以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載されている装置の構造は、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられているものである。以下説明では、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
図1を参照し、コンロ1の構造を説明する。コンロ1はビルトインコンロである。コンロ1は筐体2を備え、該筐体2の内側にグリル装置20を備える。グリル装置20は、グリル庫25内が中板40によって調理空間27と加熱空間28に上下に区画された所謂「間接加熱方式」のグリル装置である。
筐体2の上部には、天板3が設けられている。天板3において、右手前には右コンロバーナ4、中央奥側には奥コンロバーナ5、左手前には左コンロバーナ6が設けられている。天板3の後方部には、排気口7が設けられている。排気口7からは、筐体2内に設置されたグリル装置20のグリル庫25(図2参照)からの燃焼排気が外部に排出される。筐体2の前面の略中央には、グリル扉21が手前側に引き出し可能に設けられている。グリル扉21は、グリル装置20のグリル庫25の前面に設けられたグリル開口部26を開閉する。
グリル扉21の右側の領域には、右側から左側に向かって順に、操作ボタン11〜13が横一列に並んで設けられている。グリル扉21の左側の領域には、操作ボタン11〜13と同一高さ位置に、操作ボタン14が設けられている。操作ボタン11は右コンロバーナ4、操作ボタン12は奥コンロバーナ5、操作ボタン13は左コンロバーナ6、操作ボタン14は、グリル庫25内の上火バーナ50及び下火バーナ60を点火及び消火する為に押下される。操作ボタン11〜14は、対応するバーナの消火時、コンロ1の前面とほぼ面一の状態である(図1参照)。点火の為に押下されると、対応するバーナへの点火処理が実行され、公知のプッシュ・プッシュ機構(図示略)によって、操作ボタン11〜14は、コンロ1前面から前方に向けて略円柱状に突出し、該突出した状態で回動操作が可能となる。操作ボタン11〜14を回動操作すると、操作ボタン11〜14の回動操作量に応じたガス量になるように、対応するバーナへのガス供給量が調整される。
図2〜図5を参照し、グリル装置20の構造を説明する。グリル装置20は、略直方体状のグリル庫25を備える。グリル庫25は、上壁部251と下側筐体部252を備える。下側筐体部252は、グリル庫25の下側部分であり、断面視略U字状に形成されている。上壁部251は蓋状に形成され、下側筐体部252の開口する上部を覆うように固定されている。上壁部251の上側には、遮熱板29(図2参照)が取り付けられている。そのようなグリル庫25の開口する前面には、略矩形状のグリル開口部26(図3参照)が設けられている。グリル開口部26の前側には、グリル扉21が設けられている。グリル扉21の前面上部には、前方に突出する取手22が設けられている。グリル扉21は、レール機構80(図5参照)によって前後方向にスライド移動可能に設けられている。レール機構80は、下側筐体部252の内側の左右両側に夫々取り付けられ、例えば周知のスライドレール機構を採用できる。レール機構80は、例えば、固定レール部81と可動レール部82(図5参照)を備える。固定レール部81は、下側筐体部252の左右両側壁の近傍に支持され、前後方向に延設されている。可動レール部82は、固定レール部81に沿って前後方向に移動可能に設けられ、前後方向に延設されている。左右一対の可動レール部82の前端部には、前板部83が左右方向に架け渡して固定されている。前板部83の前面には、グリル扉21の背面下部が着脱可能に連結されている。
前板部83の上部には、皿支持枠17が着脱可能に取り付けられている。皿支持枠17は、調理皿10を略水平に支持する。皿支持枠17は、例えば金属棒を屈曲して加工され、前側枠部17A、一対の摺動部17B(図5参照)、後側枠部17Cを備える。前側枠部17Aは、前板部83の上部に着脱可能に取り付けられると共に、上方向に立設され、皿支持枠17の前端部を下方から支持する。一対の摺動部17Bは、前側枠部17A下部の左右の両端部から後方に略水平に延設され、グリル扉21の前後方向への移動に伴い、中板40の上面を前後方向に摺動する。後側枠部17Cは、一対の摺動部17Bの夫々の後端部の間を上方向に立設され、皿支持枠17の後端部を下方から支持する。それ故、皿支持枠17の一対の摺動部17Bと、左右一対のレール機構80との間には、後述する中板40を配置する為の空間が形成されている。
図3に示すように、調理皿10の底部には、魚等の被調理物が載置される。調理皿10の底部は凹凸面を有するが、フラットな平面でもよい。調理皿10は金属製であるが、好ましくは、熱伝導率の高い素材を用いるのがよい。そして、皿支持枠17の前側枠部17Aと後側枠部17Cに対して、調理皿10の外縁部を上方から係止させることで、調理皿10が皿支持枠17によって支持される。使用者は、グリル扉21の取手22を手前側に引き出し、グリル扉21を前方に移動させることによって、調理皿10をグリル庫25外へ取り出すことができる。
グリル庫25の内側の空間は、略水平に配置された中板40によって上下に区画されている。中板40は、グリル庫25内の上下方向の中段位置よりもやや下側において、水平面に対して前端側から後端側にかけて、斜め上方に傾斜して設けられている。中板40の具体的形状は後述する。中板40の上側には調理空間27、中板40の下側には加熱空間28が形成されている。調理空間27において、グリル庫25の上壁部251には、上火バーナ50が設けられている。上火バーナ50は、プレート状に薄型化された平面バーナであり、下面には、多数の炎孔を配列することによって構成された炎孔部510(図4参照)が設けられている。炎孔部510は、下方に向けて多数の火炎を形成する。
グリル扉21を手前に引き出した状態(図3参照)から後方に移動させると、レール機構80により、グリル扉21は後方に移動する。これに伴い、皿支持枠17の一対の摺動部17Bは、中板40の上面の左右両側に設けられたレール状の一対のガイド部101,102(図3,図5,図6参照)の夫々の上面を後方に向けて摺動する。グリル扉21がグリル庫25の前側の開口端に当接すると、グリル開口部26がグリル扉21によって閉じられ、調理空間27において、中板40の上側には、皿支持枠17に支持された調理皿10が略水平に配置される(図2,図4,図5参照)。こうして、調理皿10上に載置された被調理物の上側面は、上火バーナ50からの熱量によって直接的に加熱される。
一方、加熱空間28には、下火バーナ60が設けられている。下火バーナ60もプレート状に薄型化された平面バーナである。下火バーナ60は、水平面に対して、前端側が低く後端側が高くなるように傾斜した状態で支持されている。下火バーナ60の上面には、多数の炎孔を配列することによって構成された後述する炎孔部610(図2,図3参照)が設けられている。炎孔部610は、上方に向けて多数の火炎を形成する。
図2〜図5に示すように、グリル庫25の後部には、グリル排気部70が設けられている。グリル排気部70は、グリル庫25の後部から後方に対して斜め上方に延びる略筒状に形成され、グリル庫25の内側と連通している。グリル排気部70の上部には、平面視横長略矩形状のグリル排気口71が設けられている。グリル排気口71は、天板3の排気口7の直下に配置される。グリル排気部70の内側は、内壁72によって上下に区画されている。内壁72は、中板40の後端部からグリル排気口71よりも下方の所定位置まで斜め上方に傾斜して延設されている。内壁72の上側には、上側ダクト74が設けられている。内壁72の下側には、下側ダクト76が設けられている。
上側ダクト74は、調理空間27からの燃焼排気を受け入れる。下側ダクト76は、加熱空間28からの燃焼排気を受け入れる。上側ダクト74の燃焼排気が流れる下流側の端部には、上側排気口75が設けられている。上側排気口75は、上側ダクト74を流れた燃焼排気をグリル排気口71に向けて排出する。下側ダクト76の燃焼排気が流れる下流側の端部には、下側排気口77が設けられている。下側排気口77は、下側ダクト76を流れた燃焼排気をグリル排気口71に向けて排出する。上側排気口75及び下側排気口77から夫々排出された燃焼排気は、グリル排気口71から共に外部に排出される。また、上側排気口75の内側には、フレームトラップ65が設置される。フレームトラップ65は、万が一、調理皿10に載置された被調理物の油分等に引火した場合に、上側排気口75から火炎が出るのを防止する。
図2〜図5を参照し、調理空間27の奥側の構造を説明する。図4に示すように、調理空間27において、上壁部251の後端部よりもやや前側の所定位置には、仕切壁30が設けられている。仕切壁30は、上壁部251の所定位置から下方に延びると共に、左右両側に亘って設けられ、調理空間27と上側ダクト74の間を仕切る。仕切壁30の上側を除く略中央の領域には、前後方向に貫通する排気用開口部301が設けられている。排気用開口部301は、調理空間27で生成した燃焼排気を上側ダクト74へ流出させる。仕切壁30の上端部には、火移り用開口部(図示略)が設けられている。火移り用開口部は、仕切壁30の上端部から下方に向けて切欠き状に形成され、上火バーナ50の下面に向けて上向きに開口する。図5に示すように、上火バーナ50の直下であって、仕切壁30に設けられた火移り用開口部の後ろ側の位置には、点火電極31が設けられている。火移り用開口部の前側の位置には、火炎検出器32が設けられている。
点火電極31は火花放電を生じることで、上火バーナ50の下面の後端側に設けられた複数の炎孔が集合してなる点火用炎孔部(図示略)に点火する。点火用炎孔部と炎孔部510との間には、複数の炎孔で直線状に配列された延長炎孔部(図示略)が設けられている。火炎検出器32は、延長炎孔部に設けられた火炎検出用炎孔部(図示略)における失火を検出する。
また、仕切壁30の前面における排気用開口部301の上側には、金属製の保護カバー35がグリル庫25内の左右方向の全域に亘って設けられている。保護カバー35は、調理空間27の奥側に配置された点火電極31及び火炎検出器32を前方と下方から覆って保護している。図4に示すように、保護カバー35において、点火電極31の先端部に対応する位置には、火移り用開口部36が設けられている。これにより、保護カバー35よりも後方において、点火電極31によって点火された点火用炎孔部から前方に略直線状に配列された他の炎孔に火移りする火炎は、火移り用開口部36を通過できるので、調理空間27内に位置する炎孔部510に順次点火される。
また、中板40の上面の後端側で、且つ内壁72の前面下部には、金属製のセンサボックス55が設けられている。センサボックス55は略直方体状に形成され、その前壁の右側には、円形状のセンサ用孔部56が設けられ、左側には、円形状の孔部57が設けられている。センサボックス55の内側には、温度センサ(図示略)が設けられている。グリル庫25内の空気は、孔部57を介してセンサボックス55内に流入する。これにより、温度センサは、グリル庫25の庫内温度を検出できる。
センサ用孔部56には、略円柱状のセンサ90が、センサボックス55の内側から外側に向けて出退可能に設けられ、センサ用孔部56から前方に対して水平面より斜め上方に傾斜した角度で突出している。センサ90は温度センサであって、先端部が調理皿10の立壁部のうち後面の低い位置で当接することによって、調理皿10の底部に近い部分の温度を検出する。コンロ1は、センサ90の検出温度に基づき、例えば調理の進行程度を検知できる。
図7を参照し、加熱空間28の奥側の構造を説明する。加熱空間28の左側で且つ奥側には、点火電極95と火炎検出器96が支持部材97(図7参照)によって支持されている。点火電極95は火花放電を生じることで、下火バーナ60の下面の炎孔部610のうち後述する左側炎孔部613の後端部の炎孔に点火される。炎孔に形成された火炎によって隣り合う他の炎孔に順次点火されることによって、火移り現象が生じ、炎孔部610全体に点火されるようになっている。これにより、調理空間27に配置された調理皿10は、中板40を介して、下火バーナ60からの熱量によって下方から加熱されるので、被調理物の下側面が間接的に加熱される。火炎検出器96は、点火電極95の前側に配置され、左側炎孔部613における失火を検出する。なお、火炎検出器96は、上記の火炎検出器32と同様に、燃焼炎の持つ熱、光、電気的特性の何れかを検出するものであればよい。
図7を参照し、下火バーナ60の構造を説明する。下火バーナ60は、本体部61、スロート部63、ガス流入口64等を備える。本体部61は、平面視前後方向にやや長い略矩形状に形成されている。本体部61の内部は空洞状であり、その内部空間がガス流路となっている。スロート部63は、本体部61の右側後方部分に設けられ、右斜め後方に延びる略円筒状に形成されている。ガス流入口64は、スロート部63の後端部に設けられ、右方に向かってラッパ状に拡径する開口部である。ガス流入口64には、図示しないガス量調整装置のノズルが右方から対向配置される。ノズルから噴出されるガスは、周囲の空気を取り込みながらガス流入口64に流入する。ガスは空気と混合されながらスロート部63を流れ、本体部61の内部に勢いよく流入する。
本体部61の上面には、後方に向けて開口する平面視略U字状の炎孔部610が設けられている。炎孔部610は、多数の炎孔を配列することによって形成され、前側炎孔部611、右側炎孔部612、左側炎孔部613等を備える。各炎孔においては、本体部61のガス流路から供給されるガスに点火されることで、火炎が形成される。前側炎孔部611は、本体部61の前端部に沿って左右方向に延設されている。右側炎孔部612は、前側炎孔部611の右端部から後方に略直線状に延設されている。左側炎孔部613は、前側炎孔部611の左端部から略直線状に後方に延設され、右側炎孔部612よりも長くなっている。下火バーナ60が下側筐体部252に取り付けられた状態では、左側炎孔部613の後端部は、加熱空間28(図3参照)の奥側に配置される。点火電極95及び火炎検出器96の夫々の先端部は、左側炎孔部613の後端部の直上に夫々配置される。
コンロ1の操作ボタン13(図1参照)が押し込まれると、下火バーナ60においては、本体部61にガスが流入し、炎孔部610にガスが供給された状態で、点火電極95が作動する。点火電極95による火花放電によって、左側炎孔部613の後端部の一又は複数の炎孔が最初に点火される。各炎孔に形成された火炎によって、左側炎孔部613において隣り合う各炎孔に次々に点火される。そして、左側炎孔部613から前側炎孔部611、右側炎孔部612の順に点火され、下火バーナ60の炎孔部610の全ての炎孔に火炎が良好に形成される。炎孔部610は、後方に向けて開口する平面視略U字状に形成されているので、中板40を均一に加熱できる。これにより、中板40の熱分布を均一にできる。
炎孔部610の前側部分には、前側炎孔部611が位置することから、グリル庫25の加熱空間28においては、少なくとも奥側よりも手前側において多くの燃焼空間が必要である。上記の通り、下火バーナ60は、前端側が低く後端側が高くなるように傾斜した状態で支持されている。それ故、下火バーナ60の上面と中板40の下面との間の距離は、奥側よりも手前側が広くなっている。これにより、中板40と下火バーナ60との距離を狭めた加熱空間28においても、炎孔部610の各炎孔においてガスを良好に燃焼させることができる。なお、本実施形態の下火バーナ60の傾斜角度は1.5°であり、後述する中板40の傾斜角度と同一にしている。
図3〜図6を参照し、中板40の形状を説明する。中板40は、例えば一枚の板金を加工して形成するとよい。中板40の上下両面には、遠赤外線のホーロー処理を施してもよい。中板40は、本体部41と前垂部42を備える。本体部41は、平面視前後方向に長い略矩形状に形成され、グリル庫25内において、水平面に対して前端側からグリル排気部70側にかけて斜め上方に傾斜している。前垂部42は、正面視横長矩形状に形成され、本体部41の前端部から前方に対して斜め下方に延設されていることによって、加熱空間28の前側を閉塞している。
本体部41は、中央部43、段差部44、平坦部45等を備える。中央部43は、本体部41の略中央部に設けられ、平面視前後方向に長い略矩形状に形成されている。中央部43の4つの角部は、丸みを帯びるように湾曲している。グリル庫25内では、中央部43は、下火バーナ60の炎孔部610の直上に位置する(図6,図7参照)。中央部43の略中央部には、下方向に突出して凹状に窪んだ窪み部47が設けられている。窪み部47は、平面視前後方向に長い略円形状に形成されている。窪み部47は、グリル庫25内において、下火バーナ60の略U字状の炎孔部610の内側に対向する領域に配置される(図6,図7参照)。段差部44は、中央部43の外周部を基点として外側斜め下方に突き出る段差を形成している。段差部44は、平面視前後方向に長い略リング状に形成され、外方に向けて下り傾斜している。平坦部45は、段差部44の下端部である外周縁部から外側に向けて略水平方向に突出して形成され、前側においては前垂部42の上端部まで、右側においては下側筐体部252の右側壁の内面まで、左側においては下側筐体部252の左側壁の内面まで、後端側においては内壁72の前面まで突出している。なお、中央部43、段差部44、平坦部45は、例えば、本体部41に「段付絞り加工」を施すことによって形成するとよい。
このような形状を有する中板40において、本体部41の中央部43は、段差部44の上端と同一高さ位置であり、平坦部45よりも上方に位置する。これにより、中央部43の下方においては、加熱空間28を広くできるので、下火バーナ60の炎孔部610における燃焼性を向上できる。さらに、中板40を中央部43において上方に絞り上げたことで、調理皿10との距離を狭めることができるので、中板40から調理皿10に向けて熱量を効果的に伝達できる。
また、本体部41は、中央部43の周囲に、段差部44と平坦部45を備えるので、中央部43と段差部44の間、及び段差部44と平坦部45の間において、二つの曲げ部を形成できる。これにより、本体部41の外周端と中央部43の外周端との間の部分の剛性を向上できる。本体部41の前端部側は、下火バーナ60の前側炎孔部611の上方に位置することから、前側炎孔部611に形成される火炎に炙られることによる熱変形の影響を受け易い。上記の通り、本実施形態では、本体部41の前端側においても、段差部44及び平坦部45が設けられていることで剛性が向上しているので、熱変形を効果的に防止できる。
図5を参照し、中板40の傾斜角度を説明する。中板40は、後述するように、下火バーナ60から上昇する燃焼排気を留まらせることなく、グリル排気部70に向けて案内する為に、水平面に対して前端側からグリル排気部70側にかけて斜め上方に傾斜している。燃焼排気が、加熱空間28から下側ダクト76に対してスムーズに流れるように、中板40の後端部の高さ位置は、所定の高さ位置に決められる。中板40は、その所定の高さ位置から前方に向けて斜め下方に傾斜する。中板40と調理皿10の底面との間は離間していることから、その隙間は中板40の前端側にいくほど大きくなる。ここで、中板40と調理皿10の底面との隙間が大きくなってしまうと、中板40から調理皿10に対して下火バーナ60の熱量が効率良く伝達されないという不具合を生じる。この不具合を生じさせない為に、例えば、中板40全体の傾斜角度を浅くすることが考えられる。
しかしながら、他部位に比べて熱変形が生じ易い中板40の前端側の剛性を確保する為には、段差部44に所定以上の高さが必要であることから、本実施形態では、本体部41の傾斜角度を1.5°に調整する。ここで、本体部41において、平坦部45と中央部43の夫々の傾斜角度を何れも1.5°にしてしまうと、上記のように、中央部43の前端側と、調理皿10の底面との隙間が大きくなってしまうので、本実施形態では、中央部43の前側の上面と、調理皿10の底面との距離が5mm未満となるように、中央部43の傾斜角度を0.5°とし、平坦部45の傾斜角度よりも浅くしている。これにより、中央部43を傾斜させつつ、調理皿10の底面に近付けることができる。よって、グリル装置20は、中板40によって、加熱空間28内の燃焼排気を下側ダクト76に向けて流れ易くさせると共に、調理皿10の底面に対して熱量を効率よく伝達できる。なお、中板40の中央部43の前側の上面と、調理皿10の底面との距離は、例えば4.3mmである。
図5〜図7を参照し、下火バーナ60の燃焼排気の流れを説明する。図5中矢印Pが示すように、下火バーナ60からの燃焼排気は上昇し、中板40の下面に到達する。上記の通り、中板40の本体部41(中央部43及び平坦部45)は、水平面に対して前端側からグリル排気部70側にかけて斜め上方に傾斜している。それ故、燃焼排気は、中板40の下面に沿って後方に流れるため、グリル排気部70の下側ダクト76にスムーズに排出させることができる。これにより、燃焼排気が加熱空間28内に留まることが無いので、下火バーナ60の燃焼性が向上すると共に、燃焼排気がグリル庫25内からコンロ1の筐体2内に漏れるのを防止できる。
さらに、中央部43においては、窪み部47が下方に突出しているので、下火バーナ60の略U字状の炎孔部610からの燃焼排気は、図6,図7中矢印P1,P2が示すように、窪み部47の左右両側を前方から後方に流れるように整流される。例えば、右側炎孔部612の燃焼排気は矢印P1の方向に流れ、左側炎孔部613の燃焼排気は矢印P2の方向に流れ、前側炎孔部611の燃焼排気は、窪み部47によって左右両側に均等に分流され、矢印P1,P2に沿って良好に流れる。これにより、加熱空間28内の燃焼排気は、グリル排気部70の下側ダクト76に向けて流れ易くなるので、下火バーナ60の燃焼性をさらに向上できる。また、燃焼排気は、窪み部47の左右両側を後方に流れるように整流されるので、窪み部47の後方に流れる燃焼排気は少ない。それ故、中板40における窪み部47の後方部においては、他部位に比べて温度が低いので、その上方に位置するセンサ90が高温に加熱されて不具合が生じるのを防止できる。なお、図6では、中板40の下側(加熱空間28)における燃焼排気の流れP1,P2を、中板40の窪み部47との位置関係を示す為に図示しており、調理空間27における燃焼排気の流れを示すものではない。
以上説明したように、本実施形態のコンロ1のグリル装置20は、グリル庫25内を中板40で区画し、中板40の上側の調理空間27内に上火バーナ50を備え、中板40の下側の加熱空間28内に下火バーナ60を備える所謂「両面加熱式間接加熱タイプ」である。被調理物が載置される調理皿10は、調理空間27に配置される。グリル装置20は、被調理物に直接的に与えられる上火バーナ50からの熱量と、加熱空間28から調理皿10を介して間接的に与えられる下火バーナ60からの熱量とにより、調理皿10上の被調理物を上下両面より加熱する。調理空間27及び加熱空間28からの燃焼排気は、グリル庫25の後方部に設けられたグリル排気部70により、外部に排出される。このようなグリル装置20において、中板40は、水平面に対して前端側からグリル排気部70側にかけて斜め上方に傾斜している。これにより、加熱空間28内の燃焼排気は、中板40の下面に沿って後方に流れ、グリル排気部70に向けて流れ易くなる。よって、燃焼排気が加熱空間28内に留まることが無いので、下火バーナ60の燃焼性が向上すると共に、燃焼排気が筐体2内に漏れるのを防止できる。
さらに、中板40の本体部41は、中央部43を取り囲むようにして、段差部44と平坦部45を備える。段差部44は、中央部43の外周から下方に突き出るように形成された段差である。平坦部45は、段差部44の下端から屈曲して外方に延びる部分である。これにより、本体部41の外周部には、段差部44を設けたことによって、中央部43と段差部44の間、段差部44と平坦部45の間に曲げ部分が形成されているので、これらの曲げ部分によって本体部41の外周部の剛性を向上できる。これにより、手前側が低く傾斜する中板40のうち下火バーナ60に近い手前側が下火バーナ60により加熱されて変形してしまうのを防止できる。また、中板40の中央部43は、段差部44の上端と同一高さに位置するので、加熱空間28を広くできる。これにより、下火バーナ60の燃焼性を向上できる。
以上説明において、グリル排気部70は、本発明の「排気部」の一例である。段差部44及び平坦部45は、本発明の「段付き絞り部」の一例である。中板40の窪み部47は、本発明の「突出部」の一例である。センサ90は、本発明の「センサ」の一例である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態は、ビルトインタイプのコンロ1を例示したが、テーブルコンロであってもよい。また、コンロ1はグリル装置20を内蔵するものであるが、グリル装置20のみで構成される加熱調理器であってもよい。
上記実施形態の中板40では、本体部41の外周部(中央部43の外縁部と、本体部41の外周端との間の部分)において、中央部43を取り囲むようにして、段差部44と平坦部45を設けているが、少なくとも前端部に設けていればよい。また、中央部43の中央に設けた窪み部47は省略してもよい。
上記実施形態の中板40では、中央部43の傾斜角度を、平坦部45の傾斜角度よりも浅くしているが、同一角度にしてもよい。
上記実施形態の下火バーナ60は、薄型プレート状の平面バーナであるが、これ以外のタイプのバーナでもよく、例えば火炎の方向をグリル庫25内の中央に向くようにしたバーナを用いてもよい。また、炎孔部610の形状は、後方に向けて開口する略U字状であるが、これ以外の形状にしてもよい。炎孔の位置、配列は上記実施形態と異なっていてもよい。
上記実施形態のグリル装置20は、グリル庫25の調理空間27の奥側で、且つ中板40の上面の後端側の左右方向中央部に、センサ90を設け、調理皿10の立壁部の下部に当接させることによって、調理皿10の温度を検出しているが、調理皿10の温度を検出するセンサの位置は、これ以外でもよい。例えば、図8に示すように、中板40の後端側で、且つ左右方向中央部に上下方向に貫通する孔部48を設け、該孔部48から上方にセンサ93を突出させてもよい。この場合、センサ93には、調理皿10の底面が当接するので、調理皿10の温度を検出できる。
なお、センサ93は、孔部48に対し下方から上方に突出させるため、その基部は、加熱空間28側に固定される。センサ93の位置は、下側筐体部252の左右方向中央部で、且つ中板40の窪み部47の後方に位置する。上記の通り、加熱空間28では、下火バーナ60からの燃焼排気は、窪み部47によって左右両側に均等に分流され、矢印P1,P2に沿って流れるので、窪み部47の後方に流れる燃焼排気は少ない。それ故、下火バーナ60から流れる燃焼排気がセンサ93に対して直接当たらないことから、本変形例においても、センサ93が高温に加熱されて不具合が生じるのを防止できる。