JP6907696B2 - スピン流磁化反転素子、素子集合体及びスピン流磁化反転素子の製造方法 - Google Patents

スピン流磁化反転素子、素子集合体及びスピン流磁化反転素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スピン流磁化反転素子、素子集合体及びスピン流磁化反転素子の製造方法に関する。
磁気抵抗効果素子として強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子が知られている。一般に、TMR素子は、GMR素子と比較して素子抵抗は大きいが、磁気抵抗(MR)比は、GMR素子より大きい。そのため、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)用の素子として、TMR素子に注目が集まっている。
MRAMは、絶縁層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の向きが変化するとTMR素子の素子抵抗が変化するという特性を利用して、データを読み書きする。MRAMの書き込み方式としては、電流が作る磁場を利用して書き込み(磁化反転)を行う方式や磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流して生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用して書き込み(磁化反転)を行う方式が知られている。
STTを用いたTMR素子の磁化反転はエネルギーの効率の視点から考えると効率的ではあるが、磁化反転をさせるために必要な反転電流密度が高い。 TMR素子の長寿命の観点からはこの反転電流密度は低いことが望ましい。この点は、GMR素子についても同様である。
そこで近年、反転電流を低減する手段としてスピン軌道相互作用により生成された純スピン流を利用した磁化反転に注目が集まっている(例えば、非特許文献1)。スピン軌道相互作用によって生じた純スピン流は、スピン軌道トルク(SOT)を誘起し、SOTによる磁化反転をひき起こす。また異種材料の界面におけるラシュバ効果によって生じた純スピン流も、同様にSOTによる磁化反転をひき起こす。これらのメカニズムについての詳細はこれまでに明らかになっていない。純スピン流は上向きスピンの電子と下向きスピン電子が同数で互いに逆向きに流れることで生み出されるものであり、電荷の流れは相殺されている。そのため磁気抵抗効果素子に流れる電流はゼロであり、スピン軌道トルク(SOT)を用いることで磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
一方で、SOTを用いた磁化反転には、外部磁場を印加することで、磁化反転する磁化の対称性を乱す必要があると言われている(例えば、非特許文献2)。外部磁場を印加するためには磁場の発生源が必要である。磁場の発生源を別途設けることは、スピン流磁化反転素子を含む集積回路の集積度の低下につながる。そのため、外部磁場を印加せずにSOTを用いた磁化反転を可能とする手法が求められている。
例えば、特許文献1及び非特許文献3には、磁化反転する強磁性体と結合する酸化膜の酸素量を変更することで、磁化の強度の対称性が崩れることが記載されている。磁化の強度の対称性が崩れると、磁化回転しやすくなり、無磁場下でもSOTを用いた磁化反転が可能となる。
米国特許出願公開第2015/0129995号明細書
I.M.Miron,K.Garello,G.Gaudin,P.-J.Zermatten,M.V.Costache,S.Auffret,S.Bandiera,B.Rodmacq,A.Schuhl,and P.Gambardella,Nature,476,189(2011). S.Fukami,T.Anekawa,C.Zhang,and H.Ohno,Nature Nanotechnology,DOI:10.1038/NNANO.2016.29. Guoqiang Yu, et al., Nature Nanotechnology,DOI:10.1038/NNANO.2014.94.
しかしながら、特許文献1及び非特許文献3に記載された方法は、酸素量の制御が難しい。特に、薄膜プロセスで作製されるそれぞれの素子において、同様の酸素量の傾斜を形成することは、量産において困難である。また磁気抵抗効果素子の面内方向における磁気異方性の大きさが異なると、意図しない外力(外部磁場、熱等)が加わった際に、磁気異方性の小さい部分の磁化が反転する場合がある。意図しない磁化の反転は、データのノイズとなり、データの長期保存を阻害する。特に磁気抵抗効果素子の強磁性体の大きさが磁壁を形成できる大きさの場合、磁気異方性の小さい部分の磁化反転が、その他の部分の磁化反転も誘発し、データを書き換えてしまうおそれがある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、外部磁場を印加せずに、磁化反転できるスピン流磁化反転素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、磁化回転を起こす強磁性体の少なくとも一面を傾斜させることで、磁化を傾斜させ、外部磁場を印加した状態に近い状態を生み出した。また磁化回転する初期状態が外部磁場を印加した状態に近づくことで、外部磁場を印加しなくてもSOTによる磁化反転を行うことが可能となった。すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかるスピン流磁化反転素子は、磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化する第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層に挟持された非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する第1の方向に延在し、前記磁気抵抗効果素子の前記第2強磁性金属層側の面に接合するスピン軌道トルク配線と、を備え、前記第2強磁性金属層の前記積層方向の少なくとも一方の面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有し、前記第2強磁性金属層の磁化の方向が前記傾斜面によって傾斜している。
(2)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子において、前記スピン軌道トルク配線の前記磁気抵抗効果素子側の面が前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有してもよい。
(3)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子において、前記第2強磁性金属層の両面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有してもよい。
(4)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子において、前記第2強磁性金属層の前記スピン軌道トルク配線側の前記傾斜面と、前記非磁性層側の前記傾斜面とが平行であってもよい。
(5)上記の態様にかかるスピン流磁化反転素子において、前記傾斜面が、前記積層方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向に傾斜していてもよい。
(6)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子において、前記第2強磁性金属層の前記傾斜面を有する面は、基準面に対して傾斜角の正負の異なる第1傾斜面と第2傾斜面を有し、前記第1傾斜面の面積は、前記第2傾斜面の面積より大きい構成でもよい。
(7)第2の態様にかかるスピン流磁化反転素子は、強磁性金属層と、前記強磁性金属層の積層方向に対して交差する第1の方向に延在し、前記強磁性層の一面に接合するスピン軌道トルク配線と、を備え、前記強磁性金属層の前記積層方向の少なくとも一方の面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有する。
(8)第3の態様にかかる素子集合体は、上記態様にかかるスピン流磁化反転素子を複数備える。
(9)上記態様にかかる素子集合体において、複数の前記スピン流磁化反転素子のそれぞれの傾斜面が、同一の方向に傾斜している構成でもよい。
(10)第4の態様にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法は、磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化する第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層に挟持された非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子と、第1の方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を積層する積層工程を有し、前記積層工程の前又は途中において、前記第2強磁性金属層のいずれか一面に前記第1の方向に傾斜した傾斜面を形成する。
(11)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法において、前記傾斜面を前記第1の方向に沿った研磨により形成してもよい。
(12)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法において、前記傾斜面を前記第1の方向に沿った異方性エッチングにより形成してもよい。
(13)上記態様にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法において、前記傾斜面を第1の方向に沿った異方性成膜により形成してもよい。
(14)第5の態様にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法は、強磁性層と、第1の方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を積層する積層工程を有し、前記積層工程の前又は途中において、前記強磁性金属層のいずれか一面に前記第1の方向に傾斜した傾斜面を形成する。
上記態様にかかるスピン流磁化反転素子によれば、外部磁場を印加せずに、磁化反転できる。
第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の断面を模式的に示した図である。 第2強磁性金属層のいずれの面にも傾斜面が形成されておらず、第2強磁性金属層の磁化が傾斜していないスピン流磁化反転素子を示す断面模式図である。 第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。 第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。 強磁性層(第2強磁性金属層)のみがスピン軌道トルク配線上に積層されたスピン流磁化反転素子の断面模式図である。 第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の製造方法の一部を模式的に示した図である。 第2実施形態に係るスピン流磁化反転素子の断面を模式的に示した図である。 第2実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。 第3実施形態に係るスピン流磁化反転素子を模式的に示した斜視図である。 第3実施形態に係るスピン流磁化反転素子の断面を模式的に示した図である。 第4実施形態に係るスピン流磁化反転素子の断面を模式的に示した図である。 第4実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。 複数のスピン流磁化反転素子を備える素子集合体を模式的に示した図である。 複数のスピン流磁化反転素子を備える素子集合体を、図12のA−A面に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子を模式的に示した斜視図である。
第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100は、磁気抵抗効果素子10と、スピン軌道トルク配線20とを有する。
以下、スピン軌道トルク配線20が延在する第1の方向をx方向、スピン軌道トルク配線20が延在する面内方向であって第1の方向と直交する第2の方向をy方向、x方向及びy方向のいずれにも直交する磁気抵抗効果素子10の積層方向をz方向とする。
<磁気抵抗効果素子>
磁気抵抗効果素子10は、磁化方向が固定された第1強磁性金属層1と、磁化方向が変化する第2強磁性金属層2と、第1強磁性金属層1及び第2強磁性金属層2に挟持された非磁性層3とを有する。
磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性金属層1の磁化M1が一方向に固定され、第2強磁性金属層2の磁化M2の向きが相対的に変化することで機能する。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合には、第1強磁性金属層の保磁力は第2強磁性金属層の保磁力よりも大きいものであり、また、交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合には、第1強磁性金属層は反強磁性層との交換結合によって磁化方向が固定される。
また、磁気抵抗効果素子10は、非磁性層3が絶縁体からなる場合は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子であり、非磁性層3が金属からなる場合は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子である。
磁気抵抗効果素子の積層構成は、公知の磁気抵抗効果素子の積層構成を採用できる。例えば、各層は複数の層からなるものでもよいし、第1強磁性金属層1の磁化方向を固定するための反強磁性層等の他の層を備えてもよい。第1強磁性金属層1は固定層や参照層、第2強磁性金属層2は自由層や記憶層などと呼ばれる。
第1実施形態にかかる磁気抵抗効果素子10において、第2強磁性金属層2のスピン軌道トルク配線20側の面はx方向に傾斜し、傾斜面2aを形成している。また第2強磁性金属層2の非磁性層3側の面もx方向に傾斜し、傾斜面2bを形成している。
第2強磁性金属層2の磁化M2は、積層界面の影響を大きく受ける。一般に垂直磁化膜の場合、積層界面に対して垂直な向きに磁化は配向する。図1に示す第2強磁性金属層2の磁化M2は、傾斜面2a及び傾斜面2bの影響を受けて、z方向に対して傾斜角θだけx方向に傾いて配向している。
図1において、傾斜面2aと傾斜面2bは平行である。そのため、第2強磁性金属層2の磁化M2の傾斜角θは、xy面内のいずれの位置でも等しい。この場合、磁化M2の傾斜角θは、傾斜面2aの傾斜角φと等しい。
また傾斜面2aと傾斜面2bが平行であると、第2強磁性金属層2はxy面内のいずれの位置でも同一の厚さとなる。ここで、「第2強磁性金属層2の厚み」は傾斜面2aから傾斜面2bに下した垂線の長さを意味する。また「同一」とは、xy面内の任意の10点で測定した第2強磁性金属層2の厚みの平均値に対して±10%以上厚みの変化が無いことを意味する。
第2強磁性金属層2の厚み及び磁化M2の傾斜角θがxy面内方向で一定であれば、第2強磁性金属層2の磁化M2の大きさもxy面内で一定となる。第2強磁性金属層2の磁化M2の大きさが面内方向で一定であれば、磁気異方性の小さい部分の磁化が意図せず反転するという問題を避けることができる。意図しない磁化の反転は、データのノイズとなり、データの長期保存を阻害する。特に第2強磁性金属層2の大きさが磁壁を形成できる大きさの場合、磁気異方性の小さい部分の磁化反転が、その他の部分の磁化反転も誘発し、データを書き換えてしまうおそれがある。
非磁性層3及び第1強磁性金属層1は、第2強磁性金属層2上に積層されており、x方向に傾斜している。そのため、第1強磁性金属層1の非磁性層3側には傾斜面1aが形成され、その反対側の面には傾斜面1bが形成されている。
第1強磁性金属層1の磁化M1は、傾斜面1a及び傾斜面1bの影響を受けて、x方向に傾斜する。磁化M1の傾斜角は、磁化M2の傾斜角と等しい。
また図1において、傾斜面1aと傾斜面1bは平行である。そのため、第1強磁性金属層1の厚みはxy面内のいずれの位置でも同一である。つまり、第1強磁性金属層1の磁化M1は、xy面内のいずれの位置においても第2強磁性金属層2の磁化M2に対して同様に作用する。すなわち、第2強磁性金属層2の磁化M2の安定性が高まる。
また第2強磁性金属層2の傾斜面2bと第1強磁性金属層1の傾斜面1aが平行であれば、非磁性層3の厚みもxy面内で同一となる。非磁性層3の厚みがxy面内で同一であれば、第2強磁性金属層2の磁化M2に対する第1強磁性金属層の磁化M1の寄与が一定となり、第2強磁性金属層2の磁化M2の安定性が高まる。
第1強磁性金属層1の材料には、公知のものを用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
また、より高い出力を得るためにはCoFeSiなどのホイスラー合金を用いることが好ましい。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
また、第1強磁性金属層1の第2強磁性金属層2に対する保磁力をより大きくするために、第1強磁性金属層1と接する材料としてIrMn,PtMnなどの反強磁性材料を用いてもよい。さらに、第1強磁性金属層1の漏れ磁場を第2強磁性金属層2に影響させないようにするため、シンセティック強磁性結合の構造としてもよい。
さらに第1強磁性金属層1の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、CoとPtの積層膜を用いることが好ましい。具体的には、第1強磁性金属層1は[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]/Ru(0.9nm)/[Pt(0.16nm)/Co(0.16nm)]/Ta(0.2nm)/FeB(1.0nm)とすることができる。
第2強磁性金属層2の材料として、強磁性材料、特に軟磁性材料を適用できる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feが挙げられる。
第2強磁性金属層2の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、第2強磁性金属層2の厚みを2.5nm以下とすることが好ましい。第2強磁性金属層2と非磁性層3の界面で、第2強磁性金属層2に垂直磁気異方性を付加することができる。また、垂直磁気異方性は第2強磁性金属層2の膜厚を厚くすることによって効果が減衰するため、第2強磁性金属層2の膜厚は薄い方が好ましい。
非磁性層3には、公知の材料を用いることができる。
例えば、非磁性層3が絶縁体からなる場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としては、Al、SiO、Mg、及び、MgAlO等を用いることができる。またこれらの他にも、Al,Si,Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。
また、非磁性層3が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
また、磁気抵抗効果素子10は、その他の層を有していてもよい。例えば、第2強磁性金属層2の非磁性層3と反対側の面に下地層を有していてもよいし、第1強磁性金属層1の非磁性層3と反対側の面にキャップ層を有していてもよい。
スピン軌道トルク配線20と磁気抵抗効果素子10との間に配設される層は、スピン軌道トルク配線20から伝播するスピンを散逸しないことが好ましい。例えば、銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウム等は、スピン拡散長が100nm以上と長く、スピンが散逸しにくいことが知られている。
またこの層の厚みは、層を構成する物質のスピン拡散長以下であることが好ましい。層の厚みがスピン拡散長以下であれば、スピン軌道トルク配線20から伝播するスピンを磁気抵抗効果素子10に十分伝えることができる。
<スピン軌道トルク配線>
スピン軌道トルク配線20は、x方向に延在する。スピン軌道トルク配線20は、第2強磁性金属層2のz方向の一面に接続されている。スピン軌道トルク配線20は、第2強磁性金属層2に直接接続されていてもよいし、他の層を介して接続されていてもよい。
図1に示すスピン軌道トルク配線20は、磁気抵抗効果素子10側の面がx方向に傾斜している。磁気抵抗効果素子10の各層は、スピン軌道トルク配線20の傾斜面の形状を反映して積層されている。
スピン軌道トルク配線20は、電流が流れるとスピンホール効果によって純スピン流が生成される材料からなる。かかる材料としては、スピン軌道トルク配線20中に純スピン流が生成される構成のものであれば足りる。従って、単体の元素からなる材料に限らないし、純スピン流が生成される材料で構成される部分と純スピン流が生成されない材料で構成される部分とからなるもの等であってもよい。
スピンホール効果とは、材料に電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の向きに直交する方向に純スピン流が誘起される現象である。スピンホール効果により純スピン流が生み出されるメカニズムについて、図1を基に説明する。
図1に示すように、スピン軌道トルク配線20のx方向の両端に電位差を与えるとx方向に沿って電流Iが流れる。電流Iが流れると、紙面奥側に配向した第1スピンS1と紙面手前側に配向した第2スピンS2はそれぞれ電流と直交する方向に曲げられる。通常のホール効果とスピンホール効果とは運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通するが、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果では磁場が存在しないのに電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)で移動方向が曲げられる点で大きく異なる。
非磁性体(強磁性体ではない材料)では第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しいので、図中で上方向に向かう第1スピンS1の電子数と下方向に向かう第2スピンS2の電子数が等しい。そのため、電荷の正味の流れとしての電流はゼロである。この電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
強磁性体中に電流を流した場合は、第1スピンS1と第2スピンS2が互いに反対方向に曲げられる点は同じである。一方で、強磁性体中では第1スピンS1と第2スピンS2のいずれかが多い状態であり、結果として電荷の正味の流れが生じてしまう(電圧が発生してしまう)点が異なる。従って、スピン軌道トルク配線20の材料としては、強磁性体だけからなる材料は含まれない。
ここで、第1スピンS1の電子の流れをJ、第2スピンS2の電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J−Jで定義される。図1においては、純スピン流としてJが図中の上方向に流れる。ここで、Jは分極率が100%の電子の流れである。
図1において、スピン軌道トルク配線20の上面に強磁性体を接触させると、純スピン流は強磁性体中に拡散して流れ込む。すなわち、磁気抵抗効果素子10にスピンが注入される。
スピン軌道トルク配線20は、非磁性の重金属を含んでもよい。ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属の意味で用いている。スピン軌道トルク配線20は、非磁性の重金属だけからなってもよい。
この場合、非磁性の重金属は最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。かかる非磁性金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きいからである。スピン軌道トルク配線20は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属だけからなってもよい。
通常、金属に電流を流すとすべての電子はそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動くのに対して、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属はスピン軌道相互作用が大きいためにスピンホール効果によって電子の動く方向が電子のスピンの向きに依存し、純スピン流Jが発生しやすい。特に、非磁性の重金属としてIrを用いると、スピンホール効果が大きい。さらに、Irと第2強磁性金属層2の界面において従来材料よりも大きな垂直磁気異方性を第2強磁性金属層2に付加することができる。
また、スピン軌道トルク配線20は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属とは、強磁性金属、あるいは、反強磁性金属を指す。非磁性金属に微量な磁性金属が含まれるとスピン軌道相互作用が増強され、スピン軌道トルク配線20に流す電流に対するスピン流生成効率を高くできるからである。スピン軌道トルク配線20は、反強磁性金属だけからなってもよい。
スピン軌道相互作用はスピン軌道トルク配線材料の物質の固有の内場によって生じる。そのため、非磁性材料でも純スピン流が生じる。スピン軌道トルク配線材料に微量の磁性金属を添加すると、磁性金属自体が流れる電子スピンを散乱するためにスピン流生成効率が向上する。ただし、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生した純スピン流が添加された磁性金属によって散乱されるため、結果としてスピン流が減少する作用が強くなる。したがって、添加される磁性金属のモル比はスピン軌道トルク配線における純スピン生成部の主成分のモル比よりも十分小さい方が好ましい。目安で言えば、添加される磁性金属のモル比は3%以下であることが好ましい。
また、スピン軌道トルク配線20は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。スピン軌道トルク配線20は、トポロジカル絶縁体だけからなってもよい。トポロジカル絶縁体とは、物質内部が絶縁体、あるいは、高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。物質にはスピン軌道相互作用という内部磁場のようなものがある。そこで外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。これがトポロジカル絶縁体であり、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成することができる。
トポロジカル絶縁体としては例えば、SnTe,Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3,TlBiSe,BiTe,(Bi1−xSbTeなどが好ましい。これらのトポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
スピン流磁化反転素子100は、磁気抵抗効果素子10とスピン軌道トルク配線20以外の構成要素を有していてもよい。例えば、支持体として基板等を有していてもよい。基板は、平坦性に優れることが好ましく、材料として例えば、Si、AlTiC等を用いることができる。
(スピン流磁化反転素子の原理)
次いで、スピン流磁化反転素子100の原理について説明すると共に、第2強磁性金属層2の磁化M2がx方向に傾斜していることにより無磁場下での磁化反転が可能となる理由について説明する。
図1に示すように、スピン軌道トルク配線20に電流Iを印加すると、第1スピンS1と第2スピンS2とがスピンホール効果によって曲げられる。その結果、純スピン流Jsがz方向に生じる。
スピン軌道トルク配線20のz方向には、磁気抵抗効果素子10が配設されている。そのため、スピン軌道トルク配線20から磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層2にスピンが注入される。注入されたスピンは、第2強磁性金属層2の磁化M2にスピン軌道トルク(SOT)を与え、磁化反転が生じる。ここで、注入されたスピンが磁化M2を磁化反転させるだけのエネルギーを与えられるかが問題になる。
図2は、第2強磁性金属層のいずれの面にも傾斜面が形成されておらず、第2強磁性金属層の磁化が傾斜していないスピン流磁化反転素子を示す断面模式図である。図2に示すスピン流磁化反転素子101は、スピン軌道トルク配線21の磁気抵抗効果素子15側の面がx方向に傾斜していない。そのため、磁気抵抗効果素子15を構成する第1強磁性金属層11、第2強磁性金属層12及び非磁性層13は、いずれもxy面内に延在している。その結果、第2強磁性金属層12の磁化M12はz方向に配向している。
非特許文献2の図1aには、図2と同様の構成が記載されている。非特許文献2には、第2強磁性金属層12の磁化M12を反転させるために、x方向に外部磁場を印加している。磁化M12を磁化反転させるだけの回転力を磁化M12に与えるためには、磁化M12の対称性を乱す必要があるためである。
外部磁場を印加すると、磁化M12がx方向に傾斜し、磁化M12の対称性が乱れる。その結果、磁気抵抗効果素子15に注入されるスピンと磁化M12が相互作用し、磁化M12が磁化反転するきっかけとなる回転力(SOT)が与えられる。磁化M12は歳差運動を行いながら磁化反転するため、このきっかけが与えられないと磁化M12を磁化反転させるだけの十分なエネルギーを与えることができない。
これに対し、第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100(図1参照)は、第2強磁性金属層2の傾斜面2a及び傾斜面2bに起因して、磁化M2が傾斜角θでx方向に傾斜している。すなわち、外部磁場が印加されていない状態で、磁化M2の対称性は乱れている。そのため、磁化M2は、磁気抵抗効果素子10に注入されるスピンと相互作用し、磁化回転するきっかけとなる回転力(SOT)を受けることができる。
上述のように、第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100によれば、外部磁場等の外力を印加しなくても磁気抵抗効果素子10の第2強磁性金属層2(自由層)の磁化M2を反転できる。これは、形状異方性に伴い磁化M2がx方向に傾き、磁気抵抗効果素子10に「対称性の破れ」が生じたためである。
本実施形態は、必ずしも上記構成に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
図3は、第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。
図3(a)に示すスピン流磁化反転素子100Aは、第2強磁性金属層2Aのスピン軌道トルク配線20側の第1面2Aaのみに傾斜面が設けられている点が、図1に示すスピン流磁化反転素子100と異なる。
図3(a)に示すスピン流磁化反転素子100Aは、スピン軌道トルク配線20上に磁気抵抗効果素子10Aが積層されている。図1に示すスピン流磁化反転素子100と、スピン軌道トルク配線20の構成は同じである。
磁気抵抗効果素子10Aは、第1強磁性金属層1Aと、第2強磁性金属層2Aと、非磁性層3Aを有し、第2強磁性金属層2のスピン軌道トルク配線20側の第1面2Aaは傾斜し、対向する第2面2Abは傾斜していない。
また、図3(b)に示すスピン流磁化反転素子100Bは、第2強磁性金属層2Bのスピン軌道トルク配線21と反対側の第2面2Bbのみに傾斜面が設けられている点が、図1に示すスピン流磁化反転素子100と異なる。
図3(b)に示すスピン流磁化反転素子100Bは、スピン軌道トルク配線21上に磁気抵抗効果素子10Bが積層されている。スピン軌道トルク配線21は、磁気抵抗効果素子10B側の面が傾斜していない点が、図1に示すスピン流磁化反転素子100と形状が異なる。
磁気抵抗効果素子10Bは、第1強磁性金属層1Bと、第2強磁性金属層2Bと、非磁性層3Bを有し、第2強磁性金属層2のスピン軌道トルク配線21側の第1面2Baは傾斜しておらず、対向する第2面2Bbは傾斜している。
また、図3(c)に示すスピン流磁化反転素子100Cは、第2強磁性金属層2Cの両面に傾斜面が設けられているが、スピン軌道トルク配線20側の第1面2Caと対向する第2面2Cbとで傾斜角が異なる。
図3(c)に示すスピン流磁化反転素子100Cは、スピン軌道トルク配線20上に磁気抵抗効果素子10Cが積層されている。図1に示すスピン流磁化反転素子100と、スピン軌道トルク配線20の構成は同じである。
磁気抵抗効果素子10Cは、第1強磁性金属層1Cと、第2強磁性金属層2Cと、非磁性層3Cを有し、第2強磁性金属層2のスピン軌道トルク配線20側の第1面2Caと第2面2Cbはいずれも傾斜している。第1面2Caと第2面2Cbの傾斜角は異なる。
図3(a)〜図3(c)に示すいずれの構成においても、第2強磁性金属層の磁化は、傾斜面の影響を受けてx方向に傾いている。そのため、図3(a)〜図3(c)に示すスピン流磁化反転素子は、いずれも無磁場下でも磁化反転を行うことができる。
一方で、第1強磁性金属層と第2強磁性金属層の磁化が配向する向きが、一致していないため、MR比は、図1に示す磁気抵抗効果素子10より小さくなる。また、第2強磁性金属層の厚みが変化しているため、第2強磁性金属層の磁化の大きさはxy面内の場所によって異なる。そのため、第2強磁性金属層の磁化の安定性は、図1の構成よりも低下する。
またこの他にも、スピン軌道トルク配線の構成を変更してもよい。図4は、第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。
図4(a)〜(c)に示すスピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線は純スピン流を生成する材料からなる部分(スピン流生成部22A,23A,24A)と、このスピン流生成部よりも電気抵抗が小さい材料からなる部分(低抵抗部22B,23B,24B)とを有する。
純スピン流を生成しうる材料である重金属は、通常の配線として用いられる金属に比べて電気抵抗が大きく、ジュール熱の発生量が多い。そのため、電気抵抗が小さい低抵抗部を設けることで、スピン流磁化反転素子の発熱を抑えることができる。
スピン流生成部は、純スピン流を生成しえる材料からなっていればよく、例えば、複数種類の材料部分からなる構成等であってもよい。例えば、上述のスピン軌道トルク配線20に用いられる材料を用いることができる。
低抵抗部は、通常の配線として用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。低抵抗部は、スピン流生成部よりも電気抵抗が小さい材料からなっていればよく、例えば、複数種類の材料部分からなる構成等であってもよい。
なお、低抵抗部において純スピン流が生成されても構わない。この場合、スピン流生成部と低抵抗部との区別は、本明細書中にスピン流生成部及び低抵抗部の材料として記載したものからなる部分はスピン流生成部または低抵抗部であるとして区別できる。また、純スピン流を生成する主要部以外の部分であって、その主要部より電気抵抗が小さい部分は低抵抗部として、スピン流生成部と区別できる。
図4(a)に示すスピン流磁化反転素子のスピン軌道トルク配線22は、第2強磁性金属層2との接合部がすべてスピン流生成部22Aからなり、スピン流生成部22Aが低抵抗部22Bに挟まれた構成である。スピン流生成部22Aは、磁気抵抗効果素子10の積層方向から平面視して、第2強磁性金属層の接合部を含むように重畳している。重畳部分においてスピン軌道トルク配線22の厚さ方向はスピン流生成部22Aだけからなる。
図4(b)に示すスピン流磁化反転素子のスピン軌道トルク配線23は、第2強磁性金属層2との接合部がすべてスピン流生成部23Aからなり、スピン流生成部23Aが低抵抗部23Bに囲まれた構成である。スピン流生成部23Aは、磁気抵抗効果素子10の積層方向から平面視して、第2強磁性金属層2の接合部を含むように重畳している。重畳部分においてスピン軌道トルク配線23の厚さ方向は、磁気抵抗効果素子10側がスピン流生成部22Aであり、反対側が低抵抗部23Bである。
ここで、重畳部において、スピン流生成部と低抵抗部とは電気的に並列に配置されている。この場合、スピン軌道トルク配線に流れる電流はスピン流生成部及び低抵抗部の抵抗の大きさの逆比の割合に分かれて流れる。そのため、スピン軌道トルク配線23に流した電流のうち純スピン流の生成に寄与する電流の割合が低下し、純スピン流生成効率は低下する。一方で、ジュール熱の発生は抑制される。
図4(c)に示すスピン流磁化反転素子のスピン軌道トルク配線24は、スピン流生成部24Aが磁気抵抗効果素子10側の一面に延在し、磁気抵抗効果素子10の積層方向から平面視して磁気抵抗効果素子10と重畳する重畳部において厚み方向全体に設けられている。低抵抗部24Bは、重畳部の一部を挟むように配置されている。
図4(c)に示す構成では、スピン流生成部24Aと低抵抗部24Bとが接する面積が広いため、スピン流生成部24Aを構成する原子番号の大きい非磁性金属と低抵抗部24Bを構成する金属との密着性が高い。
またスピン流磁化反転素子は、必ずしも第1強磁性金属層、非磁性層及び第2強磁性金属層が順に積層された磁気抵抗効果素子を備えている必要はなく、強磁性層(第2強磁性金属層)のみがスピン軌道トルク配線上に積層された構成でもよい。
図5は、強磁性層(第2強磁性金属層)のみがスピン軌道トルク配線上に積層されたスピン流磁化反転素子の断面模式図である。図5に示すスピン流磁化反転素子100Dは、強磁性金属層2Dと、強磁性層2Dの一面に接合するスピン軌道トルク配線20と、を備える。強磁性金属層2Dのz方向の少なくとも一方の面は、x方向に傾斜する傾斜面をなしている。
図5に示すスピン流磁化反転素子100Dは、図1に示すスピン流磁化反転素子100から非磁性層3及び第1強磁性層1を除いたものに対応する。非磁性層3及び第1強磁性層1が無くても、スピン流磁化反転素子100Dは例えば、AMR(磁気異方性)センサ、磁気カー効果又は磁気ファラデー効果を利用した素子等として機能する。図5に示すスピン流磁化反転素子100Dもx方向の対称性が乱されているため、強磁性金属層2Dの磁化を無磁場下で磁化反転できる。
(スピン流磁化反転素子の製造方法)
次いで、スピン流磁化反転素子の製造方法について説明する。
図1に示すスピン流磁化反転素子100を製造する際には、スピン軌道トルク配線20上に磁気抵抗効果素子10を積層する工程を有する。図5に示すスピン流磁化反転素子100Dを製造する際には、スピン軌道トルク配線20上に強磁性金属層2Dを積層する工程を有する。またこれらの層を積層する前に、スピン軌道トルク配線20に傾斜面を形成する。そして傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20上に磁気抵抗効果素子10を積層することで、第2強磁性金属層2の一面又は両面に第1の方向に傾斜した傾斜面を形成する。
まず、スピン軌道トルク配線20に傾斜面を形成する。傾斜面は、以下の3つの方法で得ることができる。図6は、第1実施形態に係るスピン流磁化反転素子の製造方法の一部を模式的に示した図であり、スピン軌道トルク配線20の作製方法を示した図である。
第1の方法は、図6(a)に示すように、積層したスピン軌道トルク配線をx方向に沿って研磨することにより作製する方法である。
まず、基板(図視略)上にスピン軌道トルク配線21を成膜する。成膜法としては、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の公知の方法を用いることができる。成膜されたスピン軌道トルク配線21の積層面は、xy平面と平行であり、傾斜していない。
そこで、スピン軌道トルク配線21の基板と反対側の面を研磨する。研磨手法は、化学機械研磨(CMP)等を用いることができる。研磨は、異方性をもって行う。具体的には、x方向の第1端部から反対側の第2端部に向けてx方向に沿って研磨を行う。
一般に、一方向に沿って研磨を行うと、研磨パットと研磨対象物が接触した初期に大きな力が加わるため、研磨を開始した端部である第1端部は第2端部より大きく削れる。そのため、異方性の研磨を繰り返すことにより、図6(a)に示すような傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20が形成される。
第2の方法は、図6(b)に示すように、積層したスピン軌道トルク配線をx方向に沿って異方性エッチングすることにより作製する方法である。
スピン軌道トルク配線21を成膜するまでの手順は第1の方法と同じである。そして、作製したスピン軌道トルク配線21のx方向の側面に、保護体30を設置する。保護体30は、スピン軌道トルク配線21を構成する材料より硬度の高いものであれば、材料は特に問わない。
次いで、スピン軌道トルク配線21に対してx方向に傾斜した方向からエッチングを行う。エッチングの手段としては、イオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)等を用いることができる。
保護体30はスピン軌道トルク配線21より硬度が高く、エッチングされにくい。そのため、x方向に傾斜した方向からイオン等を衝突させると、保護体30の影となる部分はエッチングが進行しない(シャドーイング効果)。その結果、x方向に異方性をもったエッチングとなり、x方向に傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20が形成される。傾斜面の角度は、スピン軌道トルク配線に対してエッチングに用いるイオン、ガス等を入射させる角度を変えることで自由に制御できる。
第3の方法は、図6(c)に示すように、スピン軌道トルク配線21を異方性成膜により作製する方法である。
まずスピン軌道トルク配線20を作製したい部分を挟むように、基板上に保護体30を設置する。そして、基板の鉛直方向に対してx方向に傾斜した方向から成膜を行う。成膜法としては、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の公知の方法を用いることができる。
保護体30の影となる部分は成膜が進行し難い(シャドーイング効果)。その結果、x方向に異方性をもって成膜が進行し、x方向に傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20が得られる。傾斜面の角度は、基板に対するターゲットの角度を調整し、基板に入射する粒子の角度を変えることで自由に制御できる。
上記の方法で得られた傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20上に、第2強磁性金属層2、非磁性層3、第1強磁性金属層1を順に積層し、スピン流磁化反転素子100を作製する。また図5に示すスピン流磁化反転素子100Dを作製する場合は、傾斜面を有するスピン軌道トルク配線20上に強磁性金属層2Dを積層する。成膜法としては、スパッタ法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等の公知の方法を用いることができる。磁気抵抗効果素子10の各層は、スピン軌道トルク配線20の傾斜面を反映するため、第2強磁性金属層2に傾斜面が形成される。
また図3(a)〜図3(c)に示すように、磁気抵抗効果素子10の各層がスピン軌道トルク配線の積層面の形状を反映しない場合もある。この場合は、磁気抵抗効果素子10を積層する過程において、上記の3つの方法を用いる。例えば、図3(a)に示す構成は、第2強磁性金属層2をスピン軌道トルク配線20の形状を反映させて積層した後に、積層面に対して研磨等を行うことで実現できる。
上述のように、本実施形態にかかるスピン流磁化反転素子の製造方法によれば、任意の面に傾斜面を作製することができる。そのため、磁気抵抗効果素子に「対称性の破れ」を生み出すことができ、外部磁場等の外力を印加しなくでも自由層の磁化を磁化反転できるスピン流磁化反転素子を得ることができる。
「第2実施形態」
図7は、第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子を模式的に示した斜視図である。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102は、ボトムピン構造である点が第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100と異なる。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102は、基板Sb上に磁気抵抗効果素子40と、スピン軌道トルク配線25とを順に有する。磁気抵抗効果素子40の外周には、絶縁部31が設けられている。
磁気抵抗効果素子40は、基板Sb側から第1強磁性金属層41、非磁性層43、第2強磁性金属層42を有するボトムピン構造である。第1強磁性金属層41、非磁性層43及び第2強磁性金属層42には、第1実施形態と同様の材料、構成を用いることができる。
第2強磁性金属層42のスピン軌道トルク配線25側の面は、x方向に傾斜した傾斜面42aである。そのため、第2強磁性金属層42の磁化M42は、傾斜面42aの影響を受けてx方向に傾斜している。これに対し、第1強磁性金属層41の磁化M41は、z方向に配向している。
スピン軌道トルク配線25は、磁気抵抗効果素子40の第2強磁性金属層42側に配設されている点は第1実施形態と同様である。一方で、磁気抵抗効果素子40の積層順が反転しているため、スピン軌道トルク配線25が磁気抵抗効果素子40のz方向上方に配設されている点が異なる。スピン軌道トルク配線25には、第1実施形態と同様の材料、構成を用いることができる。
絶縁部31は、磁気抵抗効果素子40上にスピン軌道トルク配線25を配設するための支持部である。絶縁部31は、絶縁性を有していれば特に問わない。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102は、スピン軌道トルク配線25から磁気抵抗効果素子40へ注入されるスピンにより動作する。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102は、第2強磁性金属層42の傾斜面42aに起因して、磁化M42がx方向に傾斜している。すなわち、外部磁場が印加されていない状態で、磁化M42の対称性は乱れている。そのため、磁化M42は、磁気抵抗効果素子40に注入されるスピンと相互作用し、磁化回転するきっかけとなる回転力(SOT)を受けることができる。
上述のように、第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102によれば、外部磁場等の外力を印加しなくても磁気抵抗効果素子40の第2強磁性金属層42(自由層)の磁化M42を反転できる。これは、形状異方性に伴い磁化M42がx方向に傾き、磁気抵抗効果素子40に「対称性の破れ」が生じたためである。
本実施形態は、必ずしも上記構成に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
図8は、第2実施形態に係るスピン流磁化反転素子の別の例の断面を模式的に示した図である。
図8(a)に示すスピン流磁化反転素子102Aは、第2強磁性金属層42Aの両面に傾斜面が設けられている点が、図7に示すスピン流磁化反転素子102と異なる。
図8(a)に示すスピン流磁化反転素子102Aは、基板Sb1上に磁気抵抗効果素子40Aとスピン軌道トルク配線25とを有する。磁気抵抗効果素子40Aの外周には、絶縁部31Aが設けられている。基板Sb1の磁気抵抗効果素子40A側の面は傾斜し、磁気抵抗効果素子40Aの第1強磁性金属層41A、第2強磁性金属層42A及び非磁性層43Aは傾斜している。
図8(a)に示すスピン流磁化反転素子102Aは、第1強磁性金属層41Aと第2強磁性金属層42Aの磁化が配向する方向が揃っており、大きなMR比を実現できる。
図8(b)に示すスピン流磁化反転素子102Bは、第2強磁性金属層42Bの基板Sb1側の面に傾斜面が設けられている点が、図7に示すスピン流磁化反転素子102と異なる。またスピン軌道トルク配線25Bがx方向に傾斜していない点が、図8(a)に示すスピン流磁化反転素子102Aと異なる。
図8(b)に示すスピン流磁化反転素子102Bは、基板Sb1上に磁気抵抗効果素子40Bとスピン軌道トルク配線25Bとを有する。磁気抵抗効果素子40Bの外周には、絶縁部31Bが設けられている。磁気抵抗効果素子40Bは、基板Sb1側から第1強磁性金属層41B、非磁性層43B、第2強磁性金属層42Bを有する。
また第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子と同様に、第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子は、第1強磁性金属層41A及び非磁性層43Aを有さない構成でもよい。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子は、以下のように作製できる。図7に示すスピン流磁化反転素子102を例に具体的に説明する。
第2実施形態にかかるスピン流磁化反転素子102の製造方法は、磁気抵抗効果素子40上にスピン軌道トルク配線25を積層する工程を有する。傾斜面は、磁気抵抗効果素子40を積層した後に作製する。
第2強磁性金属層42の傾斜面42aは、第1実施形態と同様にx方向に沿って、研磨、異方性エッチング、異方性成膜のいずれかを行うことで得られる。絶縁部31は、異方性エッチング及び異方性成膜時の保護体30を兼ねることができる。
また図8(a)及び(b)に示すように、基板Sb1の磁気抵抗効果素子40A、40Bが積層される面に傾斜面を形成し、第2強磁性金属層42A、42Bに傾斜面を導入してもよい。図8(b)に示す磁気抵抗効果素子40Bのスピン軌道トルク配線25B側の面は、xy平面と平行な研磨により得られる。
「第3実施形態」
図9は、第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子を模式的に示した斜視図である。また図10は、第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子を断面視した図である。図10(a)はxz平面で断面視した図であり、図10(b)はyz平面で断面視した図である。
第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子103は、磁気抵抗効果素子50がy方向にも傾斜している点が、第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100と異なる。
第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子103は、スピン軌道トルク配線26と磁気抵抗効果素子50とを有する。磁気抵抗効果素子50は、スピン軌道トルク配線26側から第2強磁性金属層52、非磁性層53、第1強磁性金属層51を順に有する。スピン軌道トルク配線26、第2強磁性金属層52、非磁性層53及び第1強磁性金属層51には、第1実施形態と同様の材料等を用いることができる。
スピン軌道トルク配線26は、x方向のみならずy方向にも傾斜している点が、第1実施形態と異なる。そのため、スピン軌道トルク配線26上に積層された磁気抵抗効果素子50の第2強磁性金属層52もx方向及びy方向に傾斜している。そのため、第2強磁性金属層52の磁化M52もx方向及びy方向に傾いている。
第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子103は、第2強磁性金属層52の傾斜面に起因して、磁化M52がx方向及びy方向に傾斜している。外部磁場を印加せずに、SOTにより磁化反転を行うためには、磁化M52の対称性を乱す必要がある。第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子103はx方向のみならずy方向にも対称性が乱れているため、より簡単に磁化反転を行うことができる。
また第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子と同様に、第3実施形態にかかるスピン流磁化反転素子は、第1強磁性金属層51及び非磁性層53を有さない構成でもよい。
「第4実施形態」
図11は、第4実施形態にかかるスピン流磁化反転素子を模式的に示した断面図である。第4実施形態にかかるスピン流磁化反転素子104は、磁気抵抗効果素子60の第2強磁性金属層62の傾斜面が、第1傾斜面62a1と第2傾斜面62a2とを有する点が第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子100と異なる。
図11にかかるスピン流磁化反転素子104は、スピン軌道トルク配線27と磁気抵抗効果素子60とを有する。スピン軌道トルク配線27及び磁気抵抗効果素子60は、第1実施形態と同様の材料、構成を用いることができる。
スピン軌道トルク配線27は、磁気抵抗効果素子60が積層する積層面がz方向下方に凹んでいる。磁気抵抗効果素子60を構成する第2強磁性金属層62、非磁性層63及び第1強磁性金属層61は、スピン軌道トルク配線27の積層面の形状を反映している。
図11に示す第2強磁性金属層62は、z方向の両面に傾斜面を有する。一方の傾斜面は、第1傾斜面62a1と第2傾斜面62a2によって構成されている。第1傾斜面62a1と第2傾斜面62a2は、xy平面(基準面)に対して傾斜角の正負が異なる。図11では第1傾斜面62a1と第2傾斜面62a2の境界の変曲部pを基準に、第1傾斜面62a1はxy平面に対してz方向に正の傾きを有し、第2傾斜面62a2はxy平面に対してz方向に負の傾きを有する。
第2強磁性金属層62の磁化M62は、第1傾斜面62a1及び第2傾斜面62a2の影響を受けて配向する。第1傾斜面62a1近傍に配向する磁化M62Aはz方向から−x方向に傾いて配向し、第2傾斜面62a2近傍に配向する磁化M62Bはz方向から+x方向に傾いて配向する。そのため外部磁場が印加されていない状態でも、それぞれの磁化M62A,M62Bの対称性は乱れている。
またスピン流磁化反転素子104において、第1傾斜面62a1の面積は、第2傾斜面62a2より大きい。図11に示す断面においては、変曲部pの位置は磁気抵抗効果素子60のx方向の中点からずれている。
第1傾斜面62a1の面積は第2傾斜面62a2より大きいため、磁気抵抗効果素子60全体としては、第1傾斜面62a1の影響を受けて配向した磁化M62Aが支配的となる。すなわち、第2強磁性金属層62の磁化M62は、マクロな視点でも対称性は乱れている。そのため、磁化M62は、磁気抵抗効果素子60に注入されるスピンと相互作用し、磁化回転するきっかけとなる回転力(SOT)を受けることができる。
第1傾斜面62a1と第2傾斜面62a2は、傾斜面を研磨により作製した場合に形成されやすい。過剰に力が加わった部分が僅かに凹むことがあるためである。
上述のように、第4実施形態にかかるスピン流磁化反転素子104によれば、外部磁場等の外力を印加しなくても磁気抵抗効果素子60の第2強磁性金属層62(自由層)の磁化M62を反転できる。これは、形状異方性に伴い磁化M62がx方向に傾き、磁気抵抗効果素子40に「対称性の破れ」が生じたためである。
傾斜面が第1傾斜面と第2傾斜面を有する構成は、図11の構成に限られない。例えば、図12に示すスピン流磁化反転素子105の構成も考えられる。
図12に示すスピン流磁化反転素子105は、スピン軌道トルク配線28と、磁気抵抗効果素子70とを有する。スピン軌道トルク配線28は、磁気抵抗効果素子70が積層する積層面がz方向上方に凸形状である。磁気抵抗効果素子70を構成する第2強磁性金属層72、非磁性層73及び第1強磁性金属層71は、スピン軌道トルク配線28の積層面の形状を反映している。そのため、第2強磁性金属層72には、第1傾斜面72a1と第2傾斜面72a2が形成される。
また第1実施形態にかかるスピン流磁化反転素子と同様に、第4実施形態にかかるスピン流磁化反転素子は、第1強磁性金属層61,71及び非磁性層63,73を有さない構成でもよい。
(素子集合体)
図13は、複数のスピン流磁化反転素子100を備える素子集合体200を模式的示した図である。図13に示す素子集合体200は、スピン流磁化反転素子100が3×3のマトリックス配置をしている。図13は、素子集合体の一例であり、スピン流磁化反転素子100の数及び配置は任意である。
スピン流磁化反転素子100には、それぞれ1本のワードラインWL1〜3と、1本のソースラインSL1〜3が接続されている。電流を印加するワードラインWL1〜3及びソースラインSL1〜3を選択することで、任意のスピン流磁化反転素子100のスピン軌道トルク配線20に電流を流すことができる。
スピン軌道トルク配線20に電流が流れると、磁気抵抗効果素子10の自由層の磁化がSOT効果により反転する。このようにして、複数のスピン流磁化反転素子100の内の任意の素子にデータを書込みすることができる。
図14は、複数のスピン流磁化反転素子を備える素子集合体を、図13のA−A面に沿って切断した断面を模式的に示した図である。
図14に示すように、複数のスピン流磁化反転素子100のそれぞれの傾斜面は、同一の方向に傾斜していることが好ましい。各スピン流磁化反転素子100の傾斜方向が異なっていると、各スピン流磁化反転素子100に同一方向から配線を接続することができず、配線構成が複雑化する。
これに対し、素子集合体200を構成する各スピン流磁化反転素子100が同様の構成であれば、それぞれの素子に接続するワードラインWL1〜3及びソースラインSL1〜3の形状も同様にすることができる。すなわち、素子集合体200の配線構成が複雑化することが避けられ、素子集合体200の集積度が高まる。
1,1A,1B,1C,11,41,41A,41B,51,61,71…第1強磁性金属層、
2,2A,2B,2C,12,42,42A,42B,52,62,72…第2強磁性金属層、
3,3A,3B,3C,13,43,43A,43B,53,63,73…非磁性層、
10,10A,10B,10C,15,40,40A,40B,50,60,70…磁気抵抗効果素子、
20,21,22,23,24,25,25B,26,27,28…スピン軌道トルク配線、
22A,23A,24A…スピン流生成部、22B,23B,24B…低抵抗部、
30…保護体、31,31A,31B…絶縁部、
100,100A,100B,100C,100D,101,102,102A,102B,103,104,105…スピン流磁化反転素子、
200…素子集合体、
M1,M2,M12,M41,M42,M52,M62A,M62B,M62…磁化、
1a,1b,2a,2b,42a…傾斜面、
62a1,72a1…第1傾斜面、62a2,72a2…第2傾斜面、
2Aa,2Ba,2Ca…第1面、2Ab,2Bb,2Cb…第2面、
S1…第1スピン、S2…第2スピン、I…電流、Js…純スピン流、p…変曲部、
Sb,Sb1…基板、
200…素子集合体、WL1〜3…ワードライン、SL1〜3…ソースライン

Claims (14)

  1. 磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化する第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層に挟持された非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子と、
    前記磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する第1の方向に延在し、前記磁気抵抗効果素子の前記第2強磁性金属層側の面に接合するスピン軌道トルク配線と、を備え、
    前記第2強磁性金属層の前記積層方向の少なくとも一方の面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有し、前記第2強磁性金属層の磁化の方向が前記傾斜面によって傾斜している、スピン流磁化反転素子。
  2. 前記スピン軌道トルク配線の前記磁気抵抗効果素子側の面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有する請求項1に記載のスピン流磁化反転素子。
  3. 前記第2強磁性金属層の両面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有する請求項1又は2のいずれかに記載のスピン流磁化反転素子。
  4. 前記第2強磁性金属層の前記スピン軌道トルク配線側の前記傾斜面と、前記非磁性層側の前記傾斜面とが平行である請求項3に記載のスピン流磁化反転素子。
  5. 前記傾斜面、前記積層方向及び前記第1の方向と交差する第2の方向に傾斜している請求項1〜4のいずれか一項に記載のスピン流磁化反転素子。
  6. 前記第2強磁性金属層の前記傾斜面を有する面は、基準面に対して傾斜角の正負の異なる第1傾斜面と第2傾斜面を有し、
    前記第1傾斜面の面積は、前記第2傾斜面の面積より大きい請求項1〜5のいずれか一項に記載のスピン流磁化反転素子。
  7. 強磁性金属層と、
    前記強磁性金属層の積層方向に対して交差する第1の方向に延在し、前記強磁性金属層の一面に接合するスピン軌道トルク配線と、を備え、
    前記強磁性金属層の前記スピン軌道トルク配線側の面が、前記第1の方向に傾斜する傾斜面を有する、スピン流磁化反転素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のスピン流磁化反転素子を複数備える素子集合体。
  9. 複数の前記スピン流磁化反転素子のそれぞれの傾斜面が、同一の方向に傾斜している請求項8に記載の素子集合体。
  10. 磁化方向が固定された第1強磁性金属層と、磁化方向が変化する第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層及び第2強磁性金属層に挟持された非磁性層と、を有する磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する第1の方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を積層する積層工程を有し、
    前記積層工程の前又は途中において、前記第2強磁性金属層のいずれか一面に前記第1の方向に傾斜した傾斜面を形成する、スピン流磁化反転素子の製造方法。
  11. 前記傾斜面を前記第1の方向に沿った研磨により形成する請求項10に記載のスピン流磁化反転素子の製造方法。
  12. 前記傾斜面を前記第1の方向に沿った異方性エッチングにより形成する請求項10に記載のスピン流磁化反転素子の製造方法。
  13. 前記傾斜面を前記第1の方向に沿った異方性成膜により形成する請求項10に記載のスピン流磁化反転素子の製造方法。
  14. 強磁性金属層と、前記強磁性金属層の積層方向と交差する第1の方向に延在するスピン軌道トルク配線と、を積層する積層工程を有し、
    前記積層工程の前又は途中において、前記強磁性金属層の前記スピン軌道トルク配線側の面に前記第1の方向に傾斜した傾斜面を形成する、スピン流磁化反転素子の製造方法。
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