JP5786874B2 - ガスバリアフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、水蒸気等に対して高いガスバリア性を維持しつつ、高い光透過性を有することが可能なガスバリアフィルムに関する。
ガスバリアフィルムは、主に、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気等の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料として用いられている。
また、フレキシブル性や耐衝撃性を持たせる等の理由から、従来ガラス等が用いられている部分にガスバリアフィルムを使用する検討がされている。中でも近年においては、光透過性が求められるディスプレイや太陽電池等の電子部材として、ガスバリアフィルムの適用が検討されている。
ガスバリアフィルムは、通常、フィルム基材と、上記フィルム基材上に設けられた有機層と、上記有機層上に設けられた無機層とで構成されるものである。上記無機層は金属酸化物により構成されるガスバリア性に最も寄与する層であり、中でも上記金属酸化物としては、酸化珪素(SiO)が汎用されている。また、フィルム基材と無機層との間に有機層を介することにより、無機層とフィルム基材との密着性を高め、ガスバリアフィルム全体としてのガスバリア性の向上を図っている(特許文献1および2)。
このようなガスバリアフィルムにおいて、より高いガスバリア性を有するために、上記無機層の膜厚を大きくする方法や多層構造とする方法、酸化珪素(SiO)における珪素に対する酸素の組成比(x)を小さくする方法等が用いられている。
しかし、これらの方法では、ガスバリア性の向上が可能である反面、無機層に着色が生じる等によりガスバリアフィルム全体の光透過性が低下してしまうといった問題があった。そのため、ガスバリア性だけでなく光透過性も求められる電子部材のような用途には、上記ガスバリアフィルムを適用することが困難であった。
一方、ガスバリアフィルムが高い光透過性を有するためには、ガスバリアフィルムを構成する各層の膜厚を小さくする方法が好適である。しかし、上記方法の場合、無機層の膜厚も小さくなるためガスバリア性が低下してしまい、ガスバリアフィルム本来の機能を発揮できないといった問題があった。
特開2005−289041号公報 特許第4498949号
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、水蒸気等に対して高いガスバリア性を維持しつつ、高い光透過性を有することが可能なガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、透明樹脂で形成された基材と、上記基材上に、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層と、上記アンダーコート層上に、酸化珪素SiOx(1.7≦x≦2.2)で形成された無機蒸着層と、上記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、膜厚が250nm〜500nmの範囲内であるオーバーコート層とを有することを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
本発明によれば、無機蒸着層を形成する酸化珪素SiO中の酸素の組成比(x)を所定の範囲に調整することにより、ガスバリア性をある程度有しつつ、上記無機蒸着層の光透過性を向上させることができる。また、上記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成される所定の膜厚のオーバーコート層を有することにより、光透過性を損うことなく無機蒸着層のガスバリア性を向上させることができる。
さらに、ヒドロキシ基を有さないフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層を基材と無機蒸着層との層間に設けることにより、高い層間密着性を有することができ、上記無機蒸着層のガスバリア性を向上させることができる。
これにより、本発明のガスバリアフィルムは、高いガスバリア性を維持しつつ、高い光透過性を示すことが可能となる。
上記発明においては、水蒸気透過率が1×10−g/m/day未満であることが好ましい。良好なガスバリア性を有するガスバリアフィルムとすることができるからである。
上記発明においては、全光線透過率が93%以上であることが好ましい。良好な光透過性を有するガスバリアフィルムとすることができ、ガスバリア性だけでなく高い光透過性が求められる用途においても当該ガスバリアフィルムを使用することができるからである。
上記発明においては、オーバーコート層上に粘着層を有することが好ましい。上記粘着層を有することにより、電子部材等の被着体への貼付に際して接着剤等を塗布する工程を必要としないため、貼付工程が容易となるからである。また、上記粘着層を介して、本発明のガスバリアフィルムを2以上積層させることが可能となるからである。
また、上記発明においては、上記ガスバリアフィルムにおける上記基材と上記オーバーコート層とを上記粘着層を介して貼り合せたときの、上記粘着層の180度T字剥離試験における剥離強度が、5N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着層を介して本発明のガスバリアフィルムを2以上積層させる際に、積層界面において高い接着性および密着性を有することができ、高いガスバリア性を示すことができるからである。
また、上記発明においては、上記粘着層が、ポリイソブチレン系樹脂を主成分とするものであることが好ましい。ポリイソブチレン系樹脂を主成分とすることにより、粘着層のガスバリア性および粘着性を高くすることができるからである。
本発明によれば、無機蒸着層を形成する酸化珪素をSiOの酸素の組成比(x)を所定の範囲内に規定することにより、当該無機蒸着層はガスバリア性をある程度有しつつ光透過性を向上させることができる。また、無機蒸着層上に、所定の膜厚を有し、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成されるオーバーコート層が積層されることにより、光透過性を損なうことなく上記無機蒸着層のガスバリア性を向上させることができる。
すなわち、本発明は、水蒸気等に対して高いガスバリア性を維持しつつ、高い光透過性を有することが可能なガスバリアフィルムが得られるという効果を奏する。
本発明のガスバリアフィルムの一例を示す概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の例を示す概略断面図である。 本発明のガスバリアフィルムを用いたディスプレイの一例を示す概略断面図である。
以下、本発明のガスバリアフィルムついて詳細に説明する。
A.ガスバリアフィルム
本発明のガスバリアフィルムは、透明樹脂で形成された基材と、上記基材上に、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層と、上記アンダーコート層上に、酸化珪素SiO(1.7≦x≦2.2)で形成された無機蒸着層と、上記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、膜厚が250nm〜500nmの範囲内であるオーバーコート層とを有することを特徴とするものである。
本発明のガスバリアフィルムについて、図を例示して説明する。図1は本発明のガスバリアフィルムの一例を示す、膜厚方向における概略断面図である。図1で例示されるように、本発明のガスバリアフィルム10は、透明樹脂から形成される基材1と、上記基材1上のアンダーコート層2と、上記アンダーコート層2上の無機蒸着層3と、上記無機蒸着層3上のオーバーコート層4とを有するものである。
また、上記アンダーコート層2は、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたものであり、上記無機蒸着層3は、酸化珪素SiO(1.7≦x≦2.2)で形成されるものである。
さらに、上記オーバーコート層4は、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、その膜厚が250nm〜500nmの範囲内にあることを特徴とするものである。
本発明において、アンダーコート層が「ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成され」るとは、上記構造を有するフルオレン系アクリレートにおけるアクリレート基が架橋重合することによりアンダーコート層が形成されることをいう。
また、本発明において、オーバーコート層が「金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され」るとは、金属アルコキシドおよび水溶性高分子が重縮合することによりオーバーコート層が形成されることをいう。
なお、上述の重合反応により形成されるオーバーコート層およびアンダーコート層については、後述する「2.オーバーコート層」および「3.アンダーコート層」の項で詳細に説明する。
本発明において「ガスバリア性」とは、一般に定義されるように、外部の気体を遮断する機能をいい、中でも水蒸気等の気体を遮断する特性をいう。
また、上述のガスバリア性の機能を有するものを、「ガスバリアフィルム」という。
従来、ガスバリアフィルムにおいては、ガスバリア性を向上させるために、ガスバリア性に寄与する無機層の膜厚を大きくする方法、ガスバリアフィルムを多層構造とする方法、無機層を形成する酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)を小さくする方法等が用いられていた。
しかし、このような方法では、ガスバリアフィルム全体のガスバリア性の向上が図れる反面、酸化珪素の酸素の比率により無機層が着色し透明性が損なわれること、多層とすることにより各層間において光の反射等が生じること等に起因して、ガスバリアフィルム全体の光透過性が低下してしまうといった問題がある。
これに対し、本発明においては、無機蒸着層を形成する酸化珪素SiO中の酸素の組成比(x)を所定の範囲に調整することにより、基板表面からの反射が抑えられ、上記無機蒸着層の光透過性を向上させることができる。また、上記無機蒸着層を、ある程度のガスバリア性を有することが可能な膜厚とすることにより、上記無機蒸着層の光透過性が低下することを抑制することができる。
また、無機蒸着層における酸化珪素の酸素の組成比を規定して膜厚を小さくすると、光透過性の向上が図れる一方で、上記無機蒸着層におけるガスバリア性が低下してしまい、ガスバリアフィルム本来の機能を発揮できなくなってしまう。
そこで、本発明においては、無機蒸着層上に、所定の膜厚を有する金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成されたオーバーコート層を積層させることにより、無機蒸着層の光透過性を阻害せずに、上記無機蒸着層のガスバリア性を向上させることを可能とした。これは、後述する「2.オーバーコート層 (5)オーバーコート層の形成方法」の項で詳細に説明するが、無機蒸着層とオーバーコート層との界面において加水分解・共縮合による化学結合等が生じ、層間密着性が高まるためガスバリア性が向上するものと推量される。
さらに、ヒドロキシ基を有さないフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層を基材と無機蒸着層との層間に設けることにより、上記層間において高い密着性を有することができ、上記無機蒸着層のガスバリア性をさらに向上させることが可能となる。
すなわち、本発明のガスバリアフィルムは、上述の態様を有することにより、高いガスバリア性を維持しつつ、高い光透過性を示すことができる。
本発明のガスバリアフィルムは、基材、アンダーコート層、無機蒸着層、およびオーバーコート層を少なくとも有するものである。
以下、本発明のガスバリアフィルムの各構成について説明する。
1.無機蒸着層
本発明における無機蒸着層は、上記アンダーコート層上に、酸化珪素SiOx(1.7≦x≦2.2)で形成されたものである。
また、上記無機蒸着層は、本発明のガスバリアフィルムのガスバリア性に最も寄与する部位であり、膜厚が後述する範囲内にあり、透明性を有するものである。
上記無機蒸着層を形成する酸化珪素(SiO)は、酸素の組成比(x)によって着色を有するものとなる。詳しくは、SiO(黒色)、Si(褐色)、Si(黄色)というように、珪素1元素に対する酸素の組成比によって着色を有するものとなる。そのため酸素の組成比(x)が小さすぎると、得られる無機蒸着層が着色し、光透過性の低いものとなる。一方、酸素の組成比(x)が大きすぎると、無機蒸着層のガスバリア性が低下してしまうため、ガスバリアフィルム本来の機能が損なわれてしまう。
したがって、本発明においては、無機蒸着層を形成する上記酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)を所定の範囲内とすることにより、上記無機蒸着層のガスバリア性をある程度保持しつつ、光透過性を向上させることを可能にするものである。
上記無機蒸着層を形成する酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)の範囲としては、1.7≦x≦2.2の範囲内であるが、特に1.8≦x≦2.0の範囲内であることが好ましい。
なお、酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)は、SHIMADZU ESCA―3400を用いて分析したものである。
上記無機蒸着層は、酸化珪素SiOのみから形成されることが好ましいが、無機蒸着層の光透過性を低下させない程度に他の材料を含んでいてもよい。
上記無機蒸着層の膜厚としては、透明性を有しつつガスバリア性を発揮できる膜厚であることが好ましい。
無機蒸着層は、酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)を所定の範囲に規定し、膜厚を小さくすることにより光透過性を向上させることができるが、このときガスバリア性を向上させることが困難になる。
しかし、本発明においては、無機蒸着層上にオーバーコート層を積層させることにより、無機蒸着層の膜厚が小さい場合であっても、高いガスバリア性を有することができるため、上記無機蒸着層の膜厚は、透明性を有することが可能な範囲内で設定することが出来る。
上記無機蒸着層の膜厚として、具体的には、40nm〜80nmの範囲内であることが好ましい。
無機蒸着層の膜厚が上記範囲よりも大きいと、透明性が損なわれるため、ガスバリアフィルム全体としての光透過性が低下する場合があり、また、無機蒸着層と他の層との層間において光の反射が生じ、本発明のガスバリアフィルムの光透過性が低下する場合がある。さらに、無機蒸着層を基材上に積層させた際に、基材が破損する場合がある。
一方、上記範囲よりも小さいと、オーバーコート層を積層させても、無機蒸着層のガスバリア性を所望のレベルまで向上させることが困難となり、ガスバリアフィルム本来の機能が損なわれる場合がある。無機蒸着層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)製、S−5000H)の断面分析により測定した値である。
なお、以降の説明において、本発明のガスバリアフィルムを構成する各層の膜厚については、上記方法により測定されたものとする。
上記無機蒸着層の全光線透過率としては、後述する本発明のガスバリアフィルムの全光線透過率と同様であることが好ましい。上記全光線透過率については、「6.ガスバリアフィルム」の項で説明するため、ここでの記載は省略する。
また、上記無機蒸着層の屈折率としては、基材やアンダーコート層よりも低いことが望ましく、材料等に応じて適宜設定することができる。
無機蒸着層の形成方法としては、緻密で隙間の少ない層を成膜することが可能な方法であることが好ましい。緻密で隙間を少ない層とすることにより、酸素や水蒸気等のガスが透過しにくくなり、ガスバリア性を向上させることができるからである。
このような形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、物理気相成長法(PVD)、プラズマ化学気相成長法、大気圧プラズマ化学気相成長法等を用いることができ、中でもスパッタリング法を用いる事が好ましい。膜厚・膜質均一性に優れており生産性に優れているからである。
なお、上述した各種形成方法での成膜条件については、無機蒸着層の膜厚等を考慮し、従来公知の条件を適宜調整することが好ましい。
2.オーバーコート層
本発明におけるオーバーコート層は、上記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、膜厚が250nm〜500nmの範囲内のものである。
上記オーバーコート層は、具体的には、金属アルコキシドおよび水溶性高分子の重縮合により形成されるものであり、M−O−M(式中Mは金属原子)結合を有する無機質部分と有機質部分と有する有機−無機複合ポリマーである。なお、当該オーバーコート層が上述の材料の重縮合によるものであることは、フィールドエミッション透過電子顕微鏡分析、エネルギー分散型X線分光による無機粒子の種類と粒子径、TOF−SIMS分析による高分子側鎖の残鎖、X線光電子分光分析等により特定することができる。
上記オーバーコート層の膜厚は、250nm〜500nmの範囲内であるが、中でも250nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。
上述の無機蒸着層において、高い光透過性を有するために酸化珪素SiOの酸素の組成比(x)を所定の範囲内に規定して膜厚を小さくするため、上記無機蒸着層のみでガスバリア性を向上させることが難しくなる。
しかし、無機蒸着層上に金属アルコキシドおよび水溶性高分子の重縮合により形成されたオーバーコート層を有することにより、上記無機蒸着層と上記オーバーコート層との界面で結合が生じ、上記無機蒸着層のガスバリア性を向上させることが出来る。また、上記オーバーコート層を所定の膜厚とすることにより、無機蒸着層の光透過性を阻害することなくガスバリア性の向上を図ることができる。
上記オーバーコート層は、金属アルコキシドおよび水溶性高分子を、シランカップリング剤等と混合し、重縮合させてなるものである。以下、各材料について説明する。
(1)金属アルコキシド
上記オーバーコート層を形成する金属アルコキシドは、一般式RnM(OR)m(式中Mは金属原子、RおよびRは有機置換基)で表されるものである。
上記一般式で表される金属アルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができる。また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、およびその混合物であってもよい。
上記加水分解縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、中でも2量体〜6量体の範囲内のものを使用することができる。
上記一般式における金属原子Mとしては、Si、Ti、Al、Zr等が挙げられるが、中でもSi、すなわち本発明における金属アルコキシドがアルコキシシランである事が好ましい。上記オーバーコート層はSiOを含有する無機蒸着層上に成膜されるため、無機蒸着層のSiと同一金属を用いることにより、表面を覆うだけでなく無機蒸着層中のピンホールなどの欠陥を埋める際に無機蒸着膜とのネットワークを形成しやすく、結果として密着性やバリア性を向上させる要因になっていると考えられるからである。
上記一般式中のRとしては、炭素数が1〜8の範囲内、好ましくは1〜5の範囲内、より好ましくは1〜4の範囲内のアルキル基であり、分岐を有していてもよい。このようなRとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等を挙げることができる。
また上記一般式中のR2としては、炭素数が1〜8の範囲内、好ましくは1〜5の範囲内、より好ましくは1〜4の範囲内のアルキル基であり、分岐を有していてもよい。このようなRとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等を挙げることができる。
なお、同一分子中にRおよび(OR2)が複数存在する場合には、それぞれ同一の置換基であっても、異なる置換基であってもよい。
上記金属アルコキシドは、1種類のアルコキシシランであってもよく、2種以上のアルコキシシランを併用してもよい。また、上述したアルコキシシランを主成分として、他の金属アルコキシドを混合して用いてもよい。
(2)水溶性高分子
上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体が好ましい。
また、上記水溶性高分子は、ポリビニルアルコ一ル系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とをそれぞれ単独で使用しても良く、ポリビニルアルコ一ル系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを併用してもよい。
上記ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコール系樹脂、ヒドロキシ基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂等を用いることができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。
このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、特に限定されるものではなく、例えば、酢酸基が数十mol%残存している部分ケン化物、酢酸基が数mol%しか残存していない完全ケン化物、酢酸基が残存しない完全ケン化物等を用いることができる。
上記オーバーコート層が所望のガスバリア性を有するために、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体におけるケン化度としては、80mol%以上が好ましく、中でも90mol%以上が好ましく、特に95mol%以上であることが好ましい。
また、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体において、エチレンに由来する繰り返し単位の含量率(以下「エチレン含量率」と略する場合がある)は、通常、0mol%〜50mol%の範囲内が好ましく、中でも20mol%〜45mol%の範囲内であることが好ましい。
上記水溶性高分子において、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを併用する場合、配合比率としては、質量比でポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6程度であることが好ましい。
また、上述の金属アルコキシド100質部に対する水溶性高分子の含有率としては、5質量部〜500質量部の範囲内であることが好ましく、中でも20質量部〜200質量部の範囲内であることが好ましい。
金属アルコキシドに対する水溶性高分子の含有率が上記範囲よりも大きいと、オーバーコート層の脆性が大きくなり、耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、上記オーバーコート層においてガスバリア性が発揮できず、得られるガスバリアフィルムのガスバリア性が低下する場合がある。
(3)シランカップリング剤
上記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、既知のシランカップリング剤を用いることができる。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤等を用いることができる。このようなシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
上記シランカップリング剤の含有量としては、上記金属アルコキシド100質量部に対して1質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記範囲よりも大きいと、得られるハードコート層の剛性および脆性が大きくなる場合がある。
(4)オーバーコート層
上記オーバーコート層は、通常、上述の材料により金属アルコキシドおよび水溶性高分子を重縮合させて形成されるものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
(a)ゾル-ゲル触媒
上記オーバーコート層は、ゾル-ゲル触媒を含んでいてもよい。上記ゾル-ゲル触媒としては、主として重縮合触媒として使用される触媒を使用することができるが、中でも水に実質的に不溶であり且つ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性ゾル-ゲル触媒が好ましい。このようなゾル-ゲル触媒としては、例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができ、中でもN、N−ジメチルべンジルアミンの使用が好ましい。
上記ゾル-ゲル触媒の含有量としては、金属アルコキシドおよびシランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01質量部〜1.0質量部の範囲内であることが好ましい。
(b)その他
その他、添加剤としては、充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、可塑剤、抗菌剤、レベリング剤、消泡剤、安定剤等が挙げられる。
(5)オーバーコート層の形成方法
本発明におけるオーバーコート層の形成方法としては、無機蒸着層上に成膜できる方法であれば良いが、中でも、上述した材料を含むオーバーコート層形成用塗布液を無機蒸着層上に塗布した状態で、金属アルコキシドおよび水溶性高分子をゾル-ゲル法により重縮合させる方法が好ましい。
上記オーバーコート層形成用塗布液を無機蒸着層上に塗布した状態で、上記金属アルコキシドおよび水溶性高分子をゾル-ゲル法により重縮合させると、相互に化学的に反応して強固な三次元網目状の透明な有機−無機複合ポリマー層であるオーバーコート層が成膜される。
具体的には、ゾル-ゲル法により形成されるオーバーコート層は、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を有し、極性基(ヒドロキシ基)が部分的に分子内に存在する構造となる。
上記オーバーコート層は、上記構造において分子の凝集エネルギーが高いため、光透過性を有するものになると推量される。また、加水分解によって生じたヒドロキシ基およびシランカップリング剤由来のシラノール基が無機蒸着層の表面のヒドロキシ基と結合することで、無機蒸着層とオーバーコート層との間に加水分解・共縮合による化学結合等が形成される。
これにより、無機蒸着層とオーバーコート層との層間密着性が向上し無機蒸着層の表面が平坦化されるため、高いガスバリア性の効果を発揮することが可能になると推量される。
(a)オーバーコート層形成用塗布液
上記オーバーコート層形成用塗布液は、上述した金属アルコキシド、水溶性高分子、シランカップリング剤等から成るオーバーコート層形成用組成物に、酸、水および有機溶媒等を用いて調合されたものである。
なお、上記オーバーコート層形成用組成物の各組成物については、上述した内容と同様である。
上記オーバーコート層形成用塗布液に含まれる酸は、ゾル-ゲル法により金属アルコキシドおよび水溶性高分子を重縮合させる際に、加水分解のための触媒として機能するものである。上記酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、酒石酸等の有機酸等を使用することができる。
上記酸は、金属アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分をいう。)の総モル量に対し0.001mol〜0.05molの範囲内となるように、当該塗布液に含有されることが好ましい。
また、上記オーバーコート層形成用塗布液に含まれる水の割合としては、加水分解の進行を促進できる程度の量である事が好ましく、上記の金属アルコキシドの合計モル量1molに対して0.1mol〜100molの範囲内が好ましく、中でも0.8mol〜2molの範囲内が好ましい。オーバーコート層形成用塗布液に含まれる水の割合が上記範囲よりも大きいと、ゾル-ゲル法により形成される金属アルコキシド含有のポリマーが球状粒子となり、上記球状粒子同士が架橋して低密度の多孔性ポリマーを形成する場合がある。このため、上記多孔性ポリマーからなるオーバーコート層はガスバリア性が低下してしまう可能性がある。
上記オーバーコート層形成用塗布液に用いられる有機溶媒としては、上述した水溶性高分子の種類に応じて適宜選択することができる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素あるいはこれらの混合物等を用いることができる。
上記オーバーコート層形成用塗布液の固形分濃度としては、0.01質量部〜50質量部の範囲内、中でも0.05質量部〜25質量部の範囲内、特に0.1質量部〜10質量部の範囲内とすることが好ましい。
オーバーコート層形成用塗布液の固形分濃度を上記範囲内とすることにより、後述する塗布方法に適応可能な粘度を有し、均一な膜厚になるようにオーバーコート層を成膜することができるからである。
(b)形成方法
上記オーバーコート層形成用塗布液の塗布方法としては、所望の膜厚に成膜可能な方法であれば特に限定されないが、例えばバーコート、ディッピング法、スピンコート法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等を用いることができる。
上記塗布方法により無機蒸着層上にオーバーコート層形成用塗布液を塗布し、ゾル-ゲル反応により脱水重縮合をした後に、20℃〜200℃の範囲内、好ましくは140℃以上且つ後述する基材を構成する樹脂の融点以下の温度の範囲内で10秒〜10分間程度加熱処理することにより、塗膜を熱硬化させてオーバーコート層を形成することができる。
上記加熱処理方法としては、特に限定されるものではなく、例えば熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等の方法を用いることができる。
3.アンダーコート層
本発明におけるアンダーコート層は、上記基材上に、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたものである。
上記アンダーコート層は、具体的には、上述の構造を有するフルオレン系アクリレートのアクリレート基が架橋重合されて成るものである。
なお、以下の説明において、上述の構成を有するフルオレン系アクリレートを「ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレート」と称する場合がある。
本発明においては、上述のアンダーコート層を基材と無機蒸着層との間に設けることにより、基材と無機蒸着層との密着性が向上し、上記無機蒸着層の平滑性を高めることができる。このため、上記無機蒸着層におけるガスバリア性を向上させることができると推量される。
また、外部から熱や力を受ける際に、基材に生じる応力と無機蒸着層に生じる応力との差を上記アンダーコート層により緩和させることで、ガスバリアフィルム全体の変形を抑制することも可能になる。
さらに、上記アンダーコート層はヒドロキシ基を有さないことから、水分等の低分子成分を吸着しにくい。このため、上記アンダーコート層上に無機蒸着層を成膜する際に、吸着された水分等がガスとなって無機蒸着層の成膜を阻害するといった不具合が生じにくくなり、均一な膜厚を有し欠陥等の無い無機蒸着層とすることができる。これにより、上記無機蒸着層は高いガスバリア性を有することができると推量される。
(1)フルオレン系アクリレート
上記アンダーコート層におけるフルオレン系アクリレートは、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するもの(ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレート)である。
上記ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートとしては、一般式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
Figure 0005786874
上記一般式(1)において、R、Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、R、R、R、Rは水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましい。中でもR、R、R、R、R、Rは水素原子またはメチル基であることが好ましく、特にR、R、R、R、R、Rが同一で且つ水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
上記化学式において、n+nの値は1〜20の範囲内であることが好ましい。n+nの値が上記範囲よりも小さいと、結晶性が高くなり、アンダーコート層を成膜しにくくなる場合がある。一方、上記範囲よりも大きくなると、アンダーコート層中にアルキレンオキサイドの直鎖状の分子鎖が増大し、その分子鎖中に低分子成分を取り込みやすくなる恐れがある
中でも上記n+nの値は1〜6範囲内であることが好ましい。n+nの値が6よりも大きい場合、アンダーコート層のガラス転移温度Tgが低くなるため、アンダーコート層上に無機蒸着層を成膜する際の熱やプラズマ等の影響によって、アンダーコート層の結晶化が進み白色化する場合がある。
アンダーコート層が白色化すると光透明性が低下するため、本発明のガスバリアフィルムの全光線透過率が低下してしまう恐れがある。また、アンダーコート層の表面平滑性が損なわれ、上記アンダーコート層上に成膜される無機蒸着層にクラックが生じやすくなり、ガスバリア性が低下する恐れがある。
そのため、n+nの値を上記範囲内とすることにより、アンダーコート層のガラス転移温度Tgを高くすることができ、その結果、無機蒸着層のガスバリア性を損なわせず、高い光透明性を備えたアンダーコート層とすることができる。
なお、nおよびnの値は、同じであっても異なっていてもよい。
一般式(1)で表されるヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートは公知の方法で合成することができる。例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸クロリドを用いて、フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換ヒドロキシ基を含有する化合物を(メタ)アクリルエステル化することによって得られる。
上記フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換ヒドロキシ基を含有する化合物としては、例えば、9−フルオレンメタノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3、3’−ジメチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等を挙げることができる。
(2)開始剤
上記開始剤としては、アンダーコート層を成膜した際に着色しにくいものを使用することが好ましい。通常、開始剤は、上述のヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレート等の架橋反応を向上させる観点、および、目的とするアンダーコート層の強度等を向上させる観点から選択されるものである。しかし、上述の観点から選択される開始剤を用いる場合、アンダーコート層が着色を帯びてしまい、光透過性の低下を生じてしまう場合がある。
そのため、本発明においては、ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレート等を架橋させる際に着色しにくい開始剤を用いることが好ましい。
このような開始剤としては、ヒドロキシケトン系やアシルフォスフィンオキサイド系の開始剤を用いることが好ましい。
上記ヒドロキシケトン系開始剤としては、具体的に、α−ヒドロキシアルキルフェノン(例えばBASF IRGACURE184等)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](例えばlamberti社製、ESACURE ONE等)等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系の開始剤としては、具体的にBAPO(例えばBASF IRGACURE819など)等を用いることができる。
上記アンダーコート層における上記開始剤の含有率としては、ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートの全体量100質量部に対して、0.5質量部〜5.0質量部の範囲内が好ましく、中でも1.0質量部〜2.0質量部の範囲内が好ましい。
開始剤の含有量が上記範囲よりも多いと、上述したヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートを架橋させてアンダーコート層を成膜した際に、着色等が生じて光透過性が低下する場合があり、一方上記範囲よりも少ないと、十分に架橋させることができない場合がある。
(3)その他の材料
上記アンダーコート層は、上述の材料の他に、本発明のガスバリアフィルムの光透過性を阻害しない程度であれば、必要に応じてその他の材料を含んでいてもよい。
その他の材料としては、上述のヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートと併せて、ヒドロキシ基を構造内に含むフルオレン系アクリレート(以下、「ヒドロキシ基含有フルオレン系アクリレート」と称する場合がある。)を用いてもよい。この場合、ヒドロキシ基を構造内に含まないものと含むものとの質量比が、100:0〜50:50程度の範囲内、好ましくは100:0〜75:25の範囲内であることが好ましい。
上記質量比の範囲内となるように、フルオレン系アクリレートについてヒドロキシ基非含有のものとヒドロキシ基含有のものとを併用することにより、ガスバリア性をさらに高めることが可能となるからである。
また、ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートと併せて、その他の重合性化合物を用いてもよい。このような重合性化合物としては、ヒドロキシ基を構造内に含まないアクリレートを好ましく用いることができるが、ヒドロキシ基を構造内に含むアクリレートであってもよい。ヒドロキシ基を構造内に含むアクリレートを併用する場合、ヒドロキシ基を構造内に含まないものと含むものとの質量比が、100:0〜50:50程度の範囲内、好ましくは100:0〜75:25の範囲内であることが好ましい。
上記質量比の範囲内となるように、ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートとヒドロキシ基を構造内に含むまたは/および含まないアクリレートとを併用することにより、ガスバリア性を更に高めることが可能となるからである。
上記アクリレートの具体例としては、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ビスフェノールF・EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA・EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロハントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。上記アクリレートは、単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、上記アンダーコート層は、紫外線吸収剤を含有させてもよい。アンダーコート層に紫外線吸収剤を含有させることで、アンダーコート層を紫外線による黄変や白色化から保護することができる。
その他の材料としては、例えば、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、光拡散剤等を含んでいてもよい。
(4)アンダーコート層
上記アンダーコート層は、基材に対して所望の屈折率差を有することが好ましく、具体的には上記屈折率差が0.02以下であることが好ましく、特に屈折率差が無いことが好ましい。
アンダーコート層と基材との屈折率差が上記範囲よりも大きいと、ガスバリアフィルムに入射した光が各層において吸収され、または、アンダーコート層と基材との界面において光の反射が生じることにより、ガスバリアフィルム全体の光透過性が低下する場合がある。
なお、上記屈折率差は、分光エリプソメーター(JOBIN YVON社製、UVISEL)を用いて測定波長589nmの時の屈折率を測定し、各層の屈折率の値から算出されるものである。
上記アンダーコート層の膜厚としては、250nm〜50000nmの範囲内が好ましく
中でも500nm〜10000nmの範囲内が好ましい。
アンダーコート層の膜厚が上記範囲よりも大きいと、基材上に成膜した際に基材がたわむ等の不具合が生じる場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、無機蒸着層と基材との密着性が得られずガスバリア性が向上されない場合や、基材からの応力を受けて無機蒸着層が変形する場合がある。
(5)アンダーコート層の形成方法
上記アンダーコート層の形成方法としては、基材上に所望の膜厚を有するアンダーコート層を形成できる方法であればよく、中でも基材上に上述したヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレート、開始剤等の材料(以下、「アンダーコート層形成用組成物」と称する場合がある。)を含むアンダーコート層形成用塗布液を塗布し、その塗膜に紫外線等の電離放射線を照射して重合硬化させる方法(UV硬化法)が好ましい。この方法により、ヒドロキシ基非含有フルオレン系アクリレートのアクリレート基が架橋重合されて、アンダーコート層を形成することができる。
上記アンダーコート層形成用塗布液に用いられる溶媒としては、上記アンダーコート層形成用組成物および後述する塗布方法に応じて適宜選択することができる。上記溶媒として具体的には、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、またはこれらの混合液を挙げることができる。
上記アンダーコート層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ダイコート法等を用いることができる。
上記アンダーコート層形成用塗布液を塗布した後は、必要に応じて乾燥処理を行うことが好ましい。上記乾燥処理の温度は、常温であってもよいが、上記アンダーコート層形成用塗布液が溶媒を含有する場合は、上記溶剤の沸点以上の温度で乾燥処理を行うことが好ましい。
上記アンダーコート層形成用塗布液の塗膜に照射する電離放射線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、γ線等の電磁波、α線等の荷電粒子線等を用いることができるが、中でも汎用性が高いという点から、紫外線を用いることが好ましい。なお、上記紫外線の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等を使用することができる。
4.基材
本発明における基材は、透明樹脂で形成されたものである。中でもASTM D1003に基づき測定した全光線透過率が90%以上を示す透明樹脂で形成されることが好ましい。
上記基材が所定の上記全光線透過率を有すると共に、上述した各層についても高い光透過性を有するため、ガスバリアフィルム全体が所望の光透過性を有することができる。
なお、上記基材はシート状またはフィルム状であってもよい。
上記透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、およびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン(COP)等の非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フッ化ビニル(PVF)、フッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、等を用いることができる。
中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)が好ましい。ポリエチレンテレフタレート(PET)は高い全光線透過率およびガスバリア性を有しており、安価である点で好適である。また、ポリカーボネート(PC)および環状ポリオレフィン(COP)は、光学異方性が小さいことから、ディスプレイ等の表示装置や太陽電池等の電子部材に使用する際に好適である。
なお、上記基材は、上述の透明樹脂を2種類以上含有するものでもよい。
また、上記基材は上述の透明樹脂のみから形成されることが好ましいが、当該基材として上述の範囲内の全光線透過率を保持することができれば、公知の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。
上記基材は、密着性を高めるために、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、薬品処理などの従来公知の方法による表面処理を行ったものであっても良い。
上記基材の膜厚としては、特に限定されるものではなく、機械強度、可撓性、透明性等を考慮して適宜選択される。上記基材の具体的な膜厚としては、5μm〜500μmの範囲内が好ましく、中でも10μm〜200μmの範囲内が好ましい。
また、基材の幅や長さは特に制限はなく、適宜用途に応じて選択することができる。
5.その他の構成
本発明のガスバリアフィルムは、光透過性を損なわないものであれば、上述した各層以外にも他の層が設けられていてもよい。
(1)粘着層
本発明のガスバリアフィルムは、上記オーバーコート層上に粘着層を有することが好ましい。上記粘着層を有することにより、電子部材等の被着体への貼付に際して接着剤等を塗布する工程を必要としないため、貼付工程が容易となるからである。また、上記粘着層を介して、2以上のガスバリアフィルムを積層させることが可能となるからである。
上記粘着層は、透明性を有するものであることが好ましい。具体的には、当該粘着層の全光線透過率が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが更に好ましく、89%〜92%であることが最も好ましい。
また、上記粘着層は、霞度が低いことが好ましく、具体的には、0%〜3%の範囲内が好ましく、0%〜1.5%の範囲内が更に好ましい。
さらに、上記粘着層は、無色であることが好ましい。ただし、粘着層に用いられる材料自体が有色であっても、粘着層の厚さが薄い場合には実質的には無色とみなすことが可能である。
上述の特性を有する粘着層の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、α−オレフィン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル共重合物系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアセテート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイソブチレン(以下、「PIB」と称する)系樹脂等が挙げられる。中でも、本発明における粘着層は、PIB系樹脂を主成分とするものであることが好ましい。
上記PIB系樹脂は、イソブテンの重合による長鎖状炭化水素によって構成された合成樹脂であり、水蒸気バリア性及び粘着性が高いことを特徴とする。
PIB系樹脂の粘度平均分子量(Mv)としては、300,000〜500,000の範囲内が好ましく、この範囲内において高分子量のものを用いることが好ましい。以下、その理由について説明する。
PIB系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、得られる粘着層の水蒸気透過度、および粘着層を介して2以上のガスバリアフィルムを積層した際の剥離強度と関係がある。PIB系樹脂の粘度平均分子量が大きいほど、得られる粘着層の水蒸気に対するガスバリア性は高い(水蒸気透過度が低い)が、高分子量化に伴い粘着性が低下してしまう。このため、当該粘度平均分子量が上記範囲を下回る場合は、粘着層のガスバリア性が低下するので好ましくない。
一方、当該粘度平均分子量が上記範囲を超える場合、粘着層を介して2以上のガスバリアフィルムを積層した際の接着強度が低下するので好ましくない。
なお、上記粘度平均分子量はASTM D1601法によって測定したものである。また、この様なPIB系樹脂の市販品としては、例えば、オパノールB50SF(BASF社製)等が好適である。
また、上記粘着層は水添石油樹脂を含有していることが好ましい。上記水添石油樹脂は、粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる石油樹脂に水素を添加したものである。上記石油樹脂は、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレンやブタジエン等の有用な化合物を取り去った残りのC4〜C5留分(主としてC5留分)あるいはC5〜C9留分(主としてC9留分)を主原料として重合して得られた樹脂をいうが、本発明においては、ジシクロペンタジエンと芳香族ビニルモノマーとの共重合樹脂であることが好適である。上記水添石油樹脂の市販品としては、例えば、アイマーブP−100、P−125及びP−140(いずれも出光興産社製)等が好適である。
石油樹脂に対する水添率は、得られる粘着層の粘着性の観点から高いほうが好ましく、不飽和残基の量がJISK2605による臭素価で5g/100g未満であることが好ましい。
上記水添石油樹脂の蒸気圧式絶対分子量測定法(VPO法)による数平均分子量(Mn)は、660以上1000以下の範囲内が好ましい。当該数平均分子量が上記範囲よりも小さいと耐熱温度が上がらない場合があり、上記範囲よりも大きいと、得られる粘着層の貼り付け時の柔軟性が損なわれ、粘着付与剤としての機能を損なうこともある点から好ましくない。
さらに、上記水添石油樹脂のJISK2207における軟化点では100℃以上150℃以下の範囲内であることが好ましい。
上記PIB系樹脂と上記水添石油樹脂との質量比(PIB:水添石油樹脂)は、当該粘着層が所定の剥離強度を維持することができ、且つ、水蒸気に対するガスバリア性を有することが可能となる比率であることが好ましい。具体的には、PIB:水添石油樹脂=70:30〜90:10の範囲内となることが好ましい。その理由について、以下に述べる。
本来、剥離強度向上の点からは水添石油樹脂の量は多いほうが好ましいが、水蒸気に対するガスバリア性が低下してしまう。上記粘着層は、PIB系樹脂の各種分子量を上述の範囲内とすることにより、粘着付与性の一部をPIB系樹脂で補うことが可能となるため、上述の範囲内とすることにより、剥離強度性とガスバリア性の両方に優れた粘着層とすることができる。
PIB系樹脂の質量比が上記範囲を下回ると、粘着層の水蒸気に対するガスバリア性が低下する場合があり、一方で上記範囲を上回ると、粘着層の剥離強度が低下して初期の粘着性が劣る場合や、その後の剥がれを生じる場合等がある。
さらに、上記粘着層は、PIB系樹脂および水添石油樹脂の他に、スチレン系エラストマーを含有することが好ましい。スチレン系エラストマーを含有させることにより、得られる粘着層の耐熱性を向上させることができるからである。
上記スチレン系エラストマーとしては、中でもスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体であることが好ましい。一方、スチレン系エラストマーがスチレン−イソブチレンジブロック共重合体であると、粘着層の耐熱性が十分に得られない可能性がある点で好ましくない。
上記スチレン系エラストマーにおけるスチレン含有量としては、10質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。当該スチレン含有量が10質量%未満であると、高温下においてダレが生じて十分な粘着性能を得られない場合があり、一方、40質量%を超えると、粘着層の透明性を十分に確保できない場合がある。
また、PIB系樹脂とスチレン系エラストマーとの合計質量中におけるスチレン含有量の割合が1質量%〜5質量%の範囲内となるように、スチレン系エラストマーが配合されていることがより好ましい。
この様なスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、SIBSTAR102T、103T(いずれもカネカ社製)等が好適である。
上記粘着層の厚さとしては、特に限定されるものではなく、用途に応じて、適宜選択することができ、例えば10μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。当該厚さが10μm未満であると、十分な接着強度が得られない場合があり、一方、当該厚さが30μmを超えると、ガスバリア性能に対してコスト高となる場合や、加工条件によっては、十分な接着強度を示すための熱量や圧力が不足したりする場合がある。
上記粘着層は、2以上のガスバリアフィルムを積層した際に、積層界面で高い接着性および密着性を有することが好ましい。上記ガスバリアフィルムにおける基材とオーバーコート層とを上記粘着層を介して貼り合せたときの上記粘着層の180度T字剥離試験における剥離強度が、5N/25mm以上であることが好ましく、中でも10N/25mm 以上であることが好ましい。
なお、上記180度T字剥離強度は、引張り試験機(商品名:テンシロンRTF―1150h、エーアンドディー社製)を用い、上述したオーバーコート層上に粘着層および基材を積層させた試験片(長さ100mm、幅25mm)を、速度300mm/minで180°の剥離角度となるようにT字に引っ張り、測定したものである。
なお、上記粘着層は、オーバーコート層等の被着体に対して良好な接着性及び密着性を示すのみならず、端面からの水蒸気透過度を低く抑えることが可能であり、上記粘着層の端部に沿って封止材を設けなくても、当該端面からの水蒸気の侵入を防ぐことができる。
このため、例えば、本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ等に使用する際に、上記粘着層からの水蒸気の侵入により、内部の表示素子や回路に支障をきたすことを防ぐことできる。
上記粘着層の形成方法としては、オーバーコート層上に形成出来る方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、PIB系樹脂、水添石油樹脂およびスチレン系エラストマーを有機溶剤に溶解し分散させることにより、粘着層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を直接オーバーコート層に塗布し乾燥することにより、オーバーコート層上に粘着層を形成することができる。
この時、成膜した粘着層上に、さらに剥離可能な保護フィルム(剥離フィルム)をラミネートすることにより、上記粘着層を保護することが好ましい。
また、別途、粘着層を有する粘着フィルムを形成し、オーバーコート層上に当該粘着フィルムを貼り合せることにより形成する方法であっても良い。
詳しくは、上述の粘着層形成用塗布液を、剥離可能な保護フィルム、または剥離フィルムの剥離処理面上にアプリケータ等により全面塗布して粘着層を形成し、その後、該粘着層を乾燥させて粘着面に剥離フィルムをラミネートすることにより、粘着層を有する粘着フィルムを形成する。当該粘着フィルムの一方の剥離フィルムを剥がし、オーバーコート層と貼り合せることにより、当該オーバーコート層上に粘着層を形成することができる。
このとき、粘着フィルムが保護フィルムを有する場合、上記保護フィルムは粘着層と共にオーバーコート層上に貼り合わされるため、上記保護フィルムを本発明のガスバリアフィルムの保護層(最外層)として用いることができる。
また、粘着フィルムが両面に剥離フィルムを有する場合、一方の剥離フィルムは粘着層と共にオーバーコート層上に貼り合わされるため、本発明のガスバリアフィルムを被着体へ貼り付ける際の剥離層として用いることができる。
上記粘着層形成用塗布液を調製する際に用いられる有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。
また、上記粘着層形成用塗布液を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法、コンマコート法等が挙げられる。
上記保護フィルムは、シリコーン等で易剥離処理された剥離フィルムであってもよいし、PETフィルムやトリアセチルセルロースフィルム(以下「TACフィルム」と略する場合がある。)等であってもよい。剥離フィルムの市販品としてはシリコーン等で易剥離処理されているものを用いることができ、例えば、SP−PET−01及びSP−PET−03、SP−PET−04(いずれも三井化学東セロ社製)等が好適である。
なお、上述の保護フィルムは、本発明における保護層としても用いることができる。
(2)その他の層
本発明のガスバリアフィルムは、光透過性を損なわないものであれば、上述の粘着層の他に、印刷層、ヒートシール層、保護層、光学保補償層等を有していても良い。これらの層は、ハードコート層上に設けられていても良く、基板上に設けられていても良い。
また、1つの基材の両面に無機蒸着層等が形成される場合には、粘着層またはヒートシール層が形成されていない側に、保護層や光学保補償層を設けてもよい。
6.ガスバリアフィルム
本発明のガスバリアフィルムは、ディスプレイや太陽電池等の電子部材に使用に適した光透過性を有することが好ましい。当該ガスバリアフィルムの全光線透過率としては、93%以上であることが好ましく、中でも94%以上であることが好ましい。
ガスバリアフィルムの全光線透過率が上記範囲よりも小さいと、ディスプレイ表面等に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがあるからである。
なお、上記全光線透過率は、日本電色社製ヘイズメーターNDH2000を用いて測定した値の平均値である。
また、上記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率としては、1×10−g/m・day未満であることが好ましく、特に1×10−4g/m・day未満であることが好ましい。
水蒸気透過率が上記範囲よりも大きいと、ガスバリアフィルムとして機能を果たせない場合がある。
なお、上記水蒸気透過率は、測定温度40℃、湿度90Rhの条件下で、水蒸気透過率測定装置(Technolox社製 DELTAPARM)を用いて測定した値である。
上記ガスバリアフィルムは、基材の一方の表面に上述のアンダーコート層、無機蒸着層およびオーバーコート層が積層された態様であってもよく、図3(a)で例示されるように、基材1の両面に、上述のアンダーコート層2、無機蒸着層3およびオーバーコート層4が積層された態様であってもよい。
また、図3(b)で例示されるように、2つのガスバリアフィルム(10aおよび10b)が上述した粘着層5を介して積層された態様であってもよい。このとき、ガスバリアフィルム10aおよび10bは、対応する各部位が同一材料から構成されるものであっても良く、対応する各部位のうち、一部または全部が異なるものであっても良い。
なお、図3(b)では2つのガスバリアフィルムの積層態様を例示したものであるが、2以上のガスバリアフィルムを上述した粘着層5を介して積層させてもよい。
7.ガスバリアフィルムの製造方法
本発明のガスバリアフィルムの製造方法としては、一般的な積層フィルムの製造方法を用いることができる。当該製造方法の一例として、まず、基材上に所望の構造を有するフルオレン系アクリレートを含むアンダーコート層形成用塗布液を塗布し、当該塗膜に紫外線等の電離放射線を照射して架橋および硬化させることにより、アンダーコート層を形成する。次に、上記アンダーコート層上に、真空蒸着法を用いて所定の酸素組成比(x)を有する酸化珪素SiOを含む無機蒸着層を形成する。続いて、上記無機蒸着層上に金属アルコキシド等を含むオーバーコート層形成用塗布液を塗布し、ゾル-ゲル法により重縮合させることによりオーバーコート層を形成し、本発明のガスバリアフィルムを製造することができる。
なお、上記ガスバリアフィルムの各層の形成方法については、上述した各層の項で説明した方法と同様である。
8.用途
本発明のガスバリアフィルムの用途としては、ガスバリア性が求められる部位へ使用することができるが、中でもガスバリア性および光透過性の両方の特性が求められる部位への使用が好適である。この様な用途としては、携帯電話、電子書籍等の小型電子モバイルのディスプレイの表面パネル部材、ディスプレイにおける有機EL素子や液晶表示素子、および太陽電池等の電子部材、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられる。
図4は、本発明のガスバリアフィルムを用いたディスプレイの一例を示す概略断面図である。図4で例示されるように、上記ガスバリアフィルムのオーバーコート層4上に、例えば上述の材料から成る粘着層5を介して表示素子13を貼り付けることにより、ディスプレイ20とすることができる。なお、このとき、基材1のアンダーコート層2等が積層された面と反対の表面上に保護層12を有することが好ましく、観察者Aは上記保護層12側から表示素子13を視認することができる。また、本発明のガスバリアフィルムは、上記ディスプレイの表示素子を有する面と反対面における封止層としても利用できる。
本発明のガスバリアフィルムは、上記用途の他に、例えば、食品や医薬品等の包装材等としても用いることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(アンダーコート層の形成)
まず、基材として、膜厚50μmの両面処理PETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製、屈折率1.58)を準備し、上記基材の一側面上に以下の組成からなるアンダーコート層形成用塗布液を、スピンコート法を用いて塗布して120℃で2分間乾燥させた後、波長260μm〜400μmの範囲における積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、膜厚3000nmのアンダーコート層(屈折率=1.58)を形成した。
<アンダーコート層形成用塗布液>
・一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF) … 19質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030)… 19質量部
・トルエン … 60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE) … 2質量部
Figure 0005786874
(無機蒸着層の形成)
次に、上記アンダーコート層上に、ガスバリア性の無機蒸着層をスパッタリング法で形成した。具体的には、アンダーコート層を形成したPET基材を、バッチ式スパッタリング装置(アネルバ株式会社製、型名:SPF−530H)のチャンバー内に、アンダーコート層側に成膜する向きに設置し、Si(多結晶、豊島製作所株式会社製)をターゲット材として搭載した。ターゲットと、アンダーコート層が形成されたPET基材との距離は50mmに設定した。成膜時の添加ガスとして、酸素ガスとアルゴンガスを用いた。チャンバー内を1.0×10−4Pa以下に減圧した後、チャンバー内にアルゴンガスを流量10sccmで導入し、続けて酸素ガスを流量7sccmで導入した。そして、チャンバー内圧力を0.10Paに保ち、RFマグネトロンスパッタリング法により、投入電力1.0kWで、有機化合物層上に膜厚40nmの無機蒸着層(酸化珪素層)を形成した。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.84であった。
(オーバーコート層の形成)
続いて、上記無機蒸着層上に、以下の組成からなるオーバーコート層形成用塗布液を、スピンコート法を用いて塗布し、150℃で10分間熱硬化させることにより、膜厚250nmのオーバーコート層を形成した。
<オーバーコート層形成用塗布液>
以下の表1に示す組成に従って調製した組成aの混合液に、予め調製した組成bの加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のオーバーコート層形成用塗布液を得た。
Figure 0005786874
[実施例2]
オーバーコート層の膜厚を500nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.84であった。
[実施例3]
無機蒸着層の膜厚を60nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.77であった。
[実施例4]
無機蒸着層の膜厚を60nmとし、オーバーコート層の膜厚を500nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.77であった。
[実施例5]
無機蒸着層の膜厚を80nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=2.01であった。
[実施例6]
無機蒸着層の膜厚を80nmとし、オーバーコート層の膜厚を500nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=2.01であった。
[比較例1]
無機蒸着層の膜厚を100nmとし、無機蒸着層上にオーバーコート層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=2.11であった。
[比較例2]
上記基材の一側面上に以下の組成からなるアンダーコート層形成用塗布液を、ダイコート法を用いて塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、波長260μm〜400μmの範囲における積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、膜厚3000nmのアンダーコート層(屈折率=1.46)を形成したこと、および無機蒸着層の膜厚を100nmとし、上記無機蒸着層上にオーバーコート層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.88であった。
<アンダーコート層形成用塗布液>
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030)… 38質量部
・トルエン … 60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE) … 2質量部
[比較例3]
無機蒸着層の膜厚を80nmとし、オーバーコート層の膜厚を200nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.88であった。
[比較例4]
無機蒸着層の膜厚を80nmとし、オーバーコート層の膜厚を750nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.88であった。
[比較例5]
無機蒸着層の膜厚を80nmとしたこと、および以下の組成からなるオーバーコート層形成用塗布液を用いて、上記無機蒸着層上にスピンコート法を用いて塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、波長260μm〜400μmの範囲における積算光量300mJ、の条件で紫外線を照射し、膜厚2800nmのオーバーコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.88であった。
<オーバーコート層形成用塗布液>
・上記一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF) … 15質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030) … 15質量部
・シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM503) … 8質量部
・トルエン … 60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE) … 2質量部
Figure 0005786874
[比較例6]
無機蒸着層の膜厚を10nmとし、オーバーコート層の膜厚を500nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=2.23であった。
[比較例7]
無機蒸着層の成膜条件のうち酸素を添加せずに形成し、オーバーコート層の膜厚を500nmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、無機蒸着層の酸化珪素(SiO)の酸素の組成比はx=1.10であった。
[評価1]
実施例および比較例のガスバリアフィルムについて、水蒸気透過率および全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
水蒸気透過率が1×10−g/m・day未満で、且つ、全光線透過率が93%以上を示すものを○、水蒸気透過率または全光線透過率のどちらか一方、または両方とも範囲外であるものを×とする。
なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置Technolox社製 DELTAPARM)を用い、40℃、90%Rhの条件で測定した。また、全光線透過率は、日本電色社製ヘイズメーターNDH2000を用いて測定した値の平均値とした。
Figure 0005786874
実施例1〜6のガスバリアフィルムでは、水蒸気透過率が1×10−g/m・day未満で、且つ、全光線透過率が93%以上を示し、高いガスバリア性および光透過性を備えるものであった。
[実施例7]
(粘着フィルムの形成)
以下の組成からなる透明な粘着層形成用塗布液を調合した。次に、剥離可能な保護フィルム層である重剥離シート(商品名:SP−PET−04、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、膜厚:38μm、三井化学東セロ社製)の剥離処理面上に、乾燥後の膜厚が50μmとなるように上記粘着層形成用塗布液をアプリケータにより全面塗布した後、乾燥オーブンにより120℃で6分間乾燥させて、粘着層を形成した。
次いで、剥離可能な保護フィルム層である軽剥離シート(商品名:SP−PET−01、片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム、膜厚:38μm、三井化学東セロ社製)をラミネートして、粘着フィルムを得た。
<粘着層形成用塗布液>
・ポリイソブチレン樹脂(商品名:オパノールB50SF、粘度平均分子量(Mv):40万、BASF社製) … 70質量部
・水添石油樹脂(商品名:アイマーブP-140、ジシクロペンタジエンと芳香族ビニルモノマーとの共重合樹脂、数平均分子量(Mn):900、出光興産社製) … 30質量部
・希釈溶剤(商品名:試薬特級トルエン、和光純薬工業社製) … 400質量部
(粘着層付きガスバリアフィルムの形成)
次に、上記粘着フィルムの重剥離シートを剥離して、粘着層を実施例1のバリアフィルムのオーバーコート層上に積層し、JIS Z0237準拠の2kgfローラーで圧着させた。続いて、軽剥離シートを剥がして粘着層面を厚さ50μmの両面処理PETフィルム(商品名:A4300、東洋紡績社製)のコロナ面側と積層し、JIS Z0237準拠の2kgfローラー(商品名:SA−1003−B テープ圧着ロール手動型、テスター産業社製)にて圧着させて、PET50μm(処理面)/粘着層15μm/実施例1のガスバリアフィルムの順で積層されて成る粘着層付きガスバリアフィルムを得た。
その後、当該ガスバリアフィルムを24時間静置させて、180度T字評価用サンプルとした。
[評価2]
(180度T字剥離試験の評価)
実施例7で得られたガスバリアフィルムを、長さ100mm、幅25mmに切断し、試験片を作成した。当該試験片を引張り試験機(商品名:テンシロンRTF―1150h、エーアンドディー社製)で速度:300mm/min、剥離角:180°の条件でT字に引っ張り、剥離強度を測定した。剥離強度は22N/25mmであった。
1 … 基材
2 … アンダーコート層
3 … 無機蒸着層
4 … オーバーコート層
10 … ガスバリアフィルム

Claims (9)

  1. 透明樹脂で形成された基材と、
    前記基材上に、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層と、
    前記アンダーコート層上に、酸化珪素SiO(1.7≦x≦2.2)で形成された無機蒸着層と、
    前記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、膜厚が250nm〜500nmの範囲内であるオーバーコート層と
    を有するガスバリアフィルムであって、
    前記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が1×10 −3 g/m ・day未満であることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 透明樹脂で形成された基材と、
    前記基材上に、ヒドロキシ基を有さないオキシアルキレン基、およびフルオレン基を構成単位中に有するフルオレン系アクリレートにより形成されたアンダーコート層と、
    前記アンダーコート層上に、酸化珪素SiO(1.7≦x≦2.2)で形成された無機蒸着層と、
    前記無機蒸着層上に、金属アルコキシドおよび水溶性高分子により形成され、膜厚が250nm〜500nmの範囲内であるオーバーコート層と
    を有するガスバリアフィルムであって、
    前記オーバーコート層が、前記金属アルコキシド、前記水溶性高分子およびシランカップリング剤により形成され、前記シランカップリング剤がアミノ基含有シランカップリング剤またはメルカプト基含有シランカップリング剤であることを特徴とするガスバリアフィルム。
  3. 前記オーバーコート層が、前記金属アルコキシド、前記水溶性高分子およびシランカップリング剤により形成され、前記シランカップリング剤がアミノ基含有シランカップリング剤またはメルカプト基含有シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1に記載のガリバリアフィルム。
  4. 水蒸気透過率が1×10−3g/m・day未満であることを特徴とする請求項2に記載のガスバリアフィルム。
  5. 全光線透過率が93%以上であり、前記無機蒸着層の膜厚が40nm〜80nmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項4に記載のガスバリアフィルム。
  6. 前記オーバーコート層上に粘着層を有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のガスバリアフィルム。
  7. 前記ガスバリアフィルムにおける前記基材と前記オーバーコート層とを前記粘着層を介して貼り合せたときの、前記粘着層の180度T字剥離試験における剥離強度が、5N/25mm以上であることを特徴とする請求項6に記載のガスバリアフィルム。
  8. 前記粘着層が、ポリイソブチレン系樹脂を主成分とするものであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のガスバリアフィルム。
  9. 前記水溶性高分子がエチレン・ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載のガリバリアフィルム。
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