JP2005109042A - 配線基板用基材及びその製造方法並びにそれを用いた配線基板 - Google Patents

配線基板用基材及びその製造方法並びにそれを用いた配線基板 Download PDF

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靖彦 乾
俊克 ▲高▼田
Toshikatsu Takada
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敏文 小嶋
Atsushi Suzuki
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Abstract

【課題】 平面方向における熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、機械的強度が大きくて取り扱い易い配線基板用基材及びその製造方法並びにこの配線基板用基材を用いた配線基板を提供する。
【解決手段】 本発明の配線基板用基材1は、ガラス繊維シート(ガラスクロス11等)を構成するガラス繊維間の空隙に液晶ポリマー12(全芳香族ポリエステル樹脂等)が充填されてなる。また、本発明の配線基板用基材1の製造方法は、ガラス繊維シートと、二軸延伸されて得られた液晶ポリマーフィルムとを積層した後、液晶ポリマーフィルムの融点より10℃低い温度以上且つ融点を10℃越える温度以下で加熱し、加圧して、液晶ポリマーをガラス繊維間の空隙に含浸させ、次いで、冷却し、液晶ポリマーを固化させることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、配線基板用基材及びその製造方法並びに配線基板に関する。更に詳しくは、平面方向における熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、機械的強度が大きくて取り扱い易い配線基板用基材及びその製造方法並びにこの配線基板用基材を用いた配線基板に関する。
本発明は、マザーボード等の通常の配線基板、フリップチップ用配線基板、CSP用配線基板及びMCP用配線基板等の電子部品搭載用配線基板、並びにアンテナスイッチモジュール用配線基板、ミキサーモジュール用配線基板、PLLモジュール用配線基板及びMCM用配線基板等のモジュール用配線基板などにおいて利用することができる。
従来から、多層配線基板等の配線基板の絶縁層として液晶ポリマーを用いることが検討されている。液晶ポリマーは、分子そのものが剛直であり、且つ分子間力が大きいため、耐熱性に優れ、弾性率が高く、熱変化に対して寸法が安定しており、吸湿性が低く、更には加工性に優れ、微細な加工が容易である等の多くの優れた特徴を有している。また、高周波領域において、誘電率及び誘電正接が小さく、高周波特性も優れている。
このように多くの優れた特性を有する液晶ポリマーを絶縁層として用いた配線基板としては、液晶ポリマーからなる絶縁層の厚さ方向に設けられたビアホールにビア導体が充填され、絶縁層の表裏両面に形成された所定の配線パターンが、ビア導体によって電気的に接続されている回路基板であって、絶縁層を形成する液晶ポリマーが配向しているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−171046号公報
しかし、多層配線基板とする場合の積層時における寸法変化、及び電子部品を実装した後の絶縁層と電子部品との接続の信頼性等を考慮した場合、配向された液晶ポリマーからなる絶縁層においても、更なる寸法安定性の向上等が望まれている。
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、平面方向における熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、機械的強度が大きくて取り扱い易い配線基板用基材及びその製造方法並びにこの配線基板用基材を用いた配線基板を提供することを目的とする。
ガラスクロスと、平面方向にランダムに配向している液晶ポリマーフィルムとを、液晶ポリマーの融点を所定温度下回る温度から所定温度越える温度までの温度範囲で加熱し、液晶ポリマーをガラスクロスを構成するガラス繊維間の空隙に充填した場合、ガラスクロスにエポキシ樹脂が充填された従来の基材と比較し、より熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れた配線基板用基材とすることができる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下のとおりである。
1.ガラス繊維シートを構成するガラス繊維間 の空隙に液晶ポリマーが充填されていることを特徴とする配線基板用基材。
2.上記液晶ポリマーが二軸配向している上記1.に記載の配線基板用基材。
3.平面方向における熱膨張係数が15ppm/℃以下である上記1.又は2.に記載の配線基板用基材。
4.平面方向において、搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下である上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の配線基板用基材。
5.ガラス繊維シートと、二軸延伸されて得られた液晶ポリマーフィルムとを積層し、その後、該液晶ポリマーフィルムの融点より10℃低い温度以上且つ該融点を10℃越える温度以下で加熱し、加圧して、該液晶ポリマーフィルムを構成する液晶ポリマーを、該ガラス繊維シートを構成するガラス繊維間の空隙に含浸させ、次いで、冷却し、該液晶ポリマーを固化させることを特徴とする配線基板用基材の製造方法。
6.上記ガラス繊維シートがガラスクロスである上記5.に記載の配線基板用基材の製造方法。
7.上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の配線基板用基材と、該配線基板用基材の表面に形成された配線パターンとを備えることを特徴とする配線基板。
8.上記5.又は6.に記載の配線基板用基材と、該配線基板用基材の表面に形成された配線パターンとを備えることを特徴とする配線基板。
本発明の配線基板用基材は、液晶ポリマーフィルムのみからなる基材に比べて熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、機械的強度が大きくて取り扱い易い。それにより、多層配線基板とする場合の積層時の配線のずれ等がなく、位置合わせが容易であり、且つ実装後の電子部品との接続の信頼性が高くなる。
また、液晶ポリマーが平面方向にランダムに配向している場合は、熱膨張係数がより小さく、寸法安定性が更に向上する。
更に、平面方向の熱膨張係数が15ppm/℃以下である場合は、寸法安定性に優れ、多層配線基板とする場合の配線のずれ等がなく、位置合わせが容易であり、且つ搭載される電子部品との熱膨張係数の差がより小さくなり、電子部品を搭載した後の接続の信頼性が更に向上する。
また、平面方向において、搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下である場合も、多層配線基板とする場合の配線のずれ等がなく、位置合わせが容易であり、且つ実装後の電子部品との接続の信頼性が高くなる。
本発明の配線基板用基材の製造方法によれば、平面方向にランダムに配向している液晶ポリマーフィルムを、融点を所定温度下回る温度から所定温度越える温度までの温度範囲で加熱することにより、液晶ポリマーをガラス繊維シートを構成するガラス繊維間に含浸させることができる。それによって、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、多層配線基板とする場合の配線のずれ等がなく、位置合わせが容易であり、且つ電子部品を搭載した後の接続の信頼性が高い配線基板用基材とすることができる。
また、ガラス繊維シートがガラスクロスである場合は、より熱膨張係数が小さく、且つ寸法安定性に優れた基材を容易に製造することができる。
本発明の配線基板は、本発明の配線基板用基材、又は本発明の方法により製造された配線基板用基材を用いていたるため、多層配線基板とする場合の積層時の配線ずれ等がなく、位置合わせが容易であり、且つ電子部品を搭載した後の接続の信頼性に優れ、耐久性が高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)配線基板用基材
この配線基板用基材は、ガラス繊維シートを構成するガラス繊維間の空隙に液晶ポリマーが充填されてなるものである。ガラス繊維シートは、通常、平面方向において開繊されており、液晶ポリマーは、ガラス繊維間の他、ガラスフィラメント間の空隙に充填されていてもよい。
上記「ガラス繊維シート」は、多数のガラスフィラメントが収束されてなるガラス繊維により形成されたシートであり、ガラスクロス(織布)及びガラス不織布が挙げられる。このガラス繊維シートは、通常、液晶ポリマーが含浸され易いように開繊処理されている。また、液晶ポリマーが含浸され易いようにカップリング処理されたものが好ましい。更に、機械的強度及び寸法安定性等に優れるガラスクロスがより好ましく、カップリング処理されたガラスクロスが特に好ましい。
このガラス繊維シートを構成するガラスは特に限定されず、Si、Ca、Al及びNa、K等のアルカリ金属元素などを含有するものが挙げられる。また、B及びMg等を更に含有するホウケイ酸ガラスが好ましい。特に、配線基板の用途においては、紡糸が容易であり、耐水性、誘電特性等に優れるガラス繊維シートが得られるEガラス(組成は、SiOが52〜56質量%、CaOが16〜25質量%、Alが12〜16質量%、Bが5〜10質量%、MgOが0〜5質量%、NaO及び/又はKOが0〜1質量%である。)がより好ましい。
このガラス繊維シートの厚さは特に限定されず、20〜200μmであればよく、25〜150μm、特に30〜100μm、更には30〜50μmであることが好ましい。ガラス繊維シートの厚さが20〜200μmであれば、ガラス繊維間の空隙等への液晶ポリマーの充填が容易であり、十分な機械的強度を有し、取り扱い易い配線基板用基材とすることができる。
上記「液晶ポリマー」は、メソゲン基を有するポリマーである。このメソゲン基を主鎖に有するものでもよく、側鎖に有するものでもよいが、メソゲン基を主鎖に有する液晶ポリマーが好ましい。この液晶ポリマーは特に限定されず、芳香族又は脂肪族ジヒドロキシ化合物、芳香族又は脂肪族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族アミノカルボン酸等の単量体を重縮合させてなるものが挙げられる。この液晶ポリマーとしては共重合体が好ましい。
これらの単量体を重縮合させてなる液晶ポリマーとしては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン等の単量体を重縮合させてなる芳香族ポリアミド樹脂を用いることができる。更に、芳香族ジオール、芳香族カルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等の単量体を重縮合させてなる芳香族ポリエステル樹脂を用いることができる。これらのうちでは、特に全芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。また、この全芳香族ポリエステル樹脂としては、単量体として、パラヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸及びビフェノールを重縮合させてなる式(1)の液晶ポリマー、パラヒドロキシ安息香酸と2,6−ヒドロキシナフトエ酸とを重縮合させてなる式(2)の液晶ポリマー等が挙げられる。更に、全芳香族ポリエステル樹脂ではないが、単量体として、パラヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸及びエチレングリコールを重縮合させてなる式(3)の液晶ポリマーを用いることもできる。
Figure 2005109042
Figure 2005109042
Figure 2005109042
尚、式(1)乃至式(3)におけるx、y、zは、液晶ポリマーの分子量及び各々の単量体単位のモル比により定まる整数である。
本発明の配線基板用基材の平面方向における熱膨張係数は特に限定されないが、15ppm/℃以下、特に13ppm/℃以下、更には11ppm/℃以下であることが好ましい。配線基板用基材の熱膨張係数が15ppm/℃以下であれば、寸法変化を十分に小さくすることができる。この熱膨張係数が15ppm/℃を越えると、多層配線基板とする場合の積層時の寸法変化が大きくなる傾向にあり好ましくない。また、搭載される電子部品との接続の信頼性が低下することもある。
更に、この熱膨張係数が小さい配線基板用基材では、後記の実施例における条件により測定した平面方向の寸法変化率が0.8%以下であり、この寸法変化率は、0.6%以下、特に0.4%以下、更には0.2%以下(通常、0.05%以上)とすることができる。
また、この配線基板用基材では、平面方向において、搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下、特に8ppm/℃以下、更には6ppm/℃以下であることが好ましい。この搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下であれば、搭載される電子部品との接続の信頼性を向上させることができ好ましい。熱膨張係数の差が10ppm/℃を越えると、接続の信頼性が低下する傾向がある。
更に、充填されている液晶ポリマーが、配線基板用基材の平面方向にランダムに配向された形態で、ガラス繊維間の空隙等に充填されていることが好ましい。このように液晶ポリマーがランダムに配向して充填されておれば、熱膨張係数がより小さく、寸法安定性に優れる配線基板用基材とすることができる。また、多層配線基板とする場合の積層時の配線のずれ等がなく、位置合わせが容易であり、搭載される電子部品との接続の信頼性も向上する。尚、ランダムに配向とは、二軸配向しているという意味であり、分子鎖が配線基板用基材の平面方向においてランダムな方向に配向しており、配線基板用基材の厚さ方向には配向していないことを意味する。
液晶ポリマーのガラス繊維間の空隙等への充填量は特に限定されず、ガラス繊維シートの種類にもよるが、液晶ポリマーとガラス繊維シートとの合計を100質量%とした場合に、10〜50質量%、特に20〜40質量%であることが好ましい。液晶ポリマーの充填量が10〜50質量%であれば、ガラス繊維シート内の空隙のほとんどすべてに液晶ポリマーが充填され、均質であり、且つ機械的強度が大きい配線基板用基材とすることができる。
この配線基板用基材の厚さは特に限定されないが、通常、すべての液晶ポリマーがガラス繊維間の空隙等に充填されており、配線基板用基材の厚さはガラス繊維シートと略同じ厚さとなる。その厚さは、20〜200μmとすることができ、25〜150μm、特に30〜100μm、更には30〜50μmとすることが好ましい。尚、必ずしもすべての液晶ポリマーがガラス繊維間の空隙等に充填されていなくてもよく、一部が液晶ポリマーが充填されたガラス繊維シートの一面又は両面において層を形成していてもよい。但し、この層は、配線基板用基材の熱膨張係数が十分に小さくなる程度の厚さである必要がある。
(2)配線基板用基材の製造
本発明の配線基板用基材を製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明の方法により製造することができる。この製造方法によれば、ガラス繊維シートと、二軸延伸されて得られた液晶ポリマーフィルムとを積層し、これを液晶ポリマーフィルムの融点を所定温度下回る温度から所定温度越える温度までの温度範囲で加熱し、加圧して、液晶ポリマーをガラス繊維シートを構成するガラス繊維間の空隙に含浸させた後、冷却し、液晶ポリマーを固化させることにより配線基板用基材を得ることができる。ガラス繊維シートは、通常、平面方向において開繊されており、液晶ポリマーは、ガラス繊維間の他、ガラスフィラメント間の空隙に含浸されていてもよい。
液晶ポリマーフィルムは、このフィルムを液晶ポリマーのガラス転移点以上且つ融点以下の温度範囲で縦方向及び横方向に延伸し、即ち、二軸延伸して平面方向における縦横両方向に分子配向させることで、引張強さ等が大きく、且つ縦横の強度がバランスしたフィルムとすることができる。この二軸延伸された液晶ポリマーフィルムを用いることによって、より寸法安定性に優れ、機械的強度の大きい配線基板用基材とすることができる。
このガラス繊維シートとしては、前記のものを使用することができる。特に、厚さが20〜50μmと薄いガラス繊維シートが好ましい。このように薄いガラス繊維シートであれば、液晶ポリマーの配向が保持されたまま容易に含浸させることができる。また、上記「液晶ポリマーフィルム」としては、前記の液晶ポリマーからなるフィルムを二軸延伸することにより平面方向にランダムに配向させたフィルムを用いることができる。配向度は延伸条件等により調整することができ、配線基板用基材の所定の熱膨張係数及び寸法安定性等により、適宜選択して使用することができる。この液晶ポリマーフィルムの厚さは特に限定されず、10〜100μmであればよく、15〜50μm、特に20〜30μmであることが好ましい。また、液晶ポリマーフィルムの厚さは、ガラス繊維シートの厚さを勘案して設定することが好ましい。
液晶ポリマーのガラス繊維間の空隙等への含浸は、予め所定温度に加熱された液晶ポリマーフィルムと、ガラス繊維シートとを積層し、加圧して行うことができる。この際、積層前にガラス繊維シートを予め加熱しておけば、より容易に、且つ十分に含浸させることができる。このガラス繊維シートの予熱温度は特に限定されないが、このシートに接触した際に液晶ポリマーの配向が損なわれない温度範囲であることが好ましい。また、この含浸は、液晶ポリマーフィルムと、ガラス繊維シートとを積層し、この積層体を一体に加熱して行うこともできる。更に、液晶ポリマーフィルムは、ガラス繊維シートの一面のみに積層してもよいし、両面に積層してもよいが、ガラス繊維シートの全体に液晶ポリマーを容易に、且つ十分に含浸させるためには、両面に積層することが好ましい。
上記「加熱」は、液晶ポリマーの融点より10℃低い温度以上且つこの融点を10℃越える温度以下で行われる。また、液晶ポリマーの融点より7℃低い温度以上且つこの融点を7℃越える温度以下で行われることが好ましい。加熱温度が液晶ポリマーの融点より10℃低い温度以上且つこの融点を10℃越える温度以下であれば、液晶ポリマーをガラス繊維間に十分に含浸させることができ、且つ液晶ポリマーフィルムの配向を保持したまま含浸させることができ、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れた配線基板用基材とすることができる。この加熱温度が融点より10℃を越えて低い温度であると、液晶ポリマーフィルムが十分に軟化せず、液晶ポリマーをガラス繊維間の空隙等に含浸させることが容易ではない。一方、液晶ポリマーの融点より10℃を越えて高い温度であると、液晶ポリマーフィルムの配向が損なわれ、配線基板用基材の熱膨張係数が十分に小さくならず、寸法安定性が低下する。
この加熱は、液晶ポリマーの融点より1〜10℃低い温度範囲、特に融点より2〜8℃低い温度範囲、更には融点より3〜7℃低い温度範囲で行うことがより好ましい。このように液晶ポリマーの融点より少し低い特定の温度範囲で加熱することによって、液晶ポリマーフィルムの配向を十分に保持したまま、液晶ポリマーをガラス繊維間の空隙等に含浸させることができ、更に優れた寸法安定性を有する配線基板用基材とすることができる。
また、加熱時間は特に限定されないが、5〜90分、特に10〜70分、更には15〜50分とすることができる。
更に、上記「加圧」によって、液晶ポリマーをより容易に、且つ十分にガラス繊維シートに含浸させることができる。圧力は0.5〜10MPaとすることができ、1〜8MPa、特に1.5〜6MPa、更には2〜5MPaとすることが好ましい。圧力が0.5MPa未満であると、液晶ポリマーをガラス繊維シート全体に含浸させることが容易ではない。一方、10MPa以上の圧力で加圧した場合は、一旦は含浸された液晶ポリマーがガラス繊維シートから漏出することがある。また、得られる配線基板用基材が所定厚さより薄くなることもあり好ましくない。
加熱、加圧の雰囲気は特に限定されないが、この雰囲気は、非酸化雰囲気、例えば、10Torr以下の減圧雰囲気等であることが好ましい。
上記のようにしてガラス繊維間の空隙等に液晶ポリマーを含浸させた後、冷却し、液晶ポリマーを固化させる。このようにして、配向が保持された状態で、液晶ポリマー12がガラス繊維シート11を構成するガラス繊維間の空隙等に充填された、図1の配線基板用基材1を得ることができる。冷却は、放冷でもよく、積極的に冷却してもよい。更に、冷却後の温度は液晶ポリマーが固化している限り、特に限定されないが、通常、室温(例えば、20〜35℃)にまで降温させる。
この方法により製造された配線基板用基材は、その平面方向における熱膨張係数が、15ppm/℃以下、特に13ppm/℃以下、更には11ppm/℃以下である。また、後記の実施例における条件により測定した平面方向の寸法変化率が、0.8%以下、0.6%以下、特に0.4%以下、更には0.2%以下(通常、0.05%以上)である。更に、平面方向において、搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下、特に8ppm/℃以下、更には6ppm/℃以下である。このように優れた実用性能を有しているため、多層配線基板に用いた場合の積層時の寸法変化が小さく、且つ搭載される電子部品との接続の信頼性が高い。
本発明の配線基板用基材は、液晶ポリマーを溶剤に溶解してなるワニスを用いて製造することもできる。ワニスを用いる場合、ワニスにガラス繊維シートを浸漬して含侵させ、その後、加熱して溶剤を除去することにより、ガラス繊維シートに液晶ポリマーを充填させることができる。また、ワニスをガラス繊維シートに塗布し、必要に応じて加圧してワニスをシートの内部にまで含侵させ、次いで、加熱して溶剤を除去することにより、ガラス繊維シートに液晶ポリマーを充填させることもできる。尚、ワニスをガラス繊維シートに塗布する場合は、シートの両面に塗布することが好ましく、このようにすればガラス繊維シートの内部にまでワニスをより容易に含侵させることができる。
更に、前記の製造方法において用いられる液晶ポリマーフィルムとしては、通常、押出成形法により形成されたフイルムが使用されるが、このワニスを用いてキャスティング法により形成された液晶ポリマーフィルムを使用して前記と同様の方法により配線基板用基材を製造することもできる。このキャスティングフィルムの場合も、二軸延伸し、平面方向にランダムに配向させたフィルムを用いることが好ましく、これによってより優れた寸法安定性を有する配線基板用基材とすることができる。
(3)配線基板
本発明の配線基板は、本発明の配線基板用基材と、その表面に形成された配線パターンとを備えるものであれば特に限定されない。例えば、配線基板用基材の一面に銀、銅等からなる配線パターンが形成された配線基板が挙げられる。また、配線基板用基材の両面にそれぞれ配線パターンが形成されていてもよい。更に、図2のように、配線基板用基材21の両面にそれぞれ配線パターン22が形成され、且つ各々の配線パターンが、配線基板用基材に設けられたビアホールに形成されたビア導体23により接続されている配線基板2が挙げられる。
また、この配線基板としては、配線基板用基材をコア基材として使用し、その片面又は両面に配線基板をビルドアップして得られる多層配線基板が挙げられる。更に、配線基板用基材の一面に配線パターンが形成された複数の配線基板を積層し、これらを一括して接合して得られる多層配線基板が挙げられる。また、配線基板用基材31の両面に配線パターン32が形成された配線基板をコア基板とし、このコア基板の両面に、一面に配線パターン32が形成された複数の配線基板を積層し、これらを一括して接合して得られる多層配線基板3が挙げられる。これら一括接合の場合、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れる本発明の配線基板用基材では、配線のずれ等がなく、正確な位置合わせを容易に行うことができ、高品質の多層配線基板とすることができる。
このような一括接合により多層配線基板とする場合、コア基材と、このコア基材に積層される配線基板との間、及び各々の配線基板の間は、図3のように、コア基材及び配線基板のそれぞれを構成する液晶ポリマーを融解させ、熱融着により接合することができる。更に、図4のように、接着剤層35を介して接合することもできる。これらのうちでは、操作が簡略であり、コスト面でも有利な熱融着による接合が好ましい。
(4)配線基板の製造
本発明の配線基板、例えば、両面に配線パターンが形成された配線基板用基材をコア基板とし、このコア基板の両面に、一面に配線パターンが形成された複数の配線基板を積層し、一括接合して得られる多層配線基板は、以下のようにして製造することができる。
ガラス繊維シートに液晶ポリマーを充填させてなる配線基板用基材を作製し、この基材にビアホールを設け、ビア導体を形成する。その後、基材の両面に配線パターンを形成し、コア基板を作製する。次いで、このコア基板の両面に、一面に配線パターンが形成された複数の配線基板を接着剤層を介して順次積層し、その後、加熱し、圧着して多層配線基板を製造する。
ビアホールはドリル加工及びレーザ加工等によって穿設することができ、微細なビアホールの場合はレーザ加工により穿設することが好ましい。レーザ加工の場合は、レーザを照射する側の基材表面に保護フィルムを貼着し、汚れの付着を防止することが好ましい。更に、ビア導体は、ビアホールに導体用ペーストを充填して形成してもよいし、めっき法により形成してもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(1)配線基板用基材の製造
ガラスクロス(日東紡績社製、厚さ;30μm)の両面に、液晶ポリマーフィルム(ゴアテックス・ジャパン社製、商品名「BIAC」、融点;335℃、厚さ25μm)を積層し、融点より5℃低い温度、即ち、330℃で30分間加熱し、加圧して、液晶ポリマーフィルムをガラスクロス全体に含浸させ、その後、放冷し、室温(30℃)にまで降温させ、図1のような断面を有する配線基板用基材を製造した。圧力は4MPaとした。
また、液晶ポリマーフィルムを、クラレ社製、商品名「VECSTAR CT」、融点;315℃とし、加熱温度を310℃、即ち、融点より5℃低い温度とし、圧力を2MPaとした他は同様にして配線基板用基材を製造した。
(2)熱膨張係数及び寸法変化率の測定
(1)において製造した配線基板用基材の平面方向の25〜50℃の温度範囲における熱膨張係数を、熱機械分析装置により測定した。また、これらの配線基板用基材を10℃/分の昇降温速度で30℃から−55℃まで降温させ、その後、270℃まで昇温させ、次いで、30℃まで降温させ、これらの昇降温を連続して行った後の平面方向における寸法変化率を下記の式により算出した。結果を表1に記載する。尚、厚さ25μmの液晶ポリマーフィルムの熱膨張係数及び寸法変化率を同様にして測定した。結果を表1に併記する。
寸法変化率(%)=[(加熱前の寸法−加熱後の寸法)/加熱前の寸法]×100
Figure 2005109042
(3)実施例の評価
表1の結果によれば、液晶ポリマーフィルムの平面方向の熱膨張係数は、BIACでは17.3ppm/℃、VECSTAR CTでは18.0ppm/℃であった。一方、各々の液晶ポリマーフィルムをガラスクロスに含浸させた配線基板用基材では、BIACでは12.3ppm/℃、VECSTAR CTでは13.3ppm/℃であった。このように、液晶ポリマーフィルムをガラスクロスに含浸させたことにより、熱膨張係数が、液晶ポリマーフィルムのみの場合に比べて26〜29%も低下することが分かる。
尚、同じガラスクロスにエポキシ樹脂を充填させた基材の熱膨張係数は15〜16ppm/℃であり、これと比べて上記の実施例の配線基板用基材の熱膨張係数が小さいのは、液晶ポリマーの配向が保持されたまま充填されているためである。
また、液晶ポリマーフィルムの平面方向の寸法変化率は、BIACでは0.95%、VECSTAR CTでは2.41%であった。一方、各々の液晶ポリマーフィルムをガラスクロスに含浸させた配線基板用基材では、BIACでは0.11%、VECSTAR CTでは0.69%であった。このように、液晶ポリマーフィルムをガラスクロスに含浸させた配線基板用基材では、寸法変化率を、液晶ポリマーフィルムのみの場合に比べて71〜88%も低下させることができた。
本発明の配線基板用基材の断面を表す模式図である。 配線基板用基材の両面に形成された配線パターンがビア導体により接続されている配線基板の断面を表す模式図である。 配線基板用基材の一面に配線パターンが形成された複数の配線基板が積層され、融解した液晶ポリマーによる熱融着により接合されてなる多層配線基板の断面を表す模式図である。 配線基板用基材の一面に配線パターンが形成された複数の配線基板が積層され、接着剤層を介して接合されてなる多層配線基板の断面を表す模式図である。
符号の説明
1;配線基板用基材、11;ガラスクロス、12;液晶ポリマー、2;配線基板、3;多層配線基板、21、31;配線基板用基材、22、32;配線パターン、23、33;ビア導体、34;熱融着面、35;接着剤層。

Claims (8)

  1. ガラス繊維シートを構成するガラス繊維間 の空隙に液晶ポリマーが充填されていることを特徴とする配線基板用基材。
  2. 上記液晶ポリマーが平面方向にランダムに配向している請求項1に記載の配線基板用基材。
  3. 平面方向における熱膨張係数が15ppm/℃以下である請求項1又は2に記載の配線基板用基材。
  4. 平面方向において、搭載される電子部品との熱膨張係数の差が10ppm/℃以下である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の配線基板用基材。
  5. ガラス繊維シートと、二軸延伸されて得られた液晶ポリマーフィルムとを積層し、その後、該液晶ポリマーフィルムの融点より10℃低い温度以上且つ該融点を10℃越える温度以下で加熱し、加圧して、該液晶ポリマーフィルムを構成する液晶ポリマーを、該ガラス繊維シートを構成するガラス繊維間の空隙に含浸させ、次いで、冷却し、該液晶ポリマーを固化させることを特徴とする配線基板用基材の製造方法。
  6. 上記ガラス繊維シートがガラスクロスである請求項5に記載の配線基板用基材の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の配線基板用基材と、該配線基板用基材の表面に形成された配線パターンとを備えることを特徴とする配線基板。
  8. 請求項5又は6に記載の方法により製造された配線基板用基材と、該配線基板用基材の表面に形成された配線パターンとを備えることを特徴とする配線基板。
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