であることから、主としてガラス繊維からなるシート、すなわちガラスクロスを用いることが好ましい。
本発明に用いるシートは、通気性のあるペーパー、織物、不織布シート等であって無機繊維及び/又は炭素繊維からなるものを意味する。ここで、無機繊維としては、ガラスに代表されるセラミック繊維であり、ガラス繊維、アルミナ系繊維、ケイ素含有セラミック系繊維が挙げられる。これらの中でも、入手性が良好であることから、主としてガラス繊維からなるシート、すなわちガラスクロスを用いることが好ましい。
前記ガラスクロスとしては、含アルカリガラス繊維、無アルカリガラス繊維、低誘電ガラス繊維からなるものが好ましい。また、ガラスクロスを構成する繊維として、その一部にガラス以外のセラミックからなるセラミック繊維又は炭素繊維を混入していてもよい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていてもよい。
これらの繊維からなるガラスクロスを製造する方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散し、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法を挙げることができる。
これらの繊維からなるガラスクロスを製造する方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散し、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法を挙げることができる。
繊維の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が利用できる。織り密度としては、10〜100本/25mmであり、ガラスクロスの単位面積当たりの質量としては10〜300g/m2のものが好ましく使用される。ガラスクロスの厚みとしては、通常、10〜200μm程度であり、10〜180μmの厚みのものがさらに好ましく使用される。
また、市場から容易に入手できるガラスクロスを用いることも可能である。ガラスクロスとしては、電子部品の絶縁含浸基材として種々のものが市販されており、旭シュエーベル(株)、日東紡績(株)、有沢製作所(株)等から入手することができる。なお、市販のガラスクロスにおいて、好適な厚みのものは、IPC呼称で1035、1078、2116、7628のものが挙げられる。
<多層プリント配線板の製造方法>
本発明の多層プリント配線板は、上述したような溶剤可溶性の液晶ポリエステルと前記シート(好ましくは、ガラスクロス)から得られる絶縁層を少なくとも1層有しているものであるが、好ましくは該多層プリント配線板を構成する絶縁層の全てが、該溶剤可溶性の液晶ポリエステルと該シートとから形成されたものであると好ましい。
さらに、この絶縁層は該溶液組成物を該シートに含浸させ溶剤を乾燥除去させることで得られる樹脂含浸基材を用いることが特に好ましく、この樹脂含浸基材を用いた場合を例にして、本発明の多層プリント配線板を製造する方法を説明する。該樹脂含浸基材における液晶ポリエステル付着量としては、この樹脂含浸基材の重量を基にして30〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%であることがより好ましい。
ここでは、該シートとして好適なガラスクロスを用いた場合の多層プリント配線板の製造方法を説明する。
ガラスクロスに溶液組成物を含浸させるには、典型的には該溶液組成物を仕込んだ浸漬槽を準備し、この浸漬層にガラスクロスを浸漬することで実施することができる。ここで、用いた溶液組成物の液晶ポリエステル含有量、浸漬槽に浸漬する時間、溶液組成物が含浸されたガラスクロスを引き上げる速度を、適宜最適化すれば、上述の好適な液晶ポリエステル付着量は容易に制御することができる。
本発明の多層プリント配線板は、上述したような溶剤可溶性の液晶ポリエステルと前記シート(好ましくは、ガラスクロス)から得られる絶縁層を少なくとも1層有しているものであるが、好ましくは該多層プリント配線板を構成する絶縁層の全てが、該溶剤可溶性の液晶ポリエステルと該シートとから形成されたものであると好ましい。
さらに、この絶縁層は該溶液組成物を該シートに含浸させ溶剤を乾燥除去させることで得られる樹脂含浸基材を用いることが特に好ましく、この樹脂含浸基材を用いた場合を例にして、本発明の多層プリント配線板を製造する方法を説明する。該樹脂含浸基材における液晶ポリエステル付着量としては、この樹脂含浸基材の重量を基にして30〜80重量%であることが好ましく、40〜70重量%であることがより好ましい。
ここでは、該シートとして好適なガラスクロスを用いた場合の多層プリント配線板の製造方法を説明する。
ガラスクロスに溶液組成物を含浸させるには、典型的には該溶液組成物を仕込んだ浸漬槽を準備し、この浸漬層にガラスクロスを浸漬することで実施することができる。ここで、用いた溶液組成物の液晶ポリエステル含有量、浸漬槽に浸漬する時間、溶液組成物が含浸されたガラスクロスを引き上げる速度を、適宜最適化すれば、上述の好適な液晶ポリエステル付着量は容易に制御することができる。
このようにして、溶液組成物を含浸させたガラスクロスは、溶剤を除去することで樹脂含浸基材を製造することができる。溶剤を除去する方法は特に限定されないが、操作が簡便である点で、溶剤の蒸発により行うことが好ましく、加熱、減圧、通風又はこれらを組み合わせた方法が用いられる。また、この樹脂含浸基材の製造には、溶剤を除去した後、さらに加熱処理を行ってもよい。このような加熱処理によると、溶剤除去後の樹脂含浸基材に含まれる液晶ポリエステルをさらに高分子量化することができる。この加熱処理に係る処理条件としては、例えば、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、240〜330℃で、1〜30時間加熱処理するといった方法を挙げることができる。なお、より良好な耐熱性を有する多層プリント配線板を得るといった観点からは、加熱処理の処理条件としては、その加熱温度が250℃を越えるようにすることが好ましく、より一層好ましくは加熱温度が260℃〜320℃の範囲である。該加熱処理の処理時間は1〜10時間から選択されることが、生産性の点で好ましい。
次に、得られた樹脂含浸基材の片面に導体層を積層させて、該樹脂含浸基材と該絶縁層とが積層された積層体を製造する。かかる導体層としては、銅、アルミ、銀又はこれらの金属を含む合金からなるものが好ましく、より優れた導電性を有する点において、銅を含む導体層(銅又は銅合金からなる導体層)がさらに好ましく、取扱いが容易である点で銅箔を用いて導体層を形成することが特に好ましい。銅箔は優れた導電性を発現するものであり、経済性の点でも優れたものといえる。
該導体層を積層させる方法としては、通常、該樹脂含浸基材に銅を含む金属箔(銅箔)を積層させる方法、銅微粒子を該樹脂含浸基材上にコートして導電層を形成させる方法等が挙げられる。
該導体層を積層させる方法としては、通常、該樹脂含浸基材に銅を含む金属箔(銅箔)を積層させる方法、銅微粒子を該樹脂含浸基材上にコートして導電層を形成させる方法等が挙げられる。
前記樹脂含浸基材に導体層を積層する方法としては、例えば、銅箔を熱プレスにより熱融着させる方法や、銅粉又は銅粒子を、めっき法、スクリーン印刷法又はスパッタリング法により、前記樹脂含浸基材にコートする方法等が利用できる。
中でも、上述のとおり銅箔を用いた熱プレスにより前記樹脂含浸基材に導体層を積層させると好ましい。かかる熱プレスは、真空下で実施することが好ましい。該熱プレスにおける処理条件は、得られる積層体が良好な表面平滑性を発現するようにして、適宜最適化される。この処理温度は、該熱プレスに使用する樹脂含浸基材を製造する際に使用した加熱処理の温度条件を基点とすることができる。具体的には、樹脂含浸基材を製造する際に使用した加熱処理の温度条件の最高温度をTmax[℃]としたとき、このTmaxを越える温度条件、より好ましくはTmax+5[℃]以上の温度で熱プレスすることが好ましい。該熱プレスに係る温度の上限は、用いる樹脂含浸基材に含有される液晶ポリエステルの分解温度を下回るように選択されるが、好ましくは該分解温度を30℃以上下回るようにするのが好ましい。なお、ここでいう分解温度は熱重量減少分析等の公知の手段で求められるものである。また、該熱プレスの処理時間は1〜30時間、プレス圧力は1〜30MPaから選択される。
また、該導体層をコート法で作製する場合には、めっき法が好ましく、無電解めっきや電解めっきを用いることがさらに好ましい。また、めっき法で得られた導体層の特性をさらに向上させるためにも、めっき後の導体層を加熱処理することが好ましく、かかる加熱処理の処理条件に関しても、前記熱プレスの処理条件として記した条件と同等のものが採用される。
中でも、上述のとおり銅箔を用いた熱プレスにより前記樹脂含浸基材に導体層を積層させると好ましい。かかる熱プレスは、真空下で実施することが好ましい。該熱プレスにおける処理条件は、得られる積層体が良好な表面平滑性を発現するようにして、適宜最適化される。この処理温度は、該熱プレスに使用する樹脂含浸基材を製造する際に使用した加熱処理の温度条件を基点とすることができる。具体的には、樹脂含浸基材を製造する際に使用した加熱処理の温度条件の最高温度をTmax[℃]としたとき、このTmaxを越える温度条件、より好ましくはTmax+5[℃]以上の温度で熱プレスすることが好ましい。該熱プレスに係る温度の上限は、用いる樹脂含浸基材に含有される液晶ポリエステルの分解温度を下回るように選択されるが、好ましくは該分解温度を30℃以上下回るようにするのが好ましい。なお、ここでいう分解温度は熱重量減少分析等の公知の手段で求められるものである。また、該熱プレスの処理時間は1〜30時間、プレス圧力は1〜30MPaから選択される。
また、該導体層をコート法で作製する場合には、めっき法が好ましく、無電解めっきや電解めっきを用いることがさらに好ましい。また、めっき法で得られた導体層の特性をさらに向上させるためにも、めっき後の導体層を加熱処理することが好ましく、かかる加熱処理の処理条件に関しても、前記熱プレスの処理条件として記した条件と同等のものが採用される。
かくして得られる積層体は、前記樹脂含浸基材と前記導体層と間に極めて優れた密着性を有し、特に、該積層体を高温高湿環境下に曝露したとしても、その密着性が著しく低下しないという効果を発現する。この理由は必ずしも明らかではないが、本発者等は以下のように推定している。本発明者等は、溶剤可溶性の液晶ポリエステルと前記シート(ガラスクロス)とから形成された樹脂含浸基材は、その厚み方向の線膨張係数が極めて小さいものとなることを見出している。このように線膨張係数が小さい樹脂含浸基材は、温度による膨張・収縮の度合いが小さくなるために、加熱や冷却によっても、該導体層と該樹脂含浸基材との間に極端にストレスがかかり難くなるため、結果として積層体が加熱・冷却を繰り返して受けたとしても、該導体層−該樹脂含浸基材間の密着性が著しく低下しないと推定される。また、前記に例示したような液晶ポリエステルは、溶剤可溶性であるにもかかわらず、極めて低吸水性であり、高湿環境下であっても吸湿による悪影響を極めて受け難く、該積層体に係る密着性低下を良好に抑制できると推定される。
次に、上述のような積層体の製造方法において、銅箔を導体層として用いた場合の多層プリント配線板の製造に関し、好適な実施態様を、図面を参照して説明する。
多層プリント配線板製造に係る第1の実施形態は、片面に配線を形成せしめた基板(第1の基板)と両面に配線を形成せしめた基板(第2の基板)を用いたものである。
図1は、樹脂含浸基材の片面に配線を形成せしめてなる第1の基板110の製造過程を模式的に表す断面図である。樹脂含浸基材10の片面に銅箔21を熱プレスにより張り合わせ[工程(A)]、積層体(片面銅箔付樹脂含浸基材)100を製造する[工程(B)]。次に、工程(C)において、樹脂含浸基材10に接合している銅箔21をエッチング等により配線パターンを描画し、配線23を形成させることにより、第1の基板110が製造される。
図2は、樹脂含浸基材の両面に配線を形成せしめてなる第2の基板210の製造過程を模式的に表す断面図である。樹脂含浸基材10の両面に銅箔21,22を熱プレスにより張り合わせ[工程(D)]、積層体(両面銅箔付樹脂含浸基材)200を製造する[工程(E)]。次に、工程(F)において、樹脂含浸基材10に接合している銅箔21,22をエッチング等により配線パターンを描画し、配線23,24を形成させることにより、第2の基板210が製造される。
なお、第2の基板210には、その両面に形成された配線23と配線24とを電気的に結合するビアホールが設けられていてもよい。かかるビアホールの形成には、各種公知の手段が採用される。
多層プリント配線板製造に係る第1の実施形態は、片面に配線を形成せしめた基板(第1の基板)と両面に配線を形成せしめた基板(第2の基板)を用いたものである。
図1は、樹脂含浸基材の片面に配線を形成せしめてなる第1の基板110の製造過程を模式的に表す断面図である。樹脂含浸基材10の片面に銅箔21を熱プレスにより張り合わせ[工程(A)]、積層体(片面銅箔付樹脂含浸基材)100を製造する[工程(B)]。次に、工程(C)において、樹脂含浸基材10に接合している銅箔21をエッチング等により配線パターンを描画し、配線23を形成させることにより、第1の基板110が製造される。
図2は、樹脂含浸基材の両面に配線を形成せしめてなる第2の基板210の製造過程を模式的に表す断面図である。樹脂含浸基材10の両面に銅箔21,22を熱プレスにより張り合わせ[工程(D)]、積層体(両面銅箔付樹脂含浸基材)200を製造する[工程(E)]。次に、工程(F)において、樹脂含浸基材10に接合している銅箔21,22をエッチング等により配線パターンを描画し、配線23,24を形成させることにより、第2の基板210が製造される。
なお、第2の基板210には、その両面に形成された配線23と配線24とを電気的に結合するビアホールが設けられていてもよい。かかるビアホールの形成には、各種公知の手段が採用される。
ここで、第1の基板及び第2の基板の製造で銅箔に配線パターンを描画する好適な方法であるエッチング(加工)に関し簡単に説明する。まず、該配線パターンが所定のパターンになるようにマスキングを行い、マスキングされた銅箔の部分とマスキングされていない銅箔の部分において、後者の銅箔の部分をウェット法(薬剤処理)というエッチング加工によって除去することで実施できる。このエッチング加工に用いる薬剤としては、例えば塩化第二鉄水溶液が挙げられる。また、該マスキングとしては、市販のエッチングレジストやドライフィルムを用いればよい。
次いで、マスキングされた銅箔部分からエッチングレジストやドライフィルムをアセトンや水酸化ナトリウム水溶液で除去する。このようにして銅箔に所定の配線を形成することができる。
次いで、マスキングされた銅箔部分からエッチングレジストやドライフィルムをアセトンや水酸化ナトリウム水溶液で除去する。このようにして銅箔に所定の配線を形成することができる。
次に、前記のようにして得られた第1の基板110と第2の基板210とから、多層プリント配線板を形成する方法に関し、図3を参照して説明する。まず、該第2の基板を1つと、該第1の基板2つを準備し、第2の基板210を挟み込むように、第1の基板110を重ねる。この際、2つの第1の基板110は、樹脂含浸基材10側が第2の基板210の配線23、24を覆うようにする。このようにして、第1の基板110と第2の基板210を重ねた後、これを熱プレスする[工程(G)]ことで、多層プリント配線板300が得られる[工程(H)]。このようにして製造された多層プリント配線板300は、樹脂含浸基材から得られた絶縁層を3層有するものとなる。
この場合、該第1の基材と該第2の基材とを積層させるために使用される熱プレスの温度条件においては、第1の基材又は第2の基材の製造において、銅箔を樹脂含浸基材に積層させたときの熱プレスに係わる温度条件を基に決定されることが好ましい。具体的にいうと、銅箔の熱プレスで用いた加熱処理に係る最高温度を基点とし、該最高温度を上回るように、好ましくは該最高温度を5℃以上上回るようにして、該熱プレスの温度条件が決定される。なお、温度条件以外の条件は、前記銅箔と前記樹脂含浸基材との熱プレスで例示した条件と同じものが採用される。なお、ここで説明する多層プリント配線板300製造の熱プレスでは、銅箔を用いた場合について記したが、導体層形成としてめっき法を採用した場合は、導体層の特性向上のために用いた加熱処理に係る最高温度を基点とすればよい。
この場合、該第1の基材と該第2の基材とを積層させるために使用される熱プレスの温度条件においては、第1の基材又は第2の基材の製造において、銅箔を樹脂含浸基材に積層させたときの熱プレスに係わる温度条件を基に決定されることが好ましい。具体的にいうと、銅箔の熱プレスで用いた加熱処理に係る最高温度を基点とし、該最高温度を上回るように、好ましくは該最高温度を5℃以上上回るようにして、該熱プレスの温度条件が決定される。なお、温度条件以外の条件は、前記銅箔と前記樹脂含浸基材との熱プレスで例示した条件と同じものが採用される。なお、ここで説明する多層プリント配線板300製造の熱プレスでは、銅箔を用いた場合について記したが、導体層形成としてめっき法を採用した場合は、導体層の特性向上のために用いた加熱処理に係る最高温度を基点とすればよい。
また、絶縁層が4層以上有するように多層プリント配線板を製造する場合には、さらに第1の基板110を準備し、該多層プリント配線板300の片面又は両面に、同様の手段を用いて、第1の基板110を接合させることで製造することができる。
次に、本発明の多層プリント配線板製造に係る第2の実施形態について説明する。この場合は、前記第1の基板110を複数個用いて多層プリント配線板を製造する方法であり、図4を参照して説明する。
図4では、第1の基板110を2つ準備し[工程(I)]、一方の基板の樹脂含浸基材が他方の基板の配線を覆うように重ね合わせて、第3の基板400を製造する[工程(J)]。第1の基板同士を接合する場合も熱プレスが好ましく、かかる熱プレスの処理条件は、前記第1の実施形態で示した第1の基板と第2の基板とを接合させた場合と同様の処理条件が採用される。
続いて、該第3の基板の配線が形成されていない面に銅箔21を新たに積層し[工程(K)]、ここで積層された銅箔21に、所定の配線パターンの配線23を形成することで、多層プリント配線板420が得られる[工程(L)]。かかる多層プリント配線板420は、樹脂含浸基材から製造された絶縁層を2層有するものとなる。
図4では、第1の基板110を2つ準備し[工程(I)]、一方の基板の樹脂含浸基材が他方の基板の配線を覆うように重ね合わせて、第3の基板400を製造する[工程(J)]。第1の基板同士を接合する場合も熱プレスが好ましく、かかる熱プレスの処理条件は、前記第1の実施形態で示した第1の基板と第2の基板とを接合させた場合と同様の処理条件が採用される。
続いて、該第3の基板の配線が形成されていない面に銅箔21を新たに積層し[工程(K)]、ここで積層された銅箔21に、所定の配線パターンの配線23を形成することで、多層プリント配線板420が得られる[工程(L)]。かかる多層プリント配線板420は、樹脂含浸基材から製造された絶縁層を2層有するものとなる。
本発明の多層プリント配線板板は、複数有する絶縁層の少なくとも1つが、前記溶剤可溶性の液晶ポリエステルと前記シートとから形成されたものであればよいが、好ましくは絶縁層の全てが、該液晶ポリエステルと、該シート(好ましくはガラスクロス)とから形成されたものであると特に好ましい。このように全ての絶縁層が溶剤可溶性の液晶ポリエステルとシートとから形成されてなる多層プリント配線板は、当該多層プリント配線板にある配線/絶縁層間の全てが、密着性に優れたものとなるので、高い信頼性を有する電子機器を製造することを可能とする。
<電子機器>
本発明の多層プリント配線板としては、例えば、高耐熱基板、高周波数基板、高密度基板、高放熱基板、車載基板等が有用である、これらの基板を用いてなる電子機器は極めて信頼性の高いものを得ることができる。
本発明の多層プリント配線板としては、例えば、高耐熱基板、高周波数基板、高密度基板、高放熱基板、車載基板等が有用である、これらの基板を用いてなる電子機器は極めて信頼性の高いものを得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[積層体の製造]
(実施例1)
(1)芳香族液晶ポリエステルの調製
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)及び無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、芳香族液晶ポリエステル粉末を得た。得られた芳香族液晶ポリエステル粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、ポリエステルの流動開始温度は235℃であった。得られた芳香族液晶ポリエステル粉末を用いて、窒素雰囲気において223℃3時間で固相重合反応を進め、芳香族液晶ポリエステル粉末を得た。固相重合後の芳香族液晶ポリエステル粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、流動開始温度は270℃であった。
(実施例1)
(1)芳香族液晶ポリエステルの調製
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1976g(10.5モル)、4−ヒドロキシアセトアニリド1474g(9.75モル)、イソフタル酸1620g(9.75モル)及び無水酢酸2374g(23.25モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
その後、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。取り出した内容物を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、芳香族液晶ポリエステル粉末を得た。得られた芳香族液晶ポリエステル粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、ポリエステルの流動開始温度は235℃であった。得られた芳香族液晶ポリエステル粉末を用いて、窒素雰囲気において223℃3時間で固相重合反応を進め、芳香族液晶ポリエステル粉末を得た。固相重合後の芳香族液晶ポリエステル粉末を島津製作所フローテスターCFT−500により評価したところ、流動開始温度は270℃であった。
(2)芳香族液晶ポリエステル溶液の調製
上記工程により得られた芳香族液晶ポリエステル粉末2200gをN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して芳香族液晶ポリエステル溶液組成物を得た。溶液粘度は23℃で320cPであった。この溶融粘度は、B型粘度計(東機産業製、「TVL−20型」、ローターNo.21(回転数:5rpm))を用いて、測定温度23℃で測定した値である。
上記工程により得られた芳香族液晶ポリエステル粉末2200gをN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)7800gに加え、100℃で2時間加熱して芳香族液晶ポリエステル溶液組成物を得た。溶液粘度は23℃で320cPであった。この溶融粘度は、B型粘度計(東機産業製、「TVL−20型」、ローターNo.21(回転数:5rpm))を用いて、測定温度23℃で測定した値である。
(3)樹脂含浸基材の調製
ガラスクロス(有沢製作所製;厚み96μ IPC名称2116)に、上記(2)で得た芳香族ポリエステル溶液組成物を含浸させ、熱風式乾燥機により設定温度160℃の条件で溶剤を蒸発させて樹脂含浸基材を得た。得られた樹脂含浸基材において、ガラスクロスに対する樹脂付着量は約35重量%であり、厚みは100μm(基材の幅方向の厚み分布)、厚みバラツキは3%であった。
ガラスクロス(有沢製作所製;厚み96μ IPC名称2116)に、上記(2)で得た芳香族ポリエステル溶液組成物を含浸させ、熱風式乾燥機により設定温度160℃の条件で溶剤を蒸発させて樹脂含浸基材を得た。得られた樹脂含浸基材において、ガラスクロスに対する樹脂付着量は約35重量%であり、厚みは100μm(基材の幅方向の厚み分布)、厚みバラツキは3%であった。
(4)導電層付樹脂含浸基材の作製
その後、熱風式乾燥機により窒素雰囲気下290℃で3時間熱処理を行った。熱処理後の当該シートを2枚重ね両側に銅箔(3EC‐VLP三井金属社製(18μm))を積層させた。得られた積層体を高温真空プレス機(北川精機製 VH1−1765)により340℃20分5MPaの条件にて熱プレスし一体化させ、導電層付樹脂含浸基材を得た。
その後、熱風式乾燥機により窒素雰囲気下290℃で3時間熱処理を行った。熱処理後の当該シートを2枚重ね両側に銅箔(3EC‐VLP三井金属社製(18μm))を積層させた。得られた積層体を高温真空プレス機(北川精機製 VH1−1765)により340℃20分5MPaの条件にて熱プレスし一体化させ、導電層付樹脂含浸基材を得た。
(5)耐熱性評価(高温吸湿環境下での密着性)
得られた両面導電層付樹脂含浸基材の片面を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。次いで得られた片面導体層付樹脂含浸基材を85℃−85%RH恒温槽(ヤマト科学製 小型恒温恒湿器 IW241)に投入し、1000hr前後の銅箔密着性をJIS C6481に基づき島津製作所製オートグラフAG−ISによりを評価した(90度方向引張、引張速度50mm/分)。表に示すように高い保持率を示していることから高耐熱性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
得られた両面導電層付樹脂含浸基材の片面を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。次いで得られた片面導体層付樹脂含浸基材を85℃−85%RH恒温槽(ヤマト科学製 小型恒温恒湿器 IW241)に投入し、1000hr前後の銅箔密着性をJIS C6481に基づき島津製作所製オートグラフAG−ISによりを評価した(90度方向引張、引張速度50mm/分)。表に示すように高い保持率を示していることから高耐熱性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
(6)膜厚方向の線膨張係数
両面導電層付樹脂含浸基材の両面を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。得られた試料から7mm角の試料片を切り出し、下記の装置内で250℃の前処理を20分行い、30℃を基準とした際の50〜100℃と100〜150℃での平均線膨張係数をJIS R3251に基づくレーザー干渉法で求めた。
(1)装置:アルバック理工(株)製 レーザー熱膨張計 LIX−1型
(2)データ処理:東レリサーチセンター社製データ処理システムTHADAP−TEX
(3)測定モード:等速昇温測定 5℃/分
(4)測定雰囲気:ヘリウムガス
(5)負荷荷重:17g
(6)測定方向:膜厚方向
表に示すように小さい値を示していることから高信頼性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
(実施例2)
実施例1でガラスクロス(有沢製作所製;厚み45μ IPC名称1078)を使用した以外は同様の方法で評価した。ガラスクロスに対する樹脂付着量は約55重量%であり、厚みは55μm(基材の幅方向の厚み分布)、厚みバラツキは3%であった。
表に示すように小さい値を示していることから高信頼性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
(比較例1)
市販の液晶ポリエステル銅張板(新日鐵化学社製 ESPANEX LC1825−00NE)の銅箔を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。表に結果を示す。
両面導電層付樹脂含浸基材の両面を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。得られた試料から7mm角の試料片を切り出し、下記の装置内で250℃の前処理を20分行い、30℃を基準とした際の50〜100℃と100〜150℃での平均線膨張係数をJIS R3251に基づくレーザー干渉法で求めた。
(1)装置:アルバック理工(株)製 レーザー熱膨張計 LIX−1型
(2)データ処理:東レリサーチセンター社製データ処理システムTHADAP−TEX
(3)測定モード:等速昇温測定 5℃/分
(4)測定雰囲気:ヘリウムガス
(5)負荷荷重:17g
(6)測定方向:膜厚方向
表に示すように小さい値を示していることから高信頼性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
(実施例2)
実施例1でガラスクロス(有沢製作所製;厚み45μ IPC名称1078)を使用した以外は同様の方法で評価した。ガラスクロスに対する樹脂付着量は約55重量%であり、厚みは55μm(基材の幅方向の厚み分布)、厚みバラツキは3%であった。
表に示すように小さい値を示していることから高信頼性の多層プリント配線板を提供することが可能となる。
(比較例1)
市販の液晶ポリエステル銅張板(新日鐵化学社製 ESPANEX LC1825−00NE)の銅箔を塩化第二鉄溶液(木田株式会社製 40°ボーメ)で全ての銅箔を除去した。表に結果を示す。
10 ・・・樹脂含浸基材
21,22・・・銅箔
110・・・第1の基板
210・・・第2の基板
400・・・第3の基板
23,24・・・配線
300,420・・・多層プリント配線板
21,22・・・銅箔
110・・・第1の基板
210・・・第2の基板
400・・・第3の基板
23,24・・・配線
300,420・・・多層プリント配線板
Claims (7)
- 無機繊維及び/又は炭素繊維からなるシートと溶剤可溶性の液晶ポリエステルとから形成されている絶縁層を少なくとも1層有することを特徴とする多層プリント配線板。
- 前記液晶ポリエステルが、以下の式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位と、式(3)で表される構造単位とを有し、全構造単位の合計に対して、式(1)で表される構造単位が30.0〜45.0モル%、式(2)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%、式(3)で表される構造単位が27.5〜35.0モル%からなるものであることを特徴とする請求項1記載の多層プリント配線板。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン、ナフチレン;Ar2は、フェニレン、ナフチレン又は以下の式(4)で表される基;Ar3は、フェニレン又は以下の式(4)で表される基;X及びYは、それぞれ独立にO又はNHを表わす。なお、Ar1、Ar2及びAr3の芳香環に結合している水素原子は、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar11−Z−Ar12−
(式中、Ar11及びAr12はそれぞれ独立に、フェニレン又はナフチレンを表す。ZはO、CO又はSO2を表す。) - 前記式(3)で表される構造単位として、X及びYの少なくとも一方が、NHである構造単位を含むことを特徴とする請求項2記載の多層プリント配線板。
- 前記液晶ポリエステルが、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する構造単位の合計が30.0〜45.0モル%、4−アミノフェノールに由来する構造単位が27.5〜35.0モル%、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる化合物に由来する構造単位の合計が27.5〜35.0モル%からなるものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の多層プリント配線板。
- 電気信号を伝達する配線が、銅箔から形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の多層プリント配線板。
- 前記絶縁層が、厚み10〜200μmの前記シートに、前記液晶ポリエステル及び溶媒を含む溶液組成物を含浸せしめて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか記載の多層プリント配線板。
- 前記シートがガラスクロスであることを特徴とする請求項1〜6の何れか記載の多層プリント配線板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008243845A JP2010080480A (ja) | 2008-09-24 | 2008-09-24 | 多層プリント配線板 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012167224A (ja) * | 2011-02-16 | 2012-09-06 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 中空樹脂筐体用樹脂組成物および中空樹脂筐体 |
WO2022065270A1 (ja) * | 2020-09-23 | 2022-03-31 | デンカ株式会社 | 回路基板用絶縁材料、及び金属箔張積層板 |
Citations (4)
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---|---|---|---|---|
JP2004244621A (ja) * | 2003-01-20 | 2004-09-02 | Sumitomo Chem Co Ltd | 繊維強化基板 |
JP2005109042A (ja) * | 2003-09-29 | 2005-04-21 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 配線基板用基材及びその製造方法並びにそれを用いた配線基板 |
JP2007146139A (ja) * | 2005-10-26 | 2007-06-14 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 樹脂含浸基材およびその製造方法 |
JP2008030464A (ja) * | 2006-06-30 | 2008-02-14 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 液晶ポリエステル積層フィルムの製造方法、および液晶ポリエステル積層フィルム |
-
2008
- 2008-09-24 JP JP2008243845A patent/JP2010080480A/ja active Pending
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