JP7482412B2 - 圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、チョークコイル及びトランス等のインダクタに用いられる圧粉磁心、及び当該圧粉磁心の製造方法に関する。
近年、車両におけるライティングのアプリケーションとしてLED(Light Emitting Diode)が注目されている。例えば、欧州では日中の車両の利用時にデイライトの使用が義務化されるなど、今後、常時点灯のライティングが必要となることが予想される。このような常時点灯のライティングを考えた場合、低消費電力の観点などからLEDは、優れたアプリケーションといえる。
LEDの駆動回路として、電源電圧を調整するための昇降圧回路、及び、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)回路等が用いられる。これらの回路には、チョークコイル及びトランス等のインダクタが使用される。
従来、インダクタとして、直流重畳特性の優位性などから、金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂を混合して得られる複合磁性材料を圧縮成形して作製される圧粉磁芯を適用したインダクタが知られている。例えば、特許文献1には、上記の圧粉磁心にコイルが埋設された磁性素子(つまり上記のインダクタ)が開示されている。
特開2002-305108号公報
ところで、上記従来の磁性素子などでは、圧粉磁心として十分な性能を有しない場合がある。本開示は、上記に鑑みて、より高性能な圧粉磁心等を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る圧粉磁心は、金属磁性体粉末と、熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂とは異なる電気絶縁材と、を備え、前記電気絶縁材は、アルミナ及びシリカから構成されるアルミナファイバである。
また、本開示の一態様に係る圧粉磁心の製造方法は、金属磁性体粉末及び電気絶縁材を混合する第1ステップと、混合された金属磁性体粉末及び電気絶縁材に熱硬化性樹脂を添加して混合する第2ステップと、加圧成型する第3ステップと、を含み、前記第1ステップでは、アルミナ及びシリカから構成されるアルミナファイバであって、10以上かつ14以下のアスペクト比を有する長尺状のアルミナファイバを、前記電気絶縁材として用いる。
本開示によれば、より高性能な圧粉磁心等が提供される。
図1は、実施の形態に係る圧粉磁心を含む電気部品の構成を示す概略斜視図である。 図2Aは、実施の形態に係る圧粉磁心の第1SEM観察画像である。 図2Bは、実施の形態に係る圧粉磁心の第2SEM観察画像である。 図3は、実施の形態に係る圧粉磁心の製造方法を示すフローチャートである。 図4Aは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加効果を説明する第1図である。 図4Bは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加効果を説明する第2図である。 図5Aは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加に対する透磁率への効果を説明する図である。 図5Bは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加に対する耐電圧性能への効果を説明する図である。
(開示に至った知見)
圧粉磁心は、金属磁性体粉末間の絶縁性を得るために、金属磁性体粉末に電気絶縁材を添加し、さらにこれらを結着させるために粘着性を有する樹脂材料を添加して乾燥処理を施した後に加圧成形することで作製される。圧粉磁心の磁気特性を高めるためには、金属磁性体粉末の粒子同士の距離を近接させることが重要となる。つまり、金属磁性体粉末を密に充填することが重要となる。
上記のための方策の一つとして、樹脂材料及び電気絶縁材の添加量を減少させることが挙げられる。これによれば、金属磁性体粉末の粒子間に配される樹脂材料及び電気絶縁材が少なくなり、金属磁性体粉末の充填率が向上され、高い透磁率を有する圧粉磁心が得られる。
しかしながら、電気絶縁材の添加量を減少させると、金属磁性体粉末の粒子間における絶縁破壊が生じる電圧が低下する。言い換えると、電気絶縁材の添加量の減少に応じて、圧粉磁心の耐電圧性能が低下する。すなわち、このような圧粉磁心は、高い透磁率を示すものの、耐電圧性に欠ける。一方で、電気絶縁材の増加は、透磁率の低下を招く。このように、圧粉磁心の透磁率と耐電圧性能との間にはトレードオフの関係が存在する。
本開示によれば、金属磁性体粉末に混合される電気絶縁材をアルミナファイバとすることで、このようなトレードオフの関係によらず、圧粉磁心の透磁率及び耐電圧性能を優位に両立できる圧粉磁心が提供される。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップ及びステップの順序等は一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
[構成]
まず、本開示の実施の形態における圧粉磁心の使用例としての電気部品について、図1を参照して説明する。図1は、実施の形態に係る圧粉磁心を含む電気部品の構成を示す概略斜視図である。図1では、後述する圧粉磁心10の概形を示し、さらに、圧粉磁心10の内部を透過して示している。例えば、圧粉磁心10に埋設されることで隠れたコイル部材40等の構成要素は、破線で示されており、圧粉磁心10を透過して見えることを表現している。
図1に示すように、電気部品100は、圧粉磁心10と、コイル部材40と、第1端子部材25と、第2端子部材35と、を備える。
電気部品100は、一例として、直方体のメタルコンポジットであり、圧粉磁心10の形状によって、およその外形が決定されている。なお、圧粉磁心10は、加圧成形によって任意の形状に形成できる。つまり、圧粉磁心10の加圧成形時における形状によって、任意の形状の電気部品100を実現できる。
電気部品100は、さらに具体的には、インダクタであり、第1端子部材25及び第2端子部材35間を流れる電気エネルギーをコイル部材40によって磁気エネルギーとして蓄える受動素子である。本実施の形態では、圧粉磁心10の使用例の一つとして電気部品100を説明するが、圧粉磁心10は、単に磁性材料として使用することができ、本実施の形態の電気部品100に使用例が限定されるものではない。圧粉磁心10は、高い磁気特性(具体的には高い透磁率)と、高い強度を併せ持つ磁性材料の特性を活用可能な所望の用途に用いられてもよい。
ここで、図2Aは、実施の形態に係る圧粉磁心の第1SEM観察画像である。図2Aでは、加圧成型前の圧粉磁心中間生成物10aの断面をSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて観察した画像を示している。また、図2Bは、実施の形態に係る圧粉磁心の第2SEM観察画像である。図2Bでは、加圧成型後の圧粉磁心10の断面を、SEMを用いて観察した画像を示している。
図2A及び図2Bに示すように、本実施の形態における圧粉磁心10は、図中にグレーの粒形物として確認される金属磁性体粉末11と、金属磁性体粉末11の周囲を覆うように配置された熱硬化性樹脂と、アルミナファイバとを含んで構成される。なお、アルミナファイバは、例えば、図2A中の右向き白抜き矢印で示す濃グレーの長尺状の粒子、及び、図2B中の左向き白抜き矢印で示す濃グレーの粒子等である。
金属磁性体粉末11には、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、又はFe-Si-Cr-B系の金属磁性体粉末が用いられる。金属磁性体粉末11は、フェライトなどの磁性体粉末と比較して飽和磁束密度が大きいため大電流下での使用において有用である。
例えば、Fe-Si-Al系の金属磁性体粉末を用いる場合、組成元素はSiが8重量%以上かつ12重量%以下、Alの含有量が4重量%以上かつ6重量%以下、ならびに、残りの組成元素がFe及び不可避な不純物からなる。ここで、不可避な不純物とは例えば、Mn、Ni、P、S、C等が挙げられる。金属磁性体粉末11を組成する組成元素の含有量を上記の組成範囲とすることで、高い透磁率と低い保磁力が得られる。
例えば、Fe-Si系の金属磁性体粉末を用いる場合、組成元素はSiの含有量が1重量%以上かつ8重量%以下、ならびに、残りの組成元素がFe及び不可避な不純物からなる。なお、不可避な不純物は上記と同様である。
例えば、Fe-Si-Cr系の金属磁性体粉末を用いる場合、組成元素は、Siが1重量%以上かつ8重量%以下、Crの含有量が2重量%以上かつ8重量%以下、ならびに、残りの組成元素がFe及び不可避な不純物からなる。なお、不可避な不純物は上記と同様である。
例えば、Fe-S-Cr-B系金属磁性体粉末を用いる場合、組成元素は、Siが1重量%以上かつ8重量%以下、Crの含有量が2重量%以上かつ8重量%以下、ならびに、残りの組成元素がFe及び不可避な不純物からなる。なお、不可避な不純物は上記と同様である。
上記の金属磁性体粉末11の組成元素におけるSiの役割としては、磁気異方性、及び磁歪定数を小さくし、また電気抵抗を高め、渦電流損失を低減させる効果を付与することである。組成元素におけるSiの含有量を1重量%以上とすることで、軟磁気特性の改善効果を得ることができ、8重量%以下とすることにより、飽和磁化の低下を抑制して直流重畳特性の低下を抑制することができる。
また、金属磁性体粉末11にCrを含有させることにより、耐候性を向上させる効果を付与することができる。組成元素におけるCrの含有量を2重量%以上とすることで、耐候性改善効果を得ることができ、8重量%以下とすることにより、軟磁気特性の劣化を抑制することができる。
これらの金属磁性体粉末11の平均粒子径は、例えば、5.0μm以上かつ35μm以下である。耐電圧性能の確保の観点からは、粒子間での電界集中を緩和させるため、金属磁性体粉末11の平均粒子径を小さく構成するほうが好ましく、上記の平均粒子径とすることにより、高い充填率を確保することができる。また、金属磁性体粉末11の平均粒子径を35μm以下とすることにより、高周波領域においてコアロスを小さく、特に渦電流損失を小さくすることができる。なお、金属磁性体粉末11の平均粒子径は、レーザー回折散乱法等を用いて測定される。
また、本実施の形態では、熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及び、シリコーン樹脂等から選択される。以降では、熱硬化性樹脂がシリコーン樹脂であるものとして説明する。
アルミナファイバは、電気絶縁材として作用される繊維状の物質であり、先に説明した熱硬化性樹脂とは別の物質として、圧粉磁心10に含まれる。アルミナファイバは、塩基性塩化アルミニウムとシリカを反応させた際に生成される。本実施の形態では、アルミナとシリカとの比が、80:20~97:3の範囲のアルミナファイバが使用されている。アルミナファイバは、一般的に耐熱性が高く、電気絶縁材として用いることで、金属磁性体粉末11の粒子間の絶縁性を確保する他、圧粉磁心10が高温条件で使用される際の安定性が向上される。
本実施の形態では、繊維径が略5μmかつアスペクト比が10~14程度(繊維長が50~70μm)であるアルミナファイバが用いられている。なお、ここでのアスペクト比とは、粒子の最小長さに対する最大長さの比である。上記した金属磁性体粉末11の粒子径に対して、アルミナファイバの繊維長が十分に長く(例えば3倍等)、混合によってアルミナファイバが金属磁性体粉末11を容易に被覆できる。また、金属磁性体粉末11の隣接する粒子同士を被覆する繊維が絡み合うことで、金属磁性体粉末11の粒子間のギャップを縮め、金属磁性体粉末11をより高密度に充填できる。
また、本実施の形態に用いられるアルミナファイバは、ヤング率が1.02×10kgf/mm、引張強度が153kgf/mmである。これらの数値は、タルク等、一般に電気絶縁材として用いられる物質よりも小さいため、加圧成形によって形が崩れる。つまり、図2A及び図2Bに示すように加圧成形の前後において1/2~1/5倍程度にサイズが変化して圧粉磁心10内に分散される。これにより、アルミナファイバは、少ない添加量で金属磁性体粉末11の高密度充填と耐電圧性能との両立を可能にする。
再び図1を参照して、圧粉磁心10は、第1端子部材25及び第2端子部材35がそれぞれに形成される矩形の対向面を有し、各々の対向面の4つの辺が天面、底面、及び2つの側面によって接続された略四角柱の形状である。本実施の形態では、底面及び天面が14.0mm×12.5mmの寸法を有する矩形形状であり、底面から天面までの離間距離が8.0mmである。
コイル部材40は、絶縁膜によって被覆された長尺の導体である導線が巻回され(巻回部)、導線の両端が第1端子部材25及び第2端子部材35にそれぞれ接続されている(リード部20及び30)。本実施の形態では、導線として断面の直系が0.65mmの丸導線を用いるものとして説明する。なお、導線の太さ及び形状に特に限定はなく、巻回加工等が可能な太さであれば、丸導線及び断面が矩形状の平角導線等を適宜選択して用いることができる。巻回部は、圧粉磁心10の中心付近に埋設される。また、リード部20及び30では、導線の両端の各々が、対向面の各々へと、巻回部から対向面に向かって連続的に延び、圧粉磁心10の外部へと突出している。ここで、リード部の一部は、偏平形状になるように展伸されており、対向面及び底面に沿うように折り曲げられている。このように展伸された箇所は、絶縁膜の被覆がはがされ、外部と電気的な接続が可能となっている。
第1端子部材25、及び第2端子部材35は、リン青銅材や銅材などの導体板からなる。第1端子部材25、及び第2端子部材35の各々は、対向面に沿う中央付近に凹部を有し、圧粉磁心10内に陥入するように構成される。この凹部の外側に、リード部20及び30が配設され、リード部20及び30と、第1端子部材25及び第2端子部材35とが電気的に接続される。リード部20及び30と、第1端子部材25及び第2端子部材35とは抵抗溶接などで接続されている。また、第1端子部材25及び第2端子部材35は、圧粉磁心10の内部に向けて差し込まれるように折り曲げられており、当該折り曲げ箇所が圧粉磁心10に差し込まれた状態で、第1端子部材25及び第2端子部材35と圧粉磁心10とが固定されている。
また、第1端子部材25及び第2端子部材35は、リード部20及び30とともに圧粉磁心10の底面に沿うように折り曲げられている。これにより、リード部20及び30を、第1端子部材25及び第2端子部材35によって保持しながら電気部品100の底下側にとりまわしている。つまり、リード部20及び30を、電気部品100が実装される実装基板等のランド(図示せず)に直接接続できる。
なお。第1端子部材25及び第2端子部材35は、必須の構成要素ではない。リード部20及び30が単独で形状を維持する強度を有していれば第1端子部材25及び第2端子部材35が備えられなくてもよい。
[製造方法]
次に、上記した圧粉磁心10の製造方法について図3を参照して説明する。図3は、実施の形態に係る圧粉磁心の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態における圧粉磁心10の製造では、まず、所定の組成元素を含む金属磁性体粉末11を準備する(準備ステップS101)。次いで、金属磁性体粉末11と、電気絶縁材とを混合する(第1ステップS102)。混合によって、金属磁性体粉末11と電気絶縁材とが略均一に分散した状態で、熱硬化性樹脂を添加し、さらに混合を行う(第2ステップS103)。
第2ステップS103では、熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂をIPA(Isopropyl Alcohol)等の溶剤に対してあらかじめ溶解させた状態で、金属磁性体粉末11と電気絶縁材との混合物に添加し、混合(混錬)する。熱硬化性樹脂の混錬では、未硬化状態の樹脂材料を乳鉢、ミキサー、ボールミル、V型混合機、及び、クロスロータリー等で混合することで実施される。
このようにして混合された混合体を、65℃以上かつ150℃以下の温度で加熱することで溶剤を蒸発させ、粉砕して成形性の良い複合磁性材料を得る。さらに、この複合磁性材料を分級して粒子サイズを所定範囲のサイズに揃えた混合粉末を得ることにより、成形性をより向上させることができる。
以上のようにして得られた混合粉末を金型に投入し、所望の形状に加圧成形を行うことで、圧粉磁心10を得る(第3ステップS104)。第3ステップS104では、加圧力3~7ton/cmの範囲内で加圧成型が行われる。金属磁性体粉末11を圧縮成形して作製される圧粉磁芯は、コイルが埋設された電気部品100として用いられ、7ton/cmより加圧力を大きくすれば、コイル部材40を構成する導線間の耐電圧性能が低下する。また、3ton/cmより加圧力が小さければ、金属磁性体粉末11の充填密度が小さくなり透磁率が低下する。
以上に説明したように、電気絶縁材であるアルミナファイバが金属磁性体粉末11を覆いながら粒子崩壊して分散することで、金属磁性体粉末11の粒子間における絶縁性、即ち、圧粉磁心10における耐電圧性能を確保することができる。また、アルミナファイバが崩壊することで、金属磁性体粉末11の充填が高密度に行えるため、高い透磁率を有する圧粉磁心10を実現できる。加えて、アルミナファイバが元来有する高耐熱性を付与することができ、高温条件において使用される際にも安定性が高い圧粉磁心10を実現できる。
以下では、さらに、上記実施の形態に基づく、圧粉磁心10の実施例を詳細に説明する。
(実施例)
以下の実施例では、金属磁性体粉末11として平均粒子径が10μmのFe-Si-Cr系の金属磁性体粉末を用いた圧粉磁心10について説明する。
金属磁性体粉末100g対して、電気絶縁材及びシリコーン樹脂を図4Aに示す添加量で混合して混合粉末を作製した。図4Aは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加効果を説明する第1図である。なお、図4Aの第1カラムには、Noとして検体番号の他、比較例を区別するための「*」を付しており、例えば、検体番号1の圧粉磁心は「*」が付された比較例に係る圧粉磁心であることを示している。以上は、後述の図4Bにおいても同様である。
作製した混合粉末を室温下にて4ton/cmの加圧力にて加圧成形を行い、透磁率の評価用として、外径14.0mm、内径10.0mm及び厚み2.00mmのリングコアを作製した。また、耐電圧性能の評価用として、長さ10mm、幅10mm及び厚み0.5mmの成形体を作製した。さらに、150℃の温度条件で2hの乾燥を行い、熱硬化性樹脂を硬化させることで、本実施例における圧粉磁心10を作製した。なお、図4Aに示すように、電気絶縁材としてアルミナファイバを混合した実施例に係る圧粉磁心10の他に、電気絶縁材を含まない比較例に係る圧粉磁心、及び、電気絶縁材としてタルク又はマイカを混合した比較例に係る圧粉磁心をそれぞれ同様の方法で作製した。
[透磁率の算出]
透磁率は、各圧粉磁心を用いて作製した電気部品について、LCRメーターを用いて0AでのインダクタンスLを測定し、下記の式1より初透磁率μiとして算出することにより求めた(測定周波数100kHz)。
μi=(L×le)/(μ0×Ae×n) ・・・(1)
なお、leは実効磁路長、μ0は真空の透磁率、Aeは断面積、及び、nは測定用コイルの巻き数をそれぞれ示す。
[耐電圧性能の評価]
耐電圧値の測定では、作製した圧粉磁心を両主面に配した導電性ゴムで挟み、初期値10VのDC電圧を印加し、以降5V/minのペースで連続的に印加電圧値を上昇させ、絶縁破壊が生じた直前の印加電圧値を成形体の厚みで割った値(V/mm)を各圧粉磁心の耐電圧値とした。上記耐電圧値の測定を、作製した圧粉磁心に対して行った場合(以下、初期の耐電圧値ともいう)、及び、作製した圧粉磁心に対して150℃の温度条件で1000hの高温負荷試験を処した後に行った場合(以下、熱処理後の耐電圧値ともいう)の2条件で行った。各圧粉磁心について、初期の耐電圧値に対する熱処理後の耐電圧値の変化率を算出して、耐電圧性能を評価した。
[結果]
本実施例において作成された各圧粉磁心の試験結果を図4B、図5A及び図5Bを参照して説明する。図4Bは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加効果を説明する第2図である。図4Bでは、第2カラムに算出された透磁率、及び、第3カラムに測定された耐電圧値等をそれぞれ列挙している。なお、図4Bに示す第3カラムは、測定された初期の耐電圧値及び熱処理後の耐電圧値、ならびに、耐電圧性能の評価のための耐電圧値の変化率をそれぞれ示すサブカラムから構成される。
また、図5Aは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加に対する透磁率への効果を説明する図である。図5Aは、図4Bの第2カラムにおける検体番号2~検体番号8に対応するアルミナファイバの添加率と透磁率との関係を示している。また、図5Bは、実施の形態に係るアルミナファイバの添加に対する耐電圧性能への効果を説明する図である。図5Bは、図4Bの第3カラムにおける熱処理後の耐電圧値を示すサブカラムの検体番号2~検体番号8に対応するアルミナファイバの添加率と耐電圧値との関係を示している。
検体番号1の比較例に係る圧粉磁心は、電気絶縁材を含まず、金属磁性体粉末11及び熱硬化性樹脂のみを混合して作製した圧粉磁心である。図4Bに示すように、検体番号1の圧粉磁心では、初期の耐電圧値に対する熱処理後の耐電圧値が35%以上の大幅な変化率を示していることがわかる。
一方で、検体番号2~検体番号8の実施例に係る圧粉磁心10は、検体番号1の圧粉磁心に比べ、初期の耐電圧値に対する熱処理後の耐電圧値の変化率が、略1/3程度に抑えられている。また、検体番号9~検体番号15の比較例に係る圧粉磁心は、検体番号1の圧粉磁心に比べると、変化率が多少低い値に抑えられているものの、実施例に係る圧粉磁心10に比べると、2~3倍程度大きい変化率であることがわかる。
繊維状の電気絶縁材を用いることで、金属磁性体粉末11が容易に被覆され、ナノオーダーレベルの粒子間ギャップが形成できること、及び、アルミナファイバの有する耐熱性によって高温にさらされた際にも安定した耐電圧性能を維持できることから上記の結果が得られたものと推察される。
また、検体番号2~検体番号8の実施例に係る圧粉磁心10では、アルミナファイバの添加量が増加するにつれて透磁率の減少がみられるものの、検体番号9~検体番号15の比較例に係る圧粉磁心に比べて、等量の電気絶縁材の添加であれば、アルミナファイバの方が優位であることがわかる。つまり、実施例に係る圧粉磁心10は、比較例に係る圧粉磁心に比べ、耐電圧性能及び透磁率の両観点においてより高性能であるといえる。
繊維状の電気絶縁材を用いることで、金属磁性体粉末11が容易に被覆され、金属磁性体粉末11の隣接する粒子同士を被覆する繊維が絡み合うこと、及び、アルミナファイバがセラミックアルミナよりも引張強度が小さく加圧成形時に均一に崩壊して、高密度充填と耐電圧性能とを両立できるものと推察される。
なお、図5A及び図5Bに示すように、アルミナファイバの添加量の増加に伴って圧粉磁心10の透磁率が減少すること、及び、アルミナファイバの添加量の増加に伴って圧粉磁心10の耐電圧値が上昇することがわかる。少なくともアルミナファイバの添加効果が認められた検体番号2の圧粉磁心10では、図2Bと同様の加圧成型後の断面のSEM観察画像を用いた画像解析の結果から、アルミナファイバが占める面積占有率が0.16%より大きい0.17%であることが判明している。同様に、少なくともアルミナファイバの添加効果が認められた検体番号8の圧粉磁心10では、図2Bと同様の加圧成型後の断面のSEM観察画像を用いた画像解析の結果から、アルミナファイバが占める面積占有率が8.27%より小さい8.26%であることが判明している。
以上から、加圧成型後の圧粉磁心10のSEM観察画像において、アルミナファイバが占める面積占有率が0.16%より大きく、8.27%より小さい範囲において少なくともアルミナファイバの添加効果が認められることがわかる。なお、上記範囲を外れる場合においても、アルミナファイバの添加による効果が認められる圧粉磁心は、本開示に含まれ得る。
[効果等]
以上、本実施の形態に係る圧粉磁心10は、金属磁性体粉末11と、熱硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂とは異なる電気絶縁材と、を備え、電気絶縁材は、アルミナ及びシリカから構成されるアルミナファイバである。
このような圧粉磁心10では、加圧成型の際にアルミナファイバが崩壊して分散され、金属磁性体粉末11の粒子間に配置される。アルミナファイバは崩壊して小径化される。このように小径のアルミナファイバ粒子によって金属磁性体粉末11の粒子間が絶縁されるとともに、粒子間のギャップをナノオーダーレベルに維持する。つまり、アルミナファイバは、金属磁性体粉末11の粒子間のギャップを小さくし、かつ、粒子間における絶縁性を確保するため、透磁率及び耐電圧性能に優れた圧粉磁心10が得られる。
また、例えば、圧粉磁心10の断面における電気絶縁材の面積占有率は、0.16%より大きく、8.27%より小さくてもよい。
これによれば、適切な添加量でアルミナファイバを含む圧粉磁心10を形成できる。よって、適切なアルミナファイバの含有率の範囲内でより高性能な圧粉磁心10を実現できる。
また、本実施の形態に係る圧粉磁心10の製造方法は、金属磁性体粉末11及び電気絶縁材を混合する第1ステップS102と、混合された金属磁性体粉末11及び電気絶縁材に熱硬化性樹脂を添加して混合する第2ステップS103と、加圧成型する第3ステップS104と、を含み、第1ステップS102では、アルミナ及びシリカから構成されるアルミナファイバであって、10以上かつ14以下のアスペクト比を有する長尺状のアルミナファイバを、電気絶縁材として用いる。
これによれば、アスペクト比10以上かつ14以下のアルミナファイバを、加圧成型によって崩壊させることで、金属磁性体粉末11の粒子間に分散させることができる。よって、小径のアルミナファイバ粒子によって金属磁性体粉末11の粒子間が絶縁されるとともに、粒子間のギャップをナノオーダーレベルに維持する。つまり、アルミナファイバは、金属磁性体粉末11の粒子間のギャップを小さくし、かつ、粒子間における絶縁性を確保するため、透磁率及び耐電圧性能に優れた圧粉磁心10が得られる。
(その他の実施の形態等)
以上、本開示の実施の形態等に係る圧粉磁心について説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記した圧粉磁心を用いたコイル部品についても、本発明に含まれる。コイル部品としては、例えば、高周波用のリアクトル、インダクタ、トランス等のインダクタンス部品等が挙げられる。また、上述したコイル部品を備えた電源装置についても、本発明に含まれる。
また、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
本開示に係る圧粉磁心は、高周波用のインダクタ、トランスの磁心の材料等に適用できる。
10 圧粉磁心
10a 圧粉磁心中間生成物
11 金属磁性体粉末
20、30 リード部
25 第1端子部材
35 第2端子部材
40 コイル部材
100 電気部品

Claims (2)

  1. 金属磁性体粉末と、
    熱硬化性樹脂と、
    前記熱硬化性樹脂とは異なる電気絶縁材と、を備える圧粉磁心であって
    前記電気絶縁材は、アルミナシリカから生成されたアルミナファイバであり、
    前記圧粉磁心の断面における前記電気絶縁材の面積占有率は、0.16%より大きく、8.27%より小さい
    圧粉磁心。
  2. 金属磁性体粉末及び電気絶縁材を混合する第1ステップと、
    混合された金属磁性体粉末及び電気絶縁材に熱硬化性樹脂を添加して混合する第2ステップと、
    加圧成型する第3ステップと、
    を含み、
    前記第1ステップでは、アルミナシリカから生成されたアルミナファイバであって、10以上かつ14以下のアスペクト比を有する長尺状のアルミナファイバを、前記電気絶縁材として用いる
    圧粉磁心の製造方法。
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