JP4483662B2 - 鋼の連続鋳造用モールドフラックス。 - Google Patents

鋼の連続鋳造用モールドフラックス。 Download PDF

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Description

本発明は、鋳片表面における縦割れの発生を防止するためのモールドフラックスに関し、さらに詳しくは、亜包晶鋼のような鋳片表面割れを発生しやすい鋼種の鋳造においても、鋳型内の潤滑性を維持しながら優れた緩冷却効果を発揮するモールドフラックスに関する。
鋼の連続鋳造において、C含有率が0.08〜0.18質量%である亜包晶鋼は、鋳型内で溶鋼が凝固して形成する凝固殻の厚さが不均一になりやすく、この凝固殻の厚さの不均一に起因して、鋳片表面に縦割れを発生しやすい。
鋳型内の凝固殻の厚さを均一にするためには、凝固殻の先端部を緩やかに冷却すること(以下、「緩冷却」と記す)が有効であり、そのための手段として、モールドフラックスが利用されている。モールドフラックスは、鋳型内の溶鋼上へ供給され、溶鋼からの熱供給により溶融して、鋳型と凝固殻との間隙に流入し、フィルムを形成する。このフィルムは、鋳造開始直後に、鋳型による冷却によりガラス状に凝固するが、時間の経過とともにガラス中から結晶が析出する。このフィルムの結晶化を促進させると、フィルムの鋳型側表面の粗度が増大するため、鋳型とフィルムとの界面における熱的抵抗が増大する。また、フィルム中の輻射伝熱も抑制されるため、これらの効果により、フィルムに接した溶鋼および凝固殻が緩冷却される。
フィルム中に析出する一般的な結晶の種類はカスピダイン(cuspidine:3CaO・2SiO2・CaF2)と呼ばれるものである。フィルムの結晶化を促進する手段として、従来、下記の方法が公知である。
モールドフラックスから形成される融体の凝固点を高めることは、結晶化を促進する有効な方法である。特許文献1には、中炭素鋼を連続鋳造するに際して、CaOとSiO2の質量含有率の比(以下、「塩基度」または「CaO/SiO2」とも記す)=1.0〜1.5の範囲で、Al23、Na2O、Li2O、Fおよび炭素粉含有率を調整し、1300℃における粘度が0.6〜2.5poiseであり、溶融温度T1と凝固温度T2が、1150℃≦T2≦1250℃、かつ40℃≦T2−T1≦75℃の関係を満足する連続鋳造用パウダーが開示されている。しかし、同文献中で指摘されているとおり、凝固点を1250℃以上に高めると、潤滑性が阻害されてブレークアウトが防止できないという問題があるとされている。
また、モールドフラックス中の成分組成をコントロールすることにより結晶化を促進する方法として、モールドフラックス中の塩基度の上昇やMgO含有率の低減が有効である。特許文献2には、主成分がCaOおよびSiO2であり、CaO/SiO2が1.2〜1.6であって、MgO含有率が1.5質量%以下である鋼の連続鋳造用パウダーが開示されている。上記の成分組成のパウダーとすることにより、迅速溶解および高潤滑特性を維持しつつ、溶融パウダーの高い結晶化度が達成できるとされている。しかしながら、ここで開示された連続鋳造用パウダーの結晶生成温度は、最も高い例でも1145℃程度と低く、これでは十分な緩冷却効果が得られるとはいえない。
一方、特許文献3には、中炭素鋼を連続鋳造するに当たり、モールドパウダーとして、溶融状態における輻射熱の吸収係数が100m-1以上を示すものを用いることを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造方法が開示されている。そして、モールドパウダー中に鉄あるいは遷移金属の酸化物を添加することにより、モールドパウダーが形成するフィルム中の特に液相中の輻射伝熱を抑制する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献3に開示された方法では、上記の酸化物を添加することにより、モールドフラックス中CaO、SiO2、CaF2の濃度が希釈される。特に、この方法において、輻射伝熱の抑制効果を十分に得るためには、同文献中の実施例に示されるとおり、鉄あるいは遷移金属の酸化物を合計で10質量%以上も含有させる必要がある。また、塩基度が1.0付近の組成においては、カスピダインが析出し難くなり、モールドフラックスの凝固点は低下する。同文献の実施例の表1中に示された適用例によれば、モールドフラックスの凝固点は1050℃程度以下である。
亜包晶鋼の縦割れを防止するのに効果的なモールドフラックスの凝固点が、前記の特許文献1に記載されるとおり、1150〜1250℃程度であることを考慮すると、特許文献3に記載された凝固点は、亜包晶鋼の縦割れを防止するのに効果的なモールドフラックスの凝固点よりも100℃以上も低い。つまり、同文献に示された実施例の結果は、フィルムの結晶化が阻害される結果、鋳型とフィルムとの界面における熱抵抗の増大が阻害され、緩冷却効果が損なわれていることを示している。
亜包晶鋼の中でも、Mn含有率が例えば1.0質量%以上と高い場合、あるいは、Cu、Ni、Ti、Nb、V、Bなどの合金成分元素を含有する場合には、鋳片表面の縦割れがさらに発生しやすくなる。したがって、このように特に縦割れの発生しやすい亜包晶鋼に対しては、上記に開示されたようなモールドフラックスを用いても、縦割れの防止あるいはその抑制効果が十分に得られない場合がある。
また、上述のとおり、実用上、使用可能なモールドフラックスの凝固点は1250℃程度以下とされてきたため、従来以上の緩冷却効果を得ようとしても、凝固点をそれ以上に上昇させることができず、緩冷却の抜本的改善を図ることはできなかった。
特開平8−197214号公報(特許請求の範囲および段落[0009]) 特開平8−141713号公報(特許請求の範囲、段落[0013]および表1) 特開平7−185755号公報(特許請求の範囲、段落[0011]および表1) 特開2001−179408号公報(特許請求の範囲、段落[0013]〜[0015]) ISIJ International、Vol.42(2002)、p489〜497
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、モールドフラックスの結晶化を安定化させることにより、遷移金属の酸化物を含有させることによる結晶化阻害の影響を受けにくくして、亜包晶鋼の鋳造時における鋳型内の潤滑性を維持しながら緩冷却効果を発揮し、鋳片表面縦割れを防止できるモールドフラックスを提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するために、従来の問題点を踏まえて、亜包晶鋼の鋳造時に鋳型内の潤滑性を維持しながら、しかも緩冷却効果を発揮し、鋳片表面縦割れを防止できるモールドフラックスについての検討を行い、下記の(a)〜(c)の知見を得て、本発明を完成させた。
(a)CaO、SiO2およびCaF2の濃度の比を、カスピダインのCaO、SiO2およびCaF2の成分組成の比に一致させたモールドフラックスにおいて、NaF、Al23、MgOなどを添加して凝固点を調整する操作は、上記の成分を添加して、融点が1410℃の純粋なカスピダインを希釈することにより、モールドフラックスの凝固点を低下させることを意味し、希釈成分の増加にともない鋳型内の緩冷却作用も低下する。
(b)しかしながら、遷移金属であるCr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはMoの酸化物をモールドフラックスに含有させた場合には、モールドフラックスの凝固点は低下するものの、鋳型内における熱流束の増大は防止されてほぼ一定レベルに維持され、凝固点が高い場合と同様の緩冷却効果を確保することができる。
(c)上記(b)の緩冷却効果が得られる理由は、光の透過率が低下して、モールドフラックス中の輻射伝熱が抑制されることによると推察される。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示される鋼の連続鋳造用モールドフラックスにある。すなわち、
「CaO、SiO2およびフッ素化合物を基本成分とし、さらに、遷移金属であるMnの酸化物を1.0〜10質量%含有し、かつ、下記(1)式、(2)式および(3)式により表される関係を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
1.3≦f(1)≦1.5 ・・・(1)
0.1≦f(2)≦0.4 ・・・(2)
0.10≦f(3)≦0.20 ・・・(3)
f(1)=(CaO)h/(SiO2)h ・・・(イ)
f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h} ・・・(ロ)
f(3)=(アルカリ金属のフッ化物)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属のフッ化物)h}・・・(ハ)
(CaO)h=WCaO−(CaF2)h×0.718 ・・・(A)
(SiO2)h=WSiO2 ・・・(B)
(CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05 ・・・(C)
(アルカリ金属のフッ化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23 ・・・(D)
ここで、WCaO、WSiO2、WF、WLi2O、WNa2OおよびWK2Oは、それぞれ、モールドフラックス中のCaO、SiO2、F、Li2O、Na2OおよびK2Oの含有率(質量%)である。
本発明において、「CaO、SiO2およびフッ素化合物を基本成分とする」とは、対象とする各成分の含有率が、それぞれ少なくとも5質量%以上であり、また、合計含有率が70質量%以上であることを意味する。
なお、以下の説明においては、「%」は、「質量%」を意味する。
本発明のモールドフラックスは、フィルム中における結晶化を安定化させることにより、遷移金属の酸化物を含有することに起因する結晶化阻害の影響を抑止し、鋳型内の潤滑性を維持しながら緩冷却効果を発揮することができる。したがって、本発明のモールドフラックスを用いることにより、表面割れの発生しやすい亜包晶鋼の鋳造時においても、鋳型内の良好な潤滑作用を維持しながら、かつ鋳片表面の縦割れを防止することができる。
本発明は、前記のとおり、CaO、SiO2およびフッ素化合物を基本成分とし、さらに、遷移金属であるMnの酸化物を1.0〜10%含有し、かつ、前記(1)式、(2)式および(3)式により表される関係を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックスである。以下に、本発明の連続鋳造用モールドフラックスについてさらに詳しく説明する。
1)鋳型内熱流束の上昇抑止作用
本発明者らは、モールドフラックスの結晶化を安定化することにより、遷移金属酸化物の添加による結晶化阻害の影響を受けにくくし、輻射伝熱の抑制効果を発揮させる方法について検討を行った。その結果、モールドフラックス組成をカスピダインの初晶領域内の組成に調整した上で、適量の遷移金属酸化物を含有させることにより、従来に類を見ない緩冷却効果を発揮させることが可能となった。
モールドフラックスの成分組成をカスピダインの初晶領域の成分組成に調整する方法として、例えば、特許文献4には、モールドフラックスの成分組成をCaO−SiO2−CaF2−NaFの4元系として取り扱い、その成分組成により出現する相がカスピダインの初晶領域に一致するように成分調整を行う方法が開示されている。そして、同文献において開示されたカスピダインの結晶化しやすい組成範囲は、その後に、非特許文献1に掲載されたカスピダインの初晶領域とも実質的に一致している。
前記特許文献4に開示された相関係の調整方法は、CaO、SiO2およびCaF2の濃度の比の調整、ならびにNaF、さらにはAl23、MgOなどの成分濃度の調整から成る。CaO、SiO2およびCaF2の濃度比の調整は、それらの3成分の濃度の比をカスピダインの初晶領域内の組成とするための調整であり、NaF、Al23、MgOなどの濃度の調整は、凝固点、粘度などの物性を適正化するための調整である。
CaO、SiO2およびCaF2の濃度の比をカスピダインの成分組成の比に一致させたモールドフラックスにおいて、NaF、Al23、MgOなどにより凝固点を調整する操作は、融点が1410℃の純粋なカスピダインを、上記の各成分を添加することにより希釈し、モールドフラックスの凝固点を低下させる操作を意味する。したがって、上記の希釈成分の濃度が上昇すると、カスピダインの結晶量および凝固点が低下し、それにともなって、鋳型内の緩冷却効果も低下する。
上記した従来のモールドフラックスの成分調整方法に対して、本発明者らは、鋳造試験を行って、新たに下記の知見を得た。すなわち、「モールドフラックスに、遷移金属であるMn、Cr、Fe、Co、Ni、CuまたはMoの酸化物を含有させることにより、NaF、Al23、MgOなどを含有させた場合と同様にモールドフラックスの凝固点は低下するものの、鋳型内の熱流束は増大させずに一定レベルを維持し、凝固点が高い場合と同様の緩冷却効果を得ることができること」を見出した。
カスピダインの初晶領域内の成分組成に調整されたCaO−SiO2−CaF2−NaF系の基本成分のモールドフラックスに対してMnOを添加することにより、種々のMnO含有率を有するモールドフラックスを作製し、これらのフラックスを用いて亜包晶鋼の連続鋳造試験を行った。ここで、MnOの配合原料としては、常温においてMnOよりも安定なMnO2を使用した。MnO2は、高温では分解してMnOとなる。
図1は、モールドフラックスの凝固点と鋳型内熱流束との関係におよぼす添加成分の影響を示す図である。同図は、CaO:46.6%、SiO2:27.4%、F:11.0%、Na2O:6.0%およびMnO:0%の成分組成を有するモールドフラックスを基本成分組成(同図中の□印)として、△印はMnO含有率を1〜4%の範囲で変化させ、また、○印はNa2Oを添加してNa2O:8.0%およびF:12.0%とすることにより、換算値として所定のNaFを含有させた例である。
基本成分組成を有するモールドフラックスの凝固点は、約1260℃であり、各添加成分の含有率を変化させることにより、モールドフラックスの凝固点を変化させ、その時の鋳型内熱流束の変化を調査した。
同図の結果によれば、基本成分組成のモールドフラックスに、さらにNaFを含有させた場合には、凝固点の低下にともなって、鋳型内の熱流束は増大している。これに対して、MnOを含有させた場合には、凝固点が低下しても、鋳型内熱流束は増大せず、基本成分組成のモールドフラックスと同等のレベルの値が維持されている。その結果、凝固点が1220〜1240℃の範囲においても、凝固点が1260℃の場合と同等の緩冷却効果が得られている。
この結果は、潤滑性阻害のために使用が困難とされている凝固点が1250℃以上のモールドフラックスの有する優れた緩冷却効果を維持しながら、凝固点を一般的な温度範囲である1250℃以下としたモールドフラックスを製造することが可能であることを意味している。
また、上記のMnと同様に、Cr、Fe、Co、Ni、CuまたはMoの酸化物を含有させた場合においても同様の作用、効果を得ることができることを確認した。
上述した遷移金属酸化物を含有させた場合に、モールドフラックスの凝固点が低下するにも拘わらず、鋳型内熱流束が増大せずにほぼ一定に維持される理由は、光の透過率が低下し、輻射伝熱が抑制されることによると推察される。
2)発明の範囲の限定理由および好ましい範囲
本発明の連続鋳造用モールドフラックスの範囲を前記のとおり限定した理由、および本発明の好ましい範囲について以下に説明する。
(a)CaO、SiO2およびフッ素化合物を基本成分とし、好適態様としてアルカリ金属酸化物を含有:
CaO、SiO2およびフッ素化合物は、結晶化を担うカスピダインの必須構成成分として含有させる必要がある。また、アルカリ金属の酸化物は、フラックスの凝固点の調整を比較的容易とする作用を有することから、含有させることが好ましい。
CaO、SiO2およびフッ素化合物の各含有率ならびに好適態様としてのアルカリ金属酸化物の各含有率を、カスピダインの晶出しやすい下記(1)〜(3)式により表される範囲に調整する。
1.3≦f(1)≦1.5 ・・・(1)
0.1≦f(2)≦0.4 ・・・(2)
0.10≦f(3)≦0.20 ・・・(3)
f(1)=(CaO)h/(SiO2)h ・・・(イ)
f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h} ・・・(ロ)
f(3)=(アルカリ金属のフッ化物)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属のフッ化物)h}・・・(ハ)
(CaO)h=WCaO−(CaF2×0.718 ・・・(A)
(SiO2)h=WSiO2 ・・・(B)
(CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05 ・・・(C)
(アルカリ金属のフッ化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23 ・・・(D)
上記(1)〜(3)式の範囲を満足するように各成分の含有率を調整することにより、モールドフラックスの組成をカスピダインの初晶の組成範囲に維持することが可能となる。
なお、f(2)の好ましい範囲は0.1〜0.3であり、さらに好ましい範囲は0.15〜0.25である。
(b)遷移金属であるMnの酸化物を含有:
遷移金属であるCr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびMoの酸化物は、いずれも光の透過率を低下させ、輻射伝熱を抑制する作用により、モールドフラックスの凝固点が低下した場合においても、鋳型内の熱流束の上昇を防止してほぼ一定レベルに維持する作用を有する。
この効果を得るためには、上記の遷移金属の酸化物を合計で1.0%以上含有させる必要がある。しかし、その含有率が10%を超えて高くなると、これらの酸化物はカスピダインの晶出を妨げる。これらの理由から、上記の遷移金属の酸化物の合計含有率の適正範囲を1.0〜10%とした。
遷移金属には多くの種類の元素があるが、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuおよびMoの酸化物が上述した作用を有する。これらの酸化物のうちで、特に、Mn、CrおよびFeの酸化物は比較的安価であり、モールドフラックスの配合原料として使用しやすい。また、フラックスの基材となる原料の種類によっては、MnOやFeOなどが不純物として含まれる場合があるが、その原料を配合しても、同様の効果が得られる。
(c)その他の酸化物の含有:
モールドフラックスの凝固点、粘度などの物性を調整するために、MgO、Al23、BaO、B23などを含有させてもよい。これらの成分は、いずれもモールドフラックスの凝固点を低下させる作用を有する。また、Al23は粘度を上昇させる作用を有し、MgO、BaOおよびB23はいずれも粘度を低下させる。
しかしながら、カスピダインの晶出を促進するためには、これらの成分の含有率は低くするのが好ましく、合計含有率で15%未満とすることが好ましい。通常のモールドフラックス用原料を使用する場合には、不可避的に含有されるこれらの合計含有率は2〜5%であるが、プリメルト基材などの人工原料を使用することにより、それ以下の値とすることもできる。
本発明の連続鋳造用モールドフラックスの効果を確認するため、下記のとおり連続鋳造試験を行って、その結果を評価した。
表1および表2に示される化学成分組成、凝固点および粘度を有する種々のモールドフラックスを作製し、これらのモールドフラックスを使用して、亜包晶鋼の連続鋳造試験を行った。各試験に使用したモールドフラックスは、ポルトランドセメント、珪砂、蛍石、ソーダ灰などの原料を配合して、CaO、SiO2およびFを基本成分とし、Na2O、MnO、Cr23、FeOなどを添加した。また、別途、モールドフラックスを溶融凝固させた試料を用いてX線回折試験を行い、本発明例においては析出した主な結晶がカスピダインであることを確認した。
Figure 0004483662
Figure 0004483662
なお、表1における換算指標欄のf(1)、f(2)およびf(3)は、それぞれ、前記の(イ)式、(ロ)式および(ハ)式により算出される値を示し、また、表2における粘度は、1300℃におけるモールドフラックスの粘度を示す。
各鋳造試験では、垂直曲げ型連続鋳造機を用いて、表3に示す化学成分組成を有する亜包晶鋼を1.3m/分の鋳造速度で鋳造し、幅2300mm、厚さ240mmのスラブとした。
Figure 0004483662
上記の鋳造試験により得られた鋳片についてその表面の縦割れを調査し、下記のとおり、評価した。すなわち、鋳片の長さ1m当たりの表面の縦割れの発生長さの合計値が20mm未満の場合を評価○とし、同合計値が20mm以上200mm/m未満の場合を評価△とし、そして、同合計値が200mm以上の場合を評価×とした。これらの基準による評価結果を表2中の評価欄に示した。
試験番号2および4は、本発明で規定する成分組成の範囲を満足するモールドフラックスを用いた本発明例についての試験であり、また、試験番号5〜7および試験番号11〜14は、本発明で規定する成分組成の範囲を満たさないモールドフラックスを使用した比較例についての試験である。試験番号1、3および試験番号8〜10は、本発明で規定する成分組成または換算指標の範囲を満たさないモールドフラックスを用いた参考例としての試験である。
試験番号1〜4は、遷移金属の酸化物としてMnOを含有する本発明例または参考例の試験であり、凝固点は最高で1240℃前後であるにも拘わらず、結晶化が安定化して熱流束の上昇が防止され、ほぼ 1.2〜1.5MW/m2で一定に維持されている。その結果、鋳片表面の縦割れは発生せず、良好な表面品質の鋳片が得られた。また、遷移金属の酸化物としてCr23またはFeOを含有させた参考例である試験番号8および9、ならびにアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない参考例である試験番号10においても、同様に熱流束の上昇が防止され、鋳片表面の縦割れの発生のない表面品質の良好な鋳片が得られた。
これらに対して、CaO含有率が低く、換算指標f(1)の値が低い比較例である試験番号5、ならびに遷移金属の酸化物の合計含有率が本発明で規定する範囲を外れた比較例である試験番号6および7では、いずれも結晶化が阻害されて熱流束が上昇した結果、鋳片表面にディプレッションあるいは縦割れが発生し、鋳片の表面品質は不良となった。また、換算指標f(1)の値が高い比較例である試験番号11、フッ素化合物の含有率が適正でないために、換算指標f(2)の値が本発明で規定する範囲を外れた比較例である試験番号12および13、ならびにアルカリ金属のフッ化物の含有率が高いために、換算指標f(3)の値が本発明で規定する範囲を超えた比較例である試験番号14においても、鋳片表面にディプレッションあるいは縦割れが発生した。
本発明のモールドフラックスは、フィルム中における結晶化を安定化させることにより、遷移金属の酸化物を含有することに起因する結晶化阻害の影響を抑止し、鋳型内の潤滑性を維持しながら、しかも緩冷却効果を発揮することができる。したがって、本発明のモールドフラックスは、特に表面割れの発生しやすい亜包晶鋼の鋳造時においても、鋳型内の良好な潤滑作用を維持しながら鋳片表面の縦割れの発生を防止することができ、緩冷却を必要とする鋼の連続鋳造分野において広範に適用できる。
モールドフラックスの凝固点と鋳型内熱流束との関係におよぼす添加成分の影響を示す図である。

Claims (1)

  1. CaO、SiO2およびフッ素化合物を基本成分とし、
    さらに、遷移金属であるMnの酸化物を1.0〜10質量%含有し、
    かつ、下記(1)式、(2)式および(3)式により表される関係を満足することを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドフラックス。
    1.3≦f(1)≦1.5 ・・・(1)
    0.1≦f(2)≦0.4 ・・・(2)
    0.10≦f(3)≦0.20 ・・・(3)
    f(1)=(CaO)h/(SiO2)h ・・・(イ)
    f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h} ・・・(ロ)
    f(3)=(アルカリ金属のフッ化物)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属のフッ化物)h}・・・(ハ)
    (CaO)h=WCaO−(CaF2)h×0.718 ・・・(A)
    (SiO2)h=WSiO2 ・・・(B)
    (CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05 ・・・(C)
    (アルカリ金属のフッ化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23 ・・・(D)
    ここで、WCaO、WSiO2、WF、WLi2O、WNa2OおよびWK2Oは、それぞれ、モールドフラックス中のCaO、SiO2、F、Li2O、Na2OおよびK2Oの含有率(質量%)である。
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