JP2012030248A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 鋼の連々鋳の鋳込開始時に組成に工夫を凝らしたフロントパウダーを用いて連々鋳初期材の表面疵の発生を防止する連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】 炭素含有量が、質量%で、0.1〜1.5%の鋼を連続鋳造する際の連々鋳の開始時の鋳造初期に、Si、Al、Ca、Mg、Na、Liの酸化物系化合物およびF化合物からなるパウダー基材3とこのパウダー基材を100%とするとき、このパウダー基材100%に対してその含有量の2〜8%のフリーカーボン2からなる混合体を図1の(a)に示すフロントパウダー1としてモールド内に投入し、1300℃における粘度が0.1〜5.0Pa・sであるスラグ化率が40〜90%であるフロントパウダー1を使用する連々鋳の鋳込み開始時の鋳込み方法からなる鋼の連続鋳造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼の連続鋳造の連々鋳において、モールド中にモールドパウダーを投入してモールドパウダーの溶融層を生成してモールド中の溶鋼を外気から遮断し、かつモールド銅板と初期凝固シェルとの間の潤滑性を確保して行う連続鋳造方法に関し、特に連々鋳の開始時にモールド中にフロントパウダーであるモールドパウダーを投入し、続く連々鋳の定常状態時になると、開始時のフロントパウダーに代えて、鋼種ごとに最適な物性を有する定常状態用のモールドパウダー(以下、定常状態用のモールドパウダーを「本体パウダー」と称する。)を投入することによる連続鋳造方法に関する。
従来の鋼の連続鋳造における連々鋳の技術では、定常状態において使用するモールドパウダーに対し、鋳造開始時には発熱特性を有する特別なモールドパウダーをフロントパウダーとして使用する方法が一般的である。しかし、この発熱特性を有するフロントパウダーを使用する方法では、フロントパウダーと定常状態における本体パウダーであるモールドパウダーとは、両者の組成(すなわち溶融状態での組成)が異なるため、フロントパウダーから本体パウダーに切り替わる途中である経過段階(すなわち遷移状態)では2種類の組成のパウダーによる混合状態となる。このような2種類のパウダーの混合状態では、鋼種ごとに決められたランニングパウダーとしての本体パウダーの組成から外れているために、遷移状態が終了して定常状態となるまではモールド内の初期凝固が不均一となってしまう。
ところで、連続鋳造用のモールドパウダーは、モールド内に添加されて溶鋼表面で滓化する。このようなモールドパウダーには、特に鋳造初期の段階で添加されるフロントパウダーがあり、溶鋼の温度の低下を防いで確実に溶鋼を保温してデッケルの発生を阻止して、得られた鋳片に表面きずの発生を防いでいる。このようなフロントパウダーは連続鋳造の一般的なモールドパウダーに発熱材としてCa−Si合金粉末やAl−Mg合金粉末などの金属粉末を含有している(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような発熱型モールドパウダーの場合、発熱材が急激な反応を起こし、発熱効果の持続性が無く、連続的な保温効果が得られず、鋳片表面品質の飛躍的な改善は望めず、また発熱型モールドパウダーに酸化源として含まれるFe23や酸化反応生成物であるAl23やSiO2等の酸化物が鋳片内部の品質を悪化させることが指摘されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、発熱型のフロントパウダーを用いる代わりに、酸化物系原料の繊維および金属カルシウムと金属シリコンを混合して成形した不織布をモールドの周囲に貼付することで、モールドと溶鋼の凝固シェル間の潤滑性を向上させて鋳造開始時から鋳片表面の割れや凹みなどの疵を低減する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、連続鋳造における鋳込み開始の少し前からモールドに液状潤滑材を滴下し、増速中にはモールドと鋳片間の潤滑にモールドパウダーと液状潤滑材を付与してモールドと鋳片との間を潤滑してブレークアウトの発生を抑制する方法が開発されている(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、凝固温度の異なるモールドパウダーを使い分けることで、鋳片表面の縦割れを防止した鋳片を得る方法が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。この方法は異なるモールドパウダーの混合による不安定化を生じ、このことが鋳片疵の発生の原因の一つとなっている。
特開平3−169467号公報 特開平4−143052号公報 特開平8−215795号公報 特許第3536530号公報 特開平7−124716号公報
本発明が解決しようとする課題は、鋼の連続鋳造における連々鋳の鋳込開始時に用いるモールドパウダーとして、組成に工夫を凝らしたフロントパウダーを用いることにより連々鋳初期材の表面疵の発生を防止する連続鋳造方法を提供することである。
Ca−Si合金などの金属発熱材やKMnO4やFe23などの低級酸化物酸化剤5をパウダー基材3に添加した従来技術におけるフロントパウダー6を、図2に模式的に示す。従来技術におけるフロントパウダーである発熱型パウダーのフロントパウダー6は溶鋼汚染などの問題がある。そこで、本願の発明の手段では、この図2に示すような金属発熱材や低級酸化物酸化剤5を添加したモールドパウダーは連々鋳の鋳込み開始時のフロントパウダーとしては使用しないものとし、また、定常状態となった鋳込み時におけるモールドパウダー(以下、「本体パウダー」という。)としても使用しないものとする。
さらに、本願の発明の手段では、フロントパウダーと定常状態で用いる本体パウダーの混合状態による組成変動を無くすため、連々鋳の鋳込み開始時に使用するフロントパウダーを構成するパウダー基材は、定常状態時の本体パウダーを構成するパウダー基材と組成を同一とするが、これらのフロントパウダーと本体パウダーは、図1の(a)に模式的に示すフロントパウダー1および(b)に模式的に示す本体パウダー4として模式的に示すように、フリーカーボン(F.C.)2の含有量だけが異なるモールドパウダーとして使用する。
なお、上記のように本体パウダー4とフリーカーボン2の含有量だけが異なるモールドパウダーをフロントパウダー1として使用する可否の評価は、スラグ化率試験によって行う。このスラグ化率試験によって滓化性を評価することにより、フロントパウダー1として適正な滓化性を有するフロントパウダーを設計するものとする。
そこで、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、炭素含有量が、質量%で、0.1〜1.5%の鋼を連続鋳造する方法において、Si、Al、Ca、Mg、Na、Liの酸化物系化合物および総F濃度を有する化合物からなり、該酸化物系化合物の質量および総F濃度を有する該化合物のF分の総質量の合計からなるパウダー基材3の質量を100%としたときの、パウダー基材3の質量に対するフリーカーボン2の質量は2〜8%、望ましくは3〜6%である、パウダー基材3およびフリーカーボン2の混合物からなり、かつ、1300℃における粘度が0.1〜5.0Pa・sであるフロントパウダー1を使用して連々鋳の鋳込み開始時の鋳込みを行う方法を特徴とする鋼の連々鋳による連続鋳造方法である。
上記の方法において1300℃における粘度が0.1Pa・s未満では、粘度が低すぎて鋳造開始時にフロントパウダー1の溶融層がモールドと溶鋼の凝固層の間に潤滑膜を均一に生成し難く、モールドと凝固層間の潤滑性が不十分となる。1300℃における粘度が5.0Pa・sよりも高すぎるとフロントパウダー1の溶融層の流動性が低く、鋳造開始時のモールドと凝固層間の潤滑性が不十分となる。
請求項2の発明では、フロントパウダー1を使用して連々鋳の鋳込み開始時の鋳込みを行う方法は、フロントパウダー1を1300℃のモールド内に投入する際、下記の(1)式に示すスラグ化率40%〜90%、望ましくは50〜80%のフロントパウダー1を使用して鋳込みを行う方法であることを特徴とする請求項1の手段の鋼の連々鋳による連続鋳造方法である。
スラグ化率(%)={(滓化したフロントパウダーの質量)/(滓化したフロントパウダーと未滓化のモールドパウダーの全質量)}×100・・・(1)
請求項3の発明では、請求項1または2の手段におけるフロントパウダー1を使用して行う連々鋳の鋳込み開始時の鋳込み行う方法に続いて、連々鋳の鋳込み開始時に使用のフロントパウダー1と、酸化物系化合物および総F濃度を有する化合物のパウダー基材3と組成が同一で、該パウダー基材3の質量に対するフリーカーボン2の質量の割合だけが相違する混合物からなる本体パウダー4を使用して、連々鋳の定常状態時の鋳込みを行う方法からなることを特徴とする鋼の連々鋳による連続鋳造方法である。
本発明は、上記の手段の連々鋳の開始時のフロントパウダーの使用および連々鋳の定常状態時の本体パウダーの使用による連続鋳造方法であるので、連々鋳の定常状態時の鋳片と同様に表面性状の優れた連々鋳初期鋳片を得ることができ、これに続く定常状態時の鋳片においても表面性状の優れた鋳片を得ることができ、連々鋳の開始時から無駄の無い鋳片の製造が得られた。なお、本発明における連々鋳初期鋳片とは、フロントパウダーから本体パウダーに切り替わるまでの鋳造初期から途中段階を経て定常状態に至るまでに鋳造された鋳片を意味する。
本発明における、フリーカーボン(F.C.)とパウダー基材の割合を示す模式図で、(a)はフロントパウダー、(b)は本体パウダーである。 従来のフロントパウダーにおける金属発熱材や低級酸化物酸化剤とパウダー基材の割合を示す模式図である。
本発明の実施の形態について、以下に説明する。この実施の形態では、連続鋳造における連々鋳によって、炭素含有量が質量%で0.1〜1.5%である種々の鋼を製造するに当たって、それらの溶鋼の連々鋳の開始時の鋳造初期にフロントパウダー1をモールド内の溶鋼上に投入し、溶鋼上にフロントパウダー1の溶融層を生成した。この生成したフロントパウダー1の溶融層によりモールド内の溶鋼を外気から遮断し、また、モールドと溶鋼の凝固シェルとの間の潤滑性を確保し、さらに、連々鋳の開始時の鋳造初期に得られた鋳片の表面性状の悪化を防止し、連々鋳の定常状態時の鋳片の表面性状と変わらない表面性状の優れたものとした。使用したフロントパウダー1はパウダー基材3およびフリーカーボン2の混合体からなるモールドパウダーである。
このフロントパウダー1が形成されているパウダー基材3およびフリーカーボン2の混合体について説明すると、パウダー基材3はSi、Al、Ca、Mg、Na、Liの酸化物系化合物およびフッ化物系化合物(以後、フッ化物系化合物を「F化合物」という。)からなり、このパウダー基材3を質量%で100%とするとき、パウダー基材3の2〜8%望ましくは3〜6%に相当する質量のフリーカーボン2を、このパウダー基材3に対して加えた混合体からフロントパウダー1はなっている。このフロントパウダー1は、1300℃における粘度が0.1〜5.0Pa・sを有するものである。また、Si、Al、Ca、Mg、Na、Liの酸化物系化合物としては、SiO2、Al23、CaO、MgO、Na2O+Li2Oであり、F化合物としては、スラグ融剤であるCaF2からなる螢石またはNaFからなるフッ化ソーダなどである。これら化合物の配合比率は特に限定するものではないが、代表的な化合物の配合比率はおよそSiO2:35〜60%、Al23:2〜15%、CaO:25〜35%、MgO:≦10%、Na2O+Li2O:2〜20%であり、F化合物としてはCaF2:5〜15%、NaF:≦10%で構成される。
ところで、フロントパウダー1の1300℃における粘度が0.1Pa・s未満では、粘度が低すぎて連々鋳の鋳造開始時に溶融パウダーがモールドと溶鋼の凝固層との間に潤滑膜を均一に生成しにくく、このために潤滑性が不十分となる。一方、1300℃における粘度が5.0Pa・sよりも高くなると流動性が低くなりすぎ、連々鋳の鋳造開始時の潤滑性が十分に得られないこととなる。
さらに、この鋼の連々鋳用のフロントパウダー1では、1300℃に加熱して5分間保持して冷却することによって得られる下記の(1)式に示すスラグ化率は40〜90%であり、望ましいスラグ化率は50〜80%である。
スラグ化率(%)={(滓化したフロントパウダーの質量)/(滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーの混合物の質量)}×100・・・(1)
すなわち、上記の(1)式に示すスラグ化率(%)は、1300℃に加熱し5分間保持して冷却することによって得た滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーの混合物の質量中に占める滓化したフロントパウダーの質量の比率を百分率で示した値である。
このスラグ化率を求める試験に当たっては、滓化のためにフロントパウダー1を加熱するが、この加熱条件は1300℃へ加熱し、この温度に5分間保持する1条件である。さらに、上述の条件でフロントパウダー1を加熱すると滓化して融液となり、この融液が冷却後に塊となるので篩の上に残ることとなる。一方、試験後も未滓化のパウダーは粒径が変わらないので、篩を通過する。この現象を利用して、JIS Z 8801の呼び寸法600μmの篩にて滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーを篩別することにより、滓化したフロントパウダーを篩上とし、滓化しなかったすなわち未滓化のフロントパウダーを篩下とし、それらの質量をそれぞれ測定して求め、これらの求めた質量を上記のスラグ化率の(1)式に適用することによりスラグ化率が得られる。
スラグ化率が40%未満のフロントパウダー1では、フロントパウダーとしての滓化性が不十分で溶融しにくい。スラグ化率が90%を超えるフロントパウダー1では、フリーカーボンによるフロントパウダー粒子の被覆が不十分であるために、焼結するなどの不具合が生じる恐れがある。
フロントパウダー1のスラグ化率の試験方法は、本出願人の他の出願に係る特開2008−246500号公報に記載の方法と同様の方法により実施できる。
その方法は、先ず、厚さ1mmの鉄板を加工して、幅80mm、長さ150mm、深さ25mmである鉄製の容器を作製する。この鉄製の容器にフロントパウダーを150g秤量して装入する。これを平らにして溶解させる炉としてマッフル炉を使用し、上記のフロントパウダーを装入した鉄製の容器を1573Kに設定したマッフル炉中に装入し、5分間保持し、フロントパウダーを溶解させた後、鉄製の容器ごと取り出して自然冷却する。
冷却した鉄製の容器からフロントパウダーを全て取り出し、滓化分と未滓化分とを分離するためにボールミルで10分間粉砕する。粉砕後、滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーの混合物をJIS Z 8801の呼び寸法600μmの網目の篩にて篩別する。この篩別により網目上に残った篩上を滓化したフロントパウダーとし、その質量を測定する。一方、網目を通過した篩下を滓化していないすなわち未滓化のフロントパウダーとし、その質量を測定する。
これらの測定により得られたそれぞれの質量を次のスラグ化率の(1)式に適用して、滓化したフロントパウダーの質量を、滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーの全質量で除することによって、すなわち加熱に用いた元のフロントパウダーの全質量で除することによって、スラグ化率を算出する。
スラグ化率(%)={(滓化したフロントパウダーの質量)/(滓化したフロントパウダーと未滓化のフロントパウダーの混合物の全量)}×100……(1)
すなわち、スラグ化率(%)={(滓化したフロントパウダーの質量)/(元のフロントパウダーの全質量)}×100……(1)
ここで、本発明の実施の形態である発明例1と比較例1〜4についての上記のスラグ化率の試験結果に基づく、それぞれのフロントパウダーの組成、並びに、1300℃での粘度、スラグ化率、凝固温度、および連々鋳の開始時の鋳造初期の鋳片の表面性状を表1に示す。さらに、連々鋳の定常状態時に用いるモールドパウダーである本体パウダー4の組成、1300℃の粘度、凝固温度およびスラグ化率を本体パウダーとして表1に示す。また、表1において、F.C.はフリーカーボンを示し、連々鋳の開始初期の鋳片すなわち連々初期鋳片の表面性状における、◎は操業異常なく鋳片の表面性状が優秀であること、○は鋳片の表面性状が良好であること、△および×は鋳片表面に欠陥を発生することをそれぞれ示している。この場合、表1において、パウダー基材は滓化後のパウダー融液組成が100%となるように示している。一方、パウダー組成におけるF.C.は燃焼して消失し、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成に影響しない。そこで、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成を質量で100%するとき、この滓化後のパウダー融液組成に対して混合するF.C.の質量を%を示している。表1の下部に記載するように、表1におけるFはパウダー基材におけるF化合物、例えばCaF2、NaF、AlF3などに含まれるフッ素分の総F濃度である。
Figure 2012030248
さらに、本発明の実施の形態である発明例2と比較例5〜8により、フロントパウダーの組成、並びに、1300℃で5分間保持した場合における粘度、スラグ化率、凝固温度、および連々鋳の開始時の鋳造初期の鋳片の表面性状を表2に示す。さらに、連々鋳の定常状態時に用いるモールドパウダーである本体パウダーの組成、1300℃の粘度、凝固温度およびスラグ化率を本体パウダーとして表2に示す。また、表2において、F.C.はフリーカーボンを示し、連々鋳の開始初期の鋳片すなわち連々初期鋳片の表面性状における、◎は操業異常なく鋳片の表面性状が優秀であること、○は鋳片の表面性状が良好であること、△および×は鋳片表面に欠陥を発生することをそれぞれ示している。この場合、表2において、パウダー基材は滓化後のパウダー融液組成が100%となるように示している。一方、パウダー組成におけるF.C.は燃焼して消失し、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成に影響しない。そこで、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成を質量で100%するとき、この滓化後のパウダー融液組成に対して混合するF.C.の質量を%を示している。表2の下部に記載するように、表2におけるFはパウダー基材におけるF化合物、例えばCaF2、NaF、AlF3などに含まれるフッ素分の総F濃度である。
Figure 2012030248
さらに、本発明の実施の形態である発明例3と比較例9〜12により、フロントパウダーの組成、並びに、1300℃で5分間保持した場合における粘度、スラグ化率、凝固温度、および連々鋳の開始時の鋳造初期の鋳片の表面性状を表3に示す。さらに、連々鋳の定常状態時に用いるモールドパウダーである本体パウダーの組成、1300℃の粘度、凝固温度およびスラグ化率を本体パウダー3として表3に示す。また、表3において、F.C.はフリーカーボンを示し、連々鋳の開始初期の鋳片すなわち連々初期鋳片の表面性状における、◎は操業異常なく鋳片の表面性状が優秀であること、○は鋳片の表面性状が良好であること、△および×は鋳片表面に欠陥を発生することをそれぞれ示している。この場合、表3において、パウダー基材は滓化後のパウダー融液組成が100%となるように示している。一方、パウダー組成におけるF.C.は燃焼して消失し、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成に影響しない。そこで、パウダー基材の滓化後のパウダー融液組成を質量で100%するとき、この滓化後のパウダー融液組成に対して混合するF.C.の質量を%を示している。表3の下部に記載するように、表3におけるFはパウダー基材におけるF化合物、例えばCaF2、NaF、AlF3などに含まれるフッ素分の総F濃度である。
Figure 2012030248
JISに規定するSUJ2鋼の連々鋳の開始時の鋳造初期に、図1に模式的に示すフリーカーボン2とパウダー基材3の混合物であるフロントパウダー1、すなわち表1の発明例1に示すフロントパウダー(Fで示すF化合物:6.0%と、SiO2:46.4%、Al23:11.2%、CaO:27.9%、MgO:5.3%、Na2O+Li2O:3.1%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.2.5%との混合物からなり、粘度1.1Pa・s、凝固温度1030℃、スラグ化率60%)8kgをモールドに投入して鋳造を開始した。この発明例1のフロントパウダーは、スラグ化率が60%であるのでフロントパウダーに必要な滓化性を有するための条件であるスラグ化率40〜90%を満足しており、また、質量%でパウダー基材100%と混合するF.C.が2.5%であるのでフロントパウダーに必要な燃焼発熱による保温性を有するための条件であるF.C.2〜8%を満足しており、さらに、粘度が1.1Pa・sであるのでフロントパウダーに必要な潤滑性を有するための条件である粘度0.1〜5.0Pa・sを満足している。上記の発明例1の連々鋳の開始の後、連々鋳が定常化すると、本発明におけるフロントパウダーに代えて、SUJ2鋼用の定常時用のモールドパウダーである本体パウダー4(Fで示すF化合物:6.0%、と、SiO2:46.4%、Al23:11.2%、CaO:27.9%、MgO:5.3%、Na2O+Li2O:3.1%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.:5.4%、粘度1.1Pa・s、凝固温度1030℃、スラグ化率33%)を用いて鋳造を継続し、鋳片を得た。これらの鋳片は連々鋳初期の鋳片においても表面性状は◎で優れたもので、連々鋳が定常化してから得られた鋳片と変わることの無い表面性状の優れたものであった。なお、表1において、鋳片表面性状は、鋳造後放出して冷塊とした鋳片を対象に、磁粉探傷およびグラインダー研削によって鋳片疵の程度を評価した。
JISに規定するS15C鋼の連々鋳の開始時の鋳造初期に、図1に模式的に示すフリーカーボン2とパウダー基材3の混合物であるフロントパウダー1、すなわち表2の発明例2に示すフロントパウダー(Fで示すF化合物:7.8%と、SiO2:42.9%、Al23:6.0%、CaO:29.3%、MgO:3.5%、Na2O+Li2O:10.4%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.3.0%との混合物からなり、粘度0.4Pa・s、凝固温度1110℃、スラグ化率70%)8kgをモールドに投入して鋳造を開始した。この発明例2のフロントパウダーは、スラグ化率が70%であるのでフロントパウダーに必要な滓化性を有するための条件であるスラグ化率40〜90%を満足しており、また、質量%でパウダー基材100%と混合するF.C.が3.0%であるのでフロントパウダーに必要な燃焼発熱による保温性を有するための条件であるF.C.2〜8%を満足しており、さらに、粘度が0.4Pa・sであるのでフロントパウダーに必要な潤滑性を有するための条件である粘度0.1〜5.0Pa・sを満足している。上記の発明例2の連々鋳の開始の後、連々鋳が定常化すると、本発明におけるフロントパウダーに代えて、S15C鋼用の定常時用のモールドパウダーである本体パウダー4(Fで示すF化合物:7.8%と、SiO2:42.9%、Al23:6.0%、CaO:29.3%、MgO:3.5%、Na2O+Li2O:10.4%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.:5.0%、粘度0.4Pa・s、凝固温度1110℃、スラグ化率32%)を用いて鋳造を継続し、鋳片を得た。これらの鋳片は連々鋳初期の鋳片においても表面性状は◎で優れたもので、連々鋳が定常化してから得られた鋳片と変わることの無い表面性状の優れたものであった。なお、表2において、鋳片表面性状は、鋳造後放出して冷塊とした鋳片を対象に、磁粉探傷およびグラインダー研削によって鋳片疵の程度を評価した。
JISに規定するSCr420鋼の連々鋳の開始時の鋳造初期に、図1に模式的に示すフリーカーボン2とパウダー基材3の混合物であるフロントパウダー1、すなわち表1の発明例3に示すフロントパウダー(Fで示すF化合物:3.3%と、SiO2:48.6%、Al23:13.2%、CaO:28.6%、MgO:1.2%、Na2O+Li2O:5.1%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.3.5%との混合物からなり、粘度2.3Pa・s、凝固温度1100℃、スラグ化率76%)8kgをモールドに投入して鋳造を開始した。この発明例3のフロントパウダーは、スラグ化率が76%であるのでフロントパウダーに必要な滓化性を有するための条件であるスラグ化率40〜90%を満足しており、また、質量%でパウダー基材100%と混合するF.C.が3.5%であるのでフロントパウダーに必要な燃焼発熱による保温性を有するための条件であるF.C.2〜8%を満足しており、さらに、粘度が2.3Pa・sであるので、フロントパウダーに必要な潤滑性を有するための条件である粘度0.1〜5.0Pa・sを満足している。上記の発明例3の連々鋳の開始の後、連々鋳が定常化すると、本発明におけるフロントパウダーに代えて、SCr420鋼用の定常時用のモールドパウダーである本体パウダー4(Fで示すF化合物:3.3%、と、SiO2:48.6%、Al23:13.2%、CaO:28.6%、MgO:1.2%、Na2O+Li2O:5.1%の酸化物からなるパウダー基材と、質量%でパウダー基材100%に対して混合するF.C.:7.0%、粘度2.3Pa・s、凝固温度1100℃、スラグ化率15%)を用いて鋳造を継続し、鋳片を得た。これらの鋳片は連々鋳初期の鋳片においても表面性状は◎で優れたもので、連々鋳が定常化してから得られた鋳片と変わることの無い表面性状の優れたものであった。なお、表3において、鋳片表面性状は、鋳造後放出して冷塊とした鋳片を対象に、磁粉探傷およびグラインダー研削によって鋳片疵の程度を評価した。
1 フロントパウダー
2 フリーカーボン
3 パウダー基材
4 本体パウダー
5 金属発熱材や低級酸化物酸化剤
6 従来技術におけるフロントパウダー

Claims (3)

  1. 炭素含有量が、質量%で、0.1〜1.5%の鋼を連続鋳造する方法において、Si、Al、Ca、Mg、Na、Liの酸化物系化合物およびF化合物からなるパウダー基材とフリーカーボンの混合物からなり、このフリーカーボンは、質量%で、パウダー基材を100%とするとき、このパウダー基材と混合するフリーカーボンの質量をパウダー基材100%に対する2〜8%とする混合体で、1300℃における粘度0.1〜5.0Pa・sであるフロントパウダーの使用による連々鋳の鋳込み開始時の鋳込み方法を特徴とする鋼の連々鋳による連続鋳造方法。
  2. フロントパウダーの使用による連々鋳の鋳込み開始時の鋳込み方法は、フロントパウダーを1300℃のモールド内に投入した際、下記の(1)式に示すスラグ化率40%〜90%のフロントパウダーを使用する鋳込み方法を特徴とする請求項1に記載の鋼の連々鋳による連続鋳造方法。
    スラグ化率(%)={(滓化したフロントパウダーの質量)/(加熱後の滓化したフロントパウダーと未滓化のモールドパウダーとの混合物の質量)}×100・・・(1)
  3. (1)式に示すスラグ化率40%〜90%のフロントパウダーを使用する鋳込み方法は、連々鋳の定常状態で使用する本体パウダーとフリーカーボンの含有量だけが相違し、定常状態で使用する本体パウダーのパウダー基材と同一組成からなる本体パウダーを使用して連々鋳の開始時の鋳込みを行い、続いてフロントパウダーとフリーカーボンの含有量だけが相違し、パウダー基材の組成は同一であるモールドパウダーを使用して定常時の鋳込みを継続する方法を特徴とする請求項2に記載の鋼の連々鋳による連続鋳造方法。
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