JP2013091290A - 透明ガスバリア積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】ディスプレイ分野への適用が可能な、高い透明性とガスバリア性を有し、且つ、干渉ムラのない優れたガスバリア積層体を提供する。
【解決手段】プラスチック基材1に、少なくともアンカーコート層2と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層3とが順次積層された透明ガスバリア積層体5であって、前記プラスチック基材の屈折率と前記アンカーコート層との屈折率の差が5%以内であり、また、前記アンカーコート層が金属酸化物粒子からなる屈折率調整剤を含むことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性を付与するためにプラスチック基材上に蒸着薄膜層を設けた透明ガスバリア積層体に関する。
従来より、食品、日用品及び医薬品の包装分野では内容物の変質を防止することが求められてきた。これら内容物の変質は、酸素や水蒸気などのガスが包装材料を透過して内容物と反応して生じる。よって、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められており、温度及び湿度などに影響されないアルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルムが用いられてきた。
ところが、アルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルムを用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができないだけではなく、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない。また包装後の内容物などの検査の際に金属探知器が使用できない点などの欠点を有していた。また、包装用途ではなくとも酸素や水蒸気の進入で耐久性が劣化するようなエレクトロニクス部材等にもガスバリア性が必要とされ、同時に透明性が求められるときは、金属箔やアルミニウム蒸着フィルムでは対応しきれない問題があった。
そこで、これらの問題を解決する方法として、最近では酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム及び酸化珪素などの無機酸化物を透明なプラスチック基材の上に蒸着したフィルムが提案されている。これらの蒸着フィルムは、金属箔などでは得ることができない透明性、ガスバリア性の両方を有する包装材料として好適とされている。
近年、食品包装用途だけではなく、エレクトロニクス分野でも透明性、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性の要求が高まってきている。ここで言うエレクトロニクス分野とは、エレクトロニクス部材の包装用途のみならず、有機EL素子や液晶部材、太陽電池部材の構成材料として使用されるなど幅広い分野を示す。エレクトロニクス用途では食品包装用途よりも過酷な条件での使用が想定され、かつガスバリア性の要求も高くなっており、従来技術の透明蒸着フィルムの性能の向上の試みが行われており、ガラス基板で使用されていた分野へのフレキシブルフィルム基板が展開されつつある。
また、透明蒸着フィルムはバリア性能の向上や、後加工での無機酸化物蒸着薄膜層へのダメージを防ぐために、前記無機酸化物蒸着薄膜層上に様々な材料からなる層が積層されている(特許文献1〜4)。
しかしながら、上記の提案(特許文献1〜4)によるバリアフィルムをディスプレイの表面保護として用いると、プラスチック基材、蒸着薄膜層、ガスバリア被覆層と界面が2箇所あるため、干渉光による色ムラが発生し、外観上問題となっている。
特開平5−309777号公報 特開平10−100301号公報 特開2005−271467号公報 特許第2790054号公報
本発明の目的は、従来適用には大きな問題であったディスプレイ分野への適用が可能な、高い透明性とガスバリア性を有し、且つ、干渉ムラのない優れたガスバリア積層体を提供することにある。
本発明の請求項1に係る発明は、プラスチック基材に、少なくともアンカーコート層と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層とが順次積層された透明ガスバリア積層体であって、前記プラスチック基材の屈折率と前記アンカーコート層との屈折率の差が5%以内であることを特徴とする透明ガスバリア積層体である。
本発明の請求項2に係る発明は、前記アンカーコート層が金属酸化物粒子からなる屈折率調整剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリア積層体である。
本発明の請求項3に係る発明は、前記蒸着薄膜層の上にガスバリア被覆層を設け、前記蒸着薄膜層の屈折率と前記ガスバリア被覆層の屈折率の差が5%以内で、且つ、その積層体の水蒸気透過度が0.3g/m・day以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明ガスバリア積層体である。
本発明の請求項4に係る発明は、前記ガスバリア被覆層が、水溶性高分子、並びに、(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液の組成物からなることを特徴とする請求項3に記載の透明ガスバリア積層体である。
本発明の請求項5に係る発明は、前記蒸着薄膜層が、酸化アルミニウムもしくは酸化珪素であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の透明ガスバリア積層体である。
本発明の請求項6に係る発明は、前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の透明ガスバリア積層体である。
請求項1の発明によれば、プラスチック基材の屈折率と前記アンカーコート層からなる屈折率の差がプラスチック基材の屈折率の5%以内であるので、各層の界面において光の反射を少なくすることができ、反射光が干渉することで起こる色のムラが生じない。
請求項2の発明によれば、前記アンカーコート層が金属酸化物粒子を含むことで、アンカーコート層の屈折率がプラスチック基材の屈折率に近づき、その界面での反射を少なくし色ムラを減少することができる。
請求項3の発明によれば、かつ蒸着薄膜層の屈折率とガスバリア被覆層の屈折率の差が蒸着薄膜層の屈折率の5%以内であるので、その界面での反射を少なくし色ムラを減少することができ、かつ水蒸気透過度が0.3g/m・day以下であるので、色ムラの生じなくガスバリア性が高い透明ガスバリア積層体が得られる。
請求項4の発明によれば、前記ガスバリア被覆層が金属酸化物粒子を含むことで、ガスバリア被覆層の屈折率が蒸着薄膜層の屈折率に近づき、その界面での反射を少なくし色ムラを減少することができる。
請求項5の発明によれば、蒸着薄膜層が、酸化アルミニウムもしくは酸化珪素である。これは、ガスバリア性能、透明性、材料コスト、及び加工性から良い。
請求項6の発明によれば、前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする。コスト面、耐熱性、透明性、加工性などからポリエチレンテレフタレートフィルムがよい。
本発明の一実施形態である透明ガスバリア積層体の断面模式図である。 実施例1で得られた透明ガスバリア積層体の分光反射率曲線である。 実施例2で得られた透明ガスバリア積層体の分光反射率曲線である。 比較例1で得られた透明ガスバリア積層体の分光反射率曲線である。 比較例2で得られた透明ガスバリア積層体の分光反射率曲線である。 比較例3で得られた透明ガスバリア積層体の分光反射率曲線である。
以下、本発明の実施の形態について図面をもって説明する。
図1に示す本発明の実施の形態に係る透明ガスバリア積層体4は、プラスチック基材1の上にアンカーコート層2、蒸着薄膜層3とガスバリア被覆層4を順次積層した積層体である。
本発明に用いられる前記プラスチック基材1は特に限定されるものではなく、加熱温度200℃以上でも形態を保つものならば公知のものを使用することができる。例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系フィルム(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、アクリル系フィルム、セルロース系フィルム(トリアセチルセルロース又はジアセチルセルロース等)などが挙げられる。特に限定されないが、熱収縮率が低いフィルムが好ましい。
実際には、用途や要求物性により適宜選定をすることが望ましく、医療用品、薬品、食品等の包装には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどを用いることができる。また、電子部材、光学部材等の極端に水分を嫌う内容物を保護する包装に用いられる場合には、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド類、ポリエーテルスルホンなどのそれ自体も高いガスバリア性を有する材料が望ましい。またプラスチック基材1の厚さは、特に限定されない。用途に応じて6μmから200μm程度のものが使用することができる。
またプラスチック基材1の積層面は、バリア性能を損なわない範囲でコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種前処理や、易接着層などのコート層を設けても構わない。
また、前記プラスチック基材1上に設けられる前記アンカーコート層2は、次工程の蒸着薄膜層との間の密着性能向上と、蒸着薄膜層の均一製膜とにより、さらなる高いバリア性能を発現することを目的としている。
前記アンカーコート層を形成する非水系組成物の成分としては、シランカップリング剤や有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノ
ールなどが挙げられる。アンカーコート層の耐熱水性を考慮すると、ウレタン結合およびウレア結合を少なくとも一つ以上有する有機高分子が含まれることがより好ましい。
上記ウレタン結合およびウレア結合はあらかじめ重合段階で導入したポリマーを使用しても、アクリルおよびメタクリル系ポリオールなどのポリオールとイソシアネート基を持つイソシアネート化合物、またはアミノ基を持つアミン樹脂とエポキシ基及びグリシジル基を持つエポキシ化合物などを反応させてウレタン結合を形成させたものや、イソシアネート化合物と水または酢酸エチル等の溶剤、またはアミノ基を持つアミン樹脂との反応によりウレア結合をさせた物でも良い。
鋭意検討の結果、前記アンカーコート層を形成する非水系組成物の成分としては、アクリルポリオールとポリエステルポリオールとイソシアネート基からなるイソシアネート化合物と、シランカップリング剤等との複合物がより好ましい。
前記アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
また前記ポリエステルポリオールとは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびこれらの反応性誘導体等の酸原料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルコール原料から周知の製造方法で得られたポリエステル系樹脂の内末端に2個以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
また、前記イソシアネート化合物とは、アクリルポリオール及びポリエステルポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)などのモノマー類や、これらの重合体、誘導体であり、これらが単独かまたは混合物等として用いられる。
また上記シランカップリング剤とは、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を用いることができ、例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤或あるいはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
前記アンカーコート層2を構成するアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤等の各成分の屈折率は、プラスチック基材1や蒸着薄膜層3に比べて低い屈折率であるため、プラスチック基材1との屈折率の差を小さくするために屈折率調整剤を加えることができる。
なお、前記アンカーコート層2とプラスチック基材1との屈折率の差を5%以内にすることにより、透明ガスバリア積層体の色ムラが制御でき、実用上問題のない目視外観での効果が得られる。上記屈折率の差が5%を超えると、目視で色ムラが確認でき品質問題となる。具体的には、屈折率の差が5%を越えると、膜厚のバラツキが色ムラとして目視で容易に認識できるため、ディスプレイ表示体等に用いる場合は問題となる。
前記屈折率調整剤としては、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子を用いることができる。金属酸化物粒子にあっては、アンカーコート層2の本来の特性であるプラスチック基材1との密着性などその他特性を低下させることなく、アンカーコート層2の屈折率を調整できるため好ましく用いることができる。金属酸化物粒子は、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。なお、金属酸化物粒子の粒径としては、3nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましい。金属酸化物粒子の粒径が200nmを上回る場合には、透過光が散乱するため、透明性が損なわれることがある。一方、金属酸化物粒子の粒径が3nmを下回る場合には、微粒子製造の上で手間が多く、塗液の安定性が低下することがある。
前記屈折率調整剤は、アンカーコート層2を形成する非水系組成物の全固形分に対し、5wt%以上30wt%以下の範囲内で添加されることが好ましい。前記固形分に対する添加量が5wt%に満たない場合、プラスチック基材1との屈折率差を5%以内とすることができず色ムラが抑制できないことがある。一方、屈折率調整剤の添加量が30wt%を超える場合、プラスチック基材1の屈折率よりも高くなり過ぎ、屈折率が5%を超える可能性があり同様に色ムラを低減することが難しい。
前記アンカーコート層2の厚みは、一般的には乾燥後の厚さで0.005〜5μm程度、より好ましくは0.01〜1μm程度の範囲にあることが望ましい。0.01μm未満の場合は塗工技術の点から均一な塗膜が得られ難くなり、逆に1μmを越える場合は不経済となるからである。
本発明の蒸着薄膜層3は、バリア性の高い材料として酸化アルミニウム(AlOx)、酸化珪素(SiOx)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化マグネシウム(MgO)又はインジウム−スズ酸化物(ITO)などを用いることができる。材料コスト、バリア性能、透明性から無機酸化物である酸化アルミニウムもしくは酸化珪素が好ましい。
蒸着薄膜層3の厚みは、10nm以下では薄膜の連続性に問題があり、また300nmを越えるとカールやクラックが発生しやすく、バリア性能に悪影響を与え、かつ可撓性が低下するため、好ましくは20nm〜200nmである。使用用途によって適宜厚みを設定すればよい。
蒸着薄膜層3の成膜は、真空成膜手段によって作成できる。バリア性能や膜均一性の観点から好ましい。成膜手段には、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法があるが、成膜速度が速く生産性が高いことから真空蒸着法が好ましい。また真空蒸着法の中でも、特に電子ビーム加熱による成膜手段は、成膜速度を照射面積や電子ビーム電流などで制御し易いことや蒸着材料への昇温降温が短時間で行えることから有効である。
本発明に係るガスバリア被覆層4は、蒸着薄膜層3を保護するとともに、蒸着薄膜層3との相乗効果により高いガスバリア性を発現させることができる。例えば、水溶性高分子、並びに、(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液の組成物からなるガスバリア被覆液を、蒸着薄膜層2上に塗布し、加熱乾燥して形成することができる。
以下に、上記組成物からなるガスバリア被覆液について更に詳しく説明する。
前記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。この中では、特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)は、得られるガスバリア被覆層4のガスバリア性が最も優れたものとなるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものであり、例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等を用いることができる。
前記金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH,C等のアルキル基)で表される化合物であり、テトラエトキシシラン{Si(OC}、トリイソプロポキシアルミニウム{Al(O−2´−C}等が具体例として挙げられる。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムは加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定で好ましい。
上記組成物からなるガスバリア被覆液には、ガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等の公知の添加剤を必要に応じて適宜加えることも可能である。
ガスバリア被覆層4の形成材料として用いられる、水溶性高分子、並びに、(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液あるいは水/アルコール混合液の組成物から形成されるガスバリア被覆層4の屈折率は、蒸着薄膜層3と比べ低い屈折率であるため、ガスバリア被覆層4にあっては蒸着薄膜層3との屈折率の差を小さくするために屈折率調整剤を加えることができる。
前記屈折率調整剤としては、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子を用いることができる。金属酸化物粒子にあっては、ガスバリア被覆層4の本来の特性であるバリア性やプラスチック基材1との密着性などその他特性を低下させることなく、ガスバリア被覆層4の屈折率を調整できるため好ましく用いることができる。金属酸化物粒子は、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。なお、金属酸化物粒子の粒径としては、3nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましい。金属酸化物粒子の粒径が200nmを上回る場合には、透過光が散乱するため、透明性が損なわれることがある。一方、金属酸化物粒子の粒径が3nmを下回る場合には、微粒子製造の上で手間が多く、塗液の安定性が低下することがある。
前記屈折率調整剤は、ガスバリア被覆層4を形成する組成物の全固形分に対し、5wt%以上30wt%以下の範囲内で添加されることが好ましい。前記添加量が5wt%に満たない場合、蒸着薄膜層3との屈折率差を5%以内とすることができず色ムラが抑制できないことがある。一方、前記添加量が30wt%を超える場合、蒸着薄膜層3の屈折率よりも高くなり過ぎ、前記屈折率が5%を超える可能性があり、色ムラを低減することができなくなってしまうことがある。
また、上記ガスバリア被覆液の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法等の従来公知の方法を用いることが可能である。
ガスバリア被覆層4の厚さは、特に限定されるものではない。使用用途により適宜決めればよい。乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られ難く、十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は、塗膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあればよい。
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
<実施例1>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET、東レ社製P60)をプラスチック基材として、その片面をコロナ処理し、下記組成物からなるアンカーコート溶液を乾燥後の膜厚が0.1μmなるようにグラビアコート法を用いて塗布し、アンカーコート層を得た。
<アンカーコート溶液の調整>
アクリルポリオールとトリイジルイソシアネートを、アクリルポリオールのOH基に対してNCO基が等量となるように加え、全固形分が5w%になるよう酢酸エチルで希釈し、さらにこれにβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを全固形分に対し5w%添加して混合し、屈折率調整剤として酸化ジルコニアゾル(メタノール溶剤分散、平均粒径30nm)を全固形分に対して18wt%を加えてアンカーコート溶液を得た。
次に、上記アンカーコート層面に酸化珪素材料(大阪チタニウム社製)からなる蒸着材料を電子ビーム加熱法で加熱し、成膜圧力は1.1×10−2Paとして膜厚が20nmとなるように蒸着薄膜層を形成した。
次に、上記蒸着薄膜層上に下記組成からなるガスバリア被覆液を、乾燥後の膜厚が0.3μmになるようにグラビアコーティング法により形成して透明ガスバリア積層体を作製した。
<ガスバリア被覆液の調整>
テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌して加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液と、ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液{水:イソプロピルアルコール=90:10(重量比)}を混合し、屈折率調整剤として酸化ジルコニアゾル(日産化学工業社製 超微粒子ジルコニアゾル#1)6.0g(加水分解溶液とポリビニルアルコール溶液固形ブンニタイシテ20wt%)を加えてガスバリア被覆液を得た。
<実施例2>
乾燥後のアンカーコート層の膜厚が0.05μm、蒸着薄膜層が酸化アルミニウムとなるように、アルミニウム材料からなる蒸着材料を電子ビーム加熱法で加熱し、酸素ガスを蒸着雰囲気中に導入して酸化アルミニウム膜厚が15nmとなるように蒸着薄膜層を形成した以外は、実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。
<比較例1>
アンカーコート溶液に屈折率調整剤を含まないこと以外は、実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。
<比較例2>
アンカーコート溶液に屈折率調整剤を含まず、且つ、アンカーコート層の膜厚が0.05μmである以外は、実施例1と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。
<比較例3>
アンカーコート溶液に屈折率調整剤を含まないこと以外は、実施例2と同様にして透明ガスバリア積層体を得た。
<評価>
以上の実施例1及び2、比較例1〜3で得られたガスバリア積層体を用いて、下記記載の色ムラ及び水蒸気透過率の評価、測定をした。実施例、比較例の評価結果を下記表1に示し、実施例1、2、比較例1、2、3の分光反射率測定結果を図2〜6に示す。
(色ムラ評価)
得られた透明ガスバリア積層体のガスバリア被覆層と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、バリアフィルムを目視で観察(蛍光灯スタンド直下30cm、天井蛍光灯下1.5m)し、色ムラの発生を観察した。評価基準を以下に示す。
◎:スタンド直下でも色ムラが見えにくい
○:スタンド直下ではやや色ムラあるが、天井下では色ムラが見えない
△:天井蛍光灯下でも容易に色ムラが確認される
×:天井蛍光灯下でも色ムラがはっきりと確認される。
(水蒸気透過率)
モダンコントロール社製MOCON PERMATRAN W3/33を用いて、40℃−90%RH雰囲気下で測定した。
なお、実施例および比較例の透明ガスバリア積層体において、各層の膜厚は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察をおこなうことにより測定した。また、プラスチック基材1、アンカーコート層2、蒸着薄膜層3、ガスバリア被覆層4の屈折率については、得られた分光反射率曲線について光学シミュレーションをおこなうことにより求めた。
<比較結果>
実施例1,2では、屈折率差が5%以内であり色ムラが観察されなかった。比較例1、2は青から赤紫色の色ムラをともなったギラギラとした色ムラが確認された。比較例3も比較例1よりはくっきりしていないが色ムラが観察された。実施例1、2、比較例1、2、3とも水蒸気透過度は、0.3g/m・day以下であった。
従って、実施例1及び2で得られた本発明品は、比較例1〜3で得られた比較例品よりも、いずれも加工性が高く、酸素バリア性、水蒸気バリア性が高く、外観上色ムラのない透明ガスバリア積層体を得ることができた。
本発明の実施の形態に係る透明ガスバリア積層体は色ムラがないため、透明性が重視されるディスプレイ部材分野で水蒸気バリア性が必要となる表面保護シートなどに用いることができる。
1・・・プラスチック基材、2・・・アンカーコート層、3・・・蒸着薄膜層、4・・・ガスバリア被覆層、5・・・透明ガスバリア積層体

Claims (6)

  1. プラスチック基材に、少なくともアンカーコート層と、無機酸化物からなる蒸着薄膜層とが順次積層された透明ガスバリア積層体であって、前記プラスチック基材の屈折率と前記アンカーコート層との屈折率の差が5%以内であることを特徴とする透明ガスバリア積層体。
  2. 前記アンカーコート層が金属酸化物粒子からなる屈折率調整剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリア積層体。
  3. 前記蒸着薄膜層の上にガスバリア被覆層を設け、前記蒸着薄膜層の屈折率と前記ガスバリア被覆層の屈折率の差が5%以内で、且つ、その積層体の水蒸気透過度が0.3g/m・day以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明ガスバリア積層体。
  4. 前記ガスバリア被覆層が、水溶性高分子、並びに、(a)1種以上の金属アルコキシド、(b)1種以上の金属アルコキシドの加水分解物、または(c)塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液の組成物からなることを特徴とする請求項3に記載の透明ガスバリア積層体。
  5. 前記蒸着薄膜層が、酸化アルミニウムもしくは酸化珪素であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の透明ガスバリア積層体。
  6. 前記プラスチック基材がポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の透明ガスバリア積層体。
JP2011235826A 2011-10-27 2011-10-27 透明ガスバリア積層体 Pending JP2013091290A (ja)

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