JP7348596B2 - 圧粉磁心 - Google Patents

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Description

本発明は、圧粉磁心に関し、より詳しくは、磁性ナノ粒子を用いた圧粉磁心に関する。
圧粉磁心は、表面が絶縁被膜で覆われた磁性粒子を圧縮成形することによって得られるものであり、変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等の電磁気を利用した様々な製品に用いられている。このような圧粉磁心としては、例えば、軟磁性材料からなる粒径5~200μmの粉末の表面を、シリコーン樹脂で被覆し、さらに、ステアリン酸又はその金属塩からなる高級脂肪酸潤滑剤で被覆した軟磁性粉末をプレス成形し、熱処理することによって得られる磁心(特開2000-223308号公報(特許文献1))、金属磁性粒子と、その表面を取り囲む、リン酸金属塩及び金属酸化物のうちの少なくとも一方を含む絶縁被膜と、この絶縁被膜の表面を取り囲む、ステアリン酸等の金属塩からなる金属石鹸を含む潤滑剤被膜とを有する複合磁性粒子を備える圧粉磁心(特開2005-129716号公報(特許文献2))、表面にリン酸塩からなる絶縁被膜を有する平均粒径が30~500μmの鉄基粉末と、OH基を有する脂肪酸のエステルを含む潤滑剤とを備える軟磁性材料を加圧成形し、熱処理することによって得られる圧粉磁心(特開2007-211341号公報(特許文献3))、絶縁被膜を備える平均粒径が200~450μmの被覆鉄粉と、脂肪酸アミドからなる潤滑剤とを含む圧粉磁心(特開2016-12688号公報(特許文献4))が知られている。
一方、磁性ナノ粒子は、そのサイズが極めて小さいため、バルクの磁性材料とは異なる性質を示し、例えば、粒径が約100nmを超える範囲では、粒径が小さくなるにつれて保磁力が大きくなり、粒径が約100nm付近で保磁力が最大となるが、粒径が約20nm以下になると、超常磁性現象が発現して保持力が極めて小さくなる。このため、粒径が約20nm以下の磁性ナノ粒子を用いた圧粉磁心においては、ヒステリシス損を極めて小さくすることが可能になると考えられる。また、絶縁性の磁性ナノ粒子や表面に絶縁被膜を有する導電性の磁性ナノ粒子を用いた圧粉磁心において、粒径が約300nm以下の磁性ナノ粒子を用いることによって、高周波において渦電流の経路が制限され、渦電流損を小さくすることが可能になると考えられ、特に、粒径が約20nm以下の磁性ナノ粒子を用いることによって、渦電流損を極めて小さくすることができると考えられる。このように、粒径が約20nm以下の磁性ナノ粒子を用いた圧粉磁心は、ヒステリシス損や渦電流損が極めて小さくなるため、電源用途のトランスコア材として期待されている。
特開2000-223308号公報 特開2005-129716号公報 特開2007-211341号公報 特開2016-12688号公報
しかしながら、ステアリン酸等又はそれらの金属塩、脂肪酸エステル、或いは脂肪酸アミド等の従来の潤滑剤と磁性ナノ粒子とを混合し、従来の成形条件(例えば、成形温度:150℃、成形圧力:1.4GPa)で圧縮成形しても、得られる圧粉磁心の密度は必ずしも十分に高いものではなかった。これは、磁性粒子がナノサイズまで小さくなると、磁性粒子の塑性変形強度が高くなり、従来の成形条件では磁性ナノ粒子が十分に塑性変形しなかったためと考えられる。そこで、成形温度を高くすることによって、磁性ナノ粒子を十分に塑性変形させることが可能になると考えられるが、成形温度を高くすると、金型の強度が低下するという問題があった。
本発明者らは、金属ナノ粒子の融点がバルクの金属の融点よりも低下することに着目し、金属ナノ粒子の塑性変形強度が低くなる温度もバルクの金属の塑性変形強度が低くなる温度よりも低下すると考え、従来の成形温度よりも高い温度であっても、磁性ナノ粒子の塑性変形強度が低くなり、かつ、金型の強度が低下しない温度範囲が存在し、この範囲内の温度で磁性ナノ粒子を加熱することによって、磁性ナノ粒子を十分に塑性変形させることが可能であり、高密度の圧粉磁心を得ることができると考えた。
しかしながら、従来の潤滑剤と磁性ナノ粒子とを混合し、従来の成形温度よりも高い温度で圧縮成形すると、潤滑剤が揮発したり、分解したり、変質したりするため、バインダーとしての効果が低下し、また、高温成形に伴う熱歪みが大きくなり、得られる圧粉磁心に大きなクラックが発生したり、圧粉磁心が破損したりするという新たな問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、300℃以上の温度で成形され、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、磁性ナノ粒子に特定のフマル酸類を添加して圧縮成形することによって、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の圧粉磁心は、平均粒径が1~300nmの磁性ナノ粒子と、フマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸類を含有し、前記フマル酸類の含有量が、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との合計量に対して0.01~1質量%であることを特徴とするものである。
本発明の圧粉磁心においては、前記フマル酸類が、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、及びフマル酸モノエチルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、前記フマル酸類の含有量が、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との合計量に対して0.01~0.5質量%であることが好ましい。
なお、前記磁性ナノ粒子に前記フマル酸類を添加することによって、前記磁性ナノ粒子を含有し、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、フマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩は、脂肪酸に比べて、高温で揮発や分解、変質が起こりにくく、また、磁性ナノ粒子との間で強い結合力が得られるカルボキシ基を有するため、磁性ナノ粒子と強固な結合を形成して安定な被覆層を形成することができ、さらに、アルキル鎖間やフマル基間の強い結合力を有しているため、磁性ナノ粒子間の結合力を向上させることができ、また、フマル酸骨格がその立体構造から高温でも脱水反応や脱アルコール反応による無水物化が起こりにくく、より高温でも安定であることから、300℃以上の温度で成形しても、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心が得られると推察される。特に、フマル酸モノエステル及びフマル酸モノエステルの塩は、アルキル鎖を有しているため、磁性ナノ粒子間の潤滑性を向上させることができ、圧粉磁心の密度をより向上させることができると推察される。
一方、前記磁性ナノ粒子にフマル酸ジエステルを添加すると、フマル酸ジエステルにカルボキシ基が存在していないため、磁性ナノ粒子との間で強い結合力が得られず、安定な被覆層を形成することが困難であり、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心は得られない。
本発明によれば、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心を得ることが可能となる。
フマル酸モノエステルの塩の含有量と圧粉磁心の密度との関係を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の圧粉磁心は、平均粒径が1~300nmの磁性ナノ粒子と、フマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸類を含有するものである。
本発明に用いられる磁性ナノ粒子としては圧粉磁心に用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、Feナノ粒子、Fe含有合金ナノ粒子、Fe含有金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。また、前記Feナノ粒子及び前記Fe含有合金ナノ粒子は、表面に絶縁層を備えていてもよい。これらの磁性ナノ粒子は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヒステリシス損及び渦電流損を低減でき、かつ、飽和磁束密度を比較的大きくでき、高温での特性劣化も比較的少ないという観点から、表面に絶縁層を備えるFeナノ粒子、表面に絶縁層を備えるFe含有合金ナノ粒子が好ましい。
前記Fe含有合金ナノ粒子としては圧粉磁心に用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、FeNi合金ナノ粒子(パーマロイBナノ粒子等)、FeSi合金ナノ粒子(ケイ素鋼ナノ粒子等)、FeCo合金ナノ粒子(パーメンジュールナノ粒子等)、NiFe合金ナノ粒子(パーマロイCナノ粒子等)が挙げられる。また、前記Fe含有金属酸化物ナノ粒子としては圧粉磁心に用いられるものであれば特に制限はないが、例えば、NiZnフェライトナノ粒子、MnZnフェライトナノ粒子等のフェライト系ナノ粒子が挙げられる。
前記絶縁層としては、例えば、SiO、Al、Fe、Fe、NiZnフェライト、MnZnフェライト等の金属酸化物からなる絶縁層;脂肪酸(例えば、デカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸)、シリコーン系有機化合物(例えば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、ジメチルポリシロキサン、シリコーンハイドロゲル)等の有機化合物からなる絶縁層;リン系化合物(例えば、リン酸カルシウム、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガン)等の無機化合物からなる絶縁層が挙げられる。
また、本発明に用いられる磁性ナノ粒子の平均粒径は1~300nmである。磁性ナノ粒子の平均粒径が前記下限未満になると、粒子表面の影響が大きく、磁性ナノ粒子自体の磁気特性が低下する。他方、磁性ナノ粒子の平均粒径が前記上限を超えると、渦電流損が増大して磁心損失が大きくなる。また、超常磁性現象が発現して保磁力が極めて小さくなり、ヒステリシス損を極めて小さくすることが可能となり、また、高周波において渦電流の経路が制限され、渦電流損を極めて小さくすることが可能となるという観点から、磁性ナノ粒子の平均粒径としては、1~100nmが好ましく、1~20nmがより好ましい。なお、磁性ナノ粒子の平均粒径は、TEM観察において100個の粒子の粒径を測定し、その平均値として求めることができる。
本発明に用いられるフマル酸類はフマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種である。このようなフマル酸類を前記磁性ナノ粒子に添加することによって、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心を得ることができる。
前記フマル酸モノエステルとしては、例えば、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ-n-プロピル、フマル酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノエチルヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノステアリル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノ-tert-ブチルが挙げられる。また、前記フマル酸モノエステルの塩としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸モノエチルエステルカルシウム、フマル酸モノエチルエステルマグネシウム、フマル酸モノエチルエステルナトリウム、フマル酸モノオクチルエステルナトリウムが挙げられる。これらのフマル酸類の中でも、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度が更に高く、クラックの発生が更に抑制された圧粉磁心が得られるという観点から、フマル酸モノエステル(より好ましくは、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ-n-プロピル、フマル酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノステアリル)、フマル酸モノエステルの塩(より好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸モノエチルエステルナトリウム、フマル酸モノオクチルエステルナトリウム)が好ましく、フマル酸モノエステルの塩(更に好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸モノオクチルエステルナトリウム)がより好ましい。
一方、前記磁性ナノ粒子にマレイン酸を添加した場合には、マレイン酸が高温で脱水反応や脱アルコール反応により無水物化するため、磁性ナノ粒子との間で強い結合力が得られず、安定な被覆層を形成することが困難であり、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心は得られない。
前記フマル酸類の含有量としては特に制限はないが、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との合計量に対して0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.1~1質量%が特に好ましい。前記フマル酸類の含有量が前記下限未満になると、前記フマル酸類が前記磁性ナノ粒子間に十分に行き渡らないため、その部分の磁性ナノ粒子の流動性が低くなり、圧粉磁心の密度が向上しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、非磁性成分の割合が多くなり、圧粉磁心の磁気特性が低下する傾向にある。
このような本発明の圧粉磁心の密度は7.0g/cm以上であり、高い比透磁率を有するものである。また、より高い比透磁率を有するという観点から、圧粉磁心の密度としては7.3g/cm以上が好ましい。
本発明の圧粉磁心は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、先ず、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類とを所定の含有量となるように混合する。前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との混合物は均一性が高いため、後述する加圧成形において前記磁性ナノ粒子の流動性が確保され、高密度の圧粉磁心を得ることが可能となる。
前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との混合方法としては特に制限はなく、例えば、ボールミルや乳鉢を用いて混合する方法、溶媒に前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類とを分散・溶解させた後、乾燥等により溶媒を除去することによって混合する方法等が挙げられる。また、前記磁性ナノ粒子は再配列性に劣るため、溶媒に前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類とを分散・溶解させた後、スプレードライ等により顆粒状の混合物を調製してもよい。これにより、圧縮成形時に顆粒状の混合物が崩れて前記磁性ナノ粒子が再配列しやすくなるため、圧粉磁心の密度が向上する。
次に、このようにして得られた前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との混合物を、潤滑剤を塗布した金型に充填する。前記潤滑剤としては特に制限はなく、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等の飽和脂肪酸の金属塩、潤滑グリース(例えば、株式会社ミスミ製「M-HGSSC-H500」)等が挙げられる。
次に、金型に充填した前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との混合物を加圧成形することによって、本発明の圧粉磁心を得ることができる。成形温度としては、300~600℃が好ましく、300~400℃がより好ましい。成形温度が前記下限未満になると、磁性ナノ粒子の塑性変形強度が十分に低下せず、得られる圧粉磁性の密度が向上しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、金型の強度が低下し、金型の寿命が短くなる傾向にある。なお、金型は、設定温度(成形温度)に、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との混合物を充填する前に昇温してもよいし、充填後に昇温してもよい。
成形圧力としては500MPa~3GPaが好ましく、800MPa~2GPaがより好ましい。成形圧力が前記下限未満になると、前記混合物が十分に圧縮されないため、圧粉磁心の密度が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、スプリングバック現象の影響が大きく、クラックが発生して圧粉磁心の密度が小さくなる傾向にある。
また、このようにして製造した圧粉磁心には、必要に応じて熱処理を施してもよい。これにより、加圧により圧粉磁心に生じた歪みを緩和し、磁気特性を改善することができる。このような熱処理の温度は通常500~800℃である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
磁性ナノ粒子として平均粒径100nmのFeNi合金ナノ粒子(アルドリッチ社製)4.975g(99.5質量%)とフマル酸類としてフマル酸ステアリルナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.025g(0.5質量%)とを混合し、さらに、乳鉢で30分間破砕混合した。得られた破砕混合物を、グリース(株式会社ミスミ製「M-HGSSC-H500」)を塗布したペレット試験片用金型に充填し、手動油圧真空加熱プレス機(株式会社井元製作所製「IMC-1946型改」)を用いて1.4GPaに加圧しながら350℃で1分間加熱した。加圧を停止した後、室温まで冷却して、得られた磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を金型から取り出した。得られた成形体の質量と体積から密度を求めた。その結果を図1及び表1に示す。
(実施例2)
FeNi合金ナノ粒子の量を4.995g(99.9質量%)に、フマル酸ステアリルナトリウムの量を0.005g(0.1質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を図1に示す。
(実施例3)
FeNi合金ナノ粒子の量を4.985g(99.7質量%)に、フマル酸ステアリルナトリウムの量を0.015g(0.3質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を図1に示す。
(実施例4)
フマル酸類としてフマル酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.025g(0.5質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例5)
フマル酸類としてフマル酸モノエチル(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.025g(0.5質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を表1に示す。
(比較例1)
フマル酸類を混合しなかった以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を表1及び図1に示す。
(比較例2)
フマル酸ステアリルナトリウムの代わりに飽和脂肪族カルボン酸であるリグノセリン酸(東京化成工業株式会社製)0.025g(0.5質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を表1に示す。
(比較例3)
フマル酸ステアリルナトリウムの代わりにフマル酸の幾何異性体であるマレイン酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製し、その密度を求めた。その結果を表1に示す。
(比較例4)
フマル酸ステアリルナトリウムの代わりにフマル酸ジエチル(富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして磁性ナノ粒子成形体(圧粉磁心ペレット(外径3mmφ))を作製したが、磁性ナノ粒子成形体を金型から取り出す際に破損した。これは、フマル酸ジエステルが室温で液体であるものが多く、カルボキシ基がすべてエステル化し、フマル酸ジエステルと磁性ナノ粒子との結合力が弱くなったためと考えられる。
<クラック率>
実施例1、4~5及び比較例1~3で得られた圧粉磁心ペレットを、ペレットの長手方向に平行な面で切断、研磨し、走査型電子顕微鏡を用いてその断面を観察した。50倍の倍率で取得した画像においてクラックの長さを計測し、クラックの長さを観察した断面の面積で割った値をクラック率(単位:mm/mm)として求めた。この測定を1つのペレットについて4箇所行い、その平均値を求めた。その結果を表1に示す。
図1に示したように、磁性ナノ粒子とフマル酸モノエステルの塩とを混合した圧粉磁心(実施例1~3)は、300℃以上の温度で成形した場合でも、フマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸類を混合しなかった圧粉磁心(比較例1)に比べて、密度が高くなる(7.0g/cm以上)ことがわかった。また、表1に示したように、フマル酸モノエステルの塩を混合した圧粉磁心(実施例1~3)は、300℃以上の温度で成形した場合でも、前記フマル酸類を混合しなかった圧粉磁心(比較例1)に比べて、クラック率が非常に小さくなる(0.10mm/mm以下)ことがわかった。
一方、表1に示したように、磁性ナノ粒子と飽和脂肪族カルボン酸とを混合した圧粉磁心(比較例2)は、300℃以上の温度で成形した場合でも、前記フマル酸類を混合しなかった圧粉磁心(比較例1)に比べて、密度が高く、クラック率が小さくなったが、前記フマル酸類を混合した圧粉磁心(実施例1、4~5)に比べて、密度が低く(7.0g/cm未満)、クラック率が高くなった(0.10mm/mm超過)。
また、フマル酸の幾何異性体であるマレイン酸を混合した圧粉磁心(比較例3)も、300℃以上の温度で成形した場合でも、前記フマル酸類を混合しなかった圧粉磁心(比較例1)に比べて、密度が高く、クラック率が小さくなったが、前記フマル酸類を混合した圧粉磁心(実施例1、4~5)に比べて、密度が低く(7.0g/cm未満)、クラック率が高くなった(0.10mm/mm超過)。これは、マレイン酸がシス体であり、高温で酸無水物になりやすいためと考えられる。
以上の結果から、磁性ナノ粒子にフマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸類を配合することによって、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度がより高く、クラックの発生がより抑制された圧粉磁心が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、300℃以上の温度で成形した場合でも、密度が高く、クラックの発生が抑制された圧粉磁心を得ることが可能となる。したがって、本発明の圧粉磁心は、比透磁率が高く、ヒステリシス損や渦電流損が小さくなるため、変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等の電磁気を利用した製品のコア材などとして有用である。

Claims (3)

  1. 平均粒径が1~300nmの磁性ナノ粒子と、フマル酸、フマル酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルの塩からなる群から選択される少なくとも1種のフマル酸類を含有し、前記フマル酸類の含有量が、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との合計量に対して0.01~1質量%であることを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記フマル酸類が、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、及びフマル酸モノエチルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記フマル酸類の含有量が、前記磁性ナノ粒子と前記フマル酸類との合計量に対して0.01~0.5質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉磁心。
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