JP2018074139A - 電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子、磁気抵抗効果素子、磁気メモリおよび高周波フィルタ - Google Patents

電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子、磁気抵抗効果素子、磁気メモリおよび高周波フィルタ Download PDF

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Abstract

【課題】純スピン流による磁化反転を利用する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10は、磁化方向が変化する第1強磁性金属層1と、第1強磁性金属層1の面直方向である第1方向に対して直交する面内の第2方向に延在し、前記第1強磁性金属層1に接合するスピン軌道トルク配線2と、第1強磁性金属層1と絶縁層4によって電気的に絶縁されるように配置され、第1強磁性金属層1の磁化反転を補助する磁場H0を形成するための電流I0が流れる電流磁場アシスト用配線3と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子、磁気抵抗効果素子、磁気メモリおよび高周波フィルタに関する。
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子及び非磁性層として絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子が知られている。一般に、TMR素子はGMR素子と比較して素子抵抗は高いが、磁気抵抗(MR)比はGMR素子より大きい。そのため、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)用の素子として、TMR素子に注目が集まっている。
MRAMの書き込み方式としては、電流が作る磁場を利用して書き込み(磁化反転)を行う方式や磁気抵抗素子の積層方向に電流を流して生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用して書き込み(磁化反転)を行う方式が知られている。
磁場を利用する方式では、素子サイズが小さくなると、細い配線に流すことができる電流では書き込みができなくなるという問題がある。
これに対して、スピントランスファートルク(STT)を利用する方式は、一方の強磁性層(固定層、参照層)が電流をスピン分極させ、その電流のスピンがもう一方の強磁性層(自由層、記録層)の磁化に移行され、その際に生じるトルク(STT)によって書き込み(磁化反転)が行われる。そのためSTTを利用する方式は、素子サイズが小さくなるほど書き込みに必要な電流が小さくて済むという利点がある。
I.M.Miron, K.Garello, G.Gaudin, P.-J.Zermatten, M.V.Costache, S.Auffret, S.Bandiera, B.Rodmacq,A.Schuhl,and P.Gambardella,Nature,476,189(2011). S.Fukami, T.Anekawa,C.Zhang, and H.Ohno, Nature Nanotechnology, DOI:10.1038/NNANO.2016.29.
STTを用いたTMR素子の磁化反転はエネルギーの効率の視点から考えると効率的ではある。しかしながら、STTを用いたTMR素子は磁化反転をさせるための反転電流密度が高い。TMR素子の長寿命の観点からはこの反転電流密度は低いことが望ましい。この点は、GMR素子についても同様である。
また、磁化反転を起こし、TMR素子へ情報を書き込む時には、読み込み時よりも十分大きな電流を通電する必要がある。TMR素子の耐久性という観点からは、TMR素子への情報の書き込み時にTMR素子へ印加する電流は低い方が望ましい。
従って、TMR素子及びGMR素子のいずれの磁気抵抗効果素子においても、この磁気抵抗効果素子に流れる電流密度を低減することが望まれる。
近年、STTとは異なるメカニズムで反転電流を低減する手段としてスピンホール効果により生成された純スピン流を利用した磁化反転に注目が集まっている(例えば、非特許文献1)。スピンホール効果によって生じた純スピン流又は異種材料界面におけるラシュバ効果は、スピン軌道トルク(SOT)を誘起し、SOTの大きさにより磁化反転を起こす。純スピン流は上向きスピンの電子と下向きスピン電子が同数で互いに逆向きに流れることで生み出されるものであり、電荷の流れは相殺されているため電流としてはゼロである。この純スピン流だけで磁化反転させることができれば、磁気抵抗効果素子を流れる電流はゼロなので磁気抵抗効果素子の長寿命化を図ることができる。
SOT−MRAMは、スピン軌道トルク配線から強磁性層に純スピン流を導入することによって磁化反転を行える磁気抵抗効果素子を各メモリセルに備えた磁気メモリである。この磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層には電流を流す必要がない。純スピン流は磁気抵抗効果素子とスピン軌道トルク配線との接合面から導入される。したがって、スピン軌道トルク配線の電流密度によって強磁性層へのスピン注入効率が決まる。 スピン軌道トルク配線の延在方向を長軸とした磁気抵抗効果素子において(電流は延在方向に流す)、磁気抵抗効果素子の長軸の長さが変わっても磁気抵抗効果素子の反転電流密度は変化しない。
非特許文献2には、SOTによる磁化反転素子について、スピン軌道トルク配線に流れる電流の方向と強磁性層(磁化自由層)の磁化容易軸の方向との関係に基づいて、3つのタイプが記載されている。電流の方向と磁化容易軸の方向とが直交する場合のうち、強磁性層が垂直磁化膜からなる構成が“タイプz”である。また強磁性層が面内磁化膜からなる構成が“タイプy”である。さらに、強磁性層が面内磁化膜からなり、かつ、電流の方向と磁化容易軸の方向とが平行である構成が“タイプx”である。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、純スピン流による磁化反転を利用する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子、磁気抵抗効果素子、磁気メモリおよび高周波フィルタを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の一態様に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、磁化方向が変化する第1強磁性金属層と、前記第1強磁性金属層の面直方向である第1方向に対して直交する面内の第2方向に延在し、前記第1強磁性金属層に接合するスピン軌道トルク配線と、前記第1強磁性金属層と電気的に絶縁されるように配置され、前記第1強磁性金属層の磁化反転を補助する磁場を形成するための電流が流れる電流磁場アシスト用配線と、を備える。
(2)上記(1)に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記電流磁場アシスト用配線が前記第1方向に対して直交する面内の第3方向に延在してもよい。
(3)上記(2)に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記電流磁場アシスト用配線の延在方向は、前記スピン軌道トルク配線の延在方向と直交するか、又は、平行であってもよい。
但し、電流磁場アシスト用配線の延在方向は、スピン軌道トルク配線の延在方向と「直交するか、又は、平行である」ことに限定されない。SOTによる磁化反転において電流磁場アシスト用配線から印加される印加磁場は、磁化反転を開始、及び停止をサポートする働きを示す。そのため、スピン流が第1強磁性金属層の磁化にトルクを与えられるように、スピン流によって注入されるスピンの向きと強磁性層の磁化の向きとが直交しないように、印加磁場が作用すればよい。したがって、電流磁場アシスト用配線の延在方向は、スピン軌道トルク配線の延在方向と「直交するか、又は、平行である」場合において印加磁場が磁化反転に寄与する効率が最も高くなるが、「直交するか、又は、平行である」以外の場合でも有効である。
(4)上記(3)に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記スピン軌道トルク配線の延在方向は、前記第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向に直交してもよい。
(5)上記(4)に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向がその面直方向であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記第1強磁性金属層は平面視して、前記スピン軌道トルク配線の延在方向である前記第2方向を長軸とする形状異方性を有してもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記電流磁場アシスト用配線は、前記第1強磁性金属層と対面しない側の面及び/又は側面に磁気シールド層を備えてもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記電流磁場アシスト用配線を複数備えてもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、電流磁場アシスト用配線に通電した後に、前記スピン軌道トルク配線に通電するように制御する制御装置を備えてもよい。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、前記スピン軌道トルク配線の通電を停止した後に、前記電流磁場アシスト用配線の通電を停止するように制御する制御装置を備えてもよい。
(11)本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子は、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子と、磁化方向が固定されている第2強磁性金属層と、前記第1強磁性金属層と前記第2強磁性金属層に挟持された非磁性層とを備える。
(12)本発明の一態様に係る磁気メモリは、上記(11)に記載の磁気抵抗効果素子を複数備える。
(13)上記(12)に記載の磁気メモリは、前記電流磁場アシスト用配線が平面視して、隣接する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の間に設置されていてもよい。
(14)本発明の一態様に係る高周波フィルタは、上記(11)に記載の磁気抵抗効果素子を備える。
本発明の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子によれば、純スピン流による磁化反転を利用する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子を提供することができる。
本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の他の実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 スピンホール効果について説明するための模式図である。 本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の他の実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の他の実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の他の実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 本発明にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の他の実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 本発明にかかる磁気抵抗効果素子の一実施形態を説明するための模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。 フォトマスクの形状と、得られる第1強磁性金属層のz方向からの平面形状の対応関係を示した図である。
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。本発明の素子において、本発明の効果を奏する範囲で他の層を備えてもよい。
(電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子)
図1に、本発明の一実施形態に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一例の模式図を示す。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。図1(a)において、平面図には見えていない内部の層の配置を示すために第1強磁性金属層1は2点鎖線で、また、スピン軌道トルク配線2は点線で示した。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10は、磁化方向が変化する第1強磁性金属層1と、スピン軌道トルク配線2と、電流磁場アシスト用配線3と、を備える。スピン軌道トルク配線2は、第1強磁性金属層1の面直方向である第1方向に対して直交する面内の第2方向に延在し、第1強磁性金属層1に接合する。また電流磁場アシスト用配線3は、第1強磁性金属層1と絶縁層4によって電気的に絶縁されるように配置されている。電流磁場アシスト用配線3には、第1強磁性金属層1の磁化反転を補助する磁場Hを形成するための電流Iが流れる。
ここで、本実施形態においてスピン軌道トルク配線にはその延在方向に電流が流される。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10では、第1強磁性金属層1の面直方向すなわち、第1強磁性金属層1とスピン軌道トルク配線2とが積層する方向(第1方向)はz軸に平行である。スピン軌道トルク配線2の延在方向(第2方向)はx軸に平行である。電流磁場アシスト用配線3の延在方向(第3方向)はy軸に平行である。すなわち、図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10は、第1強磁性金属層1とスピン軌道トルク配線2の積層方向(第1方向)、スピン軌道トルク配線2の延在方向(第2方向)、及び、電流磁場アシスト用配線3の延在方向(第3方向)が互いに直交する例である。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10は、第1強磁性金属層1の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線2に流れる電流の方向との関係でいうと、非特許文献2の“タイプz”の場合に相当する。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10において第1強磁性金属層1の磁化M1は+z方向を向いている。すなわち、電流磁場アシスト用配線3の延在方向(第3方向)は、第1強磁性金属層1の磁化容易軸の方向(z軸に平行な方向)に直交する。
この場合、y軸に平行に延在する電流磁場アシスト用配線3に−y方向から+y方向(紙面手前から紙面裏側:図1(b))へ電流Iを流すことにより、紙面手前から見て右回りに磁場Hが発生する。この磁場Hの向きは第1強磁性金属層1において磁化M1の方向に直交する。したがって、磁場Hは第1強磁性金属層1の磁化M1を反転する方向に力を作用する。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線に電流を流すことによって発生した純スピン流によるスピン軌道トルク(SOT)効果と、電流磁場アシスト用配線に電流を流すことによって生成した磁場とによって第1強磁性金属層の磁化反転を行う。なお、SOT効果及び電流磁場のいずれか一方の機構を用いて第1強磁性金属層の磁化反転を行うこともできるし、また、電流磁場を利用する磁化反転を主にして、SOT効果を利用する磁化反転を補助としても構わない。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、電流磁場アシスト用配線によって第1強磁性金属層に磁場を印加することで、低い反転電流密度での磁化反転が可能であり、その回転確率も高くできる。
図2に、本発明の他の実施形態に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一例の模式図を示す。図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。符号が同じ部材は図1に示すものと同様な構成を示すものとしてその説明を省略する。図2(a)において図1(a)と同様に、平面図には見えていない内部の層の配置を示すために第1強磁性金属層11は2点鎖線で、また、スピン軌道トルク配線2は点線で示した。
図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20では、電流磁場アシスト用配線13がスピン軌道トルク配線2の延在方向と同じ方向に延在する点、及び、第1強磁性金属層11の磁化容易軸が面内方向のy軸に平行な方向である点で図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10と異なる。
すなわち、図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20では、第1強磁性金属層11の面直方向すなわち、第1強磁性金属層11とスピン軌道トルク配線2とが積層する方向(第1方向)はz軸に平行である。そしてスピン軌道トルク配線2の延在方向(第2方向)および電流磁場アシスト用配線13の延在方向(第3方向)はいずれもx軸に平行である。すなわち、図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20は、スピン軌道トルク配線2の延在方向と電流磁場アシスト用配線13の延在方向とが同じ方向である。第1強磁性金属層1とスピン軌道トルク配線2の積層方向はこの方向に直交する。
図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20は、第1強磁性金属層11の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線2に流れる電流の方向との関係でいうと、非特許文献2の“タイプy”の場合に相当する。
図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20において第1強磁性金属層11の磁化M2は−y方向を向いている。すなわち、電流磁場アシスト用配線13の延在方向(第3方向)は、第1強磁性金属層11の磁化容易軸の方向(x軸に平行な方向)と直交する。
この場合、x方向に延在する電流磁場アシスト用配線13に−x方向から+x方向へ電流Iを流すことにより、−x方向から+x方向を見て右回りに磁場Hが発生する。この磁場Hは、第1強磁性金属層11において、第1強磁性金属層11の磁化M2と反対方向を向いている。そのため、磁場Hは第1強磁性金属層11の磁化M2を反転する方向に力を作用する。
<スピン軌道トルク配線>
図1及び図2に示すスピン軌道トルク配線2は、第1強磁性金属層1の面直方向である第1方向(z軸に平行な方向)に対して直交する面内の第2方向(x軸に平行な方向)に延在し、第1強磁性金属層1に接合する。スピン軌道トルク配線2において、電流は延在方向に流される。
スピン軌道トルク配線2は、電流が流れるとスピンホール効果によって純スピン流が生成される材料からなる。スピンホール効果とは、材料に電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の向きと直交する方向に純スピン流が誘起される現象である。かかる材料としては、スピン軌道トルク配線2中に純スピン流が生成される構成を有すれば足りる。
図1及び図2に示すに示すスピン軌道トルク配線2は、第1強磁性金属層1に接合する純スピン流発生部2Aと、純スピン流発生部2Aよりも電気抵抗の小さい材料からなる低抵抗部2Bとからなる。
図3は、スピンホール効果について説明するための模式図である。図3は、図1及び図2に示すスピン軌道トルク配線2をx方向に沿って切断した断面図である。図3に基づいてスピンホール効果により純スピン流が生み出されるメカニズムを説明する。
図3に示すように、スピン軌道トルク配線2の延在方向に電流Iを流すと、紙面手前側に配向した第1スピンS1と紙面奥側に配向した第2スピンS2はそれぞれ電流と直交する方向に曲げられる。通常のホール効果とスピンホール効果とは運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通するが、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果では磁場が存在しないのに電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)で移動方向が曲げられる点で大きく異なる。
非磁性体(強磁性体ではない材料)では第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しいので、図中で上方向に向かう第1スピンS1の電子数と下方向に向かう第2スピンS2の電子数が等しい。そのため、電荷の正味の流れとしての電流はゼロである。この電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
強磁性体中に電流を流した場合は、第1スピンS1と第2スピンS2が互いに反対方向に曲げられる点は同じである。一方で、強磁性体中では第1スピンS1と第2スピンS2のいずれかが多い状態であり、結果として電荷の正味の流れが生じてしまう(電圧が発生してしまう)点が異なる。従って、スピン軌道トルク配線2の材料としては、強磁性体だけからなる材料は含まれない。
ここで、第1スピンS1の電子の流れをJ、第2スピンS2の電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J−Jで定義される。図3においては、純スピン流としてJが図中の上方向に流れる。ここで、Jは分極率が100%の電子の流れである。
図1において、スピン軌道トルク配線2の上面に強磁性体を接触させると、純スピン流は強磁性体中に拡散して流れ込む。すなわち、第1強磁性金属層1にスピンが注入される。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線を第1強磁性金属層に接合して備えた構成である。そのため、スピン軌道トルク配線に電流を流して生成した純スピン流は、スピン軌道トルク配線に接する第1強磁性金属層に拡散する。その純スピン流は、スピン軌道トルク(SOT)効果を生み出し、第1強磁性金属層の磁化反転に寄与する。
本実施形態の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、SOT効果を利用するためにスピン軌道トルク配線に流す電流(以下、「SOT反転電流」ということがある。)自体は、電荷の流れを伴う通常の電流であるため、電流を流すとジュール熱が発生する。
ここで、純スピン流を生成しやすい材料である重金属は、通常の配線として用いられる金属に比べて電気抵抗率が高い。
そのため、SOT反転電流によるジュール熱を低減する観点では、スピン軌道トルク配線はすべてが純スピン流を生成しうる材料だけからなるよりも、電気抵抗率が小さい部分を有することが好ましい。この観点で、本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子が備えるスピン軌道トルク配線は、純スピン流を発生する材料からなる部分(純スピン流発生部)と、この純スピン流発生部よりも電気抵抗率が小さい材料からなる部分(低抵抗部)と、を有することが好ましい。
純スピン流発生部2Aは、純スピン流を生成しえる材料からなっていればよい。純スピン流発生部2Aは、例えば、複数種類の材料によって構成される部分を含んでもよい。
純スピン流発生部2Aは、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び、それらの金属を少なくとも1つ以上含む合金からなる群から選択された材料からなるものとすることができる。タングステン、レニウム、オスミウム及びイリジウムは、最外殻に5dの電子を持ち、d軌道の5つの軌道が縮退している場合に、大きな軌道角運動量を持つ。そのため、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きくなり、効率的にスピン流を発生できる。
低抵抗部2Bは、通常の配線として用いられる材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。低抵抗部2Bは、純スピン流発生部2Aよりも電気抵抗率が低い材料からなっていればよく、例えば、複数種類の材料部分からなる構成等であってもよい。
なお、低抵抗部において純スピン流が生成されても構わない。この場合、純スピン流発生部と低抵抗部との区別は、本明細書中に純スピン流発生部及び低抵抗部の材料として記載したものからなる部分は純スピン流発生部または低抵抗部であるとして区別できる。また、純スピン流を発生する主要部以外の部分であって、その主要部より電気抵抗率が低い部分は低抵抗部として、純スピン流発生部と区別できる。
純スピン流発生部2Aは、非磁性の重金属を含んでもよい。
ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属の意味で用いている。
この場合、非磁性の重金属は最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。かかる非磁性金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。純スピン流発生部2Aは、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属だけからなってもよい。
通常、金属に電流を流すとすべての電子はそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動くのに対して、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属はスピン軌道相互作用が大きいためにスピンホール効果によって電子の動く方向が電子のスピンの向きに依存し、純スピン流が発生しやすい。
仮に、低抵抗部がCu(1.7μΩcm)からなるものとすると、原子番号39以上でかつCuよりも電気抵抗率が2倍以上大きい材料としては、Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Pd,Cd,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Hg,Ce,Pr,Nd, Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luが挙げられる。
純スピン流発生部2Aが非磁性の重金属を含む場合、純スピン流発生部2Aは、純スピン流を生成しうる重金属を有限に含んでいればよい。さらにこの場合、純スピン流発生部は、純スピン流発生部の主成分よりも純スピン流を生成しうる重金属が十分少ない濃度あるか、または、純スピン流を生成しうる重金属が主成分(例えば、90%以上)を占めることが好ましい。この場合、純スピン流を生成しうる重金属は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の非磁性金属100%であることが好ましい。
ここで、純スピン流発生部の主成分よりも純スピン流を生成しうる重金属が十分少ない濃度とは、例えば、銅を主成分とする純スピン流発生部において、モル比で重金属の濃度が10%以下であることを指す。純スピン流発生部を構成する主成分が上述の重金属以外からなる場合、純スピン流発生部に含まれる重金属の濃度はモル比で50%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。重金属の濃度がこれらの範囲内であれば、電子のスピン散乱の効果が有効に得られる。重金属の濃度が低い場合、重金属よりも原子番号が小さい軽金属が主成分となる。なお、この場合、重金属は軽金属との合金を形成しているのではなく、軽金属中に重金属の原子が無秩序に分散していることを想定している。軽金属中ではスピン軌道相互作用が弱いため、スピンホール効果によって純スピン流は生成しにくい。しかしながら、電子が軽金属中の重金属を通過する際に、軽金属と重金属の界面でもスピンが散乱される効果があるため、重金属の濃度が低い領域でも純スピン流を効率よく発生させることが可能である。重金属の濃度が50%を超えると、重金属中のスピンホール効果の割合は大きくなるが、軽金属と重金属の界面の効果が低下するため総合的な効果が減少する。したがって、十分な界面の効果が期待できる程度の重金属の濃度が好ましい。
純スピン流発生部2Aは、磁性金属を含んでもよい。磁性金属とは、強磁性金属、あるいは、反強磁性金属を指す。非磁性金属に微量な磁性金属が含まれるとスピン軌道相互作用が増強され、純スピン流発生部2Aに流す電流に対するスピン流生成効率を高くできる。純スピン流発生部2Aは、反強磁性金属だけからなってもよい。反強磁性金属は重金属が最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の非磁性金属100%の場合と同等の効果を得ることができる。反強磁性金属は、例えば、IrMnやPtMnが好ましく、熱に対して安定なIrMnがより好ましい。
スピン軌道相互作用はスピン軌道トルク配線材料の物質の固有の内場によって生じるため、非磁性材料でも純スピン流が生じる。スピン軌道トルク配線材料に微量の磁性金属を添加すると、磁性金属自体が流れる電子スピンを散乱するためにスピン流生成効率が向上する。ただし、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生した純スピン流が添加された磁性金属によって散乱されるため、結果としてスピン流が減少する作用が強くなる。したがって、添加される磁性金属のモル比は純スピン流発生部2Aの主成分のモル比よりも十分小さい方が好ましい。目安で言えば、添加される磁性金属のモル比は3%以下であることが好ましい。
また、純スピン流発生部2Aは、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。純スピン流発生部2Aは、トポロジカル絶縁体だけからなってもよい。トポロジカル絶縁体とは、物質内部が絶縁体、あるいは、高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。物質にはスピン軌道相互作用という内部磁場のようなものがある。そこで外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。これがトポロジカル絶縁体であり、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率で生成することができる。
トポロジカル絶縁体としては例えば、SnTe,Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3,TlBiSe,BiTe,(Bi1−xSbTeなどが好ましい。これらのトポロジカル絶縁体は、高効率でスピン流を生成することが可能である。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線の第1強磁性金属層に接合する面の反対側の面に接合する絶縁層をさらに備えてもよい。
この構成では、磁気抵抗効果素子やその他の用途に適用する場合に、スピン軌道トルク配線に流す電流が第1強磁性金属層に接合する面と反対側の面から漏れることが防止され、より電流集中効果を高めることができる。
上述した実施形態ではスピン軌道トルク配線は、第1強磁性金属層に直接接続された場合のみを説明してきたが、後述するキャップ層のような他の層を介して接続されてもよい。
<第1強磁性金属層>
図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子においては、第1強磁性金属層は磁化方向が層に平行な面内方向である面内磁化膜を示したが、磁化方向が層に対して垂直方向である垂直磁化膜(図1)でもよい。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子において、第1強磁性金属層は平面視して、スピン軌道トルク配線の延在方向である第2方向を長軸とする形状異方性を有する。
このように第1強磁性金属層が細長状であることにより、この方向(形状の長手方向)に磁化が反転しやすくなる。そのため、電流磁場アシスト用配線3の電流磁場の強度が弱くても、第1強磁性金属層の磁化反転をアシストできる。
図1及び図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子においては、第1強磁性金属層はz方向から平面視して矩形(より正確には、長方形)であったが、図4に示すように、楕円状であってもよいし(第1強磁性金属層1A)、さらに他の形状であってもよい。この点は、他の実施形態においても同様である。
第1強磁性金属層について後で詳述する。
図1や図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線2が低抵抗部2Bを備えた構成とすることで回路全体の抵抗を下げることができる。
<電流磁場アシスト用配線>
電流磁場アシスト用配線は、第1強磁性金属層と電気的に絶縁されるように配置される。電流磁場アシスト用配線には、第1強磁性金属層の磁化反転を促進する磁場を形成するための電流が流される。
電流磁場アシスト用配線の材料は、導電性の高い材料であれば特に問わない。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
電流磁場アシスト用配線は、第1方向(z方向)に対して直交する面内の所定の方向に延在していることが好ましい。第1強磁性金属層の磁化容易軸は通常、面直方向(z方向)又は面内方向を向いている。そのため、電流磁場アシスト用配線が第1方向(z方向)に対して直交する面内に延在すると、第1強磁性金属層の磁化反転を促進するための磁場を形成するのに要する電流量を設定しやすい。
図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10では、電流磁場アシスト用配線3はz方向に直交するxy面内のy方向に延在している。図2に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20では、電流磁場アシスト用配線13はz方向に直交するxy面内のx方向に延在している。
電流磁場アシスト用配線は複数備えてもよい。
この場合、その複数の電流磁場アシスト用配線に流した電流が作る各電流磁場の合成磁場が第1強磁性金属層の磁化反転に作用する。
ここで、本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の作用効果について、非特許文献2に報告された知見との関係を説明する。
まず、図1に示した電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10では、第1強磁性金属層1は垂直磁化膜であり、かつ、第1強磁性金属層1の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線2の延在方向とは直交する。すなわち、第1強磁性金属層1の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線2で電流が流れる方向とは直交する。この構成は、第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線に流れる電流の方向との関係において、非特許文献2中の“タイプz”に相当する。
磁化容易軸がz軸方向である“タイプz”では、第1強磁性金属層の磁化反転のためにスピン軌道トルク配線に流す必要がある電流(SOT反転電流密度)が大きいと言われている。しかしながら、図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10は、電流磁場アシスト用配線3に通電することで形成した磁場Hによって第1強磁性金属層1の磁化反転を促進することができる。その結果、磁場Hにより磁化反転がアシストされた分だけ、スピン軌道トルク配線に流すSOT反転電流密度を低減できる。
一方、図2に示した電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20では、第1強磁性金属層11は面内磁化膜であり、かつ、第1強磁性金属層11の磁化容易軸の方向はスピン軌道トルク配線2の延在方向とは直交する。すなわち、第1強磁性金属層11の磁化容易軸の方向と、スピン軌道トルク配線2で電流が流される方向とは直交する。この構成は、第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向とスピン軌道トルク配線に流れる電流の方向との関係において、非特許文献2中の“タイプy”に相当する。“タイプy”は、書き込み動作が高速になると、第1強磁性金属層の磁化反転のためにスピン軌道トルク配線に流す必要がある電流(SOT反転電流密度)が増大すると言われている。しかしながら、図2に示した電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子20は、電流磁場アシスト用配線13に通電することで形成した磁場によって第1強磁性金属層11の磁化反転を促進することができる。その結果、磁場Hにより磁化反転がアシストされた分だけ、スピン軌道トルク配線に流すSOT反転電流密度を低減できる。
図5に、本発明の他の実施形態に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一例の模式図を示す。図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。符号が同じ部材は図1に示すものと同様な構成を示すものとしてその説明を省略する。図5(a)において図1(a)と同様に、平面図には見えていない内部の層の配置を示すために第1強磁性金属層21は2点鎖線で、また、スピン軌道トルク配線2は点線で示した。
図5に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子30は、磁化方向が変化する第1強磁性金属層21と、第1強磁性金属層21の面直方向である第1方向に対して直交する面内の第2方向に延在し、第1強磁性金属層21に接合するスピン軌道トルク配線2と、第1強磁性金属層21と絶縁層4によって電気的に絶縁されるように配置され、第1強磁性金属層1の磁化反転を補助する磁場Hを形成するための電流I(I2A、I2B)が流れる電流磁場アシスト用配線23(23A、23B)と、を備える。
図5に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子30は、図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10と以下の3点で異なる。一つ目は、第1強磁性金属層11の磁化容易軸とスピン軌道トルク配線2に流れる電流の方向との関係については非特許文献2の“タイプx”に相当する点である。二つ目は、電流磁場アシスト用配線が2本備える点である。三つ目は、電流磁場アシスト用配線23A,23Bが平面視して、第1強磁性金属層21を挟んで配置してy軸方向に延在する点である。 図5において、電流磁場アシスト用配線23Aに流れる電流I2Aによって作られる磁場がH2Aであり、電流磁場アシスト用配線23Bに流れる電流I2Bによって作られる磁場がH2Bである。
図5に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子30において、y軸に平行に延在する電流磁場アシスト用配線23Aに−y方向から+y方向(紙面手前から紙面裏側:図5(b))へ電流I2Aを流すと、紙面手前から見て右回りに磁場H2Aが発生する。一方、y軸に平行に延在する電流磁場アシスト用配線23Bに+y方向から−y方向(紙面裏側から紙面手前:図5(b))へ電流I2Bを流すと、紙面手前から見て左回りに磁場H2Bが発生する。第1強磁性金属層21の位置において形成された、磁場H2A及び磁場H2Bの合成磁場によって、第1強磁性金属層1の磁化M3を反転する方向に力が作用する。
図5に示す実施形態では、電流磁場アシスト用配線を2本備え、その両方に同時に電流を印加した場合を示したが、電流磁場アシスト用配線は1本でよいし、3本以上でもよい。また、電流はいずれか一方の電流磁場アシスト用配線のみに印加する使い方をしてもよいし、時間差を設けて印加する使い方をしてもよい。
図6に、本発明の他の実施形態に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一例の模式図を示す。図6(a)は平面図であり、図6(b)は図6(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。符号が同じ部材は図1に示すものと同様な構成を示すものとしてその説明を省略する。
図6に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子では、電流磁場アシスト用配線3が第1強磁性金属層1と対面しない側の面3b及び側面3aa、3abに磁気シールド層5を備える点が、図1に示した電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10と異なる。
ここで、磁気シールド層5は電流磁場アシスト用配線に流れる電流が作る電流磁場を周囲に漏洩することを防止する機能を有するものであり、典型的には磁性体からなる被覆層である。磁気シールド層5はこの機能を効果的に発揮できるような構成で形成される。
磁気シールド層5を備えることにより、目的としない外部磁場が第1強磁性金属層に印加されることを抑制でき、電流磁場アシスト用配線3に流れる電流が作る電流磁場による第1強磁性金属層1の磁化反転の促進が妨げられることが抑制される。本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子を複数含むようなデバイス(例えば、後述する磁気メモリなど)において、隣接する他のセルの電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子に対して、書き込み時にクロストークが生じることを効果的に防止できる。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、電流磁場アシスト用配線に流す電流とスピン軌道トルク配線に流す電流のタイミングを制御する制御装置を備えてもよい。
例えば、電流磁場アシスト用配線に通電した後に、スピン軌道トルク配線に通電するように制御する制御装置を備えてもよい。このように制御することで、磁化反転の初期の動作が速くなる。
また、スピン軌道トルク配線の通電を停止した後に、電流磁場アシスト用配線の通電を停止するように制御する制御装置を備えてもよい。このように制御することで、磁化反転を終了させ、所定の方向に磁化反転を行い、磁化反転を終了させることが可能である。
スピンの磁化反転が完了する前にスピン軌道トルク配線の通電を停止した場合には、スピンが磁化反転の途中で反転するためのエネルギーを失う。この場合には磁化容易軸に向かってスピンが収束する。スピンの磁化反転は確率的に起こるため、スピンの回転が途中である場合は熱エネルギーの影響やスピンの回転位相の関係によって、磁化反転せずに元の状態に戻る場合が確率的に存在する。この時に磁場が印加されていると、磁場が印加されている方向を量子化軸としてスピンが回転を続けるため、スピンの磁化反転を完了させることができる。つまり、当該構成によればスピンの磁化反転の成功確率が上がる。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は公知のスパッタリング法等の成膜技術と、フォトリソグラフィー及びArイオンミリング等の形状加工技術を用いて製造することができる。
以下、図1に図示した電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10の製造方法について説明する。
まず、純スピン流発生部2Aは例えば、マグネトロンスパッタ装置を用いて成膜することができる。純スピン流発生部2Aを成膜後、電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子を作製したい部分にレジストまたは保護膜を設置し、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて不要部分を除去する。
その後、低抵抗部2Bを成膜し、化学的機械研磨(CMP)で純スピン流発生部2Aを露出させる。その後、第1強磁性金属層1を成膜し、レジストまたは保護膜を設置し、ミリングする。そして、第1強磁性金属層1及びスピン軌道トルク配線2を所定の形状に加工する。
また、第1強磁性金属層を後から成膜、形成することもできる。純スピン流発生部を上述の方法で形成した後に低抵抗部を成膜し、スピン軌道トルク配線を所定の形状に加工する。その後、化学的機械研磨(CMP)を施すことにより平坦な面を設け第1強磁性金属層を積層してもよい。
そして、絶縁層4を成膜し、その上に電流磁場アシスト用配線を成膜し、レジストまたは保護膜を設置し、ミリングすることで電流磁場アシスト用配線3の形状に形成することができる。
第1強磁性金属層の形状は、上述のようにフォトリソグラフィーにより自由に作製できる。また図1及び図2に示すように第1強磁性金属層1のz方向からの平面形状が長方形状の場合は、2回に分けて第1強磁性金属層1を加工する。すなわち、第1強磁性金属層を一の方向に加工する第1工程と、一の方向に加工後の積層体を、一の方向と交差する二の方向に加工する第2工程と、に分けて行う。
一方で、図4に示すように第1強磁性金属層1Aが楕円形状の場合は、フォトマスクの形状と被加工形状との関係を利用して作製する。図9は、フォトマスクPMの形状と、得られる第1強磁性金属層1のz方向からの平面形状の対応関係を示した図である。図9(a)に示すように、1つのフォトマスクPMの形状が四角形の場合でも、第1強磁性金属層1の平面形状は楕円等の形状になる。これは、フォトマスクPMを通過後の光が、一部拡散してレジストを硬化するためである。またイオンミリング等のエッチング処理において、角となる部分はエッチングが進行しやすいためである。
また図9(c)に示すように、楕円領域Eの外側に外部領域Aを形成する場合は、フォトマスクの形状を図9(b)及び図9(c)に示す形状とする。図9(b)に示すフォトマスクPM1は、楕円を内接できる長方形領域Reと、長方形領域Reの角部Edに突出領域Pr1とを有する。また図9(c)に示すフォトマスクPM2は、楕円を内接できる長方形領域Reと、長方形領域Reの長辺部Sdに突出領域Pr2とを有する。図9(b)及び(c)における長方形領域Reは、図9(a)に示すフォトマスクに対応する。
図9(b)に示すように角部Edに突出領域Pr1を設けると、エッチング処理における角部Edのエッチングの進行を遅らせることができる。その結果、図9(c)に示すように外部領域Aを形成できる。また図9(c)に示すように長辺部Sdに突出領域Pr2を設けると、エッチング処理における長辺部Sdと角部Edとのエッチング速度差をより大きくできる。その結果、図9(c)に示すように外部領域Aを形成できる。外部領域Aが確保されると、第1強磁性金属層1の面積が大きくなる。第1強磁性金属層1の面積が大きくなると、磁化の安定性が高まり、熱擾乱等により磁化反転が生じることが避けられる。
また別の方法として、レーザー等の指向性を有する光を用いてスポット露光してもよい。例えば、ネガレジストを用いて、硬化したい部分だけに光を当て、所定の形状にレジストを加工する。この場合も同様に、露光するスポットの形状が四角形の場合でも、得られる形状が楕円形となる。
図7に、本発明の他の実施形態に係る電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の一例の模式図を示す。図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。符号が同じ部材は図1に示すものと同様な構成を示すものとしてその説明を省略する。図7(a)において図1(a)と同様に、平面図には見えていない内部の層の配置を示すために第1強磁性金属層21は2点鎖線で、また、スピン軌道トルク配線2は点線で示した。
上述の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子では、スピン軌道トルク配線及び電流磁場アシスト用配線は第1強磁性金属層を挟んで配置する構成であったが、図7に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、スピン軌道トルク配線及び電流磁場アシスト用配線が第1強磁性金属層に対して同じ側に配置する構成である。
すなわち、図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10では、第1強磁性金属層1はスピン軌道トルク配線2の電流磁場アシスト用配線3側の面2Aa(図7参照)に形成され、絶縁層4中に配置していたが、図7に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子40では、第1強磁性金属層31はスピン軌道トルク配線2の電流磁場アシスト用配線3の反対側の面2Abに形成されている。
図7に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子40では、図1に示す電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子10に比べて、電流磁場アシスト用配線3は第1強磁性金属層からの距離が遠くなり、同じ電流量の場合には第1強磁性金属層の磁化反転に対する電流磁場の影響が小さくなる。そこで、この影響の低下を低減するために、絶縁層24の厚みを絶縁層4に比べて薄くするなどしてもよい。
本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子は、後述するように磁気抵抗効果素子に適用することができる。用途としては磁気抵抗効果素子に限られず、他の用途にも適用できる。他の用途としては、例えば、上記の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子を各画素に配設して、磁気光学効果を利用して入射光を空間的に変調する空間光変調器においても用いることができるし、磁気センサにおいて磁石の保磁力によるヒステリシスの効果を避けるために磁石の磁化容易軸に印加する磁場をSOTに置き換えてもよい。
(磁気抵抗効果素子)
本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、上記の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子と、磁化方向が固定されている第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層と第2強磁性金属層に挟持された非磁性層とを備えるものである。
図8は、本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の応用例であり、また、本発明の一実施形態に係る磁気抵抗効果素子でもある磁気抵抗効果素子の一例の模式図を示す。図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)のスピン軌道トルク配線2の幅方向の中心線であるX−X線で切った断面図である。図8(a)において、平面図には見えていない内部の構成の一部の配置を示すために磁気抵抗効果素子部105は2点鎖線で、また、スピン軌道トルク配線120は点線で示した。
図8に示す磁気抵抗効果素子100は、本実施形態にかかる電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子(第1強磁性金属層101とスピン軌道トルク配線120と電流磁場アシスト用配線130)と、磁化方向が固定された第2強磁性金属層103と、第1強磁性金属層101及び第2強磁性金属層103に挟持された非磁性層102とを有する。また、図8に示す磁気抵抗効果素子100は、磁気抵抗効果素子部105とスピン軌道トルク配線120と電流磁場アシスト用配線130とを有するということもできる。
電流磁場アシスト用配線130は、磁気抵抗効果素子部105とは絶縁層140によって電気的に絶縁されている。
図8においては、磁気抵抗効果素子100を作製する基板110、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に電流を流すための配線150、及び、キャップ層104も示した。配線150はy軸方向に延在している。
<磁気抵抗効果素子部>
磁気抵抗効果素子部105は、磁化方向が固定された第2強磁性金属層103と、磁化方向が変化する第1強磁性金属層101と、第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101に挟持された非磁性層102とを有する。
第2強磁性金属層103の磁化が一方向に固定され、第1強磁性金属層101の磁化の向きが相対的に変化することで、磁気抵抗効果素子部105として機能する。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性金属層の保磁力を第1強磁性金属層の保磁力よりも大きくする。交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性金属層の磁化を反強磁性層との交換結合によって固定する。
また、磁気抵抗効果素子部105は、非磁性層102が絶縁体からなる場合は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子であり、非磁性層102が金属からなる場合は巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子である。
本実施形態にかかる素子が備える磁気抵抗効果素子部としては、公知の磁気抵抗効果素子部の構成を用いることができる。例えば、各層は複数の層からなるものでもよいし、第2強磁性金属層の磁化方向を固定するための反強磁性層等の他の層を備えてもよい。
第2強磁性金属層103は固定層や参照層、第1強磁性金属層101は自由層や記憶層などと呼ばれる。
第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101は、磁化方向が層に平行な面内方向である面内磁化膜でも、磁化方向が層に対して垂直方向である垂直磁化膜でもいずれでもよい。
図8に示す例では、第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101は垂直磁化膜の場合であり、磁化の向きが共に平行の場合を示している。
第2強磁性金属層103の材料には、公知のものを用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。
また、垂直磁化膜を得るためには[Co/Pt]nなどの多層膜や、FePt、MnGaなどの合金を用いても良い。さらに、第2強磁性金属層103と接合する金属や酸化膜との界面磁気異方性によって垂直磁化としても良い。
より高い出力を得るためにはCoFeSiなどのホイスラー合金を用いることが好ましい。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
また、第2強磁性金属層103の第1強磁性金属層101に対する保磁力をより大きくするために、第2強磁性金属層103と接する材料としてIrMn,PtMnなどの反強磁性材料を用いてもよい。さらに、第2強磁性金属層103の漏れ磁場を第1強磁性金属層101に影響させないようにするため、シンセティック強磁性結合の構造としてもよい。
さらに第2強磁性金属層103の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、CoとPtの積層膜を用いることが好ましい。具体的には、第2強磁性金属層103は[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]/Ru(0.9nm)/[Pt(0.16nm)/Co(0.16nm)]/Ta(0.2nm)/FeB(1.0nm)とすることができる。
第1強磁性金属層101の材料として、強磁性材料、特に軟磁性材料を適用できる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feが挙げられる。
また、垂直磁化膜を得るためには[Co/Pt]nなどの多層膜や、FePt、MnGaなどの合金を用いても良い。さらに、第1強磁性金属層101と接合する金属や酸化膜との界面磁気異方性によって垂直磁化としても良い。
第1強磁性金属層101の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、第1強磁性金属層の厚みを2.5nm以下とすることが好ましい。第1強磁性金属層101と非磁性層102の界面で、第1強磁性金属層101に垂直磁気異方性を付加することができる。また、垂直磁気異方性は第1強磁性金属層101の膜厚を厚くすることによって効果が減衰するため、第1強磁性金属層101の膜厚は薄い方が好ましい。
非磁性層102には、公知の材料を用いることができる。
例えば、非磁性層102が絶縁体からなる場合(トンネルバリア層である場合)、その材料としては、Al、SiO、MgO、及び、MgAl等を用いることができる。またこれらの他にも、Al,Si,Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。
また、非磁性層102が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
第2強磁性金属層103の非磁性層102と反対側の面には、図8に示すようにキャップ層104が形成されていることが好ましい。キャップ層104は、第2強磁性金属層103からの元素の拡散を抑制することができる。キャップ層104は、磁気抵抗効果素子部105の各層の結晶配向性にも寄与する。その結果、キャップ層104を設けることで、磁気抵抗効果素子部105の第2強磁性金属層103及び第1強磁性金属層101の磁性を安定化し、磁気抵抗効果素子部105を低抵抗化することができる。
キャップ層104には、導電性が高い材料を用いることが好ましい。例えば、Ru、Ta、Cu、Ag、Au等を用いることができる。キャップ層104の結晶構造は、隣接する強磁性金属層の結晶構造に合せて、fcc構造、hcp構造またはbcc構造から適宜設定することが好ましい。
キャップ層104には、銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウムからなる群から選択されるいずれかを用いることが好ましい。詳細は後述するが、キャップ層104を介してスピン軌道トルク配線120と磁気抵抗効果素子部105が接続される場合、キャップ層104はスピン軌道トルク配線120から伝播するスピンを散逸しないことが好ましい。銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウム等は、スピン拡散長が100nm以上と長く、スピンが散逸しにくいことが知られている。
キャップ層104の厚みは、キャップ層104を構成する物質のスピン拡散長以下であることが好ましい。キャップ層104の厚みがスピン拡散長以下であれば、スピン軌道トルク配線120から伝播するスピンを磁気抵抗効果素子部105に十分伝えることができる。
<基板>
基板110は、平坦性に優れることが好ましい。平坦性に優れた表面を得るために、材料として例えば、Si、AlTiC等を用いることができる。
基板110の磁気抵抗効果素子部105側の面には、下地層(図示略)が形成されていてもよい。下地層を設けると、基板110上に積層される第2強磁性金属層103を含む各層の結晶配向性、結晶粒径等の結晶性を制御することができる。
下地層は、絶縁性を有していることが好ましい。スピン軌道トルク配線120等に流れる電流が散逸しないようにするためである。下地層には、種々のものを用いることができる。
例えば1つの例として、下地層には(001)配向したNaCl構造を有し、Ti,Zr,Nb,V,Hf,Ta,Mo,W,B,Al,Ceの群から選択される少なくとも1つの元素を含む窒化物の層を用いることができる。
他の例として、下地層にはXYOの組成式で表される(002)配向したペロブスカイト系導電性酸化物の層を用いることができる。ここで、サイトXはSr、Ce、Dy、La、K、Ca、Na、Pb、Baの群から選択された少なくとも1つの元素を含み、サイトYはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Nb、Mo、Ru、Ir、Ta、Ce、Pbの群から選択された少なくとも1つの元素を含む。
他の例として、下地層には(001)配向したNaCl構造を有し、かつMg、Al、Ceの群から選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物の層を用いることができる。
他の例として、下地層には(001)配向した正方晶構造または立方晶構造を有し、かつAl、Cr、Fe、Co、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Mo、Wの群から選択される少なくとも1つの元素を含む層を用いることができる。
また、下地層は一層に限られず、上述の例の層を複数層積層してもよい。下地層の構成を工夫することにより磁気抵抗効果素子部105の各層の結晶性を高め、磁気特性の改善が可能となる。
<配線>
配線150は、磁気抵抗効果素子部105の第2強磁性金属層103に電気的に接続され、図7においては、配線150とスピン軌道トルク配線120と電源(図示略)とで閉回路を構成し、磁気抵抗効果素子部105の積層方向に電流が流される。
配線150は、導電性の高い材料であれば特に問わない。例えば、アルミニウム、銀、銅、金等を用いることができる。
上述した本実施形態では、磁気抵抗効果素子100において、積層が後になり基板110から遠い側に配置する第2強磁性金属層103が磁化固定層(ピン層)とされ、基板110から近い側に配置する第1強磁性金属層101が磁化自由層とされていている、いわゆるトップピン構造の例を挙げた。しかしながら、磁気抵抗効果素子100の構造は。この場合に限定されるものではなく、磁化固定層(ピン層)である第2強磁性金属層103が基板110から近い側に配置するいわゆるボトムピン構造であってもよい。
本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子は公知の方法を用いて製造することができる。
以下、図8に図示した磁気抵抗効果素子100の製造方法について説明する。
純スピン流発生部120A、磁気抵抗効果素子部105及び、キャップ層104は、例えば、マグネトロンスパッタ装置を用いて成膜することができる。純スピン流発生部120Aを成膜後、レジストまたは保護膜を設置し、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて不要部分を除去する。その後、低抵抗部120Bを成膜した後、化学的機械研磨(CMP)を施すことにより純スピン流発生部120Aを露出させる。磁気抵抗効果素子を構成する各層を成膜した後、磁気抵抗効果素子を作製したい部分にレジストまたは保護膜を設置し、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法を用いて不要部分を除去する。
また、磁気抵抗効果素子部105、及び、キャップ層104を後から成膜、形成してもよい。純スピン流発生部を上述の方法で形成した後に低抵抗部を成膜、及びスピン軌道トルク配線形状に形成した後、化学的機械研磨(CMP)を施すことにより平坦な面を設け磁気抵抗効果素子部105、及び、キャップ層104を積層することもできる。
その後、絶縁層140を成膜し、その上に電流磁場アシスト用配線130を成膜し、レジストまたは保護膜を設置し、ミリングすることで電流磁場アシスト用配線130の形状に形成することができる。
本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子によれば、磁気抵抗効果素子に電流磁場アシスト用配線で発生した磁場を印加し、低い反転電流密度と高い回転確率での磁化反転が可能となる。
(磁気メモリ)
本実施形態にかかる磁気メモリ(MRAM)は、本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子を複数備える。
電流磁場アシスト用配線を複数本備えることによって最適な合成磁場の大きさ、角度を調整することが可能になる。
本実施形態にかかる磁気メモリ(MRAM)において、電流磁場アシスト用配線が平面視して、隣接する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の間に設置されていてもよい。
電流磁場はアシスト効果として用いる場合、磁場だけでは反転しない。一本の電流磁場アシスト用配線で2つの磁気抵抗効果素子に磁場をかけることで配線数を低減できる。
(高周波フィルタ)
本実施形態にかかる高周波フィルタは、本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子を備える。
本実施形態にかかる高周波フィルタは、磁気抵抗効果素子におけるスピントルク共鳴現象を利用するものである。
磁気抵抗効果素子に交流電流を流すのと同時に、所定の磁場印加手段によって磁場を印加することで、磁気抵抗効果素子にスピントルク共鳴を起こすことができ、スピントルク共鳴周波数に対応した周波数で周期的に磁気抵抗効果素子の抵抗値が振動する。磁気抵抗効果素子に印加される磁場の強さによって、磁気抵抗効果素子のスピントルク共鳴周波数は変化し、一般的にその共鳴周波数は数〜数十GHzの高周波帯域である。
1、1A、11、21、31 第1強磁性金属層
2 スピン軌道トルク配線
2A 純スピン流発生部
2B 低抵抗部
3、13、23、23A、23B 電流磁場アシスト用配線
4、14、24 絶縁層
5 磁気シールド層
10、20、30、40 電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子
100 磁気抵抗効果素子
101 第1強磁性金属層
102 非磁性層
103 第2強磁性金属層
105 磁気抵抗効果素子部
120 スピン軌道トルク配線
120A 純スピン流発生部
120B 低抵抗部
130 電流磁場アシスト用配線
140 絶縁層
150 配線

Claims (14)

  1. 磁化方向が変化する第1強磁性金属層と、
    前記第1強磁性金属層の面直方向である第1方向に対して直交する面内の第2方向に延在し、前記第1強磁性金属層に接合するスピン軌道トルク配線と、
    前記第1強磁性金属層と電気的に絶縁されるように配置され、前記第1強磁性金属層の磁化反転を補助する磁場を形成するための電流が流れる電流磁場アシスト用配線と、を備える、電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  2. 前記電流磁場アシスト用配線が前記第1方向に対して直交する面内の第3方向に延在する請求項1に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  3. 前記電流磁場アシスト用配線の延在方向は、前記スピン軌道トルク配線の延在方向と直交するか、又は、平行である請求項2に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  4. 前記スピン軌道トルク配線の延在方向は、前記第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向と直交する請求項3に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  5. 前記第1強磁性金属層の磁化容易軸の方向がその面直方向である請求項4に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  6. 前記第1強磁性金属層は平面視して、前記スピン軌道トルク配線の延在方向である前記第2方向を長軸とする形状異方性を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  7. 前記電流磁場アシスト用配線は、前記第1強磁性金属層と対面しない側の面及び/又は側面に磁気シールド層を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  8. 前記電流磁場アシスト用配線を複数備える請求項1〜7のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  9. 前記電流磁場アシスト用配線に通電した後に、前記スピン軌道トルク配線に通電するように制御する制御装置を備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  10. 前記スピン軌道トルク配線の通電を停止した後に、前記電流磁場アシスト用配線の通電を停止するように制御する制御装置を備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子と、磁化方向が固定されている第2強磁性金属層と、第1強磁性金属層と第2強磁性金属層に挟持された非磁性層とを備える磁気抵抗効果素子。
  12. 請求項11に記載の磁気抵抗効果素子を複数備える磁気メモリ。
  13. 前記電流磁場アシスト用配線が平面視して、隣接する電流磁場アシスト型スピン流磁化反転素子の間に設置されている請求項12に記載の磁気メモリ。
  14. 請求項11に記載の磁気抵抗効果素子を備えた高周波フィルタ。
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