JP2014201831A - 部品ないしは基材ないしは素材の性質の改質 - Google Patents
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Abstract
【課題】 第一に、微粒子が生成される過程が、部品ないしは基材ないしは素材の表面で進行する。第二に、微粒どうしが吸着ないしは接合する、ないしは、微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着ないしは接合する。第三に、微粒子が非磁性体であっても、微粒子どうしが互いに吸着ないしは接合する、ないしは、微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着ないしは接合する。
【解決策】 熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、該部品ないしは該基材ないしは該素材を熱処理して前記有機金属化合物を熱分解し、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に金属微粒子が一斉に析出し、該金属微粒子の集まりが多層構造を形成して前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面を覆う。
【選択図】図1
【解決策】 熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、該部品ないしは該基材ないしは該素材を熱処理して前記有機金属化合物を熱分解し、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に金属微粒子が一斉に析出し、該金属微粒子の集まりが多層構造を形成して前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面を覆う。
【選択図】図1
Description
本発明は、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、微粒子の性質に基づく性質が、部品ないしは基材ないしは素材に、新たに付与される改質を行う技術に関わる。本発明において、基材とは、部品を製作する際に用いる材料を基材と定義し、素材とは、基材を製作する際に用いる原料を素材と定義する。例えば、銅板を加工して銅部品を製造する場合は、銅部品を加工する際に用いる材料である銅板が基材になり、銅板を製造する際に用いる原料である銅粉が素材になる。
従来における部品ないしは基材ないしは素材の性質を改質する技術は、部品ないしは基材ないしは素材の表面状態を変える表面処理を行った後に、必要となる性質に改質する技術である。つまり、表面処理と表面改質とは不可分の関係にあり、表面処理で表面状態を変えた上で表面改質を行う。例えば、表面に撥水性、濡れ性ないしは親水性などの性質を付与させる表面改質では、オゾン処理、プラズマ処理、紫外線照射、電子線照射などの手段によって表面状態を変えた後に、反応性を持つ反応基を表面に形成させる改質を行う。あるいは、必要とする性質を有する被膜を表面に形成する表面改質では、CVD、PVD、DLC、溶射、プライマー処理、化成処理などの手段で表面状態を変えた後に、表面に被膜を形成する。また、金属ないしは合金からなる部品ないしは基材を熱処理によって表面の状態を変えることで、表面の硬度や耐食性を向上させる表面改質を行う。さらに、合成樹脂からなる部品ないしは基材の表面を薬品処理、活性ガス処理、プライマー処理などによって表面状態を変え、この後、必要となる性質を表面に付与させる改質を行う。
以上に説明したように、従来の改質技術は、表面状態を変える表面処理を伴って改質を行うため、表面処理と改質との双方の費用が必要になる。また、表面処理の手段に応じて、改質された表面に様々な課題をもたらす。例えば、1.表面状態を変える処理の際に加えた物理的負荷ないしは化学的負荷が残留し、改質層が経時劣化を引き起こす、2.表面状態を変えた層が浅いため、表面の改質層と本体との結合強度が弱く、機械的応力や熱的応力などの負荷に改質層が耐えられない、3.表面状態が変えられた表面と改質層との結合力が弱いため、改質層が経時劣化する、4.表面処理に関わる費用が高価で汎用性がない、5.大量の部品や基材あるいは素材を同時に表面処理することが困難である、などの表面処理に関わる様々な課題が、部品ないしは基材ないしは素材の改質にもたらされている。
このため、表面処理に伴う課題が発生せず、あるいは、表面処理を不要とし、さらに部品ないしは基材ないしは素材を改質する技術が、1.材質や形状の違いによる制約がなく、汎用的に改質が行える、2.大量の部品ないしは基材ないしは素材を同時に改質できる、3.特殊な装置を用いず、高価な処理費用が不要で、安価な材料と安価な処理費用で改質ができる、などの特徴を持った安価で汎用性のある改質技術が必要とされている。
以上に説明したように、従来の改質技術は、表面状態を変える表面処理を伴って改質を行うため、表面処理と改質との双方の費用が必要になる。また、表面処理の手段に応じて、改質された表面に様々な課題をもたらす。例えば、1.表面状態を変える処理の際に加えた物理的負荷ないしは化学的負荷が残留し、改質層が経時劣化を引き起こす、2.表面状態を変えた層が浅いため、表面の改質層と本体との結合強度が弱く、機械的応力や熱的応力などの負荷に改質層が耐えられない、3.表面状態が変えられた表面と改質層との結合力が弱いため、改質層が経時劣化する、4.表面処理に関わる費用が高価で汎用性がない、5.大量の部品や基材あるいは素材を同時に表面処理することが困難である、などの表面処理に関わる様々な課題が、部品ないしは基材ないしは素材の改質にもたらされている。
このため、表面処理に伴う課題が発生せず、あるいは、表面処理を不要とし、さらに部品ないしは基材ないしは素材を改質する技術が、1.材質や形状の違いによる制約がなく、汎用的に改質が行える、2.大量の部品ないしは基材ないしは素材を同時に改質できる、3.特殊な装置を用いず、高価な処理費用が不要で、安価な材料と安価な処理費用で改質ができる、などの特徴を持った安価で汎用性のある改質技術が必要とされている。
前記したように、部品ないしは基材ないしは素材の性質を変える改質に関わる課題は、表面状態を変化させる表面処理に起因する。このため、表面処理を行わずに、汎用的な手段でかつ安価な費用で、部品ないしは基材ないしは素材を改質できないかを検討し本発明に至った。すなわち、部品ないしは基材ないしは素材の表面を、ナノ粒子と呼ばれる微粒子の集まりで覆うことで、部品ないしは基材ないしは素材の材質や形状に拘らず、部品ないしは基材ないしは素材に、微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する技術を見出した。
従来、ナノ粒子と呼ばれる数nmから数100nm程度の大きさからなる微粒子の集まりを、部品や基材あるいは素材の表面に接合させて被膜を形成し、この被膜の性質を、部品ないしは基材ないしは素材の性質に付与する改質を行う物理的な方法として、化学的蒸着法Chemical Vapor Deposition methodと呼ばれる方法がある。しかし、CVD法は、真空状態で物質が気化する高温状態にあるベルジャー内に、部品ないしは基材ないしは素材を配置し、蒸発した物質を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に堆積させて被膜を形成するため、ベルジャー内に配置できる部品ないしは基材ないしは素材の大きさと数とに制限があり、被膜を形成する時間が必要になる。また、部品ないしは基材ないしは素材は、真空状態で高温状態に耐えられる材質でなければならない。さらに、部品ないしは基材ないしは素材の表面全体に被膜を形成するには、部品ないしは基材の蒸着面を変えて繰り返し蒸着する、あるいは、素材を浮遊させて蒸着する必要がある。CVD処理自体が高価な処理費用を要し、この処理を複数回繰り返す、あるいは長時間処理すると、極めて高価な費用となる。
他の方法として、生成したナノ粒子を、部品ないしは基材ないしは素材に接合ないしは吸着させる方法が考えられる。この方法による従来技術は、以下に説明する問題点を持ち、ナノ粒子を部品ないしは基材ないしは素材に接合ないしは吸着させことはできない。
特許文献1から3に記載された強磁性体からなる微粒子は、共沈法で作成した沈殿物によって微粒子を製造する。すなわち、無機金属化合物の水溶液をアルカリ性の水溶液に滴下し、ないしは、無機金属化合物の水溶液にアルカリ性の水溶液を添加し、これによって得られた沈殿物を脱水、乾燥した後、高温で焼成する。この強磁性微粒子を、強磁性の部品ないしは基材ないしは素材に磁気吸着させれば、部品ないしは基材ないしは素材は強磁性微粒子の性質を持つ。しかし、共沈法による微粒子の作成では、沈殿物が凝集するため、焼成後の微粒子も凝集し、微粒子を個々に分散することができない。さらに、強磁性微粒子どうしは互いに磁気吸着するため、部品ないしは基材ないしは素材の表面を、凝集と磁気吸着とが混在する微粒子の集まりで満遍なく覆うことは、粒子がナノ粒子であるがゆえに取り扱いが難しく困難を極める。また、部品や基材の曲面や曲部や角部、凹凸や穴部に、あるいは、微細な素材の表面に吸着させることは、さらに困難を極める。さらに、部品ないしは基材ないしは素材が非磁性体であれば、強磁性微粒子を吸着させることはできない。
いっぽう、特許文献4に記載された鉄の酸化物とニッケルとが複合化された微粒子の製造方法は、カルボン酸ニッケル、鉄塩及び1級アミンの混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を作成し、この錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して鉄酸化物を含有する金属複合ニッケルナノ粒子のスラリーを生成する技術が記載されている。この技術も液相反応によって微粒子を生成するため、前記した共沈法と同様に、生成された微粒子が凝集し、微粒子を個々に分散することができない。また、微粒子が強磁性であるため、凝集と磁気吸着とが混在する微粒子の集まりで、部品ないしは基材ないしは素材の表面を満遍なく覆うことは、前記の強磁性微粒子と同様に困難を極める。さらに、部品ないしは基材ないしは素材が非磁性体であれば、強磁性微粒子を吸着させることはできない。
また、特許文献5に記載された誘電体であるチタン酸ランタンからなる微粒子の製造方法は、チタン化合物、ランタン化合物及びアルカリ金属水酸化物を純水に混合した原料ゾルを超臨界水で処理することで、純度の高いチタン酸ランタンが得られる技術が記載されている。超臨界水の温度は、水の臨界温度である374℃以上で、超臨界水の圧力は水の臨界圧力である22.1MPa(218気圧)以上である。この技術も液相反応によって微粒子を生成するため、前記した共沈法と同様に生成された微粒子が凝集し、微粒子を個々に分散することができない。また、微粒子が誘電体であるため、微粒子同士が互いに吸着しないため、部品ないしは基材ないしは素材の表面を、誘電体の微粒子で覆うことはできない。
以上に説明したように、ナノ粒子と呼ばれる微粒子は、いずれも液相反応によって微粒子を生成するため、生成された微粒子は凝集する。また、強磁性微粒子でなければ、微粒子どうしが吸着しない。仮に、部品ないしは基材ないしは素材に、凝集した強磁性微粒子を部分的に吸着ないしは接合できたとしても、表面全体を満遍なく覆うことは、扱う粒子がナノ粒子という極めて微細な微粒子であるが故に極めて困難を伴う。
従来、ナノ粒子と呼ばれる数nmから数100nm程度の大きさからなる微粒子の集まりを、部品や基材あるいは素材の表面に接合させて被膜を形成し、この被膜の性質を、部品ないしは基材ないしは素材の性質に付与する改質を行う物理的な方法として、化学的蒸着法Chemical Vapor Deposition methodと呼ばれる方法がある。しかし、CVD法は、真空状態で物質が気化する高温状態にあるベルジャー内に、部品ないしは基材ないしは素材を配置し、蒸発した物質を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に堆積させて被膜を形成するため、ベルジャー内に配置できる部品ないしは基材ないしは素材の大きさと数とに制限があり、被膜を形成する時間が必要になる。また、部品ないしは基材ないしは素材は、真空状態で高温状態に耐えられる材質でなければならない。さらに、部品ないしは基材ないしは素材の表面全体に被膜を形成するには、部品ないしは基材の蒸着面を変えて繰り返し蒸着する、あるいは、素材を浮遊させて蒸着する必要がある。CVD処理自体が高価な処理費用を要し、この処理を複数回繰り返す、あるいは長時間処理すると、極めて高価な費用となる。
他の方法として、生成したナノ粒子を、部品ないしは基材ないしは素材に接合ないしは吸着させる方法が考えられる。この方法による従来技術は、以下に説明する問題点を持ち、ナノ粒子を部品ないしは基材ないしは素材に接合ないしは吸着させことはできない。
特許文献1から3に記載された強磁性体からなる微粒子は、共沈法で作成した沈殿物によって微粒子を製造する。すなわち、無機金属化合物の水溶液をアルカリ性の水溶液に滴下し、ないしは、無機金属化合物の水溶液にアルカリ性の水溶液を添加し、これによって得られた沈殿物を脱水、乾燥した後、高温で焼成する。この強磁性微粒子を、強磁性の部品ないしは基材ないしは素材に磁気吸着させれば、部品ないしは基材ないしは素材は強磁性微粒子の性質を持つ。しかし、共沈法による微粒子の作成では、沈殿物が凝集するため、焼成後の微粒子も凝集し、微粒子を個々に分散することができない。さらに、強磁性微粒子どうしは互いに磁気吸着するため、部品ないしは基材ないしは素材の表面を、凝集と磁気吸着とが混在する微粒子の集まりで満遍なく覆うことは、粒子がナノ粒子であるがゆえに取り扱いが難しく困難を極める。また、部品や基材の曲面や曲部や角部、凹凸や穴部に、あるいは、微細な素材の表面に吸着させることは、さらに困難を極める。さらに、部品ないしは基材ないしは素材が非磁性体であれば、強磁性微粒子を吸着させることはできない。
いっぽう、特許文献4に記載された鉄の酸化物とニッケルとが複合化された微粒子の製造方法は、カルボン酸ニッケル、鉄塩及び1級アミンの混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を作成し、この錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して鉄酸化物を含有する金属複合ニッケルナノ粒子のスラリーを生成する技術が記載されている。この技術も液相反応によって微粒子を生成するため、前記した共沈法と同様に、生成された微粒子が凝集し、微粒子を個々に分散することができない。また、微粒子が強磁性であるため、凝集と磁気吸着とが混在する微粒子の集まりで、部品ないしは基材ないしは素材の表面を満遍なく覆うことは、前記の強磁性微粒子と同様に困難を極める。さらに、部品ないしは基材ないしは素材が非磁性体であれば、強磁性微粒子を吸着させることはできない。
また、特許文献5に記載された誘電体であるチタン酸ランタンからなる微粒子の製造方法は、チタン化合物、ランタン化合物及びアルカリ金属水酸化物を純水に混合した原料ゾルを超臨界水で処理することで、純度の高いチタン酸ランタンが得られる技術が記載されている。超臨界水の温度は、水の臨界温度である374℃以上で、超臨界水の圧力は水の臨界圧力である22.1MPa(218気圧)以上である。この技術も液相反応によって微粒子を生成するため、前記した共沈法と同様に生成された微粒子が凝集し、微粒子を個々に分散することができない。また、微粒子が誘電体であるため、微粒子同士が互いに吸着しないため、部品ないしは基材ないしは素材の表面を、誘電体の微粒子で覆うことはできない。
以上に説明したように、ナノ粒子と呼ばれる微粒子は、いずれも液相反応によって微粒子を生成するため、生成された微粒子は凝集する。また、強磁性微粒子でなければ、微粒子どうしが吸着しない。仮に、部品ないしは基材ないしは素材に、凝集した強磁性微粒子を部分的に吸着ないしは接合できたとしても、表面全体を満遍なく覆うことは、扱う粒子がナノ粒子という極めて微細な微粒子であるが故に極めて困難を伴う。
従って、部品ないしは基材ないしは素材の表面状態を変える処理を行わずに、部品ないしは基材ないしは素材の表面を微粒子の集まりで覆い、これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行うには、次の3つの条件が必要になる。第一に、微粒子が生成される過程が、部品ないしは基材ないしは素材の表面で進行する。つまり、微粒子の原料を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、吸着した原料を部品ないしは基材ないしは素材の表面で微粒子に変化させる。これによって、微粒子の集まりが、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆う。第二に、微粒同士が吸着ないしは接合する、ないしは、微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着ないしは接合する。これによって、微粒子の集まりが、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着ないしは接合する。微粒子が強磁性体であれば微粒子同士が磁気吸着して、部品ないしは基材ないしは素材を強磁性微粒子が覆う。さらに、部品ないしは基材ないしは素材が強磁性体であれば、強磁性微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面に磁気吸着する。しかし、微粒子が強磁性体である制約は、新たに付与される性質が著しく制限される。また、部品ないしは基材ないしは素材が強磁性体である制約は、新たな性質を付与する部品ないしは基材ないしは素材の材質を著しく制限する。第三に、微粒子が非磁性体であっても、微粒子同士が互いに吸着ないしは接合する、ないしは、微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着ないしは接合する。これによって、微粒子の材質の制約、ないしは、部品ないしは基材ないしは素材の材質の制約が解除できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第1特徴手段は、熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、該部品ないしは該基材ないしは該素材を熱処理して前記有機金属化合物を熱分解し、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に金属微粒子が一斉に析出し、該金属微粒子の集まりが多層構造を形成して前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面を覆い、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、前記金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行なわれる点にある。
つまり、この特徴手段によれば、熱処理によって金属と有機物とに分解する有機金属化合物を有機溶剤に分散し、この分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬し、有機溶剤を気化させると、部品ないしは基材ないしは素材の表面に有機金属化合物が吸着する。従って、部品ないしは基材ないしは素材が、どのような形状であっても、また、どのような大きさであっても、部品ないしは基材ないしは素材の表面に有機金属化合物が吸着する。この部品ないしは基材ないしは素材の集まりを熱処理すると、吸着した有機金属化合物の熱分解反応が、部品ないしは基材ないしは素材の表面で進行し、この結果、部品ないしは基材ないしは素材の表面に金属微粒子が一斉に析出し、この金属微粒子の集まりは、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材を覆う。従って、部品ないしは基材ないしは素材の材質が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質であっても、金属微粒子の集まりで覆われる。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される改質が行われる。
すなわち、一定量の有機金属化合物を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、この有機金属化合物を熱分解させると、一定の大きさ、具体的には10nm〜100nmの大きさの幅に収まる大きさの金属微粒子が、部品ないしは基材ないしは素材の表面に一斉に析出する。また、吸着量が相対的に多い場合は、金属微粒子は多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆い、吸着量が多いほど多層構造の層の数が増える。いっぽう、吸着量が相対的に少ない場合は、金属微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面を部分的に覆う。さらに、吸着量が極めて少ない場合は、析出する金属微粒子の大きさが10nmより小さくなり、金属微粒子は離散的に析出する。このように、部品ないしは基材ないしは素材を覆う金属微粒子の構造は、吸着する有機金属化合物の量によって変わる。
また、部品ないしは基材ないしは素材の表面は、表面粗さないしは平坦度と言われるミクロンレベルの大きさからなる凹凸を有する。有機金属化合物の分散液は、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸内にも入り込み、分散液の有機溶剤が気化すると、凹凸内にも有機金属化合物が吸着する。この有機金属化合物が熱分解すると、10nm〜100nmの大きさの幅に収まる金属微粒子は、凹凸内にも多数の金属微粒子が析出し、物理的なアンカー効果によって、部品ないしは基材ないしは素材の表面から剥がれにくくなる。いっぽう、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸外にも金属微粒子が同時に析出し、これによって、金属微粒子の集まりが部品ないしは基材ないしは素材の表面の全体を覆う。
さらに、有機金属化合物の熱分解で析出する金属微粒子は不純物を持たないため、活性状態にある金属微粒子として部品ないしは基材ないしは素材の表面に析出する。従って、金属微粒子が一斉に析出する際に、金属微粒子どうしは、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持って多層構造を形成するため、金属微粒子は部品ないしは基材ないしは素材の表面から剥がれない。つまり、有機金属化合物は、有機金属化合物を構成する有機物の沸点を超えると熱分解が始まり、金属と有機物とに分解する。さらに温度が上昇すると、有機物は気化熱を奪って気化し、全ての有機物が気化した瞬間に、金属微粒子が一斉に析出する。このため、金属微粒子は不純物を持たない活性状態にある。従って、金属微粒子が一斉に析出する際に、金属微粒子どうしは互いが接触する部位で金属結合によって接合する。また、部品ないしは基材ないしは素材の表面を形成する凹凸内にも、多数の金属微粒子が析出し、互いが接触する部位で金属結合すると共に、凹凸外に析出する金属微粒子と、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、金属微粒子の集まりは、一定の結合強度を持つ多層構造を形成して、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を覆う。
以上に説明したように、本特徴手段は前記した作用効果を持つため、4段落で説明した改質に必要な3つの条件を満たして、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行う。
すなわち、第一に、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させた有機金属化合物を熱分解させるため、部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進み、部品ないしは基材ないしは素材の表面に金属微粒子の集まりが析出する。従って、部品ないしは基材ないしは素材の表面状態を変えることなく、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される。また、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材でも、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できる。
第二に、有機金属化合物の熱分解によって析出する金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にある。このため、金属微粒子が一斉に析出した瞬間に、金属微粒子は互いが接触する部位で金属結合によって接合し、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を、金属微粒子の集まりが覆う。従って、この金属微粒子の集まりは、一定の結合強度を持って、部品ないし基材ないしは素材を覆う。
第三に、金属微粒子どうしが互いに金属結合で接合するため、金属微粒子は必ずしも強磁性の性質を持つ必要がない。これによって、新たに付与する性質の領域が、金属元素の領域に拡大できる。また、金属微粒子の集まりが、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うため、部品ないしは基材ないしは素材が必ずしも強磁性体である必要がない。このため、部品ないしは基材ないしは素材が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できる。
さらに、本特徴手段は、2段落で説明した改質に必要な3つの性質を兼備して、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行う。
すなわち、有機金属化合物が有機溶剤で分散された分散液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させ、この後、有機溶剤を気化させると、有機金属化合物が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着する。従って、部品ないしは基材ないしは素材の形状に拘らず、有機金属化合物が吸着する。さらに、有機金属化合物は、汎用的な有機物と金属塩との反応で容易に製造できる安価な工業薬品である。また、有機溶剤の沸点に晒すだけの熱処理、例えば、有機溶剤がメタノールであれば65℃に晒すため、極めて安価な熱処理になる。このように、大量の部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、有機金属化合物を吸着させる工程は、2段落で説明した3つの性質を兼備する。
次に、吸着した有機金属化合物を熱処理することで、部品ないしは基材ないしは素材が、金属微粒子の集まりで覆われる。このため、部品ないしは基材ないしは素材の材質が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材でも、新たな性質が付与できる。また、大量の部品ないしは基材ないしは素材を同時に熱処理することができるため、安価な熱処理費用で大量の部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、新たな性質を付与する改質が行える。このように、有機金属化合物を熱処理する工程は、2段落で説明した3つの性質を兼備する。
すなわち、一定量の有機金属化合物を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、この有機金属化合物を熱分解させると、一定の大きさ、具体的には10nm〜100nmの大きさの幅に収まる大きさの金属微粒子が、部品ないしは基材ないしは素材の表面に一斉に析出する。また、吸着量が相対的に多い場合は、金属微粒子は多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆い、吸着量が多いほど多層構造の層の数が増える。いっぽう、吸着量が相対的に少ない場合は、金属微粒子が部品ないしは基材ないしは素材の表面を部分的に覆う。さらに、吸着量が極めて少ない場合は、析出する金属微粒子の大きさが10nmより小さくなり、金属微粒子は離散的に析出する。このように、部品ないしは基材ないしは素材を覆う金属微粒子の構造は、吸着する有機金属化合物の量によって変わる。
また、部品ないしは基材ないしは素材の表面は、表面粗さないしは平坦度と言われるミクロンレベルの大きさからなる凹凸を有する。有機金属化合物の分散液は、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸内にも入り込み、分散液の有機溶剤が気化すると、凹凸内にも有機金属化合物が吸着する。この有機金属化合物が熱分解すると、10nm〜100nmの大きさの幅に収まる金属微粒子は、凹凸内にも多数の金属微粒子が析出し、物理的なアンカー効果によって、部品ないしは基材ないしは素材の表面から剥がれにくくなる。いっぽう、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸外にも金属微粒子が同時に析出し、これによって、金属微粒子の集まりが部品ないしは基材ないしは素材の表面の全体を覆う。
さらに、有機金属化合物の熱分解で析出する金属微粒子は不純物を持たないため、活性状態にある金属微粒子として部品ないしは基材ないしは素材の表面に析出する。従って、金属微粒子が一斉に析出する際に、金属微粒子どうしは、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持って多層構造を形成するため、金属微粒子は部品ないしは基材ないしは素材の表面から剥がれない。つまり、有機金属化合物は、有機金属化合物を構成する有機物の沸点を超えると熱分解が始まり、金属と有機物とに分解する。さらに温度が上昇すると、有機物は気化熱を奪って気化し、全ての有機物が気化した瞬間に、金属微粒子が一斉に析出する。このため、金属微粒子は不純物を持たない活性状態にある。従って、金属微粒子が一斉に析出する際に、金属微粒子どうしは互いが接触する部位で金属結合によって接合する。また、部品ないしは基材ないしは素材の表面を形成する凹凸内にも、多数の金属微粒子が析出し、互いが接触する部位で金属結合すると共に、凹凸外に析出する金属微粒子と、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、金属微粒子の集まりは、一定の結合強度を持つ多層構造を形成して、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を覆う。
以上に説明したように、本特徴手段は前記した作用効果を持つため、4段落で説明した改質に必要な3つの条件を満たして、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行う。
すなわち、第一に、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させた有機金属化合物を熱分解させるため、部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進み、部品ないしは基材ないしは素材の表面に金属微粒子の集まりが析出する。従って、部品ないしは基材ないしは素材の表面状態を変えることなく、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される。また、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材でも、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できる。
第二に、有機金属化合物の熱分解によって析出する金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にある。このため、金属微粒子が一斉に析出した瞬間に、金属微粒子は互いが接触する部位で金属結合によって接合し、部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を、金属微粒子の集まりが覆う。従って、この金属微粒子の集まりは、一定の結合強度を持って、部品ないし基材ないしは素材を覆う。
第三に、金属微粒子どうしが互いに金属結合で接合するため、金属微粒子は必ずしも強磁性の性質を持つ必要がない。これによって、新たに付与する性質の領域が、金属元素の領域に拡大できる。また、金属微粒子の集まりが、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うため、部品ないしは基材ないしは素材が必ずしも強磁性体である必要がない。このため、部品ないしは基材ないしは素材が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できる。
さらに、本特徴手段は、2段落で説明した改質に必要な3つの性質を兼備して、部品ないしは基材ないしは素材に、金属微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行う。
すなわち、有機金属化合物が有機溶剤で分散された分散液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させ、この後、有機溶剤を気化させると、有機金属化合物が部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着する。従って、部品ないしは基材ないしは素材の形状に拘らず、有機金属化合物が吸着する。さらに、有機金属化合物は、汎用的な有機物と金属塩との反応で容易に製造できる安価な工業薬品である。また、有機溶剤の沸点に晒すだけの熱処理、例えば、有機溶剤がメタノールであれば65℃に晒すため、極めて安価な熱処理になる。このように、大量の部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、有機金属化合物を吸着させる工程は、2段落で説明した3つの性質を兼備する。
次に、吸着した有機金属化合物を熱処理することで、部品ないしは基材ないしは素材が、金属微粒子の集まりで覆われる。このため、部品ないしは基材ないしは素材の材質が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材でも、新たな性質が付与できる。また、大量の部品ないしは基材ないしは素材を同時に熱処理することができるため、安価な熱処理費用で大量の部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、新たな性質を付与する改質が行える。このように、有機金属化合物を熱処理する工程は、2段落で説明した3つの性質を兼備する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第2特徴手段は、前記した第1特徴手段における有機金属化合物は、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、前記金属イオンとの間で共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物は熱分解によって金属微粒子を析出する有機金属化合物である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンとの間で共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解によって金属微粒子を析出する。従って、こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、金属微粒子を析出する原料となる。
すなわち、カルボン酸金属化合物においては、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で金属イオンが最も大きいイオン半径を有する。従って、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンとの間で共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合する酸素イオンと金属イオンとの結合距離が、他のイオン同士の結合距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を有するカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、金属イオンと結合する酸素イオンと金属イオンとの結合部位が最初に切れて、カルボン酸と金属とに分解する。さらに温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、全てのカルボン酸が気化した瞬間に金属微粒子が一斉に析出する。
また、カルボン酸金属化合物は、有機金属化合物の中で容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、沸点が有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、相対的に低い熱処理温度で金属が析出する。このようなカルボン酸金属化合物として、オレイン酸金属化合物、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物などが挙げられる。
安価な工業用薬品を部品ないしは基材ないしは素材の集まりに吸着させ、この部品ないしは基材ないしは素材の集まりを大気雰囲気の相対的に低い温度で熱処理するだけで、部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できるため、安価な製造費用で部品ないしは基材ないしは素材の性質が改質できる。
すなわち、カルボン酸金属化合物においては、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で金属イオンが最も大きいイオン半径を有する。従って、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンとの間で共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合する酸素イオンと金属イオンとの結合距離が、他のイオン同士の結合距離より長くなる。こうした分子構造上の特徴を有するカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、金属イオンと結合する酸素イオンと金属イオンとの結合部位が最初に切れて、カルボン酸と金属とに分解する。さらに温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、全てのカルボン酸が気化した瞬間に金属微粒子が一斉に析出する。
また、カルボン酸金属化合物は、有機金属化合物の中で容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、沸点が有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、相対的に低い熱処理温度で金属が析出する。このようなカルボン酸金属化合物として、オレイン酸金属化合物、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物などが挙げられる。
安価な工業用薬品を部品ないしは基材ないしは素材の集まりに吸着させ、この部品ないしは基材ないしは素材の集まりを大気雰囲気の相対的に低い温度で熱処理するだけで、部品ないしは基材ないしは素材の集まりに、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与できるため、安価な製造費用で部品ないしは基材ないしは素材の性質が改質できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第3特徴手段は、前記した第1特徴手段における金属微粒子の集まりからなる多層構造の表面に、新たな金属微粒子ないしは新たに金属酸化物の微粒子を一斉に析出させ、該新たな微粒子の集まりが前記多層構造の表層を形成し、これによって、前記多層構造は、表層と内部とが互いに異なる物質からなる微粒子で構成される新たな多層構造となり、該新たな多層構造が部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、前記新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行なわれる点にある。
つまり、この特徴手段によれば、前記した第1特徴手段における第一の金属微粒子の集まりの表面に、第二の金属微粒子を一斉に析出させると、第1特徴手段における多層構造の表層は、新たに第二の金属微粒子の集まりで構成される。こうした表層と内部とが互いに異なる金属元素で構成された金属微粒子の集まりで、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うと、部品ないしは基材ないしは素材に、第一の金属微粒子の性質に加え、第二の金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、新たに付与される性質の領域が格段に広がる。
すなわち、相対的に熱分解温度が低い第一の有機金属化合物と、相対的に熱分解温度が高い第二の有機金属化合物とを有機溶剤に分散させる。これら2種類の有機金属化合物が分散された液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬し、有機溶剤を気化させた後に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを熱処理する。最初に第一の有機金属化合物が熱分解して第一の金属微粒子の集まりが、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆う。さらに熱処理温度が上がると、第二の有機金属化合物が熱分解し、第二の金属微粒子の集まりが、第一の金属微粒子からなる多層構造の表面に一斉に析出して、多層構造の表層を第二の金属微粒子が形成する。この際、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合する。この理由は、多層構造の最表層を形成する第一の金属微粒子は、熱分解の途上にある第二の有機金属化合物と接しているため、活性な状態を保つことによる。また、第二の金属微粒子どうしも、析出した瞬間に互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子とからなる多層構造は、一定の結合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を覆う。なお、第一の金属微粒子が形成する多層構造の厚みは、第一の有機金属化合物の吸着量で決まり、第二の金属微粒子が形成する多層構造の厚みも、第二の有機金属化合物の吸着量で決まる。従って、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子のどちらの性質を優勢にするかに応じて、両者の吸着量を変える。
いっぽう、2種類の有機金属化合物の性質が、前記した性質と異なる場合がある。つまり、第二の金属微粒子を析出する有機金属化合物の熱分解温度が、第一の金属微粒子を析出する有機金属化合物の熱分解温度より低い場合、ないしは、第二の有機金属化合物を熱分解する雰囲気が、第一の有機金属化合物を熱分解する雰囲気と異なる場合がある。このような場合は、最初に、第一の金属微粒子の多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う処理を行う。次に、第二の有機金属化合物の分散液に、前記の部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬し、分散液の有機溶剤を気化させた後に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを熱処理する。これによって、第二の有機金属化合物が熱分解し、第二の金属微粒子が、第一の金属微粒子の集まりの表面に一斉に析出して多層構造の表層を形成する。前記と同様に、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子は、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。この理由は、第二の有機金属化合物を熱分解させる雰囲気が還元性雰囲気である場合は、第二の有機金属化合物を還元雰囲気で熱処理するに当たり、第一の金属微粒子からなる多層構造の最表層は、還元性雰囲気にさらされるため、新生金属の状態を保つことによる。また、第二の金属微粒子どうしも、微粒子が析出した瞬間に互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子とからなる多層構造は、一定の結合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、2種類の金属微粒子の性質に基づく新たな性質が、部品ないしは基材ないしは素材に付与され、新たに付与される性質の領域が格段に広がる。なお、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子とが、互いが接触する部位で金属結合して接合することは、必須要件にはならない。つまり、第二の金属微粒子どうしが互いに接合して一定の結合強度を持つため、第二の金属微粒子は、多層構造の表層から脱落しない。従って、第二の有機金属化合物を大気雰囲気で熱分解する場合であっても、第二の金属微粒子を析出する原料として用いることができる。
あるいは、部品ないしは基材ないしは素材に付与する新たな性質に応じて、第二の析出物質として金属酸化物を析出する場合がある。つまり、前記した第1特徴手段における多層構造の表層を金属酸化物の微粒子で構成し、部品ないしは基材ないしは素材に、金属酸化物の微粒子の性質に基づく新たな性質を付加する場合である。例えば、第一の析出物を強磁性の金属微粒子で構成し、第二の析出物を強磁性の金属酸化物の微粒子で構成すると、部品ないしは基材ないしは素材に、強磁性の金属の性質に加えて強磁性の金属酸化物の性質が付与される。すなわち、金属微粒子に接触して析出した金属酸化物の微粒子は、金属微粒子と金属結合しないが、双方が強磁性体であるため、金属微粒子との間に磁気吸引力が作用する。また、金属酸化物の微粒子どうしも磁気吸着する。また、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを、着磁機にかけて着磁させれば、強磁性微粒子どうしの磁気吸着力と磁気吸引力との双方が著しく増大し、金属酸化物の微粒子が多層構造から、さらに剥がれにくくなる。また、金属微粒子の層の厚みと金属酸化物の層の厚みとは自在に変えることができ、金属の性質ないしは金属酸化物の性質のいずれかを優勢にすることができる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、前記した第1特徴手段における多層構造を複数種類の物質からなる微粒子で構成することによって、部品ないしは基材ないしは素材に付与される性質の領域が格段に広がる。また、複数種類の微粒子が構成する多層構造の層の厚みを自在に変えられるため、新たに付与される性質の領域がさらに広がる。
すなわち、相対的に熱分解温度が低い第一の有機金属化合物と、相対的に熱分解温度が高い第二の有機金属化合物とを有機溶剤に分散させる。これら2種類の有機金属化合物が分散された液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬し、有機溶剤を気化させた後に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを熱処理する。最初に第一の有機金属化合物が熱分解して第一の金属微粒子の集まりが、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆う。さらに熱処理温度が上がると、第二の有機金属化合物が熱分解し、第二の金属微粒子の集まりが、第一の金属微粒子からなる多層構造の表面に一斉に析出して、多層構造の表層を第二の金属微粒子が形成する。この際、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合する。この理由は、多層構造の最表層を形成する第一の金属微粒子は、熱分解の途上にある第二の有機金属化合物と接しているため、活性な状態を保つことによる。また、第二の金属微粒子どうしも、析出した瞬間に互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子とからなる多層構造は、一定の結合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材の表面の凹凸を含む表面全体を覆う。なお、第一の金属微粒子が形成する多層構造の厚みは、第一の有機金属化合物の吸着量で決まり、第二の金属微粒子が形成する多層構造の厚みも、第二の有機金属化合物の吸着量で決まる。従って、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子のどちらの性質を優勢にするかに応じて、両者の吸着量を変える。
いっぽう、2種類の有機金属化合物の性質が、前記した性質と異なる場合がある。つまり、第二の金属微粒子を析出する有機金属化合物の熱分解温度が、第一の金属微粒子を析出する有機金属化合物の熱分解温度より低い場合、ないしは、第二の有機金属化合物を熱分解する雰囲気が、第一の有機金属化合物を熱分解する雰囲気と異なる場合がある。このような場合は、最初に、第一の金属微粒子の多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う処理を行う。次に、第二の有機金属化合物の分散液に、前記の部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬し、分散液の有機溶剤を気化させた後に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを熱処理する。これによって、第二の有機金属化合物が熱分解し、第二の金属微粒子が、第一の金属微粒子の集まりの表面に一斉に析出して多層構造の表層を形成する。前記と同様に、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子は、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。この理由は、第二の有機金属化合物を熱分解させる雰囲気が還元性雰囲気である場合は、第二の有機金属化合物を還元雰囲気で熱処理するに当たり、第一の金属微粒子からなる多層構造の最表層は、還元性雰囲気にさらされるため、新生金属の状態を保つことによる。また、第二の金属微粒子どうしも、微粒子が析出した瞬間に互いが接触する部位で金属結合によって接合する。このため、第一の金属微粒子と第二の金属微粒子とからなる多層構造は、一定の結合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、2種類の金属微粒子の性質に基づく新たな性質が、部品ないしは基材ないしは素材に付与され、新たに付与される性質の領域が格段に広がる。なお、第一の金属微粒子と接触する第二の金属微粒子とが、互いが接触する部位で金属結合して接合することは、必須要件にはならない。つまり、第二の金属微粒子どうしが互いに接合して一定の結合強度を持つため、第二の金属微粒子は、多層構造の表層から脱落しない。従って、第二の有機金属化合物を大気雰囲気で熱分解する場合であっても、第二の金属微粒子を析出する原料として用いることができる。
あるいは、部品ないしは基材ないしは素材に付与する新たな性質に応じて、第二の析出物質として金属酸化物を析出する場合がある。つまり、前記した第1特徴手段における多層構造の表層を金属酸化物の微粒子で構成し、部品ないしは基材ないしは素材に、金属酸化物の微粒子の性質に基づく新たな性質を付加する場合である。例えば、第一の析出物を強磁性の金属微粒子で構成し、第二の析出物を強磁性の金属酸化物の微粒子で構成すると、部品ないしは基材ないしは素材に、強磁性の金属の性質に加えて強磁性の金属酸化物の性質が付与される。すなわち、金属微粒子に接触して析出した金属酸化物の微粒子は、金属微粒子と金属結合しないが、双方が強磁性体であるため、金属微粒子との間に磁気吸引力が作用する。また、金属酸化物の微粒子どうしも磁気吸着する。また、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを、着磁機にかけて着磁させれば、強磁性微粒子どうしの磁気吸着力と磁気吸引力との双方が著しく増大し、金属酸化物の微粒子が多層構造から、さらに剥がれにくくなる。また、金属微粒子の層の厚みと金属酸化物の層の厚みとは自在に変えることができ、金属の性質ないしは金属酸化物の性質のいずれかを優勢にすることができる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、前記した第1特徴手段における多層構造を複数種類の物質からなる微粒子で構成することによって、部品ないしは基材ないしは素材に付与される性質の領域が格段に広がる。また、複数種類の微粒子が構成する多層構造の層の厚みを自在に変えられるため、新たに付与される性質の領域がさらに広がる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第4特徴手段は、前記した第3特徴手段における新たな金属微粒子を析出する物質は、前記した第2特徴手段におけるカルボン酸金属化合物、ないしは、金属イオンないしは金属原子が、配位子イオンないしは配位子原子に配位結合する金属錯体であり、該カルボン酸金属化合物ないしは該金属錯体が熱分解することで、新たな金属微粒子が析出する点にある。
つまり、この特徴手段によれば、前記した第2特徴手段に記載したカルボン酸金属化合物に加えて、金属イオンないしは金属原子が、配位子イオンないしは配位子原子と配位結合する金属錯体も、熱分解によって金属微粒子を析出する。従って、このような分子構造上の特徴を持つ金属錯体も、金属微粒子を析出する原料になる。但し、酸素イオンが配位子イオンとなって、金属イオンに近づいて配位結合する金属錯体は、熱分解で金属酸化物が析出するため、金属微粒子の原料にはならない。
すなわち、金属イオンないしは金属原子が、配位子イオンないしは配位子原子と配位結合する金属錯体は、還元雰囲気ないしは大気雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断される。さらに温度が上がると、金属と結合していた有機物が気化熱を奪って気化し、全ての有機物が気化した瞬間に金属微粒子が析出する。こうした金属錯体の中に、貴金属が熱分解で析出する貴金属錯体がある。このような貴金属錯体として、アセチルアセナートC5H7O2 −が配位子イオンとなって貴金属イオンと配位結合するアセチルアセトン錯体、アンモニアNH3が配位子となって貴金属と配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−ないしは、塩素イオンCl−とアンモニアイオンNH4 +とが配位子イオンとなって貴金属と配位結合するクロロ錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって貴金属イオンと配位結合するシアノ錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって貴金属と配位結合するブロモ錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって貴金属と配位結合するヨード錯体などの貴金属錯体が挙げられる。こうした貴金属錯体は、前記したカルボン酸金属化合物より高価な材料であるため、貴金属錯体を使用する量を極僅かにし、多層構造の表層を極薄い層として形成し、部品ないしは基材ないしは素材の表面を多層構造で覆うことで、貴金属の微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行うことが望ましい。
すなわち、金属イオンないしは金属原子が、配位子イオンないしは配位子原子と配位結合する金属錯体は、還元雰囲気ないしは大気雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断される。さらに温度が上がると、金属と結合していた有機物が気化熱を奪って気化し、全ての有機物が気化した瞬間に金属微粒子が析出する。こうした金属錯体の中に、貴金属が熱分解で析出する貴金属錯体がある。このような貴金属錯体として、アセチルアセナートC5H7O2 −が配位子イオンとなって貴金属イオンと配位結合するアセチルアセトン錯体、アンモニアNH3が配位子となって貴金属と配位結合するアンミン錯体、塩素イオンCl−ないしは、塩素イオンCl−とアンモニアイオンNH4 +とが配位子イオンとなって貴金属と配位結合するクロロ錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって貴金属イオンと配位結合するシアノ錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって貴金属と配位結合するブロモ錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって貴金属と配位結合するヨード錯体などの貴金属錯体が挙げられる。こうした貴金属錯体は、前記したカルボン酸金属化合物より高価な材料であるため、貴金属錯体を使用する量を極僅かにし、多層構造の表層を極薄い層として形成し、部品ないしは基材ないしは素材の表面を多層構造で覆うことで、貴金属の微粒子の性質に基づく新たな性質を付与する改質を行うことが望ましい。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第5特徴手段は、前記した第3特徴手段における新たに金属酸化物の微粒子が析出する物質は、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、前記金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物が熱分解することで、新たに金属酸化物の微粒子が析出する点にある。
つまり、この特徴手段によれば、金属イオンと結合する酸素イオンが、金属イオンに近づいて金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解によって金属酸化物の微粒子を析出する。従って、こうした分子構造上の特徴を有するカルボン酸金属化合物は、金属酸化物の微粒子を析出する原料になる。
すなわち、カルボン酸金属化合物の中で、金属イオンに共有結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子イオンとなって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオン半径を有する金属イオンに配位子である酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンと配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンと酸素イオンとの距離は長くなる。こうした分子構造上の特徴を有するカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンと酸素イオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸が完全に気化した後に金属酸化物の微粒子が一斉に析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。
前記したカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物の中で容易に合成することができる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。また、前記したカルボン酸金属化合物は、原料のカルボン酸の沸点が有機酸の中で相対的に低いため、熱分解しやすい有機金属化合物である。従って、大気雰囲気の相対的に低い熱処理温度で金属酸化物が析出する。
すなわち、カルボン酸金属化合物の中で、金属イオンに共有結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子イオンとなって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオン半径を有する金属イオンに配位子である酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンと配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンと酸素イオンとの距離は長くなる。こうした分子構造上の特徴を有するカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンと酸素イオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸が完全に気化した後に金属酸化物の微粒子が一斉に析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。
前記したカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物の中で容易に合成することができる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。また、前記したカルボン酸金属化合物は、原料のカルボン酸の沸点が有機酸の中で相対的に低いため、熱分解しやすい有機金属化合物である。従って、大気雰囲気の相対的に低い熱処理温度で金属酸化物が析出する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第6特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造で、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく撥水性が、前記部品ないしは前記基材の表面に付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、部品ないしは基材が、ナノレベルの大きさの微粒子によって覆われ、部品ないしは基材の表面に、微粒子の大きさに基づく凹凸が構成される。このナノレベルの大きさからなる凹凸の全表面積は、微粒子の数が莫大な数であるため、莫大な広さの表面積を有することになり、いわゆるフラクタル面に近い面になる。このような部品ないしは基材に液滴が接触すると、液滴の表面張力によってナノレベルの大きさの凹凸に液体が入り込めず、液滴の液面は莫大な数の微粒子の凸部と点接触で接する。この結果、微粒子で覆われた部品ないしは基材は、接触角が180度に近い超撥水性を示す。つまり、ミリ単位の微細な液滴であっても、液滴の大きさに比べて微粒子が6桁近く小さいため、微細な液滴は莫大な数の微粒子の表面と点接触で接し、部品ないしは基材の表面はフラクタル面に近い面を形成し、超撥水性に近い性質を示す。
部品ないしは基材が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、撥水性が付与される部品ないしは基材の材質の制約はない。また、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の形状がどのような形状であっても、部品ないしは基材が微粒子で覆われ、部品ないしは基材の表面全体に撥水性が付与される。
部品ないしは基材が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、撥水性が付与される部品ないしは基材の材質の制約はない。また、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の形状がどのような形状であっても、部品ないしは基材が微粒子で覆われ、部品ないしは基材の表面全体に撥水性が付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第7特徴手段は、前記した第6手段における撥水性が新たに付与される基材は、スクリーン印刷で用いるメタルマスク版、ないしは液体を噴射するノズル、ないしはガラス製品のいずれかの基材であって、該いずれかの基材の表面を微粒子からなる多層構造で覆うことで、該いずれかの基材の表面に、前記微粒子の大きさに基づく撥水性が、新たに付与される改質が行なわれる点にある。
つまり、この特徴手段によれば、メタルマスク版ないしはノズルないしはガラス製品からなるいずれかの基材を、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで覆うと、基材の表面は、ナノレベルの凹凸になり、このナノレベルの凹凸によって撥水性が付与される。
すなわち、スクリーン印刷に用いるメタルマスク版の集まりを、例えば、カルボン酸銅のメタノール分散液に浸漬し、メタノールを気化させると、メタルマスク版の表面にカルボン酸銅が吸着する。このメタルマスク版の集まりを、カルボン酸銅の熱分解反応が完了する温度に昇温させると、メタルマスク版に銅微粒子が一斉に析出し、銅微粒子の集まりがメタルマスク版を覆う。これによって、メタルマスク版の表面に撥水性が付与される。この結果、ペースト剤やレジスト剤がメタルマスク版から容易に剥離し、メタルマスク版によるスクリーン印刷精度が大幅に向上する。また、メタルマスク版の洗浄が不要になる。
あるいは、インクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッド、あるいは、液晶表示パネルやプラズマ表示パネルなどの製造に用いるガラス基板、半導体ウェハ、半導体製造装置用のマスク基板などの各種基板の表面に、フォトレジスト液、カラーレジスト液、現像液、超純水などの各種液体を供給するための液体噴射ノズルを、前記した製造方法に準じて銅微粒子の集まりで覆うと、これらの液体を供給するノズルの表面に撥水性が付与される。この結果、インクジェットヘッドにおいては、ノズルプレートの表面にインクが付着することがなくなり、インクの吐出方向が安定し、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることができ、画像品質が劣化しなくなる。また、フォトレジスト液、カラーレジスト液、現像液、超純水などの各種液体を噴射するノズルの先端に、異物が付着することがなくなり、ノズルを洗浄することなく、半永久的にノズルが使用できる。
また、自動車用ウィンドウガラス、フロントガラス、サイドガラスおよび住居用ウィンドウガラスなどの様々なガラス製品を、前記した製造方法に準じて銅微粒子の集まりで覆うと、ガラスの表面に撥水性とともに、撥油性と防汚性とが付与される。また、ナノレベルの大きさの凹凸によって、ガラス表面での光の乱反射がなくなる。
撥水性を付与する事例は、前記した事例に限定されることはない。部品ないしは基材が、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、その表面を微粒子の集まりで覆うことで、部品ないしは基材に撥水性が付与できる。また、微粒子の材質は銅に限定されることはなく、カルボン酸金属化合物の熱分解で析出する金属であれば、金属微粒子の大きさに基づく撥水性が、部品ないしは基材の表面に付与できる。
すなわち、スクリーン印刷に用いるメタルマスク版の集まりを、例えば、カルボン酸銅のメタノール分散液に浸漬し、メタノールを気化させると、メタルマスク版の表面にカルボン酸銅が吸着する。このメタルマスク版の集まりを、カルボン酸銅の熱分解反応が完了する温度に昇温させると、メタルマスク版に銅微粒子が一斉に析出し、銅微粒子の集まりがメタルマスク版を覆う。これによって、メタルマスク版の表面に撥水性が付与される。この結果、ペースト剤やレジスト剤がメタルマスク版から容易に剥離し、メタルマスク版によるスクリーン印刷精度が大幅に向上する。また、メタルマスク版の洗浄が不要になる。
あるいは、インクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッド、あるいは、液晶表示パネルやプラズマ表示パネルなどの製造に用いるガラス基板、半導体ウェハ、半導体製造装置用のマスク基板などの各種基板の表面に、フォトレジスト液、カラーレジスト液、現像液、超純水などの各種液体を供給するための液体噴射ノズルを、前記した製造方法に準じて銅微粒子の集まりで覆うと、これらの液体を供給するノズルの表面に撥水性が付与される。この結果、インクジェットヘッドにおいては、ノズルプレートの表面にインクが付着することがなくなり、インクの吐出方向が安定し、記録媒体上の所定位置にインク液滴を着弾させることができ、画像品質が劣化しなくなる。また、フォトレジスト液、カラーレジスト液、現像液、超純水などの各種液体を噴射するノズルの先端に、異物が付着することがなくなり、ノズルを洗浄することなく、半永久的にノズルが使用できる。
また、自動車用ウィンドウガラス、フロントガラス、サイドガラスおよび住居用ウィンドウガラスなどの様々なガラス製品を、前記した製造方法に準じて銅微粒子の集まりで覆うと、ガラスの表面に撥水性とともに、撥油性と防汚性とが付与される。また、ナノレベルの大きさの凹凸によって、ガラス表面での光の乱反射がなくなる。
撥水性を付与する事例は、前記した事例に限定されることはない。部品ないしは基材が、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、その表面を微粒子の集まりで覆うことで、部品ないしは基材に撥水性が付与できる。また、微粒子の材質は銅に限定されることはなく、カルボン酸金属化合物の熱分解で析出する金属であれば、金属微粒子の大きさに基づく撥水性が、部品ないしは基材の表面に付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第8特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造で、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく潤滑性が、前記部品ないしは前記基材の表面に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、部品ないしは基材が、ナノレベルの大きさの微粒子によって覆われ、部品ないしは基材の表面は、ナノレベルの凹凸に基づく平坦度を有する。この平坦度は、鏡面仕上げの平坦度より1桁優れるため、表面は優れた潤滑性を持つ。
すなわち、部品ないしは基材が、相手の部品ないしは基材と接する場合は、部品ないしは基材が微粒子で覆われているため、相手の部品ないしは基材と、複数の接触点からなる点接触で接触し、接触面積が激減することで、接触時における摩擦力は激減する。これによって、接触による摩耗が著しく低減すると共に、異音の発生や摩擦熱の発生など、接触に係わる多くの問題点が同時に払拭できる。また、部品ないしは基材を覆う微粒子が、相手の部品ないしは基材と接触して応力を受けた際に、応力は接触点に対して接線方向に働く。微粒子を強磁性の物質で構成した場合は、微粒子同士が互いに磁気吸着しているため、接触応力が接触点の接線方向に作用する際に微粒子は滑る。微粒子が滑ることで、接触応力の大半が滑りエネルギーに変換され、微粒子は磁気吸着した微粒子から剥がれず、また、接触する相手の部品ないしは基材に損傷を与えない。
潤滑性が付与される部品ないしは基材は、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは部材にも、潤滑性が付与できる。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部にも、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われるため、潤滑性が付与できる。
すなわち、部品ないしは基材が、相手の部品ないしは基材と接する場合は、部品ないしは基材が微粒子で覆われているため、相手の部品ないしは基材と、複数の接触点からなる点接触で接触し、接触面積が激減することで、接触時における摩擦力は激減する。これによって、接触による摩耗が著しく低減すると共に、異音の発生や摩擦熱の発生など、接触に係わる多くの問題点が同時に払拭できる。また、部品ないしは基材を覆う微粒子が、相手の部品ないしは基材と接触して応力を受けた際に、応力は接触点に対して接線方向に働く。微粒子を強磁性の物質で構成した場合は、微粒子同士が互いに磁気吸着しているため、接触応力が接触点の接線方向に作用する際に微粒子は滑る。微粒子が滑ることで、接触応力の大半が滑りエネルギーに変換され、微粒子は磁気吸着した微粒子から剥がれず、また、接触する相手の部品ないしは基材に損傷を与えない。
潤滑性が付与される部品ないしは基材は、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは部材にも、潤滑性が付与できる。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部にも、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われるため、潤滑性が付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第9特徴手段は、前記した第8特徴手段における潤滑性が付与される部品が、摺動部品ないしは被摺動部品であって、微粒子の集まりからなる多層構造で、前記摺動部品ないしは前記被摺動部品の表面を覆うことで、前記微粒子の大きさに基づく潤滑性が、前記摺動部品ないしは前記被摺動部品の表面に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、この特徴手段によれば、軸受、歯車、ギアなどの摺動部品を、ないしは、こうした摺動部品に摺接する被摺動部品を、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで覆うと、摺動部品ないしは被摺動部品の表面はナノレベルの凹凸になり、これによって、微粒子の大きさに基づく潤滑性が、摺動部品ないしは被摺動部品の表面に新たに付与される。
従来、非晶質炭素材料や粉末合金材料からなる焼結体や熱可塑性樹脂の成形体などからなる摺動部品、ないしは、被摺動部品は、その摺動部ないしは被摺動部に、フッ素樹脂やフッ素樹脂の複合材やダイアモンドライクカーボンなどの摺動材料が使用されている。フッ素樹脂やフッ素樹脂の複合材からなる摺動材料は、耐摩耗性が十分でなく耐久性に劣る。また、ダイアモンドライクカーボンは、硬い物質であるため、表面の平坦度を上げることができず、摩擦力が大きく、相手部材に対する攻撃性のみならず摩擦熱および異音を発生する。このような摺動上の問題点の根本的な要因は、摺動部ないしは被摺動部における摩擦力に集約される。つまり、摩擦力を激減させることで、摺動に係わる多くの問題点が同時に解決できる。しかしながら、従来の技術では、鏡面仕上げによるサブミクロンの平坦度が限度である。従って、摺動部ないしは被摺動部の表面を、様々な摺動材料で構成したとしても、摺動部ないしは被摺動部における摩擦力を著しく低減することはできず、摺動に係わる根本的な問題の解決にはならない。
摺動部品ないしは被摺動部品を、ナノレベルの大きさからなる微粒子で覆い、部品の表面をナノレベルの凹凸からなる平坦度とすることで、相手の部品ないしは基材と摺接する際に、複数の接触点からなる点接触で接触し、摺接時における摩擦力が激減できる。なお、摺動部品ないしは被摺動部品の形状は、その用途に応じて種々の形態とすることができ、平板状、凸状、窪み状、円筒状又は円管状であって円筒の外表面に摺動部ないしは被摺動部を有するもの、円管状であってその内部の表面に摺動部ないしは被摺動部を有するものなど種々の形状が挙げられ、これら摺動部ないしは被摺動部を、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで覆うことができ、潤滑性を付与することができる。また、潤滑性を付与する部品ないしは基材は、前記した摺動部品ないしは被摺動部品に限定されず、カルボン酸金属化合物が熱分解される温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、微粒子の大きさに基づく潤滑性が付与される。
従来、非晶質炭素材料や粉末合金材料からなる焼結体や熱可塑性樹脂の成形体などからなる摺動部品、ないしは、被摺動部品は、その摺動部ないしは被摺動部に、フッ素樹脂やフッ素樹脂の複合材やダイアモンドライクカーボンなどの摺動材料が使用されている。フッ素樹脂やフッ素樹脂の複合材からなる摺動材料は、耐摩耗性が十分でなく耐久性に劣る。また、ダイアモンドライクカーボンは、硬い物質であるため、表面の平坦度を上げることができず、摩擦力が大きく、相手部材に対する攻撃性のみならず摩擦熱および異音を発生する。このような摺動上の問題点の根本的な要因は、摺動部ないしは被摺動部における摩擦力に集約される。つまり、摩擦力を激減させることで、摺動に係わる多くの問題点が同時に解決できる。しかしながら、従来の技術では、鏡面仕上げによるサブミクロンの平坦度が限度である。従って、摺動部ないしは被摺動部の表面を、様々な摺動材料で構成したとしても、摺動部ないしは被摺動部における摩擦力を著しく低減することはできず、摺動に係わる根本的な問題の解決にはならない。
摺動部品ないしは被摺動部品を、ナノレベルの大きさからなる微粒子で覆い、部品の表面をナノレベルの凹凸からなる平坦度とすることで、相手の部品ないしは基材と摺接する際に、複数の接触点からなる点接触で接触し、摺接時における摩擦力が激減できる。なお、摺動部品ないしは被摺動部品の形状は、その用途に応じて種々の形態とすることができ、平板状、凸状、窪み状、円筒状又は円管状であって円筒の外表面に摺動部ないしは被摺動部を有するもの、円管状であってその内部の表面に摺動部ないしは被摺動部を有するものなど種々の形状が挙げられ、これら摺動部ないしは被摺動部を、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで覆うことができ、潤滑性を付与することができる。また、潤滑性を付与する部品ないしは基材は、前記した摺動部品ないしは被摺動部品に限定されず、カルボン酸金属化合物が熱分解される温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、微粒子の大きさに基づく潤滑性が付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第10特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造で、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく光学的性質が、ないしは、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の厚みに基づく光学的性質が、前記部品ないしは前記基材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、部品ないしは基材がナノレベルの大きさの微粒子によって覆われるため、表面がナノレベルの凹凸となり、表面での光の乱反射がなくなる。さらに、微粒子の集まりからなる多層構造の厚みが、可視光線の波長より薄く、紫外線の波長より厚ければ、多層構造を可視光線は透過するが、紫外線は透過できず、紫外線除去の性質が付与される。また、部品ないしは基材が、ガラスなどからなる透明基材で構成される場合は、この透明基材を覆う多層構造ないしは新たな多層構造の表層を、光の屈折率が小さい金属、例えば、屈折率が0.6である銅からなる微粒子で構成すれば、屈折率が1.5であるガラスなどからなる透明基材の屈折率より充分に小さいため視覚反射率が低くなる。こうした光学的性質が、部品ないしは基材を微粒子の多層構造で覆うだけで付与できる。
光学的性質が付与できる部品ないしは基材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは部材にも、前記した光学的性質が付与される。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部や穴部にも、前記の光学的性質が付与できる。
光学的性質が付与できる部品ないしは基材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは部材にも、前記した光学的性質が付与される。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部や穴部にも、前記の光学的性質が付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第11特徴手段は、前記した第10特徴手段における光学的性質が付与される基材は、ガラスから構成される基材であって、微粒子の集まりからなる多層構造で、前記基材の表面を覆うことで、前記多層構造の性質に基づく光学的性質が、前記基材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、自動車用ウィンドウガラス、フロントガラス、サイドガラスおよび住居用ウィンドウガラスなどのガラスから構成される基材を、ナノレベルの大きさからなる微粒子の集まりで覆うと、ガラスから構成される基材に、微粒子の大きさと微粒子が形成する層の厚みとに基づく光学的性質が付与される。
すなわち、ガラスから構成される基材を、例えば、表層がマグヘマイト微粒子で構成され、内部が鉄微粒子で構成される多層構造で覆う。つまり、マグヘマイトは安定した強磁性の酸化物であるため、大気雰囲気に長期に晒されても変質しない。また、鉄微粒子と磁気吸着し、鉄微粒子の酸化を防止する。さらに、微粒子の集まりで覆われた基材を、着磁機にかけて着磁すれば、マグヘマイト微粒子同士の磁気吸着力と、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との磁気吸引力とが増大し、マグヘマイト微粒子は表面から脱落しない。
鉄微粒子の多くが基材の表面の凹凸を埋め、僅かの層からなる鉄微粒子が凹凸の表面に析出する構成とすることで、隣接する鉄微粒子どうしが金属結合で接合し、基材の表面の凹凸に入り込んだ鉄微粒子は、アンカー効果で基材の表面に結合する。そして、マグヘマイト微粒子は、この鉄微粒子の層の上に僅かな層を形成して、鉄微粒子と磁気吸着する。マグヘマイト微粒子と鉄微粒子とからなる多層構造の厚みを、可視光線の波長より薄く、紫外線の波長より厚い、200nmから300nmの厚みの層として形成すれば、可視光線は透過するが、紫外線は透過することができず、紫外線除去の性質を持つ。さらに、ナノレベルの大きさの微粒子で覆われるため、表面での光の乱反射がなくなる。また、基材に撥水性と撥油性と防汚性とが付与される。
以上に説明したように、ガラスから構成される基材を微粒子で覆うことで、微粒子の大きさと微粒子が形成する層の厚みに基づく光学的性質が付与される。光学的性質が付与される基材は、ガラスの製品に制限されることはない。金属微粒子ないしは金属酸化物の微粒子を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる基材であっても光学的性質が付与される。さらに、微粒子の大きさが、基材の表面粗さより2桁以上小さいため、基材の曲面や曲部や角部や穴部も微粒子で覆われ、前記した光学的性質が付与される。
すなわち、ガラスから構成される基材を、例えば、表層がマグヘマイト微粒子で構成され、内部が鉄微粒子で構成される多層構造で覆う。つまり、マグヘマイトは安定した強磁性の酸化物であるため、大気雰囲気に長期に晒されても変質しない。また、鉄微粒子と磁気吸着し、鉄微粒子の酸化を防止する。さらに、微粒子の集まりで覆われた基材を、着磁機にかけて着磁すれば、マグヘマイト微粒子同士の磁気吸着力と、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との磁気吸引力とが増大し、マグヘマイト微粒子は表面から脱落しない。
鉄微粒子の多くが基材の表面の凹凸を埋め、僅かの層からなる鉄微粒子が凹凸の表面に析出する構成とすることで、隣接する鉄微粒子どうしが金属結合で接合し、基材の表面の凹凸に入り込んだ鉄微粒子は、アンカー効果で基材の表面に結合する。そして、マグヘマイト微粒子は、この鉄微粒子の層の上に僅かな層を形成して、鉄微粒子と磁気吸着する。マグヘマイト微粒子と鉄微粒子とからなる多層構造の厚みを、可視光線の波長より薄く、紫外線の波長より厚い、200nmから300nmの厚みの層として形成すれば、可視光線は透過するが、紫外線は透過することができず、紫外線除去の性質を持つ。さらに、ナノレベルの大きさの微粒子で覆われるため、表面での光の乱反射がなくなる。また、基材に撥水性と撥油性と防汚性とが付与される。
以上に説明したように、ガラスから構成される基材を微粒子で覆うことで、微粒子の大きさと微粒子が形成する層の厚みに基づく光学的性質が付与される。光学的性質が付与される基材は、ガラスの製品に制限されることはない。金属微粒子ないしは金属酸化物の微粒子を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる基材であっても光学的性質が付与される。さらに、微粒子の大きさが、基材の表面粗さより2桁以上小さいため、基材の曲面や曲部や角部や穴部も微粒子で覆われ、前記した光学的性質が付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第12特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造が、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造の表層が、電気導電性と熱伝導性に優れる金属微粒子で構成され、該多層構造ないしは該新たな多層構造によって、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、多層構造を、ないしは、新たな多層構造の表層を、電気導電性と熱伝導性に優れた金属微粒子で構成し、この多層構造ないしはこの新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆えば、部品ないしは基材ないしは素材は、電気導電性と熱伝導性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。例えば、部品ないしは基材ないしは素材が、ガラスやセラミックスなどのように、熱伝導性が低く電気絶縁性であっても、ガラスやセラミックスを銅微粒子の集まりで覆えば、電気導電性のみならず、電磁波遮蔽性や帯電防止性などの電気導電性に基づく性質と熱伝導性とが、新たに付与される改質が行われる。また、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、木材や合成樹脂に対しても、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。
すなわち、例えば、カルボン酸銅を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、カルボン酸銅を熱分解すると銅微粒子が析出して、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、部品ないしは基材ないしは素材の表層が、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質を持つことになる。
また、カルボン酸銅より熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物、例えば熱分解で鉄を析出するカルボン酸鉄と、カルボン酸銅とからなる2種類のカルボン酸金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材に吸着させ、2種類のカルボン酸金属化合物を熱分解すると、鉄微粒子からなる多層構造の表面に銅微粒子が析出し、多層構造の表層を銅微粒子が形成する。これによって、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質に加え、強磁性の性質に基づく新たな性質が、部品ないしは基材ないしは素材の表層が持つことになる。
電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質を付与する部品ないしは基材ないしは素材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材にも、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質が表層に付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の表面が曲面であっても、また、曲部や角部や穴部があっても、あるいは、線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われるため、部品ないしは基材に、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
すなわち、例えば、カルボン酸銅を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、カルボン酸銅を熱分解すると銅微粒子が析出して、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、部品ないしは基材ないしは素材の表層が、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質を持つことになる。
また、カルボン酸銅より熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物、例えば熱分解で鉄を析出するカルボン酸鉄と、カルボン酸銅とからなる2種類のカルボン酸金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材に吸着させ、2種類のカルボン酸金属化合物を熱分解すると、鉄微粒子からなる多層構造の表面に銅微粒子が析出し、多層構造の表層を銅微粒子が形成する。これによって、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質に加え、強磁性の性質に基づく新たな性質が、部品ないしは基材ないしは素材の表層が持つことになる。
電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質を付与する部品ないしは基材ないしは素材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材にも、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質が表層に付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の表面が曲面であっても、また、曲部や角部や穴部があっても、あるいは、線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われるため、部品ないしは基材に、電気導電性ないしは熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第13特徴手段は、前記した第12特徴手段における電気導電性と熱伝導性に基づく新たな性質が付与される基材が、透明基材であって、銅微粒子からなる多層構造で、ないしは、表層が銅微粒子からなる新たな多層構造で、前記透明基材の表面を覆うことで、前記銅微粒子の性質に基づく性質が、前記透明基材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材を、電気導電性で熱伝導性である銅微粒子で覆うと、電気導電性に基づく帯電防止と電磁波遮蔽と、微粒子の大きさに基づく乱反射防止性と視覚反射率が低い性質が、新たに付与される改質が行われる。また、熱伝導性も新たに付与される。
すなわち、銅の比抵抗は1.55×10−8Ωmであり、銀についで導電率が高い金属であるため、銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆うと、102Ω/□より著しく低い表面抵抗率を持つことになる。これによって、透明基材は、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とを有する。また、銅の光の屈折率は0.6であり、光の屈折率が1.5であるガラスより屈折率が充分に小さいため、透明基材の視覚反射率が低くなる。さらに、透明基材の表面は、銅微粒子で形成されるため、光の乱反射が起こらない。
銅微粒子の多くが透明基材の表面の凹凸を埋め、わずかの層からなる銅微粒子が表面の凹凸の上に析出する構造として形成させる。銅微粒子が一斉に析出する際に、銅微粒子は互いが接触する部位で金属結合によって接合し、表面の凹凸に入り込んで析出した銅微粒子は、物理的なアンカー効果で透明基材の表面に結合するとともに、凹凸の上に析出した銅微粒子に対しても、接触する銅微粒子どうしが金属結合で接合する。このため、銅微粒子の集まりは、一定の結合強度を持って透明基材を覆う。こうして、透明基材の表面は、銅微粒子の大きさに基づく撥水性と撥油性と防汚性とを持ち、さらに、表層は帯電防止機能と電磁波遮蔽機能との性質を発揮し、また、視覚反射率も低下する。
以上に説明したように、透明基材をナノレベルの大きさの銅微粒子で覆うことで、電気導電性に基づく帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが、新たに付与される改質が行われる。帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが付与される部品ないしは基材は、透明基材に制限されることはなく、カルボン酸銅の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが新たに付与される。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部にも、前記した帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが付与される。
すなわち、銅の比抵抗は1.55×10−8Ωmであり、銀についで導電率が高い金属であるため、銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆うと、102Ω/□より著しく低い表面抵抗率を持つことになる。これによって、透明基材は、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とを有する。また、銅の光の屈折率は0.6であり、光の屈折率が1.5であるガラスより屈折率が充分に小さいため、透明基材の視覚反射率が低くなる。さらに、透明基材の表面は、銅微粒子で形成されるため、光の乱反射が起こらない。
銅微粒子の多くが透明基材の表面の凹凸を埋め、わずかの層からなる銅微粒子が表面の凹凸の上に析出する構造として形成させる。銅微粒子が一斉に析出する際に、銅微粒子は互いが接触する部位で金属結合によって接合し、表面の凹凸に入り込んで析出した銅微粒子は、物理的なアンカー効果で透明基材の表面に結合するとともに、凹凸の上に析出した銅微粒子に対しても、接触する銅微粒子どうしが金属結合で接合する。このため、銅微粒子の集まりは、一定の結合強度を持って透明基材を覆う。こうして、透明基材の表面は、銅微粒子の大きさに基づく撥水性と撥油性と防汚性とを持ち、さらに、表層は帯電防止機能と電磁波遮蔽機能との性質を発揮し、また、視覚反射率も低下する。
以上に説明したように、透明基材をナノレベルの大きさの銅微粒子で覆うことで、電気導電性に基づく帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが、新たに付与される改質が行われる。帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが付与される部品ないしは基材は、透明基材に制限されることはなく、カルボン酸銅の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが新たに付与される。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部にも、前記した帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とが付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第14特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造が、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造の表層が、強磁性の金属微粒子で構成され、該多層構造ないしは該新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、強磁性と電気導電性に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、多層構造を、ないしは、新たな多層構造の表層を、強磁性の金属微粒子で構成し、この多層構造ないしはこの新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆えば、部品ないしは基材ないしは素材に、強磁性と電気導電性の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。例えば、部品ないしは基材ないしは素材が、ガラスやセラミックスなどのように、電気絶縁性で非磁性であっても、鉄微粒子の集まりで覆うと、磁気が伝達する性質と、強磁性体に磁気吸着する性質などの強磁性に基づく性質と、電磁波遮蔽性や帯電防止性などの電気導電性に基づく性質とが、新たに付与される改質が行われる。また、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、木材や合成樹脂に対しても、強磁性ないしは電気導電性に基づく性質が付与できる。
すなわち、強磁性の金属、例えば、鉄が熱分解で析出するカルボン酸鉄を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、カルボン酸鉄を熱分解すると鉄微粒子が析出し、鉄微粒子の集まりが部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、強磁性ないしは電気導電性に基づく新たな性質が付与される。
あるいは、カルボン酸鉄より熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物、例えば熱分解で銅が析出するカルボン酸銅と、カルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材に吸着させ、2種類のカルボン酸金属化合物を熱分解すると、銅微粒子からなる多層構造の表面に鉄微粒子が析出し、多層構造の表層を鉄微粒子が形成する。これによって、部品ないしは基材ないしは素材は、強磁性ないしは電気導電性と熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
強磁性ないしは電気導電性に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、新たな性質が付与される改質が行われる。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や、曲部や角部や穴部にも、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、強磁性ないしは電気導電性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。
すなわち、強磁性の金属、例えば、鉄が熱分解で析出するカルボン酸鉄を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、カルボン酸鉄を熱分解すると鉄微粒子が析出し、鉄微粒子の集まりが部品ないしは基材ないしは素材を覆う。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、強磁性ないしは電気導電性に基づく新たな性質が付与される。
あるいは、カルボン酸鉄より熱分解温度が低いカルボン酸金属化合物、例えば熱分解で銅が析出するカルボン酸銅と、カルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材に吸着させ、2種類のカルボン酸金属化合物を熱分解すると、銅微粒子からなる多層構造の表面に鉄微粒子が析出し、多層構造の表層を鉄微粒子が形成する。これによって、部品ないしは基材ないしは素材は、強磁性ないしは電気導電性と熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
強磁性ないしは電気導電性に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材は、カルボン酸金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、新たな性質が付与される改質が行われる。さらに、微粒子の大きさが、部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や、曲部や角部や穴部にも、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、強磁性ないしは電気導電性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第15特徴手段は、前記した第14特徴手段における強磁性と電気導電性に基づく新たな性質が付与される基材が、繊維ないしは繊維の集合体であって、強磁性の金属微粒子からなる多層構造で、ないしは、表層が強磁性の金属微粒子からなる新たな多層構造で、前記繊維ないしは前記繊維の集合体を覆うことで、前記金属微粒子の性質に基づく性質が、前記繊維ないしは前記繊維の集合体に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、天然繊維、ないしは紙繊維ないしはパルプ繊維、ないしはタングステンや鋼などからなる金属繊維、ないしはアルミナや炭化ケイ素などからなるセラミックス繊維、ないしは炭素やガラスなどからなる非金属繊維などの繊維、ないしはこれら繊維からなる繊維の集合体を、強磁性で電気導電性である金属微粒子からなる多層構造、ないしは、表層が強磁性で電気導電性である金属微粒子からなる新たな多層構造で覆うと、繊維ないしは繊維の集合体は、強磁性と電気導電性と熱伝導性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。
すなわち、強磁性の金属、例えば鉄が熱分解で析出するカルボン酸鉄を、繊維ないしは繊維の集合体に吸着させ、カルボン酸鉄を熱分解すると鉄微粒子が一斉に析出し、繊維ないしは繊維の集合体が鉄微粒子で覆われる。これによって、強磁性ないしは電気導電性ないしは熱伝導性に基づく性質が、繊維ないしは繊維の集合体に、新たに付与される。
例えば、紙繊維ないしはパルプ繊維を液状に分散させ、液状に分散した繊維から水分を取り除いたドライヤーバートの表面を鉄微粒子の集まりで覆い、更に、加圧成形してシート状に加工すれば紙磁石になる。この紙磁石は、必要な事項を記載した紙磁石を、磁性を持つ基材、例えば黒板や冷蔵庫の側面に磁気吸着させることができる。この紙磁石は、従来のゴム磁石やプラスチック磁石よりごく軽量で薄肉化ができ、さらに、記載事項を書き直すこともできる。また、紙磁石の特定部位に、着磁機によって磁気マーキングすれば、着磁機の形状に応じた特定な形状を有する磁気模様が紙磁石に形成され、この磁気模様は外観からは判別できず、複製できない磁気マーキングを有する紙磁石となる。
あるいは、鉄微粒子で覆われた木綿糸を、例えば、ソックスや下着として編めば、鉄微粒子が酸化反応で発熱し、発熱するソックスや下着となる。また、木綿糸の全体が鉄微粒子で覆われているため、熱伝導性に優れたソックスや下着になる。さらに、鉄微粒子は電気伝導性を持つため、ソックスや下着が静電気除去の機能も兼備する。いっぽう、鉄微粒子で覆われた木綿糸を、着磁機にかけて着磁した後に製品を加工すれば、互いに金属結合で接合された鉄微粒子に、磁気吸引力が作用するため、洗濯によっても鉄微粒子が剥がれ落ちることはなく、長期にわたって発熱作用と熱伝導性と静電気除去の機能が維持できる。
以上、紙繊維ないしはパルプ繊維、あるいは、天然繊維を用いた工業製品への適応について説明したが、工業製品への適応はこれらの事例に制限されることない。金属繊維、セラミックス繊維、ないしは、非金属繊維などの繊維は、いずれもカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持つ。鉄微粒子で覆われた繊維ないしは繊維の集合体を、様々な工業製品に適応すると、前記の事例と同様に、従来考えられなかった新たな機能を発揮する。
すなわち、強磁性の金属、例えば鉄が熱分解で析出するカルボン酸鉄を、繊維ないしは繊維の集合体に吸着させ、カルボン酸鉄を熱分解すると鉄微粒子が一斉に析出し、繊維ないしは繊維の集合体が鉄微粒子で覆われる。これによって、強磁性ないしは電気導電性ないしは熱伝導性に基づく性質が、繊維ないしは繊維の集合体に、新たに付与される。
例えば、紙繊維ないしはパルプ繊維を液状に分散させ、液状に分散した繊維から水分を取り除いたドライヤーバートの表面を鉄微粒子の集まりで覆い、更に、加圧成形してシート状に加工すれば紙磁石になる。この紙磁石は、必要な事項を記載した紙磁石を、磁性を持つ基材、例えば黒板や冷蔵庫の側面に磁気吸着させることができる。この紙磁石は、従来のゴム磁石やプラスチック磁石よりごく軽量で薄肉化ができ、さらに、記載事項を書き直すこともできる。また、紙磁石の特定部位に、着磁機によって磁気マーキングすれば、着磁機の形状に応じた特定な形状を有する磁気模様が紙磁石に形成され、この磁気模様は外観からは判別できず、複製できない磁気マーキングを有する紙磁石となる。
あるいは、鉄微粒子で覆われた木綿糸を、例えば、ソックスや下着として編めば、鉄微粒子が酸化反応で発熱し、発熱するソックスや下着となる。また、木綿糸の全体が鉄微粒子で覆われているため、熱伝導性に優れたソックスや下着になる。さらに、鉄微粒子は電気伝導性を持つため、ソックスや下着が静電気除去の機能も兼備する。いっぽう、鉄微粒子で覆われた木綿糸を、着磁機にかけて着磁した後に製品を加工すれば、互いに金属結合で接合された鉄微粒子に、磁気吸引力が作用するため、洗濯によっても鉄微粒子が剥がれ落ちることはなく、長期にわたって発熱作用と熱伝導性と静電気除去の機能が維持できる。
以上、紙繊維ないしはパルプ繊維、あるいは、天然繊維を用いた工業製品への適応について説明したが、工業製品への適応はこれらの事例に制限されることない。金属繊維、セラミックス繊維、ないしは、非金属繊維などの繊維は、いずれもカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持つ。鉄微粒子で覆われた繊維ないしは繊維の集合体を、様々な工業製品に適応すると、前記の事例と同様に、従来考えられなかった新たな機能を発揮する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第16特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造が、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造の表層が、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性の3つの性質を兼備する金属酸化物の微粒子で構成し、該多層構造ないしは該新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、前記金属酸化物の性質に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、多層構造を、ないしは新たな多層構造の表層を、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性を兼備する金属酸化物、例えば、酸化鉄(II)のγ相であるマグヘマイトの微粒子で構成し、この多層構造で部品ないしは基材ないしは素材を覆うと、部品ないしは基材ないしは素材に、電気絶縁性ないしは熱伝導性ないしは強磁性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる。
強磁性であるマグヘマイト微粒子どうしは互いに磁気吸着し、強磁性である鉄微粒子どうしも互いに磁気吸着し、かつ、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との間で磁気吸引力が作用する。こうした磁気吸着力と磁気吸引力とによって、微粒子が多層構造を形成するため、マグヘマイト微粒子は多層構造から剥がれにくい。さらに、微粒子で覆われた部品ないしは基材ないしは素材を着磁機にかけて着磁すれば、磁気吸着力と磁気吸引力とは著しく増大し、マグヘマイト微粒子は多層構造からさらに剥がれにくくなる。
なお、部品ないしは基材ないしは素材が、強磁性の性質を持つ場合は、強磁性の性質を持つ金属酸化物、例えばマグヘマイト微粒子の集まりからなる多層構造が、部品ないしは基材ないしは素材に磁気吸着する。このため、表層がマグヘマイト微粒子で構成され、内部が鉄微粒子で構成される多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う必要はない。
マグヘマイトは熱伝導率が20W/m・Kの値を持つ熱伝導物質であり、比抵抗が106Ωmの絶縁物質であり、絶縁物質の中でも熱伝導性に優れる。また、比抵抗が10−7Ωmの電気導電性である鉄の熱伝導率は52W/m・Kで熱伝導性に優れる。従って、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造は、優れた熱伝導性を持つ。ちなみに、熱伝導性に優れた非磁性の絶縁物質としてアルミナがあり、アルミナの熱伝導率は32W/m・Kである。
熱分解で強磁性の金属、例えば鉄を析出する第一のカルボン酸鉄と、熱分解によって酸化鉄(II)FeO(ウスタイトとも言う)を析出し、かつ、熱分解温度が第一のカルボン酸鉄より相対的に高い第二のカルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸鉄を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させる。更に、大気中で熱処理すると、先行して鉄微粒子が一斉に析出し、鉄微粒子どうしが接合して部品ないしは基材ないしは素材を覆う。この後、酸化鉄(II)FeOの微粒子が一斉に析出して多層構造の表層を形成する。さらに、昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。また、部品ないしは基材ないしは素材に吸着した第二のカルボン酸鉄の量を、第一のカルボン酸鉄の量より多くすれば、マグヘマイト微粒子が多層構造を占める体積は、鉄微粒子が占める体積より大きくなる。これによって、多層構造の性質はマグヘマイトの性質が優勢になる。
部品ないしは基材ないしは素材が、カルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性の性質に基づく性質が、新たに付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や角部や穴部に対しても、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、多層構造で覆うことができるため、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性の性質に基づく性質が、新たに付与される。
強磁性であるマグヘマイト微粒子どうしは互いに磁気吸着し、強磁性である鉄微粒子どうしも互いに磁気吸着し、かつ、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との間で磁気吸引力が作用する。こうした磁気吸着力と磁気吸引力とによって、微粒子が多層構造を形成するため、マグヘマイト微粒子は多層構造から剥がれにくい。さらに、微粒子で覆われた部品ないしは基材ないしは素材を着磁機にかけて着磁すれば、磁気吸着力と磁気吸引力とは著しく増大し、マグヘマイト微粒子は多層構造からさらに剥がれにくくなる。
なお、部品ないしは基材ないしは素材が、強磁性の性質を持つ場合は、強磁性の性質を持つ金属酸化物、例えばマグヘマイト微粒子の集まりからなる多層構造が、部品ないしは基材ないしは素材に磁気吸着する。このため、表層がマグヘマイト微粒子で構成され、内部が鉄微粒子で構成される多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う必要はない。
マグヘマイトは熱伝導率が20W/m・Kの値を持つ熱伝導物質であり、比抵抗が106Ωmの絶縁物質であり、絶縁物質の中でも熱伝導性に優れる。また、比抵抗が10−7Ωmの電気導電性である鉄の熱伝導率は52W/m・Kで熱伝導性に優れる。従って、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造は、優れた熱伝導性を持つ。ちなみに、熱伝導性に優れた非磁性の絶縁物質としてアルミナがあり、アルミナの熱伝導率は32W/m・Kである。
熱分解で強磁性の金属、例えば鉄を析出する第一のカルボン酸鉄と、熱分解によって酸化鉄(II)FeO(ウスタイトとも言う)を析出し、かつ、熱分解温度が第一のカルボン酸鉄より相対的に高い第二のカルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸鉄を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させる。更に、大気中で熱処理すると、先行して鉄微粒子が一斉に析出し、鉄微粒子どうしが接合して部品ないしは基材ないしは素材を覆う。この後、酸化鉄(II)FeOの微粒子が一斉に析出して多層構造の表層を形成する。さらに、昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。また、部品ないしは基材ないしは素材に吸着した第二のカルボン酸鉄の量を、第一のカルボン酸鉄の量より多くすれば、マグヘマイト微粒子が多層構造を占める体積は、鉄微粒子が占める体積より大きくなる。これによって、多層構造の性質はマグヘマイトの性質が優勢になる。
部品ないしは基材ないしは素材が、カルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材ないしは素材であっても、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性の性質に基づく性質が、新たに付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や角部や穴部に対しても、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、多層構造で覆うことができるため、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性の性質に基づく性質が、新たに付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第17特徴手段は、前記した第16特徴手段における金属酸化物の微粒子の性質に基づく性質が新たに付与される素材が、磁性粉であって、マグヘマイト微粒子の集まりからなる多層構造で、前記磁性粉の表面を覆うことで、該磁性粉の表面を絶縁化する点にある。
つまり、本特徴手段によれば、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性を兼備する酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3の微粒子の集まりからなる多層構造で、磁性粉の表面を覆うと、磁性粉は強磁性の性質を損なうことなく、表面が電気絶縁性になる。すなわち、磁性粉の集まりを、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出するカルボン酸鉄の分散液に投入し、分散液を攪拌し、磁性粉の磁気吸着を液相中で一時的に解除させ、個々の磁性粉の表面にカルボン酸鉄の溶液を一旦接触させる。この後、分散液の溶剤を気化させ、個々の磁性粉の表面にカルボン酸鉄を吸着させ、更にカルボン酸鉄が吸着した磁性粉を熱処理し、酸化鉄(II)FeOの微粒子を析出させ、更に昇温して酸化鉄(II)FeOをマグヘマイトγ‐Fe2O3に酸化する。この結果、マグヘマイト微粒子の集まりで、表面が絶縁化された磁性粉の集まりが製造される。
従来、磁性粉を絶縁化する手段は、非磁性体である合成樹脂やガラスなどの被膜によって絶縁化を行っている。このため、被膜の厚みに応じて、磁性粉の磁気特性が低下する。また、磁性粉は容易に磁気吸着するため、個々の磁性粉の表面を絶縁化させることは困難である。本特徴手段によれば、磁性粉の表面の絶縁化にあたって、次の作用効果がもたらされる。第一に、カルボン酸鉄の分散液中で磁性粉の磁気吸着を解除させ、個々の磁性粉の表面に分散液を吸着させることで、個々の磁性粉をマグヘマイト微粒子で覆うことができ、個々の磁性粉の表面を容易に絶縁化できる。第二に、析出するマグヘマイト微粒子が強磁性体であるため、マグヘマイト微粒子が自ずと磁性粉に磁気吸着するため、磁性粉の絶縁化が容易にできる。第三に、マグヘマイト微粒子の大きさが、磁性粉の大きさに比べて3桁以上小さいため、マグヘマイト微粒子が占める体積占有率は1%にも達しないため、磁性粉の優れた磁気特性の低下をもたらさない。第四に、酸化物であるマグヘマイト微粒子が、磁性粉の表面全体を覆うため、磁性粉の酸化が抑えられる。第五に、カルボン酸鉄は安価な工業用薬品であり、相対的に低い温度での熱処理によってマグヘマイト微粒子が析出するため、安価な費用で磁性粉の絶縁化ができる。
従来、磁性粉を絶縁化する手段は、非磁性体である合成樹脂やガラスなどの被膜によって絶縁化を行っている。このため、被膜の厚みに応じて、磁性粉の磁気特性が低下する。また、磁性粉は容易に磁気吸着するため、個々の磁性粉の表面を絶縁化させることは困難である。本特徴手段によれば、磁性粉の表面の絶縁化にあたって、次の作用効果がもたらされる。第一に、カルボン酸鉄の分散液中で磁性粉の磁気吸着を解除させ、個々の磁性粉の表面に分散液を吸着させることで、個々の磁性粉をマグヘマイト微粒子で覆うことができ、個々の磁性粉の表面を容易に絶縁化できる。第二に、析出するマグヘマイト微粒子が強磁性体であるため、マグヘマイト微粒子が自ずと磁性粉に磁気吸着するため、磁性粉の絶縁化が容易にできる。第三に、マグヘマイト微粒子の大きさが、磁性粉の大きさに比べて3桁以上小さいため、マグヘマイト微粒子が占める体積占有率は1%にも達しないため、磁性粉の優れた磁気特性の低下をもたらさない。第四に、酸化物であるマグヘマイト微粒子が、磁性粉の表面全体を覆うため、磁性粉の酸化が抑えられる。第五に、カルボン酸鉄は安価な工業用薬品であり、相対的に低い温度での熱処理によってマグヘマイト微粒子が析出するため、安価な費用で磁性粉の絶縁化ができる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第18特徴手段は、前記した第17特徴手段におけるマグヘマイト微粒子の集まりで表面を覆うことで、該表面が絶縁化される磁性粉が、アトマイズ純鉄粉ないしは還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉のいずれかの磁性粉であって、該表面が絶縁化された磁性粉の集まりを金型に充填し、該磁性粉の集まりを圧縮し、これによって、マグヘマイト微粒子の集まりで表面が絶縁化された磁性粉の集まりからなる圧粉磁心を制作する点にある。
つまり、本特徴手段によれば、アトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉のいずれかの磁性粉について、個々の磁性粉の表面をマグヘマイト微粒子の集まりで絶縁化し、この磁性粉の集まりを金型に充填し、さらに、磁性粉の集まりを圧縮して制作した圧粉磁心は、従来の圧粉磁心が持つ問題点を根本的に解決する新たな圧粉磁心となる。
すなわち、磁心(コアとも言う)は、モータにおけるステーターやローターを構成する磁心、電源回路におけるリアクトルやノイズフィルターなどを構成する磁心として用いられている。これらの磁心には、絶縁層を介して電磁鋼板を積層した積層電磁鋼板磁心、断面が四角形からなる角型や断面が円からなるリングからなるフェライト磁心、表面を絶縁化させた磁性粉を加圧成形した圧粉磁心の3種類の磁心がある。圧粉磁心は積層電磁鋼板磁心に比べて、1.磁性粉の高抵抗化が可能であるため、高周波領域まで磁気特性が安定し、磁心の発熱や渦電流損失が少ない、2.磁気ギャップが不要になるため、磁歪による騒音や漏洩磁束による誤動作がない、3.形状の自由度が高く、電磁鋼板の積層ではできない3次元形状の加工が可能になる、4.打抜きの残材が少ないため、材料の歩留まりが高く、廃棄物が少ない、5.粉砕が可能であるため、銅線との分離が容易で、リサイクル性に優れる、などの優位点がある。また、圧粉磁心は飽和磁束密度が低いフェライト磁心に比べて、1.磁束密度が高いため大電流を流しても磁気飽和せず、磁気素子としての機能が発揮できる、2.磁気キュリー点がフェライトより高いため、高温においても磁気特性が安定している、3.粉末の加圧成形で製造するため、焼結で製造するフェライトより寸法変化が少なく、成形後の機械加工が不要になる、などの優位点がある。
しかしながら、圧粉磁心は前記のような優位性を持つが、これらの優位性をさらに高め、圧粉磁心の適応範囲を拡大するには、1.さらなる機械的強度の増大が必要になる、2.さらなる高密度化によって磁束密度を増大させる必要がある、3.絶縁化をさらに進め、渦電流損失を減らす必要がる、4.高温での焼鈍によって、磁性粉の加工歪みを除去してヒステリシス損失を低減させる必要がある、などの課題が存在する。
こうした圧粉磁心の課題は、いずれも磁性粉を絶縁化させる上での課題であり、絶縁化に係わる次の課題が解決できれば、圧粉磁心の課題が全て解決される。1.個々の磁性粉の絶縁化によって、圧粉磁心のさらなる高密度化と渦電流の低下が可能になる。2.成形時の加圧力を増大しても、絶縁物が剥がれず、また破壊されない。これによって、圧粉磁心の渦電流損失が低減され、機械的強度と磁束密度との双方が増大する。3.絶縁層がごく薄い層として形成できる。これによって、加圧成形時に磁性粉の塑性変形が妨げられず、磁性粉の高密度化によって、圧粉磁心の機械的強度と磁束密度との双方が増大する。4.600℃以上の焼鈍によっても絶縁物が熱分解あるいは変質せず、磁性粉の絶縁性が維持できる。これによって、圧粉磁心の渦電流損失とヒステリシス損失との双方が低減できる。
鉄の酸化物(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3は、次の4つの性質を兼備するため、磁性粉の絶縁化に関わる前記した3項目の課題を解決することができる。
第一に、比抵抗が106Ωmの絶縁物質であるため、磁性粉に磁気吸着させれば磁性粉は絶縁体になる。ちなみに鉄の比抵抗は10−7Ωmであり、渦電流損失は比抵抗に反比例するので、マグヘマイトで絶縁化された磁性粉の渦電流損失は著しく小さくなる。
第二に、強磁性体であるため自らが磁性粉に磁気吸着し、圧縮成形時に過大な加圧力を加えても、磁気吸着したマグヘマイト微粒子は磁性粉から剥がれない。これによって、磁性粉の絶縁性が保たれる。また、絶縁層を形成するための磁性粉の処理は一切不要になる。
第三に、450℃近辺でヘマタイトに相転移する。このため、450℃以上の焼鈍によって、マグヘマイトはヘマタイトに相転移する。なお、この相転移は不可逆変化である。ヘマタイトは107Ωmの比抵抗を持つ物質であり、焼鈍によって磁性粉の絶縁性がさらに一桁向上し、渦電流損失はさらに低減する。また、ヘマタイトは極めて安定した酸化物、つまり、不動態であり、融点である1566℃に近い耐熱性を有する。このため、600℃以上の焼鈍によってもヘマタイトの性質は変わらない。また、焼鈍時においても不動態であり、磁性粉との界面における拡散現象が起らず、磁性粉の変質が起こらない。ちなみに、鉄の融点は1535℃である。なお、ヘマタイトは化学式がα−Fe2O3で表され、酸化鉄(III)Fe2O3のα相であり、弱強磁性の性質を持ち、磁気キュリー点が950℃である。
なお、焼鈍によって圧粉磁心のヒステリシス損失が低下する現象は、圧縮成形時に磁性粉に加えられた加工歪が、焼鈍によって除去されることで磁性粉の保持力が低下することによる。しかし、焼鈍の処理温度が高くなりすぎると磁性粉が再結晶化し、この再結晶によって結晶粒が細粒化して保持力が増大し、ヒステリシス損失が再び増大する。純鉄に近い磁性粉を圧縮した圧粉磁心では、600℃〜700℃での焼鈍によって磁性粉に加えられた加工歪が除去され、保持力が低下する。600℃〜700℃の焼鈍によって、マグヘマイトがヘマタイトに相転移して、磁性粉の絶縁性は1桁高まる効果をもたらし、ヘマタイトは焼鈍後においても安定した絶縁性を維持する。もちろん、ヘマタイトが1500℃を超える耐熱性を持つため、さらなる高温の焼鈍によっても安定した絶縁性を維持する。
第四に、モース硬度が5.5であり、鉄ないしは鉄系の合金より硬い物質である。このため、圧縮成形時に加圧力が加えられてもマグヘマイト微粒子は破壊されない。つまり、圧縮成形時においては、マグヘマイト微粒子は磁気吸着した状態を維持し、この状態でマグヘマイトより硬度が小さい磁性粉が優先して塑性変形する。これによって、磁性粉同士が絡み合って磁性粉同士が結合するため、磁性粉の表面はマグヘマイトによって絶縁性を維持しつつ、成形体の密度の増大によって圧粉磁心の磁束密度と機械的強度とが増大する。
なお、マグヘマイトの微粒子によって絶縁化された磁性粉を工業製品に適応する事例は、圧粉磁心に限定されることはない。各種の磁性粉は熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出するカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持つ。従って、マグヘマイト微粒子を磁気吸着させるだけで磁性粉が絶縁化されため、この絶縁化された磁性粉を工業製品に適応することで、前記した圧粉磁心の事例のように、画期的な作用効果がもたらされる。
すなわち、磁心(コアとも言う)は、モータにおけるステーターやローターを構成する磁心、電源回路におけるリアクトルやノイズフィルターなどを構成する磁心として用いられている。これらの磁心には、絶縁層を介して電磁鋼板を積層した積層電磁鋼板磁心、断面が四角形からなる角型や断面が円からなるリングからなるフェライト磁心、表面を絶縁化させた磁性粉を加圧成形した圧粉磁心の3種類の磁心がある。圧粉磁心は積層電磁鋼板磁心に比べて、1.磁性粉の高抵抗化が可能であるため、高周波領域まで磁気特性が安定し、磁心の発熱や渦電流損失が少ない、2.磁気ギャップが不要になるため、磁歪による騒音や漏洩磁束による誤動作がない、3.形状の自由度が高く、電磁鋼板の積層ではできない3次元形状の加工が可能になる、4.打抜きの残材が少ないため、材料の歩留まりが高く、廃棄物が少ない、5.粉砕が可能であるため、銅線との分離が容易で、リサイクル性に優れる、などの優位点がある。また、圧粉磁心は飽和磁束密度が低いフェライト磁心に比べて、1.磁束密度が高いため大電流を流しても磁気飽和せず、磁気素子としての機能が発揮できる、2.磁気キュリー点がフェライトより高いため、高温においても磁気特性が安定している、3.粉末の加圧成形で製造するため、焼結で製造するフェライトより寸法変化が少なく、成形後の機械加工が不要になる、などの優位点がある。
しかしながら、圧粉磁心は前記のような優位性を持つが、これらの優位性をさらに高め、圧粉磁心の適応範囲を拡大するには、1.さらなる機械的強度の増大が必要になる、2.さらなる高密度化によって磁束密度を増大させる必要がある、3.絶縁化をさらに進め、渦電流損失を減らす必要がる、4.高温での焼鈍によって、磁性粉の加工歪みを除去してヒステリシス損失を低減させる必要がある、などの課題が存在する。
こうした圧粉磁心の課題は、いずれも磁性粉を絶縁化させる上での課題であり、絶縁化に係わる次の課題が解決できれば、圧粉磁心の課題が全て解決される。1.個々の磁性粉の絶縁化によって、圧粉磁心のさらなる高密度化と渦電流の低下が可能になる。2.成形時の加圧力を増大しても、絶縁物が剥がれず、また破壊されない。これによって、圧粉磁心の渦電流損失が低減され、機械的強度と磁束密度との双方が増大する。3.絶縁層がごく薄い層として形成できる。これによって、加圧成形時に磁性粉の塑性変形が妨げられず、磁性粉の高密度化によって、圧粉磁心の機械的強度と磁束密度との双方が増大する。4.600℃以上の焼鈍によっても絶縁物が熱分解あるいは変質せず、磁性粉の絶縁性が維持できる。これによって、圧粉磁心の渦電流損失とヒステリシス損失との双方が低減できる。
鉄の酸化物(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3は、次の4つの性質を兼備するため、磁性粉の絶縁化に関わる前記した3項目の課題を解決することができる。
第一に、比抵抗が106Ωmの絶縁物質であるため、磁性粉に磁気吸着させれば磁性粉は絶縁体になる。ちなみに鉄の比抵抗は10−7Ωmであり、渦電流損失は比抵抗に反比例するので、マグヘマイトで絶縁化された磁性粉の渦電流損失は著しく小さくなる。
第二に、強磁性体であるため自らが磁性粉に磁気吸着し、圧縮成形時に過大な加圧力を加えても、磁気吸着したマグヘマイト微粒子は磁性粉から剥がれない。これによって、磁性粉の絶縁性が保たれる。また、絶縁層を形成するための磁性粉の処理は一切不要になる。
第三に、450℃近辺でヘマタイトに相転移する。このため、450℃以上の焼鈍によって、マグヘマイトはヘマタイトに相転移する。なお、この相転移は不可逆変化である。ヘマタイトは107Ωmの比抵抗を持つ物質であり、焼鈍によって磁性粉の絶縁性がさらに一桁向上し、渦電流損失はさらに低減する。また、ヘマタイトは極めて安定した酸化物、つまり、不動態であり、融点である1566℃に近い耐熱性を有する。このため、600℃以上の焼鈍によってもヘマタイトの性質は変わらない。また、焼鈍時においても不動態であり、磁性粉との界面における拡散現象が起らず、磁性粉の変質が起こらない。ちなみに、鉄の融点は1535℃である。なお、ヘマタイトは化学式がα−Fe2O3で表され、酸化鉄(III)Fe2O3のα相であり、弱強磁性の性質を持ち、磁気キュリー点が950℃である。
なお、焼鈍によって圧粉磁心のヒステリシス損失が低下する現象は、圧縮成形時に磁性粉に加えられた加工歪が、焼鈍によって除去されることで磁性粉の保持力が低下することによる。しかし、焼鈍の処理温度が高くなりすぎると磁性粉が再結晶化し、この再結晶によって結晶粒が細粒化して保持力が増大し、ヒステリシス損失が再び増大する。純鉄に近い磁性粉を圧縮した圧粉磁心では、600℃〜700℃での焼鈍によって磁性粉に加えられた加工歪が除去され、保持力が低下する。600℃〜700℃の焼鈍によって、マグヘマイトがヘマタイトに相転移して、磁性粉の絶縁性は1桁高まる効果をもたらし、ヘマタイトは焼鈍後においても安定した絶縁性を維持する。もちろん、ヘマタイトが1500℃を超える耐熱性を持つため、さらなる高温の焼鈍によっても安定した絶縁性を維持する。
第四に、モース硬度が5.5であり、鉄ないしは鉄系の合金より硬い物質である。このため、圧縮成形時に加圧力が加えられてもマグヘマイト微粒子は破壊されない。つまり、圧縮成形時においては、マグヘマイト微粒子は磁気吸着した状態を維持し、この状態でマグヘマイトより硬度が小さい磁性粉が優先して塑性変形する。これによって、磁性粉同士が絡み合って磁性粉同士が結合するため、磁性粉の表面はマグヘマイトによって絶縁性を維持しつつ、成形体の密度の増大によって圧粉磁心の磁束密度と機械的強度とが増大する。
なお、マグヘマイトの微粒子によって絶縁化された磁性粉を工業製品に適応する事例は、圧粉磁心に限定されることはない。各種の磁性粉は熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出するカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持つ。従って、マグヘマイト微粒子を磁気吸着させるだけで磁性粉が絶縁化されため、この絶縁化された磁性粉を工業製品に適応することで、前記した圧粉磁心の事例のように、画期的な作用効果がもたらされる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第19特徴手段は、前記した第3特徴手段における新たな多層構造は、表層が強磁性の金属酸化物からなる硬い微粒子で構成される第一の特徴と、内部が強磁性の金属微粒子で構成される第二の特徴とを有し、該新たな多層構造で部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記部品ないしは前記基材の表面に、前記金属酸化物の微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質を行う点にある。
つまり、本特徴手段によれば、部品ないしは基材を覆う多層構造の表層を、硬い物質である強磁性の金属酸化物からなる微粒子、例えば、マグネタイトFe3O4やマグヘマイトγ‐Fe2O3からなる微粒子の集まりで構成し、多層構造の内部を強磁性の金属微粒子、例えば、鉄微粒子の集まりで構成すれば、部品ないしは基材の表面に、金属酸化物の性質が反映されて、耐摩耗性が新たに付与される。また、強磁性である金属酸化物の微粒子どうしが互いに磁気吸着し、強磁性の金属微粒子との間で磁気吸引力が作用する。このため、金属酸化物の微粒子は、磁気吸着力と磁気吸引力とによって、多層構造から剥がれにくい。さらに、部品ないしは基材を着磁機にかけて着磁すれば、磁気吸着力と磁気吸引力とは著しく増大し、金属酸化物からなる微粒子は多層構造からさらに剥がれにくくなる。
こうした部品ないしは基材は、ナノレベルの大きさの微粒子で覆われるため、相手の部品ないしは基材と接触した際に、点接触で接触する。この際、微粒子に加わる摩擦力は、微粒子の接触点に対して接線方向に加わる。微粒子同士は互いに磁気吸着しているため、接線方向の摩擦力を受けた微粒子は滑り、摩擦力が滑りエネルギーに変換される。これによって、摩擦力を受けた微粒子は、磁気吸着した微粒子の集まりから剥がれにくくなる。また、接触する相手が受ける摩擦力も低減し、摩擦による損傷が低減する。なお、微粒子が剥ぎ落とされても、莫大な数の微粒子が磁気吸着しているため、部品ないしは基材の表面の耐摩耗性は維持される。なお、マグネタイトのモース硬度は6であり、マグヘマイトのモース硬度は5.5であり、モース硬度が5であるガラスより硬い物質である。従って、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる微粒子の集まりが多層構造の表層を形成することによって、部品ないしは基材の表面に耐摩耗性が新たに付与される。
すなわち、熱分解で強磁性の金属、例えば鉄を析出する第一のカルボン酸鉄と、熱分解によって酸化鉄FeO(ウスタイトとも言う)を析出し、かつ、熱分解温度が第一のカルボン酸鉄より相対的に高い第二のカルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸鉄を、部品ないしは基材に吸着させ、こうした部品ないしは基材を大気中で熱処理すると、先行して鉄微粒子が一斉に析出して、部品ないしは基材を鉄微粒子が覆い、この後、酸化鉄FeO微粒子が鉄微粒子の表面に一斉に析出して多層構造の表層を形成する。さらに昇温すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。さらに昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。こうして、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる微粒子が鉄微粒子の表面に析出して多層構造の表層を形成する。この結果、部品ないしは基材の表面に、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子による耐摩耗性が付与される。
耐摩耗性が新たに付与される部品ないしは基材は、第2のカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材にも耐摩耗性を付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部に対しても、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われため、耐摩耗性が付与できる。
こうした部品ないしは基材は、ナノレベルの大きさの微粒子で覆われるため、相手の部品ないしは基材と接触した際に、点接触で接触する。この際、微粒子に加わる摩擦力は、微粒子の接触点に対して接線方向に加わる。微粒子同士は互いに磁気吸着しているため、接線方向の摩擦力を受けた微粒子は滑り、摩擦力が滑りエネルギーに変換される。これによって、摩擦力を受けた微粒子は、磁気吸着した微粒子の集まりから剥がれにくくなる。また、接触する相手が受ける摩擦力も低減し、摩擦による損傷が低減する。なお、微粒子が剥ぎ落とされても、莫大な数の微粒子が磁気吸着しているため、部品ないしは基材の表面の耐摩耗性は維持される。なお、マグネタイトのモース硬度は6であり、マグヘマイトのモース硬度は5.5であり、モース硬度が5であるガラスより硬い物質である。従って、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる微粒子の集まりが多層構造の表層を形成することによって、部品ないしは基材の表面に耐摩耗性が新たに付与される。
すなわち、熱分解で強磁性の金属、例えば鉄を析出する第一のカルボン酸鉄と、熱分解によって酸化鉄FeO(ウスタイトとも言う)を析出し、かつ、熱分解温度が第一のカルボン酸鉄より相対的に高い第二のカルボン酸鉄とからなる2種類のカルボン酸鉄を、部品ないしは基材に吸着させ、こうした部品ないしは基材を大気中で熱処理すると、先行して鉄微粒子が一斉に析出して、部品ないしは基材を鉄微粒子が覆い、この後、酸化鉄FeO微粒子が鉄微粒子の表面に一斉に析出して多層構造の表層を形成する。さらに昇温すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。さらに昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。こうして、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる微粒子が鉄微粒子の表面に析出して多層構造の表層を形成する。この結果、部品ないしは基材の表面に、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子による耐摩耗性が付与される。
耐摩耗性が新たに付与される部品ないしは基材は、第2のカルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材にも耐摩耗性を付与される。さらに、微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さいため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部に対しても、あるいは、部品ないしは基材が線材で構成されても、部品ないしは基材が微粒子で覆われため、耐摩耗性が付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第20特徴手段は、前記した第19特徴手段における金属酸化物の微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される部品が、サーマルヘッドないしは磁気ヘッドであって、サーマルヘッドないしは磁気ヘッドの表面を、表層がマグネタイト微粒子ないしはマグヘマイト微粒子の集まりで構成され、内部が鉄微粒子の集まりで構成される多層構造で覆うことで、前記サーマルヘッドないしは前記磁気ヘッドの表面に、前記マグネタイト微粒子ないしは前記マグヘマイト微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、プリンターやファクシミリ等における印字ヘッドとして使用されるサーマルヘッドを、ないしは、磁気記録媒体に相対的に摺動して情報の磁気記録または再生を行なう磁気ヘッドコアをヘッドケース内に固定してなる磁気ヘッドを、前記の41段落ないしは43段落で記載した製造方法に基づいて、内部が鉄微粒子で構成され、表層がマグネタイトないしはマグヘマイトからなる微粒子で構成される多層構造で覆うと、この多層構造はサーマルヘッドないしは磁気ヘッドの保護膜としての機能を発揮する。
すなわち、サーマルヘッドにおいては、耐摩耗性をサーマルヘッドに付与するのみならず、ナノレベルの大きさからなる微粒子が表面を形成するため、潤滑性と撥水性の機能が併せて付与され、感熱記録紙や感熱紙の発色剤が保護膜に付着しなくなる。また、保護膜が熱伝導性に優れ、かつ、極めて薄いため、保護膜は熱応答性に優れ、高速印字においても印字が薄れることはない。さらに、平坦度が極めて高く、極めて薄い被膜であるため、高速印字に対する追従性に優れる。保護膜は、こうした様々な作用効果を同時に発揮する。
いっぽう、磁気ヘッドにおいては、耐摩耗性を磁気ヘッドに付与するのみならず、表面が微粒子の大きさに基づく潤滑性を有し、記録媒体に対し損傷を与えないという効果も発揮する。さらに、平坦度が極めて高く、薄い被膜であるため、高速磁気記録に対する追従性が得られる。保護膜は、このような様々な作用効果を同時に発揮する。
なお、耐摩耗性が付与される事例は、サーマルヘッドないしは磁気ヘッドに限定されることはない。部品ないしは基材が、カルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、同様に耐摩耗性が付与される。
すなわち、サーマルヘッドにおいては、耐摩耗性をサーマルヘッドに付与するのみならず、ナノレベルの大きさからなる微粒子が表面を形成するため、潤滑性と撥水性の機能が併せて付与され、感熱記録紙や感熱紙の発色剤が保護膜に付着しなくなる。また、保護膜が熱伝導性に優れ、かつ、極めて薄いため、保護膜は熱応答性に優れ、高速印字においても印字が薄れることはない。さらに、平坦度が極めて高く、極めて薄い被膜であるため、高速印字に対する追従性に優れる。保護膜は、こうした様々な作用効果を同時に発揮する。
いっぽう、磁気ヘッドにおいては、耐摩耗性を磁気ヘッドに付与するのみならず、表面が微粒子の大きさに基づく潤滑性を有し、記録媒体に対し損傷を与えないという効果も発揮する。さらに、平坦度が極めて高く、薄い被膜であるため、高速磁気記録に対する追従性が得られる。保護膜は、このような様々な作用効果を同時に発揮する。
なお、耐摩耗性が付与される事例は、サーマルヘッドないしは磁気ヘッドに限定されることはない。部品ないしは基材が、カルボン酸鉄の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材であっても、同様に耐摩耗性が付与される。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第21特徴手段は、前記した第3特徴手段における新たな多層構造は、表層がごく薄い層として形成される第一の特徴と、該ごく薄い表層が触媒作用を有する金属ないしは合金からなる微粒子で構成される第二の特徴とを有し、該多層構造が部品ないしは基材を覆うことで、前記金属ないしは合金からなる微粒子の性質に基づく触媒作用が、前記部品ないしは前記基材の表面に、新たに付与される改質が行なわれる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、部品ないしは基材を覆う多層構造の表層を、ごく薄い表層として形成し、このごく薄い表層を、触媒作用を有する金属ないしは合金からなる微粒子、例えば、白金族の金属ないしは白金族の金属を含む合金からなる微粒子で構成すれば、部品ないしは基材の表面に触媒作用が付与される。微粒子は、ナノレベルの大きさの微粒子であるため、体積に対する表面積の比率である比表面積は大きい。比表面積の大きい微粒子が化学反応を起こす空間に直接晒されるため、微粒子は効率のよい触媒作用を発揮する。また、部品ないしは基材の表面のみが触媒作用を発揮するため、触媒作用を有する高価な金属ないしは合金はごく表層に留める。これによって、触媒作用を発揮する微粒子の製造費用が抑えられる。このような微粒子が、莫大な数によって多層構造の表層を形成するため、部品ないしは基材は極めて効率の良い触媒作用を発揮する。
すなわち、第一の金属微粒子、例えば、カルボン酸鉄を熱分解させて、鉄微粒子を先行して部品ないは基材の表面に析出させ、この鉄微粒子の集まりからなる多層構造で部品ないしは基材を覆う。この後、第二の金属微粒子として触媒作用を有する金属ないしは合金、例えば、ごく少量の白金錯体を吸着させ、この白金錯体を還元雰囲気で熱分解させ、白金微粒子を前記した鉄微粒子からなる多層構造の表面に、ごく薄い層として析出させる。この白金微粒子によって、部品ないしは基材に新たに触媒作用が付与される。なお、金属錯体は、還元雰囲気で還元焼成して金属を析出するため、第二の金属微粒子が析出する際に、第二の金属微粒子ないしは合金微粒子は、第一の金属微粒子と接触する部位で金属結合して接合する。また、第二の金属微粒子ないしは合金微粒子どうしも、互いが接触する部位で金属結合して接合する。従って、第一の金属微粒子および第二の金属微粒子ないしは合金微粒子は、互いに一定の結合強度を持って部品ないしは基材を覆う。なお、触媒作用を有する合金微粒子は、合金を構成する金属元素を有する複数種類の有機金属化合物を熱処理して、合金を構成する金属を同時に析出させると、合金微粒子が析出する。
触媒作用を付与する部品ないしは基材は、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材にも触媒作用が付与される。さらに、析出する微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さい微粒子であるため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部や穴部に対しても、あるいは、線材からなる部品ないしは基材に対しても、微粒子の集まりで覆うことができ、触媒作用を付与できる。
すなわち、第一の金属微粒子、例えば、カルボン酸鉄を熱分解させて、鉄微粒子を先行して部品ないは基材の表面に析出させ、この鉄微粒子の集まりからなる多層構造で部品ないしは基材を覆う。この後、第二の金属微粒子として触媒作用を有する金属ないしは合金、例えば、ごく少量の白金錯体を吸着させ、この白金錯体を還元雰囲気で熱分解させ、白金微粒子を前記した鉄微粒子からなる多層構造の表面に、ごく薄い層として析出させる。この白金微粒子によって、部品ないしは基材に新たに触媒作用が付与される。なお、金属錯体は、還元雰囲気で還元焼成して金属を析出するため、第二の金属微粒子が析出する際に、第二の金属微粒子ないしは合金微粒子は、第一の金属微粒子と接触する部位で金属結合して接合する。また、第二の金属微粒子ないしは合金微粒子どうしも、互いが接触する部位で金属結合して接合する。従って、第一の金属微粒子および第二の金属微粒子ないしは合金微粒子は、互いに一定の結合強度を持って部品ないしは基材を覆う。なお、触媒作用を有する合金微粒子は、合金を構成する金属元素を有する複数種類の有機金属化合物を熱処理して、合金を構成する金属を同時に析出させると、合金微粒子が析出する。
触媒作用を付与する部品ないしは基材は、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなる部品ないしは基材にも触媒作用が付与される。さらに、析出する微粒子の大きさが部品や基材の表面粗さより2桁以上小さい微粒子であるため、部品ないしは基材の曲面や曲部や角部や穴部に対しても、あるいは、線材からなる部品ないしは基材に対しても、微粒子の集まりで覆うことができ、触媒作用を付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第22特徴手段は、前記した第21特徴手段における金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与さる基材が、メッシュないしは多孔質膜ないしはハニカムフィルタのいずれかの基材であって、表層が触媒作用を有する金属ないしは合金の微粒子からなる新たな多層構造で、前記いずれかの基材の表面を覆うことで、該いずれかの基材の表面に、前記金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、各種素材からなる細線をメッシュ状に編んだスクリーンメッシュやデミスターなどからなるメッシュの表面を、ないしは、有機高分子材料を多成分系の溶媒中に溶解させて相分離させた状態で基板上に塗布し、塗布膜を乾燥させて多孔質膜を形成した有機高分子材料からなる多孔質膜の表面を、ないしは、セラミックスからなるハニカム構造体の隔壁を多孔質構造としたセラミックスハニカムフィルタの隔壁の表面を、表層が触媒作用を有する金属微粒子ないしは合金微粒子で構成された多層構造で覆うことで、これらの部品ないしは基材に触媒作用が付与される。なお、有機高分子材料からなる多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレンPTFE樹脂、ポリフッ化ビニリデンPVDF樹脂などのフッ素系樹脂やポリイミド樹脂などの合成樹脂で構成すれば、カルボン酸金属化合物と金属錯体との熱分解温度に対する耐熱性を持つ。
つまり、触媒作用を持つ微粒子が効率よく触媒作用を発揮するには、微粒子が担持される部品ないしは基材が、化学反応を起こす空間に解放されていることが必要になる。このような部品ないしは基材として、細線をメッシュ状に編んだスクリーンメッシュやデミスターなどからなるメッシュや、有機高分子材料からなる多孔質膜や、セラミックスハニカムフィルタなどがある。メッシュを構成する細線の表面に、あるいは、多孔質膜の表面に、あるいは、セラミックスハニカムフィルタの隔壁の表面に、47段落で説明した製造方法に準拠して、鉄微粒子からなる多層構造に表面に、極薄い層として触媒作用を有する金属ないしは合金からなる微粒子を析出させると、全ての微粒子が化学反応を起こす空間に晒される。これによって、触媒作用を有する微粒子は、効率よい触媒作用を発揮する。
なお、触媒作用が付与されるメッシュないしは多孔質膜は、有機金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなるメッシュないしは多孔質膜であっても、触媒作用が付与される。さらに、触媒作用が付与される部品ないしは基材は、メッシュないしは多孔質膜ないしはハニカムフィルタに限定されない。有機金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、触媒作用が付与できる。
つまり、触媒作用を持つ微粒子が効率よく触媒作用を発揮するには、微粒子が担持される部品ないしは基材が、化学反応を起こす空間に解放されていることが必要になる。このような部品ないしは基材として、細線をメッシュ状に編んだスクリーンメッシュやデミスターなどからなるメッシュや、有機高分子材料からなる多孔質膜や、セラミックスハニカムフィルタなどがある。メッシュを構成する細線の表面に、あるいは、多孔質膜の表面に、あるいは、セラミックスハニカムフィルタの隔壁の表面に、47段落で説明した製造方法に準拠して、鉄微粒子からなる多層構造に表面に、極薄い層として触媒作用を有する金属ないしは合金からなる微粒子を析出させると、全ての微粒子が化学反応を起こす空間に晒される。これによって、触媒作用を有する微粒子は、効率よい触媒作用を発揮する。
なお、触媒作用が付与されるメッシュないしは多孔質膜は、有機金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、どのような材質からなるメッシュないしは多孔質膜であっても、触媒作用が付与される。さらに、触媒作用が付与される部品ないしは基材は、メッシュないしは多孔質膜ないしはハニカムフィルタに限定されない。有機金属化合物が熱分解する温度に対する耐熱性を持てば、触媒作用が付与できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第23特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造で、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆い、該部品どうしないしは該基材どうしないしは該素材の集まりを圧縮する、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に存在する微粒子のうち、互いに接触する微粒子どうしが摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記部品どうしないしは前記基材どうしないしは前記素材の集まりが接合し、これによって、前記接合された部品に、ないしは前記接合された基材に、ないしは前記素材の集まりに、接合に伴う新たな性質が付与される改質が行なわれる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、ナノレベルの大きさの微粒子によって覆われた部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりを圧縮すると、部品ないしは基材ないしは素材の表面に存在する莫大な数の微粒子のうち、互いに接触する微粒子どうしが点接触で接触し、接触面積が極微小である接触点に過大な摩擦熱が発生し、この摩擦熱で微粒子どうしが接合して、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりが接合する。この接合では、接合部における間隙が形成されない。また、極めて多数の微粒子どうしが接合するため、接合部は一定の接合強度を持つ。これによって、従来は困難であった部品どうしないしは基材どうしの接合、例えば、異なる材質からなる、あるいは、異なる特性を持つ部品どうしないしは基材どうしの接合が可能になり、接合された部品どうしないしは基材どうしは、接合に伴う新たな性質、すなわち、異なる材質の性質に基づく新たな性質を、あるいは、異なる特性に基づく新たな性質を持つ。また、従来は困難であった素材の接合、例えば、粉体や粒子のような微細な物質どうしの接合が、この微細な物質より3桁小さい微粒子どうしの接合で可能になり、接合された素材の集まりは、接合に伴う新たな性質、すなわち、素材の性質と微粒子の性質に基づく新たな性質を持つ。
すなわち、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりを接合することが困難である、あるいは非常に高価な費用をかけなければならない場合がある。例えば、部品どうしないしは基材どうしが異なる材質であるため、両者を接合することができない。あるいは、異なる特性を持つ部品どうしないしは基材どうしを接合するためには、高額な費用をかけて両者の接合面を改質しなければならない場合がある。また、素材が微細な物質、例えば、素材が数十から数百ミクロンの大きさからなる粉体や粒子であるため、粉体や粒子の集まりを直接接合することができない。このため、非常に高額な費用をかけて、粉体や粒子を、一定の大きさに成長させる手段、例えば、結晶成長の手段を用いる場合がある。あるいは、粉体や粒子を、融解する温度まで昇温させ、粉体や粒子を結合させる場合がある。しかし、この場合は、結合された粉体や粒子は、バルク材としての性質を示し、粉体や粒子としての性質は持たない。
このような従来は困難であった、あるいは、非常に高額な費用をかけていた部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりが、圧縮荷重を加えるだけで、表面に存在する微粒子どうしが、摩擦熱による接合によって容易に接合できる。さらに、接合された部品、ないしは接合された基材、ないしは接合された素材の集まりに、接合に伴う新たな性質、すなわち、素材の性質と微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される。
つまり、有機金属化合物の熱分解で析出する金属は不純物を持たないため、活性状態にある金属微粒子として、部品ないしは基材ないしは素材の表面に一斉に析出する。このため、金属微粒子どうしは、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。これによって、金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材を覆う。いっぽう、部品ないしは基材ないしは素材の表面は、表面粗さあるいは平坦度といわれるミクロンレベルの凹凸を有する。ナノレベルの大きさからなる金属微粒子は、凹凸内にも多数の金属微粒子が析出し、互いが接触する部位で金属結合する、と共に、凹凸外に存在する金属微粒子とも、互いが接触する部位で金属結合して接合する。このため、表面の凹凸を含む表面全体を覆う金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持つ。従って、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりを圧縮した際に、表面に存在する莫大な数の金属微粒子は、金属微粒子の集まりから離脱せず、金属微粒子どうしは互いに点接触で接触する。この際、接触点に過大な摩擦熱が発生し、この摩擦熱で接触した微粒子どうしが接合し、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりが接合する。
すなわち、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりを接合することが困難である、あるいは非常に高価な費用をかけなければならない場合がある。例えば、部品どうしないしは基材どうしが異なる材質であるため、両者を接合することができない。あるいは、異なる特性を持つ部品どうしないしは基材どうしを接合するためには、高額な費用をかけて両者の接合面を改質しなければならない場合がある。また、素材が微細な物質、例えば、素材が数十から数百ミクロンの大きさからなる粉体や粒子であるため、粉体や粒子の集まりを直接接合することができない。このため、非常に高額な費用をかけて、粉体や粒子を、一定の大きさに成長させる手段、例えば、結晶成長の手段を用いる場合がある。あるいは、粉体や粒子を、融解する温度まで昇温させ、粉体や粒子を結合させる場合がある。しかし、この場合は、結合された粉体や粒子は、バルク材としての性質を示し、粉体や粒子としての性質は持たない。
このような従来は困難であった、あるいは、非常に高額な費用をかけていた部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりが、圧縮荷重を加えるだけで、表面に存在する微粒子どうしが、摩擦熱による接合によって容易に接合できる。さらに、接合された部品、ないしは接合された基材、ないしは接合された素材の集まりに、接合に伴う新たな性質、すなわち、素材の性質と微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される。
つまり、有機金属化合物の熱分解で析出する金属は不純物を持たないため、活性状態にある金属微粒子として、部品ないしは基材ないしは素材の表面に一斉に析出する。このため、金属微粒子どうしは、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。これによって、金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持って部品ないしは基材ないしは素材を覆う。いっぽう、部品ないしは基材ないしは素材の表面は、表面粗さあるいは平坦度といわれるミクロンレベルの凹凸を有する。ナノレベルの大きさからなる金属微粒子は、凹凸内にも多数の金属微粒子が析出し、互いが接触する部位で金属結合する、と共に、凹凸外に存在する金属微粒子とも、互いが接触する部位で金属結合して接合する。このため、表面の凹凸を含む表面全体を覆う金属微粒子の集まりは、一定の接合強度を持つ。従って、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりを圧縮した際に、表面に存在する莫大な数の金属微粒子は、金属微粒子の集まりから離脱せず、金属微粒子どうしは互いに点接触で接触する。この際、接触点に過大な摩擦熱が発生し、この摩擦熱で接触した微粒子どうしが接合し、部品どうしないしは基材どうし、ないしは、素材の集まりが接合する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第24特徴手段は、前記した第23特徴手段における微粒子どうしの接合による基材どうしの接合が、金属ないしは半導体ないしはセラミックスからなる基材を、微粒子どうしの接合によって、ガラスないしはセラミックスないしは金属からなる基材に接合する接合体であって、該接合体は、前記基材どうしを重ね合わせて前記一方の基材に圧縮荷重を加える、ないしは、前記一方の基材を前記他方の基材に圧入して圧入荷重を加える、これによって、前記基材どうしが重ね合わされた際に、ないしは前記一方の基材を圧入した際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重ないしは前記圧入荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記基材どうしが接合される接合体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、微粒子の多層構造で覆われた金属ないしは半導体ないしはセラミックスからなる基材を、微粒子の多層構造で覆われたガラスないしはセラミックスないしは金属からなる基材に重ね合わせて圧縮すると、ないしは一方の基材を他方の基材に圧入すると、互いに接触する莫大な数からなる微粒子どうしが、圧縮荷重ないしは圧入荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、これによって、基材どうしが接合される。
こうした接合は、微粒子の大きさがナノレベルであるため、基材どうしの接合部は、実質的に厚みを持たない。これによって、基材どうしの間で、効率良い熱伝導や電気導電や磁気の伝達が可能になる。また、液体が接合部に侵入できないため、接合後に腐食性液体による基材の加工、例えば、エッチング加工が可能になる。さらに、圧縮荷重ないしは圧入荷重を加えるだけで接合するため、接合面の平坦度を上げる加工が一切不要になる。また、接合される基材の材質に関わる制約が一切ない。このため、金属をガラスに直接接合する、セラミックスをガラスに直接接合する、金属をセラミックスに直接接合する、物性が大きく異なる金属どうしを直接接合するなど、従来は困難であった直接接合が、極めて安価な費用でできる。
こうした接合は、微粒子の大きさがナノレベルであるため、基材どうしの接合部は、実質的に厚みを持たない。これによって、基材どうしの間で、効率良い熱伝導や電気導電や磁気の伝達が可能になる。また、液体が接合部に侵入できないため、接合後に腐食性液体による基材の加工、例えば、エッチング加工が可能になる。さらに、圧縮荷重ないしは圧入荷重を加えるだけで接合するため、接合面の平坦度を上げる加工が一切不要になる。また、接合される基材の材質に関わる制約が一切ない。このため、金属をガラスに直接接合する、セラミックスをガラスに直接接合する、金属をセラミックスに直接接合する、物性が大きく異なる金属どうしを直接接合するなど、従来は困難であった直接接合が、極めて安価な費用でできる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第25特徴手段は、前記した第24特徴手段における半導体ないしはセラミックスからなる基材がガラスの基材に接合される接合体が、半導体ないしは絶縁性セラミックスからなる基板を、微粒子どうしの接合によって、ガラスの基板に接合する接合体であって、該接合体は、前記基板どうしを重ね合わせて、前記一方の基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記基板どうしが重ね合わされた際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記基板どうしが接合される接合体である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、半導体ないしは絶縁性セラミックスからなる基板を、微粒子どうしの接合によって、直接、ガラスの基板に接合することができる。このような接合技術に最も近い従来技術に陽極接合がある。本特徴手段は、従来における陽極接合の諸課題を根本的に解決し、かつ、陽極接合より極めて安価に接合体が製造できる。
陽極接合の原理は、次の通りである。ガラス基板とシリコン基板とを数百度の温度に晒し、ガラス基板を負極側とし、シリコン基板を正極側として高電圧を印加すると、ガラス基板の内部でナトリウムがプラスに、酸素がマイナスにそれぞれイオン化する。この結果、シリコン基板との界面寄りの位置に存在するナトリウムは、Na+となってガラス基板の負極接続側へ移動する。ガラス基板のシリコン基板との界面付近では、ガラス中におけるNa+の移動によって、O2 −が相対的に富化されて負の電荷層が形成される。一方、シリコン基板のガラス基板との界面付近では、正の電荷層が形成されるので、負の電荷層と正の電荷層との間に作用する静電引力によって、ガラス基板とシリコン基板とが密着する。これによって、ガラス基板とシリコン基板との界面では、近接したSi+とO2 −とが結合し、陽極酸化物(SiO2)層が形成されて、ガラス基板とシリコン基板とが陽極接合される。
しかしながら、陽極接合は、接合面を高いレベルの平坦度に加工しなければ、接合面にボイドと呼ばれる空隙ないしは気泡溜りができ、これによって接合強度が著しく低下する。このため、硬いガラス基板とシリコン基板の表面を、鏡面仕上げに加工する必要がある。また、高温環境下で高電圧を印加する製作条件が必要になる。さらに、ガラス基板と接合する基板が導体であるか、ないしは、シリコン基板のように酸化性の半導体基板に限られる。つまり、絶縁性のセラミックス基板では、セラミックス基板に電界が発生し、これによって、ガラス基板に大きな電界が発生せず、ガラス内部での陽イオンの移動が起こらない。また、炭化ケイ素のような非酸化性の半導体基板では、接合面で酸化物が生成される反応が起こらない。このように、陽極接合によって接合できる材質の制約が大きい。
これに対し、本特徴手段によれば、銅微粒子の多層構造で覆われたガラス基板とシリコン基板とを重ね合わせ、一方の基板に圧縮荷重を加えるだけで、銅微粒子どうしが摩擦熱で接合し、ガラス基板がシリコン基板に接合でき、従来の陽極接合より安価で確実な接合ができる。更に、複数組のガラス基板とシリコン基板との接合も同様にできる。また、炭化ケイ素のような非酸化性の半導体基板、ないしは、絶縁性のセラミックス基板であっても、ガラス基板と接合することができ、基板の材質に関わる制約は一切ない。さらに、接合部に間隙が形成されないため、エッチング液が接合部に侵入せず、接合後のエッチング加工も可能になる。なお、基板どうしの接合に関わる微粒子は、銅微粒子に限られない。
陽極接合の原理は、次の通りである。ガラス基板とシリコン基板とを数百度の温度に晒し、ガラス基板を負極側とし、シリコン基板を正極側として高電圧を印加すると、ガラス基板の内部でナトリウムがプラスに、酸素がマイナスにそれぞれイオン化する。この結果、シリコン基板との界面寄りの位置に存在するナトリウムは、Na+となってガラス基板の負極接続側へ移動する。ガラス基板のシリコン基板との界面付近では、ガラス中におけるNa+の移動によって、O2 −が相対的に富化されて負の電荷層が形成される。一方、シリコン基板のガラス基板との界面付近では、正の電荷層が形成されるので、負の電荷層と正の電荷層との間に作用する静電引力によって、ガラス基板とシリコン基板とが密着する。これによって、ガラス基板とシリコン基板との界面では、近接したSi+とO2 −とが結合し、陽極酸化物(SiO2)層が形成されて、ガラス基板とシリコン基板とが陽極接合される。
しかしながら、陽極接合は、接合面を高いレベルの平坦度に加工しなければ、接合面にボイドと呼ばれる空隙ないしは気泡溜りができ、これによって接合強度が著しく低下する。このため、硬いガラス基板とシリコン基板の表面を、鏡面仕上げに加工する必要がある。また、高温環境下で高電圧を印加する製作条件が必要になる。さらに、ガラス基板と接合する基板が導体であるか、ないしは、シリコン基板のように酸化性の半導体基板に限られる。つまり、絶縁性のセラミックス基板では、セラミックス基板に電界が発生し、これによって、ガラス基板に大きな電界が発生せず、ガラス内部での陽イオンの移動が起こらない。また、炭化ケイ素のような非酸化性の半導体基板では、接合面で酸化物が生成される反応が起こらない。このように、陽極接合によって接合できる材質の制約が大きい。
これに対し、本特徴手段によれば、銅微粒子の多層構造で覆われたガラス基板とシリコン基板とを重ね合わせ、一方の基板に圧縮荷重を加えるだけで、銅微粒子どうしが摩擦熱で接合し、ガラス基板がシリコン基板に接合でき、従来の陽極接合より安価で確実な接合ができる。更に、複数組のガラス基板とシリコン基板との接合も同様にできる。また、炭化ケイ素のような非酸化性の半導体基板、ないしは、絶縁性のセラミックス基板であっても、ガラス基板と接合することができ、基板の材質に関わる制約は一切ない。さらに、接合部に間隙が形成されないため、エッチング液が接合部に侵入せず、接合後のエッチング加工も可能になる。なお、基板どうしの接合に関わる微粒子は、銅微粒子に限られない。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第26特徴手段は、前記した第24特徴手段における金属からなる基材が、金属ないしはセラミックスからなる基材に接合される接合体が、金属からなるプリント配線板を、微粒子どうしの接合によって、メタル基板ないしはセラミックス基板に接合する接合体であって、該接合体は、前記プリント配線板を前記メタル基板ないしは前記セラミックス基板に重ね合わせて、前記プリント基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記プリント配線板が前記メタル基板ないしは前記セラミックス基板に重ね合わされた際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記プリント基板が前記メタル基板ないしは前記セラミックス基板に接合される接合体である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、金属からなるプリント配線板を、微粒子どうしの接合によって、直接メタル基板ないしは直接セラミックス基板に接合することができる。接合部が実質的に厚みを持たないため、プリント配線板の熱が、効率よくメタル基板ないしはセラミックス基板に伝わり、プリント配線板により多くの電子デバイスをより高密度で実装することができ、高密度実装された電子デバイスの動作寿命を延ばすことができる。
電子デバイスを高密度実装した電子回路では、実装する電子デバイスの数に応じて発熱量が増える。このため、プリント配線板の熱を効率よく基板に伝達するため、ガラスエポキシ基板に替わって、メタル基板ないしはセラミックス基板が用いられている。あるいは、自動車に搭載される電子回路のうち、高温の環境下で動作する電子回路は、熱伝導性に優れるメタル基板ないしはセラミックス基板が用いられている。従来は、ろう材や接着剤によって、プリント配線板をメタル基板ないしはセラミックス基板に接合させていたため、接合部が熱抵抗を形成し、プリント配線板の熱が、メタル基板ないしはセラミックス基板に効率よく伝達しなかった。また、接合部によって電子回路の厚みが増えた。こうしたメタル基板の材質は銅やアルミニウムであり、セラミックス基板の材質はアルミナである。
これに対し、本特徴手段によれば、銅微粒子で覆われたプリント配線板を、銅微粒子で覆われた絶縁性のセラミックス基板に重ね合わせ、ないしは、表層がマグヘマイト微粒子で、内部が鉄微粒子からなる多層構造で覆われたメタル基板ないしは導電性のセラミックス基板に重ね合わせ、プリント配線板に圧縮荷重を加えるだけで両者が接合できる。この接合においては、接合部は実質的に厚みを持たず、熱抵抗を形成しない。このため、プリント配線板の熱が、直接、メタル基板ないしはセラミックス基板に伝導し、プリント配線板の昇温が抑制される。この結果、プリント配線板における電子デバイスのさらなる高密度実装が可能になり、電子回路が小型化されると共に、電子デバイスの動作寿命を延ばすことが出来る。さらに、接合による回路基板の厚みの増大はない。また、接合部に液体が浸入できないため、接合後にプリント配線板をエッチング加工することもできる。
電子デバイスを高密度実装した電子回路では、実装する電子デバイスの数に応じて発熱量が増える。このため、プリント配線板の熱を効率よく基板に伝達するため、ガラスエポキシ基板に替わって、メタル基板ないしはセラミックス基板が用いられている。あるいは、自動車に搭載される電子回路のうち、高温の環境下で動作する電子回路は、熱伝導性に優れるメタル基板ないしはセラミックス基板が用いられている。従来は、ろう材や接着剤によって、プリント配線板をメタル基板ないしはセラミックス基板に接合させていたため、接合部が熱抵抗を形成し、プリント配線板の熱が、メタル基板ないしはセラミックス基板に効率よく伝達しなかった。また、接合部によって電子回路の厚みが増えた。こうしたメタル基板の材質は銅やアルミニウムであり、セラミックス基板の材質はアルミナである。
これに対し、本特徴手段によれば、銅微粒子で覆われたプリント配線板を、銅微粒子で覆われた絶縁性のセラミックス基板に重ね合わせ、ないしは、表層がマグヘマイト微粒子で、内部が鉄微粒子からなる多層構造で覆われたメタル基板ないしは導電性のセラミックス基板に重ね合わせ、プリント配線板に圧縮荷重を加えるだけで両者が接合できる。この接合においては、接合部は実質的に厚みを持たず、熱抵抗を形成しない。このため、プリント配線板の熱が、直接、メタル基板ないしはセラミックス基板に伝導し、プリント配線板の昇温が抑制される。この結果、プリント配線板における電子デバイスのさらなる高密度実装が可能になり、電子回路が小型化されると共に、電子デバイスの動作寿命を延ばすことが出来る。さらに、接合による回路基板の厚みの増大はない。また、接合部に液体が浸入できないため、接合後にプリント配線板をエッチング加工することもできる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第27特徴手段は、前記した第24特徴手段における金属ないしはセラミックスからなる基材が、金属からなる基材に接合される接合体が、金属ないしはセラミックスからなる回路基板を、微粒子どうしの接合によって、金属からなるヒートシンクに接合する接合体であって、該接合体は、回路基板をヒートシンクに重ね合わせて、前記回路基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記回路基板を前記ヒートシンクに重ね合わせた際に、互いに接触する微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記回路基板が前記ヒートシンクに接合される接合体である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、金属ないしはセラミックスからなる回路基板を、微粒子どうしの接合によって、直接、金属からなるヒートシンクに接合することができる。接合部が実質的に厚みを持たないため、回路基板の熱が効率よくヒートシンクに伝わり、より多くの電子デバイスを回路基板に実装でき、高密度実装された電子デバイスの動作寿命が延びる。さらに、接合部が熱抵抗を持たないため、ヒートシンクの厚みが低減でき、電子回路の重量を著しく軽くすることができる。
すなわち、回路基板とヒートシンクとを、銅微粒子からなる多層構造で覆い、その後、両者を重ね合わせ、回路基板に圧縮荷重をかけることで、両者が銅微粒子の接合によって接合される。その後、回路基板を構成する配線板を、必要となる回路パターンにエッチング加工することで、回路基板が形成される。
ワイドギャップ半導体からなるICチップ、パワーデバイスと呼ばれる電力制御に用いるIGBTチップ、パワーMOSFETなどの電子デバイスは、動作時に発する熱が従来のシリコン半導体デバイスに比べて多いため、発熱デバイスと呼ばれる。こうした発熱デバイスが発する熱を、効率よく外部に放熱し、回路基板に実装された電子デバイスの動作寿命を延ばすことが必要とされている。
すなわち、炭化ケイ素SiC、窒化ガリウムGaN、窒化アルミニウムAlNなどからなる半導体は、シリコンSiからなる半導体に比べてバンドギャップが大きいためワイドギャップ半導体と呼ばれ、Si半導体に比べ高温での動作が可能になる。また、絶縁破壊電圧もSi半導体に比べて大きいため、順方向オン抵抗を低減させることができ、導通損失やスイッチング損失が低減できる。このため、ワイドギャップ半導体は、従来のSi半導体に比べより多くの電流を流すことが出来るが発熱量は増える。いっぽう、SiC半導体はSi半導体の3倍の熱伝導率を持ち、AlN半導体はSi半導体の1.7倍の熱伝導率を持つ。このため、ワイドギャップ半導体からなるICチップの動作時においては、Si半導体に比べてICチップからより多くの熱が発生すると共に熱が伝達され易い。これによって、ワイドギャップ半導体からなるICチップのみならず、回路基板に実装された他の電子デバイスに熱の影響を与える。こうしたICチップが発する熱を効率的にヒートシンクに伝達し、回路基板に実装された電子デバイスの昇温を抑え、動作寿命を延ばすことが課題になっている。
また、電力を制御するパワーデバイスは、相対的に大きな電流を流すため、より多くの熱が発生する。IGBTチップはパワーMOSFETと共に、こうした電力制御用のパワーデバイスを構成する。さらに、複数のIGBTチップと複数のパワーMOSFETとによってパワーデバイスを構成し、これらのパワーデバイスを駆動させる駆動回路および保護回路と共にインテリジェントパワーモジュールを構成する。こうしたパワーデバイスを実装する電子回路についても、IGBTチップやパワーMOSFETから発生する熱を効率的に伝達させ、電子回路の昇温を抑え、電子デバイスの動作寿命を延ばすことが大きな課題になっている。
こうした背景から、回路基板の熱伝導性を高め、かつ機械的強度を増大させるため、ガラスエポキシ基板に変わり、熱伝導性が高く電気絶縁性である窒化アルミニウムや窒化ケイ素や酸化アルミニウムなどからなる高価なセラミックス板が回路基板として用いられている。さらに、セラミックス基板からの熱を効率よく外部に放熱させるため、セラミックス基板にヒートシンクを接合させ、ヒートシンクから外部に熱を放熱する。ヒートシンクの多くは、熱伝導率が高く、軽量で加工が容易であるアルミニウムで構成されている。
従来、セラミックス基板と金属板とを接合するには、接合層を介して接合する間接接合法と、接合面を直接接合する直接接合法とがある。間接接合法には、合金からなるロウや高熱伝導性の低融点ガラスなどを融解して、あるいは、熱伝導性の接着剤を塗布して接合する。また、直接接合法には、接合部品を加圧状態で高温雰囲気に晒し、接合面の原子を拡散することで接合する拡散接合法と、真空中で接合面にイオンビームを照射して接合面を活性化した後に接合する常温接合法とがある。直接接合法は、第一に接合面の表面状態を鏡面仕上げに近い平坦度に仕上げる必要があり、第二に1000℃に近い高温状態に晒すことや、真空中でイオンビームを照射させるなどの特殊な環境下で接合がなされるため、接合費用が高額になる。また、間接接合法では、接合面にロウやガラスや接着剤を配置させた後に、接合面を積層方向に加圧し、更に加熱して接合面を接合するが、加圧によってロウやガラスや接着剤がずれ、更に、融解時における体積の変化で接着面がずれるため、被接合物を固定配置させる必要がある。また、金属との熱膨張率の差が大きいロウやガラスや接着剤を用いるため、温度差による熱衝撃を受けた際に、剪断応力によって接合層にクラックが入る。さらに、金属板の一方が、電子部品が実装される配線板である場合は、回路基板と配線板を接合した後、配線板を所定のパターンにエッチングによって形成する。この際、エッチング液がロウやガラスや接着剤と反応して導電性の反応物を生成し、この反応物が回路板のパターンに付着して回路パターンを短絡させる、など様々な問題がある。
これに対し、本特徴手段によれば、回路基板とヒートシンクとを、銅微粒子の接合によって接合するため、接合部が厚みを持たず、熱抵抗を形成しない。このため、電子デバイスが発する熱は、効率よくヒートシンクに伝わり、ヒートシンクから大気に放出される。これによって、さらなる電子デバイスの高密度実装が可能となり、高密度実装された全ての電子デバイスの動作寿命が延びる。また、ヒートシンクの厚みが低減でき、電子回路の重量が著しく低減できる。また、回路基板が配線板を伴う場合は、配線板のエッチング加工も可能である。さらに、接合による電子回路の厚みの増大はない。
すなわち、回路基板とヒートシンクとを、銅微粒子からなる多層構造で覆い、その後、両者を重ね合わせ、回路基板に圧縮荷重をかけることで、両者が銅微粒子の接合によって接合される。その後、回路基板を構成する配線板を、必要となる回路パターンにエッチング加工することで、回路基板が形成される。
ワイドギャップ半導体からなるICチップ、パワーデバイスと呼ばれる電力制御に用いるIGBTチップ、パワーMOSFETなどの電子デバイスは、動作時に発する熱が従来のシリコン半導体デバイスに比べて多いため、発熱デバイスと呼ばれる。こうした発熱デバイスが発する熱を、効率よく外部に放熱し、回路基板に実装された電子デバイスの動作寿命を延ばすことが必要とされている。
すなわち、炭化ケイ素SiC、窒化ガリウムGaN、窒化アルミニウムAlNなどからなる半導体は、シリコンSiからなる半導体に比べてバンドギャップが大きいためワイドギャップ半導体と呼ばれ、Si半導体に比べ高温での動作が可能になる。また、絶縁破壊電圧もSi半導体に比べて大きいため、順方向オン抵抗を低減させることができ、導通損失やスイッチング損失が低減できる。このため、ワイドギャップ半導体は、従来のSi半導体に比べより多くの電流を流すことが出来るが発熱量は増える。いっぽう、SiC半導体はSi半導体の3倍の熱伝導率を持ち、AlN半導体はSi半導体の1.7倍の熱伝導率を持つ。このため、ワイドギャップ半導体からなるICチップの動作時においては、Si半導体に比べてICチップからより多くの熱が発生すると共に熱が伝達され易い。これによって、ワイドギャップ半導体からなるICチップのみならず、回路基板に実装された他の電子デバイスに熱の影響を与える。こうしたICチップが発する熱を効率的にヒートシンクに伝達し、回路基板に実装された電子デバイスの昇温を抑え、動作寿命を延ばすことが課題になっている。
また、電力を制御するパワーデバイスは、相対的に大きな電流を流すため、より多くの熱が発生する。IGBTチップはパワーMOSFETと共に、こうした電力制御用のパワーデバイスを構成する。さらに、複数のIGBTチップと複数のパワーMOSFETとによってパワーデバイスを構成し、これらのパワーデバイスを駆動させる駆動回路および保護回路と共にインテリジェントパワーモジュールを構成する。こうしたパワーデバイスを実装する電子回路についても、IGBTチップやパワーMOSFETから発生する熱を効率的に伝達させ、電子回路の昇温を抑え、電子デバイスの動作寿命を延ばすことが大きな課題になっている。
こうした背景から、回路基板の熱伝導性を高め、かつ機械的強度を増大させるため、ガラスエポキシ基板に変わり、熱伝導性が高く電気絶縁性である窒化アルミニウムや窒化ケイ素や酸化アルミニウムなどからなる高価なセラミックス板が回路基板として用いられている。さらに、セラミックス基板からの熱を効率よく外部に放熱させるため、セラミックス基板にヒートシンクを接合させ、ヒートシンクから外部に熱を放熱する。ヒートシンクの多くは、熱伝導率が高く、軽量で加工が容易であるアルミニウムで構成されている。
従来、セラミックス基板と金属板とを接合するには、接合層を介して接合する間接接合法と、接合面を直接接合する直接接合法とがある。間接接合法には、合金からなるロウや高熱伝導性の低融点ガラスなどを融解して、あるいは、熱伝導性の接着剤を塗布して接合する。また、直接接合法には、接合部品を加圧状態で高温雰囲気に晒し、接合面の原子を拡散することで接合する拡散接合法と、真空中で接合面にイオンビームを照射して接合面を活性化した後に接合する常温接合法とがある。直接接合法は、第一に接合面の表面状態を鏡面仕上げに近い平坦度に仕上げる必要があり、第二に1000℃に近い高温状態に晒すことや、真空中でイオンビームを照射させるなどの特殊な環境下で接合がなされるため、接合費用が高額になる。また、間接接合法では、接合面にロウやガラスや接着剤を配置させた後に、接合面を積層方向に加圧し、更に加熱して接合面を接合するが、加圧によってロウやガラスや接着剤がずれ、更に、融解時における体積の変化で接着面がずれるため、被接合物を固定配置させる必要がある。また、金属との熱膨張率の差が大きいロウやガラスや接着剤を用いるため、温度差による熱衝撃を受けた際に、剪断応力によって接合層にクラックが入る。さらに、金属板の一方が、電子部品が実装される配線板である場合は、回路基板と配線板を接合した後、配線板を所定のパターンにエッチングによって形成する。この際、エッチング液がロウやガラスや接着剤と反応して導電性の反応物を生成し、この反応物が回路板のパターンに付着して回路パターンを短絡させる、など様々な問題がある。
これに対し、本特徴手段によれば、回路基板とヒートシンクとを、銅微粒子の接合によって接合するため、接合部が厚みを持たず、熱抵抗を形成しない。このため、電子デバイスが発する熱は、効率よくヒートシンクに伝わり、ヒートシンクから大気に放出される。これによって、さらなる電子デバイスの高密度実装が可能となり、高密度実装された全ての電子デバイスの動作寿命が延びる。また、ヒートシンクの厚みが低減でき、電子回路の重量が著しく低減できる。また、回路基板が配線板を伴う場合は、配線板のエッチング加工も可能である。さらに、接合による電子回路の厚みの増大はない。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第28特徴手段は、前記した第24特徴手段における金属からなる基材が、金属からなる基材に接合される接合体が、金属からなるパイプを、微粒子どうしの接合によって、前記金属と異なる材質からなる金属からなるパイプに接合する接合体であって、該接合体は、金属微粒子の多層構造で覆われた一方のパイプを、金属微粒子の多層構造で覆われた他方のパイプに圧入する、これによって、互いに接触する金属微粒子どうしが、圧入荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該金属微粒子どうしの接合によって、前記パイプどうしが接合される接合体である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、金属からなるパイプを、微粒子どうしの接合によって、前記金属と異なる材質からなる金属ないしは合金からなるパイプに接合することができる。
すなわち、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄ないしは鋼からなるパイプについて、異なる材質からなるパイプどうしを接合するにあたっては、融点が大きく異なるため、あるいは、接合部の合金化が困難であるため、溶接による接合ができない。また、ろう材によって接合する場合であっても、パイプどうしの融点が大きく異なる場合や、ろう材とパイプ材との合金化が困難な場合は、不完全な接合部になる。なお、アルミニウムの融点は660℃、ジュラルミンの融点は502℃から535℃、アルミ−マンガン系合金の融点は629℃から643℃、アルミ−シリコン系合金の融点は532℃、アルミ−マグネシウム系合金の融点は568℃から632℃である。いっぽう、銅の融点は1083℃、鉄の融点は1539℃である。また、硬鋼の融点は1390℃から1420℃、軟鋼の融点は1470℃から1490℃である。
これに対し、本特徴手段によれば、接合されるパイプの外径と接合するパイプの内径とが嵌め合い状態になるように加工し、その後、パイプを銅微粒子の多層構造で覆い、接合されるパイプを接合するパイプに圧入する。この際、嵌合部において接触する銅微粒子が摩擦熱で接合し、異なる材質からなるパイプが、無数の銅微粒子の接合によって容易に接合される。本特徴手段によれば、接合面に存在する無数の微粒子の接合を介してパイプが接合されるため、どのような材質の組み合わせであっても、パイプどうしの接合が可能になる。また、接合部が隙間を持たないため、腐食性液体による接合部の腐食は起こらない。
すなわち、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉄ないしは鋼からなるパイプについて、異なる材質からなるパイプどうしを接合するにあたっては、融点が大きく異なるため、あるいは、接合部の合金化が困難であるため、溶接による接合ができない。また、ろう材によって接合する場合であっても、パイプどうしの融点が大きく異なる場合や、ろう材とパイプ材との合金化が困難な場合は、不完全な接合部になる。なお、アルミニウムの融点は660℃、ジュラルミンの融点は502℃から535℃、アルミ−マンガン系合金の融点は629℃から643℃、アルミ−シリコン系合金の融点は532℃、アルミ−マグネシウム系合金の融点は568℃から632℃である。いっぽう、銅の融点は1083℃、鉄の融点は1539℃である。また、硬鋼の融点は1390℃から1420℃、軟鋼の融点は1470℃から1490℃である。
これに対し、本特徴手段によれば、接合されるパイプの外径と接合するパイプの内径とが嵌め合い状態になるように加工し、その後、パイプを銅微粒子の多層構造で覆い、接合されるパイプを接合するパイプに圧入する。この際、嵌合部において接触する銅微粒子が摩擦熱で接合し、異なる材質からなるパイプが、無数の銅微粒子の接合によって容易に接合される。本特徴手段によれば、接合面に存在する無数の微粒子の接合を介してパイプが接合されるため、どのような材質の組み合わせであっても、パイプどうしの接合が可能になる。また、接合部が隙間を持たないため、腐食性液体による接合部の腐食は起こらない。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第29特徴手段は、前記した第23特徴手段における微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まりは、強磁性微粒子どうしの接合によって接合される磁性粒子の集まりであって、該磁性粒子の集まりは、強磁性の微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりを圧縮する、これによって、前記磁性粒子の表面に存在する前記強磁性微粒子のうち、互いに接触する前記強磁性微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該強磁性微粒子どうしの接合によって前記磁性粒子どうしが接合された前記磁性粒子の集まりが制作される点にある。
つまり、本特徴手段によれば、強磁性の微粒子の多層構造で覆われた磁性粒子の集まりを、所定の容器に充填し、磁性粒子の集まりを圧縮すると、磁性粒子の表面に存在する強磁性の微粒子のうち、互いに接触する強磁性の微粒子どうしが摩擦熱で接合し、この強磁性微粒子の接合によって磁性粒子が接合されて、磁性粒子の集まりが得られる。
一般的に、磁性粒子の多くは微細な物質であり、また、容易に磁気吸着する。さらに、工業的に製造された磁性粒子は粒度分布を持つ。従って、一旦磁気吸着した磁性粒子を、気相中でバラバラにほぐすことは、磁気キュリー点以上の高温度に晒さない限りできない。しかし、常温に戻すと再度磁気吸着する。このため、従来は、磁性粒子を接合させる場合は、磁気吸着した磁性粒子を、非磁性の物質、例えば、合成樹脂がガラスなどによって接合している。しかし、これまで、強磁性微粒子の接合によって、個々の磁性粒子を接合した事例はない。この理由は、個々の磁性粒子の表面に、強磁性微粒子の集まりを析出する技術を見いだせなかったことによる。
強磁性微粒子の多層構造で磁性粒子を覆う製造方法は、例えば、前記の33段落で記載した製造方法に準じて、鉄微粒子の多層構造で覆うことができる。また、マグヘマイト微粒子の多層構造で覆う場合は、前記の39段落で記載した製造方法に準ずればよい。さらに、マグネタイト微粒子の多層構造で覆う場合は、前記の43段落で記載した製造方法に準ずればよい。本特徴手段では、個々の磁性粒子を強磁性微粒子で覆うため、前記したように、カルボン酸鉄の分散液に磁性粒子の集まりを投入した後に、分散液を攪拌し、磁性粒子の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、磁性粒子の表面にカルボン酸鉄の分散液を一旦接触させることが必要になる。こうして製造した強磁性微粒子の多層構造で覆われた磁性粒子の集まりを、所定の容器に充填し、磁性粒子の集まりを圧縮すると、磁性粒子の表面に存在する強磁性微粒子のうち、互いに接触する強磁性の微粒子どうしが摩擦熱によって接合し、これによって、磁性粒子が接合し、磁性粒子の集まりが得られる。
本特徴手段によって制作された磁性粒子の接合体は、従来考えられなかった新たな性質を持つ。すなわち、強磁性微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さいため、強磁性の微粒子で接合された磁性粒子の集まりにおいて、磁性粒子の占める体積割合は100%に近い。このため、磁性粒子の優れた磁気特性を損失することなく、磁性粒子の集まりからなる接合体ができる。また、個々の磁性粒子が、強磁性微粒子の接合によって接合されるため、極めて高い密度で接合された磁性粒子の集まりとなり、この集まりは磁性粒子の優れた磁気特性をそのまま示す。さらに、従来は得られなかった性質を持つ磁性粒子の集まりが製造できる。例えば、磁性粒子を強磁性で電気絶縁性の微粒子で絶縁化し、この磁性粒子を接合すれば、この磁性粒子の集まりは、磁気特性を低下することなく、渦電流損失が著しく小さくなる。
一般的に、磁性粒子の多くは微細な物質であり、また、容易に磁気吸着する。さらに、工業的に製造された磁性粒子は粒度分布を持つ。従って、一旦磁気吸着した磁性粒子を、気相中でバラバラにほぐすことは、磁気キュリー点以上の高温度に晒さない限りできない。しかし、常温に戻すと再度磁気吸着する。このため、従来は、磁性粒子を接合させる場合は、磁気吸着した磁性粒子を、非磁性の物質、例えば、合成樹脂がガラスなどによって接合している。しかし、これまで、強磁性微粒子の接合によって、個々の磁性粒子を接合した事例はない。この理由は、個々の磁性粒子の表面に、強磁性微粒子の集まりを析出する技術を見いだせなかったことによる。
強磁性微粒子の多層構造で磁性粒子を覆う製造方法は、例えば、前記の33段落で記載した製造方法に準じて、鉄微粒子の多層構造で覆うことができる。また、マグヘマイト微粒子の多層構造で覆う場合は、前記の39段落で記載した製造方法に準ずればよい。さらに、マグネタイト微粒子の多層構造で覆う場合は、前記の43段落で記載した製造方法に準ずればよい。本特徴手段では、個々の磁性粒子を強磁性微粒子で覆うため、前記したように、カルボン酸鉄の分散液に磁性粒子の集まりを投入した後に、分散液を攪拌し、磁性粒子の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、磁性粒子の表面にカルボン酸鉄の分散液を一旦接触させることが必要になる。こうして製造した強磁性微粒子の多層構造で覆われた磁性粒子の集まりを、所定の容器に充填し、磁性粒子の集まりを圧縮すると、磁性粒子の表面に存在する強磁性微粒子のうち、互いに接触する強磁性の微粒子どうしが摩擦熱によって接合し、これによって、磁性粒子が接合し、磁性粒子の集まりが得られる。
本特徴手段によって制作された磁性粒子の接合体は、従来考えられなかった新たな性質を持つ。すなわち、強磁性微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さいため、強磁性の微粒子で接合された磁性粒子の集まりにおいて、磁性粒子の占める体積割合は100%に近い。このため、磁性粒子の優れた磁気特性を損失することなく、磁性粒子の集まりからなる接合体ができる。また、個々の磁性粒子が、強磁性微粒子の接合によって接合されるため、極めて高い密度で接合された磁性粒子の集まりとなり、この集まりは磁性粒子の優れた磁気特性をそのまま示す。さらに、従来は得られなかった性質を持つ磁性粒子の集まりが製造できる。例えば、磁性粒子を強磁性で電気絶縁性の微粒子で絶縁化し、この磁性粒子を接合すれば、この磁性粒子の集まりは、磁気特性を低下することなく、渦電流損失が著しく小さくなる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第30特徴手段は、前記した第29特徴手段における強磁性微粒子どうしの接合によって接合された磁性粒子の集まりは、鉄微粒子どうしないしはマグネタイト微粒子どうしの接合によって接合された軟磁性の性質を持つ磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体であって、該シート状の成形体は、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりをシート状に圧縮する、これによって、互いに接触する前記微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって前記磁性粒子の集まりがシート状に接合されるシート状の成形体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の多層構造で、軟磁性の性質を持つ磁性粒子を覆い、磁気吸着した軟磁性の磁性粒子の集まりを、圧延機によってシート状に圧縮成形する。この際、軟磁性の磁性粒子の表面に存在する強磁性の微粒子が互いに接触し、莫大な数からなる強磁性の微粒子どうしが摩擦熱で接合し、軟磁性の磁性粒子の集まりがシート状に圧縮成形される。なお軟磁性の磁性粒子とは、保持力が小さい磁性粒子を意味し、外部から磁界を加えると、磁性粒子が有するヒステリシス特性に応じた磁気特性を示すが、磁界を取り除くと磁束密度が著しく小さくなる性質を示す。
前記した軟磁性の磁性粒子が大きな複素透磁率を持てば、軟磁性の磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体は電波吸収体に適応でき、従来の電波吸収シートに比べ著しく電波吸収能力が高く、かつ、より安価に製造できる電波吸収体になる。
すなわち、近年,パソコンや携帯電話等の各種電子機器の普及とともに,電子機器から発生する電磁波による電波障害が問題になっている。こうした電磁波の対策品として電磁波吸収シートがある。特に、近年その周波数帯域が100MHz〜数GHzといった準マイクロ波帯域に移行していることから、これらの周波数帯域を含む電磁波の吸収が課題になっている。電磁波の吸収能力は、軟磁性材料の複素透磁率の大きさに依存する。このため、従来は、ガスアトマイズ法で制作した軟磁性の合金粒子、例えば、鉄と3%のシリコンとの合金粒子、鉄と6%のシリコンとの合金粒子、鉄とニッケルとの合金粒子、鉄と7%のクロムと1%のシリコンと1.6%のアルミニウムからなる合金粒子などを、ボールミルで扁平化した扁平粉を用いている。しかし、合金粒子が相対的に柔らかいほど、例えば、鉄とニッケルとの合金粒子は、アスペクト比が大きい扁平粒子が得られ、相対的に大きな複素透磁率を持つが、最大の複素透磁率の値を示す周波数は、相対的に低周波数側にある。反対に、合金粒子が相対的に硬いほど、例えば、鉄と6%シリコンとの合金粒子は、大きなアスペクト比を持つ扁平粒子が得られず、相対的に大きな複素透磁率を持たないが、最大の複素透磁率を示す周波数は、相対的に高周波数側にある。このように、合金粒子の組成に応じて、扁平粉の電波吸収特性が異なるため、複数種類からなる扁平粉を電波吸収シートとして成形することで、広範囲の周波数領域の電磁波を吸収することができる。また、限定された周波数領域の電磁波を吸収するにあたっては、この限定された周波数範囲に最大の複素透磁率を持つ扁平粉を用いれば良い。
いっぽう、前記した扁平粒子をシート状に成形する方法は、従来は、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂、塩素化ポリエチレンや軟質塩化ビニールなどの熱可塑性エラストマー、ネオプレン系やクロロプレン系のゴムなど様々な高分子材料を融解ないしは溶解して、融解ないしは溶解した高分子材料と扁平粒子とを混練し、混練物を成形して電波吸収シートを製造している。しかしながら、混練物をシート状に成形するには、混練物の粘度を低下させなければならず、混練物における扁平粒子の体積占有率を低下させなければならない。いっぽう、成形体における高分子材料の配合割合が高まるほど、電波吸収能力は低下する。前記したように、吸収する電波の周波数範囲が広いほど、扁平粒子の種類を増やす必要がある。硬さと大きさが異なる複数種類の扁平粒子の集まりを、融解ないしは溶解した高分子材料と混練し、シート状に混練物を成形するには、混練物の粘度をさらに低下させなければならず、扁平粒子の体積占有率が更に低下し、電波吸収シートの電波吸収能力が更に低下する。
こうした従来の電波吸収シートの製造上の課題は、本特徴手段によって根本的に解決できる。すなわち、複数種類の軟磁性合金からなる扁平粉を、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子で覆う。なお、軟磁性の性質を持つ合金からなる扁平粒子は、弱い磁気吸着力で互いに吸着するため、39段落で説明した圧粉磁心の事例と同様に、複数種類の扁平粉の集まりをカルボン酸鉄の分散液が入った容器に充填し、分散液を攪拌させて扁平粉の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、個々の扁平粉の表面にカルボン酸鉄の分散液を一旦接触させる。次に、分散液の溶媒を気化させ、扁平粉を熱処理する。こうして制作された鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子で覆われた扁平粉の集まりに対し振動を加え、扁平粉が形成する間隙を埋めるように扁平粉を再配列させる。この後、多段の冷間圧延ロールに扁平粉の集まりを供給し、扁平粉の全体に圧縮力を加える。この際、個々の扁平粉の表面に存在する鉄微粒子どうし、ないしはマグネタイト微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱によって微粒子が接合し、複数種類の扁平粉の集まりがシート状に成形される。なお、鉄とマグネタイトの双方は、大きな複素透磁率を持たないが、優れた軟磁性材料、すなわち、相対的に小さい磁界で大きな磁束密度を発生する。
前記した製法で製造された電波吸収シートにおける扁平粉の体積割合は、100%に近い体積占有率を占める。この理由は、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の大きさが、扁平粉の長さに比べ、3桁小さいためである。これによって、従来の製法による電波吸収シートに比べ、格段に電波吸収能力が向上する。また、個々の扁平粉が、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の接合によって接合されるため、扁平粉の硬さと形状に依存せず、個々の扁平粉どうしが接合される。これによって、扁平粉が極めて高密度に接合されるため、電波吸収能力が格段に向上する。また、従来の製造方法に比べ、扁平粉を圧縮成形するだけであるため、格段に安価な電波吸収シートが製造できる。
以上に、軟磁性の磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体について、電波吸収シートへの適応について説明したが、電波吸収シートに限られることはない。鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さく、成形体における軟磁性粒子の体積占有率は100%に近い。このため、成形体は、軟磁性粒子の優れた磁気特性を発揮するため、軟磁性の磁気特性を反映する画期的な工業製品が製造できる。
前記した軟磁性の磁性粒子が大きな複素透磁率を持てば、軟磁性の磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体は電波吸収体に適応でき、従来の電波吸収シートに比べ著しく電波吸収能力が高く、かつ、より安価に製造できる電波吸収体になる。
すなわち、近年,パソコンや携帯電話等の各種電子機器の普及とともに,電子機器から発生する電磁波による電波障害が問題になっている。こうした電磁波の対策品として電磁波吸収シートがある。特に、近年その周波数帯域が100MHz〜数GHzといった準マイクロ波帯域に移行していることから、これらの周波数帯域を含む電磁波の吸収が課題になっている。電磁波の吸収能力は、軟磁性材料の複素透磁率の大きさに依存する。このため、従来は、ガスアトマイズ法で制作した軟磁性の合金粒子、例えば、鉄と3%のシリコンとの合金粒子、鉄と6%のシリコンとの合金粒子、鉄とニッケルとの合金粒子、鉄と7%のクロムと1%のシリコンと1.6%のアルミニウムからなる合金粒子などを、ボールミルで扁平化した扁平粉を用いている。しかし、合金粒子が相対的に柔らかいほど、例えば、鉄とニッケルとの合金粒子は、アスペクト比が大きい扁平粒子が得られ、相対的に大きな複素透磁率を持つが、最大の複素透磁率の値を示す周波数は、相対的に低周波数側にある。反対に、合金粒子が相対的に硬いほど、例えば、鉄と6%シリコンとの合金粒子は、大きなアスペクト比を持つ扁平粒子が得られず、相対的に大きな複素透磁率を持たないが、最大の複素透磁率を示す周波数は、相対的に高周波数側にある。このように、合金粒子の組成に応じて、扁平粉の電波吸収特性が異なるため、複数種類からなる扁平粉を電波吸収シートとして成形することで、広範囲の周波数領域の電磁波を吸収することができる。また、限定された周波数領域の電磁波を吸収するにあたっては、この限定された周波数範囲に最大の複素透磁率を持つ扁平粉を用いれば良い。
いっぽう、前記した扁平粒子をシート状に成形する方法は、従来は、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂、塩素化ポリエチレンや軟質塩化ビニールなどの熱可塑性エラストマー、ネオプレン系やクロロプレン系のゴムなど様々な高分子材料を融解ないしは溶解して、融解ないしは溶解した高分子材料と扁平粒子とを混練し、混練物を成形して電波吸収シートを製造している。しかしながら、混練物をシート状に成形するには、混練物の粘度を低下させなければならず、混練物における扁平粒子の体積占有率を低下させなければならない。いっぽう、成形体における高分子材料の配合割合が高まるほど、電波吸収能力は低下する。前記したように、吸収する電波の周波数範囲が広いほど、扁平粒子の種類を増やす必要がある。硬さと大きさが異なる複数種類の扁平粒子の集まりを、融解ないしは溶解した高分子材料と混練し、シート状に混練物を成形するには、混練物の粘度をさらに低下させなければならず、扁平粒子の体積占有率が更に低下し、電波吸収シートの電波吸収能力が更に低下する。
こうした従来の電波吸収シートの製造上の課題は、本特徴手段によって根本的に解決できる。すなわち、複数種類の軟磁性合金からなる扁平粉を、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子で覆う。なお、軟磁性の性質を持つ合金からなる扁平粒子は、弱い磁気吸着力で互いに吸着するため、39段落で説明した圧粉磁心の事例と同様に、複数種類の扁平粉の集まりをカルボン酸鉄の分散液が入った容器に充填し、分散液を攪拌させて扁平粉の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、個々の扁平粉の表面にカルボン酸鉄の分散液を一旦接触させる。次に、分散液の溶媒を気化させ、扁平粉を熱処理する。こうして制作された鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子で覆われた扁平粉の集まりに対し振動を加え、扁平粉が形成する間隙を埋めるように扁平粉を再配列させる。この後、多段の冷間圧延ロールに扁平粉の集まりを供給し、扁平粉の全体に圧縮力を加える。この際、個々の扁平粉の表面に存在する鉄微粒子どうし、ないしはマグネタイト微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱によって微粒子が接合し、複数種類の扁平粉の集まりがシート状に成形される。なお、鉄とマグネタイトの双方は、大きな複素透磁率を持たないが、優れた軟磁性材料、すなわち、相対的に小さい磁界で大きな磁束密度を発生する。
前記した製法で製造された電波吸収シートにおける扁平粉の体積割合は、100%に近い体積占有率を占める。この理由は、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の大きさが、扁平粉の長さに比べ、3桁小さいためである。これによって、従来の製法による電波吸収シートに比べ、格段に電波吸収能力が向上する。また、個々の扁平粉が、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の接合によって接合されるため、扁平粉の硬さと形状に依存せず、個々の扁平粉どうしが接合される。これによって、扁平粉が極めて高密度に接合されるため、電波吸収能力が格段に向上する。また、従来の製造方法に比べ、扁平粉を圧縮成形するだけであるため、格段に安価な電波吸収シートが製造できる。
以上に、軟磁性の磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体について、電波吸収シートへの適応について説明したが、電波吸収シートに限られることはない。鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さく、成形体における軟磁性粒子の体積占有率は100%に近い。このため、成形体は、軟磁性粒子の優れた磁気特性を発揮するため、軟磁性の磁気特性を反映する画期的な工業製品が製造できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第31特徴手段は、前記した第29特徴手段における強磁性の微粒子どうしの接合によって接合された磁性粒子の集まりは、マグヘマイト微粒子どうしの接合によって接合された硬磁性の性質を持つ磁性粒子の集まりからなる成形体であって、該成形体は、マグヘマイト微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりを容器に充填し、該磁性粒子の集まりに磁界を印加して磁界方向に磁性粒子を配向させ、さらに、該磁性粒子の集まりに圧縮荷重を加える、これによって、互いに接触する前記マグヘマイト微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該マグヘマイト微粒子どうしの接合によって前記磁性粒子の集まりが接合されて成形体が制作される成形体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、マグヘマイト微粒子の多層構造で、硬磁性の性質を持つ磁性粒子を覆う。次に、磁気吸着した硬磁性の磁性粒子の集まりを、所定の容器に充填し、この後、磁界を印加させると硬磁性の磁性粒子が磁界方向に配向する。さらに、圧縮荷重を加えると、磁性粒子の表面のマグヘマイト微粒子が互いに接触し、マグヘマイト微粒子どうしが摩擦熱で接合し、磁性粒子の集まりが成形される。なお、硬磁性の磁性粒子は、保持力が大きい性質を持つ磁性粒子を意味し、保持力が大きいため、着磁するには大きな磁界が必要になるが、一旦着磁されると、保持力より大きい磁界を印加しない限り、磁気特性は変わらい、いわゆる永久磁石の性質を持つ。
このような硬磁性の磁性粒子の集まりからなる成形体はボンド磁石に適応でき、従来のボンド磁石に比べ、著しく磁力が大きく、かつ、より安価に製造できるボンド磁石になる。なお、ボンド磁石は、実用時に着磁機によって着磁され、これによって、硬磁性の磁性粒子がフル着磁され、磁性粒子どうしが強力な磁力で互いに磁気吸着する。併せて、マグヘマイト微粒子は、強力な磁力を持つ磁性粒子と強固に磁気吸着する。このため、実用時にあたっては、ボンド磁石が高速回転しても、ボンド磁石が破壊されることはない。
すなわち、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等の永久磁石が、モータをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、焼結法により製造されるため、一般に脆く、また、薄肉や複雑な形状の磁石を得るのが難しいという欠点を持つ。さらに、焼結時の収縮が15〜20%と大きいために、寸法精度が悪く、寸法精度を上げるために研磨等の後加工が必須になるという欠点もある。こうした焼結磁石の欠点を持たない磁石としてボンド磁石がある。すなわち従来におけるボンド磁石は、磁石を構成する粒子と熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂とを複合化させた樹脂結合型磁石であって、射出成形や押出成形等で製造されるため、形状の自由度に優れる。また、ボンド磁石に用いられる磁石粒子は、フェライトが主流ではあるが、ボンド磁石の小型化や高性能化が要求されるに伴って、磁気特性に優れた希土類磁石の粒子が用いられる事例が増えている。
しかし、希土類元素を含む鉄系磁石を構成する磁石粒子を用いたボンド磁石では、高温多湿の環境において、磁石粒子が酸化物や水酸化物を生成し、磁石粒子の体積が膨張し、ボンド磁石を破壊させる現象が継続的に起こる。このため、磁石粒子の表面を燐酸塩被膜や有機ホスホン酸塩被膜などで被覆してボンド磁石を製造することで、高温多湿の環境におけるボンド磁石の破壊を防止している。しかし、合成樹脂および有機物の被膜はいずれも非磁性体であるため、小型でかつ優れた磁気特性を持たせるには、ボンド磁石に占める磁石粒子の割合をできるだけ増やす必要がある。こうした磁石粒子の配合率が高い希土類ボンド磁石を製造する方法として、粒度の大きい磁石粒子と粒度の小さい磁石粒子とを組み合わせて用いる方法や、不定形の粒子と球状の粒子とを組み合わせて用いる方法などがあるが、磁石粒子の高充填化によって、溶解した合成樹脂と磁石粒子との混練物の粘度が増大し、混練物を成形することができないという問題を引き起こす。
さらに、希土類元素を含む鉄系磁石の中で、サマリュウム鉄窒素磁石と呼ばれる希土類−鉄−窒素系磁石は、ネオジウム鉄ボロン磁石と呼ばれる希土類−鉄−ボロン系磁石より安価であるが異方性の磁石である。しかしながら、成形されたボンド磁石に磁界を印加しても、磁石粒子はボンド磁石の内部で合成樹脂によって拘束されるため、磁界を印加しても磁石粒子は配向しない。この結果、希土類−鉄−窒素系磁石が持つ優れた磁気特性が、ボンド磁石に反映されない問題点がある。また、希土類−鉄−ボロン系磁石についても、磁界を印加したとしても、ボンド磁石の内部では磁石粒子を配向させることができない。このため、希土類−鉄−ボロン系磁石粒子に異方性を持たせ、最も強力な磁力を持つボンド磁石を製造することができない。
上記した問題点は、いずれも磁石粒子を合成樹脂と複合化させる樹脂結合型磁石によってもたらされる問題点である。従って、第一に従来とは異なる新たな手段で磁石粒子を接合し、第二に希土類元素を含む鉄系磁石の粒子の腐食を防止し、第三に磁石粒子の高充填化ができ、第四に磁石粒子の配向が可能である、これら4つの条件を満たす製造方法によって、理想的なボンド磁石が実現される。
本特徴手段によれば、最初に磁石粒子の集まりを、カルボン酸鉄のメタノール分散液が入った非磁性の容器に充填する。次に、分散液を攪拌して、磁石粒子の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、磁石粒子の表面をカルボン酸鉄の分散液と一旦接触させる。次に、メタノールを気化すると、カルボン酸鉄が吸着した磁石粒子が、互いに磁気吸着して容器の底に溜まる。さらに、容器を大気雰囲気で昇温してカルボン酸鉄を熱分解し、酸化鉄(II)FeOの微粒子を磁石粒子の表面に析出させ、さらに大気雰囲気で昇温して酸化鉄(II)FeOの微粒子を、酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイト微粒子に酸化する。こうして、個々の磁石粒子がマグヘマイト微粒子の多層構造で覆われ、マグヘマイト微粒子を介して、磁石粒子が磁気吸着する。いっぽう、マグヘマイト微粒子が生成されるまでの間は、磁石粒子は、カルボン酸鉄ないしは酸化鉄(II)の微粒子で覆われ、大気雰囲気と接触しないため、磁石粒子が希土類元素を含む鉄系磁石であっても腐食現象は起きない。この後、容器から磁気吸着した磁石粒子の集まりを取り出し、ボンド磁石の形状を反映した容器に充填し、磁石粒子を配向させる方向に着磁機によって磁界を印加し、さらに、治具を用いて磁石粒子の集まりに圧縮荷重を加え、マグヘマイト微粒子の接合と、磁石粒子の磁気吸引力とによって、磁石粒子が接合される。こうして、異方性を持つ漏れ磁束が大きいボンド磁石が製造される。なお、磁石粒子は着磁されていないため、磁石粒子どうしが互いに磁気吸着しているが、外部から磁界を印加すると、磁石粒子は磁界方向に容易に配向する。
こうして製造されたボンド磁石は、第一に、磁石粒子が希土類元素を含む鉄系磁石の材料であっても、ボンド磁石の製造時に磁石粒子が腐食されず、また、すべての磁石粒子が酸化物のマグヘマイト微粒子で覆われるため、実用時においても磁石粒子は腐食しない。第二に、磁石粒子の大きさに比べて、マグヘマイト微粒子の大きさは3桁小さいため、ボンド磁石に占める磁石粒子の体積占有率は100%に近く、ボンド磁石は磁石粒子の優れた磁気特性を発揮する。第三に、外部から磁界を印加すると、マグヘマイト微粒子で覆われた個々の磁石粒子が配向するため、ボンド磁石は磁石粒子の磁気特性を100%近く発揮する。こうして、前記した4つの条件を満たすボンド磁石が実現できる。
以上に、ボンド磁石を製作する事例を説明したが、磁性粒子がマグヘマイト微粒子で覆うことができれば、磁石粒子に限られることはない。微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さいため、成形体における磁性粒子の体積占有率は100%に近い。また、マグヘマイト微粒子で覆われた個々の磁性粒子どうしを接合することができる。このため、成形体は磁性粒子の優れた磁気特性を100%近く発揮し、前記したボンド磁石のような画期的な工業製品が製造できる。
このような硬磁性の磁性粒子の集まりからなる成形体はボンド磁石に適応でき、従来のボンド磁石に比べ、著しく磁力が大きく、かつ、より安価に製造できるボンド磁石になる。なお、ボンド磁石は、実用時に着磁機によって着磁され、これによって、硬磁性の磁性粒子がフル着磁され、磁性粒子どうしが強力な磁力で互いに磁気吸着する。併せて、マグヘマイト微粒子は、強力な磁力を持つ磁性粒子と強固に磁気吸着する。このため、実用時にあたっては、ボンド磁石が高速回転しても、ボンド磁石が破壊されることはない。
すなわち、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等の永久磁石が、モータをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、焼結法により製造されるため、一般に脆く、また、薄肉や複雑な形状の磁石を得るのが難しいという欠点を持つ。さらに、焼結時の収縮が15〜20%と大きいために、寸法精度が悪く、寸法精度を上げるために研磨等の後加工が必須になるという欠点もある。こうした焼結磁石の欠点を持たない磁石としてボンド磁石がある。すなわち従来におけるボンド磁石は、磁石を構成する粒子と熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂とを複合化させた樹脂結合型磁石であって、射出成形や押出成形等で製造されるため、形状の自由度に優れる。また、ボンド磁石に用いられる磁石粒子は、フェライトが主流ではあるが、ボンド磁石の小型化や高性能化が要求されるに伴って、磁気特性に優れた希土類磁石の粒子が用いられる事例が増えている。
しかし、希土類元素を含む鉄系磁石を構成する磁石粒子を用いたボンド磁石では、高温多湿の環境において、磁石粒子が酸化物や水酸化物を生成し、磁石粒子の体積が膨張し、ボンド磁石を破壊させる現象が継続的に起こる。このため、磁石粒子の表面を燐酸塩被膜や有機ホスホン酸塩被膜などで被覆してボンド磁石を製造することで、高温多湿の環境におけるボンド磁石の破壊を防止している。しかし、合成樹脂および有機物の被膜はいずれも非磁性体であるため、小型でかつ優れた磁気特性を持たせるには、ボンド磁石に占める磁石粒子の割合をできるだけ増やす必要がある。こうした磁石粒子の配合率が高い希土類ボンド磁石を製造する方法として、粒度の大きい磁石粒子と粒度の小さい磁石粒子とを組み合わせて用いる方法や、不定形の粒子と球状の粒子とを組み合わせて用いる方法などがあるが、磁石粒子の高充填化によって、溶解した合成樹脂と磁石粒子との混練物の粘度が増大し、混練物を成形することができないという問題を引き起こす。
さらに、希土類元素を含む鉄系磁石の中で、サマリュウム鉄窒素磁石と呼ばれる希土類−鉄−窒素系磁石は、ネオジウム鉄ボロン磁石と呼ばれる希土類−鉄−ボロン系磁石より安価であるが異方性の磁石である。しかしながら、成形されたボンド磁石に磁界を印加しても、磁石粒子はボンド磁石の内部で合成樹脂によって拘束されるため、磁界を印加しても磁石粒子は配向しない。この結果、希土類−鉄−窒素系磁石が持つ優れた磁気特性が、ボンド磁石に反映されない問題点がある。また、希土類−鉄−ボロン系磁石についても、磁界を印加したとしても、ボンド磁石の内部では磁石粒子を配向させることができない。このため、希土類−鉄−ボロン系磁石粒子に異方性を持たせ、最も強力な磁力を持つボンド磁石を製造することができない。
上記した問題点は、いずれも磁石粒子を合成樹脂と複合化させる樹脂結合型磁石によってもたらされる問題点である。従って、第一に従来とは異なる新たな手段で磁石粒子を接合し、第二に希土類元素を含む鉄系磁石の粒子の腐食を防止し、第三に磁石粒子の高充填化ができ、第四に磁石粒子の配向が可能である、これら4つの条件を満たす製造方法によって、理想的なボンド磁石が実現される。
本特徴手段によれば、最初に磁石粒子の集まりを、カルボン酸鉄のメタノール分散液が入った非磁性の容器に充填する。次に、分散液を攪拌して、磁石粒子の磁気吸着を液相中で一時的に解除し、磁石粒子の表面をカルボン酸鉄の分散液と一旦接触させる。次に、メタノールを気化すると、カルボン酸鉄が吸着した磁石粒子が、互いに磁気吸着して容器の底に溜まる。さらに、容器を大気雰囲気で昇温してカルボン酸鉄を熱分解し、酸化鉄(II)FeOの微粒子を磁石粒子の表面に析出させ、さらに大気雰囲気で昇温して酸化鉄(II)FeOの微粒子を、酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイト微粒子に酸化する。こうして、個々の磁石粒子がマグヘマイト微粒子の多層構造で覆われ、マグヘマイト微粒子を介して、磁石粒子が磁気吸着する。いっぽう、マグヘマイト微粒子が生成されるまでの間は、磁石粒子は、カルボン酸鉄ないしは酸化鉄(II)の微粒子で覆われ、大気雰囲気と接触しないため、磁石粒子が希土類元素を含む鉄系磁石であっても腐食現象は起きない。この後、容器から磁気吸着した磁石粒子の集まりを取り出し、ボンド磁石の形状を反映した容器に充填し、磁石粒子を配向させる方向に着磁機によって磁界を印加し、さらに、治具を用いて磁石粒子の集まりに圧縮荷重を加え、マグヘマイト微粒子の接合と、磁石粒子の磁気吸引力とによって、磁石粒子が接合される。こうして、異方性を持つ漏れ磁束が大きいボンド磁石が製造される。なお、磁石粒子は着磁されていないため、磁石粒子どうしが互いに磁気吸着しているが、外部から磁界を印加すると、磁石粒子は磁界方向に容易に配向する。
こうして製造されたボンド磁石は、第一に、磁石粒子が希土類元素を含む鉄系磁石の材料であっても、ボンド磁石の製造時に磁石粒子が腐食されず、また、すべての磁石粒子が酸化物のマグヘマイト微粒子で覆われるため、実用時においても磁石粒子は腐食しない。第二に、磁石粒子の大きさに比べて、マグヘマイト微粒子の大きさは3桁小さいため、ボンド磁石に占める磁石粒子の体積占有率は100%に近く、ボンド磁石は磁石粒子の優れた磁気特性を発揮する。第三に、外部から磁界を印加すると、マグヘマイト微粒子で覆われた個々の磁石粒子が配向するため、ボンド磁石は磁石粒子の磁気特性を100%近く発揮する。こうして、前記した4つの条件を満たすボンド磁石が実現できる。
以上に、ボンド磁石を製作する事例を説明したが、磁性粒子がマグヘマイト微粒子で覆うことができれば、磁石粒子に限られることはない。微粒子の大きさが、磁性粒子の大きさに比べて3桁小さいため、成形体における磁性粒子の体積占有率は100%に近い。また、マグヘマイト微粒子で覆われた個々の磁性粒子どうしを接合することができる。このため、成形体は磁性粒子の優れた磁気特性を100%近く発揮し、前記したボンド磁石のような画期的な工業製品が製造できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第32特徴手段は、前記した第23特徴手段における微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まりは、銅微粒子どうしの接合によって基底面が接合された基底面の集合体であって、該基底面の集合体は、銅微粒子どうしの接合によって黒鉛粒子を接合して黒鉛粒子の集まりとし、該黒鉛粒子の集まりに圧縮荷重を加え、前記黒鉛粒子の層間結合を破壊させて基底面の積層体とする、これによって、前記基底面の積層体が前記銅微粒子どうしの接合によって接合された基底面の集合体が制作される基底面の集合体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、黒鉛粒子の集まりをオクチル酸銅の分散液に浸漬し、分散液の溶剤を気化させた後に、オクチル酸銅を熱分解すると、堆積した黒鉛粒子の集まりに銅微粒子が一斉に析出する。この際、析出した銅微粒子が黒鉛粒子を覆うとともに、隣接する黒鉛粒子が銅微粒子の集まりによって接合され、これによって、黒鉛粒子が銅微粒子によって接合され黒鉛粒子の集まりができる。さらに、この黒鉛粒子の集まりを圧縮すると、全ての黒鉛粒子の層間結合が同時に破壊され、黒鉛粒子は積層された基底面となる。これによって、積層された基底面が銅微粒子によって接合された基底面の集合体ができる。
すなわち、炭素原子のみからなる炭素材料の中で、最も黒鉛の結晶化が進んだ単結晶材料である鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、カルボン酸銅の分散液が入った容器に投入し、分散液を攪拌させた後に、分散液の溶剤を気化させると、カルボン酸銅が黒鉛粒子の表面に吸着する。この黒鉛粒子の集まりを熱処理して、カルボン酸銅を熱分解すると、黒鉛粒子の表面を銅微粒子が覆うとともに、隣接する黒鉛粒子が銅微粒子の集まりによって接合され、黒鉛粒子の集まりができる。こうした黒鉛粒子の集まりを圧縮すると、黒鉛粒子の層間結合が同時に破壊され、黒鉛粒子が積層された基底面になる。これによって、積層された基底面が銅微粒子によって接合された基底面の集合体が製造される。つまり、黒鉛粒子が銅微粒子の多層構造で拘束されているため、黒鉛粒子が破壊すると、基底面が面方向のみに積層し、この積層された基底面も、銅微粒子の多層構造で拘束される。この結果、面方向のみに積層された基底面が銅微粒子の集まりで接合され、基底面の集合体が得られる。なお、黒鉛粒子の大きさに比べて、銅微粒子の大きさは3桁小さいため、基底面の集合体に占める基底面の体積占有率は100%に近い。このため、面方向に積層された基底面の集合体は基底面の性質を示す。
黒鉛粒子の層間結合を破壊して得られる基底面は、黒鉛粒子より更に微細な物質である。しかし、本特徴手段によれば、基底面の集合体が得られ、かつ、この基底面の集合体は面方向のみに積層されるため、実質的に基底面の性質を示すという、従来は全く考えられなかった作用効果をもたらす基材が得られる。つまり、従来、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、直接、黒鉛粒子どうしを接合することはできなかった。さらに、黒鉛粒子の層間結合を破壊した際に、基底面がバラバラになってしまい、黒鉛粒子より更に微細な物質である基底面を、面方向のみに積層することはできなかった。ましてや、基底面が面方向のみに積層した基底面どうしを接合し、基底面の集合体を製造することは到底できなかった。
すなわち、炭素原子のみからなる炭素材料の中で、最も黒鉛の結晶化が進んだ単結晶材料である鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、カルボン酸銅の分散液が入った容器に投入し、分散液を攪拌させた後に、分散液の溶剤を気化させると、カルボン酸銅が黒鉛粒子の表面に吸着する。この黒鉛粒子の集まりを熱処理して、カルボン酸銅を熱分解すると、黒鉛粒子の表面を銅微粒子が覆うとともに、隣接する黒鉛粒子が銅微粒子の集まりによって接合され、黒鉛粒子の集まりができる。こうした黒鉛粒子の集まりを圧縮すると、黒鉛粒子の層間結合が同時に破壊され、黒鉛粒子が積層された基底面になる。これによって、積層された基底面が銅微粒子によって接合された基底面の集合体が製造される。つまり、黒鉛粒子が銅微粒子の多層構造で拘束されているため、黒鉛粒子が破壊すると、基底面が面方向のみに積層し、この積層された基底面も、銅微粒子の多層構造で拘束される。この結果、面方向のみに積層された基底面が銅微粒子の集まりで接合され、基底面の集合体が得られる。なお、黒鉛粒子の大きさに比べて、銅微粒子の大きさは3桁小さいため、基底面の集合体に占める基底面の体積占有率は100%に近い。このため、面方向に積層された基底面の集合体は基底面の性質を示す。
黒鉛粒子の層間結合を破壊して得られる基底面は、黒鉛粒子より更に微細な物質である。しかし、本特徴手段によれば、基底面の集合体が得られ、かつ、この基底面の集合体は面方向のみに積層されるため、実質的に基底面の性質を示すという、従来は全く考えられなかった作用効果をもたらす基材が得られる。つまり、従来、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、直接、黒鉛粒子どうしを接合することはできなかった。さらに、黒鉛粒子の層間結合を破壊した際に、基底面がバラバラになってしまい、黒鉛粒子より更に微細な物質である基底面を、面方向のみに積層することはできなかった。ましてや、基底面が面方向のみに積層した基底面どうしを接合し、基底面の集合体を製造することは到底できなかった。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第33特徴手段は、前記した第32特徴手段における基底面の集合体は、シート状ないしはフィルム状に成形された基底面の集合体であって、該基底面の集合体は、銅微粒子どうしの接合によって接合された黒鉛粒子の集まりを、シート状ないしはフィルム状に圧縮し、前記黒鉛粒子の層間結合を破壊させて基底面の積層体とする、これによって、該基底面の積層体が前記銅微粒子どうしの接合によって接合されたシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体が制作される基底面の集合体である点にある。
つまり、この特徴手段によれば、銅微粒子の接合によって接合された黒鉛粒子の集まりを、圧延機によってシート状ないしはフィルム状に圧縮成形すると、シート状ないしはフィルム状に成形された基底面の集合体が製造される。この基底面の集合体は、熱伝導性の観点からは、銅より著しく大きい熱伝導率を持つ基材になり、グラファイトシート(グラフォイルシートとも言う)と呼ばれる基材に適応できる。また、この基底面の集合体は、電気伝導性の観点からは、金属に近い電気伝導性を持つ基材になり、導電性フィルムと呼ばれる基材に適応できる。
すなわち、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、炭素原子が作る六角形の網目構造が平面状に拡がった基底面が2つの層を形成し、この2つの層が交互に規則的に積層された層状構造を有する炭素原子のみからなる単結晶材料である。この基底面のヤング率は1020GPaというダイアモンドに近い大きな値を持ち、基底面に直交するせん断弾性率も440GPaという極めて大きな数値を持つため、基底面は壊れにくい。いっぽう、基底に垂直な方向のヤング率は36GPaであり、基底面に沿ったせん断弾性率は4.5GPaである。このため、基底面どうしの層間結合力は弱く、層間結合が容易に破壊される。このように、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、構造的な異方性を持つ単結晶材料である。
いっぽう、基底面は炭素原子のみからなるため、極めて優れた熱的性質を持ち、300°Kにおける熱伝導率は19.5WC−1m−1であり、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の4.5倍の熱伝導率に相当する。しかしながら、工業的に製造される鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、平均粒径が30μmから50μmで、粒径分布が1μmから250μmに及ぶ微細な粉体である。このような粒径分布が大きく、かつ、微細な粉体である黒鉛粒子を接合することは困難である。たとえ、黒鉛粒子を接合できたとしても、接合した黒鉛粒子を圧縮した際に、基底面がバラバラになってしまい、基底面を積層することは更に困難なことである。さらに、基底面を面方向のみに積層し、この基底面の集まりを得ることは到底できない。
いっぽう、ノートパソコンや携帯電話に代表される電子機器は、高性能化・小型化が著しく進んでいる。こうした電子機器の高性能化・小型化に伴って、その内部に組み込まれた半導体部品は大容量化・高集積化が進み、これによって、電子機器内部における発熱量が増加し、発生した熱が電子機器内に留まり、半導体部品の熱劣化を早めるという問題が起きている。しかし、銅やアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属板を介してフィンやヒートシンクに伝えて外部に放熱させる手段では放熱量が不足し、あるいは、電子機器が大型化し重量が著しく増加するため、金属より熱伝導率が高く、極軽量で極薄いグラファイトシートを用い、効率よく電子機器内の熱を外部に放熱させることが行われている。
しかしながら、従来のグラファイトシートは、ポリイミド等の高分子フィルムを2400℃以上の温度からなる不活性ガスや真空雰囲気で長時間焼成して製造するため、高額な製造費用を伴う高価な基材であり、グラファイトシートを使用できる領域が限られる。また、膨張黒鉛を用いてグラファイトシートを製造する製造方法もある。膨張黒鉛は、黒鉛粒子に濃硫酸とともに過酸化水素などの酸化剤を加えると、黒鉛結晶の層間にこれらの薬品が挿入される。この後、還元性雰囲気の1000℃から1200℃の温度に急激に昇温させると、層間に挿入された薬品が分解してガス化し、このガス圧で黒鉛結晶の層間距離が拡がり、黒鉛粒子を膨張させたものである。こうして得られた膨張黒鉛の集まりを圧縮成形し、グラファイトシートを製造する。しかしながら、膨張黒鉛の製造には、非常に高濃度の硫酸を使用し、しかも急加熱処理の際にSOx等の有毒ガスが発生するために危険であり、また硫酸や過酸化水素等の酸化剤の廃液によって、周囲の環境汚染を引き起こす問題がある。さらに、黒鉛結晶の層間をガスの発生によって急激に膨張させるが、必ずしも全ての層間が膨張するとは限らない。このため、こうした膨張黒鉛を圧縮しても、基底面のみからなるグラファイトシートが得られない。さらに厄介なことは、膨張黒鉛を破壊した際に基底面がバラバラになり、微細な物質である基底面を面方向のみに積層することはできない。また、膨張黒煙から製造したグラファイトシートは空隙が多く密度が低い。このため、膨張黒鉛から製造されたグラファイトシートの熱伝導性は、前記したポリイミド等の高分子フィルムを超高温で還元焼成したものに比べると著しく低い。
本特徴手段は、前記した従来のグラファイトシートの製造上の課題を根本的に解決させるため、次5つの要件をグラファイトシートの製造に反映し、熱伝導率の高い格段に安価なグラファイトシートを実現させた。
第一に、基底面が極めて優れた熱伝導率を持つ物質であるため、基底面どうしを平面状に積層し、熱が基底面の面方向に伝達することで最も高い熱伝導率を持つグラファイトシートが実現する。このため、黒鉛の結晶化が最も進んだ、すなわち、基底面が層状に積層された単結晶材料である鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子を、原料として用いた。
第二に、黒鉛結晶は熱伝導率についても異方性を持ち、基底面の垂直方向は熱伝導率が低い。このため、黒鉛結晶における全ての層間結合を破壊し、基底面のみによってグラファイトシートを形成する必要がある。黒鉛結晶の層間結合力が極めて小さいため、黒鉛粒子に圧縮応力を加えると、全ての層間結合が同時に破壊され、黒鉛粒子は莫大な数の基底面になる。しかしながら、前記した膨張黒鉛の製造上の問題点にあるように、微細な粉体である黒鉛粒子の層間結合を破壊すれば、更に微細な基底面がバラバラになり、基底面を面方向にのみ積層させることはできない。このため、本特徴手段では、銅微粒子の集まりで黒鉛粒子を覆う構成とした。従って、黒鉛粒子に圧縮応力を加えた際に、黒鉛粒子の層間結合が破壊されるが、銅微粒子の集まりからなる多層構造は破壊されず、黒鉛粒子の破壊で生成された基底面は銅微粒子の多層構造の内部に留まる。この結果、基底面は面方向のみに重なって積層される。また、黒鉛粒子の層間結合の破壊に伴って銅微粒子の多層構造が変形し、積層された基底面に熱抵抗となる空隙は形成されない。
第三に、黒鉛粒子を銅微粒子の接合によって接合できれば、間隙を形成せずに黒鉛粒子が接合でき、基底面の集合体における基底面の密度が増大し、グラファイトシートの熱伝導率が増大する。本特徴手段では、黒鉛粒子の集まりをカルボン酸銅の分散液に混合して攪拌し、この後、溶剤を気化させ、カルボン酸銅を黒鉛粒子に吸着させる。黒鉛粒子は前記したように粒径分布の偏差が大きいため、攪拌後に黒鉛粒子が再配列し、黒鉛粒子間の間隙が少なくなるように、黒鉛粒子が積み重なって容器の底に堆積する。つまり、黒鉛粒子間に間隙があれば、相対的に微細な黒鉛粒子が間隙に入り込む。次に、黒鉛粒子の集まりを大気中で熱処理し、カルボン酸銅を熱分解して銅微粒子を析出させる。銅微粒子が一斉に析出する際に、黒鉛粒子の表面を覆うのみならず、隣接する黒鉛粒子の間隙を埋めるように銅微粒子が析出する。これによって、黒鉛粒子が接合され、黒鉛粒子の集まりとなる。このため、黒鉛粒子間に熱抵抗となる空隙の形成が抑えられる。
第四に、基底面のみでグラファイトシートを形成することで、グラファイトシートの熱伝導率が最も高まる。本特徴手段では、面方向のみに積層された基底面を、銅微粒子で接合した。銅微粒子の大きさは、黒鉛粒子の大きさより3桁小さいため、銅微粒子によって接合された基底面の集合体における基底面の体積占有率は100%に近い。このため、本特徴手段によるグラファイトシートの熱伝達率は、基底面の熱伝導率に近づく。
第五に、製造されたグラファイトシートが一定の機械的強度を持つことで、グラファイトシートのハンドリングが容易になる。本特徴手段によれば、黒鉛粒子の表面で銅微粒子が一斉に析出する際に、隣接する銅微粒子は、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。この結果、銅微粒子の集まりが、一定の接合強度を持って黒鉛粒子を接合する。一定の接合強度を持つ銅微粒子の集まりが、黒鉛粒子を接合するため、グラファイトシートは一定の機械的強度を持ちハンドリングが容易になる。
以上に、基底面の集合体について、熱伝導性の観点からグラファイトシートへの適応について説明した。いっぽう、この基底面の集合体は、金属に準ずる電気導電性を持つため、導電性フィルムとしての機能を発揮する。つまり、基底面は金属並みの電気導電性を持つ。すなわち、基底面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmであり、基底面に垂直な方向の比抵抗は7.6×10−3Ωmである。このように黒鉛粒子は、電気的特性についても異方性を持ち、基底面に平行な方向の比抵抗は銅の23倍に過ぎない。このため、銅微粒子によって接合された基底面の集まりからなる集合体の比抵抗は、3.8×10−7Ωmに近い数値を持ち、導電性フィルムとしての機能を発揮する。
このような基底面の集合体は、黒鉛粒子の大きさに比べて、銅微粒子の大きさは3桁小さいため、導電性フィルムに占める黒鉛粒子の体積占有率は100%に近い。従って、合成樹脂に導電性フィラーを分散させた従来の導電性フィルムより、電気導電性が格段に高い導電性シートになる。なお、銅微粒子によって接合された黒鉛粒子を圧延して導電性フィルムを製造する成形方法は、インフレーション法、フラットダイ法などの従来の成形法に準ずる。黒鉛粒子の集まりを圧縮すると、最初に銅微粒子の集まりが塑性変形し、次に黒鉛粒子の層間結合が破壊されて基底面が積層され、さらに銅微粒子の集まりの塑性変形が進み、銅微粒子の集まりで覆われた基底面の集合体がフィルム状に圧延される。なお、基底面のヤング率は1020GPaと非常に大きな値を持ち、基底面に直交するせん断弾性率も440GPaと極めて大きな数値をもつため、黒鉛粒子が圧縮される際に、基底面が破壊されることはない。
最近、電子部品や半導体素子など、導電性が必要とされる分野において、成形性や可撓性に優れる樹脂で形成された導電性フィルムが使用されている。特に、電子部品の小型化や薄肉化などに伴って、薄肉の導電性フィルムが要求されている。例えば、リチウムイオン二次電池は電気自動車やハイブリッド電気自動車にも搭載されている。特に、集電体を介して正極と負極とを積層させるバイポーラ電池では、限定されたスペースにおいて、多数の導電フィルムを集電体として積層させているため、薄肉かつ軽量で、高い導電性を有するフィルムが必要とされている。
このような薄肉導電性フィルムを製造する従来の方法に、樹脂成分を溶媒に溶解した後に導電性フィラーを添加し、基材上にキャストすることによりフィルム状に加工するキャスト法、導電性フィラーを分散させた熱可塑性樹脂を溶融押出や圧延などによりフィルム状に成形する熱成形法などがある。しかし、キャスト法では、溶剤に溶解させる必要があるため、耐溶剤性の高いポリマー、例えば、結晶性樹脂はフィルム化できない。特に、リチウムイオン電池の集電体では、有機溶媒を含む電解液を使用するため、高い耐溶剤性が要求される。さらに、キャスト法では、ピンホール発生防止や塗膜の均質性を維持しながら溶剤を徐々に蒸発させる煩雑な工程を有するとともに、基板から薄肉導電性フィルムを傷つけずに剥離させる必要があり、生産性や簡便性が低い上に、得られた導電性薄膜フィルムに溶剤が残留する。一方、導電性フィラーを含む樹脂組成物の押出成形により、薄肉フィルムを製造する場合、導電性を増大させるため樹脂組成物中の導電性フィラーの割合を高くすると、樹脂組成物をフィルムに加工する際に必要な溶融張力が不足する。つまり、樹脂は、溶融時でもその分子間の絡み合いにより溶融粘度が高く、同時に溶融張力を有している。そのため、樹脂を加熱して押出成形によりフィルムに加工する場合、この溶融張力により押出成形の金型を出た溶融樹脂はフィルムの引き取りによる張力を受けても、破断やフィルム厚みの変動を抑制するのは容易である。これに対して、導電性フィラーは、樹脂と異なり分子間の絡み合いがなく、溶融張力を生じないため、樹脂組成物中の導電フィラーの割合を多くすると、押出し成形でフィルムを引取る際に破断や厚み変動が生じ易い。そこで、非晶性熱可塑性エラストマーなどの弾性体の配合が必要となる。しかし、非晶性熱可塑性エラストマーやゴム成分を配合すると、樹脂組成物の耐溶剤性やガスバリア性が低下する。特に、リチウムイオン電池の集電体では、電解液の特性上、極めて高い耐溶剤性が要求されるが、このような用途での使用は困難である。
このような従来における導電性フィルムの製造上の問題点は、導電性フィラーを合成樹脂に分散して複合化する点に集約される。いっぽう、本特徴手段は、前記したように、銅微粒子の集まりによって黒鉛粒子どうしを接合するため、導電性フィラーを分散する手段を用いない。つまり、従来技術においては、導電性フィラーを合成樹脂に分散させて導電性フィルムを製作する考え方に基づく。いっぽう、本特徴手段は、導電性フィラーを直接接合させて導電性フィルムを製作する考え方に基づく。このため、従来の導電性フィルムの製造上の問題点が全て解決されるだけではなく、導電性フィルムに占める導電性フィラーの体積占有率が飛躍的に増大し、導電性フィルムにおける導電性が飛躍的に増大する作用効果がもたらされる。また、導電性フィラーについて説明すれば、炭素系材料の導電性フィラーとして、カーボンブラックを用いている事例が多いが、カーボンブラックの中で導電性が相対的に高いアセチレンブラックの比抵抗は2.1×10−3Ωmであり、黒鉛粒子の基底面に比べ、5500倍も導電性が劣る。また、炭素系材料のフィラーとして、極めて高価な炭素繊維を用いている事例もあるが、炭素繊維の中でも相対的に導電性が高いピッチ系炭素繊維の比抵抗は2〜5×10−6Ωmであり、黒鉛粒子の基底面に比べ導電性は5〜13倍劣る。このように、黒鉛粒子は炭素原子のみからなる唯一の単結晶材料であるため、基底面は炭素系材料の中で最も導電性に優れる。また、黒鉛粒子は強酸や強アルカリとも反応しない極めて化学的に安定した材料であり、大気中で600℃を超える温度で酸化が始まるため耐熱性にも優れる。さらに、炭素系材料の中で最も安価な材料である。このような優れた性質を持つ黒鉛粒子から得た基底面が、導電性フィルムにおいて、100%に近い体積占有率を持つため、従来の導電性フィルムに比べ、電気導電性が著しく高い。また、基底面の集まりからなる導電性フィルムは、従来の導電性フィルムに比べ、極めて薄いフィルムとすることができ、実質的に重量を持たない極めて軽量な導電性フィルムが得られる。
以上に、基底面の集合体を工業製品に適応する事例として、熱伝導性に優れたグラファイトシートに適応する事例と、電気導電性に優れた導電性フィルムに適応する事例を説明したが、これらの事例に限定されることはない。この基底面の集合体は、熱伝導性の観点からは、熱伝導性を活かした他の工業製品に適応することができる。また、この基底面の集合体は、電気伝導性の観点からは、極めて軽量で極めて薄い導電性フィルムとして、他の工業製品に適応できる。
すなわち、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、炭素原子が作る六角形の網目構造が平面状に拡がった基底面が2つの層を形成し、この2つの層が交互に規則的に積層された層状構造を有する炭素原子のみからなる単結晶材料である。この基底面のヤング率は1020GPaというダイアモンドに近い大きな値を持ち、基底面に直交するせん断弾性率も440GPaという極めて大きな数値を持つため、基底面は壊れにくい。いっぽう、基底に垂直な方向のヤング率は36GPaであり、基底面に沿ったせん断弾性率は4.5GPaである。このため、基底面どうしの層間結合力は弱く、層間結合が容易に破壊される。このように、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、構造的な異方性を持つ単結晶材料である。
いっぽう、基底面は炭素原子のみからなるため、極めて優れた熱的性質を持ち、300°Kにおける熱伝導率は19.5WC−1m−1であり、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の4.5倍の熱伝導率に相当する。しかしながら、工業的に製造される鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、平均粒径が30μmから50μmで、粒径分布が1μmから250μmに及ぶ微細な粉体である。このような粒径分布が大きく、かつ、微細な粉体である黒鉛粒子を接合することは困難である。たとえ、黒鉛粒子を接合できたとしても、接合した黒鉛粒子を圧縮した際に、基底面がバラバラになってしまい、基底面を積層することは更に困難なことである。さらに、基底面を面方向のみに積層し、この基底面の集まりを得ることは到底できない。
いっぽう、ノートパソコンや携帯電話に代表される電子機器は、高性能化・小型化が著しく進んでいる。こうした電子機器の高性能化・小型化に伴って、その内部に組み込まれた半導体部品は大容量化・高集積化が進み、これによって、電子機器内部における発熱量が増加し、発生した熱が電子機器内に留まり、半導体部品の熱劣化を早めるという問題が起きている。しかし、銅やアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属板を介してフィンやヒートシンクに伝えて外部に放熱させる手段では放熱量が不足し、あるいは、電子機器が大型化し重量が著しく増加するため、金属より熱伝導率が高く、極軽量で極薄いグラファイトシートを用い、効率よく電子機器内の熱を外部に放熱させることが行われている。
しかしながら、従来のグラファイトシートは、ポリイミド等の高分子フィルムを2400℃以上の温度からなる不活性ガスや真空雰囲気で長時間焼成して製造するため、高額な製造費用を伴う高価な基材であり、グラファイトシートを使用できる領域が限られる。また、膨張黒鉛を用いてグラファイトシートを製造する製造方法もある。膨張黒鉛は、黒鉛粒子に濃硫酸とともに過酸化水素などの酸化剤を加えると、黒鉛結晶の層間にこれらの薬品が挿入される。この後、還元性雰囲気の1000℃から1200℃の温度に急激に昇温させると、層間に挿入された薬品が分解してガス化し、このガス圧で黒鉛結晶の層間距離が拡がり、黒鉛粒子を膨張させたものである。こうして得られた膨張黒鉛の集まりを圧縮成形し、グラファイトシートを製造する。しかしながら、膨張黒鉛の製造には、非常に高濃度の硫酸を使用し、しかも急加熱処理の際にSOx等の有毒ガスが発生するために危険であり、また硫酸や過酸化水素等の酸化剤の廃液によって、周囲の環境汚染を引き起こす問題がある。さらに、黒鉛結晶の層間をガスの発生によって急激に膨張させるが、必ずしも全ての層間が膨張するとは限らない。このため、こうした膨張黒鉛を圧縮しても、基底面のみからなるグラファイトシートが得られない。さらに厄介なことは、膨張黒鉛を破壊した際に基底面がバラバラになり、微細な物質である基底面を面方向のみに積層することはできない。また、膨張黒煙から製造したグラファイトシートは空隙が多く密度が低い。このため、膨張黒鉛から製造されたグラファイトシートの熱伝導性は、前記したポリイミド等の高分子フィルムを超高温で還元焼成したものに比べると著しく低い。
本特徴手段は、前記した従来のグラファイトシートの製造上の課題を根本的に解決させるため、次5つの要件をグラファイトシートの製造に反映し、熱伝導率の高い格段に安価なグラファイトシートを実現させた。
第一に、基底面が極めて優れた熱伝導率を持つ物質であるため、基底面どうしを平面状に積層し、熱が基底面の面方向に伝達することで最も高い熱伝導率を持つグラファイトシートが実現する。このため、黒鉛の結晶化が最も進んだ、すなわち、基底面が層状に積層された単結晶材料である鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子を、原料として用いた。
第二に、黒鉛結晶は熱伝導率についても異方性を持ち、基底面の垂直方向は熱伝導率が低い。このため、黒鉛結晶における全ての層間結合を破壊し、基底面のみによってグラファイトシートを形成する必要がある。黒鉛結晶の層間結合力が極めて小さいため、黒鉛粒子に圧縮応力を加えると、全ての層間結合が同時に破壊され、黒鉛粒子は莫大な数の基底面になる。しかしながら、前記した膨張黒鉛の製造上の問題点にあるように、微細な粉体である黒鉛粒子の層間結合を破壊すれば、更に微細な基底面がバラバラになり、基底面を面方向にのみ積層させることはできない。このため、本特徴手段では、銅微粒子の集まりで黒鉛粒子を覆う構成とした。従って、黒鉛粒子に圧縮応力を加えた際に、黒鉛粒子の層間結合が破壊されるが、銅微粒子の集まりからなる多層構造は破壊されず、黒鉛粒子の破壊で生成された基底面は銅微粒子の多層構造の内部に留まる。この結果、基底面は面方向のみに重なって積層される。また、黒鉛粒子の層間結合の破壊に伴って銅微粒子の多層構造が変形し、積層された基底面に熱抵抗となる空隙は形成されない。
第三に、黒鉛粒子を銅微粒子の接合によって接合できれば、間隙を形成せずに黒鉛粒子が接合でき、基底面の集合体における基底面の密度が増大し、グラファイトシートの熱伝導率が増大する。本特徴手段では、黒鉛粒子の集まりをカルボン酸銅の分散液に混合して攪拌し、この後、溶剤を気化させ、カルボン酸銅を黒鉛粒子に吸着させる。黒鉛粒子は前記したように粒径分布の偏差が大きいため、攪拌後に黒鉛粒子が再配列し、黒鉛粒子間の間隙が少なくなるように、黒鉛粒子が積み重なって容器の底に堆積する。つまり、黒鉛粒子間に間隙があれば、相対的に微細な黒鉛粒子が間隙に入り込む。次に、黒鉛粒子の集まりを大気中で熱処理し、カルボン酸銅を熱分解して銅微粒子を析出させる。銅微粒子が一斉に析出する際に、黒鉛粒子の表面を覆うのみならず、隣接する黒鉛粒子の間隙を埋めるように銅微粒子が析出する。これによって、黒鉛粒子が接合され、黒鉛粒子の集まりとなる。このため、黒鉛粒子間に熱抵抗となる空隙の形成が抑えられる。
第四に、基底面のみでグラファイトシートを形成することで、グラファイトシートの熱伝導率が最も高まる。本特徴手段では、面方向のみに積層された基底面を、銅微粒子で接合した。銅微粒子の大きさは、黒鉛粒子の大きさより3桁小さいため、銅微粒子によって接合された基底面の集合体における基底面の体積占有率は100%に近い。このため、本特徴手段によるグラファイトシートの熱伝達率は、基底面の熱伝導率に近づく。
第五に、製造されたグラファイトシートが一定の機械的強度を持つことで、グラファイトシートのハンドリングが容易になる。本特徴手段によれば、黒鉛粒子の表面で銅微粒子が一斉に析出する際に、隣接する銅微粒子は、互いが接触する部位で金属結合によって接合する。この結果、銅微粒子の集まりが、一定の接合強度を持って黒鉛粒子を接合する。一定の接合強度を持つ銅微粒子の集まりが、黒鉛粒子を接合するため、グラファイトシートは一定の機械的強度を持ちハンドリングが容易になる。
以上に、基底面の集合体について、熱伝導性の観点からグラファイトシートへの適応について説明した。いっぽう、この基底面の集合体は、金属に準ずる電気導電性を持つため、導電性フィルムとしての機能を発揮する。つまり、基底面は金属並みの電気導電性を持つ。すなわち、基底面に平行な方向の比抵抗は3.8×10−7Ωmであり、基底面に垂直な方向の比抵抗は7.6×10−3Ωmである。このように黒鉛粒子は、電気的特性についても異方性を持ち、基底面に平行な方向の比抵抗は銅の23倍に過ぎない。このため、銅微粒子によって接合された基底面の集まりからなる集合体の比抵抗は、3.8×10−7Ωmに近い数値を持ち、導電性フィルムとしての機能を発揮する。
このような基底面の集合体は、黒鉛粒子の大きさに比べて、銅微粒子の大きさは3桁小さいため、導電性フィルムに占める黒鉛粒子の体積占有率は100%に近い。従って、合成樹脂に導電性フィラーを分散させた従来の導電性フィルムより、電気導電性が格段に高い導電性シートになる。なお、銅微粒子によって接合された黒鉛粒子を圧延して導電性フィルムを製造する成形方法は、インフレーション法、フラットダイ法などの従来の成形法に準ずる。黒鉛粒子の集まりを圧縮すると、最初に銅微粒子の集まりが塑性変形し、次に黒鉛粒子の層間結合が破壊されて基底面が積層され、さらに銅微粒子の集まりの塑性変形が進み、銅微粒子の集まりで覆われた基底面の集合体がフィルム状に圧延される。なお、基底面のヤング率は1020GPaと非常に大きな値を持ち、基底面に直交するせん断弾性率も440GPaと極めて大きな数値をもつため、黒鉛粒子が圧縮される際に、基底面が破壊されることはない。
最近、電子部品や半導体素子など、導電性が必要とされる分野において、成形性や可撓性に優れる樹脂で形成された導電性フィルムが使用されている。特に、電子部品の小型化や薄肉化などに伴って、薄肉の導電性フィルムが要求されている。例えば、リチウムイオン二次電池は電気自動車やハイブリッド電気自動車にも搭載されている。特に、集電体を介して正極と負極とを積層させるバイポーラ電池では、限定されたスペースにおいて、多数の導電フィルムを集電体として積層させているため、薄肉かつ軽量で、高い導電性を有するフィルムが必要とされている。
このような薄肉導電性フィルムを製造する従来の方法に、樹脂成分を溶媒に溶解した後に導電性フィラーを添加し、基材上にキャストすることによりフィルム状に加工するキャスト法、導電性フィラーを分散させた熱可塑性樹脂を溶融押出や圧延などによりフィルム状に成形する熱成形法などがある。しかし、キャスト法では、溶剤に溶解させる必要があるため、耐溶剤性の高いポリマー、例えば、結晶性樹脂はフィルム化できない。特に、リチウムイオン電池の集電体では、有機溶媒を含む電解液を使用するため、高い耐溶剤性が要求される。さらに、キャスト法では、ピンホール発生防止や塗膜の均質性を維持しながら溶剤を徐々に蒸発させる煩雑な工程を有するとともに、基板から薄肉導電性フィルムを傷つけずに剥離させる必要があり、生産性や簡便性が低い上に、得られた導電性薄膜フィルムに溶剤が残留する。一方、導電性フィラーを含む樹脂組成物の押出成形により、薄肉フィルムを製造する場合、導電性を増大させるため樹脂組成物中の導電性フィラーの割合を高くすると、樹脂組成物をフィルムに加工する際に必要な溶融張力が不足する。つまり、樹脂は、溶融時でもその分子間の絡み合いにより溶融粘度が高く、同時に溶融張力を有している。そのため、樹脂を加熱して押出成形によりフィルムに加工する場合、この溶融張力により押出成形の金型を出た溶融樹脂はフィルムの引き取りによる張力を受けても、破断やフィルム厚みの変動を抑制するのは容易である。これに対して、導電性フィラーは、樹脂と異なり分子間の絡み合いがなく、溶融張力を生じないため、樹脂組成物中の導電フィラーの割合を多くすると、押出し成形でフィルムを引取る際に破断や厚み変動が生じ易い。そこで、非晶性熱可塑性エラストマーなどの弾性体の配合が必要となる。しかし、非晶性熱可塑性エラストマーやゴム成分を配合すると、樹脂組成物の耐溶剤性やガスバリア性が低下する。特に、リチウムイオン電池の集電体では、電解液の特性上、極めて高い耐溶剤性が要求されるが、このような用途での使用は困難である。
このような従来における導電性フィルムの製造上の問題点は、導電性フィラーを合成樹脂に分散して複合化する点に集約される。いっぽう、本特徴手段は、前記したように、銅微粒子の集まりによって黒鉛粒子どうしを接合するため、導電性フィラーを分散する手段を用いない。つまり、従来技術においては、導電性フィラーを合成樹脂に分散させて導電性フィルムを製作する考え方に基づく。いっぽう、本特徴手段は、導電性フィラーを直接接合させて導電性フィルムを製作する考え方に基づく。このため、従来の導電性フィルムの製造上の問題点が全て解決されるだけではなく、導電性フィルムに占める導電性フィラーの体積占有率が飛躍的に増大し、導電性フィルムにおける導電性が飛躍的に増大する作用効果がもたらされる。また、導電性フィラーについて説明すれば、炭素系材料の導電性フィラーとして、カーボンブラックを用いている事例が多いが、カーボンブラックの中で導電性が相対的に高いアセチレンブラックの比抵抗は2.1×10−3Ωmであり、黒鉛粒子の基底面に比べ、5500倍も導電性が劣る。また、炭素系材料のフィラーとして、極めて高価な炭素繊維を用いている事例もあるが、炭素繊維の中でも相対的に導電性が高いピッチ系炭素繊維の比抵抗は2〜5×10−6Ωmであり、黒鉛粒子の基底面に比べ導電性は5〜13倍劣る。このように、黒鉛粒子は炭素原子のみからなる唯一の単結晶材料であるため、基底面は炭素系材料の中で最も導電性に優れる。また、黒鉛粒子は強酸や強アルカリとも反応しない極めて化学的に安定した材料であり、大気中で600℃を超える温度で酸化が始まるため耐熱性にも優れる。さらに、炭素系材料の中で最も安価な材料である。このような優れた性質を持つ黒鉛粒子から得た基底面が、導電性フィルムにおいて、100%に近い体積占有率を持つため、従来の導電性フィルムに比べ、電気導電性が著しく高い。また、基底面の集まりからなる導電性フィルムは、従来の導電性フィルムに比べ、極めて薄いフィルムとすることができ、実質的に重量を持たない極めて軽量な導電性フィルムが得られる。
以上に、基底面の集合体を工業製品に適応する事例として、熱伝導性に優れたグラファイトシートに適応する事例と、電気導電性に優れた導電性フィルムに適応する事例を説明したが、これらの事例に限定されることはない。この基底面の集合体は、熱伝導性の観点からは、熱伝導性を活かした他の工業製品に適応することができる。また、この基底面の集合体は、電気伝導性の観点からは、極めて軽量で極めて薄い導電性フィルムとして、他の工業製品に適応できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第34特徴手段は、前記した第33特徴手段におけるシート状ないしはフィルム状に成形された基底面の集合体の表面を絶縁化させた基材であって、該基材は、シート状ないしはフィルム状に成形された基底面の集合体の表面を、マグヘマイトの微粒子からなる多層構造によって覆う、これによって、表面が絶縁化されたシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体が制作される基底面の集合体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、シート状ないしはフィルム状に成形された基底面の集合体からなる基材の表面を、マグヘマイトの微粒子からなる多層構造によって覆うことで、基材の表面が絶縁化される。これによって、熱伝導性が金属よりすぐれ、かつ、極めて軽量で、極めて薄い絶縁性の基材が得られる。さらに、この基材の表面に存在する莫大な数からなるマグヘマイト微粒子は硬いため、他の部品や基材と重ね合わせて圧縮すると、マグネタイト微粒子が部品や基材に食い込んで互いに接合する。この接合部は、実質的に厚みを持たないため、基材の優れた熱伝導性を損なうことなく、部品や基材と接合する。
すなわち、71段落で説明したシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体からなる基材の集まりを、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出するカルボン酸鉄の分散液に浸漬し、分散液の溶剤を気化させて基材の表面にカルボン酸鉄を吸着させ、この後、大気雰囲気で熱処理すると、マグヘマイトの微粒子で絶縁化された基材の集まりが製造される。
こうして製造された基材を、プリント配線板と重ね合わせ、プリント配線板を圧縮すると、基材の表面に存在する莫大な数の硬いマグヘマイト微粒子が、プリント配線板の表面に喰い込み、熱伝導性に優れたマグヘマイト微粒子を介して基材とプリント配線板とが一体になる。こうして、極めて熱伝導性に優れ、かつ、極めて軽量な回路基板が製造できる。
さらに、回路基板を金属からなるヒートシンクに重ね、回路基板を圧縮すると、回路基板の表面に存在する莫大な数のマグヘマイト微粒子がヒートシンクの表面に喰い込み、熱伝導性に優れたマグヘマイト微粒子を介して回路基板とヒートシンクとが一体になる。マグヘマイト微粒子の接合部が、実質的に厚みを持たないため、回路基板の熱が、直接ヒートシンクに伝わり、ヒートシンクを介して外部に放熱される。このため、回路基板に発熱量の多い電子デバイスを高密度で実装することができ、実装された電子デバイスの動作寿命を延ばすことができる。また、ヒートシンクの厚みをより薄くすることができ、電子回路全体の重量が大幅に低減できる。
すなわち、71段落で説明したシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体からなる基材の集まりを、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出するカルボン酸鉄の分散液に浸漬し、分散液の溶剤を気化させて基材の表面にカルボン酸鉄を吸着させ、この後、大気雰囲気で熱処理すると、マグヘマイトの微粒子で絶縁化された基材の集まりが製造される。
こうして製造された基材を、プリント配線板と重ね合わせ、プリント配線板を圧縮すると、基材の表面に存在する莫大な数の硬いマグヘマイト微粒子が、プリント配線板の表面に喰い込み、熱伝導性に優れたマグヘマイト微粒子を介して基材とプリント配線板とが一体になる。こうして、極めて熱伝導性に優れ、かつ、極めて軽量な回路基板が製造できる。
さらに、回路基板を金属からなるヒートシンクに重ね、回路基板を圧縮すると、回路基板の表面に存在する莫大な数のマグヘマイト微粒子がヒートシンクの表面に喰い込み、熱伝導性に優れたマグヘマイト微粒子を介して回路基板とヒートシンクとが一体になる。マグヘマイト微粒子の接合部が、実質的に厚みを持たないため、回路基板の熱が、直接ヒートシンクに伝わり、ヒートシンクを介して外部に放熱される。このため、回路基板に発熱量の多い電子デバイスを高密度で実装することができ、実装された電子デバイスの動作寿命を延ばすことができる。また、ヒートシンクの厚みをより薄くすることができ、電子回路全体の重量が大幅に低減できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第35特徴手段は、前記した第1特徴手段における多層構造で、ないしは、前記した第3特徴手段における新たな多層構造で、素材の表面を覆い、該素材が軟化ないしは融解する温度に加熱し、該軟化ないしは融解した素材の集まりを加工し、前記多層構造で覆われた素材の集まりからなる部品ないしは基材を制作する、これによって、該部品ないしは該基材に、前記素材の性質に加え、前記多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる点にある。
つまり、本特徴手段によれば、7段落で説明した第1特徴手段における多層構造、ないしは、前11段落で説明した第3特徴手段における新たな多層構造で、素材の表面を覆い、素材が軟化ないしは融解する温度まで加熱し、軟化ないしは融解した素材の集まりを加工して、素材の集まりからなる部品ないしは基材を制作すると、この部品ないしは基材は、素材の性質に加え、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が新たに付与される。
すなわち、従来は、複数の素材の物性が著しく異なるため、複合化させて一方の素材の優れた性質を有する部品ないしは基材を製造することができない。例えば、一方の素材が合成樹脂やガラスで、他方の素材が金属である場合は、両者の融点が著しく異なるため、合成樹脂やガラスと金属とを同時に融解させることができない。このため、合成樹脂やガラスに金属に近い性質を持たせるには、融解した合成樹脂やガラスに金属を分散させる手段しかない。しかしながら、金属に近い性質を合成樹脂やガラスに持たせるには、融解した合成樹脂やガラスに充填する金属の割合を高めなければならず、金属の充填率が高まるほど粘度が増大し、高粘度の材料を射出成形や押出成形などで加工することができず、金属に近い導電性や強磁性の性質を持つ合成樹脂やガラスを実現させることはできなかった。
また、従来は、複数の素材の優れた特性を複合材料に発揮させることができなかった。例えば、アルミニウムは、金属の中で密度が小さい金属であるが非磁性体である。従来は、アルミニウムに強磁性の性質を持たせるには、融解したアルミニウムに融解した鉄を混合し、鉄の含有率を高めるしか手段がなかった。しかし、鉄の含有量を増やすほど、アルミニウムの特徴である軽量であることが犠牲になり、複合化の意味がなくなる。あるいは、銅は展性に優れた金属であるが非磁性体である。展性に優れた強磁性の合金を実現するには、融解させた銅に、融解した鉄の含有量を増やすしか手段がなかった。しかし、鉄の含有量を増やすほど、展性が犠牲になり、複合化によって合金を実現する意味がなくなる。
このように、従来は、複数の素材を複合化させ、各々の素材が持つ優れた性質をそのまま反映した部品ないしは基材を製造することができなかった。この要因は、前記したように、複合化に関わる素材の構造にある。しかしながら、本特徴手段によれば、一方の素材を微粒子として構成し、もう一方の素材は微粒子の多層構造で覆われる構成とする。そして、素材が軟化ないしは融解する温度まで加熱し、軟化ないしは融解した素材の集まりを加工すると、素材の集まりからなる部品ないしは基材が制作できる。この部品ないしは基材は、素材の性質と微粒子の性質を兼備する。つまり、微粒子の大きさが素材の大きさに比べ3桁以上小さいため、微粒子の多層構造の体積は、素材の体積に比べれば1%にも達しない。このため、軟化したあるいは融解した素材を加工する際に、微粒子の多層構造が加工による素材の変形を妨げない。さらに、素材が融解しても、体積の増加率は0.1%にも達しないため、微粒子の多層構造は、極一部が破壊されるだけで、融解した素材の大部分は微粒子の多層構造で覆われる状態を維持するとともに、隣接する微粒子の多層構造は、融解した素材の中で互いに接触する。このため、素材の集まりからなる部品ないしは基材は、素材の性質と多層構造を構成する微粒子の性質とに基づく新たな性質が付与される。これによって、従来は製造できなかった性質を持つ部品や基材、例えば、前記した金属に近い導電性や強磁性の性質を持つ合成樹脂やガラスからなる部品や基材が、あるいは、前記した強磁性の性質を持つアルミニウムないしは銅からなる部品や基材が製造できる。
すなわち、従来は、複数の素材の物性が著しく異なるため、複合化させて一方の素材の優れた性質を有する部品ないしは基材を製造することができない。例えば、一方の素材が合成樹脂やガラスで、他方の素材が金属である場合は、両者の融点が著しく異なるため、合成樹脂やガラスと金属とを同時に融解させることができない。このため、合成樹脂やガラスに金属に近い性質を持たせるには、融解した合成樹脂やガラスに金属を分散させる手段しかない。しかしながら、金属に近い性質を合成樹脂やガラスに持たせるには、融解した合成樹脂やガラスに充填する金属の割合を高めなければならず、金属の充填率が高まるほど粘度が増大し、高粘度の材料を射出成形や押出成形などで加工することができず、金属に近い導電性や強磁性の性質を持つ合成樹脂やガラスを実現させることはできなかった。
また、従来は、複数の素材の優れた特性を複合材料に発揮させることができなかった。例えば、アルミニウムは、金属の中で密度が小さい金属であるが非磁性体である。従来は、アルミニウムに強磁性の性質を持たせるには、融解したアルミニウムに融解した鉄を混合し、鉄の含有率を高めるしか手段がなかった。しかし、鉄の含有量を増やすほど、アルミニウムの特徴である軽量であることが犠牲になり、複合化の意味がなくなる。あるいは、銅は展性に優れた金属であるが非磁性体である。展性に優れた強磁性の合金を実現するには、融解させた銅に、融解した鉄の含有量を増やすしか手段がなかった。しかし、鉄の含有量を増やすほど、展性が犠牲になり、複合化によって合金を実現する意味がなくなる。
このように、従来は、複数の素材を複合化させ、各々の素材が持つ優れた性質をそのまま反映した部品ないしは基材を製造することができなかった。この要因は、前記したように、複合化に関わる素材の構造にある。しかしながら、本特徴手段によれば、一方の素材を微粒子として構成し、もう一方の素材は微粒子の多層構造で覆われる構成とする。そして、素材が軟化ないしは融解する温度まで加熱し、軟化ないしは融解した素材の集まりを加工すると、素材の集まりからなる部品ないしは基材が制作できる。この部品ないしは基材は、素材の性質と微粒子の性質を兼備する。つまり、微粒子の大きさが素材の大きさに比べ3桁以上小さいため、微粒子の多層構造の体積は、素材の体積に比べれば1%にも達しない。このため、軟化したあるいは融解した素材を加工する際に、微粒子の多層構造が加工による素材の変形を妨げない。さらに、素材が融解しても、体積の増加率は0.1%にも達しないため、微粒子の多層構造は、極一部が破壊されるだけで、融解した素材の大部分は微粒子の多層構造で覆われる状態を維持するとともに、隣接する微粒子の多層構造は、融解した素材の中で互いに接触する。このため、素材の集まりからなる部品ないしは基材は、素材の性質と多層構造を構成する微粒子の性質とに基づく新たな性質が付与される。これによって、従来は製造できなかった性質を持つ部品や基材、例えば、前記した金属に近い導電性や強磁性の性質を持つ合成樹脂やガラスからなる部品や基材が、あるいは、前記した強磁性の性質を持つアルミニウムないしは銅からなる部品や基材が製造できる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第36特徴手段は、前記した第35特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる部品が、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂ないしはガラスの集まりからなる成形品であって、該成形品は、金属微粒子の多層構造で合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしはガラスの粉体を覆い、該合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体を押出成形機に投入し、該押出成形機内で前記合成樹脂ないしは前記ガラスを融解し、該融解物を前記押出成形機から押出し、該押し出された融解物に二次加工を施す、これによって、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂の集まりからなる成形品、ないしは、金属微粒子の多層構造で覆われたガラスの集まりからなる成形品が制作される点にある。
つまり、本特徴手段によれば、金属微粒子が鉄のような強磁性体であれば、磁気が伝達する経路を有する合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。また、金属微粒子が銅のような導電性で熱伝導性の物質であれば、電気が流れる、ないしは、熱が伝導する経路を有する合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。
すなわち、合成樹脂ないしはガラスの融点は金属の融点より著しく低いため、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体を、融点まで昇温すると、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体は融解するが、金属微粒子は融解しない。また、金属微粒子の大きさが、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体の大きさに比べ3桁以上小さいため、金属微粒子の多層構造の体積割合は1%にも達しない。このため、軟化したあるいは融解した合成樹脂ないしはガラスを加工する際に、金属微粒子の多層構造は、加工に伴う合成樹脂ないしはガラスの変形に追従し、合成樹脂ないしはガラスの加工に伴う変形を阻害しない。
また、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体が融解すると、体積の増大は、0.1%にも達しない極僅かな膨張である。このため、合成樹脂ないしはガラスを覆っていた金属微粒子の集まりからなる多層構造の極一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当する極僅かな合成樹脂ないしはガラスが、多層構造から滲み出る。つまり、金属微粒子の集まりからなる多層構造は、不均一な大きさからなる金属微粒子が、不均一な層をなして合成樹脂のペレットないしは粉末、ないしは、ガラスの粉体を覆うため、金属微粒子の多層構造が破壊される部位は、相対的に金属微粒子どうしの接合力が弱い箇所で起こる。従って、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体の集まりを、押出成形機内で融解すると、極一部が破壊された金属微粒子の多層構造は、隣接する金属微粒子の多層構造と接触する。
このような融解した合成樹脂ないしはガラスの集まりを押出機から押し出し、スリーブ成形、チューブ成形、ブロー成形、シート成形、サーモフォーミング成形などの様々な二次加工を施し、その後冷却すると、様々な形状のスリーブ、チューブ、シート、あるいは容器などからなる様々な成形品が製造できる。金属微粒子の多層構造は、成形品の表面および内部で互いに接触しているため、金属微粒子が鉄のような強磁性体であれば、成形品の表面および内部に磁気が伝達する経路が形成される。つまり、磁気が伝達する合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。また、金属微粒子が銅のような導電性で熱伝導性の物質であれば、成形品の表面および内部に電気が流れる経路、ないしは、熱が伝わる経路が形成される。つまり、電気導電性に優れた、また、熱伝導性に優れた合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。
すなわち、合成樹脂ないしはガラスの融点は金属の融点より著しく低いため、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体を、融点まで昇温すると、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体は融解するが、金属微粒子は融解しない。また、金属微粒子の大きさが、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体の大きさに比べ3桁以上小さいため、金属微粒子の多層構造の体積割合は1%にも達しない。このため、軟化したあるいは融解した合成樹脂ないしはガラスを加工する際に、金属微粒子の多層構造は、加工に伴う合成樹脂ないしはガラスの変形に追従し、合成樹脂ないしはガラスの加工に伴う変形を阻害しない。
また、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体が融解すると、体積の増大は、0.1%にも達しない極僅かな膨張である。このため、合成樹脂ないしはガラスを覆っていた金属微粒子の集まりからなる多層構造の極一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当する極僅かな合成樹脂ないしはガラスが、多層構造から滲み出る。つまり、金属微粒子の集まりからなる多層構造は、不均一な大きさからなる金属微粒子が、不均一な層をなして合成樹脂のペレットないしは粉末、ないしは、ガラスの粉体を覆うため、金属微粒子の多層構造が破壊される部位は、相対的に金属微粒子どうしの接合力が弱い箇所で起こる。従って、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは、ガラスの粉体の集まりを、押出成形機内で融解すると、極一部が破壊された金属微粒子の多層構造は、隣接する金属微粒子の多層構造と接触する。
このような融解した合成樹脂ないしはガラスの集まりを押出機から押し出し、スリーブ成形、チューブ成形、ブロー成形、シート成形、サーモフォーミング成形などの様々な二次加工を施し、その後冷却すると、様々な形状のスリーブ、チューブ、シート、あるいは容器などからなる様々な成形品が製造できる。金属微粒子の多層構造は、成形品の表面および内部で互いに接触しているため、金属微粒子が鉄のような強磁性体であれば、成形品の表面および内部に磁気が伝達する経路が形成される。つまり、磁気が伝達する合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。また、金属微粒子が銅のような導電性で熱伝導性の物質であれば、成形品の表面および内部に電気が流れる経路、ないしは、熱が伝わる経路が形成される。つまり、電気導電性に優れた、また、熱伝導性に優れた合成樹脂ないしはガラスからなる様々な成形品ができる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第37特徴手段は、前記した第35特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる基材が、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる圧延シートであって、該圧延シートは、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属微粒子より融点が低い非磁性の金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは合金粉の集まりを圧延ロール機で薄板状に圧延し、さらに、前記薄板状の圧延体を、熱間圧延機で前記金属粉ないしは合金粉を融解させてシート状に圧延して圧延シートを制作した圧延シートである点にある。
つまり、本特徴手段によれば、非磁性体である金属ないしは合金からなる圧延シートは、圧延シートの表面及び内部で、強磁性の金属微粒子の多層構造が互いに磁気吸着しているため、強磁性の性質を持つ。このため、強磁性体の部品ないしは基材に磁気吸着し、また、磁気が伝達する経路を持つ軟磁性の性質を持つ。つまり、従来は困難であった非磁性体の金属ないしは合金からなる圧延シート、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金などからなる軽量のシートが、強磁性の性質を持つ。また、シートに占める金属微粒子の体積割合は1%にもならないため、アルミ合金やマグネシウム合金の軽量性は維持される。
以下の説明では、アトマイズ法で製造された非磁性の金属ないしは合金からなる粉末を、鉄微粒子の集まりからなる多層構造で覆い、これを原料としてシートを製造する事例について説明するが、金属粉末は、アトマイズ法で製造される金属ないしは合金の粉末に限定されることはない。また、金属微粒子が鉄微粒子に限定されることはない。下記に説明するように、金属ないしは合金の粉末を異なる材質からなる金属微粒子で覆い、かつ、金属ないしは合金の粉末の融点が金属微粒子の融点より低い2つの条件を満たせばよい。
アトマイズ法で製造される非磁性の粉末として、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スズ、亜鉛、亜鉛合金、ビスマス、ビスマス合金など様々な金属ないしは合金の粉末がある。なお、鉄の融点は1539℃、銅の融点は1085℃、アルミニウムの融点は660℃、マグネシウムの融点は650℃、亜鉛の融点は420℃、ビスマスの融点は272℃、スズの融点は232℃である。また、合金の融点は金属単体の融点より低い。
従って、融点が鉄の融点より低い非磁性の粉末を、鉄微粒子からなる多層構造で覆い、窒素雰囲気において、粉末の集まりを粉末の融点まで昇温させると、粉末が融解して0.1%程度の極わずかの体積が膨張し、鉄微粒子の多層構造の極一部を局所的に破壊し、膨張した体積に相当する極わずかの金属ないしは合金が、多層構造から滲み出る。このため、極一部が破壊された鉄微粒子の多層構造は、隣接する鉄微粒子の多層構造に磁気吸着し、磁気が伝達する経路を形成する。このような金属ないしは合金が冷却されて固化すると、金属ないしは合金は磁気が伝達する経路を有する。この結果、非磁性体である金属ないしは合金が強磁性体になり、全く新たな性質を持つ部品ないしは基材が製造できる。
以下に説明する事例では、アトマイズ粉として、様々な工業製品に用いられているアルミ合金粉を用いる。アルミ合金の融点は、いずれも鉄の融点より著しく低い。アルミニウム−銅系合金はジュラミンの名称で呼ばれ、その融点は、JISの呼称で2011番に相当するジュラルミンが535℃、2014番が507℃、2017番が513℃、2024番が502℃である。また、アルミニウム−マンガン系合金は加工性、耐食性、強度に優れる材料で、JISの呼称で3003番に相当するアルミニウム−マンガン系合金の融点が643℃、3004番の融点が629℃である。更に、アルミニウム−シリコン系合金は耐摩耗性に優れる材料で、JISの呼称で4032番に相当するアルミニウム−シリコン系合金の融点は532℃である。また、アルミニウム−マグネシウム系合金は、強度、耐食性、加工性、溶接性のバランスに優れる材料で、JISの呼称で5005番に相当するアルミニウム−マグネシウム系合金の融点は632℃で、5052番が593℃、5056番が568℃、5083番が579℃である。更に、アルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金は強度、耐食性が良好な材料で、JISの呼称で6061番に相当するアルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金の融点は582℃で、6063番が616℃、6N01番が615℃、6101番が610℃である。また、アルミ−亜鉛−マグネシウム系合金は高強度材料で、JISの呼称で7003番に相当するアルミ−亜鉛−マグネシウム系合金の融点は615℃で、7N01番が615℃、7075番が476℃である。いずれのアルミ合金の融点は、アルミニウムの融点より低く、鉄の融点よりさらに低い。このため、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金粉を原料として用い、シート状に圧延加工を施すことで、強磁性の性質を持つアルミ合金からなるシートが製造できる。
すなわち、鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉の集まりを圧延ロール機に供給し、圧延ロール機で薄板状に加工した後に、熱処理炉を通してアルミ合金粉を融解し、更に熱間圧延機を通してシート状に圧延し、冷却圧延装置を通した後にコイル状に巻き上げると、磁気が伝達する経路を有するアルミ合金からなる軽量のシートが製造できる。
すなわち、圧延ロール機によって圧縮応力が加えられた際に、相対的に硬度が低いアルミ合金粉が最初に扁平化し、これに追従して、相対的に硬度が高い鉄微粒子の集まりからなる多層構造が変形する。これによって、アルミ合金粉どうしが絡み合う。また、鉄微粒子の多層構造は、アルミ合金粉を覆う状態を維持する。さらに、多層構造の表面を形成する鉄微粒子は、隣接する鉄微粒子どうしと点接触で接触し、接触点に過大な摩擦熱が発生し、摩擦熱によって鉄微粒子は接合する。こうして、鉄微粒子の接合によってアルミ合金粉が接合され、扁平な薄板シートとなる。さらに、薄板シートが熱処理炉を通過する際に、アルミ合金が融解して体積が極僅かに膨張し、熱間圧延機を通過すると、更に圧縮されてシート状になり、改めて融解したアルミ合金が絡み合い、また、鉄微粒子どうしの接合によって融解したアルミ合金どうしが接合される。この際、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊し、膨張した体積に相当する極僅かな融解したアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。しかし、融解したアルミ合金の殆どは、鉄微粒子の多層構造で覆われる。鉄の磁気キュリー点が770℃でアルミ合金の融点より高いため、鉄微粒子の多層構造は、隣接した多層構造と互いに磁気吸着する。この後、冷却圧延装置を通過して、アルミ合金からなる軽量の圧延シートが製造される。なお、この圧延シートの機械的強度は、アルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、圧延シートを着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、圧延シートの機械的強度が増大する。
このアルミ合金シートは、すべての鉄微粒子の多層構造が、隣接した多層構造と互いに磁気吸着しているため、磁気が伝達する経路を表面と内部とに有する。従って、アルミ合金シートは磁気を帯びるとともに、磁気が伝達する。このため、アルミ合金シートは強磁性体の部品ないしは基材に磁気吸着し、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。なお、圧延シートの原料として、鉄微粒子の多層構造で覆われたマグネシウム合金を用いれば、マグネシウム合金シートは磁気吸着し、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。
以下の説明では、アトマイズ法で製造された非磁性の金属ないしは合金からなる粉末を、鉄微粒子の集まりからなる多層構造で覆い、これを原料としてシートを製造する事例について説明するが、金属粉末は、アトマイズ法で製造される金属ないしは合金の粉末に限定されることはない。また、金属微粒子が鉄微粒子に限定されることはない。下記に説明するように、金属ないしは合金の粉末を異なる材質からなる金属微粒子で覆い、かつ、金属ないしは合金の粉末の融点が金属微粒子の融点より低い2つの条件を満たせばよい。
アトマイズ法で製造される非磁性の粉末として、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、スズ、亜鉛、亜鉛合金、ビスマス、ビスマス合金など様々な金属ないしは合金の粉末がある。なお、鉄の融点は1539℃、銅の融点は1085℃、アルミニウムの融点は660℃、マグネシウムの融点は650℃、亜鉛の融点は420℃、ビスマスの融点は272℃、スズの融点は232℃である。また、合金の融点は金属単体の融点より低い。
従って、融点が鉄の融点より低い非磁性の粉末を、鉄微粒子からなる多層構造で覆い、窒素雰囲気において、粉末の集まりを粉末の融点まで昇温させると、粉末が融解して0.1%程度の極わずかの体積が膨張し、鉄微粒子の多層構造の極一部を局所的に破壊し、膨張した体積に相当する極わずかの金属ないしは合金が、多層構造から滲み出る。このため、極一部が破壊された鉄微粒子の多層構造は、隣接する鉄微粒子の多層構造に磁気吸着し、磁気が伝達する経路を形成する。このような金属ないしは合金が冷却されて固化すると、金属ないしは合金は磁気が伝達する経路を有する。この結果、非磁性体である金属ないしは合金が強磁性体になり、全く新たな性質を持つ部品ないしは基材が製造できる。
以下に説明する事例では、アトマイズ粉として、様々な工業製品に用いられているアルミ合金粉を用いる。アルミ合金の融点は、いずれも鉄の融点より著しく低い。アルミニウム−銅系合金はジュラミンの名称で呼ばれ、その融点は、JISの呼称で2011番に相当するジュラルミンが535℃、2014番が507℃、2017番が513℃、2024番が502℃である。また、アルミニウム−マンガン系合金は加工性、耐食性、強度に優れる材料で、JISの呼称で3003番に相当するアルミニウム−マンガン系合金の融点が643℃、3004番の融点が629℃である。更に、アルミニウム−シリコン系合金は耐摩耗性に優れる材料で、JISの呼称で4032番に相当するアルミニウム−シリコン系合金の融点は532℃である。また、アルミニウム−マグネシウム系合金は、強度、耐食性、加工性、溶接性のバランスに優れる材料で、JISの呼称で5005番に相当するアルミニウム−マグネシウム系合金の融点は632℃で、5052番が593℃、5056番が568℃、5083番が579℃である。更に、アルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金は強度、耐食性が良好な材料で、JISの呼称で6061番に相当するアルミニウム−マグネシウム−シリコン系合金の融点は582℃で、6063番が616℃、6N01番が615℃、6101番が610℃である。また、アルミ−亜鉛−マグネシウム系合金は高強度材料で、JISの呼称で7003番に相当するアルミ−亜鉛−マグネシウム系合金の融点は615℃で、7N01番が615℃、7075番が476℃である。いずれのアルミ合金の融点は、アルミニウムの融点より低く、鉄の融点よりさらに低い。このため、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金粉を原料として用い、シート状に圧延加工を施すことで、強磁性の性質を持つアルミ合金からなるシートが製造できる。
すなわち、鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉の集まりを圧延ロール機に供給し、圧延ロール機で薄板状に加工した後に、熱処理炉を通してアルミ合金粉を融解し、更に熱間圧延機を通してシート状に圧延し、冷却圧延装置を通した後にコイル状に巻き上げると、磁気が伝達する経路を有するアルミ合金からなる軽量のシートが製造できる。
すなわち、圧延ロール機によって圧縮応力が加えられた際に、相対的に硬度が低いアルミ合金粉が最初に扁平化し、これに追従して、相対的に硬度が高い鉄微粒子の集まりからなる多層構造が変形する。これによって、アルミ合金粉どうしが絡み合う。また、鉄微粒子の多層構造は、アルミ合金粉を覆う状態を維持する。さらに、多層構造の表面を形成する鉄微粒子は、隣接する鉄微粒子どうしと点接触で接触し、接触点に過大な摩擦熱が発生し、摩擦熱によって鉄微粒子は接合する。こうして、鉄微粒子の接合によってアルミ合金粉が接合され、扁平な薄板シートとなる。さらに、薄板シートが熱処理炉を通過する際に、アルミ合金が融解して体積が極僅かに膨張し、熱間圧延機を通過すると、更に圧縮されてシート状になり、改めて融解したアルミ合金が絡み合い、また、鉄微粒子どうしの接合によって融解したアルミ合金どうしが接合される。この際、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊し、膨張した体積に相当する極僅かな融解したアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。しかし、融解したアルミ合金の殆どは、鉄微粒子の多層構造で覆われる。鉄の磁気キュリー点が770℃でアルミ合金の融点より高いため、鉄微粒子の多層構造は、隣接した多層構造と互いに磁気吸着する。この後、冷却圧延装置を通過して、アルミ合金からなる軽量の圧延シートが製造される。なお、この圧延シートの機械的強度は、アルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、圧延シートを着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、圧延シートの機械的強度が増大する。
このアルミ合金シートは、すべての鉄微粒子の多層構造が、隣接した多層構造と互いに磁気吸着しているため、磁気が伝達する経路を表面と内部とに有する。従って、アルミ合金シートは磁気を帯びるとともに、磁気が伝達する。このため、アルミ合金シートは強磁性体の部品ないしは基材に磁気吸着し、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。なお、圧延シートの原料として、鉄微粒子の多層構造で覆われたマグネシウム合金を用いれば、マグネシウム合金シートは磁気吸着し、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第37特徴手段は、前記した第34特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる基材が、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる被膜であって、該被膜は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属より融点が低い金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを粉末溶射機に充填し、該粉末溶射機内で、前記金属粉ないしは前記合金粉を軟化ないしは溶解させ、該軟化ないしは融解した金属粉ないしは合金粉を加速させ、該加速した金属粉ないしは合金粉を、部品ないしは基材の表面に衝突させる、これによって、前記部品ないしは前記基材の表面に、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる被膜が形成される被膜である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、非磁性体である金属ないしは合金からなる被膜は、被膜の表面及び内部で、強磁性の金属微粒子の多層構造が互いに磁気吸着しているため、強磁性の性質を持つ。このため、被膜が形成された部品ないしは基材の表面は、強磁性体の部品ないしは基材に磁気吸着し、また、磁気を伝達する軟磁性の性質を持つ。つまり、従来は困難であった非磁性体の金属ないしは合金からなる被膜、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金などからなる被膜が強磁性の性質を持ち、この強磁性の性質を持つアルミニウム合金やマグネシウム合金からなる被膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉の集まりを、粉末溶射機に充填する。粉末溶射装置における高圧の加熱ガスが通過する通路に、鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉が落下すると、軟化したあるいは融解したアルミ合金粉が加速されて、部品ないしは基材の表面に衝突し、扁平に潰れたアルミ合金粉が堆積して凝固すると、磁性を有するアルミ合金からなる被膜が形成される。なお、このアルミ合金からなる被膜の機械的強度は、アルミ合金が部品ないしは基材の表面に食い込んだ結合力と、アルミ合金どうしの絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。
前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、表面の殆どが鉄微粒子の多層構造で覆われ、この状態で部品ないしは基材の表面に衝突して積層される。このため、鉄微粒子からなる多層構造は、隣接する多層構造と磁気吸着する。この結果、磁性を有し、磁気が伝達するアルミ合金からなる被膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、溶射粉末の原料として、鉄微粒子の多層構造で覆われたマグネシウム合金を用いれば、マグネシウム合金からなる被膜は磁性を有し、また、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉の集まりを、粉末溶射機に充填する。粉末溶射装置における高圧の加熱ガスが通過する通路に、鉄微粒子で覆われたアルミ合金粉が落下すると、軟化したあるいは融解したアルミ合金粉が加速されて、部品ないしは基材の表面に衝突し、扁平に潰れたアルミ合金粉が堆積して凝固すると、磁性を有するアルミ合金からなる被膜が形成される。なお、このアルミ合金からなる被膜の機械的強度は、アルミ合金が部品ないしは基材の表面に食い込んだ結合力と、アルミ合金どうしの絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。
前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、表面の殆どが鉄微粒子の多層構造で覆われ、この状態で部品ないしは基材の表面に衝突して積層される。このため、鉄微粒子からなる多層構造は、隣接する多層構造と磁気吸着する。この結果、磁性を有し、磁気が伝達するアルミ合金からなる被膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、溶射粉末の原料として、鉄微粒子の多層構造で覆われたマグネシウム合金を用いれば、マグネシウム合金からなる被膜は磁性を有し、また、磁気を伝達する軟磁性材料の性質も発揮する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第38特徴手段は、前記した第35特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる部品が、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる鍛造品であって、該鍛造品は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属より融点が低い金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを弾性体の容器に充填し、該容器を冷間静水圧加圧装置に配置させて静水圧を加え、前記金属粉ないしは合金粉の集まりを圧縮して仮の成形体を成形し、さらに、前記仮の成形体を真空焼成炉に入れて、該仮の成形体から水分とガスとを取り除いた後に加熱して予備焼成体を成形し、さらに、前記予備焼成体を押出成形機に入れて熱間押し出し、該押し出し材を鍛造金型にセットし、該押出材に熱と圧力とを加えて制作した鍛造品である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、非磁性体である金属ないしは合金からなる鍛造品は、鍛造品の表面及び内部で、強磁性の金属微粒子の多層構造が互いに磁気吸着するため、強磁性の性質を持つ。このため、鍛造品は、磁気を外部に漏らすとともに、磁気を伝達する性質を持つ。これによって、従来は困難であったアルミニウム合金やマグネシウム合金などからなる鍛造品が強磁性の性質を持つ。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。なお、高強度の鍛造品の製造にあたっては、アルミ合金粉末はJISの呼称で4032番に相当するアルミニウム−シリコン系合金からなる粉末を用いるのがよい。
最初に、弾性体からなる容器、例えば、ゴム製の容器にアルミ合金粉末の集まりを入れ、この容器を冷間静水圧加圧装置に配置させ、容器の全体に等しい水圧を加えて仮の成形体を成形する。次に、容器から仮の成形体を取り出し、この仮の成形体を真空焼成炉にいれる。最初に、真空度を上げて、仮の成形体から水分とガスとを取り除き、次に、昇温してアルミ合金を融解させて予備焼結体を作る。この後、予備焼結体を、コンテナ温度がアルミ合金の融点より100℃ほど低い温度に保たれた押出機に入れ、予備焼結体を熱間押出しする。最後に、熱間押出しされた押出材を鍛造金型にセットし、前記の熱間押出しの温度まで昇温し、さらに、鍛造圧力を加え、目的とする鍛造品を制作する。こうして、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、磁気を外部に漏らし、また、磁気が伝達するアルミ合金からなる鍛造品が製造できる。なお、この鍛造品の機械的強度は、アルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、鍛造品を着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、鍛造品の機械的強度が増大する。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。なお、高強度の鍛造品の製造にあたっては、アルミ合金粉末はJISの呼称で4032番に相当するアルミニウム−シリコン系合金からなる粉末を用いるのがよい。
最初に、弾性体からなる容器、例えば、ゴム製の容器にアルミ合金粉末の集まりを入れ、この容器を冷間静水圧加圧装置に配置させ、容器の全体に等しい水圧を加えて仮の成形体を成形する。次に、容器から仮の成形体を取り出し、この仮の成形体を真空焼成炉にいれる。最初に、真空度を上げて、仮の成形体から水分とガスとを取り除き、次に、昇温してアルミ合金を融解させて予備焼結体を作る。この後、予備焼結体を、コンテナ温度がアルミ合金の融点より100℃ほど低い温度に保たれた押出機に入れ、予備焼結体を熱間押出しする。最後に、熱間押出しされた押出材を鍛造金型にセットし、前記の熱間押出しの温度まで昇温し、さらに、鍛造圧力を加え、目的とする鍛造品を制作する。こうして、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、磁気を外部に漏らし、また、磁気が伝達するアルミ合金からなる鍛造品が製造できる。なお、この鍛造品の機械的強度は、アルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、鍛造品を着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、鍛造品の機械的強度が増大する。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第39特徴手段は、前記した第35特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる部品が、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる多孔質焼結体であって、該多孔質焼結体は、カプセル内に制作する多孔質焼結体のダミーを、前記カプセルに対して同心になるように配置し、前記カプセルと前記ダミーとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとの混合物を最密充填し、この後、前記カプセルの上蓋を封止し、さらに、該カプセルを熱間静水圧加圧処理装置に配置させ、前記バインダーを融解させるとともに、前記カプセルに等方的な圧力を加えて変形させて、前記セラミックス粉と前記融解したバインダーとの混合物からなる成形体を成形し、この後、前記カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置から取り出して、該カプセルの上蓋を取り除いて、該カプセル内に配置された前記ダミーを取り出し、さらに、該ダミーが配置されていた間隙に、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりを最密充填し、再度、前記カプセルの上蓋を封止し、この後、前記カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置に配置して、前記非磁性の金属粉ないしは合金粉を軟化ないしは融解させるとともに、前記カプセルに等方的な圧力を加えて変形させ、これによって、前記非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりからなる成形体を成形し、この後、前記カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置から取り出して、前記カプセルの上蓋を取り除いて、該カプセルから前記非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりからなる成形体を取り出す、これによって、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる多孔質焼結体が制作される多孔質焼結体である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、非磁性体である金属ないしは合金からなる多孔質焼結体は、多孔質焼結体の表面及び内部で、強磁性の金属微粒子の多層構造が互いに磁気吸着する。このため、多孔質焼結体は、強磁性の物質と磁気吸着し、また、磁気を伝達する性質を持つ。このように、従来は困難であったアルミニウム合金やマグネシウム合金などからなる非磁性の多孔質焼結体が強磁性の性質を持つ。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。なお、多孔質焼結体の製造においては、アルミ合金粉末はJISの呼称で3004番に相当するアルミ−マンガン系合金からなる粉末を用いるのがよい。
金属粉を金属製のカプセルに充填して、カプセルを熱間静水圧で加圧して焼結体を製造するカプセル熱間静水圧加圧法(以下では熱間静水圧加圧をHIPという)では、熱間で静水圧を加圧した処理の後に、焼結体を取り出すためにカプセルを除去する加工が必要となる。この除去処理は、これまで機械加工によって行われている。しかし、金属カプセルと焼結体との界面は、HIP処理過程で生じる固相拡散によって接合しているため、金属カプセルだけを除去することはできず、製品となる焼結体の表面層を同時に除去することになる。このため、焼結体が比較的単純な形状のものであっても、ネットシェイプ成形が不可能になり、焼結体の表面層が除去する際の歩留りの低下は避けられない。特に、焼結体が、フィルタ部材等に供される多孔質体である場合は、多孔質体に損傷を与えないようにカプセルを除去することは困難である。多孔質焼結体が薄肉体である場合には、カプセル除去は更に困難になり、製品の歩留りの低下は一層顕著になる。
この問題点を解決するため、以下に説明する制作方法によって多孔質焼結体を制作した。製造する多孔質焼結体のダミーを、カプセルと同心となるようにカプセルに配置し、ダミーとカプセルとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとの混合物を最密充填し、この後、カプセルの上蓋を封止する。なお、使用するダミーは、カプセル材の融点より高い融点を持つ金属材料ないしは合金材料から構成し、これによって、HIP処理によってダミーはカプセルと固相拡散を起こさない。次に、製品となる多孔質焼結体を製造するHIP処理の条件においてカプセルをHIP処理する。この際、金属カプセルが変形し、これによって、セラミックス粉が圧縮され、また、バインダーが融解し、セラミックス粉と融解したバインダーとの複合材料からなる成形体がカプセルとダミーとの間に形成される。この成形体は、金属からなるカプセルと反応しないため、カプセルのバリアー層になる。この後、カプセルの上蓋を取り除いて、カプセル内にあるダミーを取り出し、代わりに、ダミーが存在した間隙に、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金粉を最密充填し、再度カプセルの上蓋を封止し、この後、前回と同じHIP処理の条件でHIP処理を行う。この後、HIP処理装置からカプセルを取り出し、再度カプセルの上蓋を取り除いて、製品となる多孔質焼結体を取り出す。こうして、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金からなる多孔質焼結体が得られる。なお、2回のHIP処理の条件が同一であるため、2回目のHIP処理によってセラミックスの成形体の形状は変わらない。このため、セラミックスの成形体は、カプセル内に配置した状態で繰り返し使用することができる。また、セラミックスの成形体が繰り返し使用できるため、製品となる焼結体が再現性よく製造できる。さらに、セラミックスの成形体は、カプセルおよび製品との間で固相拡散を起こさないため、カプセルから製品となる多孔質焼結体が容易に取り出せる。なお、この焼結体の機械的強度は、HIP処理時におけるアルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、焼結体を着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、焼結体の機械的強度が増大する。
HIP処理によって製造した多孔質焼結体が、廃棄物焼却炉に設置される除塵用フィルタ装置を構成するフィルタに適応する場合は、多孔質焼結体は、前記の79段落で説明した圧延シートと同様に強磁性の性質を持つため、鉄粉などの強磁性粉が飛び散る作業所や工場における除塵用フィルタ装置を構成する軽量なフィルタとして用いることができる。また、一定期間使用したフィルタは、強力な磁石を用いて多孔質体の内部に磁気吸着した強磁性粉を磁気吸着させることができるので、多孔質体は繰り返し使用することができる。なお、多孔質焼結体は、除塵用フィルタに限定されることはなく、強磁性の性質を活かすによって、様々な用途に適応することができる。
以下の説明では、前記の79段落で説明した圧延シートの事例と同様に、非磁性の金属粉ないしは合金粉として、アルミ合金粉を用いた事例で説明するが、アルミ合金粉に限られることはない。なお、多孔質焼結体の製造においては、アルミ合金粉末はJISの呼称で3004番に相当するアルミ−マンガン系合金からなる粉末を用いるのがよい。
金属粉を金属製のカプセルに充填して、カプセルを熱間静水圧で加圧して焼結体を製造するカプセル熱間静水圧加圧法(以下では熱間静水圧加圧をHIPという)では、熱間で静水圧を加圧した処理の後に、焼結体を取り出すためにカプセルを除去する加工が必要となる。この除去処理は、これまで機械加工によって行われている。しかし、金属カプセルと焼結体との界面は、HIP処理過程で生じる固相拡散によって接合しているため、金属カプセルだけを除去することはできず、製品となる焼結体の表面層を同時に除去することになる。このため、焼結体が比較的単純な形状のものであっても、ネットシェイプ成形が不可能になり、焼結体の表面層が除去する際の歩留りの低下は避けられない。特に、焼結体が、フィルタ部材等に供される多孔質体である場合は、多孔質体に損傷を与えないようにカプセルを除去することは困難である。多孔質焼結体が薄肉体である場合には、カプセル除去は更に困難になり、製品の歩留りの低下は一層顕著になる。
この問題点を解決するため、以下に説明する制作方法によって多孔質焼結体を制作した。製造する多孔質焼結体のダミーを、カプセルと同心となるようにカプセルに配置し、ダミーとカプセルとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとの混合物を最密充填し、この後、カプセルの上蓋を封止する。なお、使用するダミーは、カプセル材の融点より高い融点を持つ金属材料ないしは合金材料から構成し、これによって、HIP処理によってダミーはカプセルと固相拡散を起こさない。次に、製品となる多孔質焼結体を製造するHIP処理の条件においてカプセルをHIP処理する。この際、金属カプセルが変形し、これによって、セラミックス粉が圧縮され、また、バインダーが融解し、セラミックス粉と融解したバインダーとの複合材料からなる成形体がカプセルとダミーとの間に形成される。この成形体は、金属からなるカプセルと反応しないため、カプセルのバリアー層になる。この後、カプセルの上蓋を取り除いて、カプセル内にあるダミーを取り出し、代わりに、ダミーが存在した間隙に、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金粉を最密充填し、再度カプセルの上蓋を封止し、この後、前回と同じHIP処理の条件でHIP処理を行う。この後、HIP処理装置からカプセルを取り出し、再度カプセルの上蓋を取り除いて、製品となる多孔質焼結体を取り出す。こうして、鉄微粒子の多層構造で覆われたアルミ合金からなる多孔質焼結体が得られる。なお、2回のHIP処理の条件が同一であるため、2回目のHIP処理によってセラミックスの成形体の形状は変わらない。このため、セラミックスの成形体は、カプセル内に配置した状態で繰り返し使用することができる。また、セラミックスの成形体が繰り返し使用できるため、製品となる焼結体が再現性よく製造できる。さらに、セラミックスの成形体は、カプセルおよび製品との間で固相拡散を起こさないため、カプセルから製品となる多孔質焼結体が容易に取り出せる。なお、この焼結体の機械的強度は、HIP処理時におけるアルミ合金の絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力による。さらなる機械的強度が必要な場合は、焼結体を着磁機にかけて着磁すれば、鉄微粒子どうしの磁気吸着力が著しく増大し、焼結体の機械的強度が増大する。
HIP処理によって製造した多孔質焼結体が、廃棄物焼却炉に設置される除塵用フィルタ装置を構成するフィルタに適応する場合は、多孔質焼結体は、前記の79段落で説明した圧延シートと同様に強磁性の性質を持つため、鉄粉などの強磁性粉が飛び散る作業所や工場における除塵用フィルタ装置を構成する軽量なフィルタとして用いることができる。また、一定期間使用したフィルタは、強力な磁石を用いて多孔質体の内部に磁気吸着した強磁性粉を磁気吸着させることができるので、多孔質体は繰り返し使用することができる。なお、多孔質焼結体は、除塵用フィルタに限定されることはなく、強磁性の性質を活かすによって、様々な用途に適応することができる。
本発明に係わる部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行う第40特徴手段は、前記した第35特徴手段における多層構造で覆われた素材の集まりからなる部品が、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる焼結品であって、該焼結品は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属より融点が低い金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを有機化合物の希薄溶解液に投入し、該金属粉ないしは該合金粉の表面に前記有機化合物の希薄溶解液を吸着させ、該希薄溶解液が吸着した金属粉ないしは合金粉の集まりを射出成形機に投入し、該射出成形機内で、前記希薄溶解液の溶剤を気化させるとともに、前記金属粉ないしは前記合金粉の集まりを射出して成形品を成形し、該成形品を焼結金型に入れ、前記有機化合物を昇華させるとともに、前記金属粉ないしは前記合金粉を融解させ、さらに締めつけ力を加えて焼結品が制作される焼結品である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、非磁性体である金属ないしは合金からなる焼結品は、表面及び内部で、強磁性の金属微粒子の多層構造が互いに磁気吸着する。このため、焼結品は、磁気を外部に漏らすとともに、磁気が焼結品の内部で伝達する性質を持つ。このように、従来は困難であった非磁性の金属ないしは合金からなる焼結品が強磁性の性質を持つ。
本特徴手段に最も近い技術は、メタルインジェクションモールドMIMと呼ばれる製法で、金属ないしは合金からなる焼結品を製造する技術である。従来におけるMIMは、最初に、金属粉ないしは合金粉をバインダーとともに混合・混練し、この混練物を押出成形機で押し出してペレット状に造粒する。次に、このペレットを射出成形機に投入する。射出成形機内でバインダーを融解し、さらに射出圧によって融解物を金型内に射出して成形品を成形する。その後、脱脂炉にてバインダーを加熱除去し、最後に、焼結炉にて焼結を行う。MIMは、合成樹脂を用いた射出成形による成形品の製造と同様に、形状自由度の高い金属ないしは合金からなる加工品を製造する技術である。
従来におけるMIMの最大の課題は、製品となる焼結品の焼結密度を高め、焼結品の機械的強度を高めることにある。このため、射出成形における成形密度と、脱脂後における成形密度とを高めることが必須になる。いっぽう、射出成形における成形密度を高めるには、混練物の流動性を増大する必要がある。このため、原料としての金属粉ないしは合金粉は、大きさが50μm以下の微細粉で、かつ、形状が球形であることが望ましい。さらに、バインダーの配合割合を10重量%以上に増大することが望ましい。しかしながら、微細な球状粉は、粉体どうしの絡み合いが少ないため、脱脂後における成形密度を高めるほど、脱脂時に形状が変形しやすくなり、また、脱脂後に成形品が破損しやすくなる。いっぽう、バインダーの配合割合が多くなるほど、射出成形品における金属ないしは合金の密度が低下し、焼結品の焼結密度の低下に繋がり、焼結品の機械的強度が低下する。
従来におけるMIMの問題点を根本的に解決するため、本特徴手段における焼結品の製造は、従来のMIMとは異なる新たな工法によって金属ないしは合金の焼結品を製造する。
第一に、強磁性の金属微粒子で覆われた金属粉ないしは合金粉の集まりを、昇華点が低い有機化合物、例えば、パラフィンワックスの希薄溶解液に浸漬させ、この希薄溶解液を攪拌して、金属粉ないしは合金粉の表面に希薄溶解液を接触させる。これによって、金属粉ないしは合金粉は、パラフィンワックスの希薄溶解液が吸着し、流動性を持つ。また、金属粉ないしは合金粉どうしが、表面に形成された強磁性の金属微粒子を介して磁気吸着するため、従来の造粒工程が不要になる。
第二に、パラフィンワックスの希薄溶解液が付着した金属粉ないしは合金粉を、直接射出成形機に投入し、射出圧を加えて金型内に射出して成形品を成形する。この際、パラフィンワックスの溶剤が金型内で気化し、成形品における金属粉ないしは合金粉は、固化したパラフィンワックスの極薄い被膜を介して互いに磁気吸着する。このため、成形品は磁気吸着によって形状を保つ。さらに、固化したパラフィンワックスの被膜がごく薄いため、成形品における金属ないしは合金の密度が高まる。従って、従来の脱脂工程は不要になる。
第三に、成形品を焼結金型に入れ、金型を金属粉ないしは合金粉の融点に昇温し、さらに、金型を締め付けて成形品を加圧する。この際、最初に成形体の内部に存在する微量のパラフィンワックスが気化し、次いで金属粉ないしは合金粉が融解し、さらに、金型からの圧縮応力が加えられ、アルミ合金どうしが絡み合って焼結品が製造される。最後に、焼結体を着磁機にかける。この焼結体の機械的強度は、アルミ合金どうしの絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力と、鉄微粒子どうしの磁気吸着力による。
従来におけるMIMの製造工程が、造粒工程、射出成形工程、脱脂工程、焼結工程の4つの工程からなるのに対し、本特徴手段では、射出成形工程、焼結工程の2つの工程からなるため、著しく安価に焼結品が製造できる。さらに、非磁性の金属ないしは合金からなる焼結体が。強磁性の性質を持つ。
本特徴手段に最も近い技術は、メタルインジェクションモールドMIMと呼ばれる製法で、金属ないしは合金からなる焼結品を製造する技術である。従来におけるMIMは、最初に、金属粉ないしは合金粉をバインダーとともに混合・混練し、この混練物を押出成形機で押し出してペレット状に造粒する。次に、このペレットを射出成形機に投入する。射出成形機内でバインダーを融解し、さらに射出圧によって融解物を金型内に射出して成形品を成形する。その後、脱脂炉にてバインダーを加熱除去し、最後に、焼結炉にて焼結を行う。MIMは、合成樹脂を用いた射出成形による成形品の製造と同様に、形状自由度の高い金属ないしは合金からなる加工品を製造する技術である。
従来におけるMIMの最大の課題は、製品となる焼結品の焼結密度を高め、焼結品の機械的強度を高めることにある。このため、射出成形における成形密度と、脱脂後における成形密度とを高めることが必須になる。いっぽう、射出成形における成形密度を高めるには、混練物の流動性を増大する必要がある。このため、原料としての金属粉ないしは合金粉は、大きさが50μm以下の微細粉で、かつ、形状が球形であることが望ましい。さらに、バインダーの配合割合を10重量%以上に増大することが望ましい。しかしながら、微細な球状粉は、粉体どうしの絡み合いが少ないため、脱脂後における成形密度を高めるほど、脱脂時に形状が変形しやすくなり、また、脱脂後に成形品が破損しやすくなる。いっぽう、バインダーの配合割合が多くなるほど、射出成形品における金属ないしは合金の密度が低下し、焼結品の焼結密度の低下に繋がり、焼結品の機械的強度が低下する。
従来におけるMIMの問題点を根本的に解決するため、本特徴手段における焼結品の製造は、従来のMIMとは異なる新たな工法によって金属ないしは合金の焼結品を製造する。
第一に、強磁性の金属微粒子で覆われた金属粉ないしは合金粉の集まりを、昇華点が低い有機化合物、例えば、パラフィンワックスの希薄溶解液に浸漬させ、この希薄溶解液を攪拌して、金属粉ないしは合金粉の表面に希薄溶解液を接触させる。これによって、金属粉ないしは合金粉は、パラフィンワックスの希薄溶解液が吸着し、流動性を持つ。また、金属粉ないしは合金粉どうしが、表面に形成された強磁性の金属微粒子を介して磁気吸着するため、従来の造粒工程が不要になる。
第二に、パラフィンワックスの希薄溶解液が付着した金属粉ないしは合金粉を、直接射出成形機に投入し、射出圧を加えて金型内に射出して成形品を成形する。この際、パラフィンワックスの溶剤が金型内で気化し、成形品における金属粉ないしは合金粉は、固化したパラフィンワックスの極薄い被膜を介して互いに磁気吸着する。このため、成形品は磁気吸着によって形状を保つ。さらに、固化したパラフィンワックスの被膜がごく薄いため、成形品における金属ないしは合金の密度が高まる。従って、従来の脱脂工程は不要になる。
第三に、成形品を焼結金型に入れ、金型を金属粉ないしは合金粉の融点に昇温し、さらに、金型を締め付けて成形品を加圧する。この際、最初に成形体の内部に存在する微量のパラフィンワックスが気化し、次いで金属粉ないしは合金粉が融解し、さらに、金型からの圧縮応力が加えられ、アルミ合金どうしが絡み合って焼結品が製造される。最後に、焼結体を着磁機にかける。この焼結体の機械的強度は、アルミ合金どうしの絡み合いと、鉄微粒子どうしの接合力と、鉄微粒子どうしの磁気吸着力による。
従来におけるMIMの製造工程が、造粒工程、射出成形工程、脱脂工程、焼結工程の4つの工程からなるのに対し、本特徴手段では、射出成形工程、焼結工程の2つの工程からなるため、著しく安価に焼結品が製造できる。さらに、非磁性の金属ないしは合金からなる焼結体が。強磁性の性質を持つ。
本発明に係わる前記した第1特徴手段における多層構造を構成する金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材を製造する製造方法は、
熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、多層構造を構成する金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点にある。
熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、多層構造を構成する金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点にある。
つまり、この製造方法によれば、極めて簡単な連続した4つの製造工程からなる1回の製造タクトで、大量の部品ないしは基材ないしは素材が、多層構造を形成する金属微粒子によって覆われる。これによって、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが、安価な製造費用で製造できる。この製造方法は、2段落で説明した3項目の全ての性質を兼備し、4段落で説明した3つの条件を満たす。
すなわち、第1の製造工程は、必要となる有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2の製造工程は、分散液を充填した容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物の分散液が接触する。第3の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点まで昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物が吸着する。第4の製造工程は、大気雰囲気において、容器の温度を有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進行し、全ての部品ないしは基材ないしは素材が多層構造をなす金属微粒子で覆われる。こうして、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
すなわち、第1の製造工程は、必要となる有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2の製造工程は、分散液を充填した容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物の分散液が接触する。第3の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点まで昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物が吸着する。第4の製造工程は、大気雰囲気において、容器の温度を有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進行し、全ての部品ないしは基材ないしは素材が多層構造をなす金属微粒子で覆われる。こうして、金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
本発明に係わる前記した第3特徴手段における新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材を製造する第一の製造方法は、
第一の金属微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が低い第一の有機金属化合物と、第二の金属微粒子ないしは金属酸化物の微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が高い第二の有機金属化合物とを、有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりに、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質とに基づく新たな性質が付与される、ないしは、前記第一の金属微粒子の性質と前記金属酸化物の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点にある。
第一の金属微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が低い第一の有機金属化合物と、第二の金属微粒子ないしは金属酸化物の微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が高い第二の有機金属化合物とを、有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりに、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質とに基づく新たな性質が付与される、ないしは、前記第一の金属微粒子の性質と前記金属酸化物の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点にある。
つまり、この製造方法によれば、89段落に記載した製造方法と同様に、極めて簡単な連続した4つの製造工程からなる1回の製造タクトで、大量の部品ないしは基材ないしは素材の集まりが、表層と内部とが異なる物質から構成される多層構造によって覆われる。これによって、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが、安価な製造費用で製造できる。この製造方法は、2段落で説明した3項目の全ての性質を兼備し、4段落で説明した3つの条件を満たす。
第1の製造工程は、必要となる2種類の有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、2種類の有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2の製造工程は、分散液を充填した容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、2種類の有機金属化合物の分散液が接触する。第3の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、2種類の有機金属化合物が吸着する。第4の製造工程は、大気雰囲気において、容器の温度を、相対的に熱分解温度が高い有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、第一の有機金属化合物の熱分解反応が進行し、さらに、第二の有機金属化合物の熱分解反応が進行し、表層と内部とが異なる2種類の物質からなる微粒子の集まりの多層構造が形成され、全ての部品ないしは基材ないしは素材が多層構造で覆われる。こうして、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
第1の製造工程は、必要となる2種類の有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、2種類の有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2の製造工程は、分散液を充填した容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、2種類の有機金属化合物の分散液が接触する。第3の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、2種類の有機金属化合物が吸着する。第4の製造工程は、大気雰囲気において、容器の温度を、相対的に熱分解温度が高い有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、第一の有機金属化合物の熱分解反応が進行し、さらに、第二の有機金属化合物の熱分解反応が進行し、表層と内部とが異なる2種類の物質からなる微粒子の集まりの多層構造が形成され、全ての部品ないしは基材ないしは素材が多層構造で覆われる。こうして、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
本発明に係わる前記した第3特徴手段における新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材を製造する第二の製造方法は、
第一の金属微粒子を熱分解で析出する第一の有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを大気雰囲気で前記第一の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程と、第二の金属微粒子を熱分解で析出する第二の有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第5の製造工程と、前記第二の有機金属化合物の分散液に、前記第4の製造工程における熱処理を行った前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを浸漬させる第6の製造工程と、前記第5の製造工程で作った前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを大気雰囲気ないしは還元雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第8の製造工程からなる、連続した8つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりに、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点ある。
第一の金属微粒子を熱分解で析出する第一の有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを大気雰囲気で前記第一の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程と、第二の金属微粒子を熱分解で析出する第二の有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第5の製造工程と、前記第二の有機金属化合物の分散液に、前記第4の製造工程における熱処理を行った前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを浸漬させる第6の製造工程と、前記第5の製造工程で作った前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第7の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを大気雰囲気ないしは還元雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第8の製造工程からなる、連続した8つの製造工程からなり、該製造方法によって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりに、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質に基づく新たな性質が付与される部品ないしは基材ないしは素材の集まりを製造する点ある。
つまり、この製造方法によれば、極めて簡単な連続した8つの製造工程からなる1回の製造タクトで、大量の部品ないしは基材ないしは素材が、表層と内部とが異なる材質からなる2種類の微粒子で構成される多層構造によって覆われる。これによって、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが、安価な製清費用で製造できる。この製造方法は、2段落で説明した3項目の全ての性質を兼備し、4段落で説明した3つの条件を満たす。
第1および第5の製造工程は、必要となる有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2および第6の製造工程は、分散液が充填された容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物の分散液が接触する。第3および第7の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物が吸着する。第4および第8の製造工程は、大気雰囲気ないしは還元雰囲気において、容器の温度を、有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進行し、表層と内部とが異なる2種類の微粒子からなる多層構造が形成され、全ての部品ないしは基材ないしは素材がこの多層構造で覆われる。こうして、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
第1および第5の製造工程は、必要となる有機金属化合物を容器に充填し、これに有機溶剤を加えて撹拌するだけの工程である。これによって、有機金属化合物が有機溶剤に分散された分散液が作成できる。第2および第6の製造工程は、分散液が充填された容器に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物の分散液が接触する。第3および第7の製造工程は、容器の温度を有機溶剤の沸点に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面に、有機金属化合物が吸着する。第4および第8の製造工程は、大気雰囲気ないしは還元雰囲気において、容器の温度を、有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温するだけの工程である。これによって、全ての部品ないしは基材ないしは素材の表面で、有機金属化合物の熱分解反応が進行し、表層と内部とが異なる2種類の微粒子からなる多層構造が形成され、全ての部品ないしは基材ないしは素材がこの多層構造で覆われる。こうして、多層構造を構成する微粒子の性質に基づく新たな性質が付与された部品ないしは基材ないしは素材の集まりが製造される。
本実施形態は、金属微粒子を析出する原料に関する実施形態である。金属微粒子を析出する原料は、次の5つの性質を兼備することが望ましい。第一に、原料が液相化され、液相中に金属イオンが溶出しない。つまり、原料は液体に溶解せず分散する。これによって、原料を構成する金属イオンの全てが、金属微粒子の析出に参加する。第二に、合成が容易で安価な費用で製造できる。これによって、原料が安価に製造できる。第三に、熱分解が完了すると金属が析出する。第四に、熱分解が完了する温度が相対的に低い。これによって、熱処理費用が安価で済む。第五に、アルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散する濃度が相対的に高い。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に吸着する原料の量を増やすことができる。
第一の性質を有する原料の実施形態について説明する。部品ないしは基材ないしは素材を金属微粒子の集まりで覆うには、金属微粒子が生成される過程が、部品や基材や素材の表面で進行する必要がある。つまり、金属微粒子の原料が部品や基材や素材の表面に吸着し、この吸着した原料が部品や基材や素材の表面で金属微粒子に変化し、これによって、金属微粒子の集まりが部品や基材や素材を覆う。従って、第一に原料を液相化し、第二に液相化された原料を部品ないしは基材ないしは素材に接触させ、第三に液相化された原料の液体を蒸発させ、原料を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、第四に吸着した原料を熱分解させ、第五に部品ないしは基材ないしは素材の表面に金属微粒子の集まりを析出させる。こうした5つの過程を連続して踏むことによって、金属微粒子が部品や基材や素材を覆うことができる。
ここで、液相化される金属の原料となる金属化合物の実施形態を説明する。ここでは、金属を鉄とし、鉄化合物について説明する。鉄化合物の中で、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄などの無機鉄化合物は、液相化された無機鉄化合物中に鉄イオンが溶出してしまい、多くの鉄イオンが鉄微粒子の析出に参加できなくなる。また、鉄化合物はアルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散できれば、鉄化合物の分散液が容易に作成でき、この分散液に部品ないしは基材ないしは素材を浸漬させると、表面が分散液と接触する。酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄などの無機鉄化合物はアルコール類に分散しない。このため、無機鉄化合物は鉄微粒子の原料にはならず、有機鉄化合物が鉄微粒子を析出する原料になる。
次に、第二および第四の性質を有する有機金属化合物の実施形態を、有機鉄化合物を例として説明する。有機鉄化合物の中で、合成が容易で、相対的に低い温度で熱分解が完了する有機鉄化合物は、製造と熱分解処理とが安価で行える。カルボン酸鉄は、合成が容易で、熱分解温度が相対的に低い有機鉄化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させることで、カルボン酸アルカリ金属が容易に生成できる。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸鉄などの無機鉄化合物と反応させると、カルボン酸鉄が容易に生成される。またカルボン酸鉄を構成するカルボン酸の沸点が低いため、多くのカルボン酸鉄の熱分解温度が500℃以下であり、他の有機鉄化合物に比べ熱分解完了温度が低い。このように、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物が望ましい。
第三の性質を有するカルボン酸金属化合物の実施形態を、カルボン酸鉄を具体例として説明する。カルボン酸鉄の組成式は、RCOO‐Fe‐COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸鉄を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する鉄イオンFe2+が最も大きい物質になる。従って、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、鉄イオンFe2+の共有結合半径は116pmであり、酸素イオンO−の共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸鉄の熱分解反応では、結合距離が最も長い鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に切断し、鉄とカルボン酸とに分離する。この後、カルボン酸は気化熱を奪って気化し、全てのカルボン酸が気化した瞬間に鉄が析出する。このように、カルボン酸鉄の熱分解反応で鉄が生成されるには、カルボン酸鉄の熱分解反応において、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との結合部位が最初に切れることが必要になる。こうしたカルボキシル基を構成する酸素イオンが鉄イオンと共有結合するカルボン酸鉄として、オレイン酸鉄、オクチル酸鉄、ラウリン酸鉄、ステアリン酸鉄などがある。従って、金属微粒子を生成する原料は、金属イオンがカルボキシル基を構成する酸素イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物が更に望ましい。
第五の性質を有するカルボン酸金属化合物の実施形態について、カルボン酸鉄を例として説明する。カルボキシル基を構成する酸素イオンが鉄イオンと共有結合するカルボン酸鉄について、次の3つの分子構造を兼備するカルボン酸鉄が、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に高く、また、熱分解が完了する温度は相対的に低い。
第一に、炭素原子間に二重結合や三重結合が無く、またベンゼン環を有せず、飽和脂肪酸から構成されたカルボン酸鉄であること。つまり、不飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄は、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に低い。このため、炭素原子間に2重結合を持つオレイン酸鉄などの不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄と、ベンゼン環を持つフタル酸鉄などの不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、鉄微粒子の原料としては望ましくない。
第二に、長鎖構造の炭化水素を含まない飽和脂肪酸から形成されたカルボン酸鉄であること。つまり、飽和脂肪酸から形成されたカルボン酸鉄であっても、脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に低く、また熱分解温度は相対的に高くなる。このような長鎖飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄として、ラウリン酸鉄が挙げられる。
第三に、極性を有する脂肪酸、つまり、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄であること。分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、分岐鎖の分子構造によって極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄は極性を持ち、アルコールなどの極性溶媒に分散する濃度が相対的に高くなる。また、分岐鎖構造の飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短いため、熱分解温度が相対的に低い。以上に説明したように、金属イオンと結合するイオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物の中で、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と金属とからなるオクチル酸金属化合物が、金属微粒子を生成する有機金属化合物として最も望ましい。
なお、オクチル酸金属化合物は商品化されていないため、次の製法で新たに合成した。ここでは、オクチル酸鉄を具体例として説明する。組成式がC17H15COOHで表されるオクチル酸(市販品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合して、C17H15COONaの組成式で表されるオクチル酸ナトリウムが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸鉄FeSO4(試薬一級品)の水溶液と反応させると、組成式がC17H15COO‐Fe‐C17H15COOで表されるオクチル酸鉄が析出する。析出したオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸鉄を精製する。合成したオクチル酸鉄は、大気雰囲気において260℃で熱分解が完了し、メタノールやn‐ブタノールなどに10重量%近くまで分散する。
なお、表層と内部とが異なる金属からなる多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う場合は、この限りではない。つまり、多層構造の表層を形成する第一の金属微粒子の原料である第一のカルボン酸金属化合物は、多層構造の内部を形成する第二の金属微粒子の原料である第二のカルボン酸金属化合物より、熱分解が完了する温度が高いことが必要になる。このため、第一のカルボン酸金属化合物は必ずしも熱分解温度が低くなくてもよく、第二のカルボン酸金属化合物の熱分解温度との間で温度差があればよい。また、表層を占める第一の金属微粒子の体積が小さい場合は、第一のカルボン酸金属化合物が有機溶剤に分散する分散濃度が低い濃度で使用するため、必ずしも有機溶剤に対する分散濃度が高くなくてもよい。このように、2種類の金属微粒子で構成される多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う場合は、長鎖飽和脂肪酸と金属からなるラウリン酸金属化合物は、前記した第一のカルボン酸金属化合物として用いることができる。
第一の性質を有する原料の実施形態について説明する。部品ないしは基材ないしは素材を金属微粒子の集まりで覆うには、金属微粒子が生成される過程が、部品や基材や素材の表面で進行する必要がある。つまり、金属微粒子の原料が部品や基材や素材の表面に吸着し、この吸着した原料が部品や基材や素材の表面で金属微粒子に変化し、これによって、金属微粒子の集まりが部品や基材や素材を覆う。従って、第一に原料を液相化し、第二に液相化された原料を部品ないしは基材ないしは素材に接触させ、第三に液相化された原料の液体を蒸発させ、原料を部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、第四に吸着した原料を熱分解させ、第五に部品ないしは基材ないしは素材の表面に金属微粒子の集まりを析出させる。こうした5つの過程を連続して踏むことによって、金属微粒子が部品や基材や素材を覆うことができる。
ここで、液相化される金属の原料となる金属化合物の実施形態を説明する。ここでは、金属を鉄とし、鉄化合物について説明する。鉄化合物の中で、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄などの無機鉄化合物は、液相化された無機鉄化合物中に鉄イオンが溶出してしまい、多くの鉄イオンが鉄微粒子の析出に参加できなくなる。また、鉄化合物はアルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散できれば、鉄化合物の分散液が容易に作成でき、この分散液に部品ないしは基材ないしは素材を浸漬させると、表面が分散液と接触する。酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄などの無機鉄化合物はアルコール類に分散しない。このため、無機鉄化合物は鉄微粒子の原料にはならず、有機鉄化合物が鉄微粒子を析出する原料になる。
次に、第二および第四の性質を有する有機金属化合物の実施形態を、有機鉄化合物を例として説明する。有機鉄化合物の中で、合成が容易で、相対的に低い温度で熱分解が完了する有機鉄化合物は、製造と熱分解処理とが安価で行える。カルボン酸鉄は、合成が容易で、熱分解温度が相対的に低い有機鉄化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させることで、カルボン酸アルカリ金属が容易に生成できる。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸鉄などの無機鉄化合物と反応させると、カルボン酸鉄が容易に生成される。またカルボン酸鉄を構成するカルボン酸の沸点が低いため、多くのカルボン酸鉄の熱分解温度が500℃以下であり、他の有機鉄化合物に比べ熱分解完了温度が低い。このように、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物が望ましい。
第三の性質を有するカルボン酸金属化合物の実施形態を、カルボン酸鉄を具体例として説明する。カルボン酸鉄の組成式は、RCOO‐Fe‐COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸鉄を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する鉄イオンFe2+が最も大きい物質になる。従って、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、鉄イオンFe2+の共有結合半径は116pmであり、酸素イオンO−の共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸鉄の熱分解反応では、結合距離が最も長い鉄イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に切断し、鉄とカルボン酸とに分離する。この後、カルボン酸は気化熱を奪って気化し、全てのカルボン酸が気化した瞬間に鉄が析出する。このように、カルボン酸鉄の熱分解反応で鉄が生成されるには、カルボン酸鉄の熱分解反応において、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との結合部位が最初に切れることが必要になる。こうしたカルボキシル基を構成する酸素イオンが鉄イオンと共有結合するカルボン酸鉄として、オレイン酸鉄、オクチル酸鉄、ラウリン酸鉄、ステアリン酸鉄などがある。従って、金属微粒子を生成する原料は、金属イオンがカルボキシル基を構成する酸素イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物が更に望ましい。
第五の性質を有するカルボン酸金属化合物の実施形態について、カルボン酸鉄を例として説明する。カルボキシル基を構成する酸素イオンが鉄イオンと共有結合するカルボン酸鉄について、次の3つの分子構造を兼備するカルボン酸鉄が、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に高く、また、熱分解が完了する温度は相対的に低い。
第一に、炭素原子間に二重結合や三重結合が無く、またベンゼン環を有せず、飽和脂肪酸から構成されたカルボン酸鉄であること。つまり、不飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄は、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に低い。このため、炭素原子間に2重結合を持つオレイン酸鉄などの不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄と、ベンゼン環を持つフタル酸鉄などの不飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄は、鉄微粒子の原料としては望ましくない。
第二に、長鎖構造の炭化水素を含まない飽和脂肪酸から形成されたカルボン酸鉄であること。つまり、飽和脂肪酸から形成されたカルボン酸鉄であっても、脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、アルコールなどの有機溶剤に分散する濃度が相対的に低く、また熱分解温度は相対的に高くなる。このような長鎖飽和脂肪酸からなるカルボン酸鉄として、ラウリン酸鉄が挙げられる。
第三に、極性を有する脂肪酸、つまり、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄であること。分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、分岐鎖の分子構造によって極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と鉄からなるカルボン酸鉄は極性を持ち、アルコールなどの極性溶媒に分散する濃度が相対的に高くなる。また、分岐鎖構造の飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短いため、熱分解温度が相対的に低い。以上に説明したように、金属イオンと結合するイオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物の中で、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸と金属とからなるオクチル酸金属化合物が、金属微粒子を生成する有機金属化合物として最も望ましい。
なお、オクチル酸金属化合物は商品化されていないため、次の製法で新たに合成した。ここでは、オクチル酸鉄を具体例として説明する。組成式がC17H15COOHで表されるオクチル酸(市販品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合して、C17H15COONaの組成式で表されるオクチル酸ナトリウムが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸鉄FeSO4(試薬一級品)の水溶液と反応させると、組成式がC17H15COO‐Fe‐C17H15COOで表されるオクチル酸鉄が析出する。析出したオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸鉄を精製する。合成したオクチル酸鉄は、大気雰囲気において260℃で熱分解が完了し、メタノールやn‐ブタノールなどに10重量%近くまで分散する。
なお、表層と内部とが異なる金属からなる多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う場合は、この限りではない。つまり、多層構造の表層を形成する第一の金属微粒子の原料である第一のカルボン酸金属化合物は、多層構造の内部を形成する第二の金属微粒子の原料である第二のカルボン酸金属化合物より、熱分解が完了する温度が高いことが必要になる。このため、第一のカルボン酸金属化合物は必ずしも熱分解温度が低くなくてもよく、第二のカルボン酸金属化合物の熱分解温度との間で温度差があればよい。また、表層を占める第一の金属微粒子の体積が小さい場合は、第一のカルボン酸金属化合物が有機溶剤に分散する分散濃度が低い濃度で使用するため、必ずしも有機溶剤に対する分散濃度が高くなくてもよい。このように、2種類の金属微粒子で構成される多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材を覆う場合は、長鎖飽和脂肪酸と金属からなるラウリン酸金属化合物は、前記した第一のカルボン酸金属化合物として用いることができる。
本実施形態は、貴金属を析出する原料に関する実施形態である。つまり、表層と内部とが異なる物質から構成される多層構造について、表層をごく薄い層として形成し、この層を貴金属微粒子で構成すれば、多層構造で覆われた部品ないしは基材ないしは素材の表面は、表層を構成する貴金属の性質を示す。こうした貴金属の原料に関する実施形態である。
貴金属を析出する原料についても、前記した金属を析出する原料と同様に、前記の5つの性質を兼備することが望ましい。
第一の性質を有する貴金属の原料は、前記の95段落で説明した金属の原料と同様の理由から有機金属化合物が望ましい。
第三の性質を有する貴金属の原料となる有機金属化合物の実施形態を、熱分解で白金を折出する有機白金化合物を例として説明する。有機白金化合物を構成する物質の中で、最も大きい物質は白金イオンPt2+ないしはPt4+である。ちなみに、白金原子の単結合における共有結合半径は123pmであり、酸素原子の単結合における共有結合半径である63pmの2倍に近い大きさを持つ。このため、白金イオンないしは白金原子が隣り合うイオンないしは原子と共有結合すれば、95段落で説明したカルボン酸鉄と同様の理由で、熱分解で白金が析出する。つまり、有機白金化合物の熱分解反応において、白金イオンないしは白金原子が隣り合うイオンないしは原子との結合部が最初に切れ、熱分解が完了すると白金が析出する。このような分子構造上の特徴を持つ有機白金化合物として、白金錯体がある。白金錯体として、アセチルアセナートC5H7O2 −が配位子イオンとなって白金イオンPt4+に配位結合するアセチルアセトン白金、アンモニアNH3が配位子となって白金イオンPt2+に配位結合するアンミン白金、塩素イオンCl−とアンモニアイオンNH4+とが配位子となって白金イオンPt2+に配位結合するクロロ白金、シアノ基CN−が配位子になって白金イオンPt2+に配位結合するシアノ白金、臭素イオンBr−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合するブロモ白金、沃素イオンI−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合するヨード白金などがある。白金錯体の多くは、還元性雰囲気で熱分解すると、配位結合部位が容易に分断され、相対的に低い温度で白金が析出する。しかし、白金が高価な貴金属であるため、白金錯体は高価な有機金属化合物である。従って、白金錯体は第四の性質を兼備するが、第二の性質は兼備しない。しかし、白金錯体の使用量がごく少量であれば、第二の性質を兼備しないことは問題にならない。上記した白金錯体の多くは、n‐ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度で分散するため、第五の性質を兼備する。
なお、金属錯体の中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は、次の97段落で説明するように、熱分解で金属ではなく金属酸化物を析出する。
以上に説明したように、貴金属を熱分解で析出する有機金属化合物は、カルボン酸金属化合物を除く金属錯体が望ましい。貴金属元素からなる金属錯体は、高価な貴金属を原料とするため、高価な材料である。このため、貴金属微粒子の析出量がごく少量で済む事例で用いることが望ましい。また、前記した6種類の貴金属錯体の中で、相対的に熱分解温度が低い貴金属錯体を用いるのが望ましい。
貴金属を析出する原料についても、前記した金属を析出する原料と同様に、前記の5つの性質を兼備することが望ましい。
第一の性質を有する貴金属の原料は、前記の95段落で説明した金属の原料と同様の理由から有機金属化合物が望ましい。
第三の性質を有する貴金属の原料となる有機金属化合物の実施形態を、熱分解で白金を折出する有機白金化合物を例として説明する。有機白金化合物を構成する物質の中で、最も大きい物質は白金イオンPt2+ないしはPt4+である。ちなみに、白金原子の単結合における共有結合半径は123pmであり、酸素原子の単結合における共有結合半径である63pmの2倍に近い大きさを持つ。このため、白金イオンないしは白金原子が隣り合うイオンないしは原子と共有結合すれば、95段落で説明したカルボン酸鉄と同様の理由で、熱分解で白金が析出する。つまり、有機白金化合物の熱分解反応において、白金イオンないしは白金原子が隣り合うイオンないしは原子との結合部が最初に切れ、熱分解が完了すると白金が析出する。このような分子構造上の特徴を持つ有機白金化合物として、白金錯体がある。白金錯体として、アセチルアセナートC5H7O2 −が配位子イオンとなって白金イオンPt4+に配位結合するアセチルアセトン白金、アンモニアNH3が配位子となって白金イオンPt2+に配位結合するアンミン白金、塩素イオンCl−とアンモニアイオンNH4+とが配位子となって白金イオンPt2+に配位結合するクロロ白金、シアノ基CN−が配位子になって白金イオンPt2+に配位結合するシアノ白金、臭素イオンBr−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合するブロモ白金、沃素イオンI−が配位子となって白金イオンPt4+に配位結合するヨード白金などがある。白金錯体の多くは、還元性雰囲気で熱分解すると、配位結合部位が容易に分断され、相対的に低い温度で白金が析出する。しかし、白金が高価な貴金属であるため、白金錯体は高価な有機金属化合物である。従って、白金錯体は第四の性質を兼備するが、第二の性質は兼備しない。しかし、白金錯体の使用量がごく少量であれば、第二の性質を兼備しないことは問題にならない。上記した白金錯体の多くは、n‐ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度で分散するため、第五の性質を兼備する。
なお、金属錯体の中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は、次の97段落で説明するように、熱分解で金属ではなく金属酸化物を析出する。
以上に説明したように、貴金属を熱分解で析出する有機金属化合物は、カルボン酸金属化合物を除く金属錯体が望ましい。貴金属元素からなる金属錯体は、高価な貴金属を原料とするため、高価な材料である。このため、貴金属微粒子の析出量がごく少量で済む事例で用いることが望ましい。また、前記した6種類の貴金属錯体の中で、相対的に熱分解温度が低い貴金属錯体を用いるのが望ましい。
本実施形態は、金属酸化物の原料に関する実施形態である。金属酸化物を析出する原料は95段落で説明した金属を析出する原料と同様に、5つの性質を兼備することが望ましい。
第一の性質を有する金属酸化物の原料は、前記の95段落で説明した金属の原料と同様の理由から有機金属化合物が望ましい。
第三の性質を有する金属酸化物の原料となる有機金属化合物の実施形態を、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物を例として説明する。なお、酸化鉄(II)FeOを昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化して三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。さらに昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。このマグヘマイトγ‐Fe2O3は、強磁性で絶縁性の酸化物である。有機鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+である。いっぽう、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合するカルボン酸鉄の場合は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、95段落で説明したように熱分解によって鉄が析出する。従って、熱分解によって酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンO−との距離が短く、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと酸素イオンO−と結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、有機鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化鉄(II)FeOと有機物とに分解する。このようなカルボン酸鉄は、カルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄であって、第三の性質を持つ有機鉄化合物になる。
いっぽう、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、95段落で説明したように、合成が容易で、熱分解温度が相対的に低い。このため、酸素イオンが配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、第二および第四の性質を兼備する。カルボン酸金属化合物の中で、酸素イオンO−が配位子となって金属イオンに近づき、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、安息香酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。なお、カルボン酸鉄においては、酢酸鉄および安息香酸鉄は、酸素イオンが鉄イオンに近づいて配位結合して三核錯塩を形成するが、不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、カプリル酸鉄とナフテン酸鉄が望ましい。さらに、カプリル酸鉄、ナフテン酸鉄は、n‐ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
いっぽう、有機金属化合物の一種であるアセチルアセトン金属化合物は、アセチルアセトンC5H8O2の共役塩基であるアセチルアセトナートC5H7O2 −を構成する2個の酸素イオンが配位子となって金属イオンに近づいて配位結合し、アセチルアセトナートが六員環を形成する有機金属化合物である。このため、熱分解においては、配位子である酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンとの結合部位が最初に切れる。これによって、金属イオンが酸素イオンと結合した金属酸化物とアセチルアセトンに分解し、熱分解が完了すると金属酸化物が析出する。また、アセチルアセトン金属化合物、例えば、アセチルアセトン鉄は、塩化鉄の水溶液を沸騰水中に滴下さして水酸化鉄(III)Fe(OH)3のコロイド液を作製し、この水酸化鉄1モルとアセチルアセトンCH3C(O)CH2C(O)CH33モルとを反応させることで得られる。このように、アセチルアセトン鉄も合成が容易な有機鉄化合物である。なお、アセチルアセトンは酢酸イソプロペニルCH2(CH3)COC(O)Meの熱転位で工業的に生産される有機物で、前記したカルボン酸に比べると高価な有機物であり、このため、前記したカルボン酸鉄より高価な有機鉄化合物になる。いぽう、アセチルアセトンの沸点が140℃と低く、アセチルアセトン金属化合物は熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物である。このため、アセチルアセトン金属化合物は、第四の性質を兼備するが、第二の性質を兼備するとは言えない。従って、カルボン酸鉄より熱分解温度が低い特徴を利用して、表層と内部とが異なる物質からなる多層構造の内部を構成する金属酸化物の原料として有効になる。なお、アセチルアセトン金属化合物、例えばアセチルアセトン鉄は、n‐ブタノールに対して10重量%以上分散するので第五の性質を持つ。
以上に説明したように、熱分解によって金属酸化物からなる微粒子を生成する原材料は、酢酸金属化合物、安息香酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物が望ましい。また、熱分解が低い原料として、アセチルアセトン金属化合物を用いることができる。
第一の性質を有する金属酸化物の原料は、前記の95段落で説明した金属の原料と同様の理由から有機金属化合物が望ましい。
第三の性質を有する金属酸化物の原料となる有機金属化合物の実施形態を、熱分解で酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物を例として説明する。なお、酸化鉄(II)FeOを昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が酸化して三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Fe2O3の組成式で表さられるマグネタイトFe3O4になる。さらに昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄(III)Fe2O3のγ相であるマグヘマイトγ‐Fe2O3になる。このマグヘマイトγ‐Fe2O3は、強磁性で絶縁性の酸化物である。有機鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+である。いっぽう、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合するカルボン酸鉄の場合は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、95段落で説明したように熱分解によって鉄が析出する。従って、熱分解によって酸化鉄(II)FeOを析出する有機鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンO−との距離が短く、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと酸素イオンO−と結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、有機鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化鉄(II)FeOと有機物とに分解する。このようなカルボン酸鉄は、カルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄であって、第三の性質を持つ有機鉄化合物になる。
いっぽう、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、95段落で説明したように、合成が容易で、熱分解温度が相対的に低い。このため、酸素イオンが配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、第二および第四の性質を兼備する。カルボン酸金属化合物の中で、酸素イオンO−が配位子となって金属イオンに近づき、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、安息香酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。なお、カルボン酸鉄においては、酢酸鉄および安息香酸鉄は、酸素イオンが鉄イオンに近づいて配位結合して三核錯塩を形成するが、不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、カプリル酸鉄とナフテン酸鉄が望ましい。さらに、カプリル酸鉄、ナフテン酸鉄は、n‐ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
いっぽう、有機金属化合物の一種であるアセチルアセトン金属化合物は、アセチルアセトンC5H8O2の共役塩基であるアセチルアセトナートC5H7O2 −を構成する2個の酸素イオンが配位子となって金属イオンに近づいて配位結合し、アセチルアセトナートが六員環を形成する有機金属化合物である。このため、熱分解においては、配位子である酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンとの結合部位が最初に切れる。これによって、金属イオンが酸素イオンと結合した金属酸化物とアセチルアセトンに分解し、熱分解が完了すると金属酸化物が析出する。また、アセチルアセトン金属化合物、例えば、アセチルアセトン鉄は、塩化鉄の水溶液を沸騰水中に滴下さして水酸化鉄(III)Fe(OH)3のコロイド液を作製し、この水酸化鉄1モルとアセチルアセトンCH3C(O)CH2C(O)CH33モルとを反応させることで得られる。このように、アセチルアセトン鉄も合成が容易な有機鉄化合物である。なお、アセチルアセトンは酢酸イソプロペニルCH2(CH3)COC(O)Meの熱転位で工業的に生産される有機物で、前記したカルボン酸に比べると高価な有機物であり、このため、前記したカルボン酸鉄より高価な有機鉄化合物になる。いぽう、アセチルアセトンの沸点が140℃と低く、アセチルアセトン金属化合物は熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物である。このため、アセチルアセトン金属化合物は、第四の性質を兼備するが、第二の性質を兼備するとは言えない。従って、カルボン酸鉄より熱分解温度が低い特徴を利用して、表層と内部とが異なる物質からなる多層構造の内部を構成する金属酸化物の原料として有効になる。なお、アセチルアセトン金属化合物、例えばアセチルアセトン鉄は、n‐ブタノールに対して10重量%以上分散するので第五の性質を持つ。
以上に説明したように、熱分解によって金属酸化物からなる微粒子を生成する原材料は、酢酸金属化合物、安息香酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物が望ましい。また、熱分解が低い原料として、アセチルアセトン金属化合物を用いることができる。
本実施形態は、電気導電性で熱伝導性である銅微粒子の集まりによって、部品ないしは基材ないしは素材を覆う実施形態である。
最初に銅微粒子の原料について説明する。カルボン酸銅の中で、熱分解温度が最も低く、アルコールに対する分散濃度が最も高いカルボン酸銅は、オクチル酸銅である。従って、銅微粒子の原料としてオクチル酸銅が望ましい。オクチル酸銅もオクチル酸鉄と同様に、商品化されていないため、95段落に説明したオクチル酸鉄の合成方法に準じて新たに合成した。但し、オクチル酸ナトリウムと反応させる無機金属化合物は、硫酸銅CuSO4になる。合成したオクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了し銅を析出し、メタノールやn‐ブタノールなどに10重量%近くまで分散する。
図1に、銅微粒子で覆う製造工程を示す。オクチル酸銅を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、銅微粒子の多層構造の厚みが決まる。つまり、オクチル酸銅の分散濃度に応じて、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着するオクチル酸銅の量が決まり、この吸着したオクチル酸銅の量に応じて、銅微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる銅微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸銅の分散濃度を決めて、分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸銅の分散濃度が9重量%になるように、オクチル酸銅をメタノールに分散する(S10工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S11工程)。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S12工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸銅を熱分解する(S13工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S14工程)。
製作した試料について、電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。電子顕微鏡による観察は次の3種類の手法によった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が50層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状の微粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸銅を吸着させて熱分解すると、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子の集まりが、50層に近い多層構造を形成して表面を覆うことになる。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、銅微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、銅微粒子の大きさと多層構造の厚みに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、銅微粒子の性質に基づいて、29段落と31段落とに説明した電気導電性と熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
最初に銅微粒子の原料について説明する。カルボン酸銅の中で、熱分解温度が最も低く、アルコールに対する分散濃度が最も高いカルボン酸銅は、オクチル酸銅である。従って、銅微粒子の原料としてオクチル酸銅が望ましい。オクチル酸銅もオクチル酸鉄と同様に、商品化されていないため、95段落に説明したオクチル酸鉄の合成方法に準じて新たに合成した。但し、オクチル酸ナトリウムと反応させる無機金属化合物は、硫酸銅CuSO4になる。合成したオクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了し銅を析出し、メタノールやn‐ブタノールなどに10重量%近くまで分散する。
図1に、銅微粒子で覆う製造工程を示す。オクチル酸銅を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、銅微粒子の多層構造の厚みが決まる。つまり、オクチル酸銅の分散濃度に応じて、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着するオクチル酸銅の量が決まり、この吸着したオクチル酸銅の量に応じて、銅微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる銅微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸銅の分散濃度を決めて、分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸銅の分散濃度が9重量%になるように、オクチル酸銅をメタノールに分散する(S10工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S11工程)。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S12工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸銅を熱分解する(S13工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S14工程)。
製作した試料について、電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。電子顕微鏡による観察は次の3種類の手法によった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が50層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、試料表面に形成された粒状の微粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸銅を吸着させて熱分解すると、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子の集まりが、50層に近い多層構造を形成して表面を覆うことになる。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、銅微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、銅微粒子の大きさと多層構造の厚みに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、銅微粒子の性質に基づいて、29段落と31段落とに説明した電気導電性と熱伝導性に基づく新たな性質が付与される。
本実施形態は、電気導電性で強磁性である鉄からなる微粒子の集まりが、多層構造を形成して部品ないしは基材ないしは素材を覆う実施形態である。
最初に、鉄微粒子の原料について説明する。カルボン酸鉄の中で、熱分解温度が最も低く、アルコールに対する分散濃度が最も高いカルボン酸鉄は、オクチル酸鉄である。従って、鉄の原料としてオクチル酸鉄が望ましい。95段落で説明した製法でオクチル酸鉄を新たに合成し、鉄微粒子の原料として用いた。
図2に、鉄微粒子で覆う製造工程を示す。前記の98段落で説明した銅微粒子の析出と同様に、オクチル酸鉄を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、鉄微粒子の多層構造の厚みが決まる。つまり、オクチル酸鉄の分散濃度に応じて、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着するオクチル酸鉄の量が決まり、この吸着したオクチル酸鉄の量に応じて、鉄微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる鉄微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄の分散濃度を決めて、分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄の分散濃度が9重量%になるように、オクチル酸鉄をメタノールに分散する(S20工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落で説明した実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S21工程)。次に、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S22工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄を熱分解する(S23工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S24工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が50層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状の微粒子の元素を分析した。鉄原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄を吸着させて熱分解すると、40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが、50層に近い多層構造を形成して、表面を覆うことになる。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、鉄微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、鉄微粒子の大きさと多層構造の厚みとに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、鉄微粒子の性質に応じて、33段落と35段落とに説明した電気導電性と強磁性に基づく新たな性質が付与される。
最初に、鉄微粒子の原料について説明する。カルボン酸鉄の中で、熱分解温度が最も低く、アルコールに対する分散濃度が最も高いカルボン酸鉄は、オクチル酸鉄である。従って、鉄の原料としてオクチル酸鉄が望ましい。95段落で説明した製法でオクチル酸鉄を新たに合成し、鉄微粒子の原料として用いた。
図2に、鉄微粒子で覆う製造工程を示す。前記の98段落で説明した銅微粒子の析出と同様に、オクチル酸鉄を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、鉄微粒子の多層構造の厚みが決まる。つまり、オクチル酸鉄の分散濃度に応じて、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着するオクチル酸鉄の量が決まり、この吸着したオクチル酸鉄の量に応じて、鉄微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる鉄微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄の分散濃度を決めて、分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄の分散濃度が9重量%になるように、オクチル酸鉄をメタノールに分散する(S20工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落で説明した実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S21工程)。次に、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S22工程)。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄を熱分解する(S23工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S24工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が50層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが確認できた。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状の微粒子の元素を分析した。鉄原子のみが存在していることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄を吸着させて熱分解すると、40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが、50層に近い多層構造を形成して、表面を覆うことになる。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、鉄微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、鉄微粒子の大きさと多層構造の厚みとに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、鉄微粒子の性質に応じて、33段落と35段落とに説明した電気導電性と強磁性に基づく新たな性質が付与される。
本実施形態は、多層構造の表層を、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性とを兼備する硬い物質であるマグヘマイトの微粒子で構成し、多層構造の内部を、電気導電性と熱伝導性と強磁性とを兼備する鉄の微粒子で構成し、この多層構造によって部品ないしは基材ないしは素材を覆う実施形態である。
図3に、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造で覆う製造工程を示す。前記の99段落で説明した鉄微粒子の析出と同様に、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄(II)を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる鉄微粒子とマグヘマイト微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄(II)の分散濃度を決めて分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄の分散濃度が4重量%、ナフテン酸鉄(II)の分散濃度が8重量%としてn−ブタノールに分散し、分散液を重量比で1対1の割合で混合した(S30工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落で説明した実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S31工程)。次に、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化させる(S32工程)。さらに、容器を大気雰囲気の260℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄を熱分解する(S33工程)。この後、大気雰囲気で2段階の焼成を行う。焼成炉の温度を260℃から10℃/min.の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に10分間保持する。この際にナフテン酸鉄(II)が熱分解する(S34工程)。この後、焼成炉の温度を300℃から1℃/min.の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃に30分間放置する。この際にナフテン酸鉄(II)の熱分解で生成された酸化鉄(II)がマグヘマイトに酸化される(S35工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S36工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が60層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。多層構造の上層の40層に近い層は濃淡が認められたが、多層構造の下層の20層に近い層は濃淡が認められなかった。さらに、試料断面の特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、多層構造を構成する元素を分析した。多層構造の下層は鉄原子のみが存在していることが確認できた。これに対し、多層構造の上層は鉄原子と酸素原子の双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状微粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、多層構造の上層に形成された粒状微粒子が酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を4重量%とし、ナフテン酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を8重量%として、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄とを吸着させ、この後、熱処理すると、鉄微粒子が20層に近い層を形成して析出し、さらに、鉄微粒子からなる層の表面にマグヘマイト微粒子が40層に近い層を形成して析出する。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、表層のマグネタイト微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、マグネタイト微粒子の大きさと多層構造の厚みとに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、マグネタイト微粒子の絶縁性に応じて、37段落と39段落とに説明した絶縁化された磁性粉が得られ、また、マグネタイト微粒子の硬さによって、43段落と45段落に説明した耐摩耗性が得られる。なお、部品ないしは基材を着磁機にかけて着磁されば、マグヘマイト微粒子どうしの磁気吸着力と鉄微粒子どうしの磁気吸着力、およびマグヘマイト微粒子と鉄微粒子との磁気吸引力が著しく増大し、マグヘマイト微粒子が多層構造から剥がれにくくなる。
図3に、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造で覆う製造工程を示す。前記の99段落で説明した鉄微粒子の析出と同様に、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄(II)を溶剤に分散させた分散濃度に応じて、鉄微粒子とマグヘマイト微粒子の多層構造の厚みが決まる。このため、最初に、析出させる鉄微粒子とマグヘマイト微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄(II)の分散濃度を決めて分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄の分散濃度が4重量%、ナフテン酸鉄(II)の分散濃度が8重量%としてn−ブタノールに分散し、分散液を重量比で1対1の割合で混合した(S30工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落で説明した実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S31工程)。次に、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化させる(S32工程)。さらに、容器を大気雰囲気の260℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、オクチル酸鉄を熱分解する(S33工程)。この後、大気雰囲気で2段階の焼成を行う。焼成炉の温度を260℃から10℃/min.の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に10分間保持する。この際にナフテン酸鉄(II)が熱分解する(S34工程)。この後、焼成炉の温度を300℃から1℃/min.の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃に30分間放置する。この際にナフテン酸鉄(II)の熱分解で生成された酸化鉄(II)がマグヘマイトに酸化される(S35工程)。容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)を取り出す(S36工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が60層に近い多層構造が形成されていることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。多層構造の上層の40層に近い層は濃淡が認められたが、多層構造の下層の20層に近い層は濃淡が認められなかった。さらに、試料断面の特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、多層構造を構成する元素を分析した。多層構造の下層は鉄原子のみが存在していることが確認できた。これに対し、多層構造の上層は鉄原子と酸素原子の双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄からなる粒状微粒子であることが分かった。さらに、極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果から、多層構造の上層に形成された粒状微粒子が酸化鉄(III)のγ相であるマグヘマイトγ−Fe2O3であることが確認できた。
これらの結果から、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を4重量%とし、ナフテン酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を8重量%として、オクチル酸鉄とナフテン酸鉄とを吸着させ、この後、熱処理すると、鉄微粒子が20層に近い層を形成して析出し、さらに、鉄微粒子からなる層の表面にマグヘマイト微粒子が40層に近い層を形成して析出する。これによって、部品ないしは基材ないしは素材に、表層のマグネタイト微粒子の大きさに基づいて、17段落と19段落とに説明した撥水性と、21段落と23段落とに説明した潤滑性とが、また、マグネタイト微粒子の大きさと多層構造の厚みとに応じて、25段落と27段落とに説明した光学的性質が、さらに、マグネタイト微粒子の絶縁性に応じて、37段落と39段落とに説明した絶縁化された磁性粉が得られ、また、マグネタイト微粒子の硬さによって、43段落と45段落に説明した耐摩耗性が得られる。なお、部品ないしは基材を着磁機にかけて着磁されば、マグヘマイト微粒子どうしの磁気吸着力と鉄微粒子どうしの磁気吸着力、およびマグヘマイト微粒子と鉄微粒子との磁気吸引力が著しく増大し、マグヘマイト微粒子が多層構造から剥がれにくくなる。
本実施形態は、47段落と49段落で説明した部品ないしは基材ないしは素材の表面に、新たに触媒作用を付与する実施形態である。本実施形態における部品ないしは基材ないしは素材を覆う多層構造は、第一に表層を1層ないしは2層の微粒子からなる極薄い層とし、第二にこの表層の大部分を白金微粒子で構成し、第三に表層の一部分に鉄微粒子を残存させ、第四に多層構造の大部分を鉄微粒子の集まりで構成する4つの特徴を持つ。これによって、極薄い表層は、第一に大部分を占める白金微粒子によって触媒作用を発揮し、第二に表層の一部を占める鉄微粒子の作用からなる2つの作用を兼備する。つまり、白金は一酸化炭素と接触すると一酸化炭素を吸着し、白金の表面が一酸化炭素で覆われることで、白金の触媒作用が阻害される失活状態になる。いっぽう、鉄は一酸化炭素と反応して、遷移金属錯体の一種であるペンタカルボニルFe(CO)5を形成する。従って、多層構造の表層に鉄を残すことで、鉄が一酸化炭素と反応し、白金が一酸化炭素を吸着するのを防ぐ。また、白金微粒子は多層構造の表面に析出するため、白金の触媒効率が上がる。さらに、白金微の析出量が極微量で済むため、高価な白金の原料の使用量がわずかで済む。また、ペンタカルボニルFe(CO)5は沸点が103℃であるため、部品ないしは基材ないしは素材を、定期的に103℃以上の温度に昇温する、ないしは、定期的に多層構造を形成する鉄微粒子に電流を流し、103℃以上の温度に昇温することで、ペンタカルボニルが気化して鉄微粒子がリフレッシュできる。
図4に、鉄微粒子と白金微粒子とからなる多層構造で覆う製造工程を示す。鉄の原料のオクチル酸と、白金の原料のヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム[NH4]2[PtCl6](試薬1級品)とを用意する。なお、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム[NH4]2[PtCl6]は、200℃で水素ガスやアンモニアガスなどの還元雰囲気で熱処理すると、白金に還元される金属錯体である。最初に、析出させる鉄微粒子と白金微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄とヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムの分散濃度を決めて分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄のメタノール分散液における鉄の重量割合が2重量%の割合になるように、オクチル酸鉄をメタノールに分散した(S40工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落の実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S41工程)。さらに、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S42工程)。この後、容器を260℃の熱処理炉に1分間入れてオクチル酸鉄を熱分解する(S43工程)。次に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを、メタノール分散液における白金の重量割合が0.05重量%になるようにメタノールに分散する(S44工程)。さらに、試料が存在する容器に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムのメクノール分散液を充填して分散液を攪拌する(S45工程)。次に、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S46工程)。この後、アンモニアガスが供給される200℃の熱処理炉に1分間入れ、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを還元する(S47工程)。最後に、容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)の集まりを取り出す(S48工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が40層に近い多層構造を形成していることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。多層構造には濃淡が認められなかった。さらに、試料断面の特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、多層構造を構成する元素を分析した。多層構造の最表層の1層ないし2層は、白金原子のみが存在し、多層構造の下層の40層に近い層は、鉄原子のみが存在することが確認できた。
これらの結果から、オクチル酸鉄のメタノール分散液における鉄の重量割合を2重量%とし、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムのメタノール分散液における白金の重量割合を0.05重量%とし、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄を吸着させて熱処理し、更に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを吸着させて還元処理をすると、40層からなる鉄微粒子の表面に、1/50近い体積で白金微粒子が析出する。このため、鉄微粒子の一部は白金が析出されず鉄が残る。これによって、微粒子の集まりからなる多層構造は、白金による触媒作用と、鉄がもたらす作用とを兼備し、部品ないしは基材ないしは素材に、47段落で説明した触媒作用が付与される。また、基材として、細線をメッシュ状に編んだスクリーンメッシュやデミスターなどからなるメッシュや、有機高分子材料からなる多孔質膜や、セラミックスハニカムフィルタを用いれば、49段落で説明した触媒作用が、メッシュや多孔質膜やハニカムフィルタの隔壁の表面にもたらされる。
図4に、鉄微粒子と白金微粒子とからなる多層構造で覆う製造工程を示す。鉄の原料のオクチル酸と、白金の原料のヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム[NH4]2[PtCl6](試薬1級品)とを用意する。なお、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム[NH4]2[PtCl6]は、200℃で水素ガスやアンモニアガスなどの還元雰囲気で熱処理すると、白金に還元される金属錯体である。最初に、析出させる鉄微粒子と白金微粒子の層の厚みの観点から、オクチル酸鉄とヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムの分散濃度を決めて分散液を作成する。本実施形態では、オクチル酸鉄のメタノール分散液における鉄の重量割合が2重量%の割合になるように、オクチル酸鉄をメタノールに分散した(S40工程)。この分散液を容器に充填し、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬する。本実施形態では、部品ないしは基材ないしは素材を代表する試料として、前記の98段落の実施形態と同様に、10mm×10mm×1mmの大きさからなるガラスの集まりを浸漬した(S41工程)。さらに、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S42工程)。この後、容器を260℃の熱処理炉に1分間入れてオクチル酸鉄を熱分解する(S43工程)。次に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを、メタノール分散液における白金の重量割合が0.05重量%になるようにメタノールに分散する(S44工程)。さらに、試料が存在する容器に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムのメクノール分散液を充填して分散液を攪拌する(S45工程)。次に、容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S46工程)。この後、アンモニアガスが供給される200℃の熱処理炉に1分間入れ、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを還元する(S47工程)。最後に、容器から部品ないしは基材ないしは素材(本実施形態では試料)の集まりを取り出す(S48工程)。
製作した試料の観察と分析とを、前記の98段落と同様に電子顕微鏡を用いて行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料表面の凹凸を観察した。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が、ランダムに表面全体に形成されていることが確認できた。更に、試料断面の観察から、粒状の微粒子が40層に近い多層構造を形成していることが分かった。次に、試料断面の反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。多層構造には濃淡が認められなかった。さらに、試料断面の特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、多層構造を構成する元素を分析した。多層構造の最表層の1層ないし2層は、白金原子のみが存在し、多層構造の下層の40層に近い層は、鉄原子のみが存在することが確認できた。
これらの結果から、オクチル酸鉄のメタノール分散液における鉄の重量割合を2重量%とし、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムのメタノール分散液における白金の重量割合を0.05重量%とし、部品ないしは基材ないしは素材に、オクチル酸鉄を吸着させて熱処理し、更に、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウムを吸着させて還元処理をすると、40層からなる鉄微粒子の表面に、1/50近い体積で白金微粒子が析出する。このため、鉄微粒子の一部は白金が析出されず鉄が残る。これによって、微粒子の集まりからなる多層構造は、白金による触媒作用と、鉄がもたらす作用とを兼備し、部品ないしは基材ないしは素材に、47段落で説明した触媒作用が付与される。また、基材として、細線をメッシュ状に編んだスクリーンメッシュやデミスターなどからなるメッシュや、有機高分子材料からなる多孔質膜や、セラミックスハニカムフィルタを用いれば、49段落で説明した触媒作用が、メッシュや多孔質膜やハニカムフィルタの隔壁の表面にもたらされる。
本実施例は、自動車用ウィンドウガラス、フロントガラス、サイドガラスおよび住居用ウィンドウガラスなどのガラスに対し、撥水性と反射防止性と紫外線を除去する性質を付与する実施例である。本実施例では、ガラスを覆う多層構造を、表層をマグヘマイト微粒子で構成し、内部を鉄微粒子で構成する。つまり、マグヘマイトは安定した強磁性の酸化物であるため、大気雰囲気に長期に晒されても、酸化反応や水酸化物が生成される反応が起こらず劣化しない。また、内部の鉄微粒子の酸化を防止する。そして、マグヘマイト微粒子同士、鉄微粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との間には、磁気吸引力が作用し、微粒子の集まりからなる多層構造が維持される。
鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造でガラスを覆う方法は、前記の100段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸鉄を分散濃度が4重量%になるようにn‐ブタノールに分散する。さらに、ナフテン酸鉄を分散濃度が1重量%となるようにn‐ブタノールに分散する。このオクチル酸鉄のメタノール分散液とナフテン酸鉄のメタノール分散液とを容器に充填し、攪拌した後にガラスを浸漬する。次に、容器を120℃に昇温してn‐ブタノールを気化させ、気化したn‐ブタノールは回収機で回収する。さらに、容器を260℃の熱処理炉に1分間入れて、ガラスの表面に吸着したオクチル酸鉄を熱分解し、ガラスの表面に鉄微粒子からなる多層構造を形成させる。この後、焼成炉の温度を260℃から10℃/min.の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に10分間保持する。この際、ナフテン酸鉄(II)がナフテン酸と酸化鉄(II)FeOに熱分解し、酸化鉄(II)FeOは先行して析出した鉄微粒子の表面に析出する。さらに、焼成炉の温度を300℃から1℃/min.の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃に30分間保持する。この際、酸化鉄(II)FeOがマグヘマイトγ−Fe2O3に酸化され、マグヘマイトγ−Fe2O3微粒子が、鉄微粒子からなる多層構造の表面に磁気吸着して多層構造の表層を形成する。この後、ガラスを着磁機にかけて着磁し、マグヘマイト微粒子同士と鉄微粒子同士の磁気吸着力と、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との間の磁気吸引力を増大させた。
本実施例では、オクチル酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を4重量%とし、ナフテン酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を1重量%とした。鉄微粒子の多くはガラス表面の凹凸を埋め、わずかの鉄微粒子が凹凸の表面に析出する。鉄微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合するが、ガラス表面の凹凸に入り込んだ鉄微粒子は、アンカー効果でガラス表面に結合する。また、マグヘマイト微粒子は、この鉄の層の上にわずかの層を形成し、鉄微粒子と磁気吸着する。前記した電子顕微鏡によって、ガラスを分析した結果、ガラスの表面は、40nmから60nmの微粒子の大きさに基づく凹凸が形成された。これによって、ガラス表面での光の乱反射がなくなり、また、撥水性と防汚性とが付与される。さらに、ガラス表面の凹凸を除くと、200nmから300nmの厚みからなるマグヘマイト微粒子の層形成されていたため、紫外線がガラスを透過することが防げる。
以上に説明したように、多層構造の表層をマグヘマイト微粒子で構成し、多層構造の内部を鉄微粒子で構成し、この多層構造でガラスを覆うことで、ガラスに撥水性と反射防止性と紫外線を除去する性質を付与させた。この多層構造で覆う部品ないしは基材はガラスに限定されることはなく、例えば、23段落で説明した摺動部品ないしは被摺動部品を覆えば、摺動部品ないしは被摺動部品の表面に、潤滑性と耐摩耗性とが同時に付与される。また、45段落で説明したサーマルヘッドを覆えば、サーマルヘッドに耐摩耗性のみならず、撥水性と潤滑性と熱応答性とが同時に付与され、磁気ヘッドを覆えば、耐摩耗性のみならず潤滑性が付与され、併せて高速磁気記録が可能になる。このように、多層構造を構成する物質と層の厚みとを、部品ないしは基材に新たに付与する性質に応じて決めればよい。
鉄微粒子とマグヘマイト微粒子とからなる多層構造でガラスを覆う方法は、前記の100段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸鉄を分散濃度が4重量%になるようにn‐ブタノールに分散する。さらに、ナフテン酸鉄を分散濃度が1重量%となるようにn‐ブタノールに分散する。このオクチル酸鉄のメタノール分散液とナフテン酸鉄のメタノール分散液とを容器に充填し、攪拌した後にガラスを浸漬する。次に、容器を120℃に昇温してn‐ブタノールを気化させ、気化したn‐ブタノールは回収機で回収する。さらに、容器を260℃の熱処理炉に1分間入れて、ガラスの表面に吸着したオクチル酸鉄を熱分解し、ガラスの表面に鉄微粒子からなる多層構造を形成させる。この後、焼成炉の温度を260℃から10℃/min.の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に10分間保持する。この際、ナフテン酸鉄(II)がナフテン酸と酸化鉄(II)FeOに熱分解し、酸化鉄(II)FeOは先行して析出した鉄微粒子の表面に析出する。さらに、焼成炉の温度を300℃から1℃/min.の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃に30分間保持する。この際、酸化鉄(II)FeOがマグヘマイトγ−Fe2O3に酸化され、マグヘマイトγ−Fe2O3微粒子が、鉄微粒子からなる多層構造の表面に磁気吸着して多層構造の表層を形成する。この後、ガラスを着磁機にかけて着磁し、マグヘマイト微粒子同士と鉄微粒子同士の磁気吸着力と、マグヘマイト微粒子と鉄微粒子との間の磁気吸引力を増大させた。
本実施例では、オクチル酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を4重量%とし、ナフテン酸鉄のn‐ブタノールにおける分散濃度を1重量%とした。鉄微粒子の多くはガラス表面の凹凸を埋め、わずかの鉄微粒子が凹凸の表面に析出する。鉄微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合するが、ガラス表面の凹凸に入り込んだ鉄微粒子は、アンカー効果でガラス表面に結合する。また、マグヘマイト微粒子は、この鉄の層の上にわずかの層を形成し、鉄微粒子と磁気吸着する。前記した電子顕微鏡によって、ガラスを分析した結果、ガラスの表面は、40nmから60nmの微粒子の大きさに基づく凹凸が形成された。これによって、ガラス表面での光の乱反射がなくなり、また、撥水性と防汚性とが付与される。さらに、ガラス表面の凹凸を除くと、200nmから300nmの厚みからなるマグヘマイト微粒子の層形成されていたため、紫外線がガラスを透過することが防げる。
以上に説明したように、多層構造の表層をマグヘマイト微粒子で構成し、多層構造の内部を鉄微粒子で構成し、この多層構造でガラスを覆うことで、ガラスに撥水性と反射防止性と紫外線を除去する性質を付与させた。この多層構造で覆う部品ないしは基材はガラスに限定されることはなく、例えば、23段落で説明した摺動部品ないしは被摺動部品を覆えば、摺動部品ないしは被摺動部品の表面に、潤滑性と耐摩耗性とが同時に付与される。また、45段落で説明したサーマルヘッドを覆えば、サーマルヘッドに耐摩耗性のみならず、撥水性と潤滑性と熱応答性とが同時に付与され、磁気ヘッドを覆えば、耐摩耗性のみならず潤滑性が付与され、併せて高速磁気記録が可能になる。このように、多層構造を構成する物質と層の厚みとを、部品ないしは基材に新たに付与する性質に応じて決めればよい。
本実施例は、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材に、帯電防止と電磁波遮蔽と乱反射防止性と視覚反射率が低い性質を付与する実施例である。
本実施例では、透明基材を銅微粒子の集まりで覆う構成とした。
銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸銅を分散濃度が4重量%になるようにメタノールに分散する。このオクチル酸銅のメタノール分散液を容器に充填し、透明基材のサンプルを浸漬する。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収機で回収する。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間入れて、サンプルの表面に吸着したオクチル酸銅を熱分解する。電子顕微鏡によるサンプルを分析した結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子の集まりが、20層近い多層構造を形成してサンプルを覆った。
本実施例では、オクチル酸銅のメタノールにおける分散濃度を4重量%とした。銅微粒子の多くは透明基材の表面の凹凸を埋め、わずかの層からなる銅微粒子が凹凸の表面に析出する。銅微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合するが、透明基材の表面の凹凸に入り込んだ銅微粒子は、物理的なアンカー効果で透明基材の表面に結合する。この結果、透明基材の表面は40nmから60nmの大きさからなる平坦度が形成され、光の乱反射がなくなる。また、撥水性と防汚性とが付与される。さらに、数層からなる銅微粒子が透明基材を覆うため、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とを発揮し、視覚反射率も低下する。
なお、本実施例は、銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆い、透明基材に帯電防止機能と電磁波遮蔽機能と乱反射の防止と視覚反射率の低下を付与させた。銅微粒子からなる多層構造で覆う部品ないしは基材は透明基材に限定されることはなく、例えば、電気絶縁性で熱伝導性に劣るセラミックスやガラスからなる部品ないしは基材を、銅微粒子で覆えば、電気導電性と熱伝導性とが、セラミックスやガラスに付与させることができる。さらに、撥水性と潤滑性とを表面に付与することも可能である。つまり、多層構造を構成する物質と層の厚みとを、部品ないしは基材に新たに付与する性質に応じて決めればよい。
本実施例では、透明基材を銅微粒子の集まりで覆う構成とした。
銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸銅を分散濃度が4重量%になるようにメタノールに分散する。このオクチル酸銅のメタノール分散液を容器に充填し、透明基材のサンプルを浸漬する。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、気化したメタノールは回収機で回収する。さらに、容器を290℃の熱処理炉に1分間入れて、サンプルの表面に吸着したオクチル酸銅を熱分解する。電子顕微鏡によるサンプルを分析した結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子の集まりが、20層近い多層構造を形成してサンプルを覆った。
本実施例では、オクチル酸銅のメタノールにおける分散濃度を4重量%とした。銅微粒子の多くは透明基材の表面の凹凸を埋め、わずかの層からなる銅微粒子が凹凸の表面に析出する。銅微粒子は、互いが接触する部位で金属結合して接合するが、透明基材の表面の凹凸に入り込んだ銅微粒子は、物理的なアンカー効果で透明基材の表面に結合する。この結果、透明基材の表面は40nmから60nmの大きさからなる平坦度が形成され、光の乱反射がなくなる。また、撥水性と防汚性とが付与される。さらに、数層からなる銅微粒子が透明基材を覆うため、帯電防止機能と電磁波遮蔽機能とを発揮し、視覚反射率も低下する。
なお、本実施例は、銅微粒子からなる多層構造で透明基材を覆い、透明基材に帯電防止機能と電磁波遮蔽機能と乱反射の防止と視覚反射率の低下を付与させた。銅微粒子からなる多層構造で覆う部品ないしは基材は透明基材に限定されることはなく、例えば、電気絶縁性で熱伝導性に劣るセラミックスやガラスからなる部品ないしは基材を、銅微粒子で覆えば、電気導電性と熱伝導性とが、セラミックスやガラスに付与させることができる。さらに、撥水性と潤滑性とを表面に付与することも可能である。つまり、多層構造を構成する物質と層の厚みとを、部品ないしは基材に新たに付与する性質に応じて決めればよい。
本実施例は、天然繊維からなる糸を鉄微粒子の集まりからなる多層構造で覆う実施例である。天然性は耐熱性が高く有機溶剤と反応しない。例えば、木綿繊維の発火点は410℃である。鉄微粒子で覆われた木綿糸を、例えば、ソックスや下着として編めば、鉄微粒子が酸化反応で発熱し、発熱するソックスや下着となる。さらに、木綿糸の全体が鉄微粒子で覆われているため、熱伝導性に優れたソックスや下着になる。また、鉄微粒子は電気伝導性を持つため、ソックスや下着が静電気除去の機能も発揮する。いっぽう、鉄微粒子で覆われた木綿糸を着磁機に通せば、木綿糸を覆う鉄微粒子は、互いに金属結合で接合した鉄微粒子どうしが強固に磁気吸着するため、洗濯によって鉄微粒子が編み物から剥がれ落ちず、長期にわたって発熱性、熱伝導性および静電気除去の機能が維持できる。
鉄微粒子からなる多層構造で木綿糸を覆う方法法は、前記の99段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸鉄の分散濃度が2重量%になるようにメタノールに分散した分散液を、予め用意する。木綿糸を、この分散液に浸漬し、さらに、65℃の熱処理炉を通過させてメタノールを気化させ、さらに、260℃の熱処理炉を1分間で通過させ、最後に着磁機を通過させ、この後、木綿糸を巻き上げた。電子顕微鏡で木綿糸を分析した結果、木綿糸の表面を40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが10層に近い多層構造で覆った。こうして製造した木綿糸を織物、ないしは編み物の原料として用いることで、前記した発熱性、熱伝導性および静電気除去の機能を新たに付与することができる。
本実施例は、木綿糸を鉄微粒子の多層構造で覆い、この木綿糸を用いて編み物を製造する実施例である。いっぽう、鉄微粒子の多層構造で覆われる繊維ないしは繊維の集合体は、木綿糸に限定されることはなく、オクチル酸鉄の熱分解温度である260℃に対する耐熱性を持てば、どのような繊維ないしは繊維の集合体を鉄微粒子の集まりで覆うことができる。これによって、鉄微粒子が持つ性質に基づく新たな性質が、繊維ないしは繊維の集合体にもたらされる。さらに、銅微粒子の集まりによって繊維ないしは繊維の集合体を覆った場合も、この繊維ないしは繊維の集合体からなる織物や編み物は、織物ないしは編み物は電気導電性と静電気除去と熱導電性を新たに持つ。
鉄微粒子からなる多層構造で木綿糸を覆う方法法は、前記の99段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸鉄の分散濃度が2重量%になるようにメタノールに分散した分散液を、予め用意する。木綿糸を、この分散液に浸漬し、さらに、65℃の熱処理炉を通過させてメタノールを気化させ、さらに、260℃の熱処理炉を1分間で通過させ、最後に着磁機を通過させ、この後、木綿糸を巻き上げた。電子顕微鏡で木綿糸を分析した結果、木綿糸の表面を40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが10層に近い多層構造で覆った。こうして製造した木綿糸を織物、ないしは編み物の原料として用いることで、前記した発熱性、熱伝導性および静電気除去の機能を新たに付与することができる。
本実施例は、木綿糸を鉄微粒子の多層構造で覆い、この木綿糸を用いて編み物を製造する実施例である。いっぽう、鉄微粒子の多層構造で覆われる繊維ないしは繊維の集合体は、木綿糸に限定されることはなく、オクチル酸鉄の熱分解温度である260℃に対する耐熱性を持てば、どのような繊維ないしは繊維の集合体を鉄微粒子の集まりで覆うことができる。これによって、鉄微粒子が持つ性質に基づく新たな性質が、繊維ないしは繊維の集合体にもたらされる。さらに、銅微粒子の集まりによって繊維ないしは繊維の集合体を覆った場合も、この繊維ないしは繊維の集合体からなる織物や編み物は、織物ないしは編み物は電気導電性と静電気除去と熱導電性を新たに持つ。
本実施例は、アトマイズ純鉄粉、還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉のいずれかの磁性粉をマグヘマイト微粒子で覆って絶縁化し、絶縁化された磁性粉の集まりを容器に充填し、さらに、磁性粉の集まりを圧縮して圧粉磁心を制作した実施例である。
圧粉磁心の製造方法を、図5に示す製造工程に基づいて説明する。前記の100段落で説明したナフテン酸鉄(II)を、マグヘマイトの原料として用いる。磁性粉は、(株)神戸製鋼所が製造するアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NHを用いた。アトメル300NHは、マンガン、リン、イオウの含有量が極めて微量のアトマイズ純鉄粉であり、純度が高いため磁気特性に優れ、粉の形状から圧縮性に優れる。アトメル300NHをマグヘマイト微粒子で覆う製造方法は、100段落と102段落で説明した製造方法に準ずる。最初に、ナフテン酸鉄(II)をn‐ブタノールに4重量%で分散し(S50工程)、この分散液をアトメル300NHの集まりを浸漬し(S51工程)、n−ブタノールを気化させてアトメル300NHにナフテン酸鉄(II)を吸着させ(S52工程)、この後、ナフテン酸鉄(II)を熱分解させ(S53工程)、更にナフテン酸鉄(II)の熱分解で生成された酸化鉄(II)をマグヘマイトに酸化した(S54工程)。この後、マグヘマイト微粒子で絶縁化したアトメル300NHを金型に充填し(S55工程)、980MPaの成形圧を加えて圧縮し、圧縮成形体を製作した(S56工程)。さらに、窒素雰囲気からなる700℃の熱処理炉に圧縮成形体を60分間放置し、大気中に取り出して徐冷して焼鈍を行った(S57工程)。
次に、前記した条件で製作した圧粉磁心について、圧粉体密度、比抵抗、磁束密度、鉄損を測定した。圧粉体密度は、試料の寸法と重量を測定し、これらの値から算出した。比抵抗は四端子法で測定した。磁束密度は、リング試料にφ0.6mmのホルマル被覆導線を1次側:100巻、2次側:20巻したコイルを用い、磁界の大きさが10kA/mでの磁束密度B10kで評価した。鉄損は、リング試料にφ0.6mmのホルマル被覆導線を1次側:40巻、2次側:40巻したコイルを用いて、周波数:200Hz〜10kHz、磁束密度Bm=0.2Tの条件で、(株)住友金属テクノロジーの磁気特性測定装置を用いて測定した。なお鉄損の数値は、励磁周波数5kHz、励磁磁束密度0.2Tの値で代表した。圧縮体密度は7.58kg/m3であり、比抵抗は58μΩmであり、磁束密度は1.68Tであり、鉄損は45W/kgであった。
これらの結果から次のことが分かった。第一に、アトマイズ純鉄粉の密度は鉄の密度の7.87kg/m3に略等しく、圧粉磁心の密度がアトマイズ純鉄粉の密度に近いため、マグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層がアトマイズ純鉄粉の塑性変形を妨げず、圧粉磁心の高密度化に寄与している。第二に、アトマイズ純鉄粉の比抵抗は鉄の比抵抗の0.1μΩmに略等しく、圧粉磁心の比抵抗がアトマイズ純鉄粉の比抵抗の600倍に近いため、アトマイズ純鉄粉の表面に磁気吸着したマグヘマイトの粒状微粒子が980MPaの加圧力によっても剥離せず、また、破壊されず、アトマイズ純鉄粉を確実に絶縁化している。これによって、鉄損が5kHzの高周波数でも40W/kg台の小さな値に収まっている。第三に、圧粉磁心の比抵抗の大きさから、700℃の焼鈍によってもマグヘマイトから相転移したヘマタイトが変質せず、アトマイズ純鉄粉の表面を絶縁化している。これによって、鉄損が5kHzの高周波数でも40W/kg台の小さな値に収まっている。第四に、アトマイズ純鉄粉の飽和磁束密度は鉄の飽和磁束密度の2.2Tに略等しく、圧粉磁心の飽和磁束密度の大きさから、マグヘマイトから相転移したヘマタイト微粒子が極薄い絶縁膜として作用し、アトマイズ純鉄粉の磁束密度の低下を抑制し、これによって、圧粉磁心が高密度化している。
なお、マグヘマイトの微粒子によって絶縁化された磁性粉を工業製品に適応する事例は、圧粉磁心に限定されることはない。例えば、硬磁性の性質を持つフェライト磁石粒子、アルニコ磁石粒子、希土類磁石粒子などの磁石粒子を、前記した製造方法に準じてマグヘマイト微粒子で覆い、磁石粒子の集まりを金型に充填して圧縮成形すれば、31段落で説明したボンド磁石が製造できる。なお、S54工程において磁石粒子が400℃の温度に晒されるが、この熱処理によって、磁石粒子の磁気特性が不可逆変化することはない。
圧粉磁心の製造方法を、図5に示す製造工程に基づいて説明する。前記の100段落で説明したナフテン酸鉄(II)を、マグヘマイトの原料として用いる。磁性粉は、(株)神戸製鋼所が製造するアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NHを用いた。アトメル300NHは、マンガン、リン、イオウの含有量が極めて微量のアトマイズ純鉄粉であり、純度が高いため磁気特性に優れ、粉の形状から圧縮性に優れる。アトメル300NHをマグヘマイト微粒子で覆う製造方法は、100段落と102段落で説明した製造方法に準ずる。最初に、ナフテン酸鉄(II)をn‐ブタノールに4重量%で分散し(S50工程)、この分散液をアトメル300NHの集まりを浸漬し(S51工程)、n−ブタノールを気化させてアトメル300NHにナフテン酸鉄(II)を吸着させ(S52工程)、この後、ナフテン酸鉄(II)を熱分解させ(S53工程)、更にナフテン酸鉄(II)の熱分解で生成された酸化鉄(II)をマグヘマイトに酸化した(S54工程)。この後、マグヘマイト微粒子で絶縁化したアトメル300NHを金型に充填し(S55工程)、980MPaの成形圧を加えて圧縮し、圧縮成形体を製作した(S56工程)。さらに、窒素雰囲気からなる700℃の熱処理炉に圧縮成形体を60分間放置し、大気中に取り出して徐冷して焼鈍を行った(S57工程)。
次に、前記した条件で製作した圧粉磁心について、圧粉体密度、比抵抗、磁束密度、鉄損を測定した。圧粉体密度は、試料の寸法と重量を測定し、これらの値から算出した。比抵抗は四端子法で測定した。磁束密度は、リング試料にφ0.6mmのホルマル被覆導線を1次側:100巻、2次側:20巻したコイルを用い、磁界の大きさが10kA/mでの磁束密度B10kで評価した。鉄損は、リング試料にφ0.6mmのホルマル被覆導線を1次側:40巻、2次側:40巻したコイルを用いて、周波数:200Hz〜10kHz、磁束密度Bm=0.2Tの条件で、(株)住友金属テクノロジーの磁気特性測定装置を用いて測定した。なお鉄損の数値は、励磁周波数5kHz、励磁磁束密度0.2Tの値で代表した。圧縮体密度は7.58kg/m3であり、比抵抗は58μΩmであり、磁束密度は1.68Tであり、鉄損は45W/kgであった。
これらの結果から次のことが分かった。第一に、アトマイズ純鉄粉の密度は鉄の密度の7.87kg/m3に略等しく、圧粉磁心の密度がアトマイズ純鉄粉の密度に近いため、マグヘマイトの粒状微粒子の集まりからなる絶縁層がアトマイズ純鉄粉の塑性変形を妨げず、圧粉磁心の高密度化に寄与している。第二に、アトマイズ純鉄粉の比抵抗は鉄の比抵抗の0.1μΩmに略等しく、圧粉磁心の比抵抗がアトマイズ純鉄粉の比抵抗の600倍に近いため、アトマイズ純鉄粉の表面に磁気吸着したマグヘマイトの粒状微粒子が980MPaの加圧力によっても剥離せず、また、破壊されず、アトマイズ純鉄粉を確実に絶縁化している。これによって、鉄損が5kHzの高周波数でも40W/kg台の小さな値に収まっている。第三に、圧粉磁心の比抵抗の大きさから、700℃の焼鈍によってもマグヘマイトから相転移したヘマタイトが変質せず、アトマイズ純鉄粉の表面を絶縁化している。これによって、鉄損が5kHzの高周波数でも40W/kg台の小さな値に収まっている。第四に、アトマイズ純鉄粉の飽和磁束密度は鉄の飽和磁束密度の2.2Tに略等しく、圧粉磁心の飽和磁束密度の大きさから、マグヘマイトから相転移したヘマタイト微粒子が極薄い絶縁膜として作用し、アトマイズ純鉄粉の磁束密度の低下を抑制し、これによって、圧粉磁心が高密度化している。
なお、マグヘマイトの微粒子によって絶縁化された磁性粉を工業製品に適応する事例は、圧粉磁心に限定されることはない。例えば、硬磁性の性質を持つフェライト磁石粒子、アルニコ磁石粒子、希土類磁石粒子などの磁石粒子を、前記した製造方法に準じてマグヘマイト微粒子で覆い、磁石粒子の集まりを金型に充填して圧縮成形すれば、31段落で説明したボンド磁石が製造できる。なお、S54工程において磁石粒子が400℃の温度に晒されるが、この熱処理によって、磁石粒子の磁気特性が不可逆変化することはない。
本実施例は、大きな複素透磁率を持つ3種類の扁平粉を、強磁性で扁平粉より硬いマグネタイト微粒子で覆い、これらの扁平粉の集まりを多段冷間圧延ロールによってシート状に圧縮成形し、電波吸収シートとして適応できる成形体を製造した実施例である。
電波吸収シートの製造方法を、図6に示す製造工程に基づいて説明する。鉄−50%ニッケルからなる合金粉をボールミルで1時間かけて扁平処理した扁平粉と、鉄−3%シリコンからなる合金粉をボールミルで1時間かけて扁平処理した扁平粉と、鉄−6%シリコンからなる合金粉をボールミルで2時間かけて扁平処理した扁平粉からなる3種類の扁平粉を用意し(S60工程)、重量比で2対2対3になるように秤量して混合した(S61工程)。次に、前記の100段落と102段落で説明した製造方法に準じて、ナフテン酸鉄(II)をn‐ブタノールに4重量%で分散し(S62工程)、この分散液に3種類の扁平粉の混合物を投入して30分間攪拌した(S68工程)。さらに、n−ブタノールを気化させ、扁平粉にナフテン酸鉄(II)を吸着させた(S64工程)。この後、300℃に10分間放置してナフテン酸鉄(II)を熱分解した(S65工程)。更に、300℃から1℃/min.の昇温速度で350℃まで昇温し、350℃に30分間保持し、酸化鉄(II)をマグネタイトに酸化した(S66工程)。扁平粉の集まりを取り出し、多段冷間圧延ロールに加振させて供給し、厚さが200μmの圧延シートを作成した(S67工程)。制作した圧延シートから切り出した試料を、ネットワークアナライザーにより電磁波吸収特性を測定した結果、2GHzから8GHzの周波数範囲にわたる電磁波を吸収する性質を持った。
つまり、3種類の扁平粉の中で、相対的に柔らかい鉄−50%ニッケル合金粉は、扁平処理によって相対的にアスペクト比が大きく、平均粒径も大きい扁平粉になる。このため、相対的に大きな複素透磁率を持ち、電磁波吸収能力は高いが、複素透磁率が大きい値を示す周波数領域が、3種類の扁平粉の中で、相対的に低い周波数の領域になる。これに対し、3種類の扁平粉の中で、相対的に硬い鉄−6%シリコン合金粉は、扁平処理によって相対的にアスペクト比が小さく、平均粒径も小さい扁平粉になる。このため、鉄−50%ニッケルの扁平粉と比較すると、相対的に複素透磁率は小さいが、複素透磁率が大きい値を示す周波数の領域が、3種類の扁平粒子の中で、相対的に高い周波数の領域になる。なお、鉄−3%シリコン合金粉は、硬ささが鉄−50%ニッケル合金粉に近く、扁平処理によってアスペクト比は鉄−50%ニッケル扁平粉に近いアスペクト比を持つが、平均粒径は鉄−6%シリコン扁平粉に近い。このため、鉄−3%シリコン扁平粉は、鉄−50%ニッケル合金粉に近い大きい複素透磁率を持ち、電波吸収能力は高いが、吸収する電磁波の周波数は、鉄−6%シリコン扁平粉に近い。従って、3種類の扁平粉の中で、複素透磁率が相対的に小さく、電波吸収能力が相対的に低い鉄−6%シリコン合金粉の配合比率を高めることで、2GHzから8GHzに及ぶ周波数範囲の電磁波を吸収することができた。
以上に説明したように、アトマイズ法で作成した軟磁性の性質を持つ合金粉は、合金の組成に応じた硬さと磁気特性を持つ。このため、合金粉をボールミルで扁平処理した扁平粉は、合金の組成に応じた形状になる。この結果、扁平粉が示す最大複素透磁率の大きさと、大きな複素透磁率を示す周波数領域は、合金の組成に応じて変わる。従って、吸収する電磁波の周波数範囲が広くなるほど、多くの種類の扁平粉を複素透磁率の大きさに応じた配合割合で混合し、これらの混合物を圧縮成形して、電波吸収シートを製造する必要がある。融解した高分子材料と扁平粉との複合材料を、押し出した後に圧縮成形によって製造する従来の製造方法では、形状が異なる複数種類の扁平粉をシート状に成形するためには、より多くの高分子材料を配合しなければならず、これによって、電波吸収能力が低下する。これに対し本実施例は、強磁性で扁平粉より硬いマグネタイト微粒子で覆われた扁平粉を圧縮するだけであるため、どのような形状や硬さからなる扁平粉であっても、シート状に成形できる。また、扁平粉がシート成形体に占める体積割合は100%に近いため、電波吸収能力は従来の製法のものに比べて格段に高い。
なお、マグネタイト微粒子で覆われた磁性粉の集まりを、圧縮してシート状に成形した成形品を工業製品に適応する事例は、電波吸収シートに限られることはない。磁性粉の硬さや形状によらず、磁性粉の集まりをシート状に成形でき、かつ、成形体に占める磁性粉の体積割合が100%に近いため、成形体が磁性粉の優れた磁気特性を発揮する。このため、磁性粉の磁気特性を活かした様々な工業製品に適応できる。
電波吸収シートの製造方法を、図6に示す製造工程に基づいて説明する。鉄−50%ニッケルからなる合金粉をボールミルで1時間かけて扁平処理した扁平粉と、鉄−3%シリコンからなる合金粉をボールミルで1時間かけて扁平処理した扁平粉と、鉄−6%シリコンからなる合金粉をボールミルで2時間かけて扁平処理した扁平粉からなる3種類の扁平粉を用意し(S60工程)、重量比で2対2対3になるように秤量して混合した(S61工程)。次に、前記の100段落と102段落で説明した製造方法に準じて、ナフテン酸鉄(II)をn‐ブタノールに4重量%で分散し(S62工程)、この分散液に3種類の扁平粉の混合物を投入して30分間攪拌した(S68工程)。さらに、n−ブタノールを気化させ、扁平粉にナフテン酸鉄(II)を吸着させた(S64工程)。この後、300℃に10分間放置してナフテン酸鉄(II)を熱分解した(S65工程)。更に、300℃から1℃/min.の昇温速度で350℃まで昇温し、350℃に30分間保持し、酸化鉄(II)をマグネタイトに酸化した(S66工程)。扁平粉の集まりを取り出し、多段冷間圧延ロールに加振させて供給し、厚さが200μmの圧延シートを作成した(S67工程)。制作した圧延シートから切り出した試料を、ネットワークアナライザーにより電磁波吸収特性を測定した結果、2GHzから8GHzの周波数範囲にわたる電磁波を吸収する性質を持った。
つまり、3種類の扁平粉の中で、相対的に柔らかい鉄−50%ニッケル合金粉は、扁平処理によって相対的にアスペクト比が大きく、平均粒径も大きい扁平粉になる。このため、相対的に大きな複素透磁率を持ち、電磁波吸収能力は高いが、複素透磁率が大きい値を示す周波数領域が、3種類の扁平粉の中で、相対的に低い周波数の領域になる。これに対し、3種類の扁平粉の中で、相対的に硬い鉄−6%シリコン合金粉は、扁平処理によって相対的にアスペクト比が小さく、平均粒径も小さい扁平粉になる。このため、鉄−50%ニッケルの扁平粉と比較すると、相対的に複素透磁率は小さいが、複素透磁率が大きい値を示す周波数の領域が、3種類の扁平粒子の中で、相対的に高い周波数の領域になる。なお、鉄−3%シリコン合金粉は、硬ささが鉄−50%ニッケル合金粉に近く、扁平処理によってアスペクト比は鉄−50%ニッケル扁平粉に近いアスペクト比を持つが、平均粒径は鉄−6%シリコン扁平粉に近い。このため、鉄−3%シリコン扁平粉は、鉄−50%ニッケル合金粉に近い大きい複素透磁率を持ち、電波吸収能力は高いが、吸収する電磁波の周波数は、鉄−6%シリコン扁平粉に近い。従って、3種類の扁平粉の中で、複素透磁率が相対的に小さく、電波吸収能力が相対的に低い鉄−6%シリコン合金粉の配合比率を高めることで、2GHzから8GHzに及ぶ周波数範囲の電磁波を吸収することができた。
以上に説明したように、アトマイズ法で作成した軟磁性の性質を持つ合金粉は、合金の組成に応じた硬さと磁気特性を持つ。このため、合金粉をボールミルで扁平処理した扁平粉は、合金の組成に応じた形状になる。この結果、扁平粉が示す最大複素透磁率の大きさと、大きな複素透磁率を示す周波数領域は、合金の組成に応じて変わる。従って、吸収する電磁波の周波数範囲が広くなるほど、多くの種類の扁平粉を複素透磁率の大きさに応じた配合割合で混合し、これらの混合物を圧縮成形して、電波吸収シートを製造する必要がある。融解した高分子材料と扁平粉との複合材料を、押し出した後に圧縮成形によって製造する従来の製造方法では、形状が異なる複数種類の扁平粉をシート状に成形するためには、より多くの高分子材料を配合しなければならず、これによって、電波吸収能力が低下する。これに対し本実施例は、強磁性で扁平粉より硬いマグネタイト微粒子で覆われた扁平粉を圧縮するだけであるため、どのような形状や硬さからなる扁平粉であっても、シート状に成形できる。また、扁平粉がシート成形体に占める体積割合は100%に近いため、電波吸収能力は従来の製法のものに比べて格段に高い。
なお、マグネタイト微粒子で覆われた磁性粉の集まりを、圧縮してシート状に成形した成形品を工業製品に適応する事例は、電波吸収シートに限られることはない。磁性粉の硬さや形状によらず、磁性粉の集まりをシート状に成形でき、かつ、成形体に占める磁性粉の体積割合が100%に近いため、成形体が磁性粉の優れた磁気特性を発揮する。このため、磁性粉の磁気特性を活かした様々な工業製品に適応できる。
本実施例は、セラミックス板と2枚の金属板の表面を、展性に優れ、電気導電性で熱伝導性である銅の微粒子で覆い、セラミックス板を2枚の金属板の間に挟んで重ね合わせ、一方の金属板の表面全体に圧縮荷重をかけ、銅微粒子どうしの接合によって、セラミックス板を2枚の金属板に接合する実施例である。
本実施例におけるセラミックス板は、熱伝導性が高く電気絶縁性である窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物、あるいはアルミナ、ジルコニア、ムライトなどの酸化物の硬い物質からなり、回路基板を構成する。また、本実施例における一方の金属板は、銅の薄板ないしはアルミニウムの薄板から構成され、電流の流れのパターンが形成される回路配線板を構成する。さらに、本実施例における他方の金属板はアルミニウムからなる厚板であり、回路基板の熱を放熱するヒートシンクを構成する。このアルミ板に放熱面積を増やすフィンを追加しても良い。そして、セラミックス板を、2枚の金属板の間に挟み、回路配線板の表面全体に圧縮荷重をかけると、3枚の板の表面に存在する無数の銅微粒子が変形するとともに、互いに接触する銅微粒子どうしは、接触点に発生する過大な摩擦熱によって互いに接合し、これによって、セラミックス板が2枚の金属板に接合する。
本実施例における回路基板と回路板とヒートシンクとを接合する製造方法を、図7に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S70工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、回路基板の集まりと、回路配線板の集まりと、ヒートシンクの集まりを浸漬する(S71工程)。更に、メタノールを気化させ(S72工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させて銅微粒子を析出させた(S73工程)。この結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子が20層に近い多層構造を形成して、回路基板と回路配線板とヒートシンクとを覆った。更に、容器から回路基板と回路配線板とヒートシンクとを取り出し(S74工程)、これらを治具にヒートシンク、回路基板、回路配線板の順で積層し、60トン/cm2の圧縮応力を印加した(S75工程)。これによって、ヒートシンク、回路基板、回路配線板の表面に存在する無数の銅微粒子が接触し、接触点で発生する摩擦熱で銅微粒子どうしが接合し、ヒートシンクと回路基板と回路板とが一体化される。この後、回路配線板をエッチングして、回路配線板に電流が流れるパターンを形成する。
こうにして製造されたヒートシンクと回路基板と回路配線板との積層体は、次の作用効果をもたらす。第一に、ヒートシンクと回路基板と回路配線板との集まりを、安価な製造費用で、銅微粒子の集まりで覆うことができる。第二に、各々の部品の表面が満遍なく銅微粒子で覆われるため、圧縮荷重を加えるだけで積層体が製造でき、安価な製造費用で積層体が製造できる。第三に、銅微粒子が接合部を形成するため、実質的に接合部は厚みを持たず、これによって熱抵抗が形成されず、部品どうしの熱伝導が極めて効率よく行われる。第四に、接合部に、エッチング液は表面張力で入り込むことができず、エッチング加工を行っても、接合部がエッチング液で浸食されない。第五に、積層された部品の表面に存在する銅微粒子は不純物を持たないため、エッチング液によって容易に溶解され、洗浄によって異物が残ることはなく、回路配線板のパターンが異物で短絡することはない。第六に、銅の熱膨張率は16.5×10−6/Kで、アルミニウムの熱膨張率は23.1×10−6/Kであり、両者の熱膨張率は近い。積層された部品に熱衝撃が加わると、ヒートシンクの熱膨張ないしは熱収縮で、接合部の銅微粒子に剪断応力が加わるが、剪断応力は接合部を形成する無数の銅微粒子に分散され、銅微粒子の接合は破壊されない。第七に、銅微粒子どうしの接合は、銅の融点に近い耐熱性を有するため、接合部の耐熱性は高い。
本実施例におけるセラミックス板は、熱伝導性が高く電気絶縁性である窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物、あるいはアルミナ、ジルコニア、ムライトなどの酸化物の硬い物質からなり、回路基板を構成する。また、本実施例における一方の金属板は、銅の薄板ないしはアルミニウムの薄板から構成され、電流の流れのパターンが形成される回路配線板を構成する。さらに、本実施例における他方の金属板はアルミニウムからなる厚板であり、回路基板の熱を放熱するヒートシンクを構成する。このアルミ板に放熱面積を増やすフィンを追加しても良い。そして、セラミックス板を、2枚の金属板の間に挟み、回路配線板の表面全体に圧縮荷重をかけると、3枚の板の表面に存在する無数の銅微粒子が変形するとともに、互いに接触する銅微粒子どうしは、接触点に発生する過大な摩擦熱によって互いに接合し、これによって、セラミックス板が2枚の金属板に接合する。
本実施例における回路基板と回路板とヒートシンクとを接合する製造方法を、図7に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S70工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、回路基板の集まりと、回路配線板の集まりと、ヒートシンクの集まりを浸漬する(S71工程)。更に、メタノールを気化させ(S72工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させて銅微粒子を析出させた(S73工程)。この結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子が20層に近い多層構造を形成して、回路基板と回路配線板とヒートシンクとを覆った。更に、容器から回路基板と回路配線板とヒートシンクとを取り出し(S74工程)、これらを治具にヒートシンク、回路基板、回路配線板の順で積層し、60トン/cm2の圧縮応力を印加した(S75工程)。これによって、ヒートシンク、回路基板、回路配線板の表面に存在する無数の銅微粒子が接触し、接触点で発生する摩擦熱で銅微粒子どうしが接合し、ヒートシンクと回路基板と回路板とが一体化される。この後、回路配線板をエッチングして、回路配線板に電流が流れるパターンを形成する。
こうにして製造されたヒートシンクと回路基板と回路配線板との積層体は、次の作用効果をもたらす。第一に、ヒートシンクと回路基板と回路配線板との集まりを、安価な製造費用で、銅微粒子の集まりで覆うことができる。第二に、各々の部品の表面が満遍なく銅微粒子で覆われるため、圧縮荷重を加えるだけで積層体が製造でき、安価な製造費用で積層体が製造できる。第三に、銅微粒子が接合部を形成するため、実質的に接合部は厚みを持たず、これによって熱抵抗が形成されず、部品どうしの熱伝導が極めて効率よく行われる。第四に、接合部に、エッチング液は表面張力で入り込むことができず、エッチング加工を行っても、接合部がエッチング液で浸食されない。第五に、積層された部品の表面に存在する銅微粒子は不純物を持たないため、エッチング液によって容易に溶解され、洗浄によって異物が残ることはなく、回路配線板のパターンが異物で短絡することはない。第六に、銅の熱膨張率は16.5×10−6/Kで、アルミニウムの熱膨張率は23.1×10−6/Kであり、両者の熱膨張率は近い。積層された部品に熱衝撃が加わると、ヒートシンクの熱膨張ないしは熱収縮で、接合部の銅微粒子に剪断応力が加わるが、剪断応力は接合部を形成する無数の銅微粒子に分散され、銅微粒子の接合は破壊されない。第七に、銅微粒子どうしの接合は、銅の融点に近い耐熱性を有するため、接合部の耐熱性は高い。
本実施例は、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子を、銅微粒子の集まりからなる多層構造で覆うとともに、黒鉛粒子どうしを銅微粒子で接合する。つまり、無数の銅微粒子が黒鉛粒子の表面に析出する際に、隣接する黒鉛粒子に析出する銅微粒子どうしが金属結合で接合するため、この銅微粒子どうしの接合によって黒鉛粒子どうしが接合される。さらに、接合した黒鉛粒子の集まりを圧縮し、黒鉛粒子の層間結合を破壊して基底面を面方向に積層し、これによって、基底面が面方向に積層された基底面の集まりが銅微粒子によって接合された基底面の集合体が得られる。この基底面の集合体は、銅より熱伝導性が著しく高く、グラファイトシートと呼ばれる極めて熱伝導率が高いシート状の基材になる。
本実施例におけるグラファイトシートの製造方法を、図8に示す製造工程に基づいて説明する。最初に、オクチル酸銅を分散濃度が2重量%になるようにメタノールに分散する(S80工程)。このオクチル酸銅のメタノール分散液を容器に充填し、鱗片状黒鉛粒子(例えば日本黒鉛株式会社が製造するCB黒鉛)の集まりを浸漬する(S81工程)。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S82工程)。さらに、容器を290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、黒鉛粒子の表面に吸着したオクチル酸銅を熱分解する(S83工程)。次に、容器を熱処理炉から取り出し、黒鉛粒子の集まりに40トン/cm2の圧縮応力を印加して、黒鉛粒子の層間結合を破壊して、グラファイトシートを製造した(S84工程)。このグラファイトシートは、銅の熱伝導率の4倍を超える高い熱伝導率を持った。
また、製造したグラファイトシートは、銅の比抵抗の23倍程度の導電性を持つ。このため、102段落で説明した実施例1に準じて、グラファイトシートをマグヘマイトの微粒子で覆えば、グラファイトシートの表面は電気絶縁性となり、回路基板に適応できる。さらに、この回路基板をアルミニウムの厚板からなるヒートシンクと重ね合わせ、回路基板に圧縮応力を加えると、硬いマグヘマイト微粒子がヒートシンクの表面に食い込んで、ヒートシンクと接合される。この回路基板が銅の4倍を超える熱伝導率を持ち、ヒートシンクとの接合部が熱抵抗を持たないため、回路基板に発熱デバイスを含むより多くの半導体デバイスを高密度に実装しても、半導体デバイスが発する熱が効率よくヒートシンクに伝わり、半導体デバイスの動作寿命を延ばすことができる。
本実施例におけるグラファイトシートの製造方法を、図8に示す製造工程に基づいて説明する。最初に、オクチル酸銅を分散濃度が2重量%になるようにメタノールに分散する(S80工程)。このオクチル酸銅のメタノール分散液を容器に充填し、鱗片状黒鉛粒子(例えば日本黒鉛株式会社が製造するCB黒鉛)の集まりを浸漬する(S81工程)。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させる(S82工程)。さらに、容器を290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、黒鉛粒子の表面に吸着したオクチル酸銅を熱分解する(S83工程)。次に、容器を熱処理炉から取り出し、黒鉛粒子の集まりに40トン/cm2の圧縮応力を印加して、黒鉛粒子の層間結合を破壊して、グラファイトシートを製造した(S84工程)。このグラファイトシートは、銅の熱伝導率の4倍を超える高い熱伝導率を持った。
また、製造したグラファイトシートは、銅の比抵抗の23倍程度の導電性を持つ。このため、102段落で説明した実施例1に準じて、グラファイトシートをマグヘマイトの微粒子で覆えば、グラファイトシートの表面は電気絶縁性となり、回路基板に適応できる。さらに、この回路基板をアルミニウムの厚板からなるヒートシンクと重ね合わせ、回路基板に圧縮応力を加えると、硬いマグヘマイト微粒子がヒートシンクの表面に食い込んで、ヒートシンクと接合される。この回路基板が銅の4倍を超える熱伝導率を持ち、ヒートシンクとの接合部が熱抵抗を持たないため、回路基板に発熱デバイスを含むより多くの半導体デバイスを高密度に実装しても、半導体デバイスが発する熱が効率よくヒートシンクに伝わり、半導体デバイスの動作寿命を延ばすことができる。
本実施例は、ガラスの粉体を銅微粒子で覆うとともに、銅微粒子どうしの金属結合でガラスの粉体どうしを接合し、このガラスの粉体の集まりを押出成形機に充填し、押出成形機内でガラスの粉体を融解し、融解したガラスを押出成形機のダイスから押し出し、押し出されたガラスに二次加工を施し、その後冷却して、様々な形状からなる成形物を製造する実施例である。なお、ガラスの粉体の材質に特段の制約はない。
成形物を製造する第一の事例は、二次加工をスリーブ成形法ないしはチューブ成形法と呼ばれる成形法で成形する事例であって、ガラスで構成されるスリーブないしはチューブに熱伝導性と電気導電性とを付与する。なお二次加工は、従来のスリーブ成形法ないしはチューブ成形法の製法に基づく。また、成形物の長さを長くすれば、熱伝導性と電気導電性を持つガラスで構成されたパイプないしはホースになる。
成形物を製造する製造装置の構成を図9に示す。押出し成形機は、押出し機(A)、ダイス(B)、冷却装置(C)、引き取り機(D)、定尺カッター(E)の5つの部分からなる。押出し機(A)は、懸濁液(K)を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(O)、ヒーターを内蔵したシリンダー(S)の3つの部分からなる。
成形物を製造する製造方法を、図10の製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S90工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S91工程)。更に、メタノールを気化させ(S92工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体が接合する(S93工程)。この結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子が20層に近い多層構造を形成してガラスの粉体を覆うとともに、銅微粒子どうしの金属結合によってガラスの粉体が接合される。この後、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S94工程)。こうして製造されたガラスの粉体の一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S95工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S96工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによってガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、ダイス(B)から円筒形状として押し出される(S97工程)。この後、押し出された円筒が冷却装置(C)で冷却され(S98工程)、引き取り機(D)を通った後に、定尺カッター(E)で一定の長さに切断し、スリーブないしはチューブが製造される(S99工程)。なお、成形物のスリーブないしはチューブの肉厚と外径の大きさとは、成形物が押し出される際のシリンダー(S)とダイス(B)との間隙で決まる。なお、成形物を長い長さで切断すれば、パイプないしはホースになる。また、シリンダー(S)の先端から押し出される成形物が、本実施例のように円でなく扁平な長方形として押し出される場合は、シートが製造される。
S96工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S97工程でダイス(B)から押し出される際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。従って、S98工程を経て製造されたスリーブないしはチューブは、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、スリーブないしはチューブの表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、スリーブないしはチューブを製造すれば、磁気を伝達するスリーブないしはチューブが製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなるスリーブないしはチューブが製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなるスリーブないしはチューブも製造できる。
成形物を製造する第一の事例は、二次加工をスリーブ成形法ないしはチューブ成形法と呼ばれる成形法で成形する事例であって、ガラスで構成されるスリーブないしはチューブに熱伝導性と電気導電性とを付与する。なお二次加工は、従来のスリーブ成形法ないしはチューブ成形法の製法に基づく。また、成形物の長さを長くすれば、熱伝導性と電気導電性を持つガラスで構成されたパイプないしはホースになる。
成形物を製造する製造装置の構成を図9に示す。押出し成形機は、押出し機(A)、ダイス(B)、冷却装置(C)、引き取り機(D)、定尺カッター(E)の5つの部分からなる。押出し機(A)は、懸濁液(K)を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(O)、ヒーターを内蔵したシリンダー(S)の3つの部分からなる。
成形物を製造する製造方法を、図10の製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の98段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S90工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S91工程)。更に、メタノールを気化させ(S92工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体が接合する(S93工程)。この結果、40nmから60nmの大きさからなる銅微粒子が20層に近い多層構造を形成してガラスの粉体を覆うとともに、銅微粒子どうしの金属結合によってガラスの粉体が接合される。この後、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S94工程)。こうして製造されたガラスの粉体の一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S95工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S96工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによってガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、ダイス(B)から円筒形状として押し出される(S97工程)。この後、押し出された円筒が冷却装置(C)で冷却され(S98工程)、引き取り機(D)を通った後に、定尺カッター(E)で一定の長さに切断し、スリーブないしはチューブが製造される(S99工程)。なお、成形物のスリーブないしはチューブの肉厚と外径の大きさとは、成形物が押し出される際のシリンダー(S)とダイス(B)との間隙で決まる。なお、成形物を長い長さで切断すれば、パイプないしはホースになる。また、シリンダー(S)の先端から押し出される成形物が、本実施例のように円でなく扁平な長方形として押し出される場合は、シートが製造される。
S96工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S97工程でダイス(B)から押し出される際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。従って、S98工程を経て製造されたスリーブないしはチューブは、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、スリーブないしはチューブの表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、スリーブないしはチューブを製造すれば、磁気を伝達するスリーブないしはチューブが製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなるスリーブないしはチューブが製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなるスリーブないしはチューブも製造できる。
成形物を製造する第二の事例は、ブロー成形法と呼ばれる成形法でガラスの容器を製造する事例である。なお成形方法は、従来のブロー成形法の製法に基づく。
容器を製造する製造装置の構成を図11に示す。製造装置は、押出し機(A)、ダイス(D)、金型(K)、および大気からなる1.5気圧のブローを発生するブロー発生装置(L)の4つの部分からなる。押出し機(A)は前記した第一の事例と同様に、懸濁液を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(O)、ヒーターを内蔵したシリンダー(S)の3つの部分からなる。図12の左側の図は、ダイス(D)の先端部に配置された金型にバリソン(P)と呼ばれる円筒形状の成形物が押し出される様子を示す図である。ダイスコア(D1)にエアマンドレル(D2)と呼ばれる心金が装着され、このエアマンドレル(D2)の側壁からバリソン(P)が押し出される。さらに、図12の右側の図は、バリソン(P)に1.5気圧の大気(Ga)を供給して成形加工を施す様子を示す図である。ブロー発生装置(L)から1.5気圧の大気(Ga)がバリソン(P)の内部に供給され、バリソン(P)が金型(K)に押し付けられ、金型(K)の内側の形状に成形される。金型(K)の内部には冷却水が供給される冷却回路(R)が設けられていて、成形されたバリソン(P)を冷却して製品を得る。
本実施例における容器の製造方法を、図13に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の109段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S100工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S101工程)。更に、メタノールを気化させ(S102工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体を接合させる(S103工程)。更に、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S104工程)。こうして製造されたガラス粉体の集まりの一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S105工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S106工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによって、ガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、ダイスコアからバリソンが押し出され、金型の内部に入る(S107工程)。なお、バリソンは、融解したガラスから構成されるため可塑性を持つ。この後、金型を閉じ、バリソンを金型で挟み込む(S108工程)。さらに、1.5気圧の大気をバリソンの上端から吹き込み、バリソンを膨らまして金型の内壁に押し付ける(S109工程)。この後、金型を冷却して成形物を冷却する(S110工程)。最後に、金型を外し、成形物を金型から取り出す(S111工程)。
S106工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S109工程でバリソンが金型の内壁に押し付けられる際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。従って、S110工程を経て製造された容器は、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、容器の表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、容器を製造すれば、磁気を伝達する容器が製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなる容器が製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなる容器も製造できる。
容器を製造する製造装置の構成を図11に示す。製造装置は、押出し機(A)、ダイス(D)、金型(K)、および大気からなる1.5気圧のブローを発生するブロー発生装置(L)の4つの部分からなる。押出し機(A)は前記した第一の事例と同様に、懸濁液を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(O)、ヒーターを内蔵したシリンダー(S)の3つの部分からなる。図12の左側の図は、ダイス(D)の先端部に配置された金型にバリソン(P)と呼ばれる円筒形状の成形物が押し出される様子を示す図である。ダイスコア(D1)にエアマンドレル(D2)と呼ばれる心金が装着され、このエアマンドレル(D2)の側壁からバリソン(P)が押し出される。さらに、図12の右側の図は、バリソン(P)に1.5気圧の大気(Ga)を供給して成形加工を施す様子を示す図である。ブロー発生装置(L)から1.5気圧の大気(Ga)がバリソン(P)の内部に供給され、バリソン(P)が金型(K)に押し付けられ、金型(K)の内側の形状に成形される。金型(K)の内部には冷却水が供給される冷却回路(R)が設けられていて、成形されたバリソン(P)を冷却して製品を得る。
本実施例における容器の製造方法を、図13に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の109段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S100工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S101工程)。更に、メタノールを気化させ(S102工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体を接合させる(S103工程)。更に、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S104工程)。こうして製造されたガラス粉体の集まりの一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S105工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S106工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによって、ガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、ダイスコアからバリソンが押し出され、金型の内部に入る(S107工程)。なお、バリソンは、融解したガラスから構成されるため可塑性を持つ。この後、金型を閉じ、バリソンを金型で挟み込む(S108工程)。さらに、1.5気圧の大気をバリソンの上端から吹き込み、バリソンを膨らまして金型の内壁に押し付ける(S109工程)。この後、金型を冷却して成形物を冷却する(S110工程)。最後に、金型を外し、成形物を金型から取り出す(S111工程)。
S106工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S109工程でバリソンが金型の内壁に押し付けられる際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。従って、S110工程を経て製造された容器は、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、容器の表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、容器を製造すれば、磁気を伝達する容器が製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなる容器が製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなる容器も製造できる。
成形品を製造する第三の事例は、サーモフォーミング成形法と呼ばれる加熱成形法でガラスの容器を製造する事例である。すなわち、押出し機から押し出されたシート状の成形物を、カレンダーローラーによって薄く伸ばす。この後、薄く伸ばされたシートを金型に挟み込む。更に、上金型のプラグを下降させると共に、下金型に設けた孔を介して真空引きを行い、下金型にシートを密着させて絞り加工を施す。これによって、金型の形状が反映されたガラスの容器が製造される。
容器を製造する製造装置の構成を図14に示す。製造装置は、押出し機(A)、カレンダーローラー(B)、金型(C)、真空発生装置(E)、トリミングカッター(F)からなる。また、押出し機(A)は、懸濁液(K)を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(Sc)、ヒーターを内蔵したシリンダー(Si)、押出し機の先端に設けられたダイス(D)からなる。カレンダーローラー(B)で薄いシート状に引き伸ばされた成形物は、金型(C)の手前でヒータ(He)によって加熱される。
本実施例における容器の製造方法を、図15に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の109段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S120工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S121工程)。更に、メタノールを気化させ(S122工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体を接合させる(S123工程)。更に、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S124工程)。こうして製造されたガラス粉体の集まりの一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S125工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S126工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによって、ガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、融解したガラスが、押出し成形機の先端のダイス(D)からシート状に押し出される(S127工程)。押し出されたシートは、カレンダーローラー(B)を通過してさらに薄く引き延ばされる(S128工程)。薄くなったシートは、再度加熱された後に金型(C)に入り、金型で挟み込まれる(S129工程)。この後、上金型(C1)のプラグが下降し、下金型(C2)の孔が開いて真空引きされ、成形物をより金型に密着するように絞り込む(S130工程)。最後に、トリミングカッター(F)で製品を切り離し、ガラスからなる容器(P)を製造する(S131工程)。
S126工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S127工程でダイスからシート状に押し出される際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形し、更に、S128工程でカレンダーローラーによって更に薄く引き延ばされる際に、融解したガラスが再度変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。同様に、S129工程とS130工程においても、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、銅微粒子の集まりで接合されている。従って、製造された容器は、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、容器の表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、容器を製造すれば、磁気を伝達する容器が製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなる容器が製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなる容器も製造できる。
容器を製造する製造装置の構成を図14に示す。製造装置は、押出し機(A)、カレンダーローラー(B)、金型(C)、真空発生装置(E)、トリミングカッター(F)からなる。また、押出し機(A)は、懸濁液(K)を供給するホッパー(H)、油圧モータで駆動される押出しスクリュー(Sc)、ヒーターを内蔵したシリンダー(Si)、押出し機の先端に設けられたダイス(D)からなる。カレンダーローラー(B)で薄いシート状に引き伸ばされた成形物は、金型(C)の手前でヒータ(He)によって加熱される。
本実施例における容器の製造方法を、図15に示す製造工程に基づいて説明する。銅微粒子からなる多層構造で基材を覆う方法法は、前記の109段落に記載した方法に準ずる。オクチル酸銅が4重量%になるようにメタノールに分散し(S120工程)、このメタノール分散液を容器に充填する。次に、ガラスの粉体の集まりを浸漬して攪拌する(S121工程)。更に、メタノールを気化させ(S122工程)、この後に、容器を290℃の熱処理炉に1分間配置し、オクチル酸銅を熱分解させ、ガラスの粉体の表面に銅微粒子を析出させるとともに、銅微粒子どうしの結合でガラスの粉体を接合させる(S123工程)。更に、接合されたガラスの粉体の集まりを容器から取り出す(S124工程)。こうして製造されたガラス粉体の集まりの一定量、例えば1kgを1時間ごとにホッパー(H)に供給する(S125工程)。ホッパーに供給されたガラスの粉体は、押出し機のシリンダー(S)に入り、スクリュー(O)によって極低速度の回転速度30rpmで混練される(S126工程)。ガラスの粉体は、混練されながらシリンダー内のヒーターによって、ガラスの融点まで昇温され、融解したガラスがダイス(B)の方向に移動し、融解したガラスが、押出し成形機の先端のダイス(D)からシート状に押し出される(S127工程)。押し出されたシートは、カレンダーローラー(B)を通過してさらに薄く引き延ばされる(S128工程)。薄くなったシートは、再度加熱された後に金型(C)に入り、金型で挟み込まれる(S129工程)。この後、上金型(C1)のプラグが下降し、下金型(C2)の孔が開いて真空引きされ、成形物をより金型に密着するように絞り込む(S130工程)。最後に、トリミングカッター(F)で製品を切り離し、ガラスからなる容器(P)を製造する(S131工程)。
S126工程でガラスの粉体が混練されると銅微粒子どうしの結合が破壊され、ガラスの粉体は、スクリュー(O)とシリンダー(S)との間隙で決まる接合された粉体の集まりになる。さらに、ガラスの粉体が融解すると、0.1%にも満たない体積が膨張し、膨張した体積に相当する融解したガラスが、銅微粒子の多層構造のごく一部を突き破って滲み出るが、融解したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。S127工程でダイスからシート状に押し出される際に、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形し、更に、S128工程でカレンダーローラーによって更に薄く引き延ばされる際に、融解したガラスが再度変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、依然として銅微粒子の集まりで接合されている。同様に、S129工程とS130工程においても、融解したガラスが変形し、これに追従して銅微粒子の多層構造が変形するため、変形したガラスどうしは、銅微粒子の集まりで接合されている。従って、製造された容器は、ガラスどうしが銅微粒子の集まりで接合された構造から構成されるため、容器の表面及び内部で、銅微粒子に基づく熱と電流とを伝達する経路を形成し、熱伝導性と電気導電性とに優れる性質を持つ。なお、ガラスの粉体を、99段落に記載した製造方法に準じて鉄微粒子で覆い、このガラスの粉体によって、容器を製造すれば、磁気を伝達する容器が製造される。また、オクチル酸銅の熱分解温度である290℃の耐熱性を持つ熱硬化性樹脂ないしは熱可塑性樹脂からなる粉体ないしはペレットを用いれば、熱伝導性と電気伝導性に優れる合成樹脂からなる容器が製造できる。同様に、磁気を伝達する合成樹脂からなる容器も製造できる。
本実施例は、アトマイズ法で製造された非磁性の金属ないしは合金からなる粉末を、鉄微粒子の集まりからなる多層構造で覆う実施例である。さらに、本実施例における金属ないしは合金を原料として用いて、様々な加工を施すことによって、様々な部品ないしは基材を製造することができる。
鉄微粒子からなる多層構造でアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を覆う方法法は、前記の99段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸鉄を分散濃度が4重量%になるようにメタノールに分散する。このオクチル酸鉄のメタノール分散液を容器に充填し、球状のアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉(市販品、例えばヒカリ素材工業株式会社の製品)の集まりを浸漬して攪拌する。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、さらに、容器を260℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面に吸着したオクチル酸鉄を熱分解する。これによって、40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが、平均で20層近い多層構造を形成してアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を覆う。ここで使用したアルミニウム粉の平均粒径は58μmで、アルミ合金粉の平均粒径は65μmあるため、鉄微粒子が占める体積割合は0.1%程度に過ぎない。
本実施例は、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を鉄微粒子で覆ったが、鉄微粒子に限定されることはなく、前記の98段落に記載した方法に準じて、オクチル酸銅を用いることで、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が製造され、熱伝導性に優れたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が得られる。このように、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に求められる性質に応じて、表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
鉄微粒子からなる多層構造でアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を覆う方法法は、前記の99段落に記載した方法に準ずる。最初に、オクチル酸鉄を分散濃度が4重量%になるようにメタノールに分散する。このオクチル酸鉄のメタノール分散液を容器に充填し、球状のアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉(市販品、例えばヒカリ素材工業株式会社の製品)の集まりを浸漬して攪拌する。容器を65℃に昇温してメタノールを気化させ、さらに、容器を260℃に昇温された熱処理炉に1分間入れて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面に吸着したオクチル酸鉄を熱分解する。これによって、40nmから60nmの大きさからなる鉄微粒子の集まりが、平均で20層近い多層構造を形成してアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を覆う。ここで使用したアルミニウム粉の平均粒径は58μmで、アルミ合金粉の平均粒径は65μmあるため、鉄微粒子が占める体積割合は0.1%程度に過ぎない。
本実施例は、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を鉄微粒子で覆ったが、鉄微粒子に限定されることはなく、前記の98段落に記載した方法に準じて、オクチル酸銅を用いることで、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が製造され、熱伝導性に優れたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が得られる。このように、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に求められる性質に応じて、表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いて加工を施す第一実施例は、磁性を有するアルミニウムシートあるいはアルミ合金からなるシートを製造する事例である。
シートを製造する製造工程を図16に示す。前記した製造方法で製造した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉をホッパーに供給し(S140工程)、ホッパーから圧延ロール機を通して薄板状に加工し(S141工程)、更に、熱間圧延機を通してアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を融解して更に薄いシート状に圧延し(S142工程)、最後に冷却圧延装置を通した後にコイル状に巻き上げ、シートを製造する(S143工程)。
圧延ロール機を通過する際に、相対的に硬度が低いアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が優先して変形して互いに絡み合い、これに追従して鉄微粒子の集まりからなる多層構造も変形し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に鉄微粒子が喰い込む。このため、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、鉄微粒子の集まりを介して互いに絡み合って接合され、扁平な圧延板となる。また、鉄微粒子の多層構造が変形する際に、鉄微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱が発生して摩擦熱で結合する。更に、圧延板が熱間圧延機を通過する際に、融点が低いアルミニウムないしはアルミ合金のみが融解し、0.1%程度の体積が膨張し、これによって、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当するごく微量の融解したアルミニウムないしはアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。つまり、多層構造は不均一な大きさからなる鉄微粒子が不均一な層をなして粉末を覆うため、鉄微粒子どうしの結合力が最も弱い箇所で多層構造が局所的に破壊される。また、融解されたアルミニウムないしはアルミ合金は、その周囲を鉄微粒子の集まりで拘束されている。更に、鉄微粒子の集まりで拘束された融解したアルミニウムないしはアルミ合金が平面状に圧縮され、これに追従して鉄微粒子の多層構造も平面状に変形し、鉄微粒子の多層構造が融解したアルミニウムないしはアルミ合金に喰い込む。こうして平面状に変形した鉄微粒子の多層構造が複雑に絡み合うとともに、隣接する多層構造とより広い面積で接し、接触した鉄微粒子どうしが摩擦熱で接合する。この後、冷却圧延装置を通過して圧延シートが製造される。この結果、製造された圧延シートは、アルミニウムないしはアルミ合金を覆う鉄微粒子の多層構造は、互いに接合された状態にあるため、冷却されたアルミニウムないしはアルミ合金に磁気が伝達する経路を形成する。従って、アルミニウムないしはアルミ合金からなるシートは強磁性の性質を持ち、磁気が伝達する経路を有する。このため、アルミニウムシートないしはアルミ合金シートは磁気吸着し、また、アルミニウムシートないしはアルミ合金シートは磁気を伝達する軟磁性材料としての作用も発揮する。また、圧延シートに占める鉄微粒子の体積割合は、0.1%程度であるため、圧延シートはアルミニウムないしはアルミ合金の性質を発揮する。
本実施例は、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いたが、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いれば、熱伝導性に優れた軽量なシートが製造できる。このように、シートに求められる性質に応じて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
シートを製造する製造工程を図16に示す。前記した製造方法で製造した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉をホッパーに供給し(S140工程)、ホッパーから圧延ロール機を通して薄板状に加工し(S141工程)、更に、熱間圧延機を通してアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を融解して更に薄いシート状に圧延し(S142工程)、最後に冷却圧延装置を通した後にコイル状に巻き上げ、シートを製造する(S143工程)。
圧延ロール機を通過する際に、相対的に硬度が低いアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が優先して変形して互いに絡み合い、これに追従して鉄微粒子の集まりからなる多層構造も変形し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に鉄微粒子が喰い込む。このため、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、鉄微粒子の集まりを介して互いに絡み合って接合され、扁平な圧延板となる。また、鉄微粒子の多層構造が変形する際に、鉄微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱が発生して摩擦熱で結合する。更に、圧延板が熱間圧延機を通過する際に、融点が低いアルミニウムないしはアルミ合金のみが融解し、0.1%程度の体積が膨張し、これによって、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当するごく微量の融解したアルミニウムないしはアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。つまり、多層構造は不均一な大きさからなる鉄微粒子が不均一な層をなして粉末を覆うため、鉄微粒子どうしの結合力が最も弱い箇所で多層構造が局所的に破壊される。また、融解されたアルミニウムないしはアルミ合金は、その周囲を鉄微粒子の集まりで拘束されている。更に、鉄微粒子の集まりで拘束された融解したアルミニウムないしはアルミ合金が平面状に圧縮され、これに追従して鉄微粒子の多層構造も平面状に変形し、鉄微粒子の多層構造が融解したアルミニウムないしはアルミ合金に喰い込む。こうして平面状に変形した鉄微粒子の多層構造が複雑に絡み合うとともに、隣接する多層構造とより広い面積で接し、接触した鉄微粒子どうしが摩擦熱で接合する。この後、冷却圧延装置を通過して圧延シートが製造される。この結果、製造された圧延シートは、アルミニウムないしはアルミ合金を覆う鉄微粒子の多層構造は、互いに接合された状態にあるため、冷却されたアルミニウムないしはアルミ合金に磁気が伝達する経路を形成する。従って、アルミニウムないしはアルミ合金からなるシートは強磁性の性質を持ち、磁気が伝達する経路を有する。このため、アルミニウムシートないしはアルミ合金シートは磁気吸着し、また、アルミニウムシートないしはアルミ合金シートは磁気を伝達する軟磁性材料としての作用も発揮する。また、圧延シートに占める鉄微粒子の体積割合は、0.1%程度であるため、圧延シートはアルミニウムないしはアルミ合金の性質を発揮する。
本実施例は、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いたが、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いれば、熱伝導性に優れた軽量なシートが製造できる。このように、シートに求められる性質に応じて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いて加工を施す第二実施例は、溶射によって部品や基材の表面に、磁性を有するアルミニウムないしは磁性を有するアルミ合金からなる被膜を形成する事例である。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを、粉末溶射装置に充填する。粉末溶射装置における高圧の加熱ガスが通過する通路に、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を落下させ、軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が加速されて、部品ないしは基材の表面に衝突し、扁平に潰れたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が堆積して凝固すると、磁性を有するアルミニウムないしはアルミ合金からなる被膜が形成される。
軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が、部品ないしは基材の表面に衝突する際に、軟化あるいは融解したアルミニウムないしはアルミ合金の極一部が、鉄微粒子の多層構造からはみ出るが、前記した圧延シートの製造と同様に、軟化したあるいは融解したアルミニウムないしはアルミ合金は、鉄微粒子の集まりで拘束されているため、鉄微粒子の多層構造は、互いに隣接する鉄微粒子の多層構造どうしが接合された状態にある。このため、鉄微粒子は磁気が伝達する経路を、アルミニウムないしはアルミ合金からなる被膜に形成する。この結果、磁性を有し、磁気が伝達するアルミニウムないしはアルミ合金からなる軽量の被膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。
本実施例は、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いたが、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いることで、熱伝導性に優れた軽量の被膜が部品ないしは基材の表面に形成される。このように、部品ないしは基材の表面に必要となる性質に応じて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを、粉末溶射装置に充填する。粉末溶射装置における高圧の加熱ガスが通過する通路に、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を落下させ、軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が加速されて、部品ないしは基材の表面に衝突し、扁平に潰れたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が堆積して凝固すると、磁性を有するアルミニウムないしはアルミ合金からなる被膜が形成される。
軟化したあるいは融解したアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が、部品ないしは基材の表面に衝突する際に、軟化あるいは融解したアルミニウムないしはアルミ合金の極一部が、鉄微粒子の多層構造からはみ出るが、前記した圧延シートの製造と同様に、軟化したあるいは融解したアルミニウムないしはアルミ合金は、鉄微粒子の集まりで拘束されているため、鉄微粒子の多層構造は、互いに隣接する鉄微粒子の多層構造どうしが接合された状態にある。このため、鉄微粒子は磁気が伝達する経路を、アルミニウムないしはアルミ合金からなる被膜に形成する。この結果、磁性を有し、磁気が伝達するアルミニウムないしはアルミ合金からなる軽量の被膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。
本実施例は、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いたが、銅微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いることで、熱伝導性に優れた軽量の被膜が部品ないしは基材の表面に形成される。このように、部品ないしは基材の表面に必要となる性質に応じて、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の表面を覆う微粒子の材質を変えれば良い。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いて加工を施す第三実施例は、熱間鍛造法と呼ばれる製法で、アルミニウムないしはアルミ合金からなる高強度の部品、例えば、自動車用のピストンを製造する実施例である。なお、自動車用ピストンのような高強度の鍛造品を製造する場合は、アルミ合金粉末はJISの呼称で4032番に相当するアルミニウム−シリコン系合金からなる粉末を用いる。
熱間鍛造品を製造する製造工程を図17に示す。最初に、CIPと呼ばれる冷間静水圧加圧法によって、アルミ合金粉の集まりを圧縮して空隙をなくし、粉体の集まりが70%程度の密度に集積されるように仮の成形体を成形する(S150工程)。つまり、静水圧で弾性変形するゴム袋にアルミ合金粉を充填して密閉し、このゴム袋を冷間静水圧加圧装置に入れ、2×102MPaの静水圧を加えて仮の成形体を成形する。次に、仮の成形体に含まれる水分とガスとを取り除くために、仮の成形体を真空焼成炉にいれ(S151工程)、真空中でアルミ合金の融点で1時間ほど加熱して予備焼結を行う(S152工程)。この後、予備焼結体を真空焼成炉から取り出して、コンテナ温度がアルミ合金の融点より100℃ほど低い温度に保たれた押出機に入れ、予備焼結体を熱間押出しする(S153工程)。これによって、熱間鍛造の際に、アルミ合金の流動性が向上する。最後に、熱間押出しされた押出材を、前記の熱間押出しの温度まで昇温し、熱間押出しの温度と同等の温度に昇温された鍛造金型にセットし、700MPaの鍛造圧力を加え、目的とする製品、すなわち自動車用のピストンの形状を有する部品を製造する(S154工程)。
鍛造品が自動車用ピストンである場合の作用効果を説明する。鍛造品を製造した後に、ピストンの面に垂直方向に着磁機によって着磁する。これによって、ピストンの面内から磁力線が垂直方向に飛ぶ。内燃機関においては、ピストンがシリンダーの上死点を過ぎて膨張工程に入る瞬間に、燃料が燃焼室に噴霧されて気化し、その直後に燃料が着火されて爆発工程に入る。燃料がシリンダーに噴霧された際の微小な空間に、上死点付近にあるピストンから磁力線が飛び、燃料に磁場が作用する。この際、燃料の分子どうしの結合が磁場によって切断され、燃料はより小さい微粒子になって着火される。これによって、燃料の完全燃焼が促進され、燃費が向上する作用効果がもたらされる。
熱間鍛造品を製造する製造工程を図17に示す。最初に、CIPと呼ばれる冷間静水圧加圧法によって、アルミ合金粉の集まりを圧縮して空隙をなくし、粉体の集まりが70%程度の密度に集積されるように仮の成形体を成形する(S150工程)。つまり、静水圧で弾性変形するゴム袋にアルミ合金粉を充填して密閉し、このゴム袋を冷間静水圧加圧装置に入れ、2×102MPaの静水圧を加えて仮の成形体を成形する。次に、仮の成形体に含まれる水分とガスとを取り除くために、仮の成形体を真空焼成炉にいれ(S151工程)、真空中でアルミ合金の融点で1時間ほど加熱して予備焼結を行う(S152工程)。この後、予備焼結体を真空焼成炉から取り出して、コンテナ温度がアルミ合金の融点より100℃ほど低い温度に保たれた押出機に入れ、予備焼結体を熱間押出しする(S153工程)。これによって、熱間鍛造の際に、アルミ合金の流動性が向上する。最後に、熱間押出しされた押出材を、前記の熱間押出しの温度まで昇温し、熱間押出しの温度と同等の温度に昇温された鍛造金型にセットし、700MPaの鍛造圧力を加え、目的とする製品、すなわち自動車用のピストンの形状を有する部品を製造する(S154工程)。
鍛造品が自動車用ピストンである場合の作用効果を説明する。鍛造品を製造した後に、ピストンの面に垂直方向に着磁機によって着磁する。これによって、ピストンの面内から磁力線が垂直方向に飛ぶ。内燃機関においては、ピストンがシリンダーの上死点を過ぎて膨張工程に入る瞬間に、燃料が燃焼室に噴霧されて気化し、その直後に燃料が着火されて爆発工程に入る。燃料がシリンダーに噴霧された際の微小な空間に、上死点付近にあるピストンから磁力線が飛び、燃料に磁場が作用する。この際、燃料の分子どうしの結合が磁場によって切断され、燃料はより小さい微粒子になって着火される。これによって、燃料の完全燃焼が促進され、燃費が向上する作用効果がもたらされる。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いて加工を施す第四実施例は、HIPと呼ばれる熱間静水圧加圧法で、アルミニウムないしはアルミ合金からなる軽量な多孔質焼結体、例えば、除塵用フィルタ装置を構成する多孔質体を製造する実施例である。なお、多孔質焼結体の製造においては、アルミ合金粉末はJISの呼称で3004番に相当するアルミ−マンガン系合金からなる粉末を用いる。
多孔質焼結体を製造する製造工程を図18に示す。最初に、製造する焼結体のダミーをカプセル内に同心となるように配置させ(S160工程)、ダミーとカプセルとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとなる合成樹脂ないしは低融点ガラスとの混合物を最密充填し、カプセルの上蓋を閉じて一旦密封する(S161工程)。なお、ここで使用するダミーは、カプセル材の融点より高い融点を持つ金属ないしは合金材料で構成し、HIP処理によってダミーがカプセルとの間で固相拡散を起こさない。次に、製品となる焼結体を製造するHIP処理の条件でカプセルをHIP処理する(S162工程)。この際、金属カプセルが変形し、また、セラミックス粉が圧縮され、更に、バインダーが融解し、セラミックスの成形体がカプセルとダミーとの間に形成される。このセラミックス成形体は、カプセルと反応しないため、カプセルのバリアー層になる。この後、カプセルの上蓋を開放してカプセル内にあるダミーを取り出し、代わりに、ダミーが存在した間隙にアルミ合金粉を最密充填し、再度カプセルの上蓋を閉じて密封し(S163工程)、この後、前回と同じHIP処理の条件でHIP処理を行う(S164工程)。この後、再度カプセルの上蓋を開放し、製品となるHIP処理による焼結体を取り出す(S165工程)。2回のHIP処理の条件が同一であるため、2回目のHIP処理によってセラミックス成形体の形状は変わらない。このため、セラミックス成形体は、カプセル内に配置した状態で繰り返し使用することができる。また、セラミックス成形体が繰り返し使用できるため、製品となる焼結体が再現性よく製造できる。セラミックス成形体は、カプセルおよび製品との間で固相拡散を起こさないため、カプセルから製品の焼結体が容易に取り出せる。
HIP処理によって製造した焼結体が廃棄物焼却炉に設置される除塵用フィルタ装置を構成する多孔質体である場合の作用効果を説明する。多孔質体は、強磁性の性質を持つため、鉄粉などの強磁性粉が飛び散る作業所や工場における除塵用フィルタ装置を構成する軽量な多孔質体として用いることができる。また、一定期間使用した多孔質体は、強力な磁石を用いて多孔質体の内部に磁気吸着した強磁性粉を磁気吸着させることができるので、多孔質体は繰り返し使用することができる作用効果をもたらす。
多孔質焼結体を製造する製造工程を図18に示す。最初に、製造する焼結体のダミーをカプセル内に同心となるように配置させ(S160工程)、ダミーとカプセルとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとなる合成樹脂ないしは低融点ガラスとの混合物を最密充填し、カプセルの上蓋を閉じて一旦密封する(S161工程)。なお、ここで使用するダミーは、カプセル材の融点より高い融点を持つ金属ないしは合金材料で構成し、HIP処理によってダミーがカプセルとの間で固相拡散を起こさない。次に、製品となる焼結体を製造するHIP処理の条件でカプセルをHIP処理する(S162工程)。この際、金属カプセルが変形し、また、セラミックス粉が圧縮され、更に、バインダーが融解し、セラミックスの成形体がカプセルとダミーとの間に形成される。このセラミックス成形体は、カプセルと反応しないため、カプセルのバリアー層になる。この後、カプセルの上蓋を開放してカプセル内にあるダミーを取り出し、代わりに、ダミーが存在した間隙にアルミ合金粉を最密充填し、再度カプセルの上蓋を閉じて密封し(S163工程)、この後、前回と同じHIP処理の条件でHIP処理を行う(S164工程)。この後、再度カプセルの上蓋を開放し、製品となるHIP処理による焼結体を取り出す(S165工程)。2回のHIP処理の条件が同一であるため、2回目のHIP処理によってセラミックス成形体の形状は変わらない。このため、セラミックス成形体は、カプセル内に配置した状態で繰り返し使用することができる。また、セラミックス成形体が繰り返し使用できるため、製品となる焼結体が再現性よく製造できる。セラミックス成形体は、カプセルおよび製品との間で固相拡散を起こさないため、カプセルから製品の焼結体が容易に取り出せる。
HIP処理によって製造した焼結体が廃棄物焼却炉に設置される除塵用フィルタ装置を構成する多孔質体である場合の作用効果を説明する。多孔質体は、強磁性の性質を持つため、鉄粉などの強磁性粉が飛び散る作業所や工場における除塵用フィルタ装置を構成する軽量な多孔質体として用いることができる。また、一定期間使用した多孔質体は、強力な磁石を用いて多孔質体の内部に磁気吸着した強磁性粉を磁気吸着させることができるので、多孔質体は繰り返し使用することができる作用効果をもたらす。
前記した鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いて加工を施す第五実施例は、メタルインジェクションモールドMIMと呼ばれる製法で、射出成形と焼結とによって金属ないしは合金からなる成形品を製造する実施例である。
従来技術におけるMIMは、金属ないしは合金粉末を樹脂やバインダーとともに混合・混練し、この混練物を押出成形機で押し出してペレット状に造粒する。次に、このペレットを昇温して流動性を高めて射出成形機に投入する。射出成形機内で樹脂やバインダーが融解され、さらに圧力が加えられ、金型に融解されたペレットが充填されて成形品を作る。その後、脱脂炉にてバインダーを加熱除去し、さらに、焼結炉にて焼結を行い、最後に、焼入れ、ないしは焼戻しを行い、金属ないしは合金からなる製品を製造する技術である。
本実施例におけるMIMによる焼結品の製造は、従来とは全く異なる新たな工法によって焼結品を製造する。すなわち、第一に、金属ないしは合金粉を昇華点が低い有機物、例えば、パラフィンワックスの溶解液で被覆させる。これによって、金属ないしは合金粉は、パラフィンワックスの溶解溶液からなる被膜によって流動性を持ち、また、鉄微粒子で覆われた金属ないしは合金粉どうしが被膜を介して磁気吸着するため、従来の造粒工程が不要になる。なお、金属粉ないしは合金粉は、流動性を持つため、従来のように微細な球状粒子である必要がない。第二に、この磁気吸着した金属ないしは合金粉を直接射出成形する。この際、パラフィンワックスの溶剤が気化し、射出圧で飛散した金属粉ないしは合金粉は、金型内で固化したパラフィンワックスの極薄い被膜を介して互いに絡み合い、また、互いに磁気吸着する。このため、成形品が破損しない。さらに、成形品における金属ないしは合金の配合割合が著しく高まる。このため、従来の脱脂工程は不要になる。第三に、成形品を真空焼結炉に入れ、成形体の内部に存在する全てのパラフィンワックスを昇華させ、この後、金属ないしは合金粉の融点まで昇温して焼結体を製造する。従って、従来におけるMIMの製造工程が、造粒工程、射出成形工程、脱脂工程、焼結工程の4つの工程からなるのに対し、本実施例では、射出成形工程、真空焼結工程の2つの工程からなるため、著しく安価に焼結品が製造できる。
焼結体を製造する製造工程を図19に示す。本実施例では、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いる。また、昇華点が低い有機物として、炭素数が20からなる炭化水素を主成分とするパラフィンワックス、例えば、日本精鑞株式会社が製造するSCP−0036Pを原料として用意する。このパラフィンワックスは、197℃で熱分解が完了し、熱分解によって全ての物質は気化し残渣物を残さない。なお、パラフィンワックスを溶解する溶剤として、n−ヘキサン,n−ヘプタン,イソオクタン,シクロヘキサン,キシレン,トルエン,テトラヒドロフランなどの無極性の有機溶媒がある。最初に、パラフィンワックスを、沸点が69℃で、20℃における蒸気圧が130mmHgであるn−ヘキサンに対し、20重量%の割合で溶解させる(S170工程)。このパラフィンワックスの溶解溶液を容器に充填し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを溶解溶液に浸漬して攪拌する(S171工程)。この後、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを容器から取り出し、80℃に設定された射出成形機に投入して射出成形する(S172工程)。射出成形機に投入されると、瞬時にn−ヘキサンが気化し、気化したn−ヘキサンは回収機で回収する。この後、成形品を取り出し、真空焼結炉に入れる(S173工程)。真空焼結炉では、最初に真空度が0.1気圧まで引かれた真空室に入り、パラフィンワックスが昇華する(S174工程)。この後、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の融点まで昇温された焼結室に入り、鉄微粒子の多層構造で拘束されたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が融解し、融解したアルミニウムないしはアルミ合金からなる成形体に、過大な圧力を加えて焼結を行う(S175工程)。最後に、焼結品が冷却炉に入り、焼結品が冷却され、焼結体を取り出す(S176工程)。その後、必要に応じて、焼入れ、焼鈍しを行う。
S172工程において、射出圧によって飛散されたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、金型内で衝撃力を受けて堆積する。この際、相対的に硬度が低いアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が優先して変形して互いに絡み合い、これに追従して鉄微粒子の集まりからなる多層構造も変形し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に鉄微粒子が喰い込む。このため、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、鉄微粒子の集まりを介して互いに絡み合って接合され、射出成形品となる。また、鉄微粒子の多層構造が変形する際に、鉄微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱が発生して摩擦熱で接合する。更に、S175工程においては、融点が低いアルミニウムないしはアルミ合金のみが融解し、0.1%程度の体積が膨張し、これによって、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当するごく微量の融解したアルミニウムないしはアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。なお、融解されたアルミニウムないしはアルミ合金は、その周囲を鉄微粒子の集まりで拘束されている。次に、鉄微粒子の集まりで拘束された融解したアルミニウムないしはアルミ合金は、過大な圧縮力を受けて平面状に引き延ばされ、これに追従して鉄微粒子の多層構造も平面状に引き延ばされ、変形したアルミニウムないしはアルミ合金に、鉄微粒子が食い込む。この際、鉄微粒子の多層構造が平面状に引き延ばされることで、隣接する鉄微粒子の多層構造との間で、互いに接触する部位が大幅に増大するとともに、互いに接触した鉄微粒子は摩擦熱で接合する。こうして、鉄微粒子の多層構造は、複雑に絡み合って互いに接合する。いっぽう、平面状に引き延ばされたアルミニウムないしはアルミ合金は鉄微粒子の多層構造で覆われているため、製造された焼結体において、アルミニウムないしはアルミ合金を覆う鉄微粒子の多層構造は、互いに接合された状態にあるため、冷却されたアルミニウムないしはアルミ合金に磁気が伝達する経路を形成する。従って、アルミニウムないしはアルミ合金からなる焼結体は強磁性の性質を持ち、磁気が伝達する経路を有する。このため、アルミニウム焼結体ないしはアルミ合金焼結体は、強磁性体に磁気吸着し、また、磁気を伝達する軟磁性材料としての作用も発揮する。また、焼結体に占める鉄微粒子の体積割合は、0.1%程度であるため、焼結体はアルミニウムないしはアルミ合金の性質を発揮して極めて軽量な焼結体である。
従来技術におけるMIMは、金属ないしは合金粉末を樹脂やバインダーとともに混合・混練し、この混練物を押出成形機で押し出してペレット状に造粒する。次に、このペレットを昇温して流動性を高めて射出成形機に投入する。射出成形機内で樹脂やバインダーが融解され、さらに圧力が加えられ、金型に融解されたペレットが充填されて成形品を作る。その後、脱脂炉にてバインダーを加熱除去し、さらに、焼結炉にて焼結を行い、最後に、焼入れ、ないしは焼戻しを行い、金属ないしは合金からなる製品を製造する技術である。
本実施例におけるMIMによる焼結品の製造は、従来とは全く異なる新たな工法によって焼結品を製造する。すなわち、第一に、金属ないしは合金粉を昇華点が低い有機物、例えば、パラフィンワックスの溶解液で被覆させる。これによって、金属ないしは合金粉は、パラフィンワックスの溶解溶液からなる被膜によって流動性を持ち、また、鉄微粒子で覆われた金属ないしは合金粉どうしが被膜を介して磁気吸着するため、従来の造粒工程が不要になる。なお、金属粉ないしは合金粉は、流動性を持つため、従来のように微細な球状粒子である必要がない。第二に、この磁気吸着した金属ないしは合金粉を直接射出成形する。この際、パラフィンワックスの溶剤が気化し、射出圧で飛散した金属粉ないしは合金粉は、金型内で固化したパラフィンワックスの極薄い被膜を介して互いに絡み合い、また、互いに磁気吸着する。このため、成形品が破損しない。さらに、成形品における金属ないしは合金の配合割合が著しく高まる。このため、従来の脱脂工程は不要になる。第三に、成形品を真空焼結炉に入れ、成形体の内部に存在する全てのパラフィンワックスを昇華させ、この後、金属ないしは合金粉の融点まで昇温して焼結体を製造する。従って、従来におけるMIMの製造工程が、造粒工程、射出成形工程、脱脂工程、焼結工程の4つの工程からなるのに対し、本実施例では、射出成形工程、真空焼結工程の2つの工程からなるため、著しく安価に焼結品が製造できる。
焼結体を製造する製造工程を図19に示す。本実施例では、鉄微粒子で覆われたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉を原料として用いる。また、昇華点が低い有機物として、炭素数が20からなる炭化水素を主成分とするパラフィンワックス、例えば、日本精鑞株式会社が製造するSCP−0036Pを原料として用意する。このパラフィンワックスは、197℃で熱分解が完了し、熱分解によって全ての物質は気化し残渣物を残さない。なお、パラフィンワックスを溶解する溶剤として、n−ヘキサン,n−ヘプタン,イソオクタン,シクロヘキサン,キシレン,トルエン,テトラヒドロフランなどの無極性の有機溶媒がある。最初に、パラフィンワックスを、沸点が69℃で、20℃における蒸気圧が130mmHgであるn−ヘキサンに対し、20重量%の割合で溶解させる(S170工程)。このパラフィンワックスの溶解溶液を容器に充填し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを溶解溶液に浸漬して攪拌する(S171工程)。この後、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の集まりを容器から取り出し、80℃に設定された射出成形機に投入して射出成形する(S172工程)。射出成形機に投入されると、瞬時にn−ヘキサンが気化し、気化したn−ヘキサンは回収機で回収する。この後、成形品を取り出し、真空焼結炉に入れる(S173工程)。真空焼結炉では、最初に真空度が0.1気圧まで引かれた真空室に入り、パラフィンワックスが昇華する(S174工程)。この後、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉の融点まで昇温された焼結室に入り、鉄微粒子の多層構造で拘束されたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が融解し、融解したアルミニウムないしはアルミ合金からなる成形体に、過大な圧力を加えて焼結を行う(S175工程)。最後に、焼結品が冷却炉に入り、焼結品が冷却され、焼結体を取り出す(S176工程)。その後、必要に応じて、焼入れ、焼鈍しを行う。
S172工程において、射出圧によって飛散されたアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、金型内で衝撃力を受けて堆積する。この際、相対的に硬度が低いアルミニウム粉ないしはアルミ合金粉が優先して変形して互いに絡み合い、これに追従して鉄微粒子の集まりからなる多層構造も変形し、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉に鉄微粒子が喰い込む。このため、アルミニウム粉ないしはアルミ合金粉は、鉄微粒子の集まりを介して互いに絡み合って接合され、射出成形品となる。また、鉄微粒子の多層構造が変形する際に、鉄微粒子どうしが接触し、過大な摩擦熱が発生して摩擦熱で接合する。更に、S175工程においては、融点が低いアルミニウムないしはアルミ合金のみが融解し、0.1%程度の体積が膨張し、これによって、鉄微粒子の多層構造のごく一部が局所的に破壊され、膨張した体積に相当するごく微量の融解したアルミニウムないしはアルミ合金が、鉄微粒子の多層構造から滲み出る。なお、融解されたアルミニウムないしはアルミ合金は、その周囲を鉄微粒子の集まりで拘束されている。次に、鉄微粒子の集まりで拘束された融解したアルミニウムないしはアルミ合金は、過大な圧縮力を受けて平面状に引き延ばされ、これに追従して鉄微粒子の多層構造も平面状に引き延ばされ、変形したアルミニウムないしはアルミ合金に、鉄微粒子が食い込む。この際、鉄微粒子の多層構造が平面状に引き延ばされることで、隣接する鉄微粒子の多層構造との間で、互いに接触する部位が大幅に増大するとともに、互いに接触した鉄微粒子は摩擦熱で接合する。こうして、鉄微粒子の多層構造は、複雑に絡み合って互いに接合する。いっぽう、平面状に引き延ばされたアルミニウムないしはアルミ合金は鉄微粒子の多層構造で覆われているため、製造された焼結体において、アルミニウムないしはアルミ合金を覆う鉄微粒子の多層構造は、互いに接合された状態にあるため、冷却されたアルミニウムないしはアルミ合金に磁気が伝達する経路を形成する。従って、アルミニウムないしはアルミ合金からなる焼結体は強磁性の性質を持ち、磁気が伝達する経路を有する。このため、アルミニウム焼結体ないしはアルミ合金焼結体は、強磁性体に磁気吸着し、また、磁気を伝達する軟磁性材料としての作用も発揮する。また、焼結体に占める鉄微粒子の体積割合は、0.1%程度であるため、焼結体はアルミニウムないしはアルミ合金の性質を発揮して極めて軽量な焼結体である。
Claims (44)
- 部品ないしは基材ないしは素材に、新たな性質を付与する改質を行うことにおいて、
熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を、部品ないしは基材ないしは素材の表面に吸着させ、該部品ないしは該基材ないしは該素材を熱処理して前記有機金属化合物を熱分解し、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に金属微粒子が一斉に析出し、該金属微粒子の集まりが多層構造を形成して前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面を覆い、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、前記金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。 - 請求項1における熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物は、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、前記金属イオンとの間で共有結合によって結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物は熱分解によって金属微粒子を析出する有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物。
- 請求項1における多層構造の表面に、新たな金属微粒子、ないしは新たに金属酸化物の微粒子を一斉に析出させ、該新たな微粒子の集まりが前記多層構造の表層を形成し、これによって、前記多層構造は、表層と内部とが互いに異なる物質からなる微粒子の集まりで構成される新たな多層構造となり、該新たな多層構造が部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、前記新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1に記載した部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項3における新たな金属微粒子を析出する物質は、請求項2におけるカルボン酸金属化合物、ないしは、金属イオンないしは金属原子が、配位子イオンないしは配位子原子と配位結合する金属錯体であって、該カルボン酸金属化合物ないしは該金属錯体が熱分解することで、新たな金属微粒子を析出することを特徴とする、請求項3に記載した新たな金属の微粒子を析出する物質。
- 請求項3における新たに金属酸化物の微粒子を析出する物質は、金属イオンと結合するカルボキシル基を構成する酸素イオンが、前記金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物が熱分解することで、新たに金属酸化物の微粒子を析出することを特徴とする、請求項3に記載した新たに金属酸化物の微粒子を析出する物質。
- 請求項1における多層構造で、ないしは、請求項3における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく撥水性が、前記部品ないしは前記基材の表面に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項6における撥水性が新たに付与される改質が行われる基材は、スクリーン印刷で用いるメタルマスク版、ないしは液体を噴射するノズル、ないしはガラスから構成される製品のいずれかの基材であって、微粒子の集まりからなる多層構造で、前記いずれかの基材の表面を覆うことで、前記微粒子の大きさに基づく撥水性が、前記いずれかの基材の表面に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項6に記載した撥水性が新たに付与される改質が行われる基材。
- 請求項1における多層構造で、ないしは、請求項3における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく潤滑性が、前記部品ないしは前記基材の表面に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項8における潤滑性が新たに付与される改質が行われる部品は、摺動部品ないしは被摺動部品であって、微粒子の集まりからなる多層構造で、摺動部品ないしは被摺動部品の表面を覆うことで、前記微粒子の大きさに基づく潤滑性が、前記摺動部品ないしは前記被摺動部品の表面に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項8に記載した潤滑性が新たに付与される改質が行われる部品。
- 請求項1における多層構造で、ないしは、請求項3における新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の表層を形成する微粒子の大きさに基づく光学的性質が、ないしは、前記多層構造ないしは前記新たな多層構造の厚みに基づく光学的性質が、前記部品ないしは前記基材に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項10における光学的性質が新たに付与される改質が行われる基材は、ガラスから構成される基材であって、微粒子の集まりからなる多層構造で、ガラスから構成される基材の表面を覆うことで、前記多層構造の性質に基づく光学的性質が、前記基材に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項10に記載した光学的性質が新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材。
- 請求項1における多層構造を、ないしは、請求項3における新たな多層構造の表層を、電気導電性と熱伝導性に優れる金属微粒子で構成し、該多層構造ないしは該新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、電気導電性と熱伝導性に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項12における電気導電性と熱伝導性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる基材が、透明基材であって、銅微粒子の集まりからなる多層構造で、ないしは、表層が銅微粒子の集まりからなる新たな多層構造で、前記透明基材の表面を覆うことで、該透明基材に、前記銅微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項12に記載した電気導電性と熱伝導性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる基材。
- 請求項1における多層構造を、ないしは、請求項3における新たな多層構造の表層を、強磁性の金属微粒子で構成し、該多層構造ないしは該新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、強磁性と電気導電性に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項14における強磁性と電気導電性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる基材が、繊維ないしは繊維の集合体であって、強磁性の金属微粒子からなる多層構造で、ないしは、表層が強磁性の金属微粒子からなる新たな多層構造で、前記繊維ないしは前記繊維の集合体を覆うことで、前記強磁性の金属微粒子の性質に基づく性質が、前記繊維ないしは前記繊維の集合体に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項14に記載した強磁性と電気導電性に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる基材。
- 請求項1における多層構造を、ないしは、請求項3における新たな多層構造の表層を、電気絶縁性と熱伝導性と強磁性とを兼備する金属酸化物の微粒子で構成し、該多層構造ないしは該新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆うことで、前記金属酸化物の性質に基づく性質が、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材に、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項16における金属酸化物の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行なわれる素材が磁性粉であって、マグヘマイト微粒子の集まりからなる多層構造で、磁性粉の表面を覆い、これによって、前記磁性粉の表面が絶縁化されることを特徴とする、請求項16に記載した金属酸化物の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる素材。
- 請求項17におけるマグヘマイト微粒子の集まりで、表面を覆うことで、該表面が絶縁化される磁性粉が、アトマイズ純鉄粉ないしは還元鉄粉ないしはアトマイズ合金粉のいずれかの磁性粉であって、該表面が絶縁化された磁性粉の集まりを金型に充填し、該磁性粉の集まりを圧縮し、これによって、前記マグヘマイト微粒子の集まりで表面が絶縁化された前記磁性粉の集まりからなる圧粉磁心を制作することを特徴とする、請求項17に記載したマグヘマイト微粒子の集まりで、表面を覆うことで表面が絶縁化される磁性粉。
- 請求項3における新たな多層構造は、表層が強磁性の金属酸化物からなる硬い微粒子の集まりで構成される第一の特徴と、内部が強磁性の金属微粒子の集まりで構成される第二の特徴とを有し、該二つの特徴を有する新たな多層構造で、部品ないしは基材の表面を覆うことで、該部品ないしは該基材の表面に、前記金属酸化物の微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項19における金属酸化物の微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質が行われる部品が、サーマルヘッドないしは磁気ヘッドであって、表層がマグネタイト微粒子ないしはマグヘマイト微粒子の集まりで構成され、内部が鉄微粒子の集まりで構成される新たな多層構造で、前記サーマルヘッドないしは前記磁気ヘッドの表面を覆い、これによって、前記サーマルヘッドないしは前記磁気ヘッドの表面に、前記マグネタイト微粒子ないしは前記マグヘマイト微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項19に記載した金属酸化物の微粒子の性質に基づく耐摩耗性が、新たに付与される改質が行われる部品。
- 請求項3における新たな多層構造は、表層が極薄い層として形成される第一の特徴と、該表層が触媒作用を有する金属ないしは合金からなる微粒子で構成される第二の特徴とを有し、該二つの特徴を有する新たな多層構造で部品ないしは基材の表面を覆い、これによって、前記部品ないしは前記基材の表面に、前記金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項21における金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与される改質が行われる基材が、メッシュないしは多孔質膜ないしはハニカムフィルタのいずれかの基材であって、表層が触媒作用を有する金属ないしは合金の微粒子からなる新たな多層構造で、前記いずれかの基材の表面を覆い、これによって、前記いずれかの基材の表面に、前記金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項21に記載した金属ないしは合金の微粒子の性質に基づく触媒作用が、新たに付与される改質が行われる基材。
- 請求項1における多層構造で、ないしは、請求項3における新たな多層構造で、部品ないしは基材ないしは素材の表面を覆い、該部品どうし、ないしは該基材どうし、ないしは該素材の集まりを圧縮し、これによって、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面に存在する微粒子のうち、互いに接触する微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記部品どうし、ないしは前記基材どうし、ないしは前記素材の集まりが接合して接合体になり、これによって、前記接合された部品に、ないしは前記接合された基材に、ないしは前記接合された素材の集まりに、接合に伴う性質が新たに付与される改質が行われることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材ないしは素材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項23における微粒子どうしの接合によって基材どうしが接合される接合体が、金属ないしは半導体ないしはセラミックスからなる基材が、微粒子どうしの接合によって、ガラスないしはセラミックスないしは金属からなる基材に接合する接合体であって、該接合体は、前記基材どうしを重ね合わせて前記一方の基材に圧縮荷重を加え、ないしは、前記一方の基材を前記他方の基材に圧入して圧入荷重を加え、これによって、前記基材どうしが重ね合わされた際に、ないしは、前記一方の基材が圧入された際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重ないしは前記圧入荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記基材どうしが接合して接合体が制作される接合体であることを特徴とする、請求項23に記載した微粒子どうしの接合によって基材どうしが接合される接合体。
- 請求項24における半導体ないしはセラミックスからなる基材が、微粒子どうしの接合によって、ガラスからなる基材に接合される接合体が、半導体ないしは絶縁性セラミックスからなる基板が、微粒子どうしの接合によって、ガラスからなる基板に接合する接合体であって、該接合体は、基板どうしを重ね合わせて、一方の基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記基板どうしが重ね合わされた際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記基板どうしが接合して接合体が制作される接合体であることを特徴とする、請求項24に記載した半導体ないしはセラミックスからなる基材が、微粒子どうしの接合によって、ガラスからなる基材に接合される接合体。
- 請求項24における金属からなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属ないしはセラミックスからなる基材に接合される接合体が、金属からなるプリント配線板を、微粒子どうしの接合によって、メタル基板ないしはセラミックス基板に接合する接合体であって、該接合体は、プリント配線板をメタル基板ないしはセラミックス基板に重ね合わせて、前記プリント基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記プリント配線板が前記メタル基板ないしは前記セラミックス基板に重ね合わされた際に、互いに接触した微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記プリント基板が前記メタル基板ないしは前記セラミックス基板に接合して接合体が制作される接合体であることを特徴とする、請求項24に記載した金属からなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属ないしはセラミックスからなる基材に接合される接合体。
- 請求項24における金属ないしはセラミックスからなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属からなる基材に接合される接合体が、金属ないしはセラミックスからなる回路基板を、微粒子どうしの接合によって、金属からなるヒートシンクに接合する接合体であって、該接合体は、回路基板をヒートシンクに重ね合わせて、前記回路基板に圧縮荷重を加える、これによって、前記回路基板を前記ヒートシンクに重ね合わされた際に、互いに接触する微粒子どうしが、前記圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記回路基板が前記ヒートシンクに接合して接合体が制作される接合体であることを特徴とする、請求項24に記載した金属ないしはセラミックスからなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属からなる基材に接合される接合体。
- 請求項24における金属からなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属からなる他の基材に接合される接合体が、金属からなるパイプを、微粒子どうしの接合によって、前記金属とは異なる金属からなるパイプに接合する接合体であって、該接合体は、金属微粒子の多層構造で覆われた一方のパイプを、金属微粒子の多層構造で覆われた他方のパイプに圧入する、これによって、互いに接触する金属微粒子どうしが、圧入荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該金属微粒子どうしの接合によって、前記パイプどうしが接合して接合体が制作される接合体であることを特徴とする、請求項24に記載した金属からなる基材が、微粒子どうしの接合によって、金属からなる他の基材に接合される接合体。
- 請求項23における微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まりは、強磁性微粒子どうしの接合によって接合される磁性粒子の集まりであって、該磁性粒子の集まりは、強磁性の微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりを圧縮する、これによって、互いに接触する前記強磁性微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該強磁性微粒子どうしの接合によって、前記磁性粒子どうしが接合して磁性粒子の集まりが制作される磁性粒子の集まりであることを特徴とする、請求項23に記載した微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まり。
- 請求項29における強磁性微粒子どうしの接合によって接合される磁性粒子の集まりは、鉄微粒子どうしないしはマグネタイト微粒子どうしの接合によって接合される、軟磁性の性質を持つ磁性粒子の集まりからなるシート状の成形体であって、該成形体は、鉄微粒子ないしはマグネタイト微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりをシート状に圧縮する、これによって、互いに接触する前記微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該微粒子どうしの接合によって、前記磁性粒子どうしが接合してシート状の成形体が制作される成形体であることを特徴とする、請求項29に記載した強磁性微粒子どうしの接合によって接合された磁性粒子の集まり。
- 請求項29における強磁性の微粒子どうしの接合によって接合される磁性粒子の集まりは、マグヘマイト微粒子どうしの接合によって接合される、硬磁性の性質を持つ磁性粒子の集まりからなる成形体であって、該成形体は、マグヘマイト微粒子の多層構造で磁性粒子の表面を覆い、該磁性粒子の集まりを容器に充填し、該磁性粒子の集まりに磁界を印加して磁界方向に前記磁性粒子を配向させ、さらに、該磁性粒子の集まりに圧縮荷重を加える、これによって、互いに接触する前記マグヘマイト微粒子どうしが、圧縮荷重を受けた際に摩擦熱で接合し、該マグヘマイト微粒子どうしの接合によって、前記磁性粒子どうしが接合して成形体が制作される成形体であることを特徴とする、請求項29に記載した強磁性の微粒子どうしの接合によって接合された磁性粒子の集まり。
- 請求項23における微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まりは、銅微粒子どうしの接合によって基底面の積層体が接合された基底面の集合体であって、該基底面の集合体は、銅微粒子どうしの接合によって黒鉛粒子を接合して黒鉛粒子の集まりとし、該黒鉛粒子の集まりに圧縮荷重を加え、前記黒鉛粒子の層間結合を破壊させて基底面の積層体とする、これによって、前記基底面の積層体が、前記銅微粒子どうしの接合によって接合される基底面の集合体が制作される基底面の集合体であることを特徴とする、請求項23に記載した微粒子どうしの接合によって接合される素材の集まり。
- 請求項32における基底面の集合体は、シート状ないしはフィルム状からなる基底面の集合体であって、該基底面の集合体は、銅微粒子どうしの接合によって接合された黒鉛粒子の集まりを、シート状ないしはフィルム状に圧縮し、前記黒鉛粒子の層間結合を破壊させて基底面の積層体とする、これによって、前記基底面の積層体が、前記銅微粒子どうしの接合によって接合されたシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体が制作される基底面の集合体であることを特徴とする、請求項32に記載した基底面の集合体。
- 請求項33におけるシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体は、表面が絶縁化された基底面の集合体であって、該基底面の集合体は、シート状ないしはフィルム状からなる基底面の集合体の表面を、マグヘマイトの微粒子の集まりからなる多層構造で覆う、これによって、表面が絶縁化されたシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体が制作される基底面の集合体であることを特徴とする、請求項33に記載したシート状ないしはフィルム状の基底面の集合体。
- 請求項1における多層構造で、ないしは、請求項3における新たな多層構造で、素材の表面を覆い、該素材を軟化ないしは融解させ、該軟化ないしは融解した素材の集まりを加工して、前記素材の集まりからなる部品ないしは基材を制作する、これによって、前記素材の性質に加え、前記多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質がなされる部品ないしは基材が制作されることを特徴とする、請求項1ないしは請求項3に記載した部品ないしは基材に新たな性質を付与する改質。
- 請求項35における素材の集まりからなる部品は、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂の集まりからなる成形品、ないしは、金属微粒子の多層構造で覆われたガラスの集まりからなる成形品であって、該成形品は、合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしはガラスの粉体の表面を、金属微粒子の多層構造で覆い、該合成樹脂のペレットないしは粉体、ないしは該ガラスの粉体の集まりを、押出成形機に投入し、該押出成形機内で前記合成樹脂ないしは前記ガラスを融解し、該融解物を前記押出成形機から押出し、該押し出された前記融解物に二次加工を施す、これによって、金属微粒子の多層構造で覆われた合成樹脂の集まりからなる成形品、ないしは、金属微粒子の多層構造で覆われたガラスの集まりからなる成形品が制作される成形品であることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる部品。
- 請求項35における素材の集まりからなる基材は、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる圧延シートであって、該圧延シートは、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属微粒子より融点が低い金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを圧延ロール機で薄板状に圧延し、さらに、該薄板状の圧延体を、熱間圧延機で前記金属粉ないしは前記合金粉を融解させてシート状に圧延する、これによって、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる圧延シートが制作される圧延シートであることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる基材。
- 請求項35における素材の集まりからなる基材は、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる被膜であって、該被膜は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属微粒子より融点が低い金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを粉末溶射機に充填し、該粉末溶射機内で、前記金属粉ないしは前記合金粉を軟化ないしは融解させ、さらに、該軟化ないしは融解した前記金属粉ないしは前記合金粉を加速させ、該加速した金属粉ないしは合金粉を、部品ないしは基材の表面に連続して衝突させる、これによって、前記部品ないしは前記基材の表面に、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる被膜が制作される被膜であることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる基材。
- 請求項35における素材の集まりからなる部品は、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる鍛造品であって、該鍛造品は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属微粒子より融点が低い非磁性の金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを弾性体からなる容器に充填し、該容器を冷間静水圧加圧装置に配置し、該容器に静水圧を加えて前記金属粉ないしは前記合金粉の集まりを圧縮して仮の成形体を成形し、さらに、該仮の成形体を真空焼成炉に入れ、該仮の成形体から水分とガスとを取り除いた後に、加熱して予備焼成体を成形し、さらに、該予備焼成体を押出成形機に入れて熱間押し出しし、この後、該押出品を鍛造金型に配置して熱と圧力とを加える、これによって、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる鍛造品が制作される鍛造品であることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる部品。
- 請求項35における素材の集まりからなる部品は、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる多孔質焼結体であって、該多孔質焼結体は、カプセル内に制作する多孔質焼結体のダミーを、前記カプセルに対して同心になるように配置し、前記カプセルと前記ダミーとの間隙に、セラミックス粉とバインダーとの混合物を最密充填して、前記カプセルの上蓋を封止し、さらに、該カプセルを熱間静水圧加圧処理装置に配置させ、前記バインダーを融解させるとともに、該カプセルに等方的な圧力を加えて変形させ、これによって、前記セラミックス粉と前記融解したバインダーとの混合物からなる成形体を成形し、さらに、前記カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置から取り出し、前記カプセルの上蓋を取り除いて前記ダミーを取り出し、さらに、前記ダミーが配置されていた間隙に、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記強磁性の金属微粒子より融点が低い非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりを最密充填して、前記カプセルの上蓋を封止し、さらに、該カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置に配置して、前記非磁性の金属粉ないしは合金粉を融解させた後に、前記カプセルに等方的な圧力を加えて変形させ、これによって、前記非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりからなる成形体を成形し、さらに、前記カプセルを前記熱間静水圧加圧処理装置から取り出して、前記カプセルの上蓋を取り除いて、該カプセルから前記非磁性の金属粉ないしは合金粉の集まりからなる成形体を取り出す、これによって、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる多孔質焼結体が制作される多孔質焼結体であることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる部品。
- 請求項35における素材の集まりからなる部品は、強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる焼結品であって、該焼結品は、強磁性の金属微粒子の多層構造によって、前記強磁性の金属微粒子より融点が低い非磁性の金属粉ないしは合金粉の表面を覆い、該金属粉ないしは該合金粉の集まりを有機物の溶解液に投入し、該金属粉ないしは該合金粉の表面に前記有機物の溶解液を吸着させ、さらに、前記金属粉ないしは前記合金粉の集まりを射出成形機に投入し、該射出成形機内で、前記有機物の溶解液の溶剤を気化させた後に、前記金属粉ないしは前記合金粉の集まりを射出して成形品を成形し、さらに、該成形品を焼結金型に配置させ、前記有機物を昇華させた後に、前記金属粉ないしは前記合金粉を融解させ、さらに、締めつけ力を加える、これによって、前記強磁性の金属微粒子の多層構造で覆われた前記非磁性の金属ないしは合金の集まりからなる焼結品が制作される焼結品であることを特徴とする、請求項35に記載した素材の集まりからなる部品。
- 請求項1における多層構造を構成する金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材ないしは素材を製造する製造方法は、
熱処理で金属と有機物とに分解する有機金属化合物を、有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなる製造方法であって、該製造方法によって、前記有機金属化合物の熱分解で析出した金属微粒子の集まりが、多層構造を形成して前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面を覆い、これによって、前記金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを製造することを特徴とする、請求項1に記載した多層構造を構成する金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材ないしは素材を製造する。 - 請求項3における新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材ないしは素材を製造する第一の製造方法は、
第一の金属微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が低い第一の有機金属化合物と、第二の金属微粒子ないしは金属酸化物の微粒子を熱分解で析出する相対的に熱分解温度が高い第二の有機金属化合物とを、有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程からなる、連続した4つの製造工程からなる製造方法であって、該製造方法によって、内部が前記第一の金属微粒子で、表層が前記第二の金属微粒子ないしは前記金属酸化物の微粒子で構成された多層構造で、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面が覆われ、これによって、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質とに基づく性質が、ないしは、前記第一の金属微粒子の性質と前記金属酸化物の性質とに基づく性質が、新たに付与される改質が行われる前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを製造することを特徴とする、請求項3に記載した新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる、部品ないしは基材ないしは素材を製造する。 - 請求項3における新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材ないしは素材を製造する第二の製造方法は、
第一の金属微粒子を熱分解で析出する第一の有機金属化合物を有機溶剤に分散させて分散液を作る第1の製造工程と、前記分散液に、部品ないしは基材ないしは素材の集まりを浸漬させる第2の製造工程と、前記分散液を、前記有機溶剤の沸点に昇温する第3の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気で前記第一の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第4の製造工程と、第二の金属微粒子を熱分解で析出する第二の有機金属化合物を、有機溶剤に分散させて分散液を作る第5の製造工程と、前記第二の有機金属化合物の分散液に、前記第4の製造工程で熱処理を行った前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを浸漬させる第6の製造工程と、前記第5の製造工程で作った分散液を、有機溶剤の沸点に昇温する第7の製造工程と、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを、大気雰囲気ないしは還元雰囲気で前記第二の有機金属化合物の熱分解が完了する温度に昇温する第8の製造工程からなる、連続した8つの製造工程からなる製造方法であって、該製造方法によって、内部が前記第一の金属微粒子で、表層が前記第二の金属微粒子で構成された多層構造で、前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の表面が覆われ、これによって、前記第一の金属微粒子の性質と前記第二の金属微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる前記部品ないしは前記基材ないしは前記素材の集まりを製造することを特徴とする、請求項3に記載した新たな多層構造を構成する微粒子の性質に基づく性質が、新たに付与される改質が行われる部品ないしは基材ないしは素材を製造する。
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