JP6929283B2 - 高周波用セラミックス基板および高周波用半導体素子収納パッケージ - Google Patents
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Description
また、このようなパッケージ内において高速信号を通すための外部接続端子の接続には、パッケージを構成するセラミックス基体の裏面側に形成されたコプレーナ線路と、その上に固着された金属製のリード端子を介して外部樹脂基板上に形成されたグランド付きコプレーナ線路に接続する方法が多く用いられている。
このような高周波用セラミックス基板では、セラミックスの誘電率が高いために、リード端子付近において高周波信号線の特性インピーダンスの低下が起こり、高周波信号の伝送特性の劣化が生じていた。
このため、リード端子付近における高周波信号の伝送特性の劣化を防止するために、リード端子接続付近の構造が極めて重要であった。
通常、セラミックス基体におけるグランド線及び差動信号線の接続構造は、GSSG構造と呼ばれており、セラミックス基体上に複数セットまとめて形成される場合もある。なお、本発明では特に断りが無い場合は、GSSG構造は2本で1組の信号線(一対の信号線)からなる差動信号線を1以上備えるものを包含する概念である。
特許文献1に開示される発明は、上面に素子を実装するための実装領域を有する基板と、基板上に実装領域を取り囲むように設けられた枠体と、枠体に設けられた、枠体の内側と枠体の外側とを電気的に接続する入出力端子とを備え、入出力端子は、枠体の内側から枠体の外側まで形成された、複数の配線導体と、枠体の外側に形成されたグランド層と、枠体外の複数の配線導体のそれぞれに接続されたリード端子と、グランド層に接続されたグランド端子とを有し、入出力端子は、前記リード端子と前記グランド端子との間に凹部が形成されていることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、リード端子付近近傍における高周波信号の伝送特性の劣化を防止できる。
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、セラミックス基板上にGSSG構造が複数組設けられる場合に、セラミックス基板上に接合されるリード端子同士の間、又は、グランド端子とリード端子の間にもれなく溝部を形成する必要がある。このようなGSSG構造を備えるセラミックス基板は、セラミックス基板の表面に形成される多数の溝部のせいで、セラミックス基板の強度が低下するおそれがあった。
特に、半導体素子を搭載する高周波用セラミックス基板においては、半導体素子からの発熱によりセラミックス基板が昇温・降温する。この場合、セラミックス基板が熱膨張した際に、セラミックス基板に形成される多数の溝部が基点となり、セラミックス基板にクラックが生じる又は割れるおそれがあった。
また、特許文献1の図6に開示される発明の場合は、リード端子同士の間にのみ溝部が形成されているので、上記のようなセラミックス基板強度低下の問題は生じ難いと考えられる。その一方で、特許文献1の図6に開示される発明では、高周波帯域における伝送特性の改善効果は、概ね40GHzまでであり(引用文献1中の図7を参照)、40〜50GHzの周波帯域では依然として伝送特性が悪いままであった。
また、上記目的に加えて、セラミックス基板にグランド線や、差動信号線を構成する信号線を所望間隔毎に配設する場合に、信号線の接合強度の低下が起こり難い高周波用セラミックス基板およびそれを用いてなる高周波用半導体素子収納パッケージを提供することにある。
上記構成の第1の発明において、セラミックス基板は、絶縁体及び誘電体として作用する。また、グランド線(G)は、外部樹脂基板のグランド端子への接続端子として作用する。さらに、一対の信号線(S)からなる差動信号線は、外部と第1の発明に係るセラミックス基板との間で高周波信号をやりとりするための入出力端子として作用する。
また、第1のリードパッド電極は、グランド線(G)とセラミックス基体の表面及び/又は内部に形成される導体配線とを電気的に接続させるという作用を有する。さらに、第2のリードパッド電極は、信号線(S)とセラミックス基体の表面及び/又は内部に形成される導体配線とを電気的に接続させるという作用を有する。なお、第1の発明において、一対の信号線(S)により1の差動信号線は構成されている。
そして、第1のリードパッド電極の第1の側縁と第2のリードパッド電極の第2の側縁とが平行になる領域を形成し、かつ、第2のリードパッド電極間に座刳り部を形成し、さらに、第1の側縁と第2の側縁との間隔LGSと第2の側縁間の間隔LSSの関係がLSS<2LGSを満たすように構成することで、第1の側縁と第2の側縁との間に座刳り部を形成することなしに、第2のリードパッド電極周りの特性インピーダンスを所望の値に近似させるという作用を有する。これにより、第1の発明における高周波信号の伝送特性が改善されて、40GHzを超える高周波信号の伝送が可能になる。
また、第1の発明では、第1のリードパッド電極と第2のリードパッド電極の間に座刳り部を有しないので、セラミックス基板の強度の低下が抑制される。
上記構成の第2の発明は、上記第1の発明による作用と同じ作用に加えて、第2のリードパッド電極の幅Wと、座刳り部の深さDとの関係をD<1.5Wとすることで、セラミックス基体への座刳り部容積を最少量にしながら、第2のリードパッド電極周りの特性インピーダンスを好適に調整して、40GHzを超える高周波信号の伝送特性を改善するという作用を有する。
そして、第2の発明においてセラミックス基体への座刳り容積を最少にすることは、セラミックス基板の強度低下の原因となる切欠き量が少なくなることを意味する。よって、第2の発明は、セラミックス基板の強度を一層向上するという作用を有する。
上記構成の第3の発明は、上記第1又は第2の発明による作用と同じ作用に加えて、グランド線(G)及び信号線(S)がともにセラミックス基板の縁端近傍に曲がり部を備える場合に、第2のリードパッド電極に接合される側の端部側に配される座刳り部の幅X1と、セラミックス基板の縁端における座刳り部の幅X2とが0.1X1<X2<X1を満たすことで、セラミックス基板の縁端近傍における座刳り容積が小さくなる。これにより、信号線(S)のセラミックス基板の縁端近傍に形成される曲がり部周りの特性インピーダンスを好適に調整するという作用を有する。この結果、信号線(S)の曲がり部周りの高周波信号の伝送特性が改善される。
また、第3の発明によれば、セラミックス基板の縁端近傍における座刳り容積を少なくできるので、セラミックス基板の縁端近傍における強度の低下が抑制される。
上記構成の第4の発明は、上記第1又は第2の発明による作用と同じ作用に加えて、グランド線(G)及び信号線(S)がともにセラミックス基板の縁端近傍に曲がり部を備える場合に、セラミックス基板の縁端が座刳り部を備えないことで、信号線(S)のセラミックス基板の縁端近傍に形成される曲がり部周りの特性インピーダンスを好適に調整するという作用を有する。これにより、信号線(S)の曲がり部周りの高周波信号の伝送特性が改善される。
また、第4の発明によれば、セラミックス基板の縁端近傍における座刳り容積を少なくできるので、セラミックス基板の縁端近傍における強度の低下が抑制される。
上記構成の第5の発明は、上記第1乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用に加えて、セラミックス基板を平面視した際に、信号線(S)の第2のリードパッド電極に接合される領域が、第1の側縁が配される側の側縁に、信号線(S)を伸長方向に沿って切欠いて形成される切欠き部を有することで、信号線(S)が切り欠かれた領域に、例えば、金属ろう材等の接合材からなるメニスカス領域を形成させるという作用を有する。
セラミックス基板の裏面に、第2のリードパッド電極を、第1の側縁と第2の側縁との間隔LGSと第2の側縁間の間隔LSSの関係がLSS<2LGSを満たすように形成し、かつ、グランド線(G)及び信号線(S)を、例えば、等間隔毎に配置する場合は、信号線(S)の第1の側縁が配される側の側縁に、金属ろう材等の接合材からなるメニスカスを形成するための領域を十分に確保することができない。
このため、第5の発明では、第2のリードパッド電極に接合される信号線(S)の、第1のリードパッド電極5の第1の側縁が配される側の側縁に切欠き部を形成することで、この切欠き部が形成された領域を、メニスカスを形成するための領域として利用することができる。
よって、第5の発明によれば、信号線(S)が切欠き部を有することで、接合のためのメニスカス領域を相対的に増やすことができ、第2のリードパッド電極と信号線(S)との接合強度を高めるという作用を有する。
上記構成の第6の発明において、高周波用半導体素子収納パッケージは、上記第1乃至第5のそれぞれの発明と同じ作用を有する。
また、第6の発明において、半導体素子搭載用パッドは、半導体素子を搭載した際にセラミックス基板と半導体素子とを電気的に接続するという作用を有する。さらに枠体は、セラミックス基板上に搭載された半導体素子を密封するための蓋体を支持するという作用を有する。
他方、上述のような第1の発明では、間隔LSSが間隔LGSの2倍よりも小さくなることで、第2のリードパッド電極同士間の電界結合が強くなってしまうが、第1の発明では、第2のリードパッド電極間に座刳り部を形成することで、第2のリードパッド電極同士間の電界結合を弱めることができる。
つまり、第1の発明では、間隔LSSが間隔LGSの2倍よりも小さくなることによる電界結合の増加分を、座刳り部7aを形成して第2のリードパッド電極6同士間に空気からなる空間を介設することにより相殺している。
上述のように、第1の発明では、第2のリードパッド電極における特性インピーダンスの低下を好適に抑制することができるので、第2のリードパッド電極における高周波信号の反射を低減することができる。
このような第1の発明によれば、第1のリードパッド電極と第2のリードパッド電極の間に座刳り部を形成することなしに第2のリードパッド電極周りの特性インピーダンスを好適に調整することができる。この結果、第1の発明では、40GHzを超える高周波信号も少ない反射損失で伝送することができる。
しかも、第1の発明では、第1のリードパッド電極と第2のリードパッド電極の間に座刳り部を有しないので、セラミックス基板に複数組みのGSSG構造を形成する場合に、セラミックス基板の縁端近傍の強度の低下を抑制することができる。
この結果、第1の発明よりもより信頼性の高い高周波用セラミックス基板を製造して提供することができる。
この結果、グランド線(G)及び信号線(S)が曲がり部を有する場合でも、40GHzを超える高周波信号を支障なく伝送することができる。
しかも、第3,第4の発明によれば、第1,第2の発明に比べて、セラミックス基板の縁端近傍又は縁端部の強度の低下を一層抑制することができる。
通常、間隔LSGや間隔LSSは、第2のリードパッド電極における特性インピーダンスが、所望の値になるように配慮しながら設定又は設計されるものである。この場合、間隔LSSを間隔LSGの2倍よりも小さくする場合に、それぞれの第2のリードパッド電極上に接合される信号線(S)同士の間隔についても支障なく狭められるというわけではない。
つまり、第2のリードパッド電極の寸法(幅及び厚み)、信号線(S)(差動信号線)の寸法(幅及び厚み)は、それぞれ独立して設定又は設計されるものであるため、第2のリードパッド電極上において信号線(S)の接合強度が最大になる位置に常に信号線(S)を接合できるわけではない。
このため、本発明のように間隔LSSを間隔LGSの2倍よりも小さく設定する場合は、第2のリードパッド電極上における信号線(S)の配置の関係で、信号線(S)の接合強度が十分に発揮されない場合がある。
また、第2のリードパッド電極上に、接合材である金属ろう材を介して信号線(S)を接合する場合は、信号線(S)の側縁に液化した金属ろう材からなるメニスカスを形成して、このメニスカスにより第2のリードパッド電極上に信号線(S)を一体化して固定している。さらに、第2のリードパッド電極上において熱せられて液化した金属ろう材は、第2のリードパッド電極の表面上にのみ濡れ広がるという性質を有している。
そして、本発明のように間隔LSSを間隔LGSの2倍よりも小さく設定する場合は、第2のリードパッド電極の側縁位置と、信号線(S)の側縁位置とが近接する又は重なってしまう場合がある。この場合、第2のリードパッド電極上に金属ろう材を介して信号線(S)を接合する際に、第2のリードパッド電極の側縁位置と、信号線(S)の側縁位置とが近接又は重なる領域では、金属ろう材からなるメニスカスをしっかりと形成することができず、結果として、第2のリードパッド電極に対する信号線(S)の接合強度が著しく低下してしまうケースがあった。
これに対して、第5の発明では、第2のリードパッド電極における信号線(S)の接合強度の低下が起きないような第2のリードパッド電極の幅Wを確保しつつ、第2のリードパッド電極と信号線(S)の接合に不可欠な金属ろう材のメニスカス領域を確保することができる。この結果、第2のリードパッド電極上における信号線(S)の接合強度の低下を防止しながら、第2のリードパッド電極周りの高周波信号の伝送特性を改善することができる。
従って、第5の発明によれば、高周波数帯域における良好な伝送特性を有し、セラミックス基板が破損し難く、しかも、信号線(S)と第2のリードパッド電極の接合強度が高い高周波用セラミックス基板を製造して提供することができる。
よって、第1,第2の発明を用いてなる第6の発明によれば、40GHzを超える高周波信号を好適に伝送でき、セラミックス基板が破損し難い信頼性の高い高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
また、第3,第4の発明を用いてなる第6の発明によれば、第1,第2の発明を用いてなる第6の発明に比べて、セラミックス基板を一層破損し難くすることができる。これにより、より信頼性の高い高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
さらに、第5の発明を用いてなる第6の発明によれば、第1乃至第4の発明を用いてなる第6の発明に比べて、信号線(S)と第2のリードパッド電極の接合強度の低下を防止できる。これにより、より信頼性の高い高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
図1(a)は本発明の実施例1に係る高周波用セラミックス基板とそれを用いてなる高周波用半導体素子収納パッケージの概念図であり、(b)はその使用状態を示す側面図である。また、図2(a)は本発明の実施例1に係る高周波用セラミックス基板を裏面側から見た平面図であり、(b)は本発明の実施例1に係る高周波用セラミックス基板の断面図である。さらに、図3(a)は本発明の実施例1に係る高周波用セラミックス基板のGSSG構造の部分斜視図であり、(b)は同GSSG構造の部分平面図である。
はじめに、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aについて説明する。
実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aは、図1(a)、図2(a),(b)に示すように、平板状のセラミックス基板2と、このセラミックス基板2の裏面側の縁端2a近傍に接合される一対のグランド線(G)3と、このセラミックス基板2の裏面側で一対のグランド線(G)3の接合位置に被着される一対の第1のリードパッド電極5と、セラミックス基板2において一対のグランド線(G)3の間に接合される少なくとも一対の信号線(S)4と、それぞれの信号線(S)4の接合位置に個別に被着される第2のリードパッド電極6と、この第2のリードパッド電極6間に形成される溝状の座刳り部7aとにより構成されるものである。なお、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、一対の信号線(S)4により1の差動信号線18が構成されている。
さらに、図2(a),図3(a),(b)に示すように、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aの第2のリードパッド電極6は、一対の第1のリードパッド電極5間に被着され、さらに、それぞれの第1のリードパッド電極5の第1の側縁5aと、第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aは、平行な部位を有している。加えて、信号線(S)4同士の間に形成される座刳り部7aは、第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aに沿って形成されている。
そして、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、図3(a),(b)に示すように、第1のリードパッド電極5の第1の側縁5aと第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aとの間隔LGSと、複数の第2のリードパッド電極6において並設される第2の側縁6a間の間隔LSSとが、LSS<2LGSを満たしている。
他方、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、第2のリードパッド電極6同士を近づけることで、間隔LSSと間隔LGSとがLSS<2LGSを満たすように第2のリードパッド電極6を配置している。つまり、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、間隔LGSが間隔LSSの1/2よりも広くなるよう構成されている。このように、間隔LGSを広くすることで第2のリードパッド電極6と第1のリードパッド電極5との間の電界結合を弱めることができる。
その一方で、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、間隔LSSが狭くなることで、第2のリードパッド電極6同士間の電界結合が強くなるが、第2のリードパッド電極6間に座刳り部7aを備えることで、間隔LSSを間隔LGSの2倍よりも小さくする場合でも、第2のリードパッド電極6同士間の電界結合を弱めることができる。
これにより、第2のリードパッド電極6における特性インピーダンスの低下を好適に抑制して、第2のリードパッド電極6における高周波信号の反射を低減することができる。
また、図1(a)及び図2(b)に示されるように、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、GSSG構造[なお、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは信号線(S)を一対以上有する場合(差動信号線を1以上有する場合)も含む]を複数組み備える場合があり、全てのGSSG構造における、第2のリードパッド電極6同士間と、第1のリードパッド電極5と第2のリードパッド電極6の間の全て、に座刳り部7aを形成することは、セラミックス基板2の縁端2a及びその近傍における欠損量が大きくなることを意味する。このようなセラミックス基板2の欠損量の増大は、セラミックス基板2の強度を低下させる原因になる。従って、第2のリードパッド電極6間に形成する座刳り部7aに加えて、第2のリードパッド電極6と第1のリードパッド電極5の間にも座刳り部を形成することで、セラミックス基板2における高周波数帯域の伝送特性を改善することができたとしても、その代償としてセラミックス基板2の強度の低下が起こり、信頼性の高い高周波用セラミックス基板を製造することが困難になる。
これに対して、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aでは、第1のリードパッド電極5と第2のリードパッド電極6の間に座刳り部7aを有しないので、セラミックス基板2の強度の低下が起こりにくい。
第1のリードパッド電極5は、例えば、セラミックス基板2の裏面に配される1組又は複数組みのGSSG構造において、個々のグランド線(G)3を接合するための第1のリードパッド電極5を一体に連結してなる不定形な平面形状を有するものであってもよい。
この場合、第2のリードパッド電極6は、セラミックス基板2の裏面側の縁端2a近傍において、第1のリードパッド電極5の一部を切り欠いて形成した領域に個別に形成されることになる[例えば、後段に示す図11(a)を参照]。
そして、上述のような第1のリードパッド電極5及び第2のリードパッド電極6を備える場合も、図1乃至図3に示される高周波用セラミックス基板1Aと同じ効果が発揮される。
図4(a)は本発明の実施例1に係る高周波用セラミックス基板のGSSG構造の部分平面図であり、(b)は同GSSG構造の部分断面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、図4(a)と図3(b)は同じ図である。
図4に示すように、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aにおいて、セラミックス基板2の信号線(S)4同士間に形成される座刳り部7aの深さDは、0.1W<D<1.5Wの範囲内に設定してもよい。
上述のように座刳り部7aの深さを特定することで、セラミックス基板2の裏面におけるセラミックスの欠損量を最少にしながら、40GHzを超える高周波信号の伝送特性を改善するという効果を発揮させることができる。
また、特に図示しないが、セラミックス基板2の裏面に被着される第1のリードパッド電極5と、セラミックス基板2の主面側に被着され、図示しない半導体素子を搭載するための半導体素子搭載用パッド12(後段において詳細に説明する)とは、セラミックス基板2の内部に配される導体金属からなる配線パターンを介して電気的に接続されている。
また、実施例1に係るセラミックス基板2において絶縁体としてのセラミックス基体としては、アルミナセラミックス、アルミナ−ジルコニアセラミックス、ガラスセラミックス等の従来公知のセラミックスを用いることができる。
また、上述のようなセラミックス基体の間に介設される、又は、単層又は多層のセラミックス基体の表面上に被着される、導体金属は、単層のセラミック基体又はセラミックス積層体の焼成温度に応じて、モリブデン、タングステン、銅、銀などを適宜選択すればよい。
さらに、グランド線(G)3や信号線(S)4をなすリード線は、導電性を有する金属であればどのようなものでも使用可能であるが、本発明では、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金を用いている。
実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、上述の実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aを用いてなるものである。より具体的には、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aと、その主面側[グランド線(G)3や信号線(S)4が接合される面とは反対側の面]に被着される半導体素子搭載用パッド12と、この半導体素子搭載用パッド12を囲うように配され、セラミックス基板2の主面に一体に接合される枠体9とを有してなるものである。
このような、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、セラミックス基板2の半導体素子搭載用パッド12に半導体素子を搭載し、枠体9の開口部9aを図示しない金属製の蓋体で封止した状態で用いられる。
なお、枠体9は、セラミックス基板2を構成するものと同じセラミックス基体により構成しても良い。より具体的には、セラミックス基体の焼成前のシート体の積層体を、例えば、打ち抜き成形するなどして中空部を形成したものを、焼成前のセラミックス基板2に一体的に付加することにより形成してもよい。
実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、図1(b)に示すように、合成樹脂製の母基板14の主面に被着される接合用パッド15上に、セラミックス基板2の裏面に接合されるグランド線(G)3及び信号線(S)4のセラミックス基板2に接合されない側の端部が導電性を有する接合材を介して接合される。
そして、母基板14に被着される接合用パッド15を介して実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13の信号線(S)4には高周波数帯域の電気信号が伝送され、グランド線(G)3は母基板14のグランド端子(接合用パッド15)に接続される(図1を参照)。
[1]第1のリードパッド電極17
実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、図1(b)、図2(a)に示すように、セラミックス基板2の裏面側に、グランド線(G)3を接合する第1のリードパッド電極5と別体に設けられ、かつ、セラミックス基板2の内部に配設される導体金属からなる配線パターンを(図示せず)を介して第1のリードパッド電極5に電気的に接続される第1のリードパッド電極17を、選択的必須構成要素として備えていてもよい。
実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13が、グランド線(G)3を接合するための第1のリードパッド電極5とは別に第1のリードパッド電極17を備えていることで、この第1のリードパッド電極17が、セラミックス基板2内を流れる高周波信号が外部に漏れる、あるいは、セラミックス基板2内を流れる高周波信号に外部からノイズが侵入するのを抑えるためのシールド層として作用する。
例えば、第2のリードパッド電極6の平面方向における三方を(周囲を)、第2のリードパッド電極6の左右に対をなして配される第1のリードパッド電極5,5と第1のリードパッド電極17[図2(a)を参照]とからなるグランド層により囲むことで、第2のリードパッド電極6に流れる高周波信号が、外部に漏れるのを抑制するとともに、第2のリードパッド電極6に流れる高周波信号に、外部からノイズが侵入するのを防止するという効果が発揮される。
さらに、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13は、図1(b)、図2(a)に示すように、第1のリードパッド電極17上に、図示しない接合材を介して接合されるヒートシンク板8を、選択的必須構成要素として備えていてもよい。
そして、上述の第1のリードパッド電極17を併せて備えている場合、この第1のリードパッド電極17は上述のような効果に加えて、ヒートシンク板8の接合用パッドとして用いることができる。
そして、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13がヒートシンク板8を備えている場合は、半導体素子搭載用パッド12に接合される半導体素子から発せられる熱を効率良く外部に逃がして、セラミックス基板2の温度上昇を緩和することができる。
この結果、セラミックス基板2が昇温により膨張した際に、セラミックス基板2にクラックが生じる又は割れるのを好適に抑制することができる。
加えて、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13の基本形態は、枠体9の開口部9aに、金属リング10を選択的必須構成要素として備えていてもよい。
なお、この金属リング10は、特に図示しないが、例えば、枠体9の最上面上に第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6と同じ導体金属からなる接合用パッドを被着しておき、この接合用パッド上に金属ろう材等の接合材を介して接合してもよい。
このような金属リング10を備える高周波用半導体素子収納パッケージ13によれば、枠体9の開口部9aに金属製の蓋体(図示せず)をシーム溶接により接合することができる。この場合、枠体9内の気密性が高まるので、より信頼性の高い高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
なお、金属リング10の材質としては、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金を用いることができる。
さらに、図示しないが、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13の基本形態は、高周波用半導体素子収納パッケージ13を母基板14に対してネジ止め可能にするためのネジ固定構造(ネジ挿通部材)を選択的必須構成要素として備えていてもよい。
このネジ固定構造は、特に図示しないが、例えば、セラミックス基板2においてグランド線(G)3や信号線(S)4が接合されない側の側縁に一体に又は別体として延設される平板材(又は折り曲げ板体)からなり、ネジを挿通させるためのネジ挿通孔を備えるものである。
また、このようなネジ固定構造は、セラミックス基板2の左右に少なくとも1対設けておけばよい。もちろん、このようなネジ固定構造が、セラミックス基板2の左右に2対以上設けられていてもよい。さらに、ネジ固定構造を構成する平板材の材質としては、金属やセラミックスを用いることができる。
そして、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13の基本形態が、上述のようなネジ固定構造を備えていることで、高周波用半導体素子収納パッケージ13を母基板14に取付ける際の信頼性を大幅に向上させることができる。
なお、選択的必須構成要素であるヒートシンク板8については、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13が、第1のリードパッド電極17を備える場合にのみ実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aの基本形態に付加することができる。
図5は本発明の実施例2に係る高周波用セラミックス基板のGSSG構造の部分平面図である。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先の図1(a)に示すように、実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aにおいてグランド線(G)3及び信号線(S)4が、セラミックス基板2の縁端2a近傍に曲がり部16を備えている場合、この曲がり部16は母基板14に実装されないで、空気に囲まれた状態になる。このような信号線(S)4の未実装領域(曲がり部16)では、特性インピーダンスが局所的に所望の値よりも大きくなり、特に35〜50GHzの周波数帯域の伝送特性が劣化する傾向が認められる。
このような事情に鑑み、実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bは、上述の実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aの基本形態に以下に示すような技術内容を付加したものである。
実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bでは、図5に示すように、信号線(S)4同士の間に形成される座刳り部7bの幅を、第2のリードパッド電極6に接合される信号線(S)4の端部4b側の幅X1が、セラミックス基板2の縁端2a上に形成される座刳り部7bの幅X2よりも大きくなるように設定されている。
より具体的には、実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bでは、座刳り部7bの幅X1,X2のそれぞれが、0.1X1<X2<X1を満たしている。
この結果、実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bによれば、グランド線(G)3及び信号線(S)4がセラミックス基板2の縁端2a近傍に曲がり部16を備える場合でも、40GHzを超える高周波信号の伝送特性を良好にすることができる。
このような実施例2に係る高周波用半導体素子収納パッケージによれば、実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bによる効果と、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13による効果を同時に発揮させることができる。
なお、ヒートシンク板8については、実施例2に係る高周波用半導体素子収納パッケージが、第1のリードパッド電極17を備える場合にのみ選択的必須構成要素として付加することができる。
このように実施例2に係る高周波用半導体素子収納パッケージの基本形態に選択的必須構成要素が付加される場合は、実施例2に係る高周波用半導体素子収納パッケージによる効果に加えて、それぞれの選択的必須構成要素を備えることによる効果が単独で、又は、組み合わされて発揮される。
図6は本発明の実施例3に係る高周波用セラミックス基板のGSSG構造の部分平面図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cは、上述の実施例2に係る高周波用セラミックス基板1Bと同じ目的を有し、同じ効果を発揮するものであるが、その構成が異なっている。
実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cは、上述の実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aの基本形態に以下に示す技術内容を付加してなるものである。
図6に示すように、実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cは、セラミックス基板2の縁端2aと重なる位置に座刳り部7cを有しないことを特徴とするものである。
より具体的には、実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cは、セラミックス基板2の縁端2aから座刳り部7cまでの距離Yを、0.01mm<Y<0.5mmの範囲内に設定したものである。
この結果、実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cによれば、グランド線(G)3及び信号線(S)4がセラミックス基板2の縁端2a近傍に曲がり部16を備える場合でも、40GHzを超える高周波信号の伝送特性を良好にすることができる。
このような実施例3に係る高周波用半導体素子収納パッケージによれば、実施例3に係る高周波用セラミックス基板1Cによる効果と、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13による効果を同時に発揮させることができる。
なお、ヒートシンク板8については、実施例3に係る高周波用半導体素子収納パッケージが、第1のリードパッド電極17を備える場合にのみ選択的必須構成要素として付加することができる。
このように実施例3に係る高周波用半導体素子収納パッケージの基本形態に選択的必須構成要素が付加される場合は、実施例3に係る高周波用半導体素子収納パッケージによる効果に加えて、それぞれの選択的必須構成要素を備えることによる効果が単独で、又は、組み合わされて発揮される。
これに対して、実施例1乃至実施例3に係る高周波用セラミックス基板1A〜1Cでは、先の図2乃至図6に示すように、間隔LSSと間隔LGSとは同じでなく、第1のリードパッド電極5と第2のリードパッド電極6は、等間隔で配置されていない。
このため、実施例1乃至実施例3に係る高周波用セラミックス基板1A〜1Cでは、第1のリードパッド電極5及び第2のリードパッド電極6上に、グランド線(G)3及び信号線(S)4となるリード線を等間隔で配置すると、先の図2乃至図6に示すように、信号線(S)4の側縁と第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aとが近接した又は重なった状態になる。
この時、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6上で溶融した金属ろう材11がメニスカス11aを形成することで、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6上にグランド線(G)3や信号線(S)4が一体に接合される。
この場合、第2のリードパッド電極6の幅が、信号線(S)4の幅に対して十分に大きければ、金属ろう材11を介してこれらを接合する際に信号線(S)4の第1の側縁5a側に配される側縁にも十分なメニスカス11aを形成することができるので、信号線(S)4と第2のリードパッド電極6の接合強度の低下が起きるといった問題が生じることはない。また、先にも述べたようにセラミックス基板2において第2のリードパッド電極6周りの特性インピーダンスを調整するためには、第2のリードパッド電極6の幅Wを狭めることが有効である。
そして、第2のリードパッド電極6の幅Wを狭めつつ、第1のリードパッド電極5及び第2のリードパッド電極6上に、グランド線(G)3や信号線(S)4を等間隔毎に配置すると、信号線(S)4の第1の側縁5a側に配される側縁と、第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aとが接近した、又は、重なった状態になってしまう。
この場合、信号線(S)4の第1の側縁5a側に配される側縁と第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aとの間に、金属ろう材11からなる十分なメニスカス11aを形成することができず、信号線(S)4と第2のリードパッド電極6の接合強度が著しく低下する恐れがあった。
ここで図7を参照しながら実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dの基本形態について説明する。
図7(a)は本発明の実施例4に係る高周波用セラミックス基板のGSSG構造の部分斜視図であり、(b)は同GSSG構造の部分平面図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dにおいてセラミックス基板2に形成されるGSSG構造は、一対のグランド線(G)3の間に一対の信号線(S)4が並設されてなるGSSG構造である。
図7に示すように、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dは、先の実施例1に係る高周波用セラミックス基板1Aの基本形態と同じ構成を備え、かつ、セラミックス基板2を平面視した場合に、第2のリードパッド電極6に接合される領域の信号線(S)4が、第1の側縁5aに沿って切欠き部4aを備えていることを特徴とするものである。
この結果、信号線(S)4と第2のリードパッド電極6との接合強度を高めることができる。
従って、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dによれば、セラミックス基板2上にグランド線(G)3及び信号線(S)4を等間隔毎に接合する場合に、実施例1乃至実施例3に係る高周波用セラミックス基板1A〜1Cよりもより信頼性の高い高周波用セラミックス基板を製造して提供することができる。
なお、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dでは、切欠き部4aを有する信号線(S)4の幅があまりにも小さいと、信号線(S)4自体が断線する恐れがある。よって、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dでは、切欠き部4aが形成された後の信号線(S)4の幅が少なくとも0.1mm以上になるようにする必要がある。
この点についてより詳しく説明すると、第2のリードパッド電極6に接合される信号線(S)4の幅が十分に大きければ、第2のリードパッド電極6の幅Wとその上に接合される信号線(S)4の幅が同じであっても、信号線(S)4と第2のリードパッド電極6の間に金属ろう材11を介設して接合すれば十分な接合強度を発揮させることができる。
しかしながら、本発明のように第2のリードパッド電極6上に接合される信号線(S)4の幅が極度に狭い場合は、上記のような方法では十分な接合強度を発揮させることができない。このため、第2のリードパッド電極6に接合される信号線(S)4の両側縁にメニスカス11aを形成して、信号線(S)4の接合性を補う必要がある。
このため、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dでは、第2のリードパッド電極6に接合される信号線(S)4の側縁又は周縁に十分なメニスカス11aを形成する領域を確保すべく、第2のリードパッド電極6の幅を、下記のように設定するのが望ましい。第2のリードパッド電極6上に信号線(S)4を載置した際に、この信号線(S)の左右両側縁のそれぞれに、少なくとも0.1mmの幅を有するメニスカス11aを形成できるように、第2のリードパッド電極6の幅(W)を設定するのが望ましい。つまり、第2のリードパッド電極6の幅(W)は、信号線(S)4を平面視した際の幅(mm)に、0.2mmを加えた数値以上となるようにするのが望ましい。
よって、実施例4に係る高周波用半導体素子収納パッケージによれば、実施例4に係る高周波用セラミックス基板1Dによる効果と、実施例1に係る高周波用半導体素子収納パッケージ13による効果を同時に発揮せることができる。
なお、ヒートシンク板8については、実施例4に係る高周波用半導体素子収納パッケージが、第1のリードパッド電極17を備える場合にのみ選択的必須構成要素として付加することができる。
このように実施例4に係る高周波用半導体素子収納パッケージの基本形態に選択的必須構成要素が付加される場合は、実施例4に係る高周波用半導体素子収納パッケージによる効果に加えて、それぞれの選択的必須構成要素を備えることによる効果が単独で、又は、組み合わされて発揮される。
なお、この度のシミュレーション1〜4では、一対のグランド線(G)3を接合するための第1のリードパッド電極5を一体に形成し、セラミックス基板2の縁端2a近傍における第1のリードパッド電極5の一部を切り欠いて形成される領域に、一対の信号線(S)4を接合するための一対の第2のリードパッド電極6を被着する場合を想定して行った。また、各シミュレーションの条件を一定にするために、グランド線(G)3及び信号線(S)4を一定のピッチPで配置した。
なお、この度のシミュレーション1〜4では、セラミックス基板2(誘電体基板)の材質をアルミナに特定しているが、セラミックス基板2の材質は、ガラスセラミックスや窒化アルミニウム等の他のセラミックス材料でもよく、その場合は、GSSG構造の各部位の寸法を、使用するセラミックス基板2の比誘電率に応じて適宜変更する必要がある。
その一方で、例えば、セラミックス基板2上にグランド線(G)3や信号線(S)4等のリード線を0.8mmピッチで配置する場合、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6の幅が0.3mmよりも大きくなると、第1のリードパッド電極5と第2のリードパッド電極6の間の電界結合が強くなって、この部分の特性インピーダンスの低下が起こり、35〜50GHzの高周波信号の伝送特性が劣化する傾向が現れる。
図8(a)はシミュレーション1のために設定したGSSG構造1の概念図であり、(b)はこのGSSG構造1の信号線(S)(差動信号線)における特性インピーダンス(Ω)のシミュレーション結果を示すグラフであり、(c)は同GSSG構造1の信号線(S)(差動信号線)における反射Sdd11(dB)のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、図8(a)に示すようなシミュレーション1に係るGSSG構造1では、セラミックス基板2、グランド線(G)3、信号線(S)4、第1のリードパッド電極5、第2のリードパッド電極6の材質を下表1のように設定した。さらに、図8(a)に示すようなシミュレーション1に係るGSSG構造1では、間隔LGS、間隔LSS、ピッチP、第2のリードパッド電極6の幅W、グランド線(G)3及び信号線(S)4を構成するリード線の幅をそれぞれ下表1のように設定した。
なお、図8(a)では、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6にグランド線(G)3や信号線(S)4を接合する金属ろう材11及びそれからなるメニスカス11aの表示については省略している。
このようなGSSG構造2及びこのGSSG構造2を用いたシミュレーション2の結果について図9を参照しながら説明する。
図9(a)はシミュレーション2のために設定したGSSG構造2の概念図であり、(b)はこのGSSG構造2の信号線(S)(差動信号線)における特性インピーダンス(Ω)のシミュレーション結果を示すグラフであり、(c)は同GSSG構造2の信号線(S)(差動信号線)における反射Sdd11(dB)のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図1乃至図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、図9(a)に示すようなシミュレーション2に係るGSSG構造2では、セラミックス基板2、グランド線(G)3、信号線(S)4、第1のリードパッド電極5、第2のリードパッド電極6の材質を下表2のように設定した。さらに、図9(a)に示すようなシミュレーション2に係るGSSG構造2では、間隔LGS、間隔LSS、ピッチP、第2のリードパッド電極6の幅W、グランド線(G)3及び信号線(S)4を構成するリード線の幅をそれぞれ下表2のように設定した。
なお、図9(a)においても、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6にグランド線(G)3や信号線(S)4を接合する金属ろう材11及びそれからなるメニスカス11aの表示については省略している。
その一方で、GSSG構造2では、リードパッド電極6の幅Wが狭くなったことで、第2のリードパッド電極6に対する信号線(S)4の接合強度の低下が顕著になると予測され、高周波帯域における電気伝送特性が改善されたとしても実用には適さない。
第2のリードパッド電極6に対する信号線(S)4の接合強度を高めるには、第2のリードパッド電極6上に接合される信号線(S)4の幅が、又は、切欠き部4aが形成された信号線(S)4の幅が、0.1〜0.5mmの範囲内である場合に、第2のリードパッド電極6の幅(W)を、信号線(S)4を平面視した際の幅(0.1〜0.5mm)に、0.2mmを加えた数値(0.3〜0.7mm)以上に設定することが望ましい。つまり、信号線(S)4を接合した第2のリードパッド電極6を平面視した際に、信号線(S)4の左右両側縁から0.1mm以上離れた位置に、第2のリードパッド電極6の第2の側縁6aが配置されるように、第2のリードパッド電極6の幅(W)を設定するのが望ましい。
このようなGSSG構造3及びこのGSSG構造3を用いたシミュレーション3の結果について図10を参照しながら説明する。
図10(a)はシミュレーション3のために設定したGSSG構造3の概念図であり、(b)はこのGSSG構造3の信号線(S)(差動信号線)における特性インピーダンス(Ω)のシミュレーション結果を示すグラフであり、(c)は同GSSG構造3の信号線(S)(差動信号線)における反射Sdd11(dB)のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、図10(a)に示すようなシミュレーション3に係るGSSG構造3では、セラミックス基板2、グランド線(G)3、信号線(S)4、第1のリードパッド電極5、第2のリードパッド電極6の材質を下表3のように設定した。さらに、図10(a)に示すようなシミュレーション3に係るGSSG構造3では、間隔LGS、間隔LSS、ピッチP、第2のリードパッド電極6の幅W、グランド線(G)3及び信号線(S)4を構成するリード線の幅、座刳り部7aの幅X、深さD、長さZをそれぞれ下表3のように設定した。
なお、図10(a)においても、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6にグランド線(G)3や信号線(S)4を接合する金属ろう材11及びそれからなるメニスカス11aの表示については省略している。
その一方で、図10(c)に示すように、反射を示すSパラメータSdd11(dB)については、−20dB以下となる周波数は38GHzまでであり、38〜50GHzの高周波信号の伝送には適さない。
この理由として、図10(b)に示されるように、GSSG構造3では、第2のリードパッド電極6周りの特性インピーダンスと、信号線(S)4の曲がり部16周りの特性インピーダンスの差が3〜4(Ω)程度あることが考えられる。
より具体的には、発明品に係るGSSG構造では、上述のGSSG構造3の条件において、第2のリードパッド電極6同士の間隔LSSを狭めるとともに、座刳り部7aの幅Xを小さくした。この変更に伴い、第1のリードパッド電極5と第2のリードパッド電極6の間隔LGSはGSSG構造3のそれよりも広くなっている。なお、発明品に係るGSSG構造において座刳り部7aの深さDは、GSSG構造3と同じにした。このような発明品に係るGSSG構造及びこの発明品に係るGSSG構造を用いたシミュレーション4の結果について図11を参照しながら説明する。
図11(a)はシミュレーション4のために設定した発明品に係るGSSG構造の概念図であり、(b)はこの発明品に係るGSSG構造の信号線(S)(差動信号線)における特性インピーダンス(Ω)のシミュレーション結果を示すグラフであり、(c)は同GSSG構造の信号線(S)(差動信号線)における反射Sdd11(dB)のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図1乃至図10に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、図11(a)に示すようなシミュレーション4に係るGSSG構造(発明品)では、セラミックス基板2、グランド線(G)3、信号線(S)4、第1のリードパッド電極5、第2のリードパッド電極6の材質を下表4のように設定した。さらに、図11(a)に示すようなシミュレーション4に係るGSSG構造(発明品)では、間隔LGS、間隔LSS、ピッチP、第2のリードパッド電極6の幅W、グランド線(G)3及び信号線(S)4を構成するリード線の幅、座刳り部7aの幅X、深さD、長さZをそれぞれ下表4のように設定した。
なお、図11(a)においても、第1のリードパッド電極5や第2のリードパッド電極6にグランド線(G)3や信号線(S)4を接合する金属ろう材11及びそれからなるメニスカス11aの表示については省略している。
そして、発明品に係るGSSG構造では、図11(c)に示すように、反射を示すSパラメータSdd11も、−20dB以下となる周波数が50GHzまで改善されている。
この点を別の言葉で言い換えると、セラミックス基板2の比誘電率が4.0以上である場合に、GSSG構造において、間隔LSSと間隔LGSとがLSS<2LGSを満たすように第2のリードパッド電極6を配置し、かつ、第2のリードパッド電極6,6の間に座刳り部7a〜7cのいずれかを形成することで(発明品に係るGSSG構造)、50GHzまでの高周波信号を好適に伝送することが可能になる。なお、発明品に係るGSSG構造に使用可能なセラミックス基板の比誘電率は、以下に示す通りである。
・アルミナ基板の比誘電率:8.5〜10(アルミナ含有率と添加物の種類によって比誘電率が異なる)
・ジルコニア含有アルミナ基板の比誘電率:10〜15
・窒化アルミニウム基板の比誘電率:8.8
・各種ガラスセラミックス基板の比誘電率:4〜10(ガラスセラミックスは種類が多く、成分によって比誘電率が異なる)
・窒化ケイ素基板の比誘電率:8.1
そして、発明品に係るGSSG構造によれば、セラミックス基板2に形成される座刳り部7aの数及び/又は容積を極力減らすことができる。これにより、発明品に係るセラミックス基板2の縁端2a近傍の強度の低下を抑制することができる。
従って、本発明に係る高周波用セラミックス基板及びそれを用いてなる高周波用半導体素子収納パッケージの製造時及び使用時のセラミックス基板2の破損を好適に防止することができる。この結果、本発明によれば、小型でありながら高性能で信頼性の高い高周波用セラミックス基板及びそれを用いてなる高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
しかも、発明品に係るGSSG構造によれば、セラミックス基板2上に十分な幅Wを有する第2のリードパッド電極6を形成することができるので、第2のリードパッド電極6上に金属ろう材11を介して信号線(S)4を接合する場合に、信号線(S)4の側縁に十分なメニスカス11aを形成するための領域を確保することができる。これにより、セラミックス基板2の小型化に伴い第2のリードパッド電極6の領域が狭小化する場合でも第2のリードパッド電極6と信号線(S)4との接合強度の低下を防ぐことができる。
従って、発明品に係るGSSG構造によれば、この点からも信頼性の高い高周波用セラミックス基板及びそれを用いてなる高周波用半導体素子収納パッケージを製造して提供することができる。
2…セラミックス基板
2a…縁端
3…グランド線(G)
4…信号線(S)
4a…切欠き部
4b…端部
5…第1のリードパッド電極
5a…第1の側縁
6…第2のリードパッド電極
6a…第2の側縁
7a〜7c…座刳り部
8…ヒートシンク板
9…枠体
9a…開口部
10…金属リング
11…金属ろう材
11a…メニスカス
12…半導体素子搭載用パッド
13…高周波用半導体素子収納パッケージ
14…母基板
15…接合用パッド
16…曲がり部
17…第1のリードパッド電極
18…差動信号線
Claims (5)
- 平板状のセラミックス基板と、このセラミックス基板の裏面側の縁端近傍に接合される一対のグランド線(G)と、一対の前記グランド線(G)の接合位置に被着される1つの又は一対の第1のリードパッド電極と、一対の前記グランド線(G)の間に接合される少なくとも一対の信号線(S)と、それぞれの前記信号線(S)の接合位置に個別に被着される第2のリードパッド電極と、この第2のリードパッド電極間に形成される溝状の座刳り部とを有し、
一対の前記信号線(S)は1の差動信号線をなし、
一対の前記グランド線(G)の間に配される前記差動信号線は1であり、
前記第2のリードパッド電極は、1つの前記第1のリードパッド電極の一部を切り欠いてなる領域に被着され、又は、一対の前記第1のリードパッド電極間に被着され、
前記第2のリードパッド電極の長手方向側縁を第2の側縁とした場合に、この第2の側縁に対向して配される前記第1のリードパッド電極の第1の側縁と、前記第2の側縁とは、互いに平行な部位を備え、
前記第1の側縁と前記第2の側縁との間隔をLGSとし、前記第2の側縁間の間隔をLSSとした場合に、LSS<2LGSを満たし、
前記セラミックス基板を平面視した場合に、前記信号線(S)の前記第2のリードパッド電極に接合される領域は、前記第1の側縁が配される側の側縁に、前記信号線(S)を伸長方向に沿って切欠いて形成される切欠き部を備えることを特徴とする高周波用セラミックス基板。 - 前記第2のリードパッド電極の幅をW、前記座刳り部の深さをDとする場合に、D<1.5Wを満たすことを特徴とする請求項1に記載の高周波用セラミックス基板。
- 平板状のセラミックス基板と、このセラミックス基板の裏面側の縁端近傍に接合される一対のグランド線(G)と、一対の前記グランド線(G)の接合位置に被着される1つの又は一対の第1のリードパッド電極と、一対の前記グランド線(G)の間に接合される少なくとも一対の信号線(S)と、それぞれの前記信号線(S)の接合位置に個別に被着される第2のリードパッド電極と、この第2のリードパッド電極間に形成される溝状の座刳り部とを有し、
一対の前記信号線(S)は1の差動信号線をなし、
前記第2のリードパッド電極は、1つの前記第1のリードパッド電極の一部を切り欠いてなる領域に被着され、又は、一対の前記第1のリードパッド電極間に被着され、
前記第2のリードパッド電極の長手方向側縁を第2の側縁とした場合に、この第2の側縁に対向して配される前記第1のリードパッド電極の第1の側縁と、前記第2の側縁とは、互いに平行な部位を備え、
前記第1の側縁と前記第2の側縁との間隔をL GS とし、前記第2の側縁間の間隔をL SS とした場合に、L SS <2L GS を満たし、
前記グランド線(G)及び前記信号線(S)はともに、前記セラミックス基板の前記縁端近傍に曲がり部を備え、
前記信号線(S)の前記第2のリードパッド電極に接合される側の端部側に配される前記座刳り部の幅をX1とし、前記セラミックス基板の前記縁端における前記座刳り部の幅をX2とした場合に、0.1X1<X2<X1を満たすことを特徴とする高周波用セラミックス基板。 - 平板状のセラミックス基板と、このセラミックス基板の裏面側の縁端近傍に接合される一対のグランド線(G)と、一対の前記グランド線(G)の接合位置に被着される1つの又は一対の第1のリードパッド電極と、一対の前記グランド線(G)の間に接合される少なくとも一対の信号線(S)と、それぞれの前記信号線(S)の接合位置に個別に被着される第2のリードパッド電極と、この第2のリードパッド電極間に形成される溝状の座刳り部とを有し、
一対の前記信号線(S)は1の差動信号線をなし、
前記第2のリードパッド電極は、1つの前記第1のリードパッド電極の一部を切り欠いてなる領域に被着され、又は、一対の前記第1のリードパッド電極間に被着され、
前記第2のリードパッド電極の長手方向側縁を第2の側縁とした場合に、この第2の側縁に対向して配される前記第1のリードパッド電極の第1の側縁と、前記第2の側縁とは、互いに平行な部位を備え、
前記第1の側縁と前記第2の側縁との間隔をL GS とし、前記第2の側縁間の間隔をL SS とした場合に、L SS <2L GS を満たし、
前記グランド線(G)及び前記信号線(S)はともに、前記セラミックス基板の前記縁端近傍に曲がり部を備え、
前記セラミックス基板の前記縁端は、前記座刳り部を備えていないことを特徴とする高周波用セラミックス基板。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高周波用セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の主面側に被着される半導体素子搭載用パッドと、
この半導体素子搭載用パッドを囲うように配され前記セラミックス基板の前記主面側に一体に接合されるセラミックス製の枠体と、を有することを特徴とする高周波用半導体素子収納パッケージ。
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