JP6901696B1 - モールドパウダー - Google Patents
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Abstract
Description
主成分としてCaOとSiO2を含み、CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は0.6〜1.4であり、B2O3の含有量は0.3〜2.8質量%、Na2Oの含有量は5.0〜20.0質量%、Li2O及びK2Oの含有量は合計で0〜4.0質量%、MgOの含有量は0〜3.5質量%、Al2O3の含有量は1.0〜8.0質量%、MnOの含有量は1.0質量%以下(0質量%を含む)であることを特徴とするモールドパウダーに関する。
Fの含有量は不可避不純物に起因するものを含めて0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である(0質量%を含む)。これにより、スラグフィルム中にNa2O、CaO及びSiO2で構成される結晶の晶出が促進されるとともに、カスピダインの晶出が抑制されるため、Fによる設備の腐食や環境への悪影響が抑制される。
モールドパウダーは主成分としてCaOとSiO2を含む。CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は好ましくは0.6〜1.4であり、より好ましくは0.7〜1.3である。質量比(CaO/SiO2)が0.6以上でスラグフィルム中にNa2O、CaO及びSiO2で構成される結晶の晶出が促進され、高い緩冷却効果が得られる。一方、質量比(CaO/SiO2)が1.4以下でダイカルシウムシリケートやゲーレナイト等といった高融点のカルシウムシリケート系結晶の晶出が抑制される。
B2O3の含有量は0.3〜2.8質量%であり、より好ましくは0.5〜2.7質量%であり、さらに好ましくは1.6〜2.6質量%である。B2O3の含有量が0.3質量以上でスラグフィルム中の高融点のカルシウムシリケート系結晶の晶出が抑制され、潤滑性や緩冷却効果の均一性が適度に維持される。カルシウムシリケート系結晶の晶出が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、B2O3がスラグフィルム中でネットワークを形成してガラス化を促進することが考えられる。一方、B2O3の含有量が2.8質量%以下で溶鋼への拡散による鋼特性の変化が抑制される。また、パウダースラグの表面張力が適度に高く維持され、パウダースラグの巻き込み欠陥が抑制される。B2O3の含有量が過剰な場合はスラグフィルムのガラス化が促進され、十分な緩冷却効果が得られない。B2O3原料としては、硼砂、コレマナイト、灰硼石、プリメルト処理した合成スラグ等を用いることができる。
Na2Oの含有量は、好ましくは5.0〜20.0質量%であり、より好ましくは6.0〜18.0質量%であり、さらに好ましくは8.0〜15.0質量%である。Na2Oの含有量が5.0質量%以上でNa2O、CaO及びSiO2で構成される結晶の晶出が促進され、高い緩冷却効果が得られる。一方、Na2Oの含有量が20.0質量%以下でパウダースラグの粘度が適度に維持され、パウダースラグの巻き込み欠陥や浸漬ノズルの溶損が抑制される。さらに、結晶化温度が適度に維持されるため、スラグフィルム中にaNa2O・bCaO・cSiO2(a,b,cは1〜8の任意の整数)で構成される結晶から1種又は2種以上の晶出が促進され、高い緩冷却効果が得られる。
高速鋳造等によりパウダースラグに高い流入性が要求される場合、Na2O以外のアルカリ金属酸化物のLi2OやK2Oを添加してもよいが、その含有量は合計で0〜4.0質量%であり、好ましくは0〜3.0質量%である。合計の含有量が4.0質量%以下でパウダースラグの粘度や表面張力が適度に維持され、パウダースラグの巻き込み欠陥が抑制される。
MgOの含有量は好ましくは0〜3.5質量%であり、より好ましくは0〜3.0質量%である。MgOの含有量が3.5質量%以下でMgO含有結晶の晶出が抑制される。さらに、鋼中のAl2O3との反応によるスピネルの形成が抑制され、鋼中介在物の吸収能が適度に維持される。
Al2O3の含有量は好ましくは1.0〜8.0質量%であり、より好ましくは3.6〜8.0質量%であり、さらに好ましくは4.1〜7.9質量%であり、特に好ましくは5.0〜7.0質量%である。Al2O3の含有量が3.6質量%以上で溶鋼からモールドへの熱流束の変動が極めて小さくなり、鋳片の均一冷却性が向上する。Al2O3の含有量が8.0質量%以下で高融点のゲーレナイトの晶出が抑制され、Na2O、CaO及びSiO2で構成される結晶の晶出が促進されるため、溶融性や緩冷却効果の均一性が適度に維持される。
MnOは不可避不純物として含まれやすいが、含有量は好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である(0質量%を含む)。MnOの含有量が1.0質量%以下で溶鋼との還元反応が抑制され、溶鋼へのドロップが抑制される。さらに、還元反応に伴う溶鋼への酸素供給が抑制され、溶鋼の表面張力が適度に維持される。
モールドパウダーの滓化速度を調整するために炭素を添加してもよい。炭素の含有量は好ましくは10質量%以下(0質量%を含む)である。これにより、溶鋼へのカーボンピックアップが抑制される。炭素原料としては、グラファイト、カーボンブラックコークス粉、黒鉛等を用いることができる。
その他の成分として、軟化点、粘度及び結晶化温度を調整するためにフラックスを添加してもよい。フラックスとしては、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩を用いることができる。また、不可避不純物として微量のFe2O3、TiO2、Cr2O3、P2O5、S等を含んでもよい。
1300℃におけるモールドパウダー(パウダースラグ)の粘度は好ましくは0.1〜1.0Pa・sであり、より好ましくは0.1〜0.8Pa・sである。粘度が0.1Pa・s以上でパウダースラグの巻き込み欠陥が抑制され、1.0Pa・s以下でパウダースラグの流入量が適度に維持される。
モールドパウダーの結晶化温度は好ましくは950〜1230℃であり、より好ましくは970〜1200℃である。結晶化温度が950℃以上で結晶化が促進され、緩冷却効果が促進されるため、鋳片表面割れや、熱電対温度(モールドに埋め込まれた熱電対が示す温度)の変動が抑制される。結晶化温度が1230℃以下で結晶層の厚さが適度に維持されるため、パウダースラグの流入量が適度に維持され、凝固シェルの破断によるブレークアウトが抑制される。
スラグフィルム中に晶出する結晶は、aNa2O・bCaO・cSiO2(a,b,cは1〜8の任意の整数)で構成される結晶の1種又は2種以上であり、好ましくは3種以下であり、より好ましくは1種であり、カルシウムシリケート系結晶を含まない。Na2O、CaO及びSiO2で構成される結晶がスラグフィルム中に安定的に晶出しつつ、高融点のカルシウムシリケート系結晶の晶出が抑制されることから、潤滑性を損なうことなく均一な緩冷却効果をスラグフィルムに与えることができる。
モールドパウダーの原料は、既述のものを含め、一般にモールドパウダーに用いられ、かつ、上記の組成や特性を満足するものであれば特に制限はなない。モールドパウダーの形態は、一般にモールドパウダーに用いられる形態であれば特に制限はなく、例えば、粉末、押し出し成形顆粒、中空スプレー顆粒、撹拌造粒等を用いることができる。
モールド内の溶鋼の表面にモールドパウダーを投入し、連続鋳造を行った。いずれの試験もスラブモールドを用いた連続鋳造設備で行った。実験に用いた鋼種とモールドパウダーの組成を表1に示す。鋼種の「LC」は鋼中カーボン濃度が0.01〜0.07質量%の低炭鋼を示し、「ULC」は鋼中カーボン濃度が0.01質量%未満の極低炭素鋼を示す。組成の単位は質量%であるが、質量比(CaO/SiO2)はCaOのSiO2に対する質量比であり、他の質量%表示と区別するためにカッコ書きとした。グレーにハッチングされた欄は、その数値が本開示の範囲を満たさないことを意味する。
モールドパウダーの粘度は球引き上げ法により測定した。即ち、1300℃のパウダースラグ中に直径10mmの白金球を吊り下げ、0.85cm/sの速度で引き上げた時の荷重から粘度を求めた。
モールドパウダーの結晶化温度は示差熱法により測定した。即ち、約150gのモールドパウダーを加熱して溶融した後、4℃/minで降温しながらパウダースラグの温度を測定し、発熱開始時の温度を結晶化温度とした。
鋳片圧延後の冷延コイルについて、線状の傷であるスリバー欠陥の発生率を求めた。スリバー欠陥の発生率が低いほどパウダースラグや介在物の巻き込みが少ないことを意味し、1%未満を優(◎)、1%以上3%未満を良(○)、3%以上6%未満を可(△)、6%以上を不可(×)と評価した。
鋳片を熱延し、発生した割れによる格落ち率が1%未満を優(◎)、1%以上3%未満を良(○)、3%以上4%以下を可(△)、4%超を不可(×)と評価した。
熱電対温度をモニターし、ほぼ一定で操業が安定していた場合を優(◎)、少し変動したが操業に支障がなかった場合を良(○)、パウダースラグの潤滑不足により大きく変動し、操業に支障を来した場合を不可(×)と評価した。
Claims (3)
- Fの含有量は0.5質量%以下(0質量%を含む)であり、
主成分としてCaOとSiO2を含み、CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は0.6〜1.4であり、
B2O3の含有量は0.3〜2.8質量%、Na2Oの含有量は5.0〜20.0質量%、Li2O及びK2Oの含有量は合計で0〜4.0質量%、MgOの含有量は0〜3.5質量%、Al2O3の含有量は4.1〜7.9質量%、MnOの含有量は1.0質量%以下(0質量%を含む)であることを特徴とするモールドパウダー。 - 請求項1に記載のモールドパウダーであって、
1300℃における粘度が0.1〜1.0Pa・sであり、結晶化温度が950℃〜1230℃であることを特徴とするモールドパウダー。 - 請求項1又は2に記載のモールドパウダーであって、
スラグフィルム中に晶出する結晶は、aNa2O・bCaO・cSiO2(a,b,cは1〜8の任意の整数)で構成される結晶の1種又は2種以上であることを特徴とするモールドパウダー。
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