JP6896328B2 - セルロースエステルからなる成形体 - Google Patents
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Description
特許文献1には、三酢酸セルロースなどからなる耐塩素性のRO膜(段落番号0031)を使用した水処理方法の発明が記載されている。
特許文献2には、酢酸セルロースからなる正浸透処理用の中空糸型半透膜の発明が記載されている。段落番号0017には、酢酸セルロースが殺菌剤である塩素に対する耐性があること、耐久性の点で三酢酸セルロースが好ましいことが記載されている。
特許文献4には、複数のアルキルアシル置換基および複数のアリールアシル置換基を含む位置選択的に置換されたセルロースエステルと光学フィルムの発明が記載されている。
Xがアシル基であるときの置換度が1.5〜2.9であり、
前記アシル基の80モル%以上が、置換基を有していてもよいベンゾイル基であり、
Xが水素原子であるときのヒドロキシル基の置換度が0.1〜1.5であるセルロースエステルからなる成形体を提供する。
前記アシル基の80モル%以上は、置換基を有していてもよいベンゾイル基である。耐塩素性と耐アルカリ性を共に高くするためには、置換基を有しているベンゾイル基の割合が高いほど良い。
nは20〜20,000の整数を示し、好ましくは40〜10,000の整数、より好ましくは60〜8,000の整数を示す。
Xが水素原子であるときのヒドロキシル基の置換度は0.1〜1.5であり、好ましくは0.2〜1.0であり、さらに好ましくは0.2〜0.8である。
Xが水素原子であるときのヒドロキシル基の置換度は1.5を超えると特に耐塩素性が劣るため好ましくない。
これらの中で、耐塩素性と耐アルカリ性が共に高く、且つ入手し易いことからベンゾイル基、パラ−メチルベンゾイル基、オルソ−メチルベンゾイル基、パラ−メトキシベンゾイル基、オルソ−メトキシベンゾイル基、ジメチルベンゾイル基から選ばれるものが好ましい。
前記炭素数2以上の脂肪族アシル基は、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、デカノイル基およびオクタデカノイル基から選ばれるものが好ましい。
前記炭素数5以上の芳香族アシル基は、ピロール環を有するアシル基、ピリジン環を有するアシル基、(ピコリニル基、ニコチニル基)およびナフタリン環を有するアシル基から選ばれるものが好ましい。
本発明の成形体は、半透膜、シート、発泡シート、トレイ、パイプ、フィルム、繊維(フィラメント)、不織布、袋を含む容器から選ばれるものが好ましい。
溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を挙げることができるが、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましい。
非溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールを挙げることができる。
塩類は、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグシウム、塩化カルシウムを挙げることができるが、塩化リチウムが好ましい。
セルロースエステルと溶媒の濃度は、セルロースエステル10〜35質量%、溶媒65〜90質量%が好ましい。
塩類は、セルロースエステルと溶媒の合計質量100質量部に対して、0.5〜2.0質量%が好ましい。
半透膜は、上記した製膜溶液を使用して、公知の製造方法、例えば特許第5418739号公報の実施例に記載の製造方法を利用して製造することができる。
半透膜は、中空糸膜、逆浸透膜や正浸透膜の分離機能膜または平膜が好ましい。
繊維(フィラメント)は、上記した製膜溶液を使用し、公知の湿式紡糸法または乾式紡糸法を適用して製造することができる。
不織布は、繊維を接着剤で積層する方法、熱融着により積層する方法で製造することができる。
トレイ、シート、パイプ、発泡シート、袋を含む容器は、第1のセルロースエステルと必要に応じて公知の樹脂用添加剤(可塑剤など)を混合した後、押出成形、ブロー成形、射出成形などの公知の成形法を適用して製造することができる。
攪拌機、冷却管を備えた丸底フラスコに、アンモニアを含有する水溶液900gを入れ、次にアセチル置換度が2.44の二酢酸セルロース100gを入れ、室温で攪拌した。
24時間後に、吸引ろ過により固形物を集め、セルロースを含むウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを、DMSO(N,N−ジメチルスルホキシド)300gに入れて、1時間室温で攪拌し、再度吸引ろ過を実施して固形物を集めた。
続いて、このセルロースを、塩化リチウム56gをDMAC(N,N−ジメチルアセトアミド)460gに溶解させた溶液に加えて、100℃で攪拌し、セルロースを溶解させた。
攪拌機、冷却管を備えた丸底フラスコに、上記のセルロース溶液を入れ、攪拌を開始した。攪拌を継続しながら、セルロースのヒドロキシ基に対して90モル%に相当する塩化ベンゾイルを滴下ロートから滴下した後、80℃に昇温し、攪拌を継続した。
得られた反応混合物を室温まで冷却し、攪拌しながらメタノールを加え、沈殿を形成させた。沈殿物を吸引ろ過により集め、粗セルロースベンゾエートのウエットケーキを得た。
得られたウエットケーキに、エタノールを加え、攪拌することにより洗浄し、脱液した。このエタノールによる洗浄操作をさらに3回繰り返した後、水で溶媒置換を行った。熱風乾燥機で乾燥させ、セルロースベンゾエートを得た。ベンゾイル基の置換度は2.7であった。
置換度は、1H−NMR及び13C−NMRにより確認した。DSC(示差走査熱量測定)による測定の結果、約220〜約255℃の範囲で幅広い融解ピークがあることを確認した。
セルロースのヒドロキシ基に対して80モル%に相当する塩化ベンゾイルを用いる以外は、製造例1と同様の方法で、セルロースベンゾエートを得た。ベンゾイル基の置換度は2.4であった。
DSC(示差走査熱量測定)による測定の結果、約170〜約255℃の範囲で幅広い融解ピークがあることを確認した。
セルロースのヒドロキシ基に対して73モル%に相当する塩化ベンゾイルを用いる以外は、製造例1と同様の方法で、セルロースベンゾエートを得た。ベンゾイル基の置換度は2.2であった。
製造例1〜3で得たセルロースベンゾエートを使用して、図1に示した装置を用い多孔状フィラメントを紡糸した。
丸底フラスコに所定量の溶媒のDMSOを仕込み、スリーワンモーターで攪拌しながら、セルロースベンゾエートの混合比率が20質量%になるように添加し、その後、オイルバス加温し、完全に溶解させた。
セルロースベンゾエート溶解液(ドープ)をサンプル瓶へ移液し、室温になるまで放冷し、脱気を行った。
先端に直径約0.5mm口径のノズルをセットした注射器1からシリンジポンプ2を用い、25℃の水を入れたジョッキ4に吐出し(注射液3)、DMSOを水で置換することにより、直径0.5mmの多孔状フィラメントを得た。シリンジポンプ2は、ラボジャッキ5で支持した。
得られた多孔状フィラメントは、水分を乾燥させないウェット状態のまま保管し、下記の表1に示す各測定をした。結果を表1に示す。
実施例1〜3と同様な方法で、ベンゾイル基の置換度が3.0であるセルロースベンゾエートを使用し、多孔状フィラメントを紡糸し、下記の表1に示す各測定をした。結果を表1に示す。
製造例1で得たセルロースベンゾエートを使用して、中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造した。
製膜溶液は、セルロースベンゾエート/DMSO/LiCl=21.0/78.0/1.0(質量%)を使用した。
製膜方法は、次のとおりである。
製膜溶液を105℃で十分に溶解し、これを二重菅型紡糸口金の外側から、80℃で吐出すると共に、内管から内部凝固液として水を吐出し、50℃の水槽中で凝固させ、洗浄槽で十分に溶剤を除去した。
得られた中空糸膜は、水分を乾燥させないウェット状態のまま保管して、表2に示す各項目を測定した。
置換度2.87の酢酸セルロース((株)ダイセル製)を使用し、中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm)を製造し、表2に示す各項目を測定した。
製膜溶液は、CTA/DMSO/LiCl=17.7/81.3/1.0(質量%)を使用した。
製膜方法は、次のとおりである。
製膜溶液を105℃で十分に溶解し、これを二重菅型紡糸口金の外側から、圧力0.4MPa、吐出温度95℃で吐出すると共に、内管から内部凝固液として水を吐出し、空気中を通過させた後、水槽中で凝固させ、6m/minの速度で引取った後、洗浄槽で十分に溶剤を除去した。
得られた中空糸膜は、水分を乾燥させないウェット状態のまま保管して、表2に示す各項目を測定した。
実施例1〜3、参考例1の多孔状フィラメント(直径=0.5mm,長さ10cm)または実施例4、比較例1の中空糸膜(内径/外径=0.8/1.3mm,長さ1m)をそれぞれ50本使用した。
有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を純水で希釈し、500ppmまたは1000ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液の試験液に用いた。有効塩素濃度は、柴田科学製ハンディ水質計AQUAB,型式AQ-102を使用し測定した。
50本の中空糸膜を試験液となる液温が約25℃の500ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液1Lを入れた蓋付ポリ容器に完全に浸かるように浸漬し、7日毎に新たに500ppmまたは1000ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整し、試験液を全量交換した。
また、7日毎に10本の中空糸を蓋付ポリ容器から取り出し、水道水で水洗後、水分を拭き取り湿った状態のまま「引張強さ」と「伸び」を測定した。結果を表1と表2に示す。
なお、各測定日の「引張強さ」と「伸び」をプロットして検量線を作成することで、各測定日(7日毎の測定日)の間の「引張強さ」と「伸び」を求めた。
実施例1〜3、参考例1の多孔状フィラメント(直径=0.5mm,長さ10cm)または実施例4と比較例1の中空糸膜をそれぞれ50本使用した。
1Lの純水にNaOHペレット(純度97%以上)を10g入れて溶解し、燐酸を用い、pH値を12.0に調整した。
50本の多孔状フィラメントまたは50本の中空糸膜を試験液となる液温が25℃のpH値12.0のアルカリ水溶液1Lを入れた蓋付ポリ容器に完全に浸かるように浸漬し、7日毎に新たにpH値12.0のアルカリ水溶液を調整し、試験液を全量交換した。
また、2時間、8時間、24時間、96時間、240時間で、それぞれ5本の多孔状フィラメントまたは5本の中空糸膜を蓋付ポリ容器から取り出し、水道水で水洗後、水分を拭き取り湿った状態のまま「引張り強さ」と「伸び」を測定した。なお、各測定時間の「引張強さ」と「伸び」をプロットして検量線を作成することで、各測定時間の間の「引張強さ」と「伸び」を求めた。
小型卓上試験機(島津製作所製EZ‐Test)を用いて、チャック間距離5cmになるようウェット状態の多孔状フィラメントまたは中空糸膜を一本ずつ挟んで、引張り速度20mm/minで測定を実施した。
500ppmまたは1000ppm次亜塩素酸ナトリウム水溶液や液温が25℃のpH値12のアルカリ水溶液に浸漬させていない多孔状フィラメントまたは中空糸膜の「引張り強さ」の値を基準として、その値が基準値の90%を下回る際の時間(日数または時間)を「引張り強さ」測定値の劣化状態から求めた。
なお、「引張り強さ」は、同じサンプルで5本測定した「引張り強さ」の最高値と最低値を除いた3本の平均値とした。結果を表1と表2に示す。表2の引張強さと伸びは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液またはアルカリ水溶液に浸漬していない中空糸膜の引張強さと伸びを示している。
Claims (2)
- 一般式(I)の構造式で示されるセルロースエステルからなる半透膜であって、
Xがアシル基であるときの置換度が2.2〜2.7であり、
前記アシル基の80モル%以上が、置換基を有していてもよいベンゾイル基であり、
前記置換基を有していてもよいベンゾイル基が、ベンゾイル基、パラ−メチルベンゾイル基、オルソ−メチルベンゾイル基、パラ−メトキシベンゾイル基、オルソ−メトキシベンゾイル基、およびジメチルベンゾイル基から選ばれるものであり、
Xが水素原子であるときのヒドロキシル基の置換度が0.3〜0.8であるセルロースエステルからなる半透膜。
- 一般式(I)の構造式で示されるセルロースエステルからなる繊維であって、
Xがアシル基であるときの置換度が2.2〜2.7であり、
前記アシル基の80モル%以上が、置換基を有していてもよいベンゾイル基であり、
前記置換基を有していてもよいベンゾイル基が、ベンゾイル基、パラ−メチルベンゾイル基、オルソ−メチルベンゾイル基、パラ−メトキシベンゾイル基、オルソ−メトキシベンゾイル基、およびジメチルベンゾイル基から選ばれるものであり、
Xが水素原子であるときのヒドロキシル基の置換度が0.3〜0.8であるセルロースエステルからなる繊維。
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