JP6476989B2 - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

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本発明は、体積比抵抗値(以下単に「比抵抗」という。)と磁束密度が大きい圧粉磁心とその製造方法に関する。
変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等、我々の周囲には電磁気を利用した製品が多々ある。これらの製品は交番磁界を利用したものが多く、局所的に大きな交番磁界を効率的に得るために、通常、磁心(軟磁石)をその交番磁界中に設けている。
この磁心には、交番磁界中における高磁気的特性のみならず、交番磁界中で使用したときの高周波損失(以下、磁心の材質に拘らず単に「鉄損」という。)が少ないことが求められる。この鉄損には、渦電流損失、ヒステリシス損失および残留損失があり、中でも交番磁界の周波数の2乗に比例して高くなる渦電流損失の低減が重要である。
このような磁心として、絶縁性膜(層)で被覆された軟磁性粒子の粉末(軟磁性粉末)を加圧成形した圧粉磁心がある。この圧粉磁心は、渦電流損失が小さくて形状自由度が高いため、モータ用コア等をはじめ種々の電磁機器に利用されている。もっとも、その絶縁性膜を非磁性なシリコン系樹脂やリン酸塩等で形成すると、圧粉磁心の(飽和)磁束密度等が低下し得る。そこで絶縁性膜としてフェライト膜を用いることが提案されており、例えば下記の特許文献に関連する記載がある。
特開2005−64396号公報 特開2011−214026号公報
特許文献1では、水溶液反応法(無電解めっきの一種)によりフェライト膜を表面に形成した鉄系粒子からなる粉末を、温間で加圧成形(150℃×900MPa)した圧粉磁心(圧粉体)に関する記載がある。しかし、水溶液反応法よるフェライト膜の形成には長時間を要し、磁心用粉末や圧粉磁心を効率的に製造できない。また、フェライトはセラミックスの一種であり割れ易い。このため、フェライトめっき後の粉末を加圧成形すると、粒子表面のフェライト膜に多数の割れが生じて、高比抵抗な圧粉磁心を得ることができない。さらに、特許文献1には記載されていないが、通常、ヒステリシス損失の低減や磁束密度の向上を図るため、加圧成形後に成形体を高温(600℃以上)で加熱する歪み取り焼鈍がなされる。この際、鉄系粒子の表面に予め形成されていたフェライト膜は、鉄系粒子側へOが拡散して還元され、フェライト構造が崩壊し、絶縁性ひいては圧粉磁心の比抵抗が低下し得る。
特許文献2は、パーマロイ合金(Fe−47%Ni)粒子の表面にMgO微粒子、Fe微粒子、MnO微粒子をコーティングしたコンポジット粉末を、仮成形、CIP成形(550℃)、SPS焼結、HIP成形(800℃)を行った高密度焼結体(ナノ磁性コンポジット)に関する記載がある。もっとも、このようなパーマロイ合金からなる焼結体は、通常、高い(飽和)磁束密度が要求されると共に非焼結なまま使用される圧粉磁心と、利用分野または技術分野が異なる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、比抵抗と磁束密度の向上を図れる新たな圧粉磁心を提供することを目的とする。また、そのような圧粉磁心の製造方法も併せて提供することを目的とする
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、軟磁性粒子の表面にフェライトの原料を付着させた被覆粒子からなる磁心用粉末を加圧成形して得られた成形体を熱処理(焼鈍)することにより、軟磁性粒子の表面(特に軟磁性粒子間)に比抵抗と磁束密度の向上に有効なフェライト膜(層)を形成することを着想し、その具体化に成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《圧粉磁心の製造方法》
(1)本発明の圧粉磁心の製造方法は、純鉄またはFeを90質量%以上含む鉄合金からなる軟磁性粒子の表面が、Mn、Zn、Ni、CuまたはMgの一種以上である金属元素(M)の酸化物粒子と酸化鉄粒子とにより被覆された被覆粒子からなる磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、該成形工程後に得られた成形体を370〜600℃で加熱する熱処理工程とを備え、該軟磁性粒子間にスピネル型フェライト(MFe)が生成された圧粉磁心が得られることを特徴とする。
(2)本発明の製造方法によれば、熱処理(焼鈍)後でも、高比抵抗で高磁束密度な圧粉磁心を効率的に得ることができる。この理由は必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。
本発明の製造方法では、先ず、純鉄またはFeを主成分とする軟磁性粒子の表面が、スピネル型フェライト(「S型フェライト」または単に「フェライト」という。)を構成する特定の金属元素(M)の酸化物からなる粒子(酸化物粒子)と酸化鉄粒子(特にFe粒子)でコーティングされた被覆粒子からなる磁心用粉末を用いている。
次に、この磁心用粉末を加圧成形して得られた成形体を、特定温度(370〜600℃)で加熱している。この熱処理の際に、軟磁性粒子の表面に付着していた酸化鉄粒子と酸化物粒子が反応してS型フェライト(MFe)を生成する。こうして成形体(圧粉磁心)を構成する軟磁性粒子間に、絶縁材であると共に磁性材でもあるS型フェライトからなる粒界層(フェライト層)が形成される。こうして本発明の圧粉磁心は、優れた電気的特性(比抵抗)および磁気的特性(磁束密度、透磁率等)を発揮するようになったと考えられる。
ちなみに、本発明に係るフェライト層(絶縁層)は、成形工程後の熱処理工程で生成されるため、当然ながら成形工程中に割れ等が生じることはなく、成形工程で塑性変形した軟磁性粒子の表面または粒界に沿って均質的に形成され易い。また本発明に係る熱処理工程は、実質的に焼鈍工程を兼ね得る。このため、熱処理工程によってフェライト層が生成されるのみならず、成形工程で軟磁性粒子へ導入された加工歪みが除去され、圧粉磁心の磁束密度の向上やヒステリシス損失の低減が図られる。こうして本発明の製造方法によれば、予めフェライト被覆された軟磁性粒子からなる従来の圧粉磁心よりも、高特性な圧粉磁心を効率的に得ることが可能となる。
《圧粉磁心または磁心用粉末》
本発明は上述した製造方法としてのみならず、その製造方法により得られた圧粉磁心としても把握できる。さらにいえば、本発明は、成形工程に供される被覆粒子からなる磁心用粉末としても把握することができる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料1に係る成形体の熱処理前後の磁心用粉末の粒界を観察したX線回折(XRD)プロフィルである。 造粒工程で用いる装置を変更して製造した磁心用粉末からなる成形体の熱処理前後の粒界を観察したXRDプロフィルである。 Fe粒子(軟磁性粒子)をZrOボールに変更した粉末からなる成形体の熱処理前後の粒界を観察したXRDプロフィルである。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の製造方法のみならず、圧粉磁心または磁心用粉末にも適宜該当し得る。製造方法に関する内容は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《原料粉末》
(1)軟磁性粒子(軟磁性粉末)
軟磁性粒子は、8属遷移元素(Fe、Co、Ni等)などの強磁性元素を主成分とすれば足るが、特性、入手性、コスト等から純鉄または鉄合金からなると好ましい。軟磁性粉末として純鉄粉を用いると、高い飽和磁束密度が得られ、圧粉磁心の磁気的特性を向上させ得る。この観点から、軟磁性粉末として鉄合金粉を用いる場合も、そのFe含有量が大きいほど好ましい。例えば、全体を100質量%としたときに、Feが90質量%以上さらには95質量%以上である鉄合金粉を用いるとよい。鉄合金を構成する合金元素として、例えばSiやAlがある。これらの合金元素を1〜3質量%程度含むことにより、圧粉磁心の比抵抗をさらに向上させ得る。なお、本発明に係る軟磁性粉末は、組成または形態(粒径、形状)の異なる二種以上の粉末を混合した混合粉末でもよい。
軟磁性粒子の粒度は、圧粉磁心の仕様に応じて調整され得るが、50〜500μmさらには106〜250μmであると好適である。粒度が過大では圧粉磁心の高密度化や渦電流損失の低減化が図り難く、粒度が過小では圧粉磁心の磁束密度の向上やヒステリシス損失の低減が図り難い。
ちなみに、本明細書でいう「粒度」とは、軟磁性粒子の直径を指標する値であり、篩い分けにより特定される。具体的には、粉末の篩い分けに用いたメッシュサイズの上限値(d1)と下限値(d2)の中央値[(d1+d2)/2]を、粒度(D)とした。なお、粒度は、μm単位で表示して、小数点以下は四捨五入して表示する。これらのことは、軟磁性粒子に限らず、酸化物粒子および酸化鉄粒子についても同様である。
軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法、機械的粉砕法、還元法等により製造される。アトマイズ粉は、水アトマイズ粉、ガスアトマイズ粉、ガス水アトマイズ粉のいずれでもよい。軟磁性粒子が略球状であるほど、隣接する軟磁性粒子間に均一的なフェライト層が形成され、軟磁性粒子間の絶縁性ひいては圧粉磁心の比抵抗が向上し得る。
(2)酸化鉄粒子(酸化鉄粉末)
酸化鉄は種々あるが、本発明に係る酸化鉄は主にFe さらにいえば、α−Fe(ヘマタイト)であると好ましい。熱処理工程によりS型フェライトが形成される限り、本発明に係る酸化鉄にはFeO(ウスタイト)、Fe (マグネタイト)等が少量含まれていてもよい。
酸化鉄粒子の粒度は、軟磁性粒子の粒度に応じて適宜調整され得るが、5μm以下であれば良く、粒度は微細なほど好適である。敢えていうと、その粒度は0.1μm以上とすればよい。
(3)酸化物粒子(酸化物粉末)
本発明に係る酸化物粒子は、Mn、Zn、Ni、CuおよびMgからなる特定金属群から選択された一種以上の金属元素(M)の酸化物からなる。Mは、Feと共にS型フェライトを構成する金属元素である。Mは一種でも二種以上でもよく、本発明に係る酸化物は複合酸化物(例えばMnZn1−xO、0<x<1)でもよい。また、Mの価数は2(例えばMnO)でも、3(例えばMn)でも、4(例えばMnO)でもよい。さらに、酸化物は一種に限らず二種以上でもよい。つまり本発明に係る酸化鉄粒子は、複数種の酸化物粒子を混合したもの(例えば、ZnOとMnOまたはMn)でもよい。
ちなみに、MにMnが含まれると好適である。Mnを含むフェライトは、圧粉磁心の比抵抗と磁束密度の両方を向上させ得る。この理由は次のように考えられる。正スピネルと逆スピネルの固溶体の場合、スピネルの結晶構造中のAサイトまたはBサイトへの、Mの入り易さはMの種類により異なる。Mの相違により、各結晶構造に生じる磁気モーメントも変化する。Mn(さらにはZn)が固溶した結晶構造からなるフェライトの場合、他のMが固溶した場合よりも、大きな磁気モーメントを生じ、飽和磁化も大きくなる。特にMnFeは、各種の単元フェライト中でも飽和磁化が最大であり、比抵抗も大きい。このような理由により、Mの一種がMnであると好ましい。
酸化物粒子の粒度は、軟磁性粒子の粒度に応じて適宜調整され得るが、酸化鉄粒子と同様に、例えば5μm以下で微細なほど好ましい。なお、酸化鉄粒子と酸化物粒子は、軟磁性粒子の表面に付着させる前に、予め湿式で混合しておくと好ましい。
《磁心用粉末》
(1)造粒工程
軟磁性粒子の表面を酸化物粒子と酸化鉄粒子で被覆した被覆粒子(被覆型複合粒子)の造粒方法またはその被覆粒子からなる磁心用粉末の調製方法は種々考えられる。例えば、磁心用粉末は、軟磁性粒子からなる軟磁性粉末と酸化物粒子からなる酸化物粉末と酸化鉄粒子からなる酸化鉄粉末とを衝突エネルギー1〜5J/s・gを満たす強エネルギー下で撹拌混合する造粒工程を経て得られると好適である。このように強い(機械的)エネルギーが付与された被覆粒子は表面活性が高く、さらにはメカノケミカル的な反応も生じ易くなる。このため本発明に係る造粒工程を経て得られた磁心用粉末を用いると、一般的なフェライト生成温度(900℃以上)よりも大幅に低い温度で加熱(焼鈍等)しても、軟磁性粒子の表面にS型フェライト層を安定的に生成され易くなる。
このような造粒工程は、例えば、種々の(乾式)機械的粒子複合化装置を用いて、原料粒子(軟磁性粒子、酸化鉄粒子および酸化物粒子)に強い衝撃力、圧縮力または剪断力を作用させることにより行える。具体的にいうと、遊星ボールミル、メカノフュージョン(ホソカワミクロン株式会社製)、シーターコンポーサー(株式会社徳寿工作所)、ハイブリダイゼーション(株式会社奈良機械製作所)等を用いた機械的複合化により被覆粒子を造粒すると好ましい。
さらにいうと、例えば、メカノフュージョンを使用する場合、ロータの回転速度(例えば1000rpm)、ロータのクリアランス(例えば2mm)、粉末投入量(例えば200g)、作動時間(例えば15分)等のパラメータを適宜調整した条件下で運転して造粒工程を行うと好ましい。
(2)配合
本発明に係るS型フェライト(MFe)は、基本的に軟磁性粒子の表面に付着した酸化物粒子と酸化鉄粒子により生成される。このため酸化物粒子(粉末)と酸化鉄粒子(粉末)は、金属元素(M)と鉄(Fe)の原子比が1:2となる付近(例えば、原子比でM/Fe=0.35〜0.65)で配合されると好ましい。
もっとも、圧粉磁心の比抵抗と磁束密度を両立させる観点から、磁心用粉末は、全体を100質量%としたときに、酸化物粒子:0.04〜0.8質量%さらには0.2〜0.4質量%であり、酸化鉄粒子:0.2〜4.0質量%さらには0.8〜1.6質量%であり、残部が軟磁性粒子であると好適である。
《成形工程》
本発明に係る成形工程は、通常、所望形状のキャビティを有する成形型に充填した磁心用粉末を加圧成形することによりなされる。成形圧力は適宜調整され得るが、高圧成形するほど高密度で高磁束密度の圧粉磁心が得られる。このような高圧成形方法として、金型潤滑温間高圧成形法を用いると好適である。金型潤滑温間高圧成形法は、高級脂肪酸系潤滑剤を内面に塗布した成形型へ磁心用粉末を充填する充填工程と、磁心用粉末と成形型の内面との間に高級脂肪酸系潤滑剤とは別の金属石鹸被膜が生成される成形温度および成形圧力で加圧成形する温間高圧成形工程とからなる。なお「温間」とは、表面被膜(または絶縁被膜)への影響や高級脂肪酸系潤滑剤の変質などを考慮して、例えば、成形温度を70℃〜200℃さらには100〜180℃とするとよい。金型潤滑温間高圧成形法の詳細については、日本特許公報特許3309970号公報、日本特許4024705号公報など多数の公報に詳細が記載されている。
《熱処理工程》
本発明に係る熱処理工程は、成形工程で得られた成形体を加熱してなされる。この熱処理工程により、軟磁性粒子をコーティングしている酸化物粒子と酸化鉄粒子が反応して、軟磁性粒子の表面または軟磁性粒子間にS型フェライトが生成される。なお、このフェライト生成反応には、Feを主成分とする軟磁性粒子が触媒的に作用していると考えられる。
成形体の加熱温度は370〜700℃、さらには500〜600℃であると好ましい。加熱温度が過小ではフェライトが安定して生成されない。加熱温度が過大では軟磁性粒子の酸化、仮焼結等が生じて、圧粉磁心の比抵抗または磁束密度が低下し得る。
本発明に係るフェライトは、基本的に酸化物粒子と酸化鉄粒子を原料として生成されるため、熱処理工程の雰囲気は不活性ガス(Ar、N等)雰囲気または真空雰囲気で行うことができる。但し、その雰囲気中に酸素が僅かに含まれていてもよい。すなわち、熱処理工程は、酸素濃度が10%以下、1%以下さらには0.1%以下の雰囲気でなされてもよい。さらにいえば、極僅かな酸素が含まれている雰囲気中で熱処理工程を行うことにより、フェライトが生成され易くなる場合もある。そこで酸素濃度は0.05%以上であると好ましい。特に酸化物粒子の一種がMnO粒子である場合、酸素が僅かに含まれる雰囲気中で熱処理工程を行うことにより、フェライトが安定的に生成され易くなる。逆に、酸化物粒子の一種がMn粒子である場合なら、雰囲気中の酸素濃度は0.1%以下さらには0.01%以下でも、フェライトが安定的に生成され得る。なお、本明細書でいう酸素濃度は常温、1気圧の状態で酸素濃度計により求めた体積%である。
なお、本発明に係る熱処理工程は、成形工程中に軟磁性粒子に導入された残留歪みや残留応力を除去して、圧粉磁心の保磁力またはヒステリシス損失の低減を図る焼鈍工程を兼ねることができる。勿論、熱処理工程と異なる条件(温度、時間、雰囲気)で、別途、焼鈍工程を行ってもよい。いずれの場合でも、熱処理工程の加熱時間は、例えば0.1〜5時間さらには0.5〜2時間とすればよい。
《S型フェライト》
軟磁性粒子の表面または粒界に生成されるS型フェライトは、MがMnとZnであるMnZnフェライト、またはMがMnとNiであるNiMnフェライトからなると、圧粉磁心の高比抵抗と高磁束密度の両立を図れて好ましい。さらにMは、Mn(任意でZn、Ni)に加えて、Mgを含むと好ましい。このようなフェライト層は、非常に薄くても優れた絶縁性を発揮し、熱処理前後における絶縁性の変化が少ない。
《圧粉磁心》
(1)磁気的特性
本発明に係る圧粉磁心は、飽和磁束密度が高く、例えば、10kA/mの磁界中で生じる磁束密度(B10k)が1.6T以上、1.7T以上さらには1.8T以上にもなり得る。また、その透磁率は、例えば、600以上さらには700以上にもなり得る。さらに、その比抵抗値は、例えば、50μΩm以上さらには100μΩm以上にもなり得る。なお、軟磁性粒子の真密度(ρ0)に対する圧粉磁心の嵩密度(ρ)の比である密度比(ρ/ρ0)は、例えば95%以上さらに98%以上であると、圧粉磁心の磁気的特性が向上して好ましい。
(2)用途
本発明に係る圧粉磁心は、例えば、モータ、アクチュエータ、トランス、誘導加熱器(IH)、スピーカ、リアクトル等の電磁機器に利用され得る。特に電動機または発電機の電機子(回転子または固定子)を構成する鉄心に用いられると好ましい。中でも、低損失で高出力(高磁束密度)が要求される駆動用モータ用の鉄心、具体的には、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータ用鉄心として好適である。なお、いずれの電磁機器中で使用されるにしても、本発明に係る圧粉磁心は100〜30000Hzさらには200〜20000Hz程度の交番磁界中で使用されると好ましい。
《磁心用粉末の調製》
(1)原料粉末
軟磁性粉末として、純鉄からなるガス水アトマイズ粉(単に「Fe粉末」という。)を用意した。用いた各粉末の粒度は、上限値〜下限値→粒度の順で記載すると、212〜106μm→159μmである。なお、この粒度は、前述した通り、電磁式ふるい振とう器(レッチェ製)により分級(篩い分け)したときに用いたメッシュサイズの上限値と下限値の中央値である。この軟磁性粉末に30μm未満の軟磁性粒子が含まれていないことは、SEMより確認している。
酸化鉄粉末として市販のFe粉末(粒度:1μm)を用意した。また酸化物粉末としてMnO粉末(粒度:10μm)、Mn粉末(粒度:10μm)、ZnO粉末(粒度:1μm)をそれぞれ用意した。これらの粉末の粒度も軟磁性粉末と同様に特定した。
(2)原料粉末の配合
軟磁性粉末、酸化鉄粉末および酸化物粉末を次の2通りの割合で配合した。なお、各粉末の割合は、配合粉末全体を100質量%として示した。
(試料1)Fe粉末:0.8質量%、MnO粉末:0.2質量%、ZnO粉末:0.1質量%、Fe粉末:残部
(試料2)Fe粉末:1.6質量%、Mn粉末:0.35質量%、ZnO粉末:0.2質量%、Fe粉末:残部
(3)造粒工程
各配合粉末を遊星ボールミル(伊藤製作所社製 LP−4)で撹拌混合した。この処理は次の条件下で行った。SKD製250ccボットの中にZrOボール(粒径:3mm):800g、軟磁性粉末:100g、酸化鉄粉末および酸化物粉末の所定量を投入した。回転速度:500rpm、加工時間:0.5hとして、常温、大気中で処理した。このとき付与されるエネルギーの指標値は3J/s・gである。こうして試料1および試料2に係る磁心用粉末をそれぞれ調製した。
《圧粉磁心の製造》
(1)成形工程
各磁心用粉末を用いて、金型潤滑温間高圧成形法により、リング状(外径:φ39mm×φ30mm×厚さ5mm)の成形体を得た。この際、内部潤滑剤や樹脂バインダー等は一切使用しなかった。具体的には次のようにして成形した。
所望形状に応じたキャビティを有する超硬製の金型を用意した。この金型をバンドヒータで予め130℃に加熱しておいた。また、この金型の内周面には、予めTiNコート処理を施し、その表面粗さを0.4Zとした。
加熱した金型の内周面に、ステアリン酸リチウム(1%)の水分散液をスプレーガンにて10cm/分程度の割合で均一に塗布した。なお、この水分散液は、水に界面活性剤と消泡剤とを添加したものである。その他の詳細は、日本特許公報特許3309970号公報、日本特許4024705号公報等に記載に沿って行った。
各磁心用粉末をステアリン酸リチウムが内面に塗布された金型へ充填し(充填工程)、金型を130℃に保持したまま1568MPaで温間成形した(成形工程)。なお、この温間成形時、いずれの成形体も金型とかじり等を生じることはなく、低い抜圧で金型からの取り出しが可能であった。
(2)熱処理工程(焼鈍工程)
得られた各成形体を加熱炉に入れて、酸素濃度0.1%の不活性ガス(Ar)雰囲気中で1時間加熱した。このときの加熱温度は400℃とした。なお、この雰囲気中の酸素濃度を、0%、0.01%または20%とした酸素含有雰囲気中でも、別途、各成形体を加熱した。こうして、熱処理後の各種の成形体(圧粉磁心)を得た。なお、ここで示した酸素濃度「%」は、常温、1気圧状態で酸素濃度計で測定して求めた。
《測定・観察》
(1)比抵抗および磁束密度
熱処理前後の各成形体について、それぞれの比抵抗(ρ)と磁束密度B10kを求めた。比抵抗は、デジタルマルチメータ(メーカ:(株)エーディーシー、型番:R6581)を用いて4端子法により測定した電気抵抗と、各試料を実際に採寸して求めた体積とから算出した。
磁束密度B10kは直流自記磁束計(メーカ:東英工業、型番:MODEL−TRF)により測定した。なお、磁束密度B10kは、磁界の強さを10kA/mとしたときに生じる磁束密度である。
(2)X線回折
熱処理前後の各成形体をそれぞれ切断し、Fe粒子の粒界をX線回折(XRD)により分析した。XRDは、X線回折装置(D8 ADVANCE:ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて、管球:Fe−Kα、 2θ:30〜50deg、測定条件:0.021deg/step、9step/secとして行った。
《評価》
(1)磁束密度と比抵抗
試料1に係る熱処理前の成形体は、ρ=150μΩm、B10k=1.55T であった。この成形体を、酸素を0.1%含む不活性ガス中で熱処理したところ、ρ=90μΩm、B10k=1.7Tとなった。このことから、上述した製造方法を実施することにより、比抵抗の低減を抑制しつつ(耐熱性を確保しつつ)、磁束密度の向上を図れることがわかった。
ちなみに、予めフェライト被覆されている軟磁性粒子からなる磁心用粉末を、加圧成形した成形体を400℃で焼鈍すると、比抵抗がρ=300μΩm(焼鈍前)からρ=5μΩm(焼鈍後)へ急激に低下した。なお、比較例で用いた磁心用粉末は特開2013−191839に基づいて製造したものである。その他の製造条件は試料1と同様とした。
(2)熱処理雰囲気
酸素濃度が異なる種々の雰囲気で熱処理工程を行った種々の成形体(試料1)の粒界をXRDで観察した。その結果、酸素濃度が0.1%である不活性ガス(Ar)中で熱処理した圧粉磁心の粒界は、ほぼS型フェライトのみとなっていた(図1参照)。
酸素濃度がそれ以外のときでもS型フェライトは生成されたが、酸素濃度が0%(Arのみ)または0.01%で過小なときは、金属間化合物(MnZn)も検出された。逆に、酸素濃度が20%で過大なときはS型フェライト以外に、Feも検出された。これは基粒子であるFe粒子が酸化されたためと考えられる。
試料2に係る圧粉磁心についても同様に観察したところ、熱処理雰囲気中の酸素濃度が0%(Arのみ)または0.01%のとき、粒界に金属間化合物(MnZn)が検出されず、粒界はほぼS型フェライトのみからなっていた。
(3)造粒工程
試料1に係る造粒工程を、遊星ボールミルに替えて、一般的なボールミル(アサヒ理化製作所社製 AV−1)を用いて行った。このときの処理条件は、回転速度150rpmであり、付与されるエネルギーの指標値は0.1J/s・gである。
こうして得られた磁心用粉末を用いて、上述した成形工程と熱処理工程を行った。熱処理前後の成形体についてXRDにより解析した結果を図2に示した。図2からわかるように400℃で熱処理する場合、造粒工程時に各粒子へ付与するエネルギーが小さいと、フェライトが生成され難いことがわかる。
(4)基粒子
試料1に係るFe粉末をZrOボール(粒径:3mm)に替えて、上述した造粒工程、成形工程および熱処理工程をそれぞれ行った。熱処理前後の成形体についてXRDにより解析した結果を図3に示した。図3からわかるように、基粒子がZrOであると、Fe粒子の場合と同様に処理しても、粒子表面にフェライトが生成されないことがわかった。

Claims (6)

  1. 純鉄またはFeを90質量%以上含む鉄合金からなる軟磁性粒子の表面が、Mn、Zn、Ni、CuまたはMgの一種以上である金属元素(M)の酸化物粒子と酸化鉄粒子とにより被覆された被覆粒子からなる磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、
    該成形工程後に得られた成形体を370〜700℃で加熱する熱処理工程とを備え、
    該軟磁性粒子間にスピネル型フェライト(MFe)が生成された圧粉磁心が得られることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記磁心用粉末は、前記軟磁性粒子からなる軟磁性粉末と前記酸化物粒子からなる酸化物粉末と前記酸化鉄粒子からなる酸化鉄粉末とを衝突エネルギー1〜5J/s・gを満たす強エネルギー下で撹拌混合する造粒工程を経て得られる請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記磁心用粉末は、全体を100質量%として、
    前記酸化物粒子:0.04〜0.8質量%、
    前記酸化鉄粒子:0.2〜4.0質量%、
    前記軟磁性粒子:残部である請求項1または2に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. 前記軟磁性粒子の粒度:50〜500μmであり、
    前記酸化物粒子の粒度:5μm以下であり、
    前記酸化鉄粒子の粒度:5μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記熱処理工程は、酸素濃度が10%以下である不活性ガス雰囲気でなされる請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  6. 前記酸化物粒子は、MnO、MnOまたはMn粒子を含み、
    前記不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は0.1%以下である請求項5に記載の圧粉磁心の製造方法。
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