JP6546438B2 - 積層電磁鋼板の層間が酸化鉄Fe2O3の粒状粒子で絶縁された鉄心の製造方法 - Google Patents
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Description
いっぽう、積層した電磁鋼板の端面を溶接で固着する場合は、鉄心のエッジ部が短絡して絶縁性が低下し、また、熱歪みの発生で電磁鋼板の鉄損が増える。カシメにより積層した電磁鋼板を固着する場合は、加工歪みの発生で電磁鋼板の鉄損が増え、また、電磁鋼板の厚みが薄い場合は、十分なカシメ強度が得られない。さらに、接着剤により加工した電磁鋼板を固着する場合は、加工した電磁鋼板に接着剤を塗布し、この電磁鋼板を一枚一枚積層する作業性が悪い、あるいは、十分な接着力が得られない。このように、鉄心を加工する途上で様々な問題が発生する。こうした問題は加工方法を変えない限り、つまり、新たな製造方法で鉄心を製造しない限り、根本的に問題を解決することは困難である。
第一に連続打ち抜き性がある。つまり、絶縁被膜が形成された電磁鋼板を、プレス機で連続して打ち抜く際に、カッターの刃の摩耗が進む。このため、カッターの刃を攻撃しない絶縁層が望ましい。第二に溶接性がある。つまり、鉄心の端面を溶接する際に、溶接がしやすく、さらに、溶接の際に絶縁層から気化した物質が、あるいは、飛散した物質が、絶縁層を攻撃し、ピンホールを形成しないことが必要になる。第三に、電磁鋼板を加工する際や積層する際に、絶縁層が剥離しない密着強度が必要になる。第四に歪取焼鈍に耐える耐熱性が必要になる。第五に、歪取焼鈍の際に絶縁層の熱膨張率と電磁鋼板の熱膨張率との差に応じた熱歪が電磁鋼板に発生しないことが必要になる。第六に、歪取焼鈍の際にスティッキングと呼ばれる電磁鋼板同士の焼き付きを起こさせないことが必要になる。第七に、急激な温度変化でも、絶縁層が剥離しない耐熱衝撃性が必要になる。第八に、水蒸気や塩水などに耐える耐食性が必要になる。第九に、高温の絶縁油に長時間浸漬しても、密着強度と絶縁抵抗とが変わらないことが必要になる。いっぽう、絶縁層と電磁鋼板との密着強度が高いと、第三と第九の性質を満たすが、これに反して、第五の電磁鋼板に熱歪を発生させ、第七の耐熱衝撃性が弱くなる。
以上に説明した絶縁層に要求される性質は、性質ごとに絶縁層に求められる機能が異なるため、全ての性質を満たす絶縁層を実現することは困難を伴う。また、従来の材料からなる絶縁層では、要求される性質が両立できない場合がある。従って、従来とは全く異なる材料で絶縁層を形成しない限り、要求される全ての性質が実現できない。
しかし、本絶縁被膜の熱膨張率は、電磁鋼板の熱膨張率より1桁近く小さい。このため急激な温度変化で絶縁層が電磁鋼板から剥離し、剥離した絶被膜は耐食性と耐油性を持たない。また、歪取焼鈍の際に電磁鋼板に熱歪が発生し、歪取焼鈍の効果が得られない。
しかし、絶縁被膜が形成される電磁鋼板に要求される性質は、白化防止と絶縁膜の密着性に限らない。例えば、打ち抜き性がある。本技術だけでは十分な打ち抜き性が得られないため、水性の合成樹脂を添加する記載がある。しかし、水性の合成樹脂は歪取焼鈍における耐熱性を持たない。このため、打ち抜き性と歪取焼鈍の実施が両立できない。また、絶縁被膜の絶縁性がある。本技術だけでは十分な絶縁抵抗が得られないため、コロイダルシリカを添加する記載がある。しかし、コロイダルシリカの熱膨張率は電磁鋼板の熱膨張率より1桁近く小さいため、急激な温度変化で絶縁被膜が剥離する、また、歪取焼鈍の際に電磁鋼板に熱歪が発生し、歪取焼鈍の効果が得られない、という新たな問題を引き起こす。さらに、強酸性のエッチング液を用いるため、絶縁被膜の形成後に十分な洗浄が必要になり、また、環境面から廃液処理に多くの費用が掛かる。従って製作費用が増大する。
本発明が解決しようとする課題は、2段落で説明した鉄心の加工上の問題が発生せず、4段落で説明した要求される性質を兼備する絶縁層が実現でき、さらに、安価な原料を用いて、安価な費用で鉄心が製造できる鉄心の製造方法を実現することにある。
すなわちアルコールに溶解ないしは混和し、アルコールより粘度が高い有機化合物は、金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、有機化合物の混合割合に応じて混合液の粘度が増大し、混合液の粘度に応じた被膜の厚みが電磁鋼板に形成される。従って、電磁鋼板の厚みに応じて、被膜の厚みが自在に変えられる。
さらに、金属化合物と有機化合物とは分子状態で均一に混ざり合う。つまり、金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物はアルコール中に分子状態で均一に分散する。さらに、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物を、アルコール分散液に混合すると、金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この結果、従来の被膜とは全く異なる、金属化合物が均一に分散された被膜が、電磁鋼板の表面に形成される。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、安価な原料を用いて安価な費用で、金属化合物が分子状態で均一に分散された被膜が、電磁鋼板の表面に連続して形成できる。
なお、電磁鋼板への被膜の形成方法は、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー塗布法などが挙げられ、電磁鋼板の形状と大きさにとによって適宜最適な方法が選択される。また、前記の混合液からなる被膜は粘着力を持たないため、被膜が形成された電磁鋼板をコイル状に巻いても、被膜を介して電磁鋼板が接着するブロッキングが発生しない。また、コイル状に巻いた電磁鋼板を再度平板状に戻しても、被膜が電磁鋼板から剥がれない。従って、被膜が形成された電磁鋼板をコイル状に巻いて保管することができる。
さらに、本特徴手段に依れば、電磁鋼板に形成される被膜は液体であり、プレス機のカッターの刃を攻撃しない。このため、被膜が形成された電磁鋼板を連続して打ち抜くあるいはせん断してもカッターの刃を傷めない。また、圧縮荷重を加えた状態で、積層した電磁鋼板を打ち抜くまたはせん断するため、被膜は飛散することがなく、確実に層間に同等な厚みの被膜が形成され、被膜の厚みは均一になる。この結果、全ての層間に、金属化合物が分子状態で均一に分散された被膜が、同等の厚みで均一な厚みとして形成される。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、積層した電磁鋼板からなる鉄心は、全ての層間に、金属化合物が分子状態で均一に分散された被膜が、同等の厚みで均一な厚みとして形成され、こうした鉄心が連続して安価に製作できる製作方法である。
すなわち、層間に圧縮荷重が加えられているため、アルコールと有機化合物とが気化すると、層間の間隙が狭まり、層間に金属化合物の微細結晶が均一に残留する。さらに昇温すると、金属化合物が金属酸化物と有機物とに分解し、有機物が気化熱を奪って気化すると、層間の間隙がさらに狭まる。さらに昇温すると、有機物の気化が完了し、40−60nmの大きさの金属酸化物の粒状微粒子の集まりが、均一の厚みで同等の厚みを形成して層間に析出して熱分解を終える。金属酸化物は安定した物質であるため、析出した粒状微粒子同士は接合しない。従って、層間に加えられた圧縮荷重を粒状微粒子が受け、層間の隙間を埋めるように粒状微粒子が移動して層間を埋め尽くす。また、微粒子の大きさが電磁鋼板の表面粗さより1桁以上小さいため、微粒子は電磁鋼板の表面の凹凸に入り込んで凹凸を埋め尽くす。この結果、微小な密閉空間である層間を、金属酸化物の粒状微粒子が埋め尽くす。従って、金属酸化物微粒子は層間から脱落しない。また、層間に空隙が形成されず、スティッキングは起こらない。さらに、層間は金属酸化物の粒状微粒子で高密度に充填され、金属酸化物の絶縁抵抗に近い絶縁性を持つ。いっぽう、鉄心の端面は外部に開放されているため、端面を溶接する際には、端面の微粒子は脱落し、溶接の障害にならない。また、脱落する微粒子は、極めて微細で重量を殆ど持たないため、絶縁被膜を攻撃しない。さらに、粒状微粒子は安定した金属酸化物であるため、耐熱性と耐食性と耐油性を有する。また、微粒子の集まりで埋め尽くされた層間には、表面張力で腐食性液体や絶縁油が侵入できない。さらに、微粒子同士が接合しないため、急激な温度変化に対し、微粒子が極々微量の膨張ないしは収縮するだけで、絶縁層としては耐熱衝撃性を持つ。また鉄心を熱処理する際に、電磁鋼板は熱膨張するが、微粒子同士が接合していないため、絶縁層は電磁鋼板の熱膨張を拘束しない。このため電磁鋼板に熱歪は発生しない。さらに、金属化合物が熱分解した後に、圧縮荷重を開放して鉄心を徐冷すれば、圧縮荷重に依る電磁鋼板の歪が解消され鉄損が低減する。従って、鉄損の大きさが問題にならなければ、歪取焼鈍を行うことなく、本特徴手段で製造した鉄心を電気機器に組み込んで使用できる。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、従来とは全く異なる製造方法で鉄心を製造するとともに、従来とは全く異なる金属酸化物の微粒子の集まりで絶縁層を形成するため、4段落で説明した要求される性質の中で、歪焼鈍の耐熱性を除く全ての性質を持つ。
さらに、本特徴手段に依れば、鉄心の製作から絶縁層の形成まで、鉄心に圧縮荷重を加えた状態で熱処理する。このため、積層した電磁鋼板は金属酸化物の微粒子を介して圧着される。従って、積層した電磁鋼板の端面を溶接により固着する、あるいは、カシメによって固着する必要はない。さらに、加工した電磁鋼板に接着剤を塗布し、さらに積層する面倒な工程はない。このように鉄心の製造に関わる加工方法が従来とは全く異なるため、2段落で説明した従来の鉄心の加工上の問題を起こさない。
すなわち、熱分解によって酸化鉄FeOを析出する有機鉄化合物を、アルコールに分散し、アルコールに溶解ないしは混和し、アルコールより粘度が高く、沸点が有機鉄化合物の熱分解温度より低い、これらの性質を兼備する有機化合物を、前記のアルコール分散液に混合して混合液を作成する。この混合液を電磁鋼板に塗布する。さらに、この電磁鋼板を積層し、圧縮荷重を加えて鉄心の形状に打ち抜くまたはせん断し、積層した電磁鋼板の層間に前記の混合液からなる被膜が形成された鉄心を作成する。この鉄心に圧縮荷重を加えて大気雰囲気で熱処理する。アルコールと有機化合物とが気化し、さらに、有機鉄化合物が酸化鉄FeOと有機酸とに分解し、有機酸の気化が完了すると、40−60nmの大きさからなる酸化鉄FeOの粒状微粒子が析出して有機鉄化合物の熱分解が終える。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、積層した電磁鋼板の層間に、酸化鉄FeOの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層が形成される。
すなわち、ナフテン酸鉄は、ナフテン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって、鉄イオンFe2+に近づいて配位結合する錯体である。つまり、最も大きいイオンである鉄イオンFe2+に酸素イオンO−が近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、鉄イオンFe2+に配位結合する酸素イオンO−が、鉄イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つナフテン酸鉄は、ナフテン酸の主成分の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との化合物である酸化鉄FeOとナフテン酸とに分解する。さらに昇温すると、ナフテン酸が気化熱を奪って気化し、ナフテン酸の気化が完了すると、酸化鉄FeOの粒状微粒子が析出して熱分解を終える。
さらに、ナフテン酸鉄は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的な有機酸であるナフテン酸を、強アルカリと反応させるとナフテン酸アルカリ金属化合物が生成され、ナフテン酸アルカリ金属化合物を無機鉄化合物と反応させると、ナフテン酸鉄が合成される。従って、有機酸鉄化合物の中で最も安価である。また、原料となるナフテン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に沸点が低いため、大気雰囲気で340℃程度の熱処理で酸化鉄FeOが析出する。このような性質を持つナフテン酸鉄は、塗料・印刷インキ用のドライヤー、ゴム・タイヤの接着剤、潤滑油の極圧剤、ポリエステルの硬化剤、助燃剤や重合触媒などに汎用的に使用されている。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、安価な工業用薬品であるナフテン酸鉄を用いて、酸化鉄FeOの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層が安価に形成できる。
従って、ナフテン酸鉄のアルコール分散液に、本特徴手段におけるいずれかの有機化合物を混合すると、ナフテン酸鉄と有機化合物とが分子状態で均一に分散された混合液が作成できる。この混合液を電磁鋼板に塗布すると、電磁鋼板に被膜が形成される。
このため、本特徴手段における有機化合物は、ナフテン酸鉄と共に電磁鋼板に形成される被膜の原料になる。これによって、積層した電磁鋼板の層間に、酸化鉄FeOの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層が形成される。
以上に説明したように、積層した電磁鋼板を大気中で熱処理するだけの極めて簡単な手段で、マグへマイトの粒状微粒子の集まりで絶縁層が形成される。このマグヘマイトは、以下の4つの性質を持ち、画期的な作用効果をもたらす絶縁層を形成する。
第一に比抵抗が106Ωmの絶縁体である。従って、マグヘマイトの微粒子で埋め尽くされた層間は、マグヘマイトに近い絶縁性を持つ。ちなみに電磁鋼板の比抵抗は10−7Ωmであり、鉄心の渦電流損失は比抵抗に反比例し、渦電流損失は著しく小さくなる。
第二に強磁性であるフェリ磁性の性質を持つ。このため、マグへマイトの微粒子は電磁鋼板に強固に磁気吸着し、マグヘマイトの微粒子同士も磁気吸着する。一度磁気吸着したマグへマイト微粒子は、重量を殆ど持たない微粒子であり、磁気吸着を解除することは困難である。従って、層間を埋め尽くしたマグヘマイト微粒子は、層間から脱落しない。
第三にモース硬度が6.5であり、電磁鋼板より著しく硬い物質である。このため、圧縮荷重を受けてもマグへマイトの微粒子は破壊されず、また、マグヘマイト微粒子同士の摩擦でも破壊されない。なお、電磁鋼板と接するマグヘマイト微粒子は、電磁鋼板の表面に食い込んで磁気吸着し、これらのマグヘマイト微粒子に他のマグヘマイト微粒子が磁気吸着する。このため、磁気吸着したマグヘマイト微粒子の集まりは層間から脱落しない。
第四に安定した酸化物で、鉄の不働態皮膜を形成する物質として知られている。従って耐食性と耐油性とを持つ。耐熱性を有するが、530℃以上でヘマタイトに相転移する。
つまり、酸化鉄Fe2O3のγ相である立方晶系の結晶構造を持つマグヘマイトは、昇温速度を抑えて昇温すると、530℃付近から酸化鉄Fe2O3のα相である三方晶系の結晶構造を持つヘマタイトに徐々に相転移し、670℃付近で相転移が終了する。
以上に説明したように、マグへマイトは、電磁鋼板の層間を絶縁化する物質として画期的な作用効果をもたらし、マグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層は、4段落で説明した要求される性質の中で、歪取焼鈍の耐熱性を除く全ての性質を持つ。
なお、従来のマグへマイトγ−Fe2O3は針状微粒子として生成される。つまり、硫酸第一鉄ないしは硫酸第二鉄をアルカリ性の水溶液中で大気を送り込みながら反応させ、針状微粒子のゲータイトと呼ばれる水酸化鉄α−FeOOHを析出させる。このゲータイトを、水素ガスの雰囲気で一度脱水させてヘマタイトα−Fe2O3とし、さらに、還元してマグネタイトFe3O4を生成する。この後、マグネタイトを大気中でゆっくりと加熱酸化させると針状のマグへマイト微粒子が生成される。針状微粒子は粒状微粒子よりアスペクト比、つまり幅に対する長さの比率が大きいため、磁気吸着した針状微粒子の集まりは、多くの間隙を形成し、絶縁性が低減する。さらに、針状のマグへマイト微粒子を生成する製造工程は、前記した粒状のマグへマイト微粒子を生成する製造工程に比べて、分断された多くの製造工程から構成されるため製造費用が高い。このように微粒子の集まりを高密度で充填する事例では、粒状微粒子は針状微粒子に比べ格段に作用効果が優れる。
ヘマタイトα−Fe2O3は107Ωmの比抵抗を持ち、歪取焼鈍の処理で層間の絶縁性がさらに一桁向上し、渦電流損失はさらに低減する。ヘマタイトは極めて安定した酸化物、つまり、強酸や強アルカリに侵されない不働態であり、融点の1566℃に近い耐熱性と耐食性と耐油性とを有する。このため、歪取焼鈍時にヘマタイトは化学変化せず、また、電磁鋼板との間で拡散現象などの化学反応が一切起らない。また、弱強磁性の性質を持ち、磁気キュリー点が950℃である。従って、歪取焼鈍後においても、弱い磁気吸着力ではあるが、ヘマタイトが電磁鋼板に磁気吸着し、ヘマタイト微粒子同士も磁気吸着する。さらにヘマタイトは、モース硬度が6の電磁鋼板より硬い物質であり、圧縮荷重で微粒子は破壊されず、また、ヘマタイト微粒子同士の摩擦でも破壊されない。また、22段落で説明したように、マグヘマイトの微粒子が、電磁鋼板の表面の凹凸に入り込んで凹凸を埋め尽くすとともに層間を埋め尽くしたため、ヘマタイトの微粒子も同様に層間を埋め尽くす。従って、重ね合わせられた電磁鋼板の間隙のどの部位にも、ヘマタイトの微粒子が確実に存在し空隙がない。これによって、歪取焼鈍時にスティッキングが起こらない。
以上に説明したように、へマタイト微粒子の集まりからなる絶縁層は、マグヘマイトよりさらに画期的な作用効果をもたらし、4段落で説明した要求される全ての性質を持つ。
なお微小な密閉空間である層間が、磁気吸着したマグヘマイト微粒子で隙間なく充填され、積層した電磁鋼板はマグヘマイト微粒子の集まりを介して圧着されていた。このような鉄心に圧縮荷重を加えた昇温過程で、マグヘマイトがヘマタイトに相転移されるため、徐冷過程で圧縮荷重を開放しても、ヘマタイト微粒子は層間から脱落しない。また、積層した電磁鋼板はヘマタイト微粒子の集まりを介して圧着される。いっぽう、鉄心の端面に存在するヘマタイト微粒子は容易に脱落し、溶接の障害にならない。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、鉄心に歪取焼鈍を実施すると、鉄心の鉄損が低減するだけではなく、極めて安定な不働態であるヘマタイトの粒状微粒子の集まりで絶縁層が形成されるため、鉄心の渦電流損失がさらに低減し、歪取焼鈍の耐熱性よりさらに高い耐熱性と耐食性と耐油性と耐スティキング性とを併せ持つ鉄心が製造される。
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールより粘度が高く、第三にナフテン酸鉄が熱分解する340℃より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物に関する実施形態である。これら3つの性質を兼備する有機化合物は、ナフテン酸鉄のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合い、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。これら3つの性質を兼備する有機化合物に、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する多くの有機化合物が存在する。
第一のエステル類である飽和カルボン酸からなるエステル類は、酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、酪酸エステル類、ビバリン酸エステル類、カプロン酸エステル類、カプリル酸エステル類、カプリン酸エステル類、ラウリン酸エステル類、ミリスチン酸エステル類、パルミチン酸エステル類、ステアリン酸エステル類などからなる。
ここで、分子量が小さい酢酸エステル類について説明する。酢酸エステル類は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸オクチル、酢酸へプチル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、酢酸ビニルなどからなる。酢酸メチルを除く酢酸エステル類は、メタノールより沸点が高く、n−ブタノールより沸点が低い。また、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高い。このため、ナフテン酸鉄をメタノールに分散し、この分散液に酢酸メチルを除く酢酸エステル類のいずれかを混合すれば、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。例えば、酢酸ビニル(モノマー)はメタノールに溶解し、メタノールより高い粘性を持ち、沸点がメタノールの沸点より高い72.7℃である。従って、ナフテン酸鉄をメタノールに分散し、この分散液に酢酸ビニルを混合すると、混合した酢酸ビニルの量に応じて分散液の粘度が増大する。
また、分子量が大きいラウリン酸エステル類について説明する。ラウリン酸オクチルはn−ブタノールに溶解し、n−ブタノールより高い粘性を持ち、沸点はナフテン酸鉄の熱分解温度より高い355℃である。従って、ラウリン酸オクチルより分子量が小さいラウリン酸エステル類は、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。
以上に、飽和脂肪酸エステル類について、分子量が小さい酢酸エステル類と、分子量が大きいラウリン酸エステル類とを代表させて説明した。分子量が小さい飽和脂肪酸エステル類の多くは、メタノールに溶解し、メタノールより高い粘性を持ち、沸点がメタノールの沸点より高く、ナフテン酸鉄が熱分解する温度より低い性質を持つ。また、分子量が大きい飽和脂肪酸エステル類は、相対的に分子量が小さいエステル類であれば、沸点はナフテン酸鉄が熱分解する340℃より低い性質を持つ。
分子量が小さいアクリル酸エステル類には、沸点が80℃のアクリル酸メチル、沸点が100℃のアクリル酸エチル、沸点が132℃のアクリル酸イソブチル、沸点が148℃のアクリル酸ブチル、沸点が214℃のアクリル酸2−エチルヘキシルがある。アクリル酸メチルとアクリル酸エチルとは、メタノールに溶解し、メタノールより高い粘性を持つため、ナフテン酸鉄をメタノールに分散し、この分散液にアクリル酸メチルないしはアクリル酸エチルを混合すれば、被膜を形成する混合液になる。また、アクリル酸ブチルとアクリル酸イソブチルの沸点は、n−ブタノールの沸点より高く、ナフテン酸鉄が熱分解される温度より低いため、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに分散し、この分散液にアクリル酸ブチルないしはアクリル酸イソブチルを混合すると、被膜を形成する混合液になる。
安息香酸エステル類の中で、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、ナフテン酸の熱分解温度より沸点が低い安息香酸エステル類は、安息香酸ベンジル以下の分子量を持つエステル類である。ちなみに安息香酸ベンジルの沸点は324℃である。従って、これらの安息香酸エステル類は、被膜を形成する原料になる
また、フタル酸エステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、メタノールより粘度が高く、沸点が340℃より低い性質を持つフタル酸エステル類は、フタル酸ジブチルより分子量が小さいエステル類である。ちなみにフタル酸ジブチルの沸点は340℃である。従って、これらのフタル酸エステル類は、被膜を形成する原料になる。
エチレングリコールは、メタノールおよびn−ブタノールに溶解し、沸点が197℃の液状モノマーである。さらに、ジエチレングリコールは、メタノールおよびn−ブタノールに溶解し、沸点が244℃の液状モノマーである。さらに、プロピレングリコールは、メタノールおよびn−ブタノールと混和し、沸点が188℃の液状モノマーである。さらに、ジプロピレングリコールは、メタノールおよびn−ブタノールと混和し、沸点が232℃の液状モノマーである。また、トリプロピレングリコールは、メタノールおよびn−ブタノールと混和し、沸点が265℃の液状モノマーである。このように、グリコール類の沸点は、ナフテン酸鉄の熱分解温度より低い。従って、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。
さらに、エチレングリコール系エーテルは、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、メチルポリグリコール、イソプロピルグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、アリルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコールなどがある。
これらのエチレングリコール系エーテルは、いずれもn−ブタノールに溶解し、n−ブタノールより高い粘性を持ち、n−ブタノールの沸点より高く、ナフテン酸鉄が熱分解する温度より低い。このため、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。
これらのプロピレングリコール系エーテルは、いずれもn−ブタノールに溶解し、n−ブタノールより高い粘性を持ち、n−ブタノールの沸点より高く、ナフテン酸鉄が熱分解する温度より低い。このため、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。
これらのジアルキルグリコールエーテルは、いずれもn−ブタノールに溶解し、n−ブタノールより高い粘性を持ち、n−ブタノールの沸点より高く、ナフテン酸鉄が熱分解する温度より低い。このため、電磁鋼板に形成する被膜の原料になる。
本実施形態は、2枚の電磁鋼板の間に、マグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成し、絶縁層の密着強度、絶縁抵抗、塩水噴霧試験に依る耐食性、熱衝撃試験に依る耐熱衝撃性を調べる。電磁鋼板として無方向性電磁鋼板(例えば、JFEスチール株式会社の製品で、厚さが0.35mmからなる品番35JNE250)を用いた。無方向性電磁鋼板は、大型変圧器と配電用変圧器を除く変圧器の鉄心と各種回転機の鉄心として使用されている。なお、電磁鋼板の磁化の方向と鉄損の大きさとは電磁鋼板固有の性質であり、絶縁層の形成においては、どのような電磁鋼板でも使用できる。また、マグヘマイトの原料としてナフテン酸鉄(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。
最初に、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに10重量%の割合で分散させた。分散液に、エチレングリコールが20重量%の割合を占めるように混合した。なお、エチレングリコールは、n−ブタノールと任意の割合で混和し、n−ブタノールの沸点より沸点が80℃高く、n−ブタノールの粘度の5.4倍の粘度を持つ。次に、前記した電磁鋼板を50mm×3mmに切断した2枚の電磁鋼板を用意した。一枚の電磁鋼板の隅に、12.5mmの幅で30mmの長さで、前記の混合液を20μmの厚さで塗布した。この混合液が塗布された部分に、もう一枚の電磁鋼板の隅の12.5mmの幅が重なるように重ね、重ね合わせた部分に3kgの荷重を印加した(塗布面の加圧力は8kg/cm2に相当)。この重ね合わされた2枚の電磁鋼板を、荷重を加えた状態で、大気中で熱処理した。最初に、120℃まで昇温しn−ブタノールを気化させ、次に、200℃まで昇温しエチレングリコールを気化させた。さらに340℃まで昇温し、340℃に1分間放置してナフテン酸鉄を熱分解した。さらに、340℃から1℃/分の昇温速度で390℃まで昇温し、390℃に30分間放置した。この後、印加した荷重を開放し室温まで徐冷した。こうして試料を22個作成した。
最初に、一つの試料について、2枚の電磁鋼板が重なる部分、つまり絶縁層が形成された部分を切断し、切断面の複数の部位を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を有する。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、断面の表面を観察した。どの部位も40−60nmの大きさの粒状微粒子同士が接合し、粒状微粒子の集まりが平均で約2μmの厚みを形成して間隙を埋め尽くしていた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、断面を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状微粒子である。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、微粒子の結晶構造の解析を行なった。この結果から、絶縁層を形成する粒状微粒子が酸化鉄Fe2O3のγ相であるマグへマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。なおEBSP解析機能とは、試料に電子線を照射したとき、反射電子が試料中の原子面によって回折されることによってバンド状のパターンを形成し、このバンドの対称性が結晶系に対応し、バンドの間隔が原子面間隔に対応するため、このパターンを解析して、結晶方位や結晶系を測定する機能をいう。結果を図1に模式的に示す。1は電磁鋼板で、2はマグヘマイトの粒状微粒子である。2枚の電磁鋼板1の表面の凹凸に入り込んで、マグヘマイの粒状微粒子2の集まりが層間を埋め尽くしていた。
次に、5つの試料について絶縁層の密着強度を引張試験で評価した。試料を3mm/分の速度で水平方向に引張り、絶縁層が破断する際の最大の引張応力を密着強度とした。密着強度は2.5−3.0MPaであり、加工済みの鉄心としては十分な密着強度を持つ。
さらに、引張試験で破断した絶縁層の抵抗を、4端子法で測定した。5つの試料の比抵抗は55−60μΩmであり、絶縁層は渦電流損失が十分に低減する高い絶縁性を持つ。
次に、引張試験で破断した試料を用い、中性の5%塩水による塩水噴霧試験を行った。絶縁層の表面に変色が認められなかったので、絶縁層は優れた耐食性を持つ。
最後に、5つの試料を、−30℃から120℃の温度変化を与える気槽熱衝撃試験を行い、この後、前記した引張試験で絶縁層の密着強度の変化を調べた。熱衝撃試験後の密着強度は、熱衝撃試験前の密着強度と変わらず、絶縁層は優れた耐熱衝撃性を持つ。
本実施形態は、実施形態2で製作した試料の11個に、歪取焼鈍を行うことを想定して、重ね合わせた部分に35kgの荷重を印加し、窒素雰囲気で800℃まで昇温し、2時間放置した後に室温まで徐冷した。この試料についても、実施形態2と同様に、絶縁層の密着強度と絶縁抵抗と耐食性と耐熱衝撃性とを調べた。
最初に、一つの試料について、実施形態2と同様に、2枚の電磁鋼板が重なる部分を切断し、切断面の複数の部位を電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、断面の表面を観察した。実施形態2と同様に、断面のどの部位も、40−60nmの大きさの粒状微粒子同士が接合し、接合した粒状微粒子の集まりが、平均で約2μmの厚みを形成して間隙を埋め尽くしていた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、断面を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。実施形態2と同様に、鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、微粒子は酸化鉄からなる粒状微粒子である。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、微粒子の結晶構造の解析を行なった。この結果から、絶縁層を形成する粒状微粒子が酸化鉄Fe2O3のα相であるヘマタイトα−Fe2O3であることが確認できた。この結果を図2に模式的に示す。2枚の電磁鋼板3の表面の凹凸に入り込んで、ヘマタイトの粒状微粒子4の集まりが層間を埋め尽くしていた。
次に、実施形態2と同様に、5つの試料について絶縁層の密着強度を引張試験で評価した。密着強度は1.5−2.0MPaであり、実施形態2より密着強度が若干低下した要因は、マグヘマイトがヘマタイトに相転移したため、ヘマタイトの微粒子と電磁鋼板との磁気吸着力と、ヘマタイトの微粒子同士の磁気吸着力とが低減したためと考える。しかし絶縁層は依然として加工済みの鉄心としては、十分な密着強度を持つ。この理由は、マグヘマイト微粒子を析出させる際に、圧縮荷重を加えて熱処理したため、電磁鋼板同士がマグヘマイト微粒子を介してすでに圧着されていたためと考える。
さらに実施形態2と同様に、引張試験で破断した絶縁層の抵抗を4端子法で測定した。5つの試料の比抵抗は500−600μΩmであり、実施形態2より一桁絶縁抵抗が増大した。
次に、実施形態2と同様に、引張試験で破断した試料を用いて、塩水噴霧試験を行った。絶縁層の表面に変色が認められなかったので、絶縁層は優れた耐食性を持つ。
最後に、実施形態2と同様に、5つの試料を−30℃から120℃の温度変化を与える気槽熱衝撃試験を行い、この後、前記した引張試験で絶縁層の密着強度の変化を調べた。熱衝撃試験後の密着強度は熱衝撃試験前と変わらず、絶縁層は優れた耐熱衝撃性を持つ。
本実施例は、実施形態2で製作した混合液を電磁鋼板に塗布し、この電磁鋼板の20枚を積層し、圧縮荷重を加えて鉄心の形状に加工し、さらに圧縮荷重を加えて鉄心を熱処理し、マグヘマイトの粒状微粒子で絶縁層を形成させる鉄心を製作する実施例である。
実施形態2で用いた電磁鋼板に、実施形態2で製作した混合液を20μmの厚さで塗布し、この電磁鋼板を20枚重ね合わせ、280kgの荷重を印加した(加圧力は7.9kgcm2に相当)。この後、内径が3インチ(7.6cmに相当)で外径が4インチ(10.1cmに相当)のリング状に切断した。この積層した電磁鋼板を、荷重を加えた状態で、大気中で熱処理した。最初に120℃まで昇温しn−ブタノールを気化させ、次に200℃まで昇温しエチレングリコールを気化させた。さらに、340℃まで昇温し、340℃に1分間放置してナフテン酸鉄を熱分解した。さらに、340℃から1℃/分の昇温速度で390℃まで昇温し、390℃に30分間放置した。この後、印加した荷重を開放し室温まで徐冷し、鉄心を製作した。
鉄心の鉄損を、住友金属テクノロジー株式会社の磁気特性測定装置を用いて測定した。鉄心の周波数が50Hzで、磁束密度が1.5テスラにおける鉄損は2.9W/kgであり、電磁鋼板のメーカのカタログ値の2.50W/kg以下に近い鉄損であり、マグヘマイトの微粒子の集まりで、優れた絶縁層が作成した鉄心に形成されたことが分かった。
本実施例は、実施例1で製作した鉄心を、さらに、320kgの荷重を印加して窒素雰囲気で800℃まで昇温し、2時間放置した後に室温まで徐冷した。実施例1と同様に、この鉄心の鉄損を測定した。鉄損は2.7W/kgであり、ヘマタイトの微粒子の集まりによってさらに優れた絶縁層が形成されることが分かった。
Claims (8)
- 電磁鋼板への被膜の形成方法は、熱分解で絶縁性の金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールより粘度が高い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、該混合液を電磁鋼板に塗布する、電磁鋼板への被膜の形成方法。
- 請求項1に記載した方法により得られた電磁鋼板を用いて鉄心を製造する鉄心の製作方法は、前記電磁鋼板を積層し、該積層した電磁鋼板に圧縮荷重を加え、該積層した電磁鋼板を鉄心の形状に打ち抜くまたはせん断する、請求項1に記載した方法により得られた電磁鋼板を用いて鉄心を製造する鉄心の製作方法。
- 請求項2に記載した方法により得られた鉄心の層間に金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、前記鉄心に圧縮荷重を加えて熱処理し、前記金属化合物を熱分解する、請求項2に記載した方法により得られた鉄心の層間に金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
- 積層した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、請求項1における金属化合物として、熱分解で酸化鉄FeOを析出する有機鉄化合物を用い、請求項1における有機化合物として、沸点が前記有機鉄化合物の熱分解温度より低い有機化合物を用い、請求項1に準じて電磁鋼板に被膜を形成し、さらに、該電磁鋼板を用いて請求項2に準じて鉄心を製作し、さらに、該鉄心を請求項3に準じて圧縮荷重を加えて熱処理し、前記有機鉄化合物を熱分解する、積層した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
- 請求項4に記載した積層した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、前記有機鉄化合物がナフテン酸鉄である、請求項4に記載した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
- 請求項4に記載した積層した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、前記有機化合物が、カルボン酸エステル類、グリコール類ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物である、請求項4に記載した積層した電磁鋼板の層間に酸化鉄FeOの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
- 積層した電磁鋼板の層間にマグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、請求項5に記載した方法により得られた鉄心を、圧縮荷重を加えて昇温し、請求項5に記載した酸化鉄FeOをマグヘマイトに酸化する、積層した電磁鋼板の層間にマグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
- 積層した電磁鋼板の層間にヘマタイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法は、請求項7に記載した方法により得られた鉄心に歪取焼鈍を実施し、請求項7に記載したマグヘマイトをヘマタイトに相転移する、積層した電磁鋼板の層間にヘマタイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する方法。
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