JP6327920B2 - 粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の電磁波発生源からの電磁波の集まりを、3次元曲線の通路を浮遊状態で移動する粉体ないしは粒子の集まりに連続して照射する構成からなる加熱処理装置であって、個々の電磁波発生源からの出力の大きさの組み合わせと、粉体ないしは粒子の移動速度を、必要となる加熱処理条件に応じて変え、粉体ないしは粒子が特定された昇温速度を持って、特定された温度に昇温される加熱処理が行われる加熱処理装置である。
微細な粉体ないしは粒子の加熱処理においては、全ての粉体ないしは粒子を加熱処理するため、粉体ないしは粒子を浮遊状態にして加熱処理する。例えば、特許文献1に、樹脂粉が軟化する温度に昇温された装置内に、樹脂粉と導電粉とを導入し、装置内に設けた攪拌機で装置内の気体を撹拌することで樹脂粉と導電粉とを浮遊及び衝突させて、導電粉を樹脂粉の表面に付着させて造粒を行う導電性粉体の製造装置が記載されている。
また、特許文献2には、加熱処理する装置内に燃焼排ガスを導入し、燃焼排ガスによって粉体を浮遊させるとともに加熱させて熱変成させる製造装置が記載されている。
しかしながら、特許文献1と特許文献2に記載された加熱処理は、一定温度の熱処理装置内に粉体を放置させた加熱処理であるため、昇温速度を変えることができない。また、昇温された大気の対流、ないしは、燃焼排ガスの対流による対流加熱であるため、粉体の昇温速度は遅く、長時間の加熱処理が必要になり、加熱処理温度が高くなるほど処理費がかさむ。さらに、固定された容器内でのバッチ処理であるため、一度の処理量には制約がある。いっぽう、処理量を増やすために容器の容積を増大させると、容器内の温度偏差が増大して粉体の温度むらが増大するため処理時間を延長せざるを得ず、大量の粉体の加熱処理には不向きである。また、閉ざされた容器内での加熱処理であるため、粉体の加熱処理に際し、排除すべき物質が生成されるような加熱処理はできない。さらに、特許文献2の加熱処理は、可燃性の粉体および可燃性物質が生成される加熱処理はできない。このように、特許文献1および特許文献2に記載された加熱処理方法は制約が多く汎用性がない。
特開2012−256574号公報 特開2012−035237号公報
いっぽう、微細な粉体ないしは粒子を加熱処理するにあたって、様々な要件が必要になる。例えば、粉体や粒子の表面に新たな物質を吸着させ、この粉体ないしは粒子を、特定された昇温速度で、特定された温度に昇温すると、吸着した物質固有の化学反応が粉体ないしは粒子の表面で進行し、粉体ないしは粒子の表面に新たな物質が生成される場合がある。このような事例では、吸着した物質固有の化学反応の途上において副次的な物質が生成され、この物質が本来の化学反応の進行を妨げる場合がある。このため、この物質を気化によって排除すればよいが、この物質が可燃性物質であり、発火点が粉体ないしは粒子を昇温する温度に近いほど、昇温する温度の制御が難しくなる。また、この物質を短時間で気化できなければ、本来の化学反応が進行しない場合がある。例えば、この物質が液状物質であり、短時間で気化できなければ、液状物質と共に他の物質が移動し、本来の化学反応が粉体ないしは粒子の表面で起こらない。このため、昇温速度を速めて液状物質を短時間で気化させればよいが、液状物質の発火点が、粉体ないしは粒子を昇温する温度に近いほど、昇温する温度の制御が難しくなる。
ところで、粉体ないしは粒子について、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理ができれば、粉体ないしは粒子の汎用的な加熱処理方法になる。しかしながら、粉体ないしは粒子は微細な物質であるとともに粒度分布を持つため、粉体ないしは粒子の加熱にあたっては温度むらが発生しやすい。また、大量の粉体ないしは粒子を加熱処理することができれば、加熱処理費用が安価で済む。従って、大量の粉体ないしは粒子が、温度むらが発生することなく、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温される、粉体ないしは粒子の加熱処理に係わる汎用的な加熱処理方法が求められている。
しかしながら、粉体ないしは粒子を、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温するには困難を伴う。すなわち、大きな熱エネルギーを粉体ないしは粒子に与えれば昇温速度が速まるが、昇温速度が速いほど昇温する温度を制御するのが困難になる。これに対し、昇温速度が遅いほど、昇温する温度を制御することが容易になるが、例えば、前記した液状物質を短時間で排除できなくなるような事態が発生する。また、粉体ないしは粒子の加熱処理費用を低減するため、加熱処理装置の容積を拡大すると、装置内の温度偏差が増大し、粉体ないしは粒子の温度むらが増大する。
このため、第一に、大量の粉体ないしは粒子が加熱処理できる。第二に、粉体ないしは粒子に温度むらが発生しない。第三に、粉体ないしは粒子の昇温速度が制御できる。第四に、粉体ないしは粒子の昇温温度が制御できる。これらの4つの要件を兼備した加熱処理装置は、粉体ないしは粒子に対し、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理が可能になり、粉体ないしは粒子の加熱処理に係わる汎用的な加熱処理方法になる。本発明における解決しようとする課題は、これら4つの要件を兼備して、粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置を実現することにある。
本発明に係わる粉体ないしは粒子の集まりを加熱処理する加熱処理装置は、粉体ないしは粒子の集まりを浮遊状態で移動させる移動手段と、該移動する粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱する加熱手段とからなる加熱処理装置であり、前記移動手段、粉体ないしは粒子の集まりが、スパイラル状の3次元曲線からなる通路を連続して移動する第一の特徴と、該通路が形成するエリアに前記加熱手段を配置した第二の特徴と、該通路に気体の流れが導入される第の特徴と、該導入される気体の流速が変えられる第の特徴とからなるつの特徴を兼備する移動手段とすることで、前記加熱手段によって前記粉体ないしは粒子の集まりが昇温される速度と昇温される温度との双方が変えられる移動手段であり、前記加熱手段、複数個の電磁波発生源から構成される第一の特徴と、該電磁波発生源は出力レベルが変えられる第二の特徴と、該電磁波発生源は、前記粉体ないしは粒子の集まりが通過する前記通路への配置位置が変えられる第三の特徴と、前記複数個の電磁波発生源からの電磁波の集まりが、前記通路を連続して移動する粉体ないしは粒子の集まりに常時照射される第の特徴とからなるつの特徴を兼備する加熱手段とすることで、前記複数の電磁波発生源によって前記粉体ないしは粒子の集まりが昇温される速度と昇温される温度との双方が変えられる加熱手段であり、前記つの特徴を兼備する移動手段と、前記つの特徴を兼備する加熱手段とから構成されることを特徴とする、粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置である。
つまり、粉体ないしは粒子を連続処理で加熱処理する場合は、粉体ないしは粒子が加熱手段からの熱が供給される場所を移動する速度と、加熱手段からの熱の大きさと、加熱手段の配置位置とからなる3つの条件を変えると、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度とが変わる。従って、粉体ないしは粒子の移動速度の条件と、加熱手段の出力の大きさの条件と、加熱手段の配置位置の条件からなる3つの条件を組み合わせると、粉体ないしは粒子が、予め決められた昇温速度をもって、予め決められた温度に昇温され、処理時間の経過とともに同一条件で加熱処理された大量の粉体ないしは粒子が得られる。
本発明の加熱処理装置における粉体ないしは粒子が移動する移動手段は、ヘリカル状やスパイラル状などの3次元曲線からなる通路とし、通路が形成するエリアの一部に加熱手段である複数の電磁波発生源を配置したため、電磁波の集まりが粉体ないしは粒子に照射できる領域が確保できる。さらに、この通路に粉体ないしは粒子の集まりが、気体と共に移動する構成とし、気体の流速を変えると、粉体ないしは粒子の加熱時間が変えられ、これによって、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度が大きく変わる。なお、通路に導入される気体は、大気や窒素ガスや水素ガスなどの様々な気体が選択できる。また、複数の電磁波発生源からの電磁波の集まりが、空間的な広がりを持って、移動する粉体ないしは粒子に均等に常時照射されるため、粉体ないしは粒子における温度むらは発生せず、同一の加熱処理条件で大量の粉体ないしは粒子が処理時間の経過とともに加熱処理される。
また、本発明の加熱処理装置における粉体ないしは粒子を加熱する加熱手段は、複数個の電磁波発生源から構成し、さらに、個々の電磁波発生源の出力の大きさが変えられる構成としたため、複数個の電磁波発生源の出力の大きさの組み合わせと、複数個の電磁波発生源の配置位置の組み合わせとが変えられる。従って、電磁波発生源の出力の大きさの可変幅と、出力の大きさの組み合わせと、電磁波発生源の配置位置の組み合わせからなる3つの条件に応じて、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度が大きく変わる。これによって、前記した移動手段のみならず加熱手段についても、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度とが大きく変えることができる構成とした。
従って、粉体ないしは粒子の移動速度の条件と、個々の電磁波発生源からの出力の大きさの組み合わせの条件と、複数個の電磁波発生源の配置位置の条件とから3つの条件を変えることで、粉体ないしは粒子の集まりが、予め特定した昇温速度を持って、予め特定した温度に昇温される。この結果、予め決めた同一の加熱処理条件で加熱処理された粉体ないしは粒子の集まりが、処理時間の経過とともに大量に製造される。
以上に説明したように、粉体ないしは粒子の集まりを、気体と共に3次元曲線からなる通路を移動させ、気体の流速を変えて粉体ないしは粒子が加熱手段を通過する移動速度を変え、これによって、粉体ないしは粒子の加熱時間が変えられ、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度とを制御することが可能になる。さらに、加熱手段を複数個の電磁波発生源から構成し、個々の電磁波発生源の出力を変えるため、電磁波出力の可変幅と出力の組み合わせと配置位置の組み合わせとに応じて、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度とを制御することが可能になる。従って、本発明の加熱処理装置は5段落で説明した4つの要件を兼備する加熱処理装置であり、特定された昇温速度を持って、特定した温度に昇温される条件で、大量の粉体ないしは粒子が連続して加熱処理される汎用的な加熱処理装置である。
本発明に係わる粉体ないしは粒子を加熱処理する加熱処理装置は、該加熱処理装置を構成する加熱手段である電磁波発生源が、近赤外線を発生する近赤外線ランプからなる電磁波発生源である。
つまり、粉体ないしは粒子を、特定された昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱手段として、以下の5つの要件を兼備する近赤外線照射が望ましい。第一に、照射された近赤外線を、粉体ないしは粒子が吸収して自己発熱するため、粉体ないしは粒子の昇温速度が速い。第二に、赤外線ランプのフィラメント温度によって、赤外線の全放射エネルギーと、放射強度に係わる波長依存性が一義的に決まる。また、フィラメント温度が高いほど、全放射エネルギーと放射強度とが大きく、放射強度の波長依存性が顕著になる。従って、フィラメント温度が高い近赤外線ランプから照射される近赤外線は、中間赤外線より全放射エネルギーが大きく、放射率も高い。このため、赤外線の照射時間が短い粉体ないしは粒子の連続処理において、近赤外線の短時間の照射によって、粉体ないしは粒子が昇温される。第三に、加熱手段を複数個からなる近赤外線ランプで構成し、個々の近赤外線ランプを異なるフィラメント温度で駆動すると、広い放射強度分布を持った近赤外線の集まりが照射される。これによって、近赤外線が照射される場所によって放射強度を大きく変えることができる。第四に、複数個の近赤外線ランプを粉体ないしは粒子が移動する通路の近くに配置できる。これによって、近赤外線の集まりが、移動する粉体ないしは粒子に常時照射されるため、粉体ないしは粒子に温度むらは発生しない。第五に、金属、セラミックス、合成樹脂、無機物などの様々な物質は、近赤外線の吸収率が0.3以上であるため、粉体ないしは粒子の材質の制約が少ない。なお、近赤外線の吸収率が0.3より小さい粉体ないしは粒子を加熱処理する場合は、粉体ないしは粒子の表面を予め黒色に着色すれば吸収率が著しく増大し、近赤外線の短時間の照射で加熱処理される。
本発明に係わる粉体ないしは粒子を加熱処理する加熱処理装置は、該加熱処理装置を構成する粉体ないしは粒子の集まりが浮遊状態で連続して移動する通路が、ホウケイ酸ガラスで構成される通路である。
つまり、ホウケイ酸ガラスは、近赤外線の波長領域をカバーする0.7−2.1μmの波長で、赤外線の透過率が90%を超える。このため、ホウケイ酸ガラスに近赤外線を照射すると、ホウケイ酸ガラスが殆ど昇温されず、90%以上の近赤外線がホウケイ酸ガラスを透過する。また、最高使用温度は490℃と高く、熱膨張率が3×10−6/Kと通常のソーダガラスの1/3であるため、急加熱、急冷却で破壊しない。従って、粉体ないしは粒子の集まりが通過する3次元曲線からなる通路をホウケイ酸ガラスで構成し、この通路の近くに近赤外線ランプを配置すれば、ホウケイ酸ガラスを透過した近赤外線の集まりが、移動する粉体ないしは粒子に吸収され、粉体ないしは粒子の集まりが効率よく加熱され、また、粉体ないしは粒子の温度むらは発生しない。
本発明に係わる粉体ないしは粒子を加熱処理する加熱処理装置を用いて、粉体ないしは粒子を加熱処理する第一の加熱処理方法は、加熱処理する粉体ないしは粒子が、カルボン酸金属化合物が吸着した粉体ないしは粒子であり、該粉体ないしは該粒子を加熱する手段が、フィラメント温度が異なる複数個の近赤外線ランプであり、前記粉体ないしは前記粒子の集まりを大気が導入された通路で、前記複数個の近赤外線ランプを稼働させ、該粉体ないしは該粒子の集まりを連続して加熱処理する、これによって、該粉体ないしは該粒子の表面が金属微粒子ないしは金属酸化物微粒子で覆われる熱処理が、該粉体ないしは該粒子に連続してなされることを特徴とする、粉体ないしは粒子を加熱処理する第一の加熱処理方法。
つまり、カルボン酸金属化合物が吸着した粉体ないしは粒子を加熱処理し、粉体ないしは粒子の表面を金属ないしは金属酸化物の微粒子の集まりで覆うには、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理条件が必要になる。すなわち、カルボン酸金属化合物を大気中で加熱処理すると、カルボン酸の沸点を超える温度で、カルボン酸と分子クラスター状の金属ないしは金属酸化物に分解する。さらに処理温度が上がると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に、分子クラスター状の金属ないしは金属酸化物が微粒子の集まりを形成して、カルボン酸金属化合物の熱分解を終える。いっぽう、カルボン酸は液体であって固有の発火点を持つ。従って、カルボン酸金属化合物がカルボン酸と金属ないしは金属酸化物に分解された後は、カルボン酸が分子クラスター状の金属ないしは金属酸化物を伴って、粉体ないしは粒子の表面を移動する。このため、分子クラスター状の金属ないしは金属酸化物が移動してしまった後には、微粒子の集まりは粉体ないしは粒子の表面の偏った場所に析出し、粉体ないしは粒子の表面全体が微粒子の集まりで覆われない。従って、カルボン酸を短時間で気化させることが必要になる。いっぽう、昇温速度が速すぎると、カルボン酸の発火点が低い場合は、気化したカルボン酸が発火する。粉体ないし粒子の集まりを、窒素雰囲気で加熱処理すればカルボン酸は発火しないが、昇温する温度が所定の温度を超えると、活性状態にある金属微粒子が熱エネルギーを得て粗大化し、この結果、粗大化した金属微粒子が粉体ないしは粒子の偏った場所に析出し、粉体ないしは粒子の表面全体が金属微粒子の集まりで覆われない。従って、粉体ないしは粒子を特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理条件が必要になる。
このため、粉体ないしは粒子が3次元曲線の通路を移動する移動速度を変え、複数個からなる近赤外線ランプにおいては、近赤外線ランプのフィラメント温度の組み合わせを変え、さらに、複数個からなる近赤外線ランプの配置位置を変えると、粉体ないしは粒子が予め決めた昇温速度を持って、予め決めた温度に昇温され、粉体ないしは粒子の表面が微粒子の集まりで覆われる。
本発明に係わる粉体ないしは粒子を加熱処理する加熱処理装置を用いて、粉体ないしは粒子を加熱処理する第二の方法は、加熱処理する粒子が、オクチル酸銅が吸着した鱗片状黒鉛粒子であり、該鱗片状黒鉛粒子の集まりを、前記した加熱処理の第一の加熱処理方法によって加熱処理する、これによって、前記鱗片状黒鉛粒子の表面が銅微粒子の集まりで覆われる熱処理が連続してなされることを特徴とする、前記した第一の加熱処理方法によって加熱処理する粒子の加熱処理方法。
つまり、最初に、オクチル酸銅をn−ブタノールに分散する。この分散液を容器に入れ、分散液に鱗片状黒鉛粒子の集まりを投入して撹拌する。この後、容器を昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収する。こうして、オクチル酸銅が吸着した鱗片状黒鉛粒子の集まりを製造する。
次に、13段落に記載した加熱処理装置を用い、13段落に記載したカルボン酸金属化合物が吸着した粉体ないしは粒子を熱処理する方法によって、オクチル酸銅が吸着した鱗片状黒鉛粒子の集まりを熱処理する。なお、加熱処理装置は、鱗片状黒鉛粒子が浮遊状態で連続して移動する通路が、ホウケイ酸ガラスによってスパイラル状のチューブに形成されている。また、近赤外線ランプは、スパイラルチューブから一定の距離を置いて、スパイラルチューブの中心軸に直交する平面に平行になるように、複数個の近赤外線ランプを等間隔で配置する。さらに、スパイラルチューブに、一定の速度からなる大気を導入し、この大気に一定の割合でオクチル酸銅が吸着した鱗片状黒鉛粒子を連続して投入する。
この後、複数個の近赤外線ランプについて、各々の近赤外線ランプの出力を調整し、オクチル酸銅を熱分解し、鱗片状黒鉛粒子の表面が銅微粒子の集まりで覆われた熱処理を鱗片状黒鉛粒子に施す。
本発明に係わる粉体ないしは粒子を加熱処理する加熱処理装置を用いて、粉体ないしは粒子を加熱処理する第三の方法は、加熱処理する粉体が、ナフテン酸鉄が吸着した鉄粉であり、該鉄粉の集まりを、前記した加熱処理の第一の方法によって加熱処理する、これによって、前記鉄粉の表面が酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆われる熱処理が連続してなされることを特徴とする、前記した第一の加熱処理方法によって加熱処理する粉体の加熱処理方法。
つまり、最初に、ナフテン酸鉄をn−ブタノールに分散する。この分散液を容器に入れ、分散液に鉄粉の集まりを投入して撹拌する。この後、容器を昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収する。こうして、ナフテン酸鉄が吸着した鉄粉の集まりを製造する。
次に、13段落に記載した加熱処理装置を用い、13段落に記載したカルボン酸金属化合物が吸着した粉体ないしは粒子を熱処理する方法によって、ナフテン酸鉄が吸着した鉄粉の集まりを熱処理する。なお、加熱処理装置は15段落で記載した加熱装置と同様で、鉄粉が浮遊状態で連続して移動する通路が、ホウケイ酸ガラスによってスパイラル状のチューブに形成されている。また、近赤外線ランプはスパイラルチューブから一定の距離を置いて、スパイラルチューブの中心軸に直交する平面に平行になるように、複数個の近赤外線ランプを等間隔で配置する。さらに、スパイラルチューブに、一定の速度からなる大気を導入し、この大気に一定の割合でナフテン酸鉄が吸着した鉄粉を連続して投入する。
この後、複数個の近赤外線ランプについて、各々の近赤外線ランプの出力を調整し、ナフテン酸鉄を熱分解し、点分の表面が酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆われた熱処理を鉄粉に施す。
加熱処理装置の加熱処理部の構成を説明する図である。
実施形態1
本実施形態は、近赤外線ランプに関する実施形態である。最初に、赤外線ランプの原理である黒体輻射を説明する。つまり、赤外線ランプの熱エネルギーの90%近くが赤外線の放射に変換されるため、黒体輻射に関する原理が赤外線ランプに当てはまる。
黒体の絶対温度、つまり、赤外線ランプのフィラメントの絶対温度に相当する温度をTとし、黒体から放射される輻射の波長と放射強度、つまり、赤外線ランプから放射される赤外線の波長λと放射強度Esとの間には、数1で示されるプランクの法則が成り立つ。なお、Cは定数で3.74×10−16(W/m)で、Cも定数で1.44×10−2(mK)である。また、黒体から輻射される中心波長、つまり、赤外線ランプから放射される赤外線の中心波長λmaxは、数2で示されるウィーンの法則が成り立つ。さらに、数1におけるプランクの法則を全波長範囲にわたって積分すると、黒体から輻射される全輻射エネルギー、つまり、赤外線ランプから放射される全放射エネルギーに相当する全輻射エネルギーEは数3で示すステファン・ボルツマンの法則が成り立つ。なお、σは定数で5.67×10−8(W/m)である。
数1 Es・λ=Cλ−5/(e /λT−1)(W/mm)
数2 λmaX・T=2898(μmK)
数3 E=σ・T(W/m
黒体輻射の原理から、赤外線ランプから照射される赤外線の放射強度は、赤外線ランプのフィラメント温度と赤外線の波長とに依存し、放射強度のピークを示す赤外線の波長と全放射エネルギーとは、赤外線ランプのフィラメント温度で決まる。例えば、フィラメント温度が3500°Kである場合は、放射強度のピークは波長が0.828μmの近赤外線にあり、フィラメント温度が3000°Kである場合は、放射強度のピークは波長が0.966μmの近赤外線にあり、フィラメント温度が2500°Kである場合は、放射強度のピークは波長が11.16μmの近赤外線にある。また、フィラメント温度が3500°Kである近赤外線ランプから放射される全放射エネルギーは、フィラメント温度が3000°Kである近赤外線ランプから放射される全放射エネルギーの1.85倍で、フィラメント温度が2500°Kである近赤外線ランプから放射される全放射エネルギーの3.84倍になる。このように、フィラメント温度が高いほど、広い波長領域にわたって、放射強度が大きい近赤外線が放射され、放射強度のピーク波長から高周波側では放射強度が指数関数的に減少し、低周波側では放射強度が多項式的に減少する。なお、フィラメント温度が3500°Kを超えると、波長が0.8μmより短い可視光領域の光が放射される割合が増加するため、可視光線が人の目に入らない対策が必要になる。
ところで、浮遊状態で移動する粉体ないしは粒子の集りを、連続して加熱処理する場合は、固定された容器内でのバッチ処理に比べると、粉体ないしは粒子に照射される赤外線の照射時間は著しく短い。一方、赤外線を吸収した粉体ないしは粒子は自己発熱し、粉体ないしは粒子の赤外線吸収率に応じて、粉体ないしは粒子が短時間で昇温する。従って、粉体ないしは粒子の赤外線吸収率に応じて、フィラメント温度を設定する。さらに、加熱手段を複数個の近赤外線ランプで構成し、個々の近赤外線ランプのフィラメント温度を変えると、放射強度分布が著しく広がる。このため、近赤外線ランプの複数個を所定の間隔で並べ、さらに、個々の近赤外線ランプのフィラメント温度を変えると、広い放射強度分布を持った近赤外線の集まりが、粉体ないしは粒子が移動する通路に照射される。これによって、粉体ないしは粒子の集まりが移動する場所によって、粉体ないしは粒子の昇温速度と昇温温度とが変えられる。従って、粉体ないしは粒子の集まりが特定された昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理条件を、近赤外線ランプの配置位置の組み合わせと近赤外線ランプのフィラメント温度の組み合わせとによって実現することができる。なお、個々の近赤外線ランプの駆動条件と配置位置とは、粉体ないしは粒子の赤外線の吸収率に依存するため、実施例において具体的に説明する。
実施形態2
本実施形態は、粉体ないしは粒子の表面にカルボン酸金属化合物を吸着させ、この粉体ないしは粒子を加熱処理することで、粉体ないしは粒子の表面が、金属微粒子で覆われるカルボン酸金属化合物の加熱処理条件に係わる実施形態である。以下の説明では、銅微粒子の原料となるカルボン酸銅化合物の加熱処理条件について説明する。
カルボン酸銅化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸銅化合物におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、銅イオンと共有結合すれば、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が最も長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸銅化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、カルボン酸と分子クラスター状の銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。また、カルボン酸銅は合成が容易で、安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属が生成される。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅が生成される。
カルボン酸銅の組成式は、RCOO−Cu−COORで表わせられる。Rは炭化水素であり、組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅を構成する物質の中で、組成式の中央に存在する銅イオンCu2+が最も大きい物質になる。従って、銅イオンCu2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合する場合は、銅イオンCu2+と酸素イオンOとの距離が最大になる。この理由は、銅イオンCu2+の共有結合半径は112pmであり、酸素イオンOの共有結合半径は63pmであり、炭素原子の共有結合半径は75pmであり、酸素原子の共有結合半径は57pmであることによる。このため、銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸銅は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に切断され、分子クラスター状の銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が相対的に低ければ、カルボン酸銅は相対的に低い温度で熱分解し、粉体ないしは粒子の加熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅は、熱分解温度が相対的に低くなるので、銅微粒子の原料として望ましい。
さらに、飽和脂肪酸が分岐鎖構造を有する場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短いため、沸点がさらに低くなる。このため、カルボン酸銅もさらに低い温度で熱分解する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、カルボン酸銅も極性を持ち、アルコールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このため、カルボン酸銅のアルコール分散液に粉体ないしは粒子の集まりを投入し、アルコールを気化すれば、粉体ないしは粒子の表面がカルボン酸銅で覆われる。このようなカルボン酸銅としてオクチル酸銅がある。すなわち、オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、前記したラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、銅微粒子の原料として、熱分解温度が低いオクチル酸銅が望ましい。オクチル酸銅は、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%まで分散する。
オクチル酸銅を吸着させた粉体ないしは粒子を大気中で加熱処理すると、オクチル酸の沸点である228℃を超えると、オクチル酸と分子クラスター状態の銅に分解する。さらに昇温すると、オクチル酸は気化熱を奪って気化し、オクチル酸の気化が290℃で完了し、粉体ないしは粒子の表面に銅微粒子の集まりが析出し、オクチル酸銅の熱分解を終える。このため、オクチル酸銅の熱分解が始まる228℃から、オクチル酸銅の熱分解が完了する290℃の温度範囲においては、粉体ないしは粒子の表面において、オクチル酸が継続的に気化熱を奪いながら気化する。また、オクチル酸は発火点が371℃の液体である。従って、オクチル酸の気化が短時間で完了できなければ、オクチル酸は分子クラスター状の銅を伴って移動する。このため、10秒以内で粉体ないしは粒子を228℃から290℃に昇温し、オクチル酸の移動を抑制しなければならない。いっぽう、オクチル酸は371℃で発火するため、オクチル酸の発火点近くまで昇温させることはできない。さらに、粉体ないしは粒子が昇温される温度が290℃以上になると、銅微粒子が熱エネルギーを得て成長し、微粒子の粗大化が徐々に進み、粗大化した粒子が粉体ないしは粒子の偏った場所に析出し、粉体ないしは粒子が銅微粒子の集まりで覆われない。このため、粉体ないしは粒子の昇温される温度は330℃程度までに抑えなければならい。
以上に説明したオクチル酸銅の熱分解現象から、オクチル酸銅を吸着させた粉体ないしは粒子を大気雰囲気で加熱処理し、銅微粒子の集まりで覆うには、1分以内で330℃付近まで昇温させ、350℃を超えてはならない加熱処理条件が必要になる。このため、粉体ないしは粒子の集まりが3次元曲線からなる通路を移動する移動速度を変え、複数個の近赤外線ランプのフィラメント温度の組み合わせと近赤外線ランプの配置位置を変えることで、前記した加熱処理条件を実現させることが求められる。この加熱処理条件は、粉体ないしは粒子の赤外線の吸収率に依存するため、実施例で具体的な加熱条件を説明する。なお、オクチル酸銅について説明したが、他のオクチル酸金属化合物についても、オクチル酸銅と同様の加熱処理条件が必要になる。
実施形態3
本実施形態は、粉体ないしは粒子の表面にカルボン酸金属化合物を吸着させ、粉体ないしは粒子を加熱処理することで、粉体ないしは粒子の表面が、金属酸化物微粒子で覆われるカルボン酸金属化合物の加熱処理条件に係わる実施形態である。以下の説明では、熱分解で酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄化合物の加熱処理条件について説明する。
カルボン酸鉄化合物の熱分解で析出した酸化鉄FeOを大気中で昇温すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+の一部が酸化して、三価の鉄イオンFe3+になり、FeO・Feの組成式で表さられるマグネタイトFeになる。このマグネタイトFeは、強磁性で導電性の酸化物である。さらに大気中で昇温すると、2価の鉄イオンFe2+の全てが酸化されて三価の鉄イオンFe3+になり、酸化鉄Feのγ相であるマグへマイトγ−Feになる。このマグへマイトγ−Feは、強磁性で絶縁性の酸化物である。従って、熱分解によって酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄化合物を、強磁性の性質を持つ粉体ないしは粒子の表面に吸着させ、この粉体ないしは粒子を加熱処理すると、粉体ないしは粒子の表面は、マグネタイトないしはマグヘマイトの微粒子の集まりが磁気吸着し、粉体ないしは粒子は、新たにマグネタイトないしはマグヘマイトの性質を持つ。
カルボン酸鉄化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は鉄イオンFe2+である。いっぽう、鉄イオンFe2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合するカルボン酸鉄化合物は、鉄イオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、19段落で説明したように熱分解によって鉄を析出する。従って、熱分解によって酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄化合物は、鉄イオンFe2+と結合する酸素イオンOとの距離が短く、酸素イオンOが鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、カルボン酸鉄化合物の熱分解が始まると、酸素イオンOが鉄イオンFe2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、鉄イオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化鉄FeOと有機酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸鉄化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンOが配位子になって鉄イオンFe2+に近づいて配位結合するカルボン酸鉄化合物があり、酢酸鉄、カプリル酸鉄、安息香酸鉄、ナフテン酸鉄などが挙げられる。なお、酢酸鉄とカプリル酸鉄と安息香酸鉄とは、酸素イオンが鉄イオンに近づいて配位結合して、複核錯塩を形成するが、熱分解の途上においては不安定な物質であるため取り扱いが難しい。従って、酸化鉄FeOを析出するカルボン酸鉄としては、ナフテン酸鉄が望ましい。さらに、ナフテン酸鉄はn−ブタノールに対して10重量%近くまで分散する。また、カルボン酸金属化合物は、19段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。
ナフテン酸鉄は五員環を持つ複数の飽和脂肪酸と鉄との化合物であり、ナフテン酸鉄を吸着させた粉体ないしは粒子を大気中で加熱処理すると、ナフテン酸を構成する飽和脂肪酸の中で最も高い飽和脂肪酸の沸点である240℃を超えると、ナフテン酸鉄はナフテン酸と分子クラスター状の酸化鉄FeOとに熱分解する。さらに昇温すると、ナフテン酸は気化熱を奪って気化し、ナフテン酸の気化が310℃で完了し、粉体ないしは粒子の表面に酸化鉄FeOの微粒子の集まりが析出し、ナフテン酸鉄の熱分解を終える。このため、熱分解が始まる240℃から熱分解が完了する310℃の温度範囲においては、粉体ないしは粒子の表面において、ナフテン酸が継続的に気化熱を奪って気化する。しかしながら、ナフテン酸は液体であるため、ナフテン酸の気化が短時間で完了できなければ、ナフテン酸は分子クラスター状の酸化鉄FeOを伴って移動する。このため、20秒以内で粉体ないしは粒子を240℃から310℃に昇温し、ナフテン酸の移動を抑制しなければならない。
以上に説明したナフテン酸鉄の熱分解現象から、ナフテン酸鉄を吸着させた粉体ないしは粒子の集まりを大気雰囲気で加熱処理し、酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆うには、90秒以内で330℃付近まで昇温させる加熱処理条件が必要になる。このため、粉体ないしは粒子の集まりが3次元曲線からなる通路を移動する移動速度を変え、複数個の近赤外線ランプのフィラメント温度の組み合わせと複数個の近赤外線ランプの配置位置の組み合わせを変えることで、前記した加熱処理条件を実現させることが求められる。この加熱処理条件は、粉体ないしは粒子の赤外線の吸収率に依存するため、実施例で具体的な加熱条件を説明する。なお、ナフテン酸鉄の熱処理について説明したが、他のナフテン酸金属化合物についても、ナフテン酸鉄と同様の加熱処理条件が必要になる。
実施例1
本実施例では、鱗片状黒鉛粒子の表面に銅微粒子の集まりを析出させ、析出した銅微粒子の多層構造で覆われた鱗片状黒鉛粒子を製造する。これによって、鱗片状黒鉛粒子の表面は等電位面を形成し、新規な性質を持つ金属黒鉛質ブラシの原料になる。本実施例では、鱗片状黒鉛粒子(鱗状黒鉛粒子ともいう)として日本黒鉛株式会社が製造するCB黒鉛を用いた。銅微粒子の原料として、オクチル酸銅(例えば、三津和薬品工業株式会社の製品)を用いた。n−ブタノールは試薬1級品を用いた。なお、黒鉛粒子は赤外線の吸収率が0.85と大きく、短時間の赤外線照射で自己発熱する。
銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子を製造する製作工程を説明する。最初に、オクチル酸銅の5モルを20リットルのn−ブタノールに分散する。この分散液を容器に入れ、鱗片状黒鉛粒子1kgを投入して撹拌する。この後、容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収する。こうして、オクチル酸銅が吸着した黒鉛粒子の集まり(以下では処理黒鉛粒子という)を製造した。さらに、処理黒鉛粒子の集まりを、次に説明する加熱処理装置を用いてオクチル酸銅を熱分解し、銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子を製造することに適切な加熱処理条件を導いた。
最初に、加熱処理装置の構成を説明する。処理黒鉛粒子が浮遊状態で移動する通路として、ホウケイ酸ガラスによって、外径が60mm、内径が40mm、肉厚が1.5mm、ピッチ間隔が16mm、長さが1mからなるスパイラルチューブを用意した。また、近赤外線ランプは、ドイツのアドフォス社が製造する「NIRテクニカム」と呼ばれる近赤外線ランプを用いた。使用したランプは、直径が8mmで長さが20mmの管の内部に直線状のフィラメントが内蔵され、エミッタ出力が2.4kWのタイプである。スパイラルチューブの上流側の40cmから144mmの領域に、スパイラルチューブから40mmの距離を置いて、スパイラルチューブの中心軸に直交する平面に平行になるように、10個の近赤外線ランプを16mmの等間隔で配置した。さらに、近赤外線ランプの外側に円筒形状で内面が銀メッキされたリフレクターを配置して近赤外線ランプを覆った。さらに、スパイラルチューブに26mm/秒の速度からなる大気を導入し、この大気に10g/秒の割合で処理黒鉛粒子を投入した。
図1に、前記した加熱装置における近赤外線ランプが配置された箇所を模式的に示す。スパイラルチューブ1は、中心軸が鉛直方向と直交するように配置され、その外側に40mmの距離を置いて近赤外線ランプ20−29が16mmの間隔で10個が配置される。さらに、スパイラルチューブ1には、26mm/秒の速度を持つ大気3が導入され、この大気に10g/秒の割合で処理黒鉛粒子4を連続投入した。また、近赤外線ランプの外側に円筒形状のリフレクター5を配置した。
このような構成からなる加熱装置において、一つの加熱処理条件において、200g程度の処理黒鉛粒子を連続投入し、また、10個の近赤外線ランプの出力については、最大出力に対する割合として各々のランプ出力を変え、10個の近赤外線ランプからの近赤外線の集まりを処理黒鉛粒子の集まりに常時照射し、オクチル酸銅を熱分解した。なお、オクチル酸銅の熱分解の結果は、加熱処理した処理黒鉛粒子の表面を電子顕微鏡で観察し、表面状態から加熱処理条件の適否を判断した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。また、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出し、これを画像として映し出し、画像の濃淡から物質の材質の違いが分かる。これによって、オクチル酸銅の熱分解の状況が判断できる。また、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し、これを画像として映し出すことで表面の凹凸状態が分かる。これによって、生成された銅微粒子の状況が分かる。加熱処理の条件を表1に示す。
表1
条件1 条件2 条件3 条件4
ランプ1 出力10% 出力10% 出力20% 出力20%
ランプ2 出力10% 出力20% 出力30% 出力30%
ランプ3 出力20% 出力20% 出力30% 出力30%
ランプ4 出力20% 出力30% 出力30% 出力30%
ランプ5 出力30% 出力30% 出力30% 出力30%
ランプ6 出力30% 出力30% 出力30% 出力30%
ランプ7 出力30% 出力30% 出力20% 出力10%
ランプ8 出力20% 出力20% 出力10% 出力10%
ランプ9 出力20% 出力20% 出力10% 出力 0%
ランプ10 出力10% 出力10% 出力10% 出力 0%
条件1で加熱処理した試料は、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、黒鉛粒子の表面は白く光っていた。これは、オクチル酸銅の熱分解が進行せず、電子によってオクチル酸銅がチャージアップされた結果である。また、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、黒鉛粒子の表面は海綿状の物質で覆われていた。この結果は、熱分解が進行しないオクチル酸銅が黒鉛粒子を覆った結果である。従って、条件1の加熱処理では昇温温度が低すぎる。
条件2で加熱処理した試料は、反射電子線の1kVから9900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、黒鉛粒子の表面が白く光る部分がなくなり、表面全体が白っぽい被膜で覆われていた。さらに、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、黒鉛粒子の表面全体が滑らかな被膜で覆われていた。この結果は、オクチル酸銅の熱分解が進行したが、熱分解で生成されたオクチル酸が完全に気化せず、黒鉛粒子の表面に残存したことを示す。従って、条件2よりさらに昇温速度を速める必要がある。
条件3で加熱処理した試料では、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、黒鉛粒子の表面全体が白っぽい微粒子で覆われていた。さらに、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、黒鉛粒子の表面全体が微粒子で覆われていたが、微粒子が短冊状であった。この結果は、オクチル酸銅の熱分解で銅微粒子が生成されたが、昇温温度が高いために銅微粒子が成長したことが予想される。このため、昇温温度を条件3より低下させる条件で再度加熱処理を実施した。
条件4で加熱処理した試料では、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、黒鉛粒子の表面全体が白っぽい微粒子で覆われていた。さらに、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し画像では、黒鉛粒子の表面が、40−60nm40nの粒状微粒子で覆われていた。さらに、表面を構成する元素分布を頻度によって映し出すEDXの分析結果から、微粒子は銅で構成されていることが分かった。
以上の結果から、鱗片状黒鉛粒子を銅微粒子の集まりで覆うには、条件4における近赤外線ランプ駆動条件が適切である。従って、条件4によって加熱処理された黒鉛粒子は、1分以内で330℃付近まで昇温され、昇温温度は350℃を超えていない。
以上に説明した銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子は、直流モータ用の金属黒鉛質ブラシの原料になる。このブラシは、火花放電が起こらず、電気ノイズが発生せず、動作寿命が極めて長い、画期的な性質を持つ。従来における金属黒鉛質ブラシは、黒鉛粒子と電解銅粉との混合物を所定の形状に圧縮成形し、この後、水素ガスの雰囲気で焼成することによって製造する。これに対し、新規の金属黒鉛質ブラシは、本実施例で製造した銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子の集まりを、所定の形状に圧縮成形するだけで製造される。
ここで、従来における金属黒鉛質ブラシの摩耗現象を説明する。ブラシと整流子との摺接面における間隙は、間隙が狭くなるほど隣り合う2つの等電位線の電位差は小さくなるため、電位差の勾配は大きくなる。この電位差勾配dV/dxは電界Eを形成し、両者の間にはE=−dV/dxの関係が成り立つ。また、間隙を形成する空気は、1気圧における比抵抗が1×1020Ωmという数値をもつため、電位差の勾配は直線に近づく。このため、間隙が狭くなるほど大きな電界Eが形成され、整流子とブラシとが接触する直前に大きな電界が黒鉛粒子に印加される。いっぽう、黒鉛結晶の層間の比抵抗は7.6×10−3Ωmであり、空気の比抵抗に比べて著しく小さい。このため、黒鉛粒子では隣り合う2つの等電位線が形成する電位差は増大し、これによって、電位差の勾配は小さくなる。この結果、黒鉛粒子に形成される電界の大きさは、間隙で形成される電界の大きさに比べると著しく小さい。
整流子とブラシが接触する直前に、黒鉛粒子の表層を形成する黒鉛結晶におけるπ軌道を移動するπ電子に大きな電界Eが印加され、π電子にクーロ力Fが働く。電子の素電荷量をe(e=1.6×10−19クーロン)とすると、クーロン力FはF=−e・Eで与えられる。π電子はクーロン力Fによって電界ベクトルEの方向に移動する。しかしながらπ電子はπ軌道の相互作用によってπ軌道に拘束されているため、π電子がπ軌道から遊離するためには、π電子はπ軌道の相互作用より大きいエネルギーを得る必要がある。
ここで、炭素原子が六角形の網目構造を形成する黒鉛結晶の基底面において、上下方向に隣り合う2つの基底面の各々の炭素原子が有するπ電子が、基底面の層間距離b(b=3.364Å)をもって離間されているとする。π電子が層間距離bの距離をクーロン力Fによって移動する際に要するエネルギーが、π軌道上の相互作用より大きければπ電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子として振舞う。このため、π電子が層間距離bの距離を動く際に行う仕事の大きさとπ軌道上の相互作用の大きさとを比較する。π電子がクーロン力Fによって黒鉛結晶の層間距離bを動いたときに仕事Wを行う。仕事WはW=b・Fで与えられる。この仕事Wが、π電子同士に作用する相互作用である35meVを超えると、π電子はπ軌道上の相互作用の拘束から解放されて自由電子になる。
ここで直流モータに12Vの電圧が印加され、印加された電圧は整流子とブラシとの間隙で減少するが、間隙が極めて狭いため黒鉛粒子に12Vが印加されるとする。あわせて、黒鉛結晶の基底面の結合力にかかわるσ軌道のσ電子についても、クーロン力Fによって基底面内で隣接する炭素原子間距離a(a=1.421Å)の距離を移動したときの仕事W(W=a・F)についても算出し、σ軌道上の相互作用の大きさと比較する。
整流子とブラシとの間隙dが49nm以下であれば、隣り合う2つの炭素原子間距離bの距離を、π電子が移動する際の仕事は、π軌道の相互作用である35meVを超える。これによって、π電子はπ軌道から離れて自由電子となる。このように、ブラシが整流子と接触する直前に、黒鉛粒子の表層には狭い間隙で形成された大きな電界が作用し、これによって黒鉛粒子の表層を形成する黒鉛結晶が有するπ電子は、π軌道の相互作用による拘束から解放され一斉に自由電子になる。いっぽう、σ電子が基底面で隣り合う2つの炭素原子間距離aの距離を移動する仕事は、間隙dが1nmであってもσ軌道の相互作用である6.3eVを超えない。従って、黒鉛粒子の表層を形成する黒鉛結晶が有するσ電子は、σ軌道から遊離することはない。
ブラシと整流子との間隙が極微小になれば、12Vの低い電圧がブラシに印加されても大きな電界が発生する。この電界がある値を越えて黒鉛粒子の表層に印加されると、表層を構成する黒鉛結晶のπ電子は、π軌道上の相互作用の拘束から解放されて一斉に自由電子となる。自由電子となったπ電子は、電位差による運動エネルギーを得る。運動エネルギーを得たπ電子の集まりは、間隙における電界の方向に一斉に移動する。
整流子と接触する直前の一つの黒鉛粒子の表層の限定された領域は、π電子がπ軌道から遊離した領域となる。この領域は、黒鉛結晶の層間結合の担い手であるπ電子がπ軌道から遊離しているので、黒鉛結晶の層間結合はすでに破壊されている。この結果、黒鉛結晶の層間破壊された領域は、層間結合の担い手がいなくなったので黒鉛粒子から脱落する。この磨耗現象は、整流子とブラシとの摺接摩擦で作用するせん断応力によってもたらされる黒鉛結晶のすべり破壊に基づく機械的磨耗ではなく、電界という電気的負荷によってもたらされた電気的磨耗である。
いっぽう、π電子の集まりは黒鉛粒子から間隙を介して整流子に移動しようとするが、銅からなる整流子にとってπ電子は過剰な電子であり、整流子を構成する銅原子の電子軌道に入り込むことができない。この結果、間隙における電界が作用する方向に向かってπ電子は集まり、π電子は群となって間隙をさまよう。間隙をさまよう際に、π電子群は空気分子を励起させてそのエネルギーを瞬時に消滅させる。この現象が摺接面で観察される火花放電である。また、π電子群が空気の分子を励起するため、発光現象をもたらすとともに、電気ノイズをもたらす。
以上に説明した火花放電の発生メカニズムは、次の3つのステップを踏んで起こる現象である。第一に、整流子とブラシが接触する直前に、両者で形成される間隙が極微小となり、大きな電界が間隙に発生する。この大きな電界が、黒鉛粒子の電気的磨耗と間隙における火花放電と電気ノイズとをもたらす電気的負荷である。第二に、大きな電界が黒鉛粒子に印加されると、黒鉛粒子の表層の一部を形成する黒鉛結晶が有するπ電子はπ軌道から遊離して自由電子となる。π電子がπ軌道から遊離した黒鉛結晶の領域は、層間の結合が破壊された領域となる。この現象が電気的磨耗である。第三に、自由電子となったπ電子は、集結して塊となって電界方向に向かって間隙をさまよう。このπ電子群が間隙をさまよう際に、空気の分子を瞬間的に励起させ、発光現象をもたらす。この発光現象が火花放電現象である。これらの3つのステップを踏んで、火花放電が断続的に瞬時の現象として極微小な間隙で発生する。
火花放電が起こらず、これによって電気ノイズが発生せず、さらに、黒鉛粒子の電気的摩耗が起こらない新たな金属黒鉛質ブラシは、黒鉛粒子の表面を等電位面にすればよい。つまり、ブラシと整流子との摺接面に大きな電界が作用しても、黒鉛粒子の表面が等電位面であれば、等電位面を構成する自由電子が電界によるクーロン力によって電界方向に移動するだけで、等電位面の内側にある黒鉛粒子には電界が作用しない。また、等電位面が銅に近い電気抵抗であれば、黒鉛粒子は銅に近い抵抗値になるため、従来のように電解銅粉を混合することなくブラシの抵抗が低減でき、黒鉛粒子の使用量は激減される。
実施例1で製造した銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子は、銅微粒子の集まりが等電位面を形成する。さらに、黒鉛粒子の電気抵抗は、銅の電気抵抗に近づく。このため、実施例1で製造した銅微粒子の集まりで覆われた黒鉛粒子は、火花放電が起こらず、電気ノイズが発生せず、黒鉛粒子の摩耗量が激減する新たな金属黒鉛質ブラシの原料になる。
実施例2
本実施例は、ナフテン酸鉄を吸着させた鉄粉を大気雰囲気で加熱処理し、鉄粉を酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆う。さらに、大気雰囲気で加熱処理し、酸化鉄FeOをマグヘマイトγ−Feに酸化し、鉄粉に磁気吸着したマグヘマイト微粒子の集まりで、鉄粉の表面を絶縁化させる実施例である。なお、マグヘマイトは酸化鉄Feのγ相であり、電気絶縁性で自発磁化を持つ。本実施例における鉄粉は、株式会社神戸製鋼所が製造するアトマイズ純鉄粉であるアトメル300NHを用いた。アトメル300NHは、マンガン、リン、イオウの含有量が極めて微量のアトマイズ純鉄粉であり、純度が高いため磁気特性に優れ、粉の形状から圧縮性に優れる。また、アトマイズ純鉄粉は光沢のあるねずみ色で、近赤外線の吸収率は0.35であり、前記した黒鉛粒子より近赤外線の吸収率は低い。なお、ナフテン酸鉄は、金属石鹸として市販されているもの(例えば、東栄化工株式会社の製品)を用いた。また、n−ブタノールは試薬1級品を用いた。
ここで、鉄粉を酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆う製造工程を説明する。最初に、ナフテン酸鉄の1モルを5リットルのn−ブタノールに分散した。この分散液を容器に入れアトマイズ純鉄粉3kgを投入して撹拌した。容器を120℃に昇温してn−ブタノールを気化し、気化したn−ブタノールを回収した。こうして、ナフテン酸鉄が吸着した鉄粉の集まり(以下では処理鉄粉という)を製造した。さらに、次に説明する加熱処理装置を用いてナフテン酸鉄を熱分解し、鉄粉を酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆う加熱処理条件を導いた。
加熱処理装置は24段落で説明したものを用い、ナフテン酸鉄の熱分解に適した加熱条件を検討した。なお、スパイラルチューブに18mm/秒の速度からなる大気を導入し、この大気に20g/秒の割合で処理鉄粉を投入した。一つの加熱処理条件において、400g程度の処理鉄粉を連続投入し、10個の近赤外線ランプの出力については、最大出力に対する割合として各々のランプ出力を変え、10個の近赤外線ランプからの近赤外線の集まりを処理鉄粉の集まりに常時照射し、ナフテン酸鉄を熱分解した。なおナフテン酸鉄の熱分解の結果は、前記したオクチル酸銅の熱分解と同様に、加熱処理した鉄粉の表面を電子顕微鏡で観察し、表面状態から加熱処理条件の適否を判断した。加熱処理条件を表2に示す。
表2
条件1 条件2 条件3 条件4
ランプ1 出力10% 出力20% 出力20% 出力20%
ランプ2 出力20% 出力30% 出力30% 出力30%
ランプ3 出力30% 出力30% 出力40% 出力40%
ランプ4 出力30% 出力40% 出力40% 出力40%
ランプ5 出力30% 出力40% 出力40% 出力40%
ランプ6 出力30% 出力30% 出力40% 出力40%
ランプ7 出力30% 出力30% 出力20% 出力20%
ランプ8 出力20% 出力20% 出力10% 出力10%
ランプ9 出力20% 出力10% 出力10% 出力 0%
ランプ10 出力10% 出力10% 出力10% 出力 0%
条件1で加熱処理した試料は、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、鉄粉の表面は白く光っていた。これは、ナフテン酸鉄の熱分解が進行せず、電子によってナフテン酸鉄がチャージアップされた結果である。さらに、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、鉄粉の表面は海綿状の物質で覆われていた。これは、熱分解が進行しないナフテン酸鉄が、鉄粉を覆った結果である。従って、条件1の加熱処理では昇温温度が低すぎる。
条件2で加熱処理した試料は、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、鉄粉の表面が白く光る部分がなくなり、表面全体が白っぽい被膜で覆われた。さらに、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し画像では、鉄粉の表面全体が滑らかな被膜で覆われていた。これらの結果は、ナフテン酸鉄の熱分解が進行したが、熱分解で生成されたナフテン酸が完全に気化せず、鉄粉の表面に残存したことを示す。従って、条件2の加熱処理より昇温速度を速める必要がある。
条件3で加熱処理した試料では、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、鉄粉の表面全体が白っぽい微粒子で覆われていた。また、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出し画像では、鉄粉の表面全体が40−60nmの粒状微粒子で覆われていた。さらに、表面を構成する元素分布を頻度によって映し出すEDXの分析結果から、鉄と酸素とがほぼ均等の割合で構成されていた。これらの結果は、ナフテン酸鉄の熱分解で酸化鉄FeOの微粒子が生成された結果である。酸化鉄FeOは安定した酸化物であるため、昇温し過ぎたとしても酸化鉄FeOは成長によって粗大化しない。これを確かめるため、昇温温度を条件3より低下させる条件で再度加熱処理を実施した。
条件4で加熱処理した試料では、反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、鉄粉の表面全体が白っぽい微粒子で覆われていた。また、反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、鉄粉の表面が40−60nmの粒状微粒子で覆われていた。また、EDXの分析結果から微粒子は酸化鉄FeOで構成されていた。
以上の結果から、鉄粉を銅微粒子の集まりで覆うには条件4が適切であり、条件4で加熱処理された鉄粉は、90秒以内で330℃付近まで昇温されている。
ここで、改めて処理鉄粉の1kgを条件4で加熱処理し、加熱処理された処理鉄粉を容器に回収し、容器を大気雰囲気の熱処理炉に入れ、加熱処理された処理鉄粉をさらに加熱処理した。最初に、熱処理炉を20℃/分の速度で300℃まで昇温し、300℃から1℃/分の速度で390℃まで昇温し、390℃に容器を30分間放置した。容器から試料を取り出し、再度電子顕微鏡で試料の表面を観察した。
反射電子線の1kVから900Vの間にあるエネルギーを抽出した画像では、鉄粉の表面全体が白っぽい微粒子で覆われていた。反射電子線の1kVから900Vの間にある2次電子線を取り出した画像では、鉄粉の表面が40−60nmの粒状微粒子で覆われていた。また、EDXの分析結果では鉄原子と酸素原子とが存在した。さらに極低加速電圧SEMの機能にEBSP解析機能を付加し、酸化鉄の結晶構造の解析を行なった。この結果から、粒状微粒子がマグヘマイトγ−Feであることが確認できた。なお、EBSP解析機能とは、試料に電子線を照射したとき、反射電子が試料中の原子面によって回折されることでバンド状のパターンを形成し、バンドの対称性が結晶系に対応し、バンドの間隔が原子面間隔に対応するため、このパターンの解析で結晶方位や結晶系の解析ができる。
以上に説明したように、酸化鉄FeOの微粒子で覆われた鉄粉を大気雰囲気で加熱処理すると、酸化鉄FeOを構成する2価の鉄イオンFe2+が、3価の鉄イオンFe3+に酸化され、Feのγ相であるマグヘマイトγ−Feになる。マグヘマイトは絶縁性で自発磁化を持つため、鉄粉は、磁気吸着したマグヘマイト微粒子によって表面が絶縁化される。この表面が絶縁化された鉄粉は、下記に説明するように、圧粉磁心の好適な原料になる。
第一に、マグヘマイトは比抵抗が10Ωmの絶縁物質であるため、マグヘマイト微粒子で覆われた扁平鉄粉は絶縁体になる。ちなみに、鉄の比抵抗は10−7Ωmであり、鉄粉の渦電流損失は比抵抗に反比例するので、絶縁化された鉄粉の渦電流損失は著しく小さくなる。
第二に、マグヘマイトは自発磁化を有するため鉄粉に磁気吸着し、鉄粉の圧縮成形時に過大な圧力を加えても、磁気吸着したマグへマイト微粒子は、微粒子であるがゆえに鉄粉から剥がれない。これによって、成形後の鉄粉の絶縁性が保たれる。また、絶縁層を形成するための鉄粉の前処理は一切不要になる。
第三に、450℃近辺でヘマタイトに相転移する。このため、450℃以上の温度で成形体の磁気焼鈍を実施すると、マグへマイトはヘマタイトに相転移する。なお、この相転移は不可逆変化である。ヘマタイトは10Ωmの比抵抗を持つ物質であり、焼鈍によって鉄粉の絶縁性がさらに一桁向上し、渦電流損失はさらに低減する。また、ヘマタイトは安定した酸化物、つまり、不動態であり、融点の1566℃に近い耐熱性を有する。このため、一般的に行われている600℃以上の磁気焼鈍によってもヘマタイトの性質は変わらない。また、焼鈍時に鉄粉との界面における拡散現象が起らず、鉄粉の変質が起こらない。ちなみに鉄の融点は1535℃である。なお、ヘマタイトは化学式がα−Feで表され、酸化鉄Feのα相であり、弱強磁性の性質を持ち、磁気キュリー点が950℃である。
第四に、モース硬度が5.5であり、鉄ないしは鉄系の合金より硬い物質である。このため、圧縮成形時に加圧力が加えられてもマグへマイト微粒子は破壊されない。つまり、圧縮成形時において、マグへマイト微粒子は磁気吸着した状態を維持し、この状態でマグへマイトより硬度が小さい鉄粉が優先して塑性変形する。この結果、鉄粉同士が絡み合って鉄粉同士が結合する。この際、鉄粉の表面はマグへマイト微粒子によって絶縁性が維持され、成形体の密度の増大によって、圧粉磁心の磁束密度と機械的強度とが増大する。
以上に2つの実施例を挙げて、黒鉛粒子ないしは鉄粉に吸着させたカルボン酸金属化合物の熱分解し、黒鉛粒子ないしは鉄粉の表面を銅微粒子ないしは酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆うために必要となる加熱処理条件を説明した。いずれの実施例も、粉体ないしは粒子の集まりを、特定された昇温速度を持って、特定した温度に昇温する連続加熱処理の事例であり、昇温速度と昇温温度との制約の双方の制約が大きい加熱処理条件である。従って、本発明に依れば、2つの実施例に限らず、様々な粉体ないしは粒子を、特定した昇温速度を持って、特定した温度に昇温する加熱処理が可能になる。このため、本発明は、下記の4つの要件を兼備した加熱処理装置であり、粉体ないしは粒子に係わる汎用的な加熱処理装置である。第一に、大量の粉体ないしは粒子が連続して加熱処理できる。第二に、粉体ないしは粒子に温度むらが発生しない。第三に、粉体ないしは粒子の昇温速度が制御できる。第四に、粉体ないしは粒子の昇温温度が制御できる。

Claims (6)

  1. 粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置は、粉体ないしは粒子の集まりを浮遊状態で移動させる移動手段と、該移動する粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱する加熱手段とからなる加熱処理装置であり、前記移動手段、粉体ないしは粒子の集まりが、スパイラル状の3次元曲線からなる通路を連続して移動する第一の特徴と、該通路が形成するエリアに前記加熱手段を配置した第二の特徴と、該通路に気体の流れが導入される第の特徴と、該導入される気体の流速が変えられる第の特徴とからなるつの特徴を兼備する移動手段とすることで、前記加熱手段によって前記粉体ないしは粒子の集まりが昇温される速度と昇温される温度との双方が変えられる移動手段であり、前記加熱手段、複数個の電磁波発生源から構成される第一の特徴と、該電磁波発生源は出力レベルが変えられる第二の特徴と、該電磁波発生源は、前記粉体ないしは粒子の集まりが通過する前記通路への配置位置が変えられる第三の特徴と、前記複数個の電磁波発生源からの電磁波の集まりが、前記通路を連続して移動する粉体ないしは粒子の集まりに常時照射される第の特徴とからなるつの特徴を兼備する加熱手段とすることで、前記複数の電磁波発生源によって前記粉体ないしは粒子の集まりが昇温される速度と昇温される温度との双方が変えられる加熱手段であり、前記つの特徴を兼備する移動手段と、前記つの特徴を兼備する加熱手段とから構成されることを特徴とする、粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置。
  2. 請求項1における加熱処理装置を構成する電磁波発生源が、近赤外線を発生する近赤外線ランプからなる電磁波発生源であることを特徴とする、請求項1に記載した粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置。
  3. 請求項1における加熱処理装置を構成する粉体ないしは粒子の集まりが浮遊状態で連続して移動する通路が、ホウケイ酸ガラスで構成される通路であることを特徴とする、請求項1に記載した粉体ないしは粒子の集まりを連続して加熱処理する加熱処理装置。
  4. 請求項1における連続して加熱処理される粉体ないしは粒子が、カルボン酸金属化合物が吸着した粉体ないしは粒子であり、請求項1における粉体ないしは粒子を連続して加熱する手段が、フィラメント温度が異なる複数個からなる近赤外線ランプであり、該粉体ないしは該粒子の集まりを大気が導入される通路で、前記複数個の近赤外線ランプを稼働させ、該粉体ないしは該粒子の集まりを連続して加熱処理する、これによって、該粉体ないしは該粒子の表面が金属微粒子ないしは金属酸化物微粒子で覆われる熱処理が該粉体ないしは該粒子に連続してなされることを特徴とする、請求項1に記載した連続して加熱処理する加熱処理装置を用いた粉体ないしは粒子の加熱処理方法。
  5. 請求項4における加熱処理する粒子が、オクチル酸銅が吸着した鱗片状黒鉛粒子であり、該鱗片状黒鉛粒子の集まりを、請求項4に記載した加熱処理方法によって加熱処理する、これによって、前記鱗片状黒鉛粒子の表面が銅微粒子の集まりで覆われる熱処理が連続してなされることを特徴とする、請求項4に記載した加熱処理方法によって加熱処理する粒子の加熱処理方法。
  6. 請求項4における加熱処理する粉体が、ナフテン酸鉄が吸着した鉄粉であり、該鉄粉の集まりを、請求項4に記載した加熱処理方法によって加熱処理する、これによって、前記鉄粉の表面が酸化鉄FeOの微粒子の集まりで覆われる熱処理が連続してなされることを特徴とする、請求項4に記載した加熱処理方法によって加熱処理する粉体の加熱処理方法。
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