JP7114895B2 - ポリエチレンテレフタレートフィルム - Google Patents
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Description
このようなことから、いずれのフィルムも高度な難燃性と共に高い透明性と低着色が要求される用途には適さなかった。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、ポリエステル樹脂組成物を、薄く平坦な形状に成形加工したものである。
なお、ここで、ポリエステルフィルムの厚みとは、後述の塗布層や機能層を含まない厚みをいう。
本発明のポリエステルフィルムは、難燃剤として、下記化学式(1)で表わされる有機リン系化合物(以下、「有機リン系化合物(1)」と称す場合がある。)を含有することを特徴とする。なお、本発明においては下記化学式(1)を代表構造として示すものであり、炭素原子に結合する水素原子が置換されている構造も包含する。具体的には、下記化学式(1)において芳香環を構成する炭素原子、或いは2つのリン原子間を結合している炭素原子に結合している水素原子が、炭化水素基やハロゲン元素で置換されていてもよい。当該炭化水素基としては、炭素数が1~10のアルキル基等が挙げられる。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中のリン元素含有量は、有機リン系化合物(1)以外の由来のリン元素を含む場合においては、それを含めたすべてのリン元素を対象とする。具体的には、有機リン系化合物(1)以外のリン系難燃剤や、原料ポリエステルの製造時に用いた添加剤(助触媒等)、後述する不活性微粒子等が挙げられる。
なお、前述の通り、本発明のポリエステルフィルムが積層構造である場合、有機リン系化合物(1)はすべての層に含有されていることが好ましい。
ポリエステルフィルムは、必要に応じて各種の無機または有機の不活性微粒子を含有してもよい。
不活性微粒子の例としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、セライト、カオリン、タルク、カーボンブラックおよび特公昭59-5216号公報に記載の架橋高分子微粒子を挙げることができる。これらの微粒子は、必要に応じて1種類または2種類以上を併用することができる。
また、当該微粒子の添加量は、ポリエステルフィルム中の含有量として0.005重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.1重量%以下がさらに好ましい。
微粒子の平均粒径が小さすぎたり、添加量が少なすぎたりすると、微粒子を添加することによる取り扱い性、生産性の向上効果を十分に得ることができない場合があるが、微粒子の平均粒径が4.0μmを超える、あるいは添加量が0.5重量%を超えると、フィルムの平面性および/または透明性が損なわれる恐れがある。
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて通常のフィルム材料等に用いられるあらゆる添加剤を含有させることができる。その添加剤の例としては、例えば、ベースのポリエステル樹脂とは異なる高分子材料(ベースのポリエステル樹脂に対し相溶性か非相溶かは問わない)、顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線反射剤、赤外線反射剤、熱安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、造核剤、分子鎖伸長剤、架橋剤、樹脂強化用フィラーなどが挙げられる。これらの添加剤の添加量についても特に制限はない。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で有機リン系化合物(1)以外の難燃剤を含有していてもよい。有機リン系化合物(1)以外の難燃剤の種類や含有割合は限定されないが、有機リン化合物(1)の含有量に対し、50重量%以下で含有することが好ましく、5~20重量%の範囲とすることがより好ましい。
ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂以外のフィルム材料(その他の成分)とを混合するための方法は特に限定されず、例えばポリエステル樹脂とその他の成分を各種の押出機に投入して連続的に生産する方法や、容器中でバルク的に加熱攪拌して混合する方法が挙げられる。フィルム製造においては押出機を用いて連続生産する方法が好ましく、それらの成分はハンドリングの観点から、事前に高濃度マスターバッチ化されていてもよい。マスターバッチ製造においてポリエステル樹脂に他成分を混合するタイミングは、当該ポリエステル樹脂の重合後でも重合前でもよい。
本発明のポリエステルフィルムのヘーズ(曇り度)は通常10%以下であるが、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。ヘーズが10%を超えるフィルムは透明性に劣るため、透明感(視認性)を必要とするフィルムとして、不適となる場合がある。
なお、ポリエステルフィルムのヘーズは、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
本発明のポリエステルフィルムは、有機リン系化合物(1)を用いることで黄色みが少ないフィルムを得ることができ、光学用途等の着色が適さない用途への適用が可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、有機リン系化合物(1)を含有することで、良好な難燃性を有することができる。本発明のポリエステルフィルムの難燃性能は限定されないが、後述の実施例の項に記載の難燃性評価方法による難燃性がVTM-2であることが好ましく、VTM-1がより好ましく、VTM-0がさらに好ましい。なお、VTM-0、VTM-1、VTM-2の順に難燃性が良好であることを意味する。
これらの難燃性能は、本発明のポリエステルフィルム中における有機リン系化合物(1)の含有割合等で調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(Intrinsic Viscosity、固有粘度または極限粘度)は、好ましくは0.50dl/g以上であり、0.60dl/g以上がより好ましく、0.65dl/g以上がさらに好ましい。ポリエステルフィルムの固有粘度が0.50dl/g以上であると、フィルム強度が十分であり、製造中のフィルム破断が防止される。一方、ポリエステルフィルムの固有粘度の上限については特に限定しないが、生産性の観点から、1.1dl/g以下が好ましく、0.75dl/g以下がより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムには、塗布液の塗布、乾燥により塗布層を設けてもよい。ここで、当該塗布層の材料構成、塗布層を設ける目的、塗布層の機能等は限定されず、任意である。
塗布層はポリエステルフィルムの一方の面に形成してもよく、両方の面に形成してもよい。この場合、塗布層は、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成してもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングにより形成してもよく、両者を併用してもよい。フィルム製膜と同時に塗布が可能であるため安価に製造可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点で、インラインコーティングが好ましく用いられる。
中でも、塗布層の滑り性改良やブロッキング防止のために、塗布層中に無機粒子や有機粒子を配合することが好ましい。用いる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。
本発明のポリエステルフィルム上、或いは上記の塗布層上には、調光層、ITO等の透明導電層などの各種機能層が設けられてもよい。機能層はポリエステルフィルム上に直接設けられてもよいし、塗布層を介して、機能層がポリエステルフィルム上に設けられてもよい。機能層がポリエステルフィルム上に直接設けられ、かつ塗布、乾燥によって形成される場合は、当該機能層は前記の塗布層に相当する。
以下において、各種物性・特性は以下のように測定又は評価されたものである。
サンプルを1.0g/dlの濃度になるようフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの重量比1:1溶液中に加えた。この溶液を110℃で20分間加熱し、ポリエステル樹脂又はポリエステルフィルムを溶解させた後、容器を30分間水道水に浸して室温まで冷却させた。毛細管粘度計“VMS-022UPC・F10”(離合社製)を用いて、この溶液の流下時間、およびフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン溶液のみ(リファレンス液)の流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、粘度計の恒温水槽の温度は30℃とし、粘度計算に用いるHuggins定数は0.33とした。なお、固有粘度の単位は“dl/g”とする。
ヘーズメーター“NDH-5000”(日本電色工業製)を用いて、JIS K7136規格に基づいてフィルムのヘーズを測定した。
ICP発光分析装置(Varian社製、730-ES)を用いて、難燃性化合物又はポリエステルフィルムのリン元素含有量を測定した。測定にあたり、標準溶液としてSPEX製のXSTC-22(リン含有量100ppm)を使用し、原液、10倍希釈(同10ppm)、100倍希釈(同1ppm)の3種類の溶液から検量線を作成した。
分光測色計“CM-3700d”(コニカミノルタジャパン株式会社)を用いて、CIE1976(L*、a*、b*)色空間のb*を測定した。測定条件は、反射/透過=反射、正反射光処理=SCI、測定径=LAV(25.4mm)、UV条件=100%Fullとし、フィルムの総厚みが500μmに最も近くなるように複数枚のフィルムを重ねて測定した。
アンダーライターズラボラトリーズ(UL)社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94のVTM試験に基づき、ポリエステルフィルムの燃焼試験を行った。VTM試験は結果のばらつきが大きい試験であるため、評価の信頼性をより高める目的で、1種のポリエステルフィルムサンプルに対し通常5回ずつ試験を行うところを10回ずつ行った。以下に、難燃性評価手順について説明する。
引取方向を上下方向として200mm×50mmに裁断したフィルムを試料下端から125mmのところで試料の幅方向に標線を入れた。試料の縦軸を直径12.7mmの棒の縦軸に硬く巻きつけて、下端から125mmの標線が外側に露出する、長さ200mmの円筒状にした。標線より上(75mm側)5mmの所と、試料上端から下5mmの所にセロテープ(登録商標)を巻き付けて固定した。最後に棒を引き抜き、円筒状の試験片とした。
上記(i)により得られた試験片について、以下の(a)又は(b)の処理を施したものをそれぞれ10本ずつ用意した。なお、(a)を受理状態、(b)をエージング状態と称す。
(a)23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で48時間以上処理
(b)70℃±2℃で168±2時間処理後、23±2℃、相対湿度20%以下で4時間以上冷却
上記(ii)の試験片を使用し、(a)受理状態および(b)エージング状態それぞれ10本ずつの試験片に対して、上記のUL94のVTM試験を行った。
10本全ての試験片が下記表1のVTM-0、VTM-1、VTM-2の条件を満たすかどうかで評価した。ただし不合格の試験片が10本中1本のみの場合は合格とした。これは、本来のVTM試験が5本の試験片を1組として行われ、不合格が1本のみの場合は1度だけ再試験が許されていることを反映している。
なお、VTM試験において規定されている表1内の「試験片5本のt1(1回目の接炎試験における残炎時間(秒))とt2(2回目の接炎試験における残炎時間(秒))の総和」の値は、10本の試験片のうちt1とt2の合計が最も大きいものから5本の値の総和とした。
VTM-2以上が難燃性のあるフィルムとした。
フィルムを23℃×60%RHの条件で168時間空気暴露した。難燃剤のブリードアウトによる白化を確認するために空気暴露前後のフィルムのヘーズを前記(2)の方法で測定し、試験前後におけるフィルムのヘーズ変化量を算出した。ヘーズ変化量が低い程、ブリードアウトが少なく良好である。
下記評価基準に基づいて判断した。
(評価基準)
○:フィルム生産中にブリッジングが起こらず、安定していた。
△:フィルム生産中に軽微なレベルでブリッジングが発生したが、実用上問題なかった。
×:フィルム生産中に重大なレベルでブリッジングが発生し、押出しが困難であった。
下記評価基準に基づいて判断した。
(評価基準)
○:フィルム生産中にフィルム破断が起こらず安定していた。
△:フィルム生産中にしばしばフィルム破断が発生したが、実用上問題なかった。
×:フィルム生産中に頻繁にフィルム破断が発生し、製膜が困難であった。
実施例及び比較例は、以下の難燃性化合物を用いた。
下記化学式(1)で表わされる有機リン系化合物。
難燃性化合物2は以下のようにして製造した。
攪拌機、温度計、ガス吹き込み口、および蒸留口を備えた内容積3Lのガラス製フラスコに9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド(下記化学式(2)で表される化合物)7.8molとエチレングリコール25.97molを加え、成分を溶解させるため、内容物の温度が100℃になるまでフラスコを加熱した。次いで、攪拌しながらイタコン酸7.96molを添加し、蒸留口から減圧器を介して、フラスコを30Torrの真空状態で加熱して内容物を沸騰させ、生成した水を除去した。さらに、内容物の沸騰状態を維持したまま、フラスコ内の温度を上昇させ、それに対応させて、減圧させていった。その内訳として、内容物の温度が185℃になるまでに4時間を要し、この時点での減圧度は430Torrであった。さらに、加熱を続け、最終的に内容物の温度が200℃になるまで加熱した後、反応機に窒素ガスを吹き込んでフラスコを常圧に戻した。反応生成物は下記化学式(3)で表される化合物のエチレングリコール溶液である。また、減圧下、エチレングリコールを除去することにより、固形状の下記化学式(3)で表される化合物を精製した。
芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤であるPX-200(大八化学工業株式会社製)を、難燃性化合物3として用いた。難燃性化合物3中のリン元素含有量は9.0重量%であった。
実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂は以下のようにして製造した。
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩0.02重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、エステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03重量部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04重量部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温して280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度が0.64dl/gに相当する時点で反応を停止し、固有粘度0.64dl/gのポリエステル樹脂Aを得た。
ポリエステル樹脂Aを真空下、220℃で固相重合し、ポリエステル樹脂Bを得た。得られたポリエステル樹脂Bの固有粘度は0.85dl/gであった。
ポリエステル樹脂Aの製造において、エステル交換反応終了時に、平均粒径2.3μmのシリカ粒子をその含有量が0.6重量%となるように配合する以外はポリエステル樹脂Aと同様の方法でポリエステル樹脂Cを得た。得られたポリエステル樹脂Cの固有粘度は0.61dl/gであった。
ポリエステル樹脂Aを製造する際に、前記化学式(3)で表わされる化合物を、得られるポリエステル樹脂のリン元素含有量が3.0重量%になるように添加することで、難燃性共重合ポリエステル樹脂Xを得た。得られたポリエステル樹脂Xの固有粘度は0.57dl/gであった。
下記表2に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した同方向二軸押出機に送り込んで混練した。この溶融体をギヤポンプ、フィルターを介して、口金よりシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質なシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で4.0倍延伸し、その後、220℃で10秒間熱処理を施し、厚み50μmの単層ポリエステルフィルムを得た。
下記表2に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した中間層用の同方向二軸押出機Aおよび表層用の同方向二軸押出機Bにそれぞれ送り込んで混練した。これらの溶融体を、ギヤポンプ、フィルターを介して、表層/中間層/表層=5:40:5の厚み構成比になるよう多層口金内で合流させシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質な3層積層シートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で4.0倍延伸した後、横方向に125℃で3.0倍延伸し、その後、220℃で10秒間熱処理を施し、厚み50μmの多層ポリエステルフィルムを得た。
一方、特許文献1に記載の難燃性化合物である難燃性化合物2を用いた比較例1,2のうち、比較例1では、得られたポリエステルフィルムは難燃性が良好であったが、ヘーズとb*値が高かった。また、ブリッジングを起こしやすく、フィルム破断も頻発し、生産性に劣った。比較例2では、ポリエステル樹脂の固有粘度が低く、製膜中の固有粘度の低下でフィルムを製膜することができなかった。
芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤を用いた比較例3では、フィルムの難燃性、透明性、b*値は良好であったが、ブリードアウト試験で白化した。また、ブリッジングも発生し、生産性に劣った。
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