JP6926477B2 - 透明難燃性ポリエステルフィルムおよび調光フィルム - Google Patents
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Description
ポリエステルフィルムの厚みが大きいほど、より少ないリン元素含有量で十分な難燃性が得られる傾向があり、厚みに伴うリン元素含有量の好ましい範囲を表1に示す。
また、当該微粒子の添加量は0.005重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.1重量%以下がさらに好ましい。微粒子の平均粒径が3.0μmを超える、あるいは添加量が0.5重量%を超えると、フィルムの平面性および/または透明性が損なわれる恐れがある。
しかし化合物(1)は軟化点が90℃程度と、一般的なポリエステル樹脂の融点に比して著しく低いため、一般的なポリエステルフィルムの加工条件で押出機に投入した場合、溶けて押出機のフィード口を塞いでしまうおそれがある(ブリッジング)。そのような場合、化合物(1)は事前にポリエステル樹脂と混練し、マスターバッチを作製してもよい。そして、前記マスターバッチを作製した後に、マスターバッチおよびエステル交換反応防止剤を添加するのが好ましい。
サンプルを1.0g/dlの濃度になるようフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの重量比1:1溶液中に加えた。この溶液を110℃で20分間加熱し、ポリエステル樹脂組成物を溶解させた後、容器を30分間水道水に浸して室温まで冷却させた。毛細管粘度計“VMS−022UPC・F10”(離合社製)を用いて、この溶液の流下時間、およびフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液のみ(リファレンス液)の流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、粘度計の恒温水槽の温度は30℃とし、粘度計算に用いるHuggins定数は0.33と仮定した。なお、IVの単位は“dl/g”とする。
ヘーズメーター“NDH−5000”(日本電色工業製)を用いて、JIS K7136規格に基づいてフィルムのヘーズを測定した。
ICP発光分析装置(Varian製730−ES)を用いて、ポリエステルフィルムのリン元素含有量を測定した。測定にあたり、標準溶液としてSPEX製のXSTC−22(リン含有量100ppm)を使用し、原液、10倍希釈(同10ppm)、100倍希釈(同1ppm)の3種類の溶液から検量線を作成した。
アンダーライターズラボラトリーズ(UL)社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94のVTM試験に基づき、ポリエステルフィルムの燃焼試験を行った。VTM試験は結果のばらつきが大きい試験であるため、評価の信頼性をより高める目的で、1種のポリエステルフィルムサンプルに対し通常5回ずつ試験を行うところを10回ずつ行った。以下に、難燃性評価手順について説明する。
フィルムを200mm×50mmに裁断し、試料下端から125mmのところで試料の幅方向に標線を入れた。試料の縦軸を直径12.7mmの棒の縦軸に硬く巻きつけて、125mmの標線が外側に露出する、長さ200mmの円筒状にした。標線より上(75mm側)5mmの所と、試料上端から下5mmの所にセロテープ(登録商標)を巻き付けて固定した。最後に棒を引き抜き、試験片とした。
上記(i)により得られた試験片を
(a)気温23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で48時間以上処理
(b)気温70℃±2℃で168±2時間処理後、気温23±2℃、相対湿度20%以下で4時間以上冷却
以上の処理を施したものをそれぞれ10本ずつ用意する。なお、(a)を受理状態、(b)をエージング状態と呼ぶ。
上記(ii)の試験片の縦軸を垂直にして、上端の長さ6mmの位置でスプリング付きのクランプで挟んで固定し、筒の上端が閉じて試験中に煙突効果を生じないようにする。試験片の真下には、最大厚みが6mmの1枚の0.05gの脱脂綿(50mm×50mm)を水平に置くが、試験片の下端はこの脱脂綿よりも300mm上にあるようにする(図3参照)。
バーナーから高さ20mmの青炎が出るよう調整する。その炎を出すためには、可燃性ガスの供給量を調整して先端が黄色い高さ20mmの青い炎が出るようにする。続いて黄色い先端が消えるまで空気の供給を増やす。その後再度炎の高さを測定して、必要に応じて再調整をする。可燃性ガスはメタンを用いることとし、バーナーへのメタンガス供給は“ASTM D 5207”に準じた方法で流量を調整する。
炎は試験片の巻かれていないほうの下端の中心点を中心に当て、バーナーの先端はその中心点から10±1mm下にあるようにして、その位置で3秒接炎を続ける。ただし、試験片の長さおよび中心位置は燃焼によって変化するので、その変化に応じてバーナーの位置を移動させる。接炎中に溶融物または発煙物が滴下する場合は、バーナーの角度を45度までの範囲で傾け、バーナーの管の中にそれらの物質が落下するのを防ぐためにちょうど十分なだけ試験片の下から移動させる。その間もバーナーの先端の中心と試験片の残存部分間は10±1mmの距離を保たなければならない。3秒間接炎の後、直ちにバーナーを試験片から毎秒約300mmの速度で少なくとも150mm遠ざけ、同時に経時装置により残炎時間t1を秒で計測し始める。
1回目の接炎に由来する試験片の残炎が消滅した時点で、(バーナーを試験片から150mm以上はなれたところまで遠ざけていなくても)直ちにバーナーを試験片の下に持ってきて、試験片の残りの部分の下端から10mm±1mm離れた箇所にバーナーを保持しておく。ただし、必要に応じてバーナーを動かして、妨害物のない状態で燃焼による落下物の挙動が確認できるようにする。3秒間接炎の後、直ちにバーナーを試験片から毎秒約300mmの速度で少なくとも150mm遠ざけ、同時に経時装置により残炎時間t2を秒で計測し始める。
受理状態およびエージング状態それぞれ10本ずつの試験片に対してUL94のVTM試験を行い、全ての試験片が下記表2の条件を満たすかどうかで評価する。ただし不合格の試験片が10本中1本のみの場合は合格とする。これは、実際のVTM試験が5本の試験片を1組として行われ、不合格が1本のみの場合は1度だけ再試験が許されていることを反映している。なお、表2内の「試験片5本のt1とt-2の総和」における「試験片5本」とは、10本の試験片のうちt1とt-2の合計が最も大きい5本の組み合わせのことを指す。
下記評価基準に基づいて判断した。
(判断基準)
○:生産中に問題が発生せず、安定していた。
△:生産中に軽微なレベルで問題が発生したが、実用上問題なかった。
×:生産中に重大な問題が発生した。
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩0.02重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、エステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03重量部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04重量部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温して280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、IVが0.64dl/gに相当する時点で反応を停止し、ポリエステルAを得た。
ポリエステルAを出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行い、IVが0.85dl/gのポリエステルBを得た。
ポリエステルAの製造において、エステル交換反応終了時に、平均粒径2.30μmのシリカ粒子1重量%を配合する以外はポリエステルAと同様の方法でポリエステルCを得た。得られたポリエステルCのIVは0.61dl/gであった。
攪拌機と蒸留塔を備えた容積12リットルの反応容器に3,726gのメチル亜リン酸ジフェニルエステル(下記化学式(2))、3,329gのビスフェノールA(下記化学式(3))、89gの1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、600mgのナトリウムフェノキシドを入れ、250℃から300℃の温度、1.5ミリメートルHgから150ミリメートルHgの圧力下で15時間かけて反応させた。なお、反応開始から11時間の時点で600mgのナトリウムフェノキシドを追加した。
化合物(1)とポリエステルAを50:50の重量比でベント付きの二軸押出機にてコンパウンドし、ポリエステルDを得た。ポリエステルDのリン元素含有量は5.5重量%、IVは0.62dl/gであった。
攪拌機、温度計、ガス吹き込み口、および蒸留口を備えた内容積3Lのガラス製フラスコに9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド(下記化学式(4))7.8molとエチレングリコール25.97molを加え、成分を溶解させるため、内容物の温度が100℃になるまでフラスコを加熱した。次いで、攪拌しながらイタコン酸7.96molを添加し、蒸留口から減圧器を介して、フラスコを30Torrの真空状態で加熱し、内容物を沸騰させた。この時点で、蒸留口の留出速度を調製することで、生成した水を除去した。さらに、内容物の沸騰状態を維持したまま、フラスコ内の温度を上昇させ、それに対応させて、減圧度も低下させていった。その内訳として、内容物の温度が185℃になるまでに4時間を要し、この時点での減圧度は430Torrであった。さらに、加熱を続け、最終的に内容物の温度が200℃になるまで加熱していった。この点を確認後、反応機に窒素ガスを吹き込んでフラスコを常圧に戻した。反応混合物は下記化学式(5)のエチレングリコール溶液である。また、減圧下、エチレングリコールを除去することにより、固形状の下記化学式(5)の化合物を精製できる。
オクタデシルリン酸およびジオクタデシルリン酸の混合物として、株式会社ADEKAの“AX−71”を用いた。
下記表3に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した同方向二軸押出機Aに送り込んで混練した。この溶融体をギヤポンプ、フィルターを介して、口金よりシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質なシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で3.0倍延伸し、215℃で熱処理を施し、厚み25〜100μmの単層ポリエステルフィルムを得た。いずれの例においても、得られたフィルムは良好な難燃性を示した。なお、評価結果は下記表4に示す。
下記表3に記載の割合で混合した原料を実施例1〜3と同様に加工し、厚み25〜100μmの単層ポリエステルフィルムを得た。いずれの例においても、得られたフィルムは良好な難燃性を示し、かつ生産も安定していた。なお、評価結果は下記表4に示す。
下記表3に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した中間層用の同方向二軸押出機Aおよび表層用の同方向二軸押出機Bにそれぞれ送り込んで混練した。これらの溶融体を、ギヤポンプ、フィルターを介して、表層/中間層/表層=5:40:5の厚み構成比になるよう多層口金内で合流させシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質なシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で3.0倍延伸し、215℃で熱処理を施し、厚み50μmの多層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは良好な難燃性を示し、かつ生産も安定していた。なお、評価結果は下記表4に示す。
下記表3に記載の割合で混合した原料を実施例と同様に加工し、厚み50μmの単層ポリエステルフィルムを得た。生産は安定していたが、十分な難燃性を有していなかった。なお、評価結果は下記表4に示す。
下記表3に記載の割合で混合した原料を実施例と同様に加工し、厚み50μmの単層ポリエステルフィルムを得た。難燃性は良好であったが、生産中の押出圧が非常に高かったため、押出機の破損を防ぐために押出量を小さくする必要があり、生産性は悪かった。なお、評価結果は下記表4に示す。
下記表3に記載の割合で混合した原料を実施例と同様に加工し、厚み50μmの単層ポリエステルフィルムを得た。難燃性は良好であったが、フィルムのIVが低いため、生産中頻繁にフィルムの破断が発生した。なお、評価結果は下記表4に示す。
実施例7に記載の厚み50μmのポリエステルフィルムを基材として用いた自動調光フィルムを製造した。具体的な製造方法を以下に示す。
ポリエーテルウレタンエマルジョン(水不揮発分40質量%)100重量部に対して、ネマチック液晶(複屈折率Δn=0.132)64重量部を添加した。この混合物をホモジナイザー(日本精機製)にて回転数8000rpmで10分間攪拌し、液晶エマルジョンを得た。続いてポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルをイオン交換水に溶解し、50%の水溶液を調製した。前述の液晶エマルジョンを低速で攪拌しながら、この水溶液を4.8重量部添加することで、調光材料を得た。
実施例7のポリエステルフィルム上に、スパッタによりITO層を100nmの厚みで製膜し、パターニングを行った後、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行うことで、透明電極フィルムを得た。
前述の透明電極フィルムのITO層上に、ワイヤーバーを用いて前述の調光材料を塗布し、100℃下で10分間真空乾燥させた。乾燥後の調光材料層の厚みは、45μmであった。続いて、調光材料層の上から、ITO層が対向するようにもう1枚の透明電極フィルムを貼り合せることで、自動調光フィルムを得た。この自動調光フィルムは不透明であるが、厚み方向に100Vの電圧を印加することで透明性が向上し、自動調光フィルムとして正常に動作することが分かった。
2 テープ
3 125mm標線
4 バーナー
5 コットン
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