JP6146889B2 - 表面を絶縁化させた磁性粉の製造方法 - Google Patents
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Description
圧粉磁心の課題は、いずれも磁性粉を絶縁化させる絶縁物の課題である。つまり、絶縁物に係わる次の課題が解決できれば、圧粉磁心の課題が解決される。1.加圧成形する際に加圧力を増大しても、磁性粉の表面に結合させた絶縁物が剥がれず、また、破壊されない。これによって、圧粉磁心の渦電流損失が低減され、磁性粉の高密度化によって圧粉磁心の機械的強度と磁束密度とが増大する。2.磁性粉の表面に結合させた絶縁物が、ごく薄い絶縁層として形成できる。これによって、加圧成形時に磁性粉の塑性変形が妨げられず、磁性粉の高密度化によって、圧粉磁心の機械的強度と磁束密度とが増大する。3.600℃以上の焼鈍でも絶縁物が熱分解あるいは変質せず、磁性粉の絶縁性が維持できる。これによって、圧粉磁心の渦電流損失とヒステリシス損失とが低減できる。
こうした絶縁物の課題に対し、これまで様々な取り組みがなされてきたが、前記した課題を同時に解決するには困難を伴う。例えば、成形時に印加する圧力の増大で、成形体の磁束密度の増大と強度の増大が同時に可能になるが、磁性粉に加工歪が残り、成形体のヒステリシス損失が増大する。このヒステリシス損失を低減させるには、焼鈍による磁性粉の加工歪を除去するのが有効であるが、絶縁物は600℃以上の焼鈍によって、熱分解あるいは変質し、磁性粉の絶縁性が確保できないという問題をもたらす。
従って、磁性粉を加圧成形する際に絶縁層が剥がれず、また、破壊されず、600℃以上の高温でも熱分解あるいは変質しない絶縁物を、磁性粉の表面全体に強固に固着させることが必要になる。このような技術の取り組みとして、例えば、特許文献1に、アトマイズ鉄粉ないしはアトマイズ合金粉の表面に酸化物の層を積極的に形成し、その上にアルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾルや金属アルコキシド溶液を吸着させ、750℃以上の不活性ガスや還元性ガスの雰囲気で熱処理し、アトマイズ粉の表面に形成した酸化物の層と後処理で形成した絶縁物の層とを反応させる技術が開示されている。また、特許文献2には、鉄粉の表面にフッ化マグネシウムMgF2となる原料を塗布し、5×10−5 トールの減圧下で600℃の熱処理を行い、鉄粉の表面にMgF2の絶縁層を形成した事例が記載されている。
つまり、圧粉磁心に用いられる磁性粉としてアトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉などがある。これらの磁性粉に、安価な処理費用で前記した4つの性質を兼備する理想的な絶縁層を形成させることができれば、圧粉磁心は様々な分野に適応拡大することができる。しかしながら、前記した特許文献1および2におけるように、特殊の環境下で高価な材料を用い、分断された複数の処理工程で磁性粉を絶縁化する方法では、アトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉の特徴である汎用性が失われる。磁気特性にすぐれ、量産技術によって大量に製造されるアトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉が、安価な処理費用で大量の粉が容易に絶縁化できれば、絶縁化されたアトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉が、様々な分野に適応拡大できる。なお、本発明における絶縁化させる磁性粉は、もちろんアトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉に限定されることはなく、磁気を有する磁性粉であれば容易に絶縁化できる。また、圧粉磁心への適応に限定されることはなく、絶縁化された磁性粉を圧縮成形して使用する、あるいは、高温環境下で使用する工業製品などに適応できる。
第一に、比抵抗が106Ωmの絶縁物質である。このため、マグへマイトを磁性粉の表面に磁気吸着させれば磁性粉は絶縁体になる。ちなみに、鉄の比抵抗は10−7Ωmであり、渦電流損失は比抵抗に反比例するので、絶縁化された鉄の渦電流損失は著しく小さくなる。
第二に、強磁性であるフェリ磁性の性質を持つ。このため、マグへマイトは磁性粉に強固に磁気吸着し、圧縮成形時に磁性粉に圧力を加えても、磁気吸着したマグへマイト微粒子の集まりは磁性粉の表面から剥がれない。これによって、圧縮成形された磁性粉の絶縁性は保たれる。マグへマイトは強磁性の性質を持つ唯一の絶縁物質であるため、自らが磁性粉に強固に磁気吸着することで、自ずと磁性粉の表面は絶縁層になる。このため、磁性粉の表面に絶縁層を結合させるために行う事前の処理は一切不要になる。
第三に、450℃近辺でヘマタイトに相転移する。このため、450℃以上の焼鈍によって、マグへマイトはヘマタイトに相転移する。なお、この相転移は不可逆変化である。ヘマタイトは107Ωmの比抵抗を持つ物質であり、焼鈍によって磁性粉の絶縁性がさらに一桁向上し、渦電流損失はさらに低減する。ヘマタイトは極めて安定した酸化物、つまり、不動態であり、融点である1566℃に近い耐熱性を有する。このため、600℃以上の焼鈍によってもヘマタイトの性質は変わらない。また、焼鈍時においても不動態であるため、磁性粉との拡散現象などの反応が一切起らず、磁性粉の変質をもたらさない。ちなみに、鉄の融点は1535℃である。なお、ヘマタイトは化学式がα−Fe2O3で表され、酸化鉄Fe2O3のアルファ相であり、弱強磁性の性質を持ち、磁気キュリー点が950℃である。従って、焼鈍後においても、弱い磁気吸着力であるが、ヘマタイトが磁性粉に磁気吸着する。
なお、焼鈍によって磁性粉の成形体のヒステリシス損失が低下する現象は、圧縮成形時に磁性粉に加えられた加工歪が、焼鈍によって除去されることで磁性粉の保持力が低下することによる。しかし、焼鈍の熱処理温度が高くなりすぎると磁性粉が再結晶化し、この再結晶によって結晶粒が細粒化して保持力が増大し、ヒステリシス損失が再び増大する。純鉄に近い磁性粉を圧縮した成形体では、600−700℃での焼鈍によって磁性粉に加えられた加工歪が除去され保持力が低下する。600−700℃の焼鈍によって、マグへマイトがヘマタイトに相転移して磁性粉の絶縁性は1桁高まる効果をもたらす。ヘマタイトは極めて安定した酸化物の不動態であるため、焼鈍後においても安定した絶縁性を維持する。もちろん、ヘマタイトが1500℃を超える耐熱性を有し、かつ安定な不動態であるため、さらなる高温による焼鈍によっても安定した絶縁性を維持する。
第四に、モース硬度が6.5で、鉄ないしは鉄系の合金より著しく硬い物質である。このため、圧縮成形時に圧力が加えられてもマグへマイトは破壊されない。従って、圧縮成形時において、マグへマイト微粒子は磁性粉の表面に強固に磁気吸着した状態を維持し、この状態でマグへマイトより硬度が小さい磁性粉が塑性変形する。これによって、磁性粉同士が絡み合って磁性粉同士が結合するため、磁性粉の表面はマグへマイト微粒子の集まりによって絶縁性を維持しつつ、成形体の密度の増大によって、成形体の磁束密度と機械的強度が増大する。
以上に説明したように、マグへマイトは、磁性粉の表面を絶縁化する物質として優れた諸性質を持つ理想的な物質であり、磁性粉を絶縁化させる物質として極めて好適である。
また、本特徴手段によれば、粒状のマグへマイト微粒子の集まりを磁性粉の表面に磁気吸着させるため、効率よく磁性粉の表面が絶縁化できる。また、マグへマイトは強磁性体であるため、一旦磁性粉に磁気吸着した微粒子は、微粒子であるが故に剥がすことが困難になる。これによって、圧縮成形時にマグへマイト微粒子の集まりは磁性粉から剥がれない。また、表面に磁気吸着した微粒子は、粒状の微粒子であるが故に、圧縮成形時において磁性粉の塑性変形を阻害することがなく、塑性変形した磁性粉同士のからみ合いで成形体の機械的強度と磁束密度とが増大する。さらに、マグへマイトが粒状の微粒子であるため、極薄い絶縁層が磁性粉の表面に形成できる。これによって、加圧成形された成形体に占める磁性粉の体積が相対的に増大し、圧縮成形体の磁束密度の低下が抑えられる。このように、マグへマイトが粒状の微粒子であることによって、マグへマイトからなる絶縁層はさらに様々な優れた作用効果をもたらす。
さらに、本特徴手段によれば、熱分解によって酸化鉄FeOを生成する有機鉄化合物を磁性粉に吸着させ、有機鉄化合物が吸着した磁性粉を大気中で熱処理し、有機鉄化合物の熱分解によって酸化鉄FeOを磁性粉の表面に析出させ、さらに昇温して、酸化鉄FeOをマグへマイトに酸化することで、粒状のマグへマイト微粒子の集まりが磁性粉の表面に強固に磁気吸着して磁性粉が絶縁化される。すなわち、熱分解によって酸化鉄FeOを生成する有機鉄化合物を溶媒に分散させ、この分散液に磁性粉の集まりを混合し、この後、溶媒を気化させると、全ての磁性粉の表面に有機鉄化合物が吸着する。この有機鉄化合物が吸着した磁性粉の集まりを、大気雰囲気で熱処理する。熱処理温度が、有機鉄化合物を構成する有機物の沸点を超えると、有機物と酸化鉄FeOに熱分解する。さらに熱処理温度が上がると、有機物は気化熱を奪って気化する。いっぽう、酸化鉄FeOは、2価の鉄イオンFe 2+ が3価の鉄イオンFe 3+ になる酸化反応が、温度上昇に伴って進む。この2価の鉄イオンFe 2+ が3価の鉄イオンFe 3+ になる酸化反応の初期においては、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe 2+ の一部が3価の鉄イオンFe 3+ になるためマグネタイトになる。つまり、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe 2+ の一部が3価の鉄イオンFe 3+ になってFe 2 O 3 になり、組成式がFeO・Fe 2 O 3 のマグネタイトFe 3 O 4 になる。さらに、2価の鉄イオンFe 2+ が3価の鉄イオンFe 3+ になる酸化反応が進むと、酸化鉄FeOの全てがマグネタイトFe 3 O 4 になる。さらに酸化反応が進むと、マグネタイトFeO・Fe 2 O 3 を構成するFeOにおける2価の鉄イオンFe 2+ の全てが3価の鉄イオンFe 3+ になって酸化鉄Fe 2 O 3 に酸化する。この酸化鉄Fe 2 O 3 は、マグネタイトFe 3 O 4 と同様の立方晶系の結晶構造をとるため、酸化鉄Fe 2 O 3 はガンマ相のマグへマイトγ−Fe 2 O 3 になる。ちなみに、酸化鉄Fe 2 O 3 のアルファ相であるヘマタイトα−Fe 2 O 3 は三方晶系の結晶構造をとる。こうした昇温に伴って起こる2価の鉄イオンFe 2+ が3価の鉄イオンFe 3+ になる酸化反応が磁性粉の表面で進行するため、マグへマイトは磁性粉の表面に微粒子として析出して強固に磁気吸着する。なぜならば、有機鉄化合物を磁性粉の表面に吸着させたからである。こうして、有機鉄化合物を大気中で熱処理するだけの極めて簡単な手段で、莫大な数からなる磁性粉の表面にマグへマイト微粒子の集まりが磁気吸着し、このマグへマイト微粒子の集まりによって全ての磁性粉の表面が同時に絶縁化される。これよって、従来に比べ格段に安価な費用で絶縁化された磁性粉が大量に製造できる。なお、酸化鉄FeOからマグへマイトへの酸化反応が完了した後に更に昇温させると、マグへマイトがヘマタイトに相転移する。ヘマタイトは弱強磁性であるため、フェリ磁性のマグへマイトに比べ磁性粉への磁気吸着力が著しく低下し、磁性粉を加圧成形する際にヘマタイト微粒子は磁性粉の表面から脱落する。このため、酸化鉄FeOからマグへマイトへの酸化反応が完了した時点で昇温は終了させる。酸化鉄FeOから酸化鉄Fe 2 O 3 への酸化反応を確実に進め、かつ、マグへマイトからヘマタイトへの相転移を防ぐため、有機物が気化した後においては、熱処理における昇温速度は抑えればよい。
つまり、本特徴手段によれば、極めて簡単な連続した4つの製造工程からなる1回の製造タクトで、大量の磁性粉の集まりからなる磁性粉について、全ての磁性粉の表面にマグへマイトが磁気吸着し、磁性粉の表面が絶縁化される。従って、安価な製造費用で、大量の磁性粉の集まりが同時に絶縁化できる。
すなわち、第1の製造工程は、有機鉄化合物を容器に充填し、これに有機溶媒を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、有機鉄化合物が有機溶媒に分散された分散液が作成できる。第2の製造工程は、容器に磁性粉の集まりを加え、容器内の分散液を撹拌するだけの工程である。これによって、有機鉄化合物の分散液に磁性粉が分散された懸濁液が作成できる。第3の製造工程は、容器の温度を有機溶媒の沸点まで昇温するだけの工程である。これによって、全ての磁性粉の表面に有機鉄化合物が吸着する。第4の製造工程は、大気雰囲気において、容器の温度を酸化鉄FeOが酸化鉄Fe 2 O 3 に酸化する反応が完了する温度まで昇温するだけの工程である。これによって、容器内にある全ての磁性粉の表面にマグへマイトが磁気吸着し、磁性粉がマグへマイトによって絶縁化される。
さらに、本製造方法では、有機鉄化合物の熱分解で生成されるマグへマイトは、酸化鉄FeOの酸化によって生成されるため、針状粒子ではなく粒状粒子として析出する。このため、マグへマイトの粒状微粒子からなる絶縁層は、前記で説明した様々な優れた作用効果をもたらす。
なお、従来技術では、マグへマイトγ−Fe 2 O 3 は針状粒子として生成される。つまり、硫酸第一鉄ないしは硫酸第二鉄をアルカリ性の水溶液中で大気を送り込みながら反応させると、針状粒子であるゲータイトと呼ばれる水酸化鉄α−FeOOHが析出する。ゲータイトを、水素ガスの雰囲気で一度脱水させてヘマタイトα−Fe 2 O 3 とし、さらに還元してマグネタイトFe 3 O 4 を生成する。この後、マグネタイトを大気中でゆっくりと加熱酸化させると針状のマグへマイト粒子が生成される。針状のマグへマイト粒子を用いて磁性粉の表面を絶縁化させる場合は、粒状粒子より多くの針状粒子を磁性粉の表面に結合させる必要があり、針状粒子による絶縁層が厚くなる。また、マグへマイトが磁性粉より硬い物質で、また、針状粒子は粒状粒子よりアスペクト比、つまり幅に対する長さの比率が大きくなるため、針状粒子からなる絶縁層は、圧縮成形時における磁性粉の塑性変形を妨げる。このため、圧縮成形された磁性粉の機械的強度と磁束密度とは、粒状粒子を用いて絶縁化させた場合に比べ低下する。さらに、針状のマグへマイトを生成する製造工程は、粒状のマグへマイトを生成する製造工程に比べて多くの工程を要し、かつ、分断された複数の製造工程から構成されるため製造費用が高くなる。このように、磁性粉の表面を絶縁化させる事例では、粒状微粒子は針状微粒子に比べ格段に作用効果が優れる。
また、カルボン酸鉄ないしはアセチルアセトン鉄は、汎用的なカルボン酸ないしは汎用的な有機物と鉄との化合物であり、合成が簡単で安価な工業用薬品である。安価な工業用薬品を磁性粉に吸着させ、この磁性粉を大気中で熱処理するだけで磁性粉が絶縁化されるため、従来に比べ格段に安価な製造費用で絶縁化された磁性粉の集まりが製造できる。
本発明に係わる磁性粉を絶縁化させる実施形態1は、カルボン酸鉄の一種であるナフテン酸鉄Fe(C6H5COO)2を用いて、磁性粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させる実施形態である。ナフテン酸鉄は、ナフテン酸C6H5COOHの2分子が鉄と反応して容易に生成されるカルボン酸鉄であり、ナフテン酸を構成するカルボキシル基COOHの水素イオンが容易に乖離し、水素イオンが乖離した酸素イオンの部位に2価の鉄イオンが結合した物質で、構造式はC6H5COO−Fe−OOCC6H5で表さられる。
図1に、ナフテン酸鉄を熱分解してマグネタイト微粒子を析出し、析出したマグネタイト微粒子が磁性粉の表面に磁気吸着し、これによって磁性粉が絶縁化される製造工程を示す。最初に、ナフテン酸鉄と磁性粉の集まりを用意する(S10工程)。なお、磁性粉としてアトマイズ純鉄粉を用いる。次に、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに対し5重量%の割合になるように秤量し、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに混合して撹拌し、ナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液を作成し、この分散液を容器に充填する(S11工程)。さらに、アトマイズ純鉄粉の集まりの重量比率を1とした場合、ナフテン酸鉄の分散液の重量比率が30になるようにアトマイズ純鉄粉を秤量し、ナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液にアトマイズ純鉄粉の集まりを混合して撹拌し、ナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液にアトマイズ純鉄粉が分散された懸濁液を作成する(S12工程)。次に、懸濁液が入った容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れる(S13工程)。熱処理炉は図2に示すように、120℃の低温熱処理室Aと、400℃まで昇温される高温熱処理室Bとからなる。最初に容器は低温焼成室Aに5分間入り、n−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収する(S14工程)。これによって、全てのアトマイズ純鉄粉の表面にナフテン酸鉄が吸着する。次に容器は高温焼成室Bに入り、2段階の焼成が行われる。最初に、低温焼成部B1で5℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、ナフテン酸鉄を熱分解し、熱分解によって生成されたナフテン酸を完全に気化させ、気化したナフテン酸を回収する(S15工程)。この後、高温焼成部B2で1℃/分の昇温速度で400℃まで昇温し、さらに、400℃に30分間放置して、熱分解で生成された酸化鉄FeOを酸化鉄γ−Fe2O3に酸化させ、生成されたマグへマイトγ−Fe2O3はアトマイズ鉄粉の表面に磁気吸着する(S16工程)。こうして全てのアトマイズ純鉄粉の表面は、絶縁体であるマグへマイト微粒子によって覆われ、アトマイズ鉄粉の表面が絶縁化される。最後に、容器から絶縁化されたアトマイズ鉄粉の集まりを取り出す(S17工程)。
本発明に係わる磁性粉を絶縁化させる実施形態2は、アセチルアセトン金属の一種であるアセチルアセトン鉄Fe(C5H7O2)3を用いて、磁性粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させる実施形態である。アセチルアセトン鉄は、アセチルアセトンC5H8O2の3分子が、3価の鉄イオンと反応して容易に生成される有機鉄化合物であり、アセチルアセトンC5H8O2の共役塩基であるアセチルアセトナートC5H7O2 −を構成する酸素イオンが配位子となって、3価の鉄イオンと結合し、アセチルアセトナートが六員環を形成する有機鉄化合物である。
図3に、アセチルアセトン鉄を熱分解してマグネタイト微粒子を析出し、析出したマグネタイト微粒子が磁性粉の表面に磁気吸着し、これによって、磁性粉が絶縁化される製造工程を示す。最初に、アセチルアセトン鉄と磁性粉の集まりを用意する(S20工程)。なお、磁性粉としてアトマイズ純鉄粉を用いる。次に、アセチルアセトン鉄をn−ブタノールに対し5重量%の割合になるように秤量し、アセチルアセトン鉄をn−ブタノールに混合して撹拌し、アセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液を作成し、分散液を容器に充填する(S21工程)。さらに、アトマイズ純鉄粉の重量比率を1とした場合、アセチルアセトン鉄の分散液の重量比率が35になるようにアトマイズ純鉄粉を秤量し、アセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液にアトマイズ純鉄粉の集まりを混合して撹拌し、アセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液にアトマイズ純鉄粉が分散された懸濁液を作成する(S22工程)。次に、懸濁液が入った容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れる(S23工程)。熱処理炉は図2に示したように、120℃の低温熱処理室Aと、450℃まで昇温される高温熱処理室Bとからなる。最初に容器は低温焼成室Aに5分間入り、n−ブタノールが気化し、気化したn−ブタノールを回収する(S24工程)。これによって全てのアトマイズ純鉄粉の表面に、アセチルアセトン鉄が吸着する。次に容器は高温焼成室Bに入り、2段階の焼成が行われる。最初に低温焼成部B1において5℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に30分間放置してアセチルアセトン鉄を熱分解し、熱分解によって生成されたアセチルアセトンを完全に気化させ、気化したアセチルアセトンを回収する(S25工程)。この後、高温焼成部B2において1℃/分の昇温速度で430℃まで昇温し、430℃に30分間放置して、熱分解で生成された酸化鉄FeOを酸化鉄γ−Fe2O3に酸化させ、生成されたマグへマイトγ−Fe2O3はアトマイズ純鉄粉の表面に磁気吸着する(S26工程)。この結果、全てのアトマイズ純鉄粉の表面は、絶縁体であるマグへマイト微粒子によって覆われ、アトマイズ純鉄粉の表面が絶縁化される。最後に、容器から絶縁化されたアトマイズ純鉄粉を取り出す(S27工程)。
本実施形態は、20段落で説明したナフテン酸鉄の熱分解によって、アトマイズ純鉄粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させた絶縁粉、ないしは、21段落で説明したアセチルアセトン鉄の熱分解によって、アトマイズ純鉄粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させた絶縁粉を圧縮成形して、圧粉磁心を製造する実施形態である。
図4に、圧粉磁心を製造する製造工程を示す。最初に、絶縁化されたアトマイズ純鉄粉を用意する(S30工程)。次に、圧粉磁心の形状を反映した金型に、絶縁化したアトマイズ純鉄粉を充填する(S31工程)。さらに、金型に充填されたアトマイズ純鉄粉に980MPaの成形圧を加えて圧縮し、圧縮成形体を作る(S32工程)。最後に、圧縮成形体を700℃に昇温された窒素雰囲気からなる熱処理炉に60分放置し、その後、大気中に取り出して徐冷して焼鈍を行う(S33工程)。こうして、マグへマイト微粒子によって絶縁化されたアトマイズ純鉄粉の圧縮成形体からなる圧粉磁心が製造される。
本発明における実施例1は、20段落で説明したカルボン酸鉄の一種であるナフテン酸鉄Fe(C6H5COO)2を用いて、鉄粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させて鉄粉を絶縁化させる実施例である。
最初に、原料となるナフテン酸鉄と溶媒のn−ブタノールと鉄粉とを用意する。ナフテン酸鉄は、金属石鹸として市販されているナフテン酸鉄(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。n―ブタノールは試薬一級品を用いた。鉄粉は、株式会社神戸製鋼所の製品のアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NHを用いた。アトメル300NHは、マンガン、リン、イオウの含有量が極めて微量のアトマイズ純鉄粉であり、純度が高いため磁気特性に優れ、また、粉の形状から圧縮性に優れる。
次に、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに対し5重量%の割合になるように秤量し、このナフテン酸鉄をn−ブタノールに混合して撹拌し、ナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液を作成した。この分散液を容器に充填した。さらに、アトメル300NHの100gを、ナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液の3kgが入った容器に混合して撹拌し、アトメル300NHをナフテン酸鉄のn−ブタノール分散液に分散させた。
さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れて熱処理を行なった。最初に容器を120℃の低温焼成室に5分間放置してn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収機で回収した。過剰な溶媒として分散液に存在するn−ブタノールは、激しく沸騰し、容器内の溶液全体が揺動して鉄粉が撹拌された。n−ブタノールが気化した後は、全ての鉄粉の表面にナフテン酸鉄が吸着する。次に、5℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、ナフテン酸鉄をナフテン酸と酸化鉄FeOに熱分解した。熱分解によって生成されたナフテン酸は気化し、気化したナフテン酸は回収機で回収した。この後、1℃/分の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃の温度に30分間保持した。この際、熱分解で生成された酸化鉄FeOの酸化反応が徐々に進行する。最初に、酸化鉄FeOがマグネタイトFe3O4に徐々に酸化される。次に、マグネタイトFe3O4が酸化鉄γ−Fe2O3に徐々に酸化される。全てのマグネタイトFe3O4を酸化鉄γ−Fe2O3に酸化させるため、400℃の温度に30分間維持した。最後に、マグへマイトが磁気吸着したアトメル300NHを容器から取り出した。
前記した条件で製作した試料について観察と分析とを行ない、目的とする処理が実際になされているか否かを判定した。最初に、n−ブタノールを気化させた後におけるアトメル300NHの試料を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を有する。SEMによる表面観察は、次の3種類の手法によった。最初に、反射電子線の900−1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、鉄粉の形状を反映したごく薄い被膜が、鉄粉の表面全体に形成されていることが確認できた。次に、反射電子線の900−1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって試料表面の材質の違いを観察した。試料表面に形成された被膜には特段に濃淡が認められなかったので、鉄粉の表面には均一な被膜が形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された被膜を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。鉄原子、炭素原子、酸素原子が表面に均一に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、ナフテン酸鉄がアトメル300NHの表面全体を均一に被覆していることが確認できた。
次に、400℃で熱処理したアトメル300NHの試料表面をSEMで観察した。最初に反射電子線の900−1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料に40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、鉄粉の表面全体に満遍なく形成されていることが確認できた。次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された被膜を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。鉄原子、酸素原子の双方が表面に均一に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状微粒子であることが確認できた。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、試料表面に形成された粒状微粒子が酸化鉄のガンマ相であるマグへマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。なお、EBSP解析機能とは、試料に電子線を照射したとき、反射電子が試料中の原子面によって回折されることによってバンド状のパターンを形成し、このバンドの対称性が結晶系に対応し、バンドの間隔が原子面間隔に対応しているため、このパターンを解析することで、結晶方位や結晶系を測定する機能をいう。
以上の試料の観察と分析の結果から、アトメル300NHの表面全体にナフテン酸鉄が吸着している事実と、アトメル300NHの表面全体にマグへマイトの粒状微粒子が磁気吸着している事実とが確認できた。これらの結果から、前記で説明した条件で鉄粉を処理することで、最初に鉄粉の表面にナフテン酸鉄が吸着し、次に、この鉄粉を大気中で熱処理することで、鉄粉の表面にマグへマイトが満遍なく磁気吸着することが確認できた。
本発明における実施例2は、21段落で説明したアセチルアセトン金属の一種であるアセチルアセトン鉄Fe(C5H7O2)3を用いて、鉄粉の表面にマグへマイト微粒子を磁気吸着させて鉄粉を絶縁化させる実施例である。
最初に、原料となるアセチルアセトン鉄と溶媒のn−ブタノールと鉄粉とを用意する。アセチルアセトン鉄は、金属石鹸として市販されているアセチルアセトン鉄(例えば、日本化学産業株式会社の製品であるナーセム第二鉄)を用いた。n―ブタノールは試薬一級品を用いた。鉄粉は、実施例1と同様に株式会社神戸製鋼所の製品のアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NHを用いた。
次に、アセチルアセトン鉄を、n−ブタノールに対し5重量%の割合になるように秤量し、アセチルアセトン鉄をn−ブタノールに混合して撹拌し、アセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液を作成した。この分散液を容器に充填した。アトメル300NHの100gをアセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液の3.5kgが入った容器に混合して撹拌し、アトマイズ鉄粉をアセチルアセトン鉄のn−ブタノール分散液に分散させた。
さらに、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れて熱処理を行なった。最初に、容器を120℃の低温焼成室に5分間放置してn−ブタノールを気化させ、気化したn−ブタノールは回収機で回収した。n−ブタノールが気化した後は、全ての鉄粉の表面にアセチルアセトン鉄が吸着する。次に5℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、アセチルアセトン鉄をアセチルアセトンと酸化鉄FeOに熱分解した。なお、アセチルアセトンの発火点が340℃であるため、300℃で確実にアセチルアセトンを気化させるため、300℃において30分間放置した。熱分解によって生成されたアセチルアセトンは気化し、気化したナフテン酸は回収機で回収した。この後、熱処理温度を1℃/分の昇温速度で430℃まで昇温し、30分間430℃の温度に保持した。この際、熱分解で生成された酸化鉄FeOの酸化反応が徐々に進行する。最初に、酸化鉄FeOがマグネタイトFe3O4に徐々に酸化される。次に、マグネタイトが酸化鉄γ−Fe2O3に徐々に酸化される。全てのマグネタイトを酸化鉄γ−Fe2O3に酸化させるため、430℃の温度に30分間維持した。この結果、全ての鉄粉の表面にマグへマイト微粒子が磁気吸着し、鉄粉の表面がマグへマイト微粒子で覆われる。最後に、容器からマグへマイトが磁気吸着した鉄粉を容器から取り出した。
前記した条件で製作した試料を、実施例1と同様の観察と分析とを行ない、目的とする処理が実際になされているか否かを判定した。最初に、n―ブタノールを気化させた後におけるアトメル300NHの試料をSEMで観察した。SEMによる表面観察は、実施例1と同様に3種類の手法によった。最初に、反射電子線の900−1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には鉄粉の形状を反映したごく薄い被膜が、鉄粉の表面全体に形成されていることが確認できた。次に、反射電子線の900−1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって試料表面の材質の違いを観察した。試料表面に形成された被膜には特段に濃淡が認められなかったので、試料表面には均一な被膜が形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された被膜を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。鉄原子、炭素原子、酸素原子が表面に均一に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、アセチルアセトン鉄がアトメル300NHの表面全体に被覆していることが確認できた。
次に、430℃で熱処理したアトメル300NHの試料表面をSEMで観察した。最初に、反射電子線の900−1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には40−60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、試料表面の全体に満遍なく形成されていることが確認できた。次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された被膜を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。鉄原子、酸素原子の双方が表面に均一に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状微粒子であることが確認できた。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、粒状微粒子が酸化鉄のガンマ相であるマグへマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。
本発明における実施例3は、23段落で説明した方法で製作したアトメル300NHの絶縁粉と、24段落で説明した方法で製作したアトメル300NHの絶縁粉とを用いて、圧粉磁心を製作する実施例である。
最初に、23段落および24段落で説明した条件で、アトメル300NHの絶縁粉を製作した。圧粉磁心の形状を外径が40mm、内径が25mm、高さが6mmのリング形状とし、このリング形状を反映した金型に、2種類のアトメル300NHの絶縁粉の各々を充填した。金型に充填されたアトメル300NHに、980MPaの成形圧を加えて圧縮し、2種類の圧縮成形体を製作した。この後、窒素雰囲気からなる700℃の熱処理炉に圧縮成形体を60分間放置し、その後、大気中に取り出して徐冷して焼鈍を行った。こうして、2種類のアトメル300NHの絶縁粉からなる2種類の圧粉磁心を製作した。
次に、前記した条件で製作した2種類の圧粉磁心について圧粉体密度、比抵抗、磁束密度、鉄損を測定し、目的とする圧粉磁心の特性が得られているかを評価した。圧粉体密度は、試料の寸法と重量を測定し、これらの値から算出した。比抵抗は四端子法にて測定した。磁束密度は、リング試料に直径0.6mmのホルマル被覆導線を1次側:100巻、2次側:20巻したコイルを用い、磁界の大きさが10kA/mでの磁束密度B10kで評価した。鉄損は、リング試料に直径0.6mmのホルマル被覆導線を1次側に40巻、2次側に40巻したコイルを用い、また、周波数範囲が200―10kHz、磁束密度Bm が0.2Tの条件で、住友金属テクノロジー株式会社の磁気特性測定装置を用いて測定した。なお、鉄損の数値は、励磁周波数が5kHz、励磁磁束密度が0.2Tの値で代表した。得られた測定結果を表1に記載する。
圧縮体密度 比抵抗 磁束密度 鉄損
(kg/m3)(マイクロΩm)(T) (W/kg)
実施例1の絶縁鉄粉 7.58 58 1.68 45
実施例2の絶縁鉄粉 7.56 55 1.65 42
比較例:アトマイズ純鉄粉 7.87 0.1 2.2 ――
以上に説明したように、磁性粉の表面を絶縁化するマグへマイト微粒子は、磁性粉の表面に自らが磁気吸着して次の5つの性質を発揮したため、磁性粉を絶縁化する極めて好適な材料と言える。第一に絶縁体であって、磁性粉の表面を絶縁化し、焼鈍によってヘマタイトに相転移することで絶縁抵抗がさらに増大し、この結果、高周波数領域における鉄損は小さい値となった。第二に相転移したヘマタイトは600℃以上の耐熱性を有し、700℃の焼鈍によっても絶縁性が変わらず、この結果、高周波数領域における鉄損が小さい値となった。第三に、磁性粉に強固に磁気吸着し、980MPaの加圧力によっても磁性粉から剥がれず、圧縮成形体における磁性粉の絶縁性が確保できた。第四に硬い物質であって、980MPaの加圧力によっても破壊されず、圧縮成形体における磁性粉の絶縁性が確保できた。第5に粒状の微粒子であるため、アトマイズ純鉄粉の塑性変形を妨げず、圧粉磁心の高密度化をもたらした。
さらに、磁性粉の表面を絶縁化するマグへマイトからなる粒状微粒子は、安価な有機鉄化合物を磁性粉の表面に吸着させ、この後、磁性粉を大気中で熱処理だけでマグへマイトが生成され、生成されたマグへマイトの粒状微粒子は自らが磁性粉に表面に磁気吸着し、これによって、磁性粉の表面が絶縁化する。従って、安価な有機鉄化合物を原料として用い、極めて簡単な連続処理からなる1回の製造タクトで大量の磁性粉を絶縁化することができる。このため、有機鉄化合物の熱分解によって生成するマグへマイト微粒子は、磁性粉を絶縁化させる理想的な材料である。
Claims (3)
- 磁性粉の表面に絶縁物を結合ないしは吸着させて表面が絶縁化された磁性粉を製造する製造方法は、熱分解によって酸化鉄FeOを生成する有機鉄化合物を磁性粉に吸着させ、該有機鉄化合物が吸着した前記磁性粉を大気中で熱処理し、該有機鉄化合物の熱分解によって粒状の酸化鉄FeOを前記磁性粉の表面に析出させ、さらに昇温して、前記粒状の酸化鉄FeOを粒状のマグへマイトγ−Fe 2 O 3 に酸化する、これによって、前記粒状のマグへマイトγ−Fe 2 O 3 微粒子の集まりが前記磁性粉の表面に磁気吸着し、該磁気吸着した粒状のマグヘマイトγ−Fe 2 O 3 微粒子の集まりによって、表面が絶縁化された前記磁性粉が製造されることを特徴とする、表面が絶縁化された磁性粉を製造する製造方法。
- 請求項1における磁性粉に吸着させる有機鉄化合物が、鉄イオンが酸素イオンに配位結合する有機鉄化合物であり、該有機鉄化合物を用いて請求項1に記載した方法に準拠して表面が絶縁化された磁性粉を製造することを特徴とする、請求項1に記載した表面が絶縁化された磁性粉を製造する製造方法。
- 請求項2における有機鉄化合物が、酢酸鉄、安息香酸鉄、カプリル酸鉄、ナフテン酸鉄のうちのいずれか一つのカルボン酸鉄ないしはアセチルアセトン鉄のいずれかの有機鉄化合物であり、該有機鉄化合物を用いて請求項2に記載した方法に準拠して表面が絶縁化された磁性粉を製造することを特徴とする、請求項2に記載した表面が絶縁化された磁性粉を製造する製造方法。
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