JP6896231B2 - 焼鈍処理が不要な圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

焼鈍処理が不要な圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、全ての軟磁性の粉粒体を原料として用い、粉粒体の集まりを塑性変形させずに圧縮成形し、成形体の焼鈍処理が不要となる製造方法で圧粉磁心を製造する。
圧粉磁心の製造方法は、表面を絶縁処理した軟磁性の粉粒体の集まりを圧縮成形し、この後、成形時に発生した粉粒体の残留歪を除去し、粉粒体の保持力を元に戻す焼鈍処理を行う。いっぽう、軟磁性の粉粒体は、絶縁被覆されることで電気抵抗が高まり、交流磁界での動作に際し、渦電流が軟磁性の粉粒体の内部に閉じ込められ、電磁変換時のエネルギー損失(以下では渦電流損失という)が抑制される。従って、絶縁被覆された軟磁性の粉粒体の絶縁抵抗が大きいほど渦電流損失は小さい。こうした圧粉磁心は、モータにおけるステーターやローターを構成する磁心、電源回路におけるリアクトルやノイズフィルターやチョークコイルなどを構成する磁心として、様々な工業製品に用いられている。
なお、軟磁性で導電性のMn・Zn系フェライトは、軟磁性材料の中で最も脆い金属酸化物からなる粉体で、成形時に加える加圧力が最も小さく、加圧によって加工歪は発生しない。このため、絶縁被覆されたMn・Zn系フェライトの集まりからなる成形体を、焼鈍処理する必要はない。本発明の趣旨は、焼鈍処理が不要な圧粉磁心の製造方法であり、焼鈍処理が不要となるMn・Zn系フェライトは、本発明における軟磁性の粉粒体からは除かれる。従って、本発明における軟磁性の粉粒体は、鉄粉と各種合金とからなる。
いっぽう、軟磁性の粉粒体は、透磁率が大きいほど粉粒体は磁化されやすく、圧粉磁心に磁気エネルギーが取り込みやすい。また、粉粒体の飽和磁束密度が大きいほど、磁化された圧粉磁心の磁気エネルギーは大きい。しかしながら、透磁率と飽和磁束密度との双方が大きい粉粒体は存在せず、相対的な大きさの比較になる。このため、粉粒体の製造コストと、粉粒体の性質に大きく依存する圧粉磁心の製造コストとを勘案し、工業製品に適応する圧粉磁心を決定し、軟磁性の粉粒体を選択する。従って、圧粉磁心の製造方法は、全ての軟磁性の粉粒体を原料として用いる製造方法が好ましい。
例えば、コバルト基アモルファスからなる材料は、軟磁性材料の中で透磁率が最も大きいが、飽和磁束密度はMn・Zn系フェライトに近い小さな値を持つ。一方、鉄基アモルファスからなる材料は、相対的に飽和磁束密度が大きいが、透磁率は相対的に小さい。また、鉄粉は軟磁性材料の中で飽和磁束密度が最も大きいが、透磁率が最も小さい。これに対し、ニッケル・鉄系合金の中で最も透磁率が大きいパーマロイ(Ni77%、Fe14%、Cu5%、Mo4%の組成からなる合金)は、透磁率と飽和磁束密度とが、軟磁性材料の中間的な値を持つ。また、鉄・シリコン・アルミニウム系合金の中で最も透磁率が大きいセンダスト(Fe9.6%、Si5.6%、その他がAlからなる合金)も、透磁率と飽和磁束密度との双方が、軟磁性材料の中間的な値を持つ。なお、最も安価な材料であるMn・Zn系フェライトは、透磁率が比較的大きい値を持つが、飽和磁束密度は最も小さい。また、Mn・Zn系フェライトは、合金ではなく金属酸化物の粉体に該当する。
こうした軟磁性材料に加え、アモルファス合金を急冷させた薄帯の新たな材料開発が行われている。例えば、鉄を主成分とし、シリコンとボロンとを加え、さらに、微量の銅とニオブとを加え、これらの組成からなる高温溶解液を100万℃/秒の速度で急冷させたアモルファス合金薄帯が開発されている。このアモルファス急冷薄帯は、透磁率と飽和磁束密度との双方が相対的に大きい材料である(特許文献1を参照)。さらに、透磁率の値がセンダストに近く、飽和磁束密度の値がケイ素鋼に近い、アモルファス合金からなる薄帯が開発されている。この材料は、高濃度の鉄に、ケイ素、ホウ素、リン、銅を加えた合金からなる材料である(特許文献2を参照)。
圧粉磁心は、圧縮成形時に発生した軟磁性の粉粒体の残留歪を除去するため、還元雰囲気の500−800℃で歪取り焼鈍を行う。つまり、加工歪によって粉粒体の保持力が増大し、これによって、圧粉磁心のヒステリシス損失(鉄損ともいう)が増大する。このため、還元雰囲気で粉粒体の歪取り焼鈍によって、粉粒体の保持力を元に戻す。従って、軟磁性の粉粒体を絶縁化させる材料は、歪取り焼鈍の温度に応じた耐熱性を有し、焼鈍温度が高くなるほど、高価な絶縁材料を使用する。さらに、圧粉磁心の飽和磁束密度は、粉粒体の飽和磁束密度のみならず、圧縮成形体の密度に大きく依存する。このため、硬い粉粒体を原料として用いる場合は、圧縮成形時の加圧力を増大させ、成形体の密度を粉粒体の密度に近づける。しかし、加圧力を高めるほど粉粒体の加工歪が増大し、これによって、歪取りの焼鈍温度が上昇し、焼鈍費用がさらに高まる。このように、歪取り焼鈍の処理費用が、圧粉磁心の製造コストを大きく左右する。
つまり、硬い粉粒体であるほど、圧縮成形体の内部に空孔が形成されやすく、圧縮成形体の密度が粉粒体の密度からかい離する。これによって、圧粉磁心の飽和磁束密度が低下する。また、粉粒体が硬いほど、より大きな加圧力が必要になり、これによって粉粒体の加工歪も増大し、歪取りの焼鈍温度が高まり、焼鈍費用が増大する。従って、圧粉磁心の製造コストは、軟磁性の粉粒体の硬さに大きく左右される。また、圧粉磁心の飽和磁束密度も、粉粒体の硬さに左右される。
例えば、脆い材料のMn・Zn系フェライトでは、圧縮成形体の密度はフェライト材料の真密度に近い。また、ビッカース硬度が75−87HVの値を持つアトマイズ鉄粉は、圧縮成形体の密度は鉄の密度の90%を超える。これに対し、ビッカース硬度が440−480HVであるセンダストでは、圧縮成形体の密度は、合金の密度の60%程度に抑制される。さらに、アモルファス合金からなる薄帯は、10万−100万℃/秒の速度で急冷させるため、硬度は高い。例えば、前記した鉄を主成分とし、シリコンとボロンとを加えたアモルファス合金薄帯のビッカース硬度は720HVと高く、圧縮成形体における合金密度からのかい離度は、前記したセンダストにおけるかい離度よりさらに大きい。
しかしながら、硬度が高いアモルファス合金からなる薄帯であっても、透磁率と飽和磁束密度との双方が、従来の軟磁性材料より相対的に大きい値を持てば、アモルファス合金からなる薄帯の製造コストが高くても、圧粉磁心の性能が大幅に向上すれば、工業製品として適応できる圧粉磁心の領域がある。
従って、圧粉磁心の製造方法は、軟磁性の粉粒体の硬度に関わらず、全ての粉粒体を原料として用い、圧粉磁心を製造する製造方法が好ましい。
特開2001−300697号公報 特開2016−094651号公報
ここで、新たな圧粉磁心の製造方法を実現する上での課題を整理する。
軟磁性の粉粒体は、前記したように様々な組成からなる材料で構成される。いっぽう、粉粒体の透磁率と飽和磁束密度との大きさ、粉粒体の製造コスト、粉粒体の性質が左右する圧粉磁心の製造コストとを勘案して、粉粒体が選択され、圧粉磁心が製造される。このため、全ての粉粒体を圧粉磁心の原料として用い、圧粉磁心を製造する製造方法が好ましい。従って、新たな圧粉磁心の製造方法は、次の2つの特徴を持つことが好ましい。
第一は、焼鈍処理が不要になる。つまり、粉粒体の硬さに関わらず、全ての粉粒体に加工歪が発生しない。これによって、圧粉磁心の製造費用は大幅に低減する。また、粉粒体の保持力が増大せず、圧粉磁心のヒステリシス損失が増えない。
第二は、圧縮成形体の密度が粉粒体の密度に近い。これによって、圧粉磁心の磁束密度は粉粒体の飽和磁束密度に近づき、ヒステリシス損失の低減とともに、圧粉磁心は理想的な磁気的な性能を持つ。
こうした2つの特徴を持つ圧粉磁心の製造方法を実現するには、次の3つの要件を持つ圧粉磁心の製造方法を実現することが必要になる。
第一に、絶縁被覆された粉粒体の集まりを、集積密度が高い粉粒体の集まりとして集積する。しかし、全ての粉粒体は、機械的に微粉砕する処理を伴って製造されるため、対称性に劣る形状であり、かつ、粒径分布を持つ。こうした粉粒体を単に集積しただけでは、隣接する粉粒体の間に間隙が形成され、集積した粉粒体の内部に、多くの空隙が形成される。この粉粒体の集まりを圧縮すると、成形体の内部に多くの空孔が形成され、成形体の密度は粉粒体の密度からかい離する。従って、粉粒体が隙間を埋めるようにして移動し、粉粒体が再配列し、集積密度が高い粉粒体の集まりに集積できれば、粉粒体の集まりを圧縮成形すると、成形体の内部に空孔が形成されにくい。
第二に、絶縁被覆された粉粒体の集まりを圧縮成形する際に、絶縁物が優先して破壊され、絶縁物の破壊が終了した時点で、圧縮成形の加圧力を停止する。この要件によれば、粉粒体に塑性変形による加工歪が発生しない。従って、粉粒体の硬度より低い絶縁物を用いることになる。さらに、破壊された絶縁物が成形体の空孔を埋めれば、成形体の密度が高まる。この結果、歪取り焼鈍処理が不要になり、粉粒体の保持力の増大によるヒステリシス損失の増大がなく、圧縮成形体の絶縁性が高まる、3つの作用効果がもたらされる。
第三に、絶縁物が圧縮成形体に占める体積割合が1%より低い。これによって、圧縮成形体の密度は粉粒体の密度に近づく。この結果、圧粉磁心の飽和磁束密度は、粉粒体の飽和磁束密度に近づく。
第一の要件は、絶縁物で被覆された粉粒体を集積する際に、粉粒体同士が接触し、この際に発生する摩擦力が発生しなければ実現できる。つまり、粉粒体に作用する摩擦力が、粉粒体が隙間を埋めるように移動して、粉粒体が再配列することを妨げる。従って、絶縁物で被覆された粉粒体同士が接触しても、摩擦力が発生しなければよい。しかしながら、固体の粒子同士が接触すれば、必ず固体の粒子の表面に摩擦力が発生する。これに対し、液体中で固体の粒子を集積する場合は、液体を介して固体の粒子同士が近づくため、固体の粒子は移動しやすく、固体の再配列は液体中で容易に行える。このため、液体中で粉粒体を再配列させる処理、例えば、粉粒体の集まりに振動を加えると、粉粒体は隙間を埋めるように移動して再配列し、集積密度が高い粒子の集まりとして集積する。従って、圧粉磁心を製造する新たな製造方法は、第一に、液体中で粉粒体の集まりを集積させ、集積した粉粒体の表面に絶縁物を形成する処理を実施する製法が必要になる。
第二と第三の要件は、いずれも絶縁物に関わる課題である。ところで、絶縁物を、粉粒体より硬度が低く、大きさが3桁小さい微粒子で構成すれば、2つの要件が同時に実現できる。すなわち、このような微粒子の集まりで粉粒体を覆い、この粉粒体の集まりを圧縮すると、微粒子の破壊が連続して進み、微粒子の破壊が限界になって、破壊が停止する段階で圧縮応力を停止する。これによって、粉粒体に塑性変形による加工歪は発生しない。また、成形体の内部の空孔は、極めて微細になった微粒子で埋められる。さらに、微粒子の破壊が限界まで進むことで、極めて微細な微粒子の集まりが粉粒体を覆うため、絶縁物が成形体に占める体積割合を1%より少なくすることが可能になる。この結果、粉粒体には加工歪が発生せず、圧縮成形体の密度が粉粒体の密度に近づき、圧縮成形体の絶縁性が増大する、3つの作用効果がもたらされる。従って、圧粉磁心を製造する新たな製造方法は、第二に、粉粒体の表面に、粉粒体より硬度が低く、大きさが3桁小さい絶縁性の微粒子を析出させ、この微粒子の集まりで粉粒体を覆う処理を実施する製法が必要になる。
いっぽう、従来の圧粉磁心の製造方法では、粉粒体の集まりを圧縮成形する際に粉粒体が塑性変形し、塑性変形した粉粒体同士が絡み合い、これによって、圧粉磁心に機械的強度が発現される。これに対し、新たな圧粉磁心の製法は、粉粒体を塑性変形させない。しかしながら、圧縮成形の際に、相対的に硬度が低い絶縁性の微粒子を、限界の大きさに破壊する応力を加える。さらに、圧縮応力を加えると、破壊された微粒子同士が摩擦力で接合し、また、破壊された微粒子が粉粒体の表面に摩擦力で接合する。こうした摩擦力による接合という新たな結合機構によって、圧粉磁心は一定の機械的強度を持つ。
以上に説明した新たな圧粉磁心の製造方法を実現させる上での課題が、本発明が解決しようとする課題であり、これらの課題を以下に整理する。
第一に、全ての粉粒体を原料として用い、液体中で粉粒体の集まりを処理し、集積密度が高い粉粒体の集まりとし、さらに、粉粒体の表面に絶縁物を形成する処理を実現する。第二に、粉粒体の表面に、粉粒体より硬度が低く、大きさが3桁小さい絶縁性の微粒子を析出させ、絶縁性の微粒子の集まりで粉粒体を覆う処理を実現する。第三に、粉粒体の液体中での処理から圧縮成形体の形成に至るまでの工程が、簡単な処理を連続して実施する製法である。これによって、著しく安価な製造費用で圧粉磁心が製造できる。第四に、製造する圧粉磁心の形状と大きさに制約がない製法である。これによって、全ての粉粒体を圧粉磁心の原料として用い、さらに、圧粉磁心の形状と大きさに制約がない汎用的な圧粉磁心の製法が実現できる。第五に、従来の圧粉磁心より、磁束密度と絶縁性とが増大し、ヒステリシス損失が減少する圧粉磁心を製造する製法を実現する。これによって、より優れた性能を持つ圧粉磁心が、より安価な費用で製造できる。本発明は、このような5つの課題が同時に解決される、圧粉磁心を製造する製造方法を実現することにある。
圧粉磁心を製造する製造方法は、絶縁性で、硬度が軟磁性の粉粒体より低く、粒子の大きさが前記軟磁性の粉粒体の平均粒径より3桁小さい、これら3つの特徴を兼備する金属酸化物の微粒子が、熱分解で析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液に、前記軟磁性の粉粒体の集まりを混合して懸濁液を作成する、この後、加熱機能と加振機能とを併設した混合機に前記懸濁液を充填し、該混合機を回転および揺動させた後に、上下左右に振動させ、前記粉粒体の集まりを前記アルコール分散液中で再配列させ、該粉粒体の集まりを、集積密度が高い粉粒体の集まりとして前記アルコール分散液に沈降させる、さらに、前記懸濁液を前記有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する熱処理を行い、該有機金属化合物の熱分解によって、前記粉粒体の平均粒径より3桁小さい金属酸化物の微粒子の集まりが前記粉粒体の表面に析出し、該金属酸化物の微粒子が前記粉粒体の表面を覆う、この後、該金属酸化物の微粒子で覆われた粉粒体の集まりを金型に充填し、該金型からの反発力が最大になるまで、徐々に増大する圧縮応力を該金型、前記金属酸化物の微粒子の破壊を進める、これによって、破壊が進行した金属酸化物の微粒子が前記金型内の空隙を埋め尽くし、該破壊が進行した金属酸化物の微粒子同士が摩擦熱で接合するとともに、該破壊が進行した金属酸化物の微粒子が前記粉粒体の表面に摩擦熱で接合し、前記金属酸化物の微粒子同士の接合によって接合された粉粒体の集まりからなる圧粉磁心が前記金型内に製造される、圧粉磁心の製造方法である。
本製造方法によれば、次の極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、金型内に圧粉磁心が製造される。第一に、有機金属化合物をアルコールに分散し、アルコール分散液を作成する。第二に、アルコール分散液に軟磁性の粉粒体の集まりを混合し、懸濁液を作成する。第三に、懸濁液を混合機に充填する。第四に、混合機を回転ないしは揺動させた後に、上下左右に短時間振動させる。第五に、混合機内の懸濁液を有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する。第六に、混合機内の粉粒体の集まりを金型に充填する。第七に、粉粒体の集まりに、有機金属化合物の熱分解で析出した金属酸化物の微粒子の破壊が終了するまで、徐々に増大する圧縮応力を加える。これら7つのいずれも簡単な処理を連続して実施すると、金型内に圧粉磁心が製造される。つまり、全ての処理が大気雰囲気で行われるため、連続処理が可能になる。また、金型の昇温温度は最高でも420℃で、従来の歪取り焼鈍に比べると低い。このため、安価な製造費用で圧粉磁心が製造される。
いっぽう、混合機内に充填された懸濁液には、次の現象が生じる。最初に、混合機を回転ないしは揺動させると、粉粒体は有機化合物のアルコール分散液中で、3次元的に攪拌され、粉粒体はランダムに混じり合う。この後、混合機を上下と左右とに短時間振動させると、粉粒体が隙間を埋めるように、アルコール分散液中で移動し、粉粒体が再配列し、集積密度が高い粒子の集まりになって、アルコール分散液中に沈む。
次に、混合機内に沈んだ粉粒体の集まりを、有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する。この際、昇温温度に応じて次の現象が起こる。アルコールの沸点に達すると、懸濁液からアルコールが気化し、粉粒体の表面に有機金属化合物の微細結晶が析出し、粉粒体は微細結晶の集まりで覆われる。なお、微細結晶の大きさは、熱分解で析出する金属酸化物の微粒子の大きさに近い。次に、有機金属化合物を構成する有機物の沸点に達すると、有機金属化合物が有機物と金属酸化物とに分解する。有機物の密度が金属酸化物の密度より小さいため、有機物が上層に金属酸化物が下層になるように析出し、上層の有機物が気化した後に、金属酸化物が10−100nmの間に入る粒状の微粒子として析出し、有機金属化合物の熱分解反応を終える。この結果、金属酸化物の微粒子より平均粒径が3桁大きい粉粒体の表面は、金属酸化物の微粒子の集まりで覆われる。いっぽう、有機金属化合物の熱分解が、粉粒体の表面を覆った状態で進むため、粉粒体の表面は外界に触れず、大気雰囲気の熱処理であっても、粉粒体は酸化されない。また、粉粒体に付着していた有機物からなる異物は、有機金属化合物が熱分解する際に、有機物の沸点に応じて気化し、粉粒体の表面が清浄化される。このため、粉粒体を予め洗浄する必要はない。
いっぽう、金属酸化物の微粒子が1%より少ない体積を占め、粉粒体が99%より多い体積を占めるよう、有機金属化合物を粉粒体に吸着させる。このため、アルコールへの有機金属化合物の分散濃度は低く、これによって、全ての粉粒体の表面が、アルコールで希釈された有機金属化合物の分散液と接触する。従って、アルコール分散液からアルコールを気化すると、全ての粉粒体の表面は有機金属化物の微細結晶で覆われる。この結果、全ての粉粒体の表面に金属酸化物の微粒子の集まりが析出する。
さらに、金属酸化物の微粒子で覆われた粉粒体の集まりを金型に充填し、金属酸化物の微粒子の破壊が終了するまで、徐々に増大する圧縮応力を加える。この際、金属酸化物の微粒子と粉粒体とに圧縮応力が加わる。粉粒体は金属酸化物の微粒子の集まりで覆われているため、粉粒体同士は直接接触せず、金属酸化物の微粒子同士が直接接触する。このため、硬度が相対的に低い金属酸化物の微粒子の破壊が優先して進み、より微細な微粒子になる。微粒子が破壊されると、破壊された微粒子に隣接する部位に、極微細な間隙が形成され、粉粒体と粉粒体を覆う微粒子が極僅かに移動する。さらに応力が増大し、微粒子の破壊が進み、また、粉粒体と粉粒体を覆う微粒子が極僅かに移動する。こうして、金属酸化物の微粒子が数ナノ程度の大きさになると、極微細な間隙が形成されなくなり、微粒子の破壊が終了する。なお、粉粒体が対称性に劣る形状で、大きさにも分布があるため、微粒子に加わる応力は均等ではなく、全ての微粒子が数ナノ程度の大きさに破壊されない。さらに応力が増大すると、破壊された微粒子同士が接触する局所的な部位に、過大な摩擦熱が発生し、接触部位が軟化し、接触部位で微粒子同士が接合する。同様に、破壊された微粒子が粉粒体の表面と接触する局所的な部位にも、過大な摩擦熱が発生し、接触部位が軟化し、粉粒体の全ての表面に微粒子が接合する。この結果、様々な大きさからなる金属酸化物の微粒子同士が接触部位で互いに接合し、また、粉粒体の表面と接触する微粒子が粉粒体に接合する。これによって、金型内の粉粒体の集まりは一定の機械的強度を持つ。さらに応力が増大すると、粉粒体の塑性変形が始まる。この段階で応力の印加を停止し、金型内に圧粉磁心が製造される。この圧粉磁心は、数ナノから十数ナノの様々な大きさからなる金属酸化物の微粒子が、数十個近くの数からなる微粒子が積層して粉粒体を取り囲み、また、僅かに数ナノ程度の大きさの空孔が存在する稠密構造として、金型内に形成される。また、金属酸化物の微粒子が1%より少ない体積で、粉粒体が99%より多い体積で圧粉磁心が形成されるため、圧粉磁心の密度は粉粒体に近い。なお、粉粒体の集まりの金型内における挙動は、圧縮応力を加えた際の金型が受ける反発力の大きさで判断でき、粉粒体の塑性変形が開始される際に反発力が最大となる。この時点で圧縮応力の印加を停止する。このため、粉粒体には加工歪は発生せず、粉粒体の保持力が増えないため、歪取り焼鈍処理が不要になる。
以上に説明した製造方法で製造した圧粉磁心は、次の作用効果をもたらす。
第一に、粉粒体の密度に近い圧粉磁心が製造できる。つまり、有機金属化合物のアルコール分散液中に粉粒体の集まりを分散させ、さらに、振動を加えて粉粒体を再配列させ、集積密度が高い粉粒体の集まりを形成させた。この粉粒体の集まりを熱処理し、金属酸化物の微粒子の集まりで粉粒体を覆った。このため、金型に充填される粉粒体の集まりは集積密度が高い。この粉粒体の集まりに、徐々に増大する加圧力を加えて圧縮し、硬度が相対的に低い金属酸化物の微粒子を限界まで破壊させ、圧縮成形体の空孔を極微小な微粒子で充填させた。また、圧粉磁心は、金属酸化物の微粒子が占める体積が1%より少なく、粉粒体が99%より多い体積を占めるよう、有機金属化合物を粉粒体に吸着させた。これらの処理によって、粉粒体の密度に近い圧粉磁心が製造できる。また、粉粒体を有機金属化合物のアルコール分散液中に分散させるため、粉粒体の材質、形状、大きさの制約は一切なく、全ての粉粒体を圧粉磁心の原料として用いることができる。
第二に、歪取り焼鈍処理が不要な圧粉磁心の製造方法である。つまり、粉粒体の塑性変形が始まる段階で、粉粒体に加える圧縮応力を停止させたため、粉粒体の塑性変形による加工歪が発生しない。これによって、歪取り焼鈍処理が不要になる。すなわち、従来は、絶縁体で覆われた粉粒体の集まりが形成する空孔に対し、過大な圧縮応力を粉粒体に加えて粉粒体を塑性変形させ、粉粒体の塑性変形で空孔の多くを埋めた。これに対し、本発明では、硬度が相対的に低い金属酸化物の微粒子が優先して破壊され、破壊された金属酸化物の微粒子の集まりが空孔を埋めるため、粉粒体を塑性変形させる必要性がない。これによって、硬度の如何に関わらず、全ての粉粒体を圧粉磁心の原料として用いられる。
第三に、安価な手段で粉粒体が絶縁化される。つまり、粉粒体を絶縁化させる原料が有機金属化合物で、汎用的な有機酸からなる有機金属化合物であるため、有機金属化合物の合成が容易で安価な工業用薬品である。また、絶縁材料は金属酸化物の微粒子であり、安価な有機金属化合物を、大気雰囲気で熱分解させて微粒子が生成されるため、安価な原料を用い、安価な処理費用で粉粒体が絶縁化される。
第四に、圧粉磁心を製造する製造方法が、簡単な7つの処理を大気雰囲気で連続して実施する製造方法である。このため、安価な製造費用で圧粉磁心が製造できる。
第五に、安価な圧粉磁心が連続して製造できる。つまり、複数の金型の各々金型が順番に、粉粒体の充填工程、粉粒体の昇温工程、粉粒体の圧縮工程を連続して移動する工法を採用すれば、圧粉磁心が連続して製造され、安価な圧粉磁心が連続して製造できる。
第六に、製造する圧粉磁心の形状と大きさに制約がない。つまり、粉粒体の集まりを充填する金型の形状に制約がないため、製造する圧粉磁心の形状と大きさに制約がない。
第七に、金属酸化物の微粒子と粉粒体との稠密構造で圧粉磁心が形成され、金属酸化物の微粒子が1%より少なく、粉粒体が99%より多い体積を占め、また、粉粒体に残留歪がないため、圧粉磁心は従来の圧粉磁心に比べ、磁束密度と鉄損と絶縁性とが優れる。
第八に、粉粒体の全ての表面に金属酸化物の微粒子が摩擦接合し、全ての金属酸化物の微粒子が互いに摩擦接合する、ミクロな接合で圧粉磁心を形成するため、従来の粉粒体の塑性変形によるマクロな接合に近い機械的強度が得られる。
以上に説明したように、本製造方法は、5段落に記載した5つの課題の全てを解決する圧粉磁心の製造方法である。これによって、本発明が解決すべき課題が解決された。
前記した圧粉磁心の製造方法、熱分解で金属酸化物の微粒子を析出する前記有機金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であ該カルボン酸金属化合物を熱分解で金属酸化物の微粒子を析出する有機金属化合物として用い、前記した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、前記した圧粉磁心の製造方法。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子になって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解によって金属酸化物を析出する。このため、7段落に記載した圧粉磁心の製造方法で、有機金属化合物としてカルボン酸金属化合物を用い、軟磁性の粉粒体をカルボン酸金属化合物の微細結晶で覆い、カルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、分子量が大きいカルボン酸からなるカルボン酸金属化合物は420℃で熱分解し、大きさが40−60nmの範囲に入る粒状の金属酸化物の微粒子の集まりが、粉粒体の表面に析出する。この結果、粉粒体の材質や大きさや形状に拘わらず、粉粒体の表面全体が金属酸化物の微粒子で覆われる。さらに、微粒子の破壊が終了するまで、粉粒体の集まりに圧縮応力を加えると、金型内に圧粉磁心が製造される。なお、カルボン酸金属化合物の大気雰囲気での熱分解は、窒素雰囲気での熱分解より30−50℃低いため、大気雰囲気での熱分解が、熱処理費用が安価で済む。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。
こうしたカルボン酸金属化合物として、2種類のカルボン酸金属化合物がある。その一つは、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物であり、熱分解で1種類の金属酸化物を析出する。このカルボン酸金属化合物に、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
他の一つは、不飽和結合を一つ持つモノ不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物である。このカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べ、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解で2種類の金属酸化物を析出する。モノ不飽和脂肪酸として、分子量の順に、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸などがあるが、モノ不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、オレイン酸金属化合物の合成が容易である。
また、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸金属化合物は、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となる飽和脂肪酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する。このため、飽和脂肪酸の中で分子量が大きいナフテン酸の金属化合物は、大気雰囲気の330℃で金属酸化物を析出する。また、モノ不飽和脂肪酸の中で分子量が大きいオレイン酸の金属化合物は、大気雰囲気の420℃で2種類の金属酸化物の微粒子が析出する。
以上に説明したように、7段落の圧粉磁心の製造方法において、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物を有機金属化合物として用いると、粉粒体は金属酸化物の微粒子の集まりで覆われる。
なお、鉄の酸化物であるマグネタイトFeを除く金属酸化物は、不純物を含まなければ絶縁性であり、酸化錫SnOと酸化チタンTiOとは、不純物として金属をドーピングすることで半導体性を持つ。従って、前記したカルボン酸金属化合物の熱分解で析出した多くの金属酸化物の微粒子は絶縁性である。
前記した圧粉磁心の製造方法前記した有機金属化合物の熱分解で析出する前記金属酸化物の微粒子が、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅の熱分解で析出する酸化第二銅の微粒子であ前記した有機金属化合物として、前記カプリル酸銅ないしは前記ナフテン酸銅を用い、前記した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、前記した圧粉磁心の製造方法。
つまり、前記した製造方法で圧粉磁心を製造するに当たり、軟磁性の粉粒体の表面を覆う1種類の金属酸化物の微粒子は、以下の5つの性質を兼備することが好ましい。これら5つの性質を兼備する金属酸化物に、酸化第二銅CuOと酸化第二亜鉛ZnOとがある。さらに、酸化第二銅は、酸化第二亜鉛より比抵抗が2桁大きく、安価な工業用薬品であるカプリル酸銅ないしはナフテン酸銅を熱分解すると、酸化第二銅の微粒子が析出する。
第一に、絶縁性の金属酸化物の微粒子である。
第二に、金属酸化物の微粒子は、9段落に記載した飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物の熱分解で析出する。なお、酢酸金属化合物の多くは、アルコールに溶解するため好ましくない。つまり、酢酸金属化合物は、金属イオンがアルコール中に溶出し、酢酸金属酸化物の熱分解で析出する金属酸化物の微粒子の量が極わずかになる。また、安息香酸金属化合物は、酸素イオンが金属イオンに近づいて配位結合して複核錯塩を形成するが、熱分解の途上において不安定な物質を生成する。このため、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、カプリル酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物が好ましい。
第三に、加水分解性を有する、あるいは、水との反応を伴う、アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる金属酸化物の微粒子は好ましくない。また、アルカリ金属とアルカリ土類金属からなるカプリル酸金属化合物の多くは、アルコールに溶解する。
第四に、粉粒体より硬度が低い微粒子が好ましい。なお、Mn・Zn系フェライトを除く軟磁性の粉粒体の中で最も硬度が低い材料は、ビッカース硬度が75−87HVの値を持つアトマイズ鉄粉であるため、アトマイズ鉄粉より硬度が低い微粒子が好ましい。
なお、金属酸化物の粒子は、酸化アルミ二ウムAl、酸化ケイ素SiO、酸化錫SnO、酸化クロムCr、酸化マグネシウムMgO、酸化チタンTiO、酸化マンガンMnO、酸化ニッケルNiOの順で硬度が高く、酸化ニッケルからなる粒子の硬度は、アトマイズ鉄粉の硬度に近い。
第五に、カプリル酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物が安価に合成できる。このため、銅を除く貴金属元素、白金族元素及び重金属元素からなるカルボン酸金属化合物は、高価な有機金属化合物であるため好ましくない。
なお、酸化鉄FeOは、絶縁性で脆い性質を持つが、熱力学的に不安定な物質で、高温で導電性のマグネタイトFeに徐々に変化する性質を持つため好ましくない。
以上に説明した5つの性質を兼備する軟磁性の粉粒体の表面を覆う1種類の金属酸化物に、酸化第二銅CuOないしは酸化第二亜鉛ZnOがある。さらに、酸化第二銅は、酸化第二亜鉛より比抵抗が2桁大きいため、酸化第二銅が優れた金属酸化物になる。また、酸化第二銅のモース硬度は3より若干小さく、モース硬度が4.5に相当するアトマイズ鉄粉より柔らかい材料である。この酸化第二銅は、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅の熱分解で析出する。これらのカルボン酸銅化合物は、いずれも合成が容易で、安価な金属酸化物の原料である。従って、安価なカプリル酸銅ないしはナフテン酸銅の熱分解で、軟磁性の粉粒体の表面を、酸化第二銅の微粒子の集まりで覆うことができる。
前記した圧粉磁心の製造方法、有機金属化合物の熱分解で析出する前記金属酸化物の微粒子が、オレイン酸銅の熱分解で析出する酸化第一銅と酸化第二銅とからなる2種類の微粒子であり、前記した有機金属化合物として、前記オレイン酸銅を用い、前記した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、前記した圧粉磁心の製造方法。
つまり、酸化第一銅CuOは、11段落で説明した5つの性質を兼備するとともに、酸化第二銅CuOより比抵抗が5桁高く、10−10Ωmの比抵抗を持つ絶縁材料である。また、酸化第一銅のモース硬度は3.5に相当し、アトマイズ鉄粉より柔らかい材料である。なお、オレイン酸銅の熱分解によって、酸化第一銅と酸化第二銅との2種類の微粒子が共存して析出するため、熱処理費用はカプリル酸銅ないしはナフテン酸銅の熱分解とさほど変わらない。このため、11段落で説明したカプリル酸銅ないしはナフテン酸銅を用いて絶縁化させた粉粒体の絶縁抵抗より、オレイン酸銅を用いて絶縁化させた粉粒体の絶縁抵抗のほうが大きい。いっぽう、オレイン酸銅は420℃で熱分解し、ナフテン酸銅が330℃で熱分解する。大気雰囲気での熱処理であるため、420℃での熱処理費用は、330℃の熱処理費用より多少高くなる程度に収まる。なお、オレイン酸銅が熱分解する過程において、粉粒体は、オレイン酸の熱分解温度である360℃まではオレイン酸銅の微細結晶で覆われ、420℃までは、オレイン酸からなる液状物質で覆われ、オレイン酸が気化した後は、酸化第一銅と酸化第二銅との微粒子とで覆われる。このため、大気雰囲気での熱処理でも、粉粒体は酸化されない。また、オレイン酸は、牛脂、豚脂等の油脂を加水分解した脂肪酸を液体酸と固体酸に分別後、得られた液体酸を蒸留し、全留出物を取得することにより製造される、汎用的な工業用の薬品である。このため、オレイン酸金属化合物は、合成が容易で、安価な金属酸化物の原料である。従って、安価なオレイン酸銅の熱分解によって、軟磁性の粉粒体の表面を、酸化第一銅と酸化第二銅との2種類の微粒子の集まりで覆うことができる。
酸化第二銅の粒状微粒子が、鉄粉同士の間隙を満遍なく埋め尽くしている状態を模式的に示した説明図である。
実施形態1
本実施形態は、酸化第二銅の微粒子を熱分解で析出する金属化合物に関する。
熱分解で金属酸化物の微粒子を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散する性質と、第二に粉粒体の表面で、金属酸化物の微粒子を析出する性質とを兼備する。以下の説明では、酸化第二銅CuOを析出する原料を例として説明する。
無機銅合物は、熱分解で酸化第二銅を析出しないため、アルコールに分散する有機銅化合物が好ましい。有機銅化合物から酸化第二銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機銅化合物を昇温するだけで、熱分解によって酸化第二銅が析出する。また、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。これら2つの性質を兼備する有機銅化合物に、カルボン酸銅化合物がある。
つまり、カルボン酸銅化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は銅イオンCu2+である。いっぽう、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合するカルボン酸銅化合物は、銅イオンと酸素イオンとの距離が最大になる。この理由は、銅の共有結合半径は115pmで、酸素の単結合の共有結合半径は63pmで、炭素の二重結合の共有結合半径は67pmであることによる。このため、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸銅化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。従って、熱分解で酸化第二銅を析出するカルボン酸銅化合物は、銅イオンCu2+と結合する酸素イオンOとの距離が短く、酸素イオンOが銅イオンCu2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。これによって、酸素イオンOが銅イオンCu2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、酸化第二銅とカルボン酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸銅化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンOが配位子になって銅イオンCu2+に近づいて配位結合するカルボン酸銅化合物がある。
また、カルボン酸銅化合物は合成が容易で、安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液と反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。カルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が生成される。さらに、カルボン酸の沸点が低いため熱分解温度が相対的に低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅化合物は、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸銅化合物として、酢酸銅、カプリル酸銅、安息香酸銅、ナフテン酸銅などがある。なお、酢酸銅は、アルコールに溶解するため好ましくない。また、安息香酸銅は、熱分解の途上においては不安定な物質を生成する。従って、酸化第二銅の原料として、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅が好ましい。
実施形態2
本実施形態は、酸化第一銅CuOの微粒子を熱分解で析出する金属化合物に関する。
酸化第一銅CuOは、15段落で説明した酸化第二銅CuOより、比抵抗が5桁高い絶縁材料で、また、モース硬度が3.5に相当し、モース硬度が4.5に相当するアトマイズ鉄粉より柔らかい。このため、15段落で説明した酸化第二銅の微粒子で絶縁化させた粉粒体より、酸化第一銅の微粒子で絶縁化させた粉粒体の絶縁抵抗のほうが大きい。
いっぽう、15段落で説明したように、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅は、熱分解で酸化第二銅の微粒子を析出し、合成が簡単な安価な工業用の薬品である。このため、酸化第二銅の微粒子原料として、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅が好ましい。
これに対し、モノ不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解で2種類の酸化銅、つまり、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとを析出する。また、モノ不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物の中で、オレイン酸銅は、合成が容易なカルボン酸銅化合物である。
従って、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅を用いて、酸化第二銅の微粒子で絶縁化させた粉粒体より、オレイン酸銅を用いて絶縁化させた粉粒体の絶縁抵抗のほうが大きい。また、酸化第一銅と酸化第二銅との双方が、アトマイズ鉄粉より柔らかい材料であり、酸化第一銅と酸化第二銅とからなる2種類の微粒子で覆われた粉粒体を圧縮すると、酸化第一銅と酸化第二銅とからなる2種類の微粒子が優先して破壊する。このため、オレイン酸銅を用いて製造した圧粉磁心は、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅を用いて製造した圧粉磁心における渦電流損失より小さい作用効果が得られる。
実施例1
本実施例では、酸化第二銅CuOの微粒子で覆われた鉄粉(例えば、株式会社神戸製鋼所のアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NH)の集まりを圧縮成形して、圧粉磁心を製造する。使用する鉄粉は、マンガン、リン、イオウの不純物が極めて微量で純度が高いため、飽和磁束密度に優れ、また、鉄粉の形状から圧縮性に優れ、490MPaの成形圧で、鉄の密度の90%に相当する7.08g/cmの成形密度が得られる。なお、アトマイズ鉄粉は、還元鉄粉のように、鉄粉自体に空孔が存在しない。また、有機銅化合物として、カプリル酸第二銅Cu(C15COO)(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。さらに、混合機は、遠赤外線によるヒータが内蔵され、回転による拡散混合と揺動による移動混合とを同時に行う装置(例えば、愛知電機株式会社のロッキングミキサーRMH−HT)で、さらに、混合機の下部に加振機を併設させた。
最初に、カプリル酸第二銅の24gを、1000ccのメタノールが充填された容器に混合し、分散液を作成した。この分散液にアトマイズ純鉄粉の2kgを混合し、懸濁液を作成した。この懸濁液を混合機に充填した。懸濁液に回転と揺動を同時に10分間加え、この後、左右方向と上下方向との振動を1分間加えた。さらに、ヒータを作動させて、290℃まで昇温し、290℃に1分間放置し、カプリル酸銅を熱分解した。この後、混合機内のカプセルを外し、カプセルから熱処理した懸濁液を取り出し、金型に充填した。
金型は外径が40mm、内径が25mm、高さが6mmのリング形状の成形体が成形される形状を持つ。この金型内の鉄粉の集りに、10MPa/分の昇圧速度で圧縮応力を加え、圧粉磁心を成形した。プレス機が受ける反発力が最大になった時点で昇圧を停止し、圧粉磁心を金型内に製作した。この後、金型から圧粉磁心を取り出した。なお、2kgの鉄粉の集まりに、24gのカプリル酸銅が熱分解して酸化第二銅の微粒子が覆うと、酸化第二銅の微粒子が圧粉磁心に占める体積割合は0.3%と極めて少ない。
次に、製作した圧粉磁心の試料の観察と分析を行なった。製作した圧粉磁心を厚み方向に2つに切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料が観察できる特徴を有する。
最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、切断面を観察した。5−15nmに及ぶ様々な大きさからなる粒状の微粒子が、鉄粉の間隙を満遍なく埋め尽くし、4nm以下の大きさからなる空隙が、ランダムに多くの場所で形成されていた。また、隣り合う鉄粉が近づく箇所で、30−40個の粒状微粒子が存在し、隣り合う鉄粉が離れた箇所では、50−100個の粒状微粒子が存在した。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。銅原子と酸素原子の双方が均一に分散して存在し、特段に偏在する箇所が見られず、1種類の酸化銅の粒状微粒子が、鉄粉の間隙を満遍なく埋め尽くしていることが確認できた。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、微粒子の結晶構造の解析を行なった。この結果、試料表面に形成された粒状微粒子が、酸化第二銅であることが確認できた。なお、EBSP解析機能とは、試料に電子線を照射したとき、反射電子が試料中の原子面によって回折されることによってバンド状のパターンを形成し、このバンドの対称性が結晶系に対応し、バンドの間隔が原子面間隔に対応しているため、このパターンを解析することで、結晶方位や結晶系を測定する機能をいう。図1に、切断面の一部を拡大した様子を模式的に示す。1は鉄粉で、2は酸化第二銅の微粒子である。
次に、製作した試料の圧粉体密度、比抵抗、磁束密度、鉄損を測定した。圧粉体密度は試料の寸法と重量を測定し、これらの値から算出した。比抵抗は四端子法で測定した。磁束密度は、製作した圧粉磁心に、直径が0.6mmのホルマル被覆導線を1次側に100巻、2次側に20巻したコイルを用い、磁界の大きさが10kA/mでの磁束密度Bで評価した。鉄損は、圧粉磁心に直径0.6mmのホルマル被覆導線を1次側に40巻、2次側に40巻したコイルを用いて、周波数が200−10kHz、磁束密度Bが0.2Tの条件で、住友金属テクノロジー株式会社の磁気特性測定装置を用いて測定した。なお、鉄損の数値は、励磁周波数が5kHz、励磁磁束密度が0.2Tの値で代表した。
製作した圧粉磁心は、鉄粉を塑性変形させていないにも関わらず、密度は7.24kg/mで、鉄の密度7.87kg/mに近く、従来のアトマイズ鉄粉からなる圧粉磁心に劣らない。比抵抗は72×10−4Ωmで、鉄粉の比抵抗の7.2×10倍であり、従来のアトマイズ鉄粉からなる圧粉磁心より10倍以上比抵抗が高い。磁束密度は2.0Tで、鉄粉の磁束密度2.2Tに近く、従来のアトマイズ鉄粉からなる圧粉磁心の磁束密度より優れる。鉄損は30W/kgで、磁気焼鈍した従来の圧粉磁心の6割程度に抑えられた。また、2mの高さから圧粉磁心を落下させても、圧粉磁心は破壊しなかった。
実施例2
本実施例では、鉄基アモルファス薄帯を微粉砕した合金粉(例えば、日立金属株式会社のファインメット)を、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとの2種類の微粒子で覆い、この合金粉の集まりを圧縮成形して、圧粉磁心を製造する。使用する合金粉は、鉄を主成分とし、シリコンとボロンと微量の銅とニオブとを添加し、高温の溶解液を単ロール法で、10℃/秒の速度で急冷固化させ、平均の厚みが18μmのアモルファス薄帯を作成し、さらに、アルゴンガス雰囲気で熱処理し、結晶粒径を10nm近くまで微細化させる。この後、平均粒径が80μmからなる微粒子に機械的に微粉砕した。なお、アモルファスの合金粉は、急冷固化させて製作したため、ビッカース硬度が720HVと硬い。また、飽和磁束密度と被透磁率との双方の磁気特性が優れ、双方の値はセンダストより大きい。いっぽう、有機銅化合物として、オレイン酸第二銅Cu(C1733COO)(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。なお、使用する混合機と金型は実施例1と同一である。
最初に、オレイン酸第二銅の44gを、1000ccのメタノールが充填された容器に混合し、分散液を作成した。この分散液に合金粉の1.9kgを混合し、懸濁液を作成した。次に、懸濁液を混合機に充填した。さらに、懸濁液に回転と揺動を同時に10分間加え、この後、左右方向と上下方向との振動を1分間加えた。さらに、ヒータを作動させ、420℃まで昇温し、420℃に1分間放置し、オレイン酸銅を熱分解した。この後、混合機内のカプセルを外し、カプセルから熱処理した懸濁液を取り出し、金型に充填した。なお、1.9kgの合金粉に44gのオレイン酸銅が熱分解して酸化第一銅と酸化第二銅との2種類の微粒子が合金粉を覆うと、微粒子が圧粉磁心に占める体積割合は、0.3%と少ない。次に、金型内の合金粉の集りに10MPa/分の昇圧速度で圧縮応力を加え、プレス機が受ける反発力が最大になった時点で昇圧を停止し、圧粉磁心を製作した。
次に、実施例1と同様に、製作した圧粉磁心の断面の観察と分析とを、電子顕微鏡を用いて行なった。実施例1と同様に、5−15nmに及ぶ様々な大きさからなる粒状の微粒子が、合金粉の間隙を満遍なく埋め尽くし、4nm以下の大きさからなる空隙が、ランダムに多くの場所で形成されていた。また、隣り合う合金粉が近づく箇所で、30−40個の粒状微粒子が存在し、隣り合う合金粉が離れた箇所では、50−100個の粒状微粒子が存在した。また、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した。この結果から、2種類の銅酸化物の粒状微粒子が2対1の割合で、ランダムに鉄粉の間隙を満遍なく埋め尽くしていた。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、微粒子の結晶構造の解析を行なった。この結果、粒状微粒子は、酸化第一銅と酸化第二銅との2種類の微粒子が、1対2の割合で析出していることが分かった。
次に、実施例1と同様に、試料の圧粉体密度、比抵抗、磁束密度、鉄損を測定した。
試料の密度は5.8kg/mで、合金粉の密度7.3kg/mの80%で、ビッカース硬度が720HVと高いにも関わらず、ビッカース硬度が440−480HVであるセンダストより、圧粉磁心における密度の合金密度からのかい離度は20%ほど小さい。また、比抵抗は18Ωmで、合金粉の比抵抗の1.5×10倍であり、実施例1における絶縁度の200倍高い絶縁性が得られ、酸化第一銅による絶縁効果が裏付けられた。磁束密度は0.98Tで、合金粉の磁束密度1.23Tの80%であり、試料の密度の合金密度からのかい離度を反映していた。コアロスは28W/kgで、実施例1における試料に近い値であった。また、2mの高さから落下させても、圧粉磁心は破壊しなかった。
以上の実施例の結果から次のことがわかる。第一に、密度が鉄粉ないしは合金粉の密度に近く、磁束密度が鉄粉ないしは合金粉の磁束密度に近いため、混合機内で振動を加えることで、鉄粉ないしは合金粉が再配列したことを裏付けている。特に、硬度が高い合金粉における効果が顕著である。第二に、実施例1における比抵抗が鉄粉の7.2×10倍であり、実施例2における比抵抗が合金粉の1.5×10倍であることから、酸化第一銅の微粒子の存在が、合金粉を絶縁化させることに多大な貢献をしている。第三に、鉄損が焼鈍処理を行った従来のアトマイズ鉄粉からなる圧粉磁心に比べ低下したことは、鉄粉に加工歪が存在しないことを裏付けている。これによって、磁気焼鈍の処理が不要になることが裏付けられた。従って、本発明の圧粉磁心の製造方法によれば、従来の圧粉磁心より著しく安価な圧粉磁心が製造できる。
以上に説明したように、鉄粉ないしは合金粉の平均粒径より3桁も小さく、鉄粉より硬度が低い酸化第二銅で鉄粉を覆い、ないしは、合金粉より硬度が低い酸化第一銅と酸化第二銅との微粒子で合金粉を覆い、鉄粉の集まりに、ないしは、合金の集まりに、徐々に増大する圧縮応力を加えると、次の現象が起こることが裏付けられた。鉄粉同士が、ないしは、合金粉同士が、直接接触しないため、酸化第二銅の微粒子の破壊が、ないしは、酸化第一銅と酸化第二銅との微粒子の破壊が先行して進み、これら微粒子の破壊によって形成された僅かな空隙を、鉄粉ないしは合金粉が、微粒子を伴って僅かに移動して空隙を埋める。また、酸化第二銅の微粒子が、ないしは、酸化第一銅と酸化第二銅との微粒子が圧粉磁心に占める体積割合は、0.3%と極めて少ない。これによって、圧粉磁心の密度と磁束密度とが高まった。次に、大きさが数ナノ程度になるまで微粒子の破壊が進み、鉄粉ないしは合金粉が様々な大きさからなる微粒子で隙間なく覆われ、空孔が数ナノの大きさに縮減される。これによって、圧粉磁心の絶縁抵抗が増大した。さらに、圧粉磁心を構成する鉄粉ないしは合金粉に加工歪が存在しないため、鉄損が低下した。また、全ての微粒子同士が摩擦接合するとともに、鉄粉ないしは合金粉の表面に微粒子が摩擦接合するため、圧粉磁心は必要な機械的強度を持った。
1 アトマイズ鉄粉 2 酸化第二銅微粒子

Claims (4)

  1. 圧粉磁心を製造する製造方法は、絶縁性で、硬度が軟磁性の粉粒体より低く、粒子の大きさが前記軟磁性の粉粒体の平均粒径より3桁小さい、これら3つの特徴を兼備する金属酸化物の微粒子が、熱分解で析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、該アルコール分散液に、前記軟磁性の粉粒体の集まりを混合して懸濁液を作成する、この後、加熱機能と加振機能とを併設した混合機に前記懸濁液を充填し、該混合機を回転および揺動させた後に、上下左右に振動させ、前記粉粒体の集まりが前記アルコール分散液中で再配列し、該粉粒体の集まりが集積密度が高い粉粒体の集まりとして前記アルコール分散液に沈降させる、さらに、前記懸濁液を前記有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する熱処理を行い、該有機金属化合物の熱分解によって、前記粉粒体の平均粒径より3桁小さい金属酸化物の微粒子の集まりが前記粉粒体の表面に析出し、該金属酸化物の微粒子が前記粉粒体の表面を覆う、この後、該金属酸化物の微粒子で覆われた粉粒体の集まりを金型に充填し、該金型からの反発力が最大になるまで、徐々に増大する圧縮応力を該金型、前記金属酸化物の微粒子の破壊を進める、これによって、破壊が進行した金属酸化物の微粒子が前記金型内の空隙を埋め尽くし、該破壊が進行した金属酸化物の微粒子同士が摩擦熱で接合するとともに、該破壊が進行した金属酸化物の微粒子が前記粉粒体の表面に摩擦熱で接合し、前記金属酸化物の微粒子同士の接合によって接合された粉粒体の集まりからなる圧粉磁心が前記金型内に製造される、圧粉磁心の製造方法である。
  2. 請求項1に記載した圧粉磁心の製造方法、熱分解で金属酸化物の微粒子を析出する前記有機金属化合物が、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であ該カルボン酸金属化合物を熱分解で金属酸化物の微粒子を析出する有機金属化合物として用い、請求項1に記載した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、請求項1に記載した圧粉磁心の製造方法。
  3. 請求項1記載した圧粉磁心の製造方法前記した有機金属化合物の熱分解で析出する属酸化物の微粒子が、カプリル酸銅ないしはナフテン酸銅の熱分解で析出する酸化第二銅の微粒子であ前記した有機金属化合物として、前記カプリル酸銅ないしは前記ナフテン酸銅を用い、請求項1に記載した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、請求項1記載した圧粉磁心の製造方法。
  4. 請求項1記載した圧粉磁心の製造方法、有機金属化合物の熱分解で析出する前記金属酸化物の微粒子が、オレイン酸銅の熱分解で析出する酸化第一銅と酸化第二銅とからなる2種類の微粒子であ前記した有機金属化合物として、前記オレイン酸銅を用い、請求項1に記載した圧粉磁心の製造方法に従って圧粉磁心を製造する、請求項1記載した圧粉磁心の製造方法。
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