JP7167438B2 - 一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
本発明でいうポリエステルフィルムとは、ポリエステル樹脂組成物を、薄く平坦な形状に成形加工したものである。
なお、ここで、ポリエステルフィルムの厚みとは、後述の塗布層や機能層を含まない厚みをいう。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法では、含水率が10,000ppm以下の有機リン系難燃性化合物を用いてポリエステルフィルムを製造する(以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法で製造されたポリエステルフィルムも「本発明のポリエステルフィルム」と称す。)。この有機リン系難燃性化合物の含水率は好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは1,000ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。有機リン系難燃性化合物の含水率が高いと、フィルム成膜時の溶融工程でポリエステル樹脂が加水分解し、固有粘度が低下する。その結果、押出しの不安定化や、延伸を行う場合はフィルムの強度不足によるフィルム破断が発生しやすくなる。
有機リン系難燃性化合物の含水率は、空気中で加熱する熱風乾燥方式、真空ポンプを用いて減圧下で加熱する減圧乾燥方式、空気中の水分を吸湿剤で除去した乾燥空気を熱して加熱対象に送り込んで乾燥させる除湿乾燥方式により低減することができる。ただし、工業的な有機リン系難燃性化合物の製造、取り扱いにおいて、過度に含水率を低く保つことは困難であることから、通常、有機リン系難燃性化合物の含水率は10ppm以上である。
なお、有機リン系難燃性化合物の含水率は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
耐熱性の指標として、有機リン系難燃性化合物の分解温度(10%重量減少温度)は、好ましくは300℃以上、より好ましくは360℃以上であり、その上限は500℃である。有機リン系難燃性化合物の分解温度が上記下限以上であると、ポリエステルフィルム加工時に有機リン系難燃性化合物が分解せずポリエステルフィルムの難燃性が良好となり、生産性も向上する。有機リン系難燃性化合物の分解温度が上記上限を超えると、ポリエステルフィルムの燃焼が始まっても有機リン系難燃性化合物が分解せず、十分な難燃性が得られない場合がある。
なお、有機リン系難燃性化合物の10%重量減少温度は、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中のリン元素含有量は、有機リン系難燃性化合物以外の由来のリン元素を含む場合においては、それを含めたすべてのリン元素を対象とする。具体的には、有機リン系難燃性化合物以外のリン系難燃剤や、原料ポリエステルの製造時に用いた添加剤(助触媒等)、後述する不活性微粒子等が挙げられる。
なお、前述の通り、本発明のポリエステルフィルムが積層構造である場合、有機リン系化合物(1)等の有機リン系難燃性化合物はすべての層に含有されていることが好ましい。
ポリエステルフィルムは、必要に応じて各種の無機または有機の不活性微粒子を含有してもよい。
不活性微粒子の例としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、セライト、カオリン、タルク、カーボンブラックおよび特公昭59-5216号公報に記載の架橋高分子微粒子を挙げることができる。これらの微粒子は、必要に応じて1種類または2種類以上を併用することができる。
また、当該微粒子の添加量は、ポリエステルフィルム中の含有量として0.005重量%以上0.5重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.1重量%以下がさらに好ましい。
微粒子の平均粒径が小さすぎたり、添加量が少なすぎたりすると、微粒子を添加することによる取り扱い性、生産性の向上効果を十分に得ることができない場合があるが、微粒子の平均粒径が3.0μmを超える、あるいは添加量が0.5重量%を超えると、フィルムの平面性および/または透明性が損なわれる恐れがある。
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて通常のフィルム材料等に用いられるあらゆる添加剤を含有させることができる。その添加剤の例としては、例えば、ベースのポリエステル樹脂とは異なる高分子材料(ベースのポリエステル樹脂に対して相溶性か非相溶性かは問わない)、顔料、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線反射剤、赤外線反射剤、熱安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、造核剤、分子鎖伸長剤、架橋剤、樹脂強化用フィラーなどが挙げられる。これらの添加剤の添加量についても特に制限はない。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で有機リン系難燃性化合物以外の難燃剤を含有していてもよい。有機リン系難燃性化合物以外の難燃剤の種類や含有割合は限定されないが、有機リン難燃性化合物の含有量に対し、50重量%以下で含有することが好ましく、5~20重量%の範囲とすることがより好ましい。
ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂以外のフィルム材料(その他の成分)とを混合するための方法は特に限定されず、例えばポリエステル樹脂とその他の成分を各種の押出機に投入して連続的に生産する方法や、容器中でバルク的に加熱攪拌して混合する方法が挙げられる。フィルム製造においては押出機を用いて連続生産する方法が好ましく、それらの成分はハンドリングの観点から、事前に高濃度マスターバッチ化されていてもよい。マスターバッチ製造においてポリエステル樹脂に他成分を混合するタイミングは、当該ポリエステル樹脂の重合後でも重合前でもよい。
本発明のポリエステルフィルムのヘーズ(曇り度)は通常10%以下であるが、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。ヘーズが10%を超えるフィルムは透明性に劣るため、透明感(視認性)を必要とするポリエステルフィルムとして、不適となる場合がある。
なお、ポリエステルフィルムのヘーズは、後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
本発明のポリエステルフィルムは、前述の有機リン系化合物(1)等の有機リン系難燃性化合物を含有することで、良好な難燃性を有することができる。本発明のポリエステルフィルムの難燃性能は限定されないが、後述の実施例の項に記載の難燃性評価方法による難燃性がVTM-2であることが好ましく、VTM-1がより好ましく、VTM-0がさらに好ましい。なお、VTM-0、VTM-1、VTM-2の順に難燃性が良好であることを意味する。
これらの難燃性能は、本発明のポリエステルフィルム中における有機リン系難燃性化合物の含有割合等で調整することができる。
本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(Intrinsic Viscosity、固有粘度または極限粘度)は、通常0.51dl/g以上であり、0.55dl/g以上が好ましく、0.60dl/g以上がさらに好ましい。ポリエステルフィルムの固有粘度が0.51dl/g未満の場合、フィルム強度が不足して製造中のフィルム破断が頻発する恐れがある。一方、ポリエステルフィルムの固有粘度の上限については特に限定しないが、生産性の観点から、0.90dl/g以下が好ましく、0.70dl/g以下がより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムには、塗布液の塗布、乾燥により塗布層を設けてもよい。ここで、当該塗布層の材料構成、塗布層を設ける目的、塗布層の機能等は限定されず、任意である。
塗布層はポリエステルフィルムの一方の面に形成してもよく、両方の面に形成してもよい。この場合、塗布層は、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成してもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングにより形成してもよく、両者を併用してもよい。フィルム製膜と同時に塗布が可能であるため安価に製造可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点で、インラインコーティングが好ましく用いられる。
中でも、塗布層の滑り性改良やブロッキング防止のために、塗布層中に無機粒子や有機粒子を配合することも可能である。用いる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。
本発明のポリエステルフィルム上、或いは上記の塗布層上には、調光層、ITO等の透明導電層などの各種機能層が設けられてもよい。機能層はポリエステルフィルム上に直接設けられてもよいし、塗布層を介して、機能層がポリエステルフィルム上に設けられてもよい。機能層がポリエステルフィルム上に直接設けられ、かつ塗布、乾燥によって形成される場合は、当該機能層は前記の塗布層に相当する。
以下において、各種物性・特性は以下のように測定又は評価されたものである。
サンプルを1.0g/dlの濃度になるようフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの重量比1:1溶液中に加えた。この溶液を110℃で20分間加熱し、ポリエステル樹脂又はポリエステルフィルムを溶解させた後、容器を30分間水道水に浸して室温まで冷却させた。毛細管粘度計“VMS-022UPC・F10”(離合社製)を用いて、この溶液の流下時間、およびフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン溶液のみ(リファレンス液)の流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、粘度計の恒温水槽の温度は30℃とし、粘度計算に用いるHuggins定数は0.33と仮定した。なお、固有粘度の単位は“dl/g”とする。
ヘーズメーター“NDH-5000”(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136規格に基づいてフィルムのヘーズを測定した。
ICP発光分析装置(Varian社製、730-ES)を用いて、難燃性化合物又はポリエステルフィルムのリン元素含有量を測定した。測定にあたり、標準溶液としてSPEX製のXSTC-22(リン含有量100ppm)を使用し、原液、10倍希釈(同10ppm)、100倍希釈(同1ppm)の3種類の溶液から検量線を作成した。
熱重量測定装置(島津製作所社製、DTG-60)を用いて、難燃性化合物を10℃/minの速度で25℃から500℃まで昇温させた。測定開始後、測定前の難燃性化合物の重量から10%重量が減少した際の温度を10%重量減少温度とした。
アンダーライターズラボラトリーズ(UL)社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94のVTM試験に基づき、ポリエステルフィルムの燃焼試験を行った。VTM試験は結果のばらつきが大きい試験であるため、評価の信頼性をより高める目的で、1種のポリエステルフィルムサンプルに対し通常5回ずつ試験を行うところを10回ずつ行った。以下に、難燃性評価手順について説明する。
引取方向を上下方向として200mm×50mmに裁断したフィルムを、試料下端から125mmのところで試料の幅方向に標線を入れた。試料の縦軸を直径12.7mmの棒の縦軸に硬く巻きつけて、下端から125mmの標線が外側に露出する、長さ200mmの円筒状にした。標線より上(75mm側)5mmの所と、試料上端から下5mmの所にセロテープ(登録商標)を巻き付けて固定した。最後に棒を引き抜き、円筒状の試験片とした。
上記(i)により得られた試験片について、以下の(a)又は(b)の処理を施したものをそれぞれ10本ずつ用意した。なお、(a)を受理状態、(b)をエージング状態と称す。
(a)23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で48時間以上処理
(b)70℃±2℃で168±2時間処理後、23±2℃、相対湿度20%以下で4時間以上冷却
上記(ii)の試験片を使用し、(a)受理状態および(b)エージング状態それぞれ10本ずつの試験片に対して、上記のUL94のVTM試験を行った。
10本全ての試験片が下記表1のVTM-0、VTM-1、VTM-2の条件を満たすかどうかで評価した。ただし不合格の試験片が10本中1本のみの場合は合格とした。これは、本来のVTM試験が5本の試験片を1組として行われ、不合格が1本のみの場合は1度だけ再試験が許されていることを反映している。
なお、VTM試験において規定されている表1内の「試験片5本のt1(1回目の接炎試験における残炎時間(秒))とt2(2回目の接炎試験における残炎時間(秒))の総和」の値は、10本の試験片のうちt1とt2の合計が最も大きいものから5本の値の総和とした。
VTM-2以上が難燃性のあるフィルムとした。
下記評価基準に基づいて判断した。
(評価基準)
○:フィルム生産中にブリッジングが起こらず、安定していた。
△:フィルム生産中に軽微なレベルでブリッジングが発生したが、実用上問題なかった。
×:フィルム生産中に重大なレベルでブリッジングが発生し、押出しが困難であった。
下記評価基準に基づいて判断した。
(評価基準)
◎:フィルム生産中にフィルム破断が起こらず安定していた。
○:フィルム生産中に稀にフィルム破断が発生したが、実用上問題なかった。
△:フィルム生産中にしばしばフィルム破断が発生したが、実用上問題なかった。
×:フィルム生産中に頻繁にフィルム破断が発生し、製膜が困難であった。
自動加熱水分気化装置(平沼産業社製、EV-2010)、水分測定装置(平沼産業社製、AQ-2200)を用いてカールフッシャー法により含水率を測定した。
実施例及び比較例で用いた難燃性化合物は以下のようにして製造した。
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9-ジベンジロキシ-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン40mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール50mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約3時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで2回洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×102Paで20時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。この反応を数回繰り返すことで、必要量の有機リン系化合物(1)である難燃性化合物1を確保した。ICP発光分析によって測定された難燃性化合物1中のリン元素含有量は15重量%で、熱重量測定より10%重量減少温度は364℃と求められた。また、カールフィッシャー法により求められた含水率は100ppmであった。
攪拌機、温度計、ガス吹き込み口、および蒸留口を備えた内容積3Lのガラス製フラスコに9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド(下記化学式(2)で表される化合物)7.8molとエチレングリコール25.97molを加え、成分を溶解させるため、内容物の温度が100℃になるまでフラスコを加熱した。次いで、攪拌しながらイタコン酸7.96molを添加し、蒸留口から減圧器を介して、フラスコを30Torrの真空状態で加熱し、内容物を沸騰させ、生成した水を除去した。さらに、内容物の沸騰状態を維持したまま、フラスコ内の温度を上昇させ、それに対応させて、減圧させていった。その内訳として、内容物の温度が185℃になるまでに4時間を要し、この時点での減圧度は430Torrであった。さらに、加熱を続け、最終的に内容物の温度が200℃になるまで加熱した後、反応機に窒素ガスを吹き込んでフラスコを常圧に戻した。反応生成物は下記化学式(3)で表される化合物のエチレングリコール溶液である。また、減圧下、エチレングリコールを除去することにより、固形状の下記化学式(3)で表される化合物を精製した。
GPC分析より、この難燃性化合物2の重量平均分子量は10,000と求められた。ICP発光分析によって測定された難燃性化合物2中のリン元素含有量は8重量%で、熱重量測定より10%重量減少温度は374℃と求められた。また、カールフィッシャー法により求められた含水率は1,000ppmであった。
難燃性化合物2を25℃、50%RHの環境で含水率が5,000ppmになるまで暴露し、難燃性化合物3を得た。
難燃性化合物2を25℃、50%RHの環境で含水率が11,000ppmになるまで暴露し、難燃性化合物4を得た。
リン酸二水素アンモニウム100重量部に対し水酸化カリウムを67重量部配合し、これに水を100重量部加えて水溶液にした。この後、当該水溶液を100~120℃で加熱しながら攪拌して水分を蒸発させると共に、アンモニアを飛散させて粒子状結晶の難燃性化合物5を得た。
実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂は以下のようにして製造した。
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩0.02重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、エステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03重量部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04重量部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温して280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度が0.64dl/gに相当する時点で反応を停止した。得られたポリエステルを真空下、220℃で固相重合し、ポリエステル樹脂Aを得た。得られたポリエステル樹脂Aの固有粘度は0.85dl/gであった。
ポリエステル樹脂Aの製造において、エステル交換反応終了時に、平均粒径2.3μmのシリカ粒子をその含有量が0.6重量%となるように配合する以外はポリエステル樹脂Aと同様の方法でポリエステル樹脂Bを得た。得られたポリエステル樹脂Bの固有粘度は0.61dl/gであった。
下記表2に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した同方向二軸押出機に送り込んで混練した。この溶融体をギヤポンプ、フィルターを介して、口金よりシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質なシートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で3.0倍延伸し、その後、215℃で10秒間熱処理を施し、厚みが25μm、50μm又は100μmの単層ポリエステルフィルムを得た。
下記表2に記載の割合で混合した原料を、280℃に設定した中間層用の同方向二軸押出機Aおよび表層用の同方向二軸押出機Bにそれぞれ送り込んで混練した。これらの溶融体を、ギヤポンプ、フィルターを介して、表層/中間層/表層=5:40:5の厚み構成比になるよう多層口金内で合流させシート状に押出し、表面温度を30℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用して急冷固化させ、実質的に非晶質な3層積層シートを得た。得られた非晶質シートを縦方向に85℃で3.0倍延伸した後、横方向に125℃で3.0倍延伸し、その後、215℃で10秒間熱処理を施し、厚み50μmの多層ポリエステルフィルムを得た。
一方、有機リン系難燃性化合物を含まない比較例1のポリエステルフィルムは、難燃性に劣る。
含水率が高い有機リン系難燃性化合物を用いた比較例2のポリエステルフィルム、および無機リン系化合物を用いた比較例3のポリエステルフィルムは、難燃性は良好であるが、透明性が低く、フィルム製造工程における固有粘度の低下によって、フィルムの破断が頻発した。
実施例7の方法で製造した3層積層ポリエステルフィルムを基材フィルムとして用い、以下の手順で自動調光フィルムを製造した。
ポリエーテルウレタンエマルジョン(水不揮発分40重量%)100重量部に対して、ネマチック液晶(複屈折率Δn=0.132)64重量部を添加した。この混合物をホモジナイザー(日本精機製)にて回転数8000rpmで10分間攪拌し、液晶エマルジョンを得た。続いてポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルをイオン交換水に溶解し、50重量%の水溶液を調製した。前述の液晶エマルジョンを低速で攪拌しながら、この水溶液を4.8重量部添加することで、調光材料を得た。
基材フィルム表面に、アルゴンガス95%と酸素ガス5%とからなる0.4Paの雰囲気下で、酸化インジウム95重量%、酸化スズ5重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚み100nmのITO膜(透明導電性薄膜)を成膜し、成膜後150℃×1時間の加熱処理により結晶化させた。
得られた透明電極フィルムの透明性(視認性)は良好であった。
上記で得られた前記透明電極フィルムのITO層上に、ワイヤーバーを用いて前述の調光材料を塗布し、100℃下で10分間真空乾燥させた。乾燥後の調光材料層の厚みは、45μmであった。続いて、調光材料層の上から、ITO層が対向するようにもう1枚の透明電極フィルムを貼り合せることで、自動調光フィルムを得た。この自動調光フィルムは不透明であるが、厚み方向に100Vの電圧を印加することで透明性が向上し、自動調光フィルムとして正常に動作することが分かった。
Claims (9)
- 下記化学式(1)で表わされる有機リン系化合物を含有し、固有粘度が0.62~0.70dl/g、且つ、下記の評価方法による難燃性がVTM-0であり、且つ、厚みが100μm以下であることを特徴とする、一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
下記(i)の方法で作成したサンプルについて、下記(ii)のコンディショニングを行った後、下記(iii)の難燃性の測定を行って評価する。
(i)サンプル作成
引取方向を上下方向として200mm×50mmに裁断したフィルムを、試料下端から125mmのところで試料の幅方向に標線を入れる。試料の縦軸を直径12.7mmの棒の縦軸に硬く巻きつけて、下端から125mmの標線が外側に露出する、長さ200mmの円筒状にした。標線より上(75mm側)5mmの所と、試料上端から下5mmの所にセロテープ(登録商標)を巻き付けて固定する。最後に棒を引き抜き、円筒状の試験片とする。
(ii)コンディショニング
上記(i)により得られた試験片について、以下の(a)又は(b)の処理を施したものをそれぞれ10本ずつ用意する。(a)を受理状態、(b)をエージング状態と称す。
(a)23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で48時間以上処理
(b)70℃±2℃で168±2時間処理後、23±2℃、相対湿度20%以下で4時間以上冷却
(iii)難燃性の測定及び評価
上記(ii)の試験片を使用し、(a)受理状態および(b)エージング状態それぞれ10本ずつの試験片に対して、アンダーライターズラボラトリーズ(UL)社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94のVTM試験に基づき、ポリエステルフィルムの燃焼試験を行う。
10本全ての試験片が下記表1のVTM-0、VTM-1、VTM-2の条件を満たすかどうかで評価する。ただし不合格の試験片が10本中1本のみの場合は合格とする。
なお、VTM試験において規定されている表1内の「試験片5本のt1(1回目の接炎試験における残炎時間(秒))とt2(2回目の接炎試験における残炎時間(秒))の総和」の値は、10本の試験片のうちt1とt2の合計が最も大きいものから5本の値の総和とする。
- ヘーズが3%以下である請求項1に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- いずれか一方の表面に機能層が設けられた請求項1又は2に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記機能層が調光層である請求項3に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記機能層が透明導電層である請求項3に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記有機リン系化合物の含有量が1~60重量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記有機リン系化合物の含有量が1~9.2重量%である請求項6に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 前記有機リン系化合物の含有量が5~9.2重量%である請求項7に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の一軸または二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた調光フィルム。
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