JP4014001B2 - 高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス - Google Patents

高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はAlを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼を連続鋳造する際に、溶融スラグの変質に起因する操業異常および鋳片品質劣化の防止に効果的な高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス(以下、単にモールドフラックスと称す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、鋼の連続鋳造では、主に鋳片と鋳型の焼付き防止のため鋳型内溶鋼上にモールドフラックスを投入し、これを溶融スラグとして鋳型と凝固シェル間に流入させることにより潤滑剤として機能させている。モールドフラックスは一般にCaO、SiO2 を主成分とし、Al23 、Na2 O、F、MgO他の成分を複数添加して所定の物性を付与し、溶融速度調整や未溶融モールドフラックス焼結防止、溶鋼表面保温のため炭素を適量加えたものが一般的に用いられる。
【0003】
しかし、高Al含有鋼の鋳造に一般のモールドフラックスを用いると、(1)式のようにモールドフラックス成分SiO2 が還元性の強いAlと反応し、溶融スラグ組成が変動する。なお、(1)式中の[ ]内は鋼中成分、( )内はスラグ中成分を示す。
4[Al]+3(SiO2 )→2(Al23 )+3[Si]・・・・(1)
【0004】
鋼中Al含有量が多く上記反応が激しい場合は、モールドフラックスの基本物性である粘度や融点が大きく上昇する。これは、主に溶融スラグが高融点結晶2CaO・Al23 ・SiO2 (Gehlenite)やAl23 ・MgO(Spinel)を生成し易い組成に変化するためである。これらの結晶が多量に生成すると、溶融スラグは鋳型と凝固シェル間へ流入し難くなり潤滑不良傾向となる。
【0005】
さらに、多連続鋳造により鋳造時間が長くなると、溶融スラグの消費に対して供給量が過多となる。消費と供給のバランスが崩れると、溶融スラグ層は使用中に次第に厚くなり、メニスカス近傍にスラグベアと呼ばれる凝固塊が成長して凝固シェル形成が阻害される。その結果、不均一流入警報やブレークアウト等の重大な操業異常が発生し易く危険な状態となる。
【0006】
これら高Al含有鋼の連続鋳造における問題を解決するために、特開昭61−186155や特開平3−77753、特開平11−226712、特開2000−42697において、スラグ成分変化にともなう変質を低減する技術が開示されている。
【0007】
しかし、本発明者らがAlを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼の多連続鋳造に特開昭61−186155記載のモールドフラックスを使用したところ、SiO2 含有量が高いため、スラグ中のSiO2 が溶鋼Alにより還元されてスラグ成分が大きく変化した。
また、特開平3−77753、特開平11−226712、特開2000−42697記載のモールドフラックスを使用したところ、Na2 O含有量が高いため、スラグ中Na2 Oの大部分が溶鋼Alにより還元されてスラグ成分変化が助長されるとともに、白煙や炎を生じて操業は著しく悪化した。
【0008】
したがって、これらのモールドフラックスは成分変化による溶融スラグ物性の変質を抑えることはできず、潤滑機能は著しく低下するため使用困難であると判断された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明において解決すべき課題は、Alを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼の連続鋳造に際してのスラグ変質に起因する問題を解消し、安定操業を可能とするモールドフラックスを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した従来方法における問題点を解決するためになされたものであって、その要旨するところは、下記手段にある。
(1) SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有した、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
(2) SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、MgO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有した、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
【0011】
(3) SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、LiO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有した、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
(4) SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、MgO:10mass%以下、LiO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有した、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らがAlを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼鋳造用モールドフラックスについて種々の研究検討を行った結果、操業異常の発生を抑制するためにはNa2 Oを出来るだけ低減して、かつSrOやBaOを適量含む上記解決手段に示したモールドフラックスは、SiO2 を多く含むものであっても鋳造中のスラグ粘度や融点の変化が小さいことを見出すことができた。
【0013】
以下、本発明のモールドフラックスにおいて、各成分範囲を作用効果の面から限定した理由についってその詳細を述べる。
SiO2 、CaOはモールドフラックスの主成分であり、安定した初期溶融スラグを形成するため、それぞれ25〜45mass%必要とする。ここで、塩基度(CaO/SiO2 )が0.8未満では鋼との反応が激しくなり、Al23濃化が大きくなる可能性があり、1.2を超えると融点が高くなるので、(CaO/SiO2 ):0.8〜1.2の範囲に調整する。
【0014】
SrOとBaOを合計で2mass%以上添加することにより、前記(1)式の反応によってAl23 が濃化したスラグの物性変化を抑えることができ、その効果はSrO>BaOの順に高い。但し、15mass%を超えて添加してもその効果は殆ど変わらないため、2〜15mass%で十分である。 なお、BaOを含むBaO化合物のほとんどは毒性を有するため、なるべくSrOを用いる方が望ましい。
【0015】
Fは粘度と融点を下げる目的で2mass%以上添加するが、過剰であると設備腐食や浸漬ノズルの溶損を促進するため、15mass%以下とする。
Al23 は初期スラグの物性調整剤として添加してもよいが、使用中にAl23 が濃化することを考慮して10mass%以下で調整する。
【0016】
Na2 Oは粘度と融点を下げる作用があるが、上述の通り使用中に還元されてスラグ中に安定して存在できないため、多量に添加すると逆効果である。したがって、原料等から不可避的に混入しても5mass%以下となるようにする。
炭素は主にモールドフラックスの溶融速度調整や焼結防止のために0.5mass%以上を必要とする。5.0mass%を超えると溶融が極端に遅れて、溶融スラグ切れにともなう潤滑不良や浸炭などの問題を生ずる惧れがある。
【0017】
MgOは若干の低粘度化、低融点化効果があるが、過剰に存在するとAl23 濃化時にSpinel結晶を生成して高融点化するため、10mass%以下となるよう制限する。
Li2 Oは粘度と融点を下げるため必要に応じて添加してもよい。但し、添加量が多すぎると還元され易くなり効果が半減するため、10mass%以下が望ましい。
【0018】
【実施例】
本発明モールドフラックスおよび従来モールドフラックスを用いて250×1200mmサイズのAlを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼を鋳造した。モールドフラックスの組成と鋳造結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004014001
【0020】
表1の結果から明らかなように、本発明モールドフラックスを使用すると不均一流入警報やブレークアウト等の操業異常もなく、鋳片品質も極めて良好であった。
一方、従来モールドフラックスを使用した場合は、Al23 濃化による融点上昇が大きく、潤滑不足に起因するブレークアウトが発生した。また、巨大なスラグベアが発達して流入が阻害され、操業は非常に不安定であった。
【0021】
【発明の効果】
本発明モールドフラックスを用いることにより、不均一流入警報やブレークアウトの発生が皆無となり、これまで高速鋳造が困難とされたAlを0.5〜3.0mass%含有する高Al含有鋼であっても、安定操業が可能となった。

Claims (4)

  1. SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有したことを特徴とする、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
  2. SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、MgO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有したことを特徴とする、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
  3. SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、LiO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有したことを特徴とする、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
  4. SiO:25〜45mass%、CaO:25〜45mass%を主成分として塩基度(CaO/SiO):0.8〜1.2となるように調整し、SrO+BaO:2〜15mass%、F:2〜15mass%、Al:10mass%以下、NaO:5mass%以下、MgO:10mass%以下、LiO:10mass%以下、炭素:0.5〜5.0mass%含有したことを特徴とする、Alを0.5〜3.0mass%含有する鋼の連続鋳造に使用する高Al含有鋼連続鋳造用モールドフラックス。
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