JP2017014473A - 焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤 - Google Patents
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Abstract
Description
軸受装置は、転がり軸受装置と滑り軸受装置とに2分される。転がり軸受は、転動体と呼ばれる部品が軸部材の回転と荷重とを支持する。この転動体は保持器によって保持され、内輪と外輪とで構成される軌道面上を転動するため、すべり軸受より大型でかつ高価である。また、軸部材の高速回転時には、転動体の慣性力が増大して転動体の保持器に過大の負荷を加える。あるいは、静荷重下でも転動体の軌道面には繰り返し応力が印加される。このため、流体潤滑を利用したすべり軸受に比べると寿命は短い。さらに転動体の転がりによって、静粛性はすべり軸受より劣る。
いっぽう滑り軸受は、滑り面に存在する潤滑油の油膜で軸部材の回転と荷重とを支持する。滑り面に潤滑油を供給する潤滑装置ないしは潤滑機構を設けた動圧・静圧軸受に比べ、滑り面に潤滑油を供給する手段を省いた含油軸受は小型で安価なため、動圧・静圧軸受に比べより多くの産業機器に用いられている。
しかし、焼結金属からなる多孔質体に設けられる内部気孔の体積は30%余りに制限され、制限された含浸油の量で動作寿命が決まる。さらに、多孔質体は、潤滑油を内部に真空含浸できる構造と、滑り面へ潤滑油が供給できる構造とを兼備するため、気孔は通気性を有する。この気孔の通気性によって、含油軸受が使用できる負荷に制約がある。
しかし、すべり面に存在する通気性の気孔によってすべり面の油圧が逃げ、含油軸受が適応できる軸受面圧Pは1MPaまでであるとされている。さらに、高速回転においては、通気性の気孔によってすべり面に供給される潤滑油が過小になり、含油軸受で適応できる軸部材の滑り速度は300m/minが限度であるとされている。
また、自動車に搭載された軸受装置の中には、−40℃における始動性と、すべり面の最高温度250℃における連続動作とが求められる軸受装置がある。低温の始動時には、含浸油がすべり面に滲み出にくいため、すべり面の焼付きや凝着が起こりやすくなる。また、低温の始動時には潤滑油の粘性が大きいため摩擦力が過大となり、軸部材の回転力を低減させる。反対に、高温の連続動作では、含浸油がすべり面に滲み出やすくなり、また、潤滑油の蒸気圧が高まって、含浸油が枯渇し易くなる。あるいは、すべり面における潤滑油の熱分解が進行し、潤滑油の潤滑性が損なわれる。
含油軸受では、軸部材の回転速度Nが低下し軸受面圧Pが増大すると、動作時の摩擦係数μは理想的な摩擦係数μから外れて増大する。つまり、低速回転時に軸受面圧Pが増大すると、気孔の通気性によって軸受面圧Pがリークし易くなり、すべり面に油膜が存在しなくなり、部分的に軸部材と軸受部材とが直接接触する境界潤滑の摩擦が支配的になり、軸受部材のすべり面における焼付や凝着が起こり易くなる。
また、潤滑油を滑り面に吸着しやすい性質とし、吸着活性が高い無極性潤滑油と吸着活性が高い軸受材料とを組み合わせる事例がある(例えば、非特許文献1および2を参照)。この事例においても、流体潤滑の領域が多少広がる効果はあるが、滑り面の気孔の通気性によって流体潤滑が広がる領域には自ずと限界がある。
第一の潤滑剤の作用は、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸した潤滑剤の自己給油性で滲み出た潤滑剤が、軸部材の滑り面に吸着し、この吸着した潤滑剤が、滑り面での流体潤滑を永続する。このため、過大な軸荷重を受けて多孔質体の滑り面の軸受面圧が増大し、軸受面圧が多孔質体の気孔からリークしても、軸部材に吸着した潤滑剤によって流体潤滑が続く。また、軸部材の高速回転時に、多孔質体の滑り面に潤滑剤を引き出す力が強くなるが、滑り面に吸着した潤滑剤が障害となって潤滑剤の引き出しを抑制する。また、高温動作時に潤滑剤が体積膨張し、多孔質体の滑り面に供給される潤滑剤が過多になるが、滑り面に吸着した潤滑剤が障害となって、滑り面への潤滑剤の供給を抑制する。さらに、軸部材の低速回転時に、多孔質体の滑り面に潤滑剤を引き出す力が弱くなるが、滑り面に吸着した潤滑剤の存在で境界潤滑に至らない。また、低温動作時に多孔質体の滑り面に潤滑剤が供給されにくくなるが、滑り面に吸着した潤滑剤の存在で境界潤滑に至らない。
第二の潤滑剤の作用は、軸部材に吸着した潤滑剤に依る流体潤滑が、潤滑剤の粘度に依存しない。このため、極低温で潤滑剤の粘度が著しく増大しても、また、高温で潤滑剤の粘度が低下しても、さらに、潤滑剤が熱劣化しても流体潤滑を続ける。
第三の潤滑剤の作用は、軸部材に吸着した潤滑剤に依る流体潤滑が、潤滑剤を構成する液体が蒸発しても流体潤滑を続ける。つまり、潤滑剤が沸点を有する液体のみで構成されず、液体と固体との複数種類の物質から構成されれば、高温動作が継続して潤滑剤を構成する液体が蒸発しても、残存した固体の物質が流体潤滑を続ける。
これら3つの作用を滑り面で発揮する画期的な潤滑剤を実現させることが、本発明が解決しようとする課題である。
焼結金属からなる多孔質体に真空含浸した潤滑剤が自己給油性で滑り面に滲み出ると、固体の金属酸化物の粒状微粒子と、液体の有機化合物と潤滑油との球状微粒子とからなる、3種類の微粒子の集まりからなる皮膜が、多孔質体と軸部材との滑り面に形成される。
いっぽう、金属酸化物が自発磁化を持つ硬磁性体であり、軸部材が軟磁性体であるため、金属酸化物の粒状微粒子と軸部材との間で磁気吸引力が作用する。従って、金属酸化物の微粒子の数を、有機化合物と潤滑油との双方の微粒子の数より多くすれば、有機化合物と潤滑油との双方の微粒子が、金属酸化物の微粒子で囲まれ、非磁性体である有機化合物と潤滑油との微粒子にも磁気吸引力が作用する。この結果、3種類の微粒子の集まりからなる皮膜が、軸部材の滑り面に磁気吸着し、重量を殆ど持たない微粒子は滑り面から脱落しない。従って、この皮膜に依る流体潤滑が滑り面で永続する。つまり、滑り面に微粒子の集まりからなる皮膜が磁気吸着するため、多孔質体と軸部材とが直接接触する固体同士の境界潤滑に至らず、微粒子が応力を受けると自己潤滑性を発揮し、微粒子が滑ることに依って潤滑する、全く新たな原理に基づく流体潤滑が滑り面で継続する。なお、軸部材は、機械的強度を有する軟磁性体からなる様々な鋼で形成される。いっぽう、焼結金属からなる多孔質体は非磁性体であり、多孔質体に真空含浸した潤滑剤に、多孔質体との間で磁気吸引力は作用しない。また、金属酸化物は微粒子であるため磁気力が小さく、滑り面の温度上昇による潤滑剤の体積膨張が勝り、潤滑剤は滑り面に滲み出る自己給油性を持つ。
この微粒子が滑ることに依って潤滑する、全く新たな原理に基づく流体潤滑は、含油軸受の原理と含浸油の性質に基づく従来の課題を根本的に解決する優れた作用効果をもたらす。第一に、過大な軸荷重を受けて多孔質体の滑り面の軸受面圧が増大し、滑り面の気孔から軸受面圧がリークしても、滑り面に磁気吸着した皮膜が流体潤滑を続ける。第二に、軸部材の高速回転時に、多孔質体の滑り面に潤滑剤を引き出す力が強くなるが、滑り面に磁気吸着した皮膜の存在が障害となって潤滑剤の引き出しを抑制し、潤滑剤が枯渇しない。第三に、高温動作時に潤滑剤の体積膨張で、多孔質体の滑り面に潤滑剤が過多に供給されようとするが、滑り面に磁気吸着した皮膜の存在が障害となって潤滑剤の供給を抑制し、潤滑剤が枯渇しない。第四に、軸部材の低速回転時に、多孔質体の滑り面に潤滑剤を引き出す力が弱くなるが、滑り面に磁気吸着した皮膜の存在で境界潤滑に至らない。第五に、低温動作時に多孔質体の滑り面に潤滑剤が供給されにくくなるが、滑り面に磁気吸着した皮膜の存在で境界潤滑に至らない。第六に、軸部材が滑り面を滑る際に、3種類の微粒子に応力が加わるが、3種類の微粒子が滑ることで応力が緩和され、軸部材は多孔質体の滑り面を攻撃しない。第七に、固体の粒状微粒子と液体の球状微粒子との接触に依る摩擦力は、液体の球状微粒子が優先して滑るため小さい。また、液体の球状微粒子同士の接触に依る摩擦力は、両者が滑るため小さい。この結果、流体潤滑における摩擦力は小さく、従来の含油軸受より静粛性が高い。第八に、3種類の微粒子の自己潤滑性は、微粒子の形状効果に依るため、微粒子が滑ることに依る流体潤滑は、液体の粘度の変化の影響を受けない。このため、極低温で有機化合物と潤滑油との粘度が増大しても、微粒子が滑ることに依る流体潤滑が継続し、軸部材の低温始動時の回転力が低減しない。また、高温で有機化合物と潤滑油との粘度が低下しても、微粒子が滑ることに依る流体潤滑が継続し、境界潤滑に至らない。さらに、潤滑油が熱劣化しても、潤滑油の球状微粒子は、滑ることに依る流体潤滑を続ける。第九に、軸部材が静荷重を多孔質体の滑り面に加えても、3種類の微粒子の大きさが、軸部材の表面粗さより一桁以上小さいため、3種類の微粒子の集まりが軸部材の滑り面に磁気吸着して皮膜を形成する。この皮膜に静荷重が加えられると、3種類の微粒子が自己潤滑性を発揮し、加えられた静荷重を緩和させ、多孔質体の滑り面は疲労しない。第十に、磁気吸着した皮膜は、厚みに対する表面積の比率が極めて大きいため、滑り面の昇温を抑える冷却作用を発揮する。第十一に、含油軸受が高温で連続稼働し、潤滑油の低揮発成分が蒸発しても、3種類の微粒子は滑ることに依る流体潤滑を続ける。含油軸受が高温でさらに連続稼働し、潤滑油の多くが蒸発しても、有機化合物が380℃を超える沸点であるため、3種類の微粒子が滑ることに依る流体潤滑を続ける。含油軸受が高温でさらに連続稼働し、高沸点の有機化合物が蒸発し、潤滑油の多くが蒸発しても、400℃以上でも自発磁化を失わない金属酸化物の粒状微粒子の集まりが軸部材に磁気吸着し、粒状微粒子が滑ることに依る流体潤滑を続ける。このように、滑り面に磁気吸着した3種類の微粒子は、滑り面が高温になっても流体潤滑を続ける。第十二に、含油軸受が潤滑油の流動点より低い温度で動作しても、有機化合物の融点が、潤滑油の流動点より一段と低い−30℃より低い温度であるため、軸部材の低温始動性を悪化させることなく、有機化合物の微粒子は流体潤滑を続ける。
以上に説明したように、本特徴構成における焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤は、3種類の微粒子からなる皮膜が滑り面に磁気吸着し、3種類の微粒子が滑ることに依る流体潤滑が滑り面で永続する。この結果、10段落で説明した3つの性質を兼備する潤滑剤が実現され、含油軸受の原理と含浸油の性質に基づく課題が根本的に解決できた。
なお、含油軸受装置に用いられる潤滑油は、炭素数がC15〜C50で、分子量が200〜700で、常圧換算の沸点が250℃〜600℃の範囲に及び、流動点は−10℃〜−25℃に及ぶ。また、自動車部品の含油軸受装置では、高温の連続動作が継続すると滑り面が250℃まで昇温する場合がある。しかし、含油軸受装置においては、潤滑油を構成するベースオイルの多くが蒸発する温度まで滑り面が昇温することは少ない。また、潤滑油の流動点の降下剤に依る降下点より低い温度で、含油軸受装置が稼働されることはない。
また、超音波ホモジナイザーを用いて混合液を撹拌すると、有機化合物と潤滑油との微粒子化が短時間で進む。つまり、超音波振動を液体に加えると、超音波の周波数に応じた極めて短い周期で、超音波の縦振動による加圧と減圧とが液体で繰り返され、液体に大きな圧力差が発生する。この圧力差に依って微小な泡(キャビテーション)が発生し、この泡が液体中で縦振動を受けて弾けまたは潰れた瞬間に大きな衝撃波が起こり、この大きな衝撃波によって粒子が引きちぎられまたぶつかり合い、粒子の微粒子化が短時間で進む。この粒子の微粒子化は、粒子が衝撃波で潰れない球状の微粒子まで進み、この球状の微粒子は、応力を受けると自らが滑ることで応力を緩和する自己潤滑性を持つ。
第一にマグネタイトとマグヘマイトとの双方は、硬磁性の一種のフェリ磁性の性質を持つ。このため、軸部材が軟磁性体であるため、自発磁化を持つマグネタイトないしはマグヘマイトからなる粒状微粒子に、軸部材との間で磁気吸引力が常時作用する。従って、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子の数を、有機化合物と潤滑油との微粒子の数より多くすれば、有機化合物と潤滑油との双方の微粒子が、金属酸化物の微粒子で囲まれ、非磁性体である有機化合物と潤滑油との微粒子にも磁気吸引力が作用し、3種類の微粒子の集まりからなる皮膜が、軸部材の滑り面に磁気吸着し、重量を殆ど持たない3種類の微粒子は滑り面から脱落しない。なお、含油軸受装置で用いる軸部材は、機械構造用炭素鋼の炭素の含有量が0.25wt%から0.45wt%のS25CからS45Cや、炭素量が0.45wt%以上の炭素鋼ないしはニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼などの合金鋼から構成され、これらの鋼はいずれも軟磁性体である。
第二にマグネタイトの磁気キュリー点は585℃であり、マグヘマイトの磁気キュリー点は675℃である。なおマグヘマイトは、大気中の450℃以上の温度で酸化鉄(III)のα相であるヘマタイトα−Fe2O3に相転移する。この相転移は不可逆変化である。従って、潤滑油のベースオイルが蒸発するような高い温度であっても、マグネタイトとマグヘマイトとは硬磁性の性質を示す。
第三にマグネタイトのモース硬度が5.5であり、マグヘマイトのモース硬度が6.0であり、いずれも硬い粒状微粒子である。従って、軸部材が滑り面を滑る際に、マグネタイトないしはマグヘマイトの粒状微粒子は、応力を受けても破壊されない。この際、粒状微粒子が液体の球状微粒子と接する場合は、液体の球状微粒子が自己潤滑作用で優先して滑る。また、軸部材によって静荷重が加えられた際は、粒状微粒子は破壊されず、3種類の微粒子の大きさが、軸受部材の表面粗さより一桁以上小さいため、3種類の微粒子の集まりが軸部材の滑り面に磁気吸着し、自己潤滑性を発揮して加えられた静荷重を緩和させ、多孔質体の滑り面が疲労しない。
第四にマグネタイトとマグヘマイトとの双方は、腐食しにくい安定した鉄の酸化物であるため、腐食することなく粒状微粒子に依る流体潤滑を続ける。
従って、ナフテン酸鉄(II)を有機化合物中で熱分解させて、酸化鉄(II)FeOの粒状微粒子を析出させ、この酸化鉄(II)FeOの粒状微粒子を酸化させると、マグネタイトFe3O4の粒状微粒子が生成される。さらに、マグネタイトFe3O4の粒状微粒子を酸化させると、マグヘマイトγ−Fe2O3の粒状微粒子が生成される。このため、ナフテン酸鉄(II)はマグネタイトの粒状微粒子とマグヘマイトの粒状微粒子とを生成する原料になる。
すなわち、ナフテン酸鉄(II)は、ナフテン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンO−が配位子になって、鉄イオンFe2+に近づいて鉄イオンFe2+に配位結合する錯体である。つまり、最も大きいイオンである鉄イオンFe2+に酸素イオンO−が近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、鉄イオンFe2+に配位結合する酸素イオンO−が、鉄イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つナフテン酸鉄(II)は、ナフテン酸の主成分の沸点を超えると、ナフテン酸鉄(II)におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンO−が鉄イオンFe2+の反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、鉄イオンFe2+と酸素イオンO−との化合物である酸化鉄(II)FeOとナフテン酸とに分解する。さらに昇温すると、ナフテン酸が気化熱を奪って気化し、ナフテン酸の気化が完了すると、酸化鉄(II)FeOが析出して熱分解を終える。なお、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、CnH2n−1COOHからなる一般式で示され、主成分は沸点が268℃で分子量が170のC9H17COOHからなる。
なお、ナフテン酸鉄は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的な有機酸であるナフテン酸を、アルカリ金属と反応させるとナフテン酸アルカリ金属化合物が生成され、ナフテン酸アルカリ金属化合物を無機鉄化合物と反応させると、ナフテン酸鉄が合成される。また、ナフテン酸は、有機酸の中で沸点が低いため、大気雰囲気で340℃程度の温度でナフテン酸鉄(II)が熱分解し、酸化鉄(II)FeOが析出する。このようなナフテン酸鉄は、塗料・印刷インキ用のドライヤー、ゴム・タイヤの接着剤、潤滑油の極圧剤、ポリエステルの硬化剤、助燃剤や重合触媒などに汎用的に使用されている。
以上に説明したように、本特徴構成に依れば、ナフテン酸鉄(II)はマグネタイトとマグヘマイトとの粒状微粒子を生成する安価な原料になる。
なお、ナフテン酸鉄(II)の熱分解を介して生成されるマグネタイトとマグヘマイトとは、酸化鉄(II)の粒状微粒子の酸化によって生成されるため、針状微粒子ではなく粒状微粒子である。この粒状微粒子は針状微粒子と比べると、以下に説明する多くの長所を持つ。すなわち、従来の技術では、硫酸第一鉄ないしは硫酸第二鉄のアルカリ性の水溶液に大気を送って反応させると、ゲータイトと呼ばれる水酸化鉄(III)α−FeO(OH)の針状微粒子が析出する。このゲータイトを、水素ガスの雰囲気で一度脱水させてヘマタイトα−Fe2O3とし、さらに還元して針状のマグネタイト微粒子を生成する。この後、マグネタイト微粒子を大気中でゆっくりと加熱酸化させると、針状のマグヘマイト微粒子が生成される。針状微粒子は応力を受けた際に自らが滑らず、このため自己潤滑性を持たない。また、針状微粒子同士が近づくと互いに磁気吸着し、質量を殆ど持たない針状微粒子同士の磁気吸着を解除するのが困難であるため、潤滑剤に均一に針状粒子を分散させることは困難になる。さらに、マグネタイトとマグヘマイトとの針状微粒子を生成する製造工程は、ナフテン酸鉄(II)の熱分解を介してマグネタイトとマグヘマイトとの粒状微粒子を生成する製造工程に比べ、より多くの複雑な製造工程が必要になり製造費が高い。
すなわち、有機化合物がアルコールに溶解ないしは混和する性質を持つため、ナフテン酸鉄(II)をアルコールに分散したアルコール分散液に有機化合物を混合すると、ナフテン酸鉄(II)と有機化合物とが均一に混ざり合う。従って、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子の数を、有機化合物と潤滑油との双方の微粒子の数より多くし、有機化合物と潤滑油との双方の微粒子が、金属酸化物の微粒子で囲む場合は、ナフテン酸鉄の使用量を有機化合物と潤滑油との使用量より過多とする必要があるが、ナフテン酸鉄を多量のアルコールに分散すれば、有機化合物が容易にアルコール分散液に溶解ないしは混和する。さらに、有機化合物はアルコールより粘度が高い性質を持つため、軸受部材と軸部材との滑り面に、粘度を有する球状微粒子を形成し、この球状微粒子は応力によって潰れず、自らが滑ることで応力を緩和する自己潤滑作用を発揮する。
さらに、有機化合物の沸点は、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子が生成される380℃より高い性質を持つ。このため、前記した混合液を大気中で熱処理すると、最初にアルコールが気化し、有機化合物中にナフテン酸鉄(II)の微細結晶が均一に析出する。さらに340℃まで昇温すると、ナフテン酸鉄(II)が熱分解し、有機化合物中に酸化鉄(II)FeOの40nm〜60nmの大きさからなる粒状微粒子が均一に析出する。さらに、昇温速度を抑えて380℃まで昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の一部が酸化されて3価の鉄イオンFe3+になってFe2O3になり、組成式がFeO・Fe2O3のマグネタイトFe3O4の40nm〜60nmの大きさからなる粒状微粒子が生成される。さらに、380℃に一定時間放置すると、酸化鉄(II)FeOにおける2価の鉄イオンFe2+の全てが3価の鉄イオンFe3+に酸化され、マグヘマイトγ−Fe2O3の40nm〜60nmの大きさからなる粒状微粒子が生成される。この結果、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる粒状微粒子が、有機化合物中に均一に析出する。さらに、潤滑油を混合して撹拌すれば、多孔質体に真空含浸する潤滑剤となる懸濁液が作成される。
また有機化合物の融点は、潤滑油の流動点より一段と低い−30℃より低い温度であるため、含油軸受装置が潤滑油の流動点より低い温度で稼働されても、軸部材の低温始動性を悪化させることなく、有機化合物の球状微粒子が流体潤滑を続ける。
さらに、有機化合物は、潤滑油と相溶しない性質を持つ。これによって、有機化合物と潤滑油との混合液を撹拌すると、粒子同士が引きちぎられまたぶつかり合って微粒子化を進め、応力を受けても粒子が潰れない球状微粒子を形成し、この球状微粒子は応力を受けた際に自らが滑ることで応力を緩和する自己潤滑性を持つ。
従って、第三特徴構成におけるナフテン酸鉄(II)をアルコールに分散したアルコール分散液に、カルボン酸エステルを混合すると、アルコール中にナフテン酸鉄(II)とカルボン酸エステルとが均一に混ざりあった混合液になる。この混合液を大気中で熱処理する。アルコールを気化させた後に340℃まで昇温すると、ナフテン酸鉄(II)が熱分解し、カルボン酸エステル中に酸化鉄(II)FeOの粒状微粒子が均一に析出する。さらに、昇温速度を抑えて380℃まで昇温すると、酸化鉄(II)FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の一部が酸化されて3価の鉄イオンFe3+になってFe2O3になり、組成式がFeO・Fe2O3のマグネタイトFe3O4の粒状微粒子が生成される。さらに380℃に一定時間放置すると、酸化鉄(II)FeOにおける2価の鉄イオンFe2+の全てが3価の鉄イオンFe3+に酸化され、酸化鉄(III)Fe2O3のガンマ相であるマグヘマイトγ−Fe2O3の粒状微粒子が生成される。この結果、マグネタイトないしはマグヘマイトからなる粒状微粒子の集まりが、カルボン酸エステル中に均一に析出する。このカルボン酸エステルに潤滑油を混合して撹拌すれば、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤となる懸濁液が作成される。
ナフテン酸鉄(II)をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液にカルボン酸エステル類に属する有機化合物を混合して混合液を作成する第二の工程と、該混合液を大気雰囲気で熱処理し、前記有機化合物中にマグネタイトないしはマグヘマイトのいずれか一方の材質からなる粒状微粒子の集まりを析出させる第三の工程と、前記第三の工程で熱処理した混合液に潤滑油を混合し、撹拌して懸濁液からなる潤滑剤を作成する第四の工程とからなり、これら4つの工程を連続して実施する方法が、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤を製造する製造方法である点にある。
この潤滑剤を焼結金属からなる多孔質体に真空含浸し、潤滑剤が自己給油性で滑り面に滲み出ると、マグネタイトないしはマグヘマイトのいずれか一方の材質からなる粒状微粒子と、有機化合物と潤滑油との球状微粒子とからなる、3種類の微粒子の集まりからなる皮膜が、軸部材の滑り面に磁気吸着する。この皮膜は、微粒子の自己潤滑作用に依る流体潤滑が滑り面で永続する。また、この流体潤滑は微粒子の形状効果に依るため、有機化合物と潤滑油との粘度の変化の影響を受けずに流体潤滑を行う。また、皮膜が3種類の微粒子から構成されるため、有機化合物と潤滑油とが蒸発したとしても、マグネタイトないしはマグヘマイトのいずれか一方の材質からなる粒状微粒子によって流体潤滑が続く。このように、含油軸受の原理と含浸油の性質に基づく従来の課題を根本的に解決する画期的な潤滑剤が、安価な原料を用いて安価な費用で製造できる。
なお、カルボン酸エステル類は、飽和カルボン酸からなる第一のエステル類と、不飽和カルボン酸からなる第二のエステル類と、芳香族カルボン酸からなる第三のエステル類と、2つのカルボキシル基を持つジカルボン酸からなる第四のエステル類とからなる。
沸点が380℃より高く、アルコールに溶解ないしは混和し、アルコールより粘度が高いカルボン酸エステルは、ステアリン酸ブチル以上の分子量を持つステアリン酸エステル類である。なお、ステアリン酸ブチルの沸点は389℃であるが融点が18℃と高く、ステアリン酸オクチルの沸点は432℃であるが流動点が7℃と高い。従って、融点が高い飽和カルボン酸からなるエステル類は、潤滑剤を構成する有機化合物として適切でない。
このうち沸点が380℃より高く、アルコールに溶解ないしは混和し、アルコールより粘度が高いカルボン酸エステルは、オレイン酸エチル以上の分子量を持つオレイン酸エステル類である。ちなみに、オレイン酸エチルの沸点は386℃で融点が−32℃で、オレイン酸ブチルの沸点は415℃で融点が−55℃であり、融点は潤滑油の流動点より一段と低い。なお、オレイン酸エステル類は、パラフィン系オイルと相溶しない。
最初に、オレイン酸ブチルにマグネタイトの微粒子を析出させる。このため、ナフテン酸鉄の2モルに相当する796グラムをメタノールに10重量%として分散させ、このメタノール分散液にオレイン酸ブチルの0.03モルに相当する10グラムを混合した。この混合液を大気中で熱処理する。なお、2モルのナフテン酸鉄から生成されるマグネタイトの体積は29.7cm3で、0.03モルのオレイン酸ブチルの体積11.67cm3の2.5倍に相当する。
最初に混合液を65℃に昇温してメタノールを気化させ、オレイン酸ブチルにナフテン酸鉄の微細結晶を均一に析出させた。次に40℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温し、5分間340℃に放置してナフテン酸鉄を熱分解し、酸化鉄(II)FeOの粒状微粒子をオレイン酸ブチルに均一に析出させた。この後1℃/min.の昇温速度で380℃まで昇温し、380℃に2分間放置し、酸化鉄(II)FeOをマグネタイトFe3O4に酸化させ、0.03モルのオレイン酸ブチル中に、2モルに相当するマグネタイトの粒状微粒子の集まりを均一に析出させた。
次に、熱処理した混合液に、潤滑油の11グラム(12.2cm3の体積)を混合し、超音波ホモジナイザー(日本エマソン株式会社の製品)によって、20kHzの超音波振動を混合液に30秒間加え潤滑剤1を作成した。さらに、潤滑剤1の一部を取り出し、20kHzの超音波振動を懸濁液1に5分間加え、潤滑剤2を作成した。さらに、潤滑剤2を取り出し、20kHzの超音波振動を潤滑剤2に10分間加え、潤滑剤3を作成した。なお、2モルのナフテン酸鉄から生成されるマグネタイトの体積は、11グラムの潤滑油の体積の2.4倍に相当する。
なお、超音波振動ホモジナイザーは、12段落で説明したように、微小な泡(キャビテーション)を利用し、乳濁液ないしは懸濁液を構成する液体の粒子を微粒子化させる装置であり、超音波の極めて短い周期の縦振動によって短時間で粒子の微粒子化が進む。
最初に、極低加速電圧の100Vを印加して3種類の潤滑剤の切断面を観察した。この結果、アルミニウム板の間隙に全ての潤滑剤が10μmの厚みの皮膜を形成し、この皮膜は潤滑剤1では2μm程度の粒子の集まりからなり、潤滑剤2では0.2μm程度の球状微粒子からなり、潤滑剤3では同様に0.2μm程度の球状微粒子の集まりから構成され、さらに各々の皮膜にはさらに小さい微粒子が無数に分散されていることが分かった。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行ない、前記したさらに小さい微粒子を観察した。この結果、40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子であった。
さらに、40nm〜60nmの大きさの粒状微粒子について、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子の材質を観察した。濃淡が認められため、複数種類の元素から形成されていることが分かった。
次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し元素を分析した。粒状微粒子は、鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄である。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果、粒状の微粒子がマグネタイトFe3O4であることが確認できた。なおEBSP解析機能とは、試料に電子線を照射したとき、反射電子が試料中の原子面によって回折されることによってバンド状のパターンを形成し、このバンドの対称性が結晶系に対応し、バンドの間隔が原子面間隔に対応しているため、このパターンを解析することで、結晶方位や結晶系が解析できる。
これらの結果から、超音波ホモジナイザーによって、オレイン酸ブチルと潤滑油との粒子の微細化が短時間で進み、粒子の微粒子化は0.2μmで終えることが分かった。この超音波ホモジナイザーにおける衝撃波による粒子の微粒子化は、含油軸受装置において潤滑剤に加えられるせん断応力ないしは圧縮応力によって、粒子が微粒子化する現象に該当する。従って、含油軸受装置の滑り面においては、オレイン酸ブチルと潤滑油とは0.2μmの球状微粒子となり、0.2μmの球状微粒子は応力を受けてもさらに微細な粒子にはならず、自らが滑ることで応力を緩和する自己潤滑性を発揮する。
本実施例において作成した潤滑剤2及び3が形成する皮膜構造の一部を、図1に拡大して模式的に示す。潤滑剤2及び3は皮膜1を形成し、この皮膜1は、40nm〜60nmのマグネタイトの粒状微粒子4が、オレイン酸ブチルからなる0.2μmの球状微粒子2と、潤滑油からなる0.2μmの球状微粒子3とを覆い、マグネタイトの微粒子4で覆われたオレイン酸ブチルの球状微粒子2と潤滑油の球状微粒子3とが無数に分散された構成からなる。
最初に、オレイン酸ブチルにマグヘマイトの粒状微粒子を析出させる。このため、ナフテン酸鉄の2モルに相当する796グラムをメタノールに10重量%として分散させ、このメタノール分散液にオレイン酸ブチルの0.03モルに相当する10グラムを混合した。この混合液を大気中で熱処理する。なお、2モルのナフテン酸鉄から生成されるマグヘマイトの体積は、0.03モルのオレイン酸ブチルの体積の2.5倍に相当する。
最初に混合液を65℃に昇温してメタノールを気化し、オレイン酸ブチルにナフテン酸鉄の微細結晶を均一に析出させた。次に40℃/min.の昇温速度で340℃まで昇温し、5分間340℃に放置してナフテン酸鉄を熱分解し、酸化鉄(II)FeOの粒状微粒子をオレイン酸ブチルに析出させた。この後、1℃/min.の昇温速度で380℃まで昇温し、30分間380℃に放置し、酸化鉄(II)FeOをマグヘマイトγ−Fe2O3に酸化させ、0.03モルのオレイン酸ブチル中に、2モルに相当するマグヘマイトの粒状微粒子の集まりを均一に析出させた。
次に、熱処理した混合液に、潤滑油の11グラムを混合し、実施例1と同様に超音波ホモジナイザーによって、20kHzの超音波振動を混合液に30秒間加え潤滑剤4を作成した。さらに、潤滑剤4の一部を取り出し、20kHzの超音波振動を懸濁液4に5分間加え、潤滑剤5を作成した。さらに、潤滑剤5を取り出し、20kHzの超音波振動を潤滑剤5に10分間加え、潤滑剤6を作成した。なお、2モルのナフテン酸鉄から生成されるマグヘマイトの体積は、11グラムの潤滑油の体積の2.4倍に相当する。
最初に、極低加速電圧の100Vを印加して3種類の潤滑剤の切断面を観察した。この結果、アルミニウム板の間隙に全ての潤滑剤が10μmの厚みの皮膜を形成し、この皮膜は潤滑剤4では2μm程度の粒子の集まりからなり、潤滑剤5では0.2μm程度の球状微粒子からなり、潤滑剤6では同様に0.2μm程度の球状微粒子の集まりから構成され、さらに各々の皮膜にはさらに小さい微粒子が無数に分散されていることが分かった。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行ない、前記したさらに小さい微粒子を観察した。この結果、40nm〜60nmの大きさの粒状の微粒子であった。
さらに、40nm〜60nmの大きさの粒状微粒子について、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子の材質を観察した。濃淡が認められため、複数種類の元素から形成されていることが分かった。
次に、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し元素を分析した。粒状微粒子は、鉄原子と酸素原子との双方が均一に存在し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化鉄である。さらに、SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、結晶構造の解析を行なった。この結果、粒状の微粒子がマグヘマイトy−Fe2O3であることが確認できた。
この結果から、超音波ホモジナイザーに依る粒子の微細化は、実施例1と同様に0.2μmの球状微粒子で終えた。従って、実施例1と同様に、含油軸受装置においては、オレイン酸ブチルと潤滑油とは0.2μmの球状微粒子となり、0.2μmの球状微粒子は応力を受けてもさらに微細な粒子にならず、自らが滑ることで応力を緩和する自己潤滑性を持つ。なお、潤滑剤5および6の被膜構造は、図1と同様であるため図示しない。
さらに、振子形油性摩擦試験機(神鋼造機株式会社の製品)を用いて、前記した潤滑油2と潤滑油5との摩擦係数を求めた。試験用鋼球は3/16インチで、試験用ローラピンはΦ2×30mmで、振動周期は4秒で、試験荷重は0.7GPaで、室温と200℃とで各5回試験を行った。摩擦係数は、室温で0.11〜0.12で、200℃で0.10〜0.11であった。これらの値は、従来の含浸油に比べて20%近く摩擦係数が小さい値である。この結果によって、自己潤滑性を持つ微粒子の集まりからなる潤滑剤は、摺接面において微粒子が滑ることに依る自己潤滑性を発揮し、極めて小さい摩擦力からなる流体潤滑を続けることが実証された。
4 マグネタイトの粒状微粒子
Claims (6)
- 含油軸受装置に用いる焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤は、
融点がパラフィン系ベースオイルからなる潤滑油の流動点より低い第一の性質と、沸点が硬磁性の性質を持つ金属酸化物の粒状微粒子が生成される温度より高い第二の性質と、前記潤滑油と相溶しない第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物に、前記金属酸化物からなる粒状微粒子の集まりを析出させ、さらに、該有機化合物に前記潤滑油を混合して撹拌し、これによって、懸濁液を作成し、該懸濁液によって焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤を構成することを特徴とする、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤。 - 請求項1における金属酸化物からなる粒状微粒子が、マグネタイトないしはマグヘマイトのいずれか一方の材質からなる粒状微粒子であることを特徴とする、請求項1に記載した金属酸化物からなる粒状微粒子。
- 請求項2におけるマグネタイトの粒状微粒子は、ナフテン酸鉄(II)の熱分解で酸化鉄(II)の粒状微粒子を生成し、さらに、該酸化鉄(II)の粒状微粒子を大気雰囲気での熱処理で酸化し、これによって、マグネタイトの粒状微粒子を生成することを特徴とし、また、請求項2におけるマグヘマイトの粒状微粒子は、前記マグネタイトの粒状微粒子を大気雰囲気での熱処理で酸化し、これによって、マグヘマイトの粒状微粒子を生成することを特徴とする、請求項2に記載したマグネタイトの粒状微粒子および請求項2に記載したマグヘマイトの粒状微粒子。
- 請求項1における3つの性質を兼備する有機化合物は、さらに、アルコールに溶解ないしは混和する第四の性質と、前記アルコールより粘度が高い第五の性質とからなる、これら5つの性質を兼備する有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した3つの性質を兼備する有機化合物。
- 請求項4における有機化合物が、不飽和カルボン酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、芳香族カルボン酸からなるカルボン酸エステル類、ないしは、ジカルボン酸からなるカルボン酸エステル類のいずれか1種類のカルボン酸エステル類に属する有機化合物であることを特徴とする、請求項4に記載した有機化合物。
- 含油軸受装置に用いる焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤の製造方法は、 ナフテン酸鉄(II)をアルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、該アルコール分散液にカルボン酸エステル類に属する有機化合物を混合して混合液を作成する第二の工程と、該混合液を大気雰囲気で熱処理し、前記有機化合物中にマグネタイトないしはマグヘマイトのいずれか一方の材質からなる粒状微粒子の集まりを析出させる第三の工程と、前記第三の工程で熱処理した混合液に潤滑油を混合し、撹拌して懸濁液からなる潤滑剤を作成する第四の工程とからなり、これら4つの工程を連続して実施する方法が、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤を製造する製造方法であることを特徴とする、焼結金属からなる多孔質体に真空含浸する潤滑剤の製造方法。
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