JP7239810B2 - モールドパウダー及び高Mn鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
鋼の連続鋳造とは、溶鋼を連続鋳造機の鋳型に流し込んで冷却、固化しながら、固化した凝固殻を鋳型の下方向から引き抜くことを連続的に行うことにより、鋼を連続的に鋳造することをいう。鋳型内の溶鋼の表面には、粉末状又は顆粒状のモールドパウダーが添加される。モールドパウダーは溶鋼の熱によって溶融し(以下、モールドパウダーが溶融している状態のものをパウダースラグという)、鋳型と凝固殻との間に流入し、フィルム(スラグフィルム)に変化する。モールドパウダーの主な役割は(1)溶鋼表面の保温及び酸化防止、(2)溶鋼から浮上する非金属介在物の吸収及び溶鋼の清浄化、(3)鋳型/凝固殻間の潤滑の保持、(4)凝固殻から鋳型への熱伝導の抑制及び凝固殻の冷却の均一化等である。
パウダースラグの粘度が低くなると、鋳型と凝固殻との間に流入するパウダースラグが不均一になるため凝固殻の冷却が不均一になり、さらに、パウダースラグの液滴が溶鋼中に離脱して巻き込まれ、鋳片の表面品質が悪化する。そこで、特許文献1は、鋼の連続鋳造において小断面サイズの丸鋳片でもブレークアウト等の操業トラブルを発生させず、表面欠陥のない健全な品質の鋳片を得るためのモールドパウダーとして、1573Kにおける粘度が0.8Pa・s以上であり、質量比(CaO/SiO2)が0.3~1.5であり、結晶化温度が1273K以上であることを特徴とするモールドパウダーを開示する。
ところで、Mnの含有量が10~30質量%である高Mn鋼は鋳造時にオーステナイト単相で凝固を完了し、粗大なオーステナイト柱状粒が形成される。この粒界が割れの起点や伝播経路となり、さらに800℃以下では脆化するため、熱間加工性が低下する。したがって、高Mn鋼は割れ感受性が高く、縦割れ、表面きず、へこみ等の欠陥が発生しやすい。
モールドパウダーはSiO2とCaOを主成分として含有する。CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は0.60以上1.0未満であり、好ましくは0.60以上0.90未満であり、さらに好ましくは0.70以上0.90未満である。質量比(CaO/SiO2)が0.60未満の場合、モールドパウダー中のSiO2の含有量が比較的多いため、高Mn鋼中のMnとの酸化還元反応によってMnOが生成され、パウダースラグ中に拡散し、パウダースラグの組成変動が大きくなる。このため、パウダースラグの粘度、凝固点、結晶化温度等の特性がモールドパウダー設計時から大きく変動し、連続鋳造を安定的に行うことが困難であるだけでなく、鋳片品質を悪化させる。一方、質量比(CaO/SiO2)が1.0より大きい場合、モールドパウダー中のSiO2の含有量が比較的少ないため、パウダースラグの粘度を高く維持することが困難である。
モールドパウダーの1300℃における粘度は1.0~10Pa・sであり、より好ましくは1.5~8.0Pa・sである。モールドパウダーの1300℃における粘度が1.0Pa・sより低い場合、パウダースラグの粘度を高く維持することが困難である。また、パウダースラグの粘度が組成変動によって1300℃で0.80Pa・sより低くなると、鋳型と凝固殻との間に流入するパウダースラグが不均一になるため凝固殻の冷却が不均一になり、さらに、パウダースラグの液滴が溶鋼中に離脱して巻き込まれ、鋳片の表面品質が悪化する。一方、モールドパウダーの1300℃における粘度が10Pa・sより高い場合、鋳型と凝固殻との間に流入するパウダースラグが不足し、焼き付きや拘束性ブレークアウトを引き起こす可能性が高くなる。
Al2O3はパウダースラグの粘度を高める成分である。既に述べたように、パウダースラグの粘度を高くするためには質量比(CaO/SiO2)を小さくすることが効果的であるが、モールドパウダー中のSiO2の含有量が多くなると、高Mn鋼の場合、溶鋼中のMnとの酸化還元反応が促進されるため、組成変動が大きくなり、パウダースラグの粘度が大きく変動する。これに対し、Al2O3はMnによって還元されないので、高Mn鋼の場合であってもパウダースラグの組成変動が小さく、粘度を高く維持することができる。モールドパウダー中のAl2O3の含有量は5.0~25.0質量%であり、好ましくは12.0~25.0質量%であり、より好ましくは12.0~23.0質量%であり、さらに好ましくは14.0~23.0質量%である。モールドパウダー中のAl2O3の含有量が5.0質量%より少ない場合、モールドパウダーの1300℃における粘度を1.0Pa・s以上にすることと高Mn鋼の連続鋳造において組成変動を抑制することによって高粘度を維持することの両立は困難である。一方、モールドパウダー中のAl2O3の含有量が25.0質量%より多い場合、パウダースラグの粘度が高くなりすぎ、鋳型と凝固殻との間の潤滑を保持できない。
モールドパウダー中のLi2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計は3.0~15.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0~13.0質量%である。モールドパウダー中のLi2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計が3.0質量%より少ない場合、モールドパウダーは溶融しにくく、モールドパウダーの役割を果たせない。一方、モールドパウダー中のLi2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計が15.0質量%より多い場合、これらの成分はパウダースラグの粘度を低くすることから、モールドパウダーの1300℃における粘度を1.0Pa・s以上にすることが困難である。
モールドパウダー中のMnOは不可避不純物としてのみ含まれ、含有量は0.5質量%以下である。
本実施形態のモールドパウダーの原料は基材原料、シリカ原料、フラックス原料及び/又はその他の原料で構成される。基材原料としては、例えば、合成珪酸カルシウム、ウォラストナイト、リンスラグ、高炉スラグ、ダイカルシウムシリケート、炭酸カルシウム、石灰石、生石灰、セメント類等が挙げられる。シリカ原料としては、例えば、パーライト、フライアッシュ、珪砂、長石、珪石粉、珪藻土、ガラス粉、シリカフラワー等が挙げられる。フラックス原料としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、氷晶石、蛍石、ホウ酸、ホウ砂、コレマナイト等が挙げられる。その他の原料としては、炭素原料、マグネシア、アルミナ等が挙げられる。炭素原料としては、例えば、コークス、グラファイト、カーボンブラック等が挙げられる。モールドパウダーの形態としては、粉末、押し出し成形顆粒、中空スプレー顆粒、撹拌造粒等が挙げられる。
モールドパウダーの粘度は、白金球引き上げ法により測定した。すなわち、モールドパウダーを1300℃に加熱し、溶融状態の120gのパウダースラグ中に直径10mmの白金球を吊り下げ、8.5mm/sの速さで引き上げた際の抵抗力を測定し、ストークスの式を用いて粘度(η)(単位:Pa・s)を求めた。組成変動後の粘度は、高Mn鋼の連続鋳造後に採取したモールドパウダー(スラグフィルム片)を組成分析し、その組成に合わせて調合したモールドパウダーを使用して測定した。
実施例1~14は、いずれも組成変動前後の粘度は良好であり、安定した操業を行うことができ、鋳片の品質も良好であった。質量比(CaO/SiO2)は0.60以上1.0未満であり、Al2O3の含有量は5.0~25.0質量%であり、Li2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計が3.0~15.0質量%であるため、パウダースラグの組成変動と粘度の変動が小さく、いずれのモールドパウダーも組成変動後に1300℃において0.8Pa・s以上の高粘度を維持することができたと考えられる。実施例1、3、8、11の総合評価が◎であることから、Al2O3の含有量は14.0~23.0質量%が特に好ましいと考えられる。
Claims (3)
- SiO2とCaOを主成分として含み、
CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は0.60以上0.9未満であり、
Al2O3の含有量は12.0~25.0質量%であり(ただし、Al2O3の含有量が15質量%以下の場合を除く)、
Li2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計は5.0~15.0質量%であり、
MnOの含有量は0.5質量%以下であり、
1300℃における粘度が1.0~10Pa・sであることを特徴とするモールドパウダー。 - SiO2とCaOを主成分として含み、
CaOのSiO2に対する質量比(CaO/SiO2)は0.60以上1.0未満であり、
Al2O3の含有量は12.0~25.0質量%であり(ただし、Al2O3の含有量が15質量%以下の場合を除く)、
Li2O、Na2O、MgO、B2O3及びFの含有量の合計は5.0~15.0質量%であり、
MnOの含有量は0.5質量%以下であり、
1300℃における粘度が1.0~10Pa・sであることを特徴とするモールドパウダー(ただし、ZrO2の含有量が3~15質量%の場合を除く)。 - Mnの含有量が10~30質量%である高Mn鋼の連続鋳造において、鋳型内の溶鋼表
面に、請求項1又は2に記載のモールドパウダーを添加することを特徴とする高Mn鋼の連続鋳造方法。
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