JP6898088B2 - 鋼製護岸棚構造体 - Google Patents
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Description
また、前記石詰めかご護岸工法は、金網等で箱体を形成しその中に石礫を詰めることによって河川の流水から堤防の河岸を防御するという、石礫を使用した多自然川づくりの代表的工法であり、近年種々のバリエーションが開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
一方、前記石詰めかご護岸工法は、石礫は金網等による箱体で拘束されているので、洪水等の大きな流水に対しても河岸防護機能を発揮することができる。しかし、金網が護岸表面に露出することから、修景性が良いとは云えない。さらに、金網にゴミや枯れ葉が引っ掛かり、蓄積することより修景性を顕著に損なう虞もあった。
(1)骨格をなす鋼製護岸棚の大部分は中詰材に覆われて目立たないので、石礫のみで護岸を構築する自然石護岸工法のような修景性に優れた利点を踏襲することができる。それでいて、自然石護岸工法の欠点である洪水等の大きな流水が発生した場合には、仕切面部のスクリーン効果により、流水はスムーズに下流側へ通過させつつ中詰材の動きはしっかり受け止める。よって、中詰材の一部は流送されることはあっても連鎖的な中詰材の流送は確実に防止できるので、石礫を中詰めした石詰めかご護岸工法のような河岸防護機能に優れた利点も踏襲することができる。
まとめると、前記自然石護岸工法の修景性に優れている利点と、前記石詰めかご護岸工法の洪水等の大きな流水に対しても河岸防護機能を発揮できる利点の双方を合わせ持つ、環境性に優れた鋼製護岸棚構造体を実現することができる。
(2)護岸表面に露出しているのは石礫等の中詰材であり、金網等の拘束部材は存在しないので、前記石詰めかご護岸工法の課題であった金網が護岸表面に露出することにより修景性を損なう問題も解消できる。
(3)底面用スクリーン材および背面用スクリーン材はそれぞれピン連結構造で仕切面部に連結されているので、ピンを支点として回動できる限度内において略平行四辺形状の如き変形を許容できる。よって、このような変形効果により、鋼製護岸棚を護岸位置の湾曲形状や不等沈下形状に応じて良好に追従できる等の柔軟性に富む配置が可能となり、現場対応を容易ならしめる利点がある。前記底面用スクリーン材を、河川の流れ方向(横方向)に長いルーズ孔を形成したピン連結構造で連結する場合には、より一層、現場対応を容易ならしめる利点がある。このような変形効果は部材点数の抑制にも繋がり、経済性に優れている利点もある。
(4)前記鋼製護岸棚は、前面部及び上面部が一連に開口された、底面部と背面部とで略L字形をなす構成で実施しているので、重機のバックホウによる中詰材の修復(補充)作業の邪魔をする障害物は何ら存在せず、前記自然石護岸工法と同様の簡易で単純な作業で修復できる。よって、合理的で作業性、経済性に優れた修復作業を行うことができる。
(5)もとより、鋼製護岸棚構造体(鋼製護岸棚)は、河川の流れ方向に順次接続して連続一体をなす構造で実施しているので、その全長にわたり僅かな変形は許容しながらも護岸の機能を損なうことなく河岸防護効果を恒久的に発揮し続けることができる。
以下、前記鋼製護岸棚構造体14、特には鋼製護岸棚12の構成について説明する。
(仕切面部7について)
前記仕切面部7は、前記側枠5の枠内に仕切用スクリーン材6を配設して一体化してなる。
前記側枠5は、前後部の柱材1、2と上下部の梁材3、4とを枠状に組んでなる。
一例として、本実施例に係る側枠5は、前後部の柱材1、2に2本1組で略T字をなす山形鋼(アングル材)を用い、上下部の梁材3、4にCT形鋼(T形鋼)を用いて構成されている。具体的には、上下部の梁材(CT形鋼)3、4が、そのウエブ部を互いに内方へ向けて対向する配置とされ、当該ウエブ部を前後部の柱材(2本1組の山形鋼)1、2がそれぞれ挟み込む配置とされ、各接合部等の要所をボルト等の接合手段で一体的に接合し、全体として内側中央ラインに沿ってウエブ部が無端状に突き出したような枠状に構成されている。
なお、前記柱材1、2は、山形鋼等の形鋼のほか、鋼管で実施することもできる。前記スクリーン材は、フラットバーのほか、山形鋼で実施することもできるし、エキスパンドメタルや金網を側枠5の面内に張設する手段で実施することもできる。
前記底面部9は、隣接する下部の梁材4、4同士の間に底面用スクリーン材8が配設されて構成されている。
前記底面用スクリーン材8は、本実施例では山形鋼8aとフラットバー8bとを用い、前記下部の梁材4、4の前後の端部に山形鋼8aが内向きに対向配置され、当該山形鋼8a、8a同士の間に、所要(例えば、仕切面部7と同じ125mm程度)の間隔をあけて複数本(図示例では6本)のフラットバー8bが略平行に配置され、当該底面用スクリーン材(山形鋼8a、フラットバー8b)8の両端部が対応する下部の梁材(CT形鋼)4のフランジ部を利用してピン連結構造(例えば、本実施例ではボルト接合)により接合され、もって底面部9が形成される。
なお、前記ピン連結構造は、ボルト・ナット以外の様々な連結用金具の組み合わせを採用して実施することができる。
もっとも、前記後端部(陸側)に配置された山形鋼8aは、その底面部(水平部)と下部の梁材4、4とは接合されていないフリーの状態で、その背面部(垂直部)と後部の柱材2、2とをピン連結構造(本実施例ではボルト接合)で接合する工夫が施されている。これは、前記底面部と背面部のうちいずれか一方のみ相手材(梁材4又は後部の柱材2)と接合することにより、当該鋼製護岸棚12の底面部9全体が、前記底面用スクリーン材(山形鋼8a、フラットバー8b)8の両端部を拘束するピン(ボルト)を支点として回動できる限度内において平面方向にみて略平行四辺形状の如き変形を許容するためである。この変形は、鋼製護岸棚12を護岸位置の湾曲形状(河川の蛇行形状)に応じて良好に追従できる等の柔軟性(自在性)に富む配置が可能となり、現場対応を容易ならしめる利点がある。
また、本実施例では、前記下部の梁材4と前記底面用スクリーン材8との接合部(連結部)は、いずれか一方を河川の流れ方向(横方向)に長いルーズ孔としたピン連結構造で実施されている。いわゆる誤差を吸収可能(部材局部への応力集中回避可能)な構造とすることにより、鋼製護岸棚12を護岸位置の湾曲形状に応じて良好に追従できる等、より一層柔軟性に富む配置が可能となる。
なお、本実施例に係る底面部9の前端部(河川側)に山形鋼8aを配置した意義は、石礫等の中詰材13を効果的に堰き止めて良好な積み上げ状態を合理的に実現するのに適した形状と剛性を有するからである。その他、山形鋼8aの垂直部が、当該鋼製護岸棚12を設置する上で、河川の流れ方向に対する定規(出来形管理)的な役割を果たす意義もある。ちなみに、底面部9の前端部にフラットバー8bを配置する場合は、さらに前部の柱材1、1同士の下端部を連結するフラットバー8bを配置すれば、前記山形鋼8aを配置した場合と同様の効果(意義)を発揮することができる。
なお、本実施例に係る前記底面用スクリーン材8は、山形鋼8aとフラットバー8bとを併用しているがこれに限定されず、すべてを山形鋼8aで実施することもできるし、すべてをフラットバー8bで実施することもできる。その他、山形鋼8a又はフラットバー8bの代わりにエキスパンドメタルや金網を底面部9の面内に張設する手段で実施することもできる。
前記背面部11は、隣接する後部の柱材2、2同士の間に背面用スクリーン材10が配設されて構成されている。
前記背面用スクリーン材10は、本実施例では山形鋼10a、8aとフラットバー10bとを用いる。要するに、背面部11と底面部9との境界に位置する前記山形鋼8aは、底面用スクリーン材8の構成部材でもあるし、背面用スクリーン材10の構成部材でもある。
以上を踏まえ、前記背面用スクリーン材10は、前記後部の柱材2、2の上下の端部に山形鋼10a、8aが内向きに対向配置され、当該山形鋼10a、8a同士の間に、所要(例えば、仕切面部7及び底面部9と同じ125mm程度)の間隔をあけて複数本(図示例では5本)のフラットバー10bが略平行に配置され、当該背面用スクリーン材(山形鋼10a、8a、フラットバー10b)10の両端部が対応する後部の柱材(山形鋼)2のフランジ部を利用してピン連結構造(例えば、本実施例ではボルト接合)により接合され、もって背面部11が形成される。
前記鋼製護岸棚12の背面部11は、前記背面用スクリーン材(山形鋼10a、8a、フラットバー10b)10の両端部をピン連結構造で実施することにより、当該背面用スクリーン材10を拘束するピン(ボルト)を支点として回動できる限度内において正面方向にみて略平行四辺形状の如き変形を許容できる構成とされている。よって、鋼製護岸棚12に要求される地盤の不等沈下に追従して後部の柱材2を鉛直方向に変位させる等の柔軟性に富む配置が可能となり、現場対応を容易ならしめる利点がある。また、局部への応力集中による部材の破損等を生ずる不都合を未然に防止できる利点もある。
なお、本実施例に係る前記背面用スクリーン材10は、山形鋼10a、8aとフラットバー10bとを併用しているがこれに限定されず、すべてを山形鋼10a、8aで実施することもできるし、すべてをフラットバー10bで実施することもできる。その他、山形鋼10a、8a又はフラットバー10bの代わりにエキスパンドメタルや金網を背面部11の面内に張設する手段で実施することもできる。
上記構成の柔軟性に富む変形が可能な鋼製護岸棚12によれば、設置部位が湾曲している場合は、前記底面部9を当該湾曲形状に応じて変形させて安定した状態で配置することができ、不等沈下している場合は、前記背面部11を当該不等沈下形状に応じて変形させてガタつきなく安定した状態で配置することができる(例えば、図4参照)。よって、現場対応がスムーズで施工性に優れた設置作業を行うことができる。
ちなみに、図1に係る鋼製護岸棚12は、その両端部の仕切面部7について、別異の鋼製護岸棚(ユニット)を連続的に設置することを予定して上下の梁材3、4にCT形鋼を用いているが、CT形鋼の代わりに山形鋼を用いて実施することも勿論できる。
まとめると、前記自然石護岸工法の修景性に優れている利点と、前記石詰めかご護岸工法の洪水等の大きな流水に対しても河岸防護機能を発揮できる利点の双方を合わせ持つ、
環境性に優れた鋼製護岸棚構造体を実現することができる。
また、前記鋼製護岸棚12は、前面部及び上面部が一連に開口された構造なので、重機のバックホウによる中詰材13の修復(補充)作業の邪魔をする障害物は何ら存在しない。よって、前記自然石護岸工法と同様の簡易で単純な作業で修復できる。
例えば、設置部位の形態によっては、図6に示したように、鋼製護岸棚12を階段状に設けて実施することも勿論できる。
2 後部の柱材
3 上部の梁材
4 下部の梁材
5 側枠
6 仕切用スクリーン材
7 仕切面部
8 底面用スクリーン材
8a 山形鋼
8b フラットバー
9 底面部
10 背面用スクリーン材
10a 山形鋼
10b フラットバー
11 背面部
12 鋼製護岸棚
13 中詰材
14 鋼製護岸棚構造体
Claims (5)
- 河川側の前部に立設された柱材と、陸側の後部に立設された柱材と、当該前後部の柱材の上下端部同士を連結する上下部の梁材とで構成した側枠内に仕切用スクリーン材を設けてなる仕切面部が、護岸位置における河川の流れ方向に間隔をあけて複数個配置され、隣接する仕切面部同士の間は、下部の梁材同士の間に底面用スクリーン材が配設されて底面部が形成され、かつ後部の柱材同士の間に背面用スクリーン材が配設されて背面部が形成されることにより、前記隣接する仕切面部と前記底面部と前記背面部とで棚状に形成された鋼製護岸棚に、石礫等の中詰材が詰め込まれてなることを特徴とする、鋼製護岸棚構造体。
- 前記鋼製護岸棚は、前記仕切面部と底面部と背面部とを備えた鋼製護岸棚ユニットが河川の流れ方向に連続的に複数個配置され、相互に接続して一体化してなることを特徴とする、請求項1に記載した鋼製護岸棚構造体。
- 前記下部の梁材と前記底面部の底面用スクリーン材との連結部は、いずれか一方を河川の流れ方向に長いルーズ孔としたピン連結構造とすることにより、当該底面部が護岸の湾曲部位に沿って追従可能な構成とされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した鋼製護岸棚構造体。
- 前記仕切面部と底面部と背面部のうち、少なくとも仕切面部は、前記中詰材が通り抜けない隙間を形成したスクリーン構造とされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載した鋼製護岸棚構造体。
- 前記スクリーン材は、フラットバー、アングル材等の棒状部材であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載した鋼製護岸棚構造体。
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