JP2016175055A - 金属ないしは合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質からなる微粒子が液相の有機化合物中に高密度に分散されたペーストの製造と製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決策】 熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物を、ないしは、熱分解で複数の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物をアルコールに分散し、アルコールに溶解ないしは混和し、融点が零度より低く、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い、これらの性質を兼備する有機化合物を、金属化合物のモル数より少ないモル数としてアルコール分散液に混合する。この混合液を熱処理して金属化合物を熱分解すると、金属、合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質からなる微粒子が、有機化合物中に高密度で析出し、金属、合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質からなる微粒子が、有機化合物中に高密度に分散されたペーストが製造される。
【選択図】図1
Description
従来の導電性ペーストは、樹脂硬化型と焼成型とに二分される。
樹脂硬化型導電性ペーストは、金属粒子からなる導電性フィラーと、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の溶解液を溶剤で希釈した有機ビヒクルとからなる。印刷された導電性ペーストに熱を加えると、溶剤が気化した後に、熱硬化型樹脂が導電フィラーとともに硬化収縮し、合成樹脂を介して導電フィラー同士が圧着されて結合し、導電通路が形成される。この樹脂硬化型導電性ペーストは、200℃程度の比較的低い温度で熱処理されるため、プリント配線基板などの熱に弱い基材に使用されている。
一方、焼成型導電性ペーストは、金属粒子からなる導電フィラーとガラスフリットとを、有機ビヒクル中に分散させたペーストであり、900℃程度の高温で焼成し、有機ビヒクルを揮発させ、さらに、ガラスフリットを融解させ、この後、金属粒子を焼結させる。これによって、固化したガラスフリットを介して焼結した金属粒子が結合し、導電通路を形成する。焼成型導電性ペーストは焼成温度が高いが、金属粒子の焼結によって、樹脂硬化型より低抵抗化が図られるため、例えば、積層セラミックチップ電子部品の内部電極など熱に強い基材に使用されている。
第一の課題は、熱処理後に抵抗値が増大する。すなわち、樹脂硬化型導電性ペーストでは、熱硬化した樹脂が金属粒子同士の接触を妨げる。また、焼成型導電性ペーストでは、固化したガラスが金属粒子同士の焼結の妨げになる。こうした課題を解決するため、様々な提案がなされている。例えば、導電性ペースト材料にカーボンナノチューブを充填させる試みがある(特許文献1を参照)。カーボンナノチューブは、アスペクト比が大きいため、カーボンナノチューブ同士がバンドルを組む、また、互いに絡み合う。この結果、有機ビヒクルへの分散性が悪化し、導電性ペースト中に均一に分散することができず、高い導電性が得られない。また、カーボンナノチューブは、金属微粒子より著しく高価な材料であるため、カーボンナノチューブの充填割合を高くするほど、導電性ペーストの製造費が増大する。さらに、カーボンナノチューブは金属微粒子より2桁近く導電率が低いため、充填割合を高くしても、金属に近い導電率は得られない。これらの課題はいずれも、カーボンナノチューブを用いることことに依る原理的な課題であり、解決は困難である。
しかしながら、本技術は、次の2つの原理的な問題点を持つ。つまり、溶剤によって有機結着剤を溶解させ、溶解した有機結着剤に熱伝導性微粒子の集まりを分散させた後に、溶剤を気化させて易変形性凝集体を作成する。この易変形性凝集体における熱伝導性の大きさは、熱伝導性微粒子が互いに接近することに依る。熱伝導性微粒子同士を接近させるには、有機結着剤に対する熱伝導粒子の混合割合を高める必要があるが、熱伝導粒子の混合割合を高めるほど、易変形性凝集体における有機結着剤の割合が減少し、有機結着剤を介して球状の熱伝導粒子を結合させることが困難になる。また、易変形性凝集体を熱伝導性に劣るバインダー樹脂と混合し、この混合物を圧縮することで、熱硬化性のシートを製作する。なぜならば、易変形性凝集体のみでは熱伝導性シートが製造できないからである。しかしながら、バインター樹脂は非熱伝導性であるため、バインダー樹脂の混合割合を低下させなければ、易変形性凝集体の熱伝導性が熱伝導シートに反映されない。いっぽう、バインダー樹脂の混合割合を低下させるほど、易変形性凝集体同士の結合が困難になり、熱伝導シートの製作ができない。これらの原理的な問題点は、解決することはできない。
しかしながら、本技術も原理的に次の問題点を持つ。ピッチ系炭素繊維の体積割合に応じて、エラストマー材料における熱伝導性が増大するが、非常に高価なピッチ系炭素繊維を50%体積割合まで増大させても、熱伝導率は8.21W/mKであり、製造費用が極めて高くなる割には熱伝導率が低い。これは、ピッチ系炭素繊維の熱伝導率が異方性を持ち、繊維軸方向の熱伝導率が500W/mKという大きな熱伝導率を持つが、ピッチ系炭素繊維を繊維軸方向に配向させてエラストマー材料に充填することが困難であることに依る。さらに、ピッチ系炭素繊維は、体積抵抗率が2×10−5cmからなる導電性を持ち、ピッチ系炭素繊維の充填率を高めるほどエラストマー材料は導電性を示す。このため、エラストマー材料が電気絶縁性を保って他の部品と組み合わせる場合は、電気絶縁性で非熱伝導性の接着剤を用いることになり、エラストマー材料の熱伝導性が非熱伝導性の接着層によって損なわれる。また、ピッチ系炭素繊維の体積割合が増えるほど、エラストマー材料の硬度が増大し、制振性と緩衝性が低下する。これらの原理的な問題点は、解決することはできない。
金属ナノ粒子の多くは、ナノ粒子を有機ビヒクルに分散させた導電性ペーストとして用いられている。つまり、基板上に金属配線を形成する従来の方法では、金属箔の貼り合わせやスパッタリングによる成膜によって金属層を形成し、その後、フォトリソグラフィやエッチングなど多くの工程を経なければならなった。あるいは、導電性ペーストをスクリーン印刷した後に熱処理し、導電層を形成した。一方、プリンテッドエレクトロニクスと呼ばれる手法では、導電性フィラーとして金、銀、銅などの金属ナノ粒子を用い、これを有機ビヒクル中に分散させたインクをインクジェットやスクリーン印刷などの技術により直接基板上に印刷して配線パターンを形成する方法であるため、オンデマンドで配線パターンの形成が可能で、工程が少なくでき、環境負荷を低減するコストも少なくて済む。従って、このような導電性ペーストでは、金属に近い導電性を持つことが必要になる。
しかし、絶縁性の有機ビヒクルが存在するため、ペーストは金属に近い導電性を持たない。また、微粒子は凝集し易く、一度凝集した微粒子は解除できない。さらに、微粒子を直接有機ビヒクルに分散することはできず、予め微粒子の表面を処理し、この後、表面処理した微粒子を有機ビヒクルに分散する。しかし、絶縁物の表面処理で微粒子の電気抵抗が増大する。さらに、微粒子の比表面積が大きいため、ペーストを製造する過程で微粒子が酸化される、あるいは、配線を形成した後にイオンマイグレーションを起こす。このように、微粒子であるために、従来の導電性ペーストとは異なる新たな課題を多く持つ。
また、金属酸化物のナノ粒子は、従来の熱伝導性に限らず、新たな性質を利用した新たな用途が開拓されている。例えば、酸化亜鉛とルチル型の酸化チタンは、エネルギーギャップを持つ光半導体で、エネルギーギャップに相当する紫外線を吸収する。このため、日焼け防止クリームの紫外線吸収剤や照明ランプの紫外線遮蔽膜、紫外線吸繊維、印刷物の退色防止用フィルム、食品の劣化防止用包装フィルムなどに用いられている。また、アナターゼ型の酸化チタンは、光触媒活性を持ち、粒子が小さいほど比表面積が大きいため活性度が高い。このため、抗菌、脱臭、大気浄化、セルフクリーニング膜などへの応用が検討されている。このようなペーストも、金属酸化物に近い性質を持つことが必要になる。
しかし、金属酸化物のナノ粒子も微細粒子であるため、金属のナノ粒子と同様に、有機ビヒクルに分散させたペーストとして用いられている。このため、有機ビヒクルの存在によって、紫外線の吸収能力や光触媒活性能力が落ちる。また、金属のナノ粒子と同様に、微粒子を直接有機ビヒクルに分散することはできず、予め微粒子の表面処理が必要になる。しかし、微粒子の表面処理で紫外線の吸収能力や光触媒活性能力が落ちる。このように、微粒子であるために、従来の粒子を分散させたペーストと異なる新たな課題を多く持つ。
本発明が解決しようとする課題は、有機ビヒクル中に金属ないしは合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質からなる微粒子を分散させずに、金属ないしは合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質からなる微粒子が高密度で分散されたペーストを製造する技術を実現することにある。これによって、従来のペーストにおける課題が根本的に解決できる。
熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が零度より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記金属化合物のモル数より少ないモル数として前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、該混合液を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、前記有機化合物に金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度で析出し、金属ないしは金属酸化物の微粒子が有機化合物に高密度に分散された第一のペーストが製造される点にある。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、金属化合物のアルコール分散液の混合割合を高めるほど、有機化合物中に析出する金属ないしは金属酸化物の微粒子の密度が高まり、ペーストが金属ないしは金属酸化物の性質に近づく。また、金属ないしは金属酸化物の微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かず、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、ペーストが容易に移動する。なお、熱分解で析出した金属は、不純物のない活性状態にあるため、隣接する金属微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した金属微粒子となって有機化合物中に析出する。いっぽう、金属微粒子同士の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で結合するため、金属結合した金属微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、金属結合した金属微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。なお、金属酸化物微粒子は、微粒子同士が金属結合や共有結合によって結合しないため、個々の微粒子が分離して析出する。
さらに、金属化合物の熱分解で析出した金属ないしは金属酸化物の微粒子は、不純物を含まず、金属微粒子は金属に近い性質を持ち、金属酸化物微粒子は金属酸化物に近い性質を持つ。すなわち、金属化合物の熱分解反応では、最初に金属化合物が、金属ないしは金属酸化物と無機物ないしは有機物とに分解する。次に、無機物ないしは有機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属ないしは金属酸化物が微粒子を形成して熱分解反応が完了する。このため、微粒子は安定した状態にあり、不純物を含まない。従って、微粒子と有機化合物との間で相互作用は働かず、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、金属ないしは金属酸化物に近い性質を持つペーストが移動する。
いっぽう、本特徴手段におけるペーストの原料は、熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物と、アルコールと高沸点の有機化合物とからなり、いずれも汎用的な工業薬品である。また、本特徴手段における処理は、金属化合物をアルコールに分散する処理と、アルコール分散液に有機化合物を混合する処理と、金属化合物の熱分解温度に相当する180℃〜430℃の温度範囲で熱処理するだけの極めて簡単な処理である。従って、安価な材料を用いて、安価な製造費用で莫大な量のペーストが安価に製造できる。さらに、本特徴手段で製造したペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に金属ないしは金属酸化物の性質が付与できる。なお、アルコールの沸点と、金属化合物が熱分解する際に気化する無機物ないしは有機物の沸点とに温度差があり、気化したアルコールと、気化した無機物ないしは有機物とは個別に回収できる。
ここで、本特徴手段における画期的な作用効果を改めて説明する。熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散すると、金属化合物はアルコール中に分子状態で均一に分散する。なお、分散溶媒は、最も汎用的な有機溶剤のアルコールが望ましい。また、アルコール分散液を昇温し、アルコールを気化させると、金属化合物が微細な結晶として析出する。この現象は、砂糖水の水を気化させると、砂糖の微細粉が析出する現象に類似している。次に、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合うため、有機化合物が少量であっても、金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。つまり、金属化合物と有機化合物とが、分子状態で均一に混ざり合うために、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する性質を持つ有機化合物を用いた。
次に混合液を熱処理する。最初にアルコールが気化する。これによって、有機化合物中に、金属化合物の微細結晶が高濃度で均一に析出される。つまり、液相の有機化合物に金属化合物の微細結晶を高濃度で均一に析出させるため、金属化合物をアルコール中に分子状態で均一に分散させ、さらに、この分散液に、少量の有機化合物を均一に分散させた。
さらに昇温すると、液相の有機化合物中で金属化合物が熱分解し、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属ないしは金属酸化物の微粒子が、有機化合物中に高密度で均一に析出し、金属化合物は熱分解反応を終える。つまり、液相の有機化合物中で金属化合物を熱分解させるため、金属化合物の熱分解温度より沸点が高い有機化合物を用いた。この結果、液相の有機化合物中に、不純物を含まない金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度で均一に析出し、金属ないしは金属酸化物に近い性質を持つ第一のペーストが製造される。
以上に説明したように、本特徴手段に依って、12段落で説明した課題が解決できた。
つまり、複数種類の金属化合物の熱分解は、最初に、複数種類の金属と無機物ないしは有機物とに分解する。次に、無機物ないしは有機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、複数の金属が合金微粒子を形成して、熱分解反応が完了する。このため、合金微粒子は安定した状態にある。また、無機物ないしは有機物の気化が完了した後に、合金微粒子が形成されるため、合金微粒子は不純物を含まない。
なお、熱分解で析出した合金微粒子は、不純物のない活性状態にあるため、隣接する合金微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した合金微粒子となって有機化合物中に析出する。いっぽう、合金微粒子の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で結合するため、金属結合した合金微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、金属結合した合金微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。また、合金微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かず、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、ペーストが容易に移動する。
さらに、本特徴手段においては、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、また、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物に高密度で分散する。このように、本特徴手段に依れば、ペーストの性質が、様々な組成からなる合金の性質に拡大される。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、錯体のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、錯体のアルコール分散液の混合割合を高めるほど、有機化合物中に析出する金属微粒子の密度が高まり、ペーストの性質が金属に近づく。また、40nm〜60nmの大きさからなる極めて微細な粒状微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かない。なお、錯体が熱分解して金属を析出する際は、金属は不純物のない活性状態で析出するため、隣接する金属微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した金属微粒子となって有機化合物に析出する。金属微粒子の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で微粒子同士が結合するため、金属結合した金属微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、金属結合した金属微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。
さらに、錯体の熱分解で析出した金属微粒子は、不純物を含まないため、金属に近い性質を持つ。すなわち、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を、還元雰囲気で熱処理すると、配位結合部が最初に分断され、無機物と金属とに分解される。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、すべての無機物の気化が完了した後に金属が析出する。つまり、錯体を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きい。このため、金属イオンと配位子との距離が最も長い。従って、錯体を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、気化が完了した後に、金属が析出する。この際、無機物が低分子量であるため、無機物の分子量に応じた180℃〜220℃の低い温度で無機物の気化が完了する。このような錯体として、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、塩素イオンCl−が、ないしは塩素イオンCl−とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、シアノ基CN−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するシアノ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、臭素イオンBr−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するブロモ金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体、沃素イオンI−が配位子イオンとなって金属イオンに配位結合するヨード金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体などがある。また、このような分子量が小さい無機金属化合物からなる錯体は、合成が容易で最も安価な金属錯イオンを有する錯体である。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、金属化合物として、安価な工業用薬品である無機金属化合物からなる錯体を用い、180℃〜220℃の低い熱処理温度で、金属に近い性質を持つ第三のペーストが製造できる。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、複数種類の錯体のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、複数種類の錯体のアルコール分散液の混合割合を高めるほど、有機化合物中に析出する合金微粒子の密度が高まり、ペーストの性質が合金に近づく。また、40nm〜60nmの大きさからなる極めて微細な粒状微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かない。なお、複数種類の錯体が熱分解して合金を生成する際は、合金は不純物のない活性状態で生成するため、隣接する合金微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した合金微粒子となって有機化合物に析出する。合金微粒子の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で微粒子同士が結合するため、金属結合した合金微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に金属結合した合金微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。
さらに、複数種類の錯体の熱分解で析出した合金微粒子は、不純物を含まないため、合金微粒子は合金に近い性質を持つ。すなわち、複数種類の錯体は、無機物の分子ないしはイオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合する互いに異なる金属錯イオンを有する無機金属化合物の錯体であるため、還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の錯体の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数の金属とに分解され、無機物の分子量に応じて、無機物の気化が180℃〜220℃の温度で完了し、錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出し、これら金属は不純物を持たない活性状態にあるため、錯体のモル濃度比率に応じた組成割合からなる合金の微粒子が生成される。
本特徴手段において、複数種類の錯体における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の錯体のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。このように、本特徴手段に依れば、金属化合物として、安価な工業用薬品である複数種類の無機金属化合物からなる錯体を用い、180℃〜220℃の低い熱処理温度で、様々な組成からなる合金の性質を持つペーストが製造できる。
従って、無機金属化合物からなる錯体のアルコール分散液に、ないしは、同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した異なる金属錯イオンからなる複数種類の無機金属化合物からなる錯体のアルコール分散液に、本特徴手段におけるいずれかの有機化合物を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液を180℃〜220℃の還元雰囲気で熱処理すると、有機化合物中で錯体が熱分解し、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属ないしは合金の微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、金属ないしは合金に近い性質を持つ第三ないしは第四のペーストが製造される。従って、本特徴手段における有機化合物は、金属ないしは合金に近い性質を持つペーストを製造する際の原料になる。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、アルコール分散液の混合割合を高めるほど、有機化合物中に析出する金属微粒子の密度が高まり、ペーストの性質が金属に近づく。また、40nm〜60nmの大きさからなる極めて微細な粒状微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かない。なお、カルボン酸金属化合物が熱分解して金属を析出する際は、金属は不純物のない活性状態で析出するため、隣接する金属微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した金属微粒子となって有機化合物に析出する。金属微粒子の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で微粒子同士が結合するため、金属結合した金属微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、金属結合した金属微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。
さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解で析出した金属微粒子は、不純物を含まないため、金属微粒子は金属に近い性質を持つ。すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するカルボン酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の分子量と数とに応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などが挙げられる。なお、オクチル酸の沸点は228℃であり、ラウリン酸の沸点は296℃であり、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合するカルボン酸の分子量とカルボン酸の数とに応じて気化熱を奪い、290℃〜430℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化銅(I)Cu2Oと酸化銅(II)CuOとが同時に析出し、酸化銅(I)Cu2Oと酸化銅(II)CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化銅(I)Cu2Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化銅(II)CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。このため、18段落で説明した無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高くはなるが、錯体より安価な金属化合物である。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有し、分子量が小さい有機酸であるため、大気雰囲気においては290℃〜430℃の熱処理で金属が析出する。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、金属化合物として、無機金属化合物からなる錯体より安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を用い、290℃〜430℃の熱処理温度で、金属に近い性質を持つ第五のペーストが安価に製造できる。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液の混合割合を高めるほど、有機化合物中に析出する合金微粒子の密度が高まり、ペーストの性質が合金に近づく。また、40nm〜60nmの大きさからなる極めて微細な粒状微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かない。なお、複数種類のカルボン酸金属化合物が熱分解して合金を生成する際は、合金は不純物のない活性状態で生成するため、隣接する合金微粒子は接触部で互いに金属結合し、金属結合した合金微粒子となって有機化合物に析出する。合金微粒子の結合は、接触面積が極微小な点接触に近い接触状態で微粒子同士が結合するため、金属結合した合金微粒子は塑性変形しやすく、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に金属結合した合金微粒子が有機化合物と共に容易に移動する。
さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解で析出した合金微粒子は、不純物を含まず、合金微粒子は合金に近い性質を持つ。すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に飽和脂肪酸と金属とに分解し、さらに、飽和脂肪酸の分子量と数とに応じて飽和脂肪酸の気化が進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、合金が生成される。このため20段落で説明した複数種類の無機金属化合物からなる錯体より熱処理温度が高いが、錯体より安価なカルボン酸金属化合物を用いて様々な合金が生成される。
本特徴手段において、複数種類のカルボン酸金属化合物における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。このように、本特徴手段に依れば、金属化合物として、安価な工業用薬品である複数種類のカルボン酸金属化合物を用いることで、290℃〜430℃の大気雰囲気での熱処理温度で、様々な組成からなる合金の性質を持つペーストが安価に製造できる。
従って、カルボン酸金属化合物ないしは複数種類のカルボン酸金属化合物のアルコール分散液に、本特徴手段における有機化合物を混合すると、カルボン酸金属化合物と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液を290℃〜430℃の大気雰囲気で熱処理すると、液相の有機化合物中でカルボン酸金属化合物が熱分解し、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属ないしは合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、金属ないしは合金に近い性質を持つ第五ないしは第六のペーストが製造される。従って、本特徴手段における有機化合物は、ペーストを製造する際の原料になる。
つまり、融点が零度より低く、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物は、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液と任意の割合で混ざり合う。従って、アルコール分散液の混合割合を高めるほど、液相の有機化合物中に析出する金属酸化物微粒子の密度が高まり、ペーストの性質が金属酸化物に近づく。また、40nm〜60nmの大きさからなる極めて微細な粒状微粒子は、安定した微粒子として有機化合物中に析出するため、有機化合物との間に相互作用が働かず、微小な応力をペーストに加えるだけで、塗布面ないしは印刷面に、微粒子の集まりが有機化合物と共に容易に移動する。
さらに、カルボン酸金属化合物の熱分解で析出した金属酸化物微粒子は、不純物を含まないため、金属酸化物微粒子は金属酸化物に近い性質を持つ。すなわち、カルボン酸金属化合物からなる錯体の熱分解反応は、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と金属酸化物とに分解する。次に、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、金属イオンに配位結合したカルボン酸の分子量とカルボン酸の数とに応じて気化が進み、気化が完了した後に、金属酸化物が微粒子を形成して、熱分解反応を完了する。このため、金属酸化物微粒子は不純物を含まず、また、安定した状態にある。
すなわち、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物からなる錯体は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、配位結合するカルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて、カルボン酸の気化が進み、気化が完了すると、金属酸化物が析出して熱分解を終える。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。なお、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。また、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式ではCnH2n−1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC9H17COOHからなる。従って、これらカルボン酸金属化合物からなる錯体は、配位結合するカルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて、180℃〜340℃の大気雰囲気で熱分解が完了する。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、有機金属化合物の中で最も安価な有機金属化合物である。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有し、分子量が小さい有機酸であるため、大気雰囲気においては180℃〜340℃程度の熱処理で金属酸化物が析出する。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、金属化合物として、安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物からなる錯体を用い、180℃〜340℃の低い熱処理温度で、金属酸化物微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出され、金属酸化物に近い性質を持つ第七のペーストが安価に製造できる。
従って、カルボン酸金属化合物からなる錯体のアルコール分散液に、本特徴手段におけるいずれかの有機化合物を混合すると、錯体と有機化合物とが分子状態で均一に混ざり合う。この混合液を180℃〜340℃の大気雰囲気で熱処理すると、液相の有機化合物中で錯体が熱分解し、40nm〜60nmの大きさの粒状の金属酸化物の微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、金属酸化物に近い性質を持つ第七のペーストが製造される。従って、本特徴手段における有機化合物は、金属酸化物に近い性質を持つ第七のペーストを製造する際の原料になる。
これによって、液相の有機化合物中に金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度で析出し、金属ないしは金属酸化物に近い性質を持つペーストが製造される。従って、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に金属に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため経時変化しない。さらに、微粒子同士は、有機化合物を介して接触するため、微粒子におけるイオンマイグレーションが起こらない。
なお、本製造方法は、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、複数種類の金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。いずれも極めて簡単な処理であるため、液相の有機化合物中に合金微粒子が高密度に分散された第二のペーストは安価な費用で製造できる。
これによって、液相の有機化合物中に合金微粒子が高密度で析出し、合金に近い性質を持つペーストが製造される。従って、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に合金に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、合金微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため経時変化しない。
さらに、複数種類の金属化合物における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、様々な組成からなる合金に近い性質を持つペーストが、安価に製造できる。なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、錯体をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。これによって、液相の有機化合物中に金属微粒子が高密度で析出し、金属に近い性質を持つ第三のペーストが安価に製造される。
本特徴手段に依れば、安価な工業用薬品である錯体を用い、180℃〜220℃の還元雰囲気の熱処理で、金属に近い性質を持つペーストが製造できる。この結果、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に金属に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、金属微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため、経時変化しない。さらに、微粒子同士は、有機化合物を介して接触するため、微粒子におけるイオンマイグレーションが起こらない。
なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、複数種類の錯体をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。これによって、液相の有機化合物中に合金微粒子が高密度で析出し、合金に近い性質を持つ第四のペーストが安価に製造される。
本特徴手段に依れば、安価な工業用薬品である複数種類の錯体を用い、180℃〜220℃の還元雰囲気の熱処理で、合金に近い性質を持つペーストが製造できる。この結果、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に合金に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、合金微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため、経時変化しない。
さらに、複数種類の錯体における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類の錯体のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、様々な組成からなる合金に近い性質を持つペーストが、安価に製造できる。なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、カルボン酸金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。これによって、液相の有機化合物中に金属微粒子が高密度で析出し、金属に近い性質を持つ第五のペーストが安価に製造される。
本特徴手段に依れば、無機金属化合物からなる錯体より安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を用い、290℃〜430℃の大気雰囲気の熱処理温度で、金属に近い性質を持つペーストが製造できる。この結果、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に金属に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、金属微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため、経時変化しない。さらに、微粒子同士は有機化合物を介して接触するため、微粒子におけるイオンマイグレーションが起こらない。なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、複数種類のカルボン酸金属化合物をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。これによって、液相の有機化合物中に合金微粒子が高密度で析出し、合金に近い性質を持つ第六のペーストが安価に製造される。
本特徴手段に依れば、無機金属化合物からなる錯体より安価な工業用薬品である複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、290℃〜430℃の大気雰囲気の熱処理温度で、合金に近い性質を持つペーストが製造できる。この結果、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に合金に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約がない。また、合金微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため、経時変化しない。
さらに、複数種類のカルボン酸金属化合物における金属の組み合わせを変える、あるいは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率を変えると、様々な組成からなる合金微粒子が有機化合物中に高密度で均一に析出する。この結果、様々な組成からなる合金に近い性質を持つペーストが、安価に製造できる。なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来技術の課題が一切ない。
第一の工程は、錯体をアルコールに分散するだけの処理である。第二の工程は、アルコール分散液に有機化合物を混合するだけの処理である。第三の工程は、混合液を熱処理するだけの処理である。これによって、液相の有機化合物中に金属酸化物微粒子が高密度で析出し、金属酸化物に近い性質を持つ第七のペーストが安価に製造される。
本特徴手段に依れば、無機金属化合物からなる錯体より安価な工業用薬品であるカルボン酸金属化合物を用い、180℃〜340℃の大気雰囲気の熱処理温度で、金属酸化物に近い性質を持つペーストが製造できる。この結果、本ペーストを塗布ないしは印刷するだけで、塗布面ないしは印刷面に金属酸化物に近い性質が付与されるため、ペーストを塗布ないしは印刷する基材や部品の制約が一切ない。また、金属酸化物微粒子は、有機化合物によって外界と遮断されるため経時変化しない。なお、本製造方法も、微粒子を有機ビヒクルに分散させる工法を用いないため、有機ビヒクルを用いることに依る従来の課題が一切ない。
最初に、アルコールに分散する銀化合物を説明する。硝酸銀はアルコールに溶解し、銀イオンが溶出し、多くの銀イオンが銀微粒子の析出に参加できない。従って、銀化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銀、塩化金、硫酸銀、水酸化銀、炭酸銀などの無機銀化合物はアルコール類に分散しない。このため、前記した無機金化合物は、銀化合物として適切でない。
いっぽう、銀化合物は銀を析出する性質を持つ。銀化合物から銀が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、銀化合物の熱分解温度が低ければ、熱処理温度が低くなり、ペーストが安価に製造できる。いっぽう、無機物からなる分子ないしはイオンが配位子となって、銀イオンに配位結合する銀錯イオンを有する無機金化合物からなる銀錯体は、無機物の分子量が小さければ、還元雰囲気での熱分解温度は低い。また、他の銀錯イオンを有する錯体より合成が容易で安価な工業用薬品である。
すなわち、銀錯体を構成する分子の中で、銀イオンが最も大きい。ちなみに、銀原子の単結合の共有結合半径は128pmであり、窒素原子の単結合の共有結合半径の71pmであり、酸素原子の単結合の共有結合半径は63pmである。このため、配位子が銀イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理では、最初に配位結合部が分断され、銀と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銀が析出する。
このような無機金化合物からなる銀錯体として、アンモニアNH3が配位子となって銀イオンに配位結合するジアンミン銀イオン[Ag(NH3)2]+を有する銀錯体と、シアン化物イオンCN−が配位子となって銀イオンに配位結合するジシアノ銀イオン[Ag(CN)2]−を有する銀錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銀錯イオンを有する銀錯体に比べて、合成が容易であり安価に製造できる。こうした銀錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で無機物の気化が完了して銀が析出する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銀錯体として、例えば、塩化ジアンミン銀(I)[Ag(NH3)2]Cl、硫酸ジアンミン銀(I)[Ag(NH3)2]2SO4、硝酸ジアンミン銀(I)[Ag(NH3)2]NO3などがある。
また、熱分解で銅を析出する無機銅化合物からなる銅錯体として、アンモニアNH3が配位子となって銅イオンに配位結合するテトラアンミン銅イオン[Cu(NH3)4]2+やヘキサアンミン銅イオン[Cu(NH3)6]2+を有する銅錯体や、塩素イオンCl−が配位子になって銅イオンに配位結合するテトラクロロ銅イオン[CuCl4]2‐を有する銅錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銅錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易であり、安価に製造できる。また、こうした銅錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の比較的低い温度で熱分解が完了する。さらに、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯体として、例えば、テトラアンミン銅(II)硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2やヘキサアンミン銅(II)硫酸塩[Cu(NH3)6]SO4がある。
さらに、熱分解でニッケルを析出する無機ニッケル化合物からなるニッケル錯体として、アンモニアNH3が配位子となってニッケルイオンに配位結合するヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH3)6]2+からなるニッケル錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他のニッケル錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易であり、安価に製造できる。こうしたニッケル銅錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、200℃程度の低い温度で熱分解が完了する。また、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このようなニッケル錯錯体として、例えば、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物[Ni(NH3)6]Cl2がある。
以上に説明したように、無機物のイオンないしは分子が配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機金属化合物を形成する無機物の分子量が小さいため、熱分解温度が最も低く、合成が容易で最も安価な金属錯体である。従って、金属微粒子の優れた原料になる。
また、無機物の分子ないしはイオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合する互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体は、還元雰囲気で熱処理すると、複数種類の錯体の配位結合部が同時に分断され、無機物と複数の金属とに分解され、無機物の分子量に応じて、無機物の気化が完了し、錯体のモル濃度に応じて複数種類の金属が同時に析出し、これら金属は不純物を持たない活性状態にあるため、錯体のモル濃度比率に応じた組成割合からなる合金が生成される。このため、複数種類の無機金属化合物からなる錯体は、合金微粒子の優れた原料になる。
最初に、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物を説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はアルコールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。従って、銅化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質を持つことが必要になる。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物は、最も汎用的な溶剤であるアルコール類に分散しない。このため、これらの無機銅化合物は、アルコールに分散する性質を持つ銅化合物として適切でない。
いっぽう、分子量が小さい無機物の分子ないしはイオンが、銅イオンに配位結合する銅錯イオンを有する錯体として、48段落で説明したアンミン銅錯体やクロロ銅錯体がある。これらの錯体は、汎用的な有機酸からなる有機銅化合物に比べると高価である。
有機銅化合物は銅を析出する。有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機銅化合物に、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが銅イオンに共有結合するカルボン酸銅化合物がある。
つまり、カルボン酸銅化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、銅イオンに共有結合すれば、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸銅化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化した後に銅が析出する。なお、還元雰囲気でのカルボン酸銅化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。また、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物が熱分解すると、酸化銅が析出する。
いっぽう、カルボン酸銅化合物の中で、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となって銅イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物の熱分解反応は、酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化銅が析出する。
さらに、カルボン酸銅化合物は、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が生成される。このため、有機銅化合物の中で最も安価である。
カルボン酸銅化合物の組成式はCu(COOR)2で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置する銅イオンCu2+が最も大きい。従って、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO−とが共有結合する場合は、銅イオンCu2+と酸素イオンO−との距離が最大になる。この理由は、銅原子の2重結合における共有結合半径は115pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅化合物として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。このようなカルボン酸銅化合物の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸銅化合物は低い温度で熱分解し、銅を析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなり、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなり、気化熱も小さい。これによって、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、さらに低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、銅を析出する原料として、オクチル酸銅Cu(C7H15COO)2が望ましい。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%近く分散する。
同様に、アルミニウムを析出する原料としてオクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3が、鉄を析出する原料としてオクチル酸鉄Fe(C7H15COO)3が、ニッケルを析出する原料としてオクチル酸ニッケルNi(C7H15COO)2が最も望ましい。
また、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に飽和脂肪酸と金属とに分解され、さらに、飽和脂肪酸の分子量と数とに応じて飽和脂肪酸の気化が進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、合金が生成される。このため、複数種類のカルボン酸金属化合物は、合金微粒子の優れた原料になる。
マグネシウム化合物ないしはアルミニウム化合物は、48段落で説明したように、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出する2つの性質を兼備する。亜硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの無機マグネシウム化合物は、水およびアルコールに溶解し、多くのマグネシウムイオンが酸化マグネシウムの析出に参加できなくなる。同様に、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物は、水およびアルコールに溶解し、多くのアルミニウムイオンが酸化アルミニウムの析出に参加できなくなる。また、無機マグネシウム化合物ないしは無機アルミニウム化合物は、アルコールに分散しない。このため、熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出する物質は、無機金属化合物ではなく有機金属化合物が望ましい。
さらに、有機金属化合物は熱分解で金属酸化物を析出しなければならない。いっぽう、有機金属化合物から金属酸化物が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機金属化合物のアルコール分散液を昇温するだけで、有機金属化合物が熱分解して金属酸化物が析出する。さらに、有機金属化合物の合成が容易でれば、有機金属化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機金属化合物に、最も汎用的な有機酸であるカルボン酸との金属化合物がある。
つまり、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物は、49段落で説明したように、熱分解で金属が析出する。従って、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合する酸素イオンとの距離が短く、酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンと結合する距離が最も長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、カルボン酸金属化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、金属イオンと酸素イオンとの化合物、つまり、金属酸化物とカルボン酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物である。
また、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、49段落で説明したように、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機金属化合物であり、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、安価な工業用薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。このようなカルボン酸金属化合物は、カルボン酸の分子量と、配位結合するカルボン酸の数とに応じて熱分解反応が進む。なお、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。また、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式ではCnH2n‐1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC9H17COOHからなる。また、このようなカルボン酸金属化合物は、メタノールやn‐ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。
従って、酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを熱分解で析出する原料は、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などからなるカルボン酸マグネシウム化合物ないしはカルボン酸アルミニウム化合物が望ましい。
なお、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物は有機金属化合物である。一方、48段落で説明した錯体は、無機物の分子ないしはイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンを有する無機金属化合物である。また、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、カルボン酸に比べて分子量が小さいため、熱分解温度はカルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い。いっぽう、カルボン酸金属化合物は、最も汎用的な有機酸の金属化合物であるため、無機金属化合物からなる錯体より合成が容易で、安価な金属化合物である。
これら3つの性質を兼備する有機化合物に、カルボン酸エステル類、グリコール類、ないしは、グリコールエーテル類に属する多くの有機化合物が存在する。なお、金属錯イオンを有する錯体は180℃〜220℃で熱分解し、金属を析出するカルボン酸金属化合物は290℃〜430℃で熱分解し、金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物は180℃〜340℃で熱分解する。従って、沸点が220℃より高い有機化合物であれば、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となる。また、沸点が290℃より高い有機化合物であれば、金属ないしは金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物が、微粒子の原料として加わる。さらに、沸点が430℃より高い有機化合物であれば、全てのカルボン酸金属化合物が、微粒子の原料として加わる。
第一のエステル類である飽和カルボン酸からなるエステル類の中では、メタノールに溶解し、融点が零度より低く、沸点が220℃より高いカルボン酸エステルは、カプロン酸ブチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、カプロン酸ブチルの沸点は207℃であり、カプロン酸プロピルの沸点は253℃である。また、カプロン酸ブチルとカプロン酸プロピルとは、融点が−10℃より低い。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となって、カプロン酸ブチルより分子量が大きいカルボン酸エステルに、微粒子が高密度で析出できる。
また、飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、ミリスチン酸エチル以上の分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、ミリスチン酸エチルの沸点は295℃である。しかし、これらのカルボン酸エステルは、融点が10℃以上と高い。
さらに、飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、ステアリン酸オクチル以上の分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、ステアリン酸オクチルの沸点は432℃である。しかし、これらのカルボン酸エステルは、メタノールに及びブタノールに溶解ないしは混和しにくい。
第二のエステル類である不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに混和し、沸点が220℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、メタクリル酸プロピルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸プロピルの沸点は141℃で、メタクリル酸オクチルの沸点は235℃である。また、メタクリル酸オクチルの融点は−50℃であり、これらのカルボン酸エステルは融点が零度より低い。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となって、メタクリル酸プロピルより分子量が大きいカルボン酸エステルに、微粒子が高密で析出できる。
また、不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、メタクリル酸フェニルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、メタクリル酸フェニルの沸点は249℃で、オレイン酸メチルの沸点は351℃である。また、オレイン酸メチルの融点は−20℃である。従って、金属ないしは金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物が、さらに微粒子の原料として加わり、メタクリル酸フェニルより分子量が大きいカルボン酸エステルに、微粒子が高密度で析出できる。
さらに、不飽和カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、オレイン酸プロピルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、オレイン酸プロピルの沸点は401℃で、オレイン酸オクチルの沸点は469℃である。しかし、これらのカルボン酸エステルの融点は10℃より高い。
第三のエステル類である芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解し、沸点が220℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、安息香酸エチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、安息香酸エチルの沸点は212℃で、安息香酸プロピルの沸点は231℃である。安息香酸プロピルの融点は−51℃であり、これらカルボン酸エステルの融点が零度より低い。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となって、安息香酸エチルより分子量が大きいカルボン酸エステルに、微粒子が高密度で析出できる。
また、芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに溶解ないしは混和し、沸点が290℃より高い性質を持つカルボン酸エステルは、フタル酸ジエチルより分子量が大きいカルボン酸エステルである。ちなみに、フタル酸ジエチルの沸点は295℃で、フタル酸ジブチルの沸点は340℃である。また、フタル酸ジブチルの融点は−35℃であり、これらカルボン酸エステルの融点が零度より低い。従って、金属ないしは金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物が、さらに微粒子の原料として加わり、フタル酸ジエチルより分子量が大きいカルボン酸エステルに、微粒子が高密度で析出できる。
さらに、芳香族カルボン酸からなるエステル類の中で、メタノールに混和し、沸点が430℃より高い性質を持つカルボン酸エステルはなく、フタル酸ジイソデシルの沸点が420℃で最も高い。また、フタル酸ジイソデシルの融点は−50℃である。
以上に説明したように、カルボン酸エステル類には、51段落で説明した3つの性質を兼備する多くの有機化合物が存在し、微粒子の集まりを高密度で析出することができる。
エチレングリコールはメタノール溶解し、融点が−13℃で沸点が197℃の液状モノマーである。さらに、ジエチレングリコールはメタノールに溶解し、融点が−10℃で沸点が244℃の液状モノマーである。さらに、プロピレングリコールはメタノールと混和し、融点が−59℃で沸点が188℃の液状モノマーである。さらに、ジプロピレングリコールはメタノールに溶解し、融点が−39℃で沸点が232℃の液状モノマーである。また、トリプロピレングリコールはメタノールと混和し、融点が−41℃で沸点が265℃の液状モノマーである。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となって、ジエチレングリコールとジプロピレングリコールとトリプロピレングリコールとに、微粒子が高密度で析出できる。
以上に説明したように、グリコール類の中に、51段落で説明した3つの性質を兼備するグリコールが存在し、これらのグリコールに微粒子を高密度で析出することができる。
最初に、エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が220℃より高い性質を持つものは、沸点が229℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が231℃の部ジルジグリコールと、沸点が245℃のフェニルグリコールと、沸点が249℃のメチルトリグリコールと、沸点が256℃のベンジルグリコールと、沸点が259℃のヘキシルジグリコールと、沸点が271℃のブチルトリグリコールと、沸点が272℃の2エチルヘキシルグリコールと、沸点が283℃のフェニルジグリコールと、沸点が295℃のメチルポリグリコールとがある。これらのエチレングリコール系エーテルの融点は、いずれも−35℃以下である。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となり、これらのエチレングリコール系エーテルに微粒子を高密度で析出できる。
また、エチレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が290℃より高い性質を持つものに、沸点が302℃で融点が−50℃以下のベンジルジグリコールがある。従って、金属ないしは金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物が、さらに微粒子の原料として加わり、ベンジルジグリコールに微粒子を高密度で析出できる。
次に、プロピレングリコール系エーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が220℃より高い性質を持つものは、沸点が231℃のブチルプロピレンジグリコールと、沸点が242℃のメチルプロピレンジグリコールと、沸点が243℃のフェニルプロピレングリコールと、沸点が最も高い274℃のブチルプロピレントリグリコールとがある。これらのエチレングリコール系エーテルの融点は、いずれも−60℃以下である。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となり、これらのプロピレングリコール系エーテルに微粒子を高密度で析出できる。
さらに、ジアルキルグリコールエーテルの中で、メタノールに溶解し、沸点が220℃より高い性質を持つものは、沸点が255℃で融点が−60℃のジブチルジグリコールがある。従って、金属錯イオンを有する錯体と金属酸化物を析出する一部のカルボン酸金属化合物とが微粒子の原料となって、ジブチルジグリコールに微粒子を高密度で析出できる。
以上に説明したように、グリコールエーテル類の中にも、51段落で説明した3つの性質を兼備する多くのグリコールエーテルがあり、これらのグリコールエーテルに微粒子を高密度で析出できる。
最初に、塩化ジアンミン銀(I)の88.7g(0.5モルに相当する)を1リットルのメタノールに分散する。この分散液に、メタクリル酸2エチルヘキシル19.8g(0.1モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を70℃に昇温してメタノールを気化させた。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の180℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、塩化ジアンミン銀(I)を熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。電子顕微鏡による観察は次の3つの手法によった。
最初に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行なった。試料には、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子の多数個が結合し、この結合した微粒子が高い密度で存在した。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子の材質を観察した。濃淡が認められないため、粒状微粒子の集まりは同一の元素から形成されていることが分かった。
さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素を分析した。銀原子のみが存在することから、粒状微粒子は銀微粒子である。
これらの結果から次のことが分かった。メタクリル酸2エチルヘキシルに、塩化ジアンミン銀(I)の微細結晶を分散させて熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる銀微粒子が析出し、銀微粒子は不純物を含まないため、隣接する銀微粒子が接触部で金属結合し、金属結合した銀微粒子の集まりが、メタクリル酸2エチルヘキシルに高密度で析出した。図1に、この結果を模式的に図示する。メタクリル酸2エチルヘキシル1に、金属結合した銀微粒子2が高密度で析出した状態を模式的に拡大して図示した図である。
さらに、作成した試料をスクリーン印刷機(例えば、マイクロテック社の印刷装置MT−320TV)を用いて、ガラスエポキシ基板にスクリーン印刷したところ、試料が5mmの幅で印刷できた。また、印刷した試料の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST‐4)。表面抵抗値は、1×103Ω/□未満であったため、試料は銀に近い表面抵抗を有する。
以上の結果から、本実施例で作成した試料は、銀に近い性質を持つペーストである。なお、無機金属化合物からなる錯体を用いれば、様々な金属の性質に近いペーストが安価に製造できる。例えば、48段落で説明したように、銅に近い性質を持つペーストを製造する場合は、テトラアンミン銅(II)硝酸塩を用い、また、ニッケルに近い性質を持つペーストを製造する場合は、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物を用いれば、各々の金属に近い性質を持つペーストが安価に製造できる。
本実施例では、銀錯体として実施例1の塩化ジアンミン銀(I)を用い、銅錯体としてテトラアンミン銅(II)硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。なお、テトラアンミン銅(II)硝酸塩は、最も合成が容易である銅錯イオンの一つであるテトラアンミン銅[Cu(NH3)4]2+の硝酸塩で最も安価な銅錯体である。また、有機化合物は、実施例1のメタクリル酸2エチルヘキシルを用いた。
最初に、塩化ジアンミン銀(I)の0.45モルとテトラアンミン銅(II)硝酸塩の0.05モルとを1リットルのn−ブタノールに分散する。この分散液に、メタクリル酸2エチルヘキシル0.1モルを投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化させた。さらに、容器をアンモニアガス雰囲気の180℃に昇温された熱処理炉に5分間入れ、塩化ジアンミン銀(I)とテトラアンミン銅(II)硝酸塩とを熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行なった。試料は、実施例1と同様に、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子の多数個が結合し、この結合した微粒子が高い密度で存在した。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子の材質を観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素を分析した。多量の銀原子と少量の銅原子とが均一に分散していたため、粒状微粒子は銀―銅合金である。
これらの結果から次のことが分かった。メタクリル酸2エチルヘキシルに、塩化ジアンミン銀(I)とテトラアンミン銅(II)硝酸塩との微細結晶を、モル数の比率で9対1の割合で分散させて熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる銀―銅合金の微粒子が析出し、銀―銅合金の微粒子は不純物を含まないため、隣接する銀―銅合金の微粒子が接触部で金属結合し、金属結合した銀―銅合金の微粒子が、メタクリル酸2エチルヘキシルに高密度で析出する。この結果は、実施例1の図1に示した結果と同様である。
さらに、作成した試料を、実施例1と同様にスクリーン印刷し、印刷面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、1×103Ω/□未満であったため、試料は銀―銅合金に近い表面抵抗を有する。
以上の結果から、本実施例で作成した試料は、銀―銅合金に近い性質を持つペーストである。なお、合金に近い性質を持つペーストは銀―銅合金に限定されない。同一の配位子が、異なる金属イオンに配位結合する異なる金属錯イオンを有する複数種類の金属錯体を用いれば、様々な材質からなる合金微粒子が高密度で分散されたペーストが製造できる。例えば、銅とニッケルとからなる合金を形成する場合は、48段落で説明したテトラアンミン銅(II)硝酸塩とヘキサアンミンニッケル(II)塩化物とを用いれば、様々な組成割合からなる銅−ニッケル合金に近い性質を持つペーストが安価に製造できる。
最初に、オクチル酸銅の175g(0.5モルに相当する)を1リットルのメタノールに分散する。この分散液に、オレイン酸メチルの29.7g(0.1モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を70℃に昇温してメタノールを気化させた。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れ、オクチル酸銅を熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。実施例3では、40nm〜60nmの大きさからなる銅微粒子が金属結合し、金属結合した銅微粒子が高密度で析出していた。この結果は、実施例1と同様であるため図示しない。さらに、作成した試料を、実施例1と同様にスクリーン印刷し、印刷面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、1×103Ω/□未満であったため、試料は銅に近い表面抵抗を有する。
以上の結果から、本実施例で作成した試料は、銅に近い性質を持つペーストである。なお、実施例3ではオクチル酸銅を用いて、銅に近い性質を持つペーストを製造した。カルボン酸金属化合物を用いて、金属に近い性質を持つペーストの製造は銅微粒子に限定されない。49段落で説明したように、例えば、アルミニウムに近い性質を持つペーストを製造する場合はオクチル酸アルミニウムを用い、鉄に近い性質を持つペーストを製造する場合はオクチル酸鉄を用い、ニッケルに近い性質を持つペーストを製造する場合はオクチル酸ニッケルを用いれば、各々の金属に近い性質を持つペーストが安価に製造できる。
オクチル酸銅とオクチル酸ニッケルとは、いずれも金属石鹸として用いられている汎用的な工業用薬品である。また、有機化合物として、実施例3のオレイン酸メチルを用いた。
最初に、オクチル酸銅の0.47モルと、オクチル酸ニッケルの0.03モルとを1リットルのメタノールに分散する。この分散液に、オレイン酸メチルの0.1モルを投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を70℃に昇温してメタノールを気化させた。さらに、容器を大気雰囲気の290℃に昇温された熱処理炉に1分間入れ、オクチル酸銅とオクチル酸ニッケルとを熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行なった。試料は、実施例1と同様に、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子の多数個が結合し、この結合した微粒子が高い密度で存在した。
次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子の材質を観察した。濃淡が認められたため、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素を分析した。多量の銅原子と極わずかなニッケル原子とが均一に分散していたため、粒状微粒子は銅―ニッケル合金である。
これらの結果から次のことが分かった。オレイン酸メチルに、オクチル酸銅とオクチル酸ニッケルとの微細結晶を、モル数の比率で94対6の割合で分散させて熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる銅―ニッケル合金の微粒子が析出し、銅―ニッケル合金の微粒子は不純物を含まないため、隣接する銅―ニッケル合金の微粒子が接触部で金属結合し、金属結合した銅―ニッケル合金の微粒子が、オレイン酸メチルに高密度で析出する。この結果は、実施例1の図1に示した結果と同様である。
さらに、作成した試料を、実施例1と同様にスクリーン印刷し、印刷面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、1×103Ω/□未満であったため、試料は銅―ニッケル合金に近い表面抵抗を有する。
以上の結果から、本実施例で作成した試料は、銅―ニッケル合金に近い性質を持つペーストである。なお、合金に近い性質を持つペーストは、銅―ニッケル合金に限定されない。同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに配位結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を用いれば、様々な材質からなる合金微粒子の性質に近いペーストが製造できる。例えば、オクチル酸鉄とオクチル酸ニッケルとを用いれば、様々な組成割合からなる鉄−ニッケル合金に近い性質を持つペーストが安価に製造できる。
最初に、ナフテン酸マグネシウムの183g(0.5モルに相当する)を1リットルのn−ブタノールに分散する。この分散液に、オレイン酸イソブチルの33.9g(0.1モルに相当する)を投入して攪拌する。この混合液の一部を容器に充填し、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化させた。さらに、容器を大気雰囲気の340℃に昇温された熱処理炉に1分間入れ、ナフテン酸マグネシウムを熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が高密度で析出していた。次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子を構成する元素の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状の微粒子を構成する元素を分析した。マグネシウム原子と酸素原子との双方が均一に分散し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化マグネシウムからなる粒状の微粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。オレイン酸イソブチルに、ナフテン酸マグネシウムの微細結晶を分散させて熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる酸化マグネシウム微粒子が析出し、酸化マグネシウム微粒子の集まりが、オレイン酸イソブチルに高密度で析出する。図2に、この結果を模式的に図示する。オレイン酸イソブチル3に、酸化マグネシウム微粒子4が高密度で析出した状態を、模式的に拡大して図示した図である。なお、酸化マグネシウム微粒子は、安定した酸化マグネシウムとして析出し、金属微粒子のように金属結合せず、個々の微粒子として分離して析出した。
さらに、作成した試料を、実施例1と同様にスクリーン印刷し、印刷面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、1×1013Ω/□以上であったため、試料は酸化マグネシウムに近い表面抵抗を有した。
最初に、カプリル酸亜鉛の176g(0.5モルに相当する)を1リットルのn−ブタノールに分散する。この分散液に、オレイン酸メチルの29.7g(0.1モルに相当する)を投入して攪拌した。この混合液の一部を容器に充填し、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化させた。さらに、容器を大気雰囲気の300℃に昇温された熱処理炉に1分間入れ、カプリル酸亜鉛を熱分解して試料を作成した。
次に、作成した試料について、実施例1と同様に電子顕微鏡で観察と分析とを行なった。最初に反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、40nm〜60nmの大きさからなる粒状の微粒子が高密度で析出していた。次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって微粒子を構成する元素の違いを観察した。濃淡が認められたため、さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状の微粒子を構成する元素を分析した。亜鉛原子と酸素原子との双方が均一に分散し、偏在する箇所が見られなかったため、酸化亜鉛からなる粒状の微粒子であることが分かった。
これらの結果から次のことが分かった。オレイン酸メチルに、カプリル酸亜鉛の微細結晶を分散させて熱処理すると、40nm〜60nmの大きさからなる酸化亜鉛の微粒子が析出し、酸化亜鉛の微粒子が、オレイン酸メチルに高密度で析出する。この結果は、実施例5の図2に示した結果と同様である。なお、酸化亜鉛微粒子は、安定した酸化亜鉛として析出し、金属微粒子のように金属結合せず、個々の微粒子として分離して析出した。
さらに、作成した試料を、実施例1と同様にスクリーン印刷し、印刷面の表面抵抗値を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は、1×10‐3Ω/□であったため、試料は酸化亜鉛に近い表面抵抗を有した。
なお、実施例5と実施例6とでは、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物の錯体として、ナフテン酸マグネシウムとカプリル酸亜鉛を用いて、金属酸化物の微粒子に近い性質を持つペーストを製造した。50段落で説明したように、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などのカルボン酸金属化合物からなる錯体を用いることに依って、様々な材質からなる金属酸化物に近い性質を持つペーストが製造できる。
さらに、本発明のペーストは、液相の有機化合物中に、不純物を含まない金属ないしは合金ないしは金属酸化物のいずれかの材質の微粒子が高密度で分散するため、ペーストを直接基材や部品に塗布ないしは印刷すると、塗布面ないしは印刷面に、様々な材質からなる金属ないしは合金ないしは金属酸化物に近い性質が付与される。また、微粒子は有機化合物によって外界と遮断されるため、微粒子は経時変化しない。以上に説明したように、従来のペーストでは考えられない画期的な作用効果をもたらすペーストが製造できる。
4 酸化マグネシウム微粒子
Claims (17)
- 金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第一のペーストの製造は、
熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が零度より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質とを兼備する有機化合物を、前記金属化合物のモル数より少ないモル数として前記アルコール分散液に混合して混合液を作成し、該混合液を熱処理して前記金属化合物を熱分解する、これによって、前記有機化合物に金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度で析出し、金属ないしは金属酸化物の微粒子が、有機化合物に高密度に分散された第一のペーストが製造されることを特徴とする、金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第一のペーストの製造。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第二のペーストの製造は、
請求項1における金属化合物として、熱分解で複数の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物を用い、請求項1の第一のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、有機化合物に合金の微粒子が高密度で析出し、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第二のペーストが製造されることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第二のペーストの製造。 - 金属の微粒子が高密度に分散された第三のペーストの製造は、
請求項1における金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を用い、請求項1における有機化合物として、前記錯体が熱分解する温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項1の第一のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、前記有機化合物に金属の微粒子が高密度で析出し、金属の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第三のペーストが製造されることを特徴とする、金属の微粒子が高密度に分散された第三のペーストの製造。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第四のペーストの製造は、
請求項3における無機金属化合物からなる錯体として、無機物の分子ないしはイオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体を用い、請求項3の第三のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、有機化合物に合金の微粒子が高密度で析出し、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第四のペーストが製造されることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第四のペーストの製造。 - 請求項3の第三のペーストの製造に関わる有機化合物が、ないしは、請求項4の第四のペーストの製造に関わる有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコール類ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であることを特徴とする、請求項3の第三のペーストの製造に関わる有機化合物、ないしは、請求項4の第四のペーストの製造に関わる有機化合物。
- 金属の微粒子が高密度に分散された第五のペーストの製造は、
請求項1における金属化合物として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とからなる、これら2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物を用い、請求項1における有機化合物として、前記カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項1の第一のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、前記有機化合物に金属の微粒子が高密度で析出し、金属の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第五のペーストが製造されることを特徴とする、金属の微粒子が高密度に分散された第五のペーストの製造。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第六のペーストの製造は、
請求項6におけるカルボン酸金属化合物として、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、請求項6の第五のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、有機化合物に合金の微粒子が高密度で析出し、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第六のペーストが製造されることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第六のペーストの製造。 - 請求項6の第五のペーストの製造に関わる有機化合物が、ないしは、請求項7の第六のペーストの製造に関わる有機化合物が、カルボン酸エステル類からなる有機化合物であることを特徴とする、請求項6の第五のペーストの製造に関わる有機化合物、ないしは、請求項7の第六のペーストの製造に関わる有機化合物。
- 金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第七のペーストの製造は、
請求項1における金属化合物として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体を用い、請求項1における有機化合物として、前記錯体が熱分解する温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項1の第一のペーストの製造に準じてペーストを製造する、これによって、前記有機化合物に金属酸化物の微粒子が高密度で析出し、金属酸化物の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第七ペーストが製造されることを特徴とする、金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第七のペーストの製造。 - 請求項9の第七のペーストの製造に関わる有機化合物が、カルボン酸エステル類ないしはグリコール類ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であることを特徴とする、請求項9の第七のペーストの製造に関わる有機化合物。
- 金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第一のペーストを製造する製造方法は、
熱分解で金属ないしは金属酸化物を析出する金属化合物をアルコールに分散する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、融点が零度より低い第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物を、前記金属化合物のモル数より少ないモル数として、前記第一の工程で作成したアルコール分散液に混合する第二の工程と、該混合液を熱処理して前記金属化合物を熱分解する第三の工程からなり、これら3つの工程を連続して実施する製造方法が、金属ないしは金属酸化物の微粒子が、有機化合物に高密度に分散された第一のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、金属ないしは金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第一のペーストを製造する製造方法。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第二のペーストを製造する製造方法は、
請求項11における金属化合物として、熱分解で複数の金属が同時に析出する複数種類の金属化合物を用い、請求項11における第一のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第二のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第二のペーストを製造する製造方法。 - 金属の微粒子が高密度に分散された第三のペーストを製造する製造方法は、
請求項11における金属化合物として、無機物の分子ないしはイオンからなる配位子が、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯体を用い、請求項11における有機化合物として、前記錯体の熱分解温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項11における第一のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、金属の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第三のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、金属の微粒子が高密度に分散された第三のペーストを製造する製造方法。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第四のペーストを製造する製造方法は、
請求項13における無機金属化合物からなる錯体として、無機物の分子ないしはイオンからなる同一の配位子が、互いに異なる金属イオンに配位結合した互いに異なる金属錯イオンを有する複数種類の無機金属化合物からなる錯体を用い、請求項13における第三のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第四のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第四のペーストを製造する製造方法。 - 金属の微粒子が高密度に分散された第五のペーストを製造する製造方法は、
請求項11における金属化合物として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とからなる、これら2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物を用い、請求項11における有機化合物として、前記カルボン酸金属化合物の熱分解温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項11における第一のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、金属の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第五のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、金属の微粒子が高密度に分散された第五のペーストを製造する製造方法。 - 合金の微粒子が高密度に分散された第六のペーストを製造する製造方法は、
請求項15におけるカルボン酸金属化合物として、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、請求項15における第五のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、合金の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第六のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、合金の微粒子が高密度に分散された第六のペーストを製造する製造方法。 - 金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第七のペーストを製造する製造方法は、
請求項11における金属化合物として、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物からなる錯体を用い、請求項11における有機化合物として、前記錯体の熱分解温度より沸点が高い性質を持つ有機化合物を用い、請求項11における第一のペーストを製造する製造方法に準じてペーストを製造する製造方法が、金属酸化物の微粒子が有機化合物に高密度で分散された第七のペーストを製造する製造方法であることを特徴とする、金属酸化物の微粒子が高密度に分散された第七のペーストを製造する製造方法。
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