JP2012104573A - 磁心用粉末及びその製造方法、並びにそれを用いた圧粉磁心及び電磁機器 - Google Patents

磁心用粉末及びその製造方法、並びにそれを用いた圧粉磁心及び電磁機器 Download PDF

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Abstract

【課題】圧粉磁心とした際の磁性特性を確保しながら、安価に製造可能な磁心用粉末、圧粉磁心及びこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の磁心用粉末は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に絶縁性粒子を備える磁心用粉末であって、凹部には粒子径が50nm以上200nm以下の絶縁性粒子が配置されており、凸部には粒子径が5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配置されている、磁心用粉末。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁心用粉末及びその製造方法、並びにそれを用いた圧粉磁心及び電磁機器に関する。
変圧器(トランス)、電動機(モータ)、発電機、スピーカ、誘導加熱器、各種アクチュエータ等、我々の周囲には電磁気すなわち電流を流した時に磁性を示すことを利用した製品が多々ある。これらの製品は交番磁界を利用したものが多く、その交番磁界は、通常、磁心を中央に配設したコイルによって発生される。このため、電磁機器の性能は、そのコイルの性能に左右され、コイルの性能は、上記磁心の性能に左右される。よって、電磁機器の性能向上や小型化等を図る上で、磁心の性能向上を図ることが非常に重要である。
磁心を作る方法としては、電磁鋼板と呼ばれる薄いSi鋼板を積層する方法がある。しかし、Siを鋼板中に分散するには鋼板の表面から浸透させる処理を要し、さらに所望の形状の磁心を得るには打ち抜き等の多くの工程を要するため高コストであった。そこで、特許文献1に記されたような、磁性粉末の表面を絶縁層で被覆した磁心用粉末を加圧成形し圧粉磁心を作る方法が検討されている。
圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、ヒステリシス損失と渦電流損失の和で表される。圧粉磁心は、この鉄損の発生を少なくする磁気特性が求められている。
高密度成形された圧粉磁心は高い磁束密度を有する。また、磁心用粉末個別に絶縁されているので体積比抵抗値すなわち比抵抗が大きく、渦電流損失の低減にも有利である。しかし、高密度成形された圧粉磁心は、成形時に多くの歪みが磁性粉末の粒子内に発生し、この歪みが、ヒステリシス損失を増加させている。
この歪み、すなわちヒステリシス損失を低減するためには、焼純と呼ばれる高温熱処理を用いる方法が有効である。鉄を主成分とする磁性粉末では、歪みを除去するためには、600℃以上の高い焼純温度が必要となる。しかし、600℃以上の高い焼純温度では絶縁層が破壊、焼失してしまい、却って渦電流損失が増大する結果になってしまう。
そのため、絶縁性と耐熱性に優れた絶縁被覆が検討されている。例えば、特許文献2では、チタニア、シリカ、アルミナ等の無機物で金属粉の表面を被覆することで渦電流損失とヒステリシス損失を低減する方法が提案されているが、無機物を金属粉の表面に直接配設するのは容易ではない。また、特許文献3では、鉄粉に対してSr−P−B−O等の第1絶縁層と、第1絶縁層を被覆するシリコーン樹脂からなる第2絶縁層を形成することによって耐熱性と比抵抗を高めている。しかし、優れた耐熱性・比抵抗を得るためには金属粉の種類に制約があり、且つ適用可能な絶縁材料は高価で特殊なものに限られる。
そこで、特許文献4では金属粉自体の絶縁特性を向上させて絶縁性と耐熱性の両立を図っている。具体的には、絶縁性が通常の鉄粉に比べ格段に優れたFe−Si合金粉を用い、Fe−Si合金粉を絶縁皮膜で被覆した磁性粉末が提案されている。
特表2000−504785号公報 特開2003−332116号公報 特開2006−5173号公報 特開2009−259939号公報
しかしながら、特許文献4に記載の磁性粉末は、軟磁性粉末に高価なFe−Si粉を必須として用いていることに加え、軟磁性粉末の表面に三層の絶縁皮膜を有する。このため、当該磁性粉末を製造するのに多大のコストがかかる。
そこで、本発明は、圧粉磁心とした際の磁性特性を確保しながら、安価に製造可能な磁心用粉末、圧粉磁心及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の磁心用粉末は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に絶縁性粒子を備える磁心用粉末であって、凹部には粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子が配置されており、凸部には粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配置されている。このような磁心用粉末は、絶縁性粒子による金属粉表面の被覆率が増加し、優れた成形密度及び絶縁性が発現できるため、圧粉磁心とした際の磁性特性を著しく向上させることができる。
絶縁性粒子は金属酸化物であることが好ましく、金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化セリウムからなる群より選択される一以上を含むことが好ましい。絶縁性粒子が金属酸化物である磁心用粉末を用いると、絶縁性の高い圧粉磁心を製造することができる。また、後述するリン酸カルシウムとともに絶縁性粒子として金属酸化物を金属粉表面に配置することで、厚さバラつきの少ない絶縁層を金属粉表面に形成させることができる。その結果、得られる圧粉磁心の磁気特性をより高めることができる。その中でも、リン酸カルシウムとの反応性が高い二酸化ケイ素を金属酸化物として用いることがより好ましい。
磁心用粉末は、金属粉と絶縁性粒子の間に結合剤を備えることが好ましく、結合剤としては、リン酸カルシウムであることが好ましい。結合剤としてリン酸カルシウムを用いた場合、絶縁性の高い圧粉磁心を製造することができる。リン酸カルシウムは、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム(無水)、第三リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、ピロリン酸カルシウム及びピロリン二水素酸カルシウムからなる群より選ばれる一以上を含むことが好ましく、中でも絶縁性を高められる観点から、結合剤はヒドロキシアパタイトであることがより好ましい。
磁心用粉末の製造方法は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に、20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子、及び20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子を、結合剤を介して接合する。このような方法により製造した磁心用粉末を用いることにより、絶縁性粒子による金属粉表面の被覆率が増加するとともに磁心用粉末同士が強固に接合されるため、優れた絶縁性を発現できる圧粉磁心を製造することができる。
磁心用粉末の製造方法は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に、結合剤からなる層を形成する工程と、20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子、及び20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子を、結合剤からなる層の表面に配設する工程を含むことが好ましい。
磁心用粉末の製造方法において、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液と、金属粉とを反応させて金属粉の表面に結合剤を生じさせることが好ましい。この場合、結合剤としてヒドロキシアパタイトが生じるため、製造する絶縁性を高められる観点から、であることが好ましい。
圧粉磁心は、上述した磁心用粉末を加圧成形及び焼鈍して成り、比抵抗が30μΩm以上であることが好ましい。比抵抗が30μΩm以上であれば、圧粉磁心の絶縁特性は良好に維持されていると考えられるため、ヒステリシス損低減と渦電流損低減を図れる。
電磁機器は、金属製コアに導線を巻回した電磁機器であって、金属製コアは上記圧粉磁心からなることが好ましい。また、金属製コアは、複数の上記圧粉磁心から構成されることが好ましい。この場合、電磁機器の性能向上や小型化を図ることができる。
本発明によれば、圧粉磁心とした際の磁性特性を確保しながら、安価に製造可能な磁心用粉末、圧粉磁心及びこれらの製造方法を提供できる。
金属粉原料である鉄粉のSEM写真像である。 比較例2で得られた磁心用粉末のSEM写真像である。 実施例4で得られた粉末のSEM写真像である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
磁心用粉末は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に絶縁性粒子を備える磁心用粉末であって、凹部には粒子径が50nm以上200nm以下の絶縁性粒子が配置されており、凸部には粒子径が5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配置されている。
磁心用粉末は、上述した構成からなるが、強磁性を有し高い飽和磁束密度を示すことが好ましい。そこで、まず金属粉として、鉄粉、ケイ素鋼粉、センダスト粉、アモルファス粉、パーメンジュール粉、ソフトフェライト粉、アモルファス磁性合金粉、ナノクリスタル磁性合金粉及びパーマロイ粉等の磁性材料が、挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。その中でも、磁性が強い上に安価に入手できる点で、鉄粉が好ましい。この金属粉の組成は特に問わないが、鉄粉、Fe−Si粉末等が代表的である。本発明は、鉄粉、特に形状が歪な水アトマイズ粉等において有効なものであるが、前述した鉄を主成分とした金属粉全般に対して適応可能である。このような金属粉は、一般に金属粉の全質量を100質量%としたときに、0〜10質量%のSiと、残部がFeと磁気特性向上を目的に添加されるAl、Ni、Co等の改質元素および不可避不純物とから構成される。
この不可避不純物は、金属粉の原料に含まれる不純物、粉末形成時に混入する不純物等があり、コスト的または技術的な理由等により除去することが困難な元素である。本発明に係る金属粉の場合であれば、例えば、C、S、Cr、P、Mn等がある。なお当然ながら、金属粉は基本元素(Fe、Co、Ni、Si等)の種類および組成が重要であるため、改質元素や不可避不純物の割合は特に限定されない。
金属粉として鉄粉を採用した場合、飽和磁束密度や透磁率、圧縮性に優れる点で、純鉄粉が特に好ましい。このような純鉄粉としては、アトマイズ鉄粉、還元鉄粉及び電解鉄粉等を挙げることができ、例えば株式会社神戸製鋼所製の300NH、川崎製鉄株式会社製のKIP−MG270HやKIP−304AS、ヘガネス社製のアトマイズ純鉄粉(商品名:ABC100.30)等が挙げられる。
金属粉の製造方法は問わない。粉砕粉でもアトマイズ粉でも良く、アトマイズ粉も、水アトマイズ粉、ガスアトマイズ粉、ガス水アトマイズ粉のいずれでも良い。水アトマイズ粉は、現状、最も入手性が良く低コストである。水アトマイズ粉は、その粒子形状がいびつであるので、それを加圧成形した圧粉体の機械的強度を向上させ易いが、厚さバラつきの少ない絶縁層の形成が難しく、高い比抵抗は得られにくい。一方、ガスアトマイズ粉は、略球状をしている擬球状粉である。各粒子の形状が略球状をしているため、磁性粉末を加圧成形した際に、各粉末粒子間の攻撃性が低くなり、絶縁層の破壊等が抑制され、比抵抗の高い圧粉磁心が安定して得られ易い。
金属粉は、酸化防止を目的にリン酸処理された金属粉を用いることもできる。このような処理を事前に行った金属粉を用いることで金属粉表面の酸化を防止することができる。リン酸処理は、例えば、特開2000−504785号公報に記載の方法で行うことができ、リン酸処理された金属粉として市販されているものを使用してもよい。
金属粉の粒子径は、走査型電子顕微鏡等で観察される、金属粉に外接する最小の円の直径を意味する。当該粒子径の範囲に特に制限はなく、圧粉磁心の用途や要求特性によって適宜決めることができるが、一般的には1μm〜300μmの範囲に入るものを使用するのが望ましい。粒子径が1μm以上であれば、圧粉磁心作成時に成形しやすくなる傾向があり、300μm以下であれば、圧粉磁心の渦電流が大きくなるのを抑制できる。また、高い磁気特性を得るためには、ふるい分け法で得られる粒子径が10μm〜250μmのものがより好ましく、50μm〜200μmのものが特に好ましい。金属粉の形状に制限はなく、球状、塊状のものや、公知の製法又は機械加工によって、扁平加工した扁平状粉末を用いてもよい。
絶縁性粒子としては、優れた絶縁性が得られるものであれば特に制限はないが、高い絶縁性を得る観点から、金属酸化物が好ましい。
金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化セリウム、酸化錫、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト及び酸化インジウムからなる群より選ばれる一以上を含むことが好ましい。その中でも、高い反応性が得られる点で二酸化ケイ素がより好ましい。これらの金属酸化物は、単独で又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
これらの金属酸化物は、本実施形態の磁心用粉末を製造する際にスラリーの形態で用いられることが好ましい。そのようなスラリー製品としては、シーアイ化成株式会社製のNanoTek Slurryシリーズや扶桑化学工業株式会社のクォートロンPLシリーズやSPシリーズ、日産化学工業株式会社製のスノーテックスシリーズ(コロイダルシリカ、オルガノゾル)、アルミナゾル、ナノユース、株式会社アドマテックスのアドマファイン等が例示できる。
ここで、スラリーにおける分散溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤などが挙げられる。
凹部に配置されている絶縁性粒子の粒子径は、50nm以上200nm以下であることが好ましく、60nm以上150nm以下であることがより好ましく、70nm以上100nm以下であることが特に好ましい。凹部に配置されている絶縁性粒子の粒子径が50nm未満では、十分な絶縁性が得られず、粒子径が200nmを超えると、粒子が大きすぎて絶縁性粒子が金属表面に付きにくく、且つ形成した絶縁性粒子が剥離しやすい。
また、凸部に配置されている絶縁性粒子の粒子径は、5nm以上50nm未満であることが好ましく、5nm以上35nm以下であることがより好ましく、15nm以上30nm以下であることが特に好ましい。凸部に配置されている絶縁性粒子の粒子径が50nm以上では、凸部に対する付きが悪くなり凸部の絶縁性が低下する傾向がある。粒子径が5nm未満では粒子が凝集しやすく、所望の絶縁効果が発現しにくい。
なお、絶縁性粒子の粒子径は、金属粉の表面に付着した状態の絶縁性粒子を走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡等を用いた直接観察にて測定することができる。
磁心用粉末は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に、20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子、及び20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子を、結合剤を介して接合することで製造する。ここで、粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子の20個平均粒子径aと粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子の20個平均粒子径bの比a/bは、1.5以上40以下であることが好ましく、1.5以上10以下であることがより好ましく、3.0以上6.0以下であることが特に好ましく、4.0以上5.0以下であることが極めて好ましい。a/bが1.5より小さいと十分な絶縁性が得られず、a/bが6.0より大きいと、粒子が大きすぎて絶縁性粒子が金属表面に配設しにくく、絶縁性粒子が剥離しやすい。
なお、20個平均粒子径aとは、粒子径50nm〜200nmの絶縁性粒子が少なくとも20個確認できる1枚の走査型電子顕微鏡写真内から任意に当該絶縁粒子を20個選定して測定し、20個の各々の測定値を得、この各々の測定値の総和を20で除した値をいう。20個平均粒子径bについても、20個平均粒子径aに準じて測定し定められる。ここで、絶縁性粒子の粒子径は、走査型電子顕微鏡等で観察される、絶縁性粒子に外接する最小の円の直径を意味する。
磁心用粉末は、被覆金属粉と絶縁性粒子の間に結合剤を備えることが好ましい。結合剤は、結合剤を介して絶縁性粒子を金属粉表面に配設する機能を有する。結合剤としては、絶縁性粒子を金属粉表面に配設するものであれば特に制限はないが、リン酸カルシウム類であることが好ましい。結合剤は、金属粉の絶縁層としての機能も有する。
結合剤による金属粉の被覆の程度としては、一部金属粉が露出していてもよいが、被覆率が高い方が、成形時の圧粉磁心の比抵抗値(絶縁性の指標)も高くなり、粒子径50nm〜200nmの絶縁性粒子及び粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配設しやすく、結果として抗折強度も向上する点で好ましい。具体的には、結合剤により、金属粉表面が90%以上被覆されていることが好ましく、95%以上被覆されていることがより好ましく、全体(ほぼ100%)被覆していることがさらに好ましい。
なお、結合剤による金属粉の被覆率は、XPS測定で得られるFeのピークを基準に相対比較し、Feピーク強度の減り具合から算出することができる。
金属粉表面に形成された結合剤の層は、厚さが10nm〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましい。厚さが10nm以上であれば絶縁の効果を得る傾向があり、1000nm以下であれば大幅な成形体密度の低下を生じることもない。
結合剤層の厚さは、例えば、結合剤で被覆された金属粉をエポキシ樹脂で硬化させたものを用い、イオンミリング加工による断面サンプルを作製し、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察を行うことにより測定することができる。
結合剤を金属粉表面に形成する量としては、金属粉100質量部に対して、0.1〜1.5質量部であることが好ましく、0.4〜0.8質量部であることがより好ましく、0.5〜0.7質量部であることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、絶縁性(比抵抗)の向上や後述する金属酸化物の配設作用が得られる。1.5質量部以下であれば、圧粉磁心にした時に成形体密度が低下するのを防ぐことができる傾向がある。金属粉表面に形成された結合剤の質量は、得られた磁心用粉末の質量増加分を測定することによって求めることができる。
結合剤はリン酸カルシウムであることが好ましい。リン酸カルシウムとしては、第一リン酸カルシウム{Ca(HPO・0〜1HO}、第二リン酸カルシウム(CaHPO)、第二リン酸カルシウム(無水){CaHPO・2HO } 、第三リン酸カルシウム{3Ca(PO・Ca(OH)}、リン酸三カルシウム{Ca(PO }、α型リン酸三カルシウム{ α−Ca(PO} 、 β型リン酸三カルシウム{ β‐Ca(PO} 、ヒドロキシアパタイト { Ca10(PO(OH)}、リン酸四カルシウム{ Ca(POO} 、ピロリン酸カルシウム(Ca)、ピロリン二水素酸カルシウム(CaH)等が挙げられる。これらの中でも耐熱性に優れるヒドロキシアパタイトが好ましい。またヒドロキシアパタイトは、構造内にOH基を有するため、金属酸化物との反応性にも優れる。
リン酸カルシウムを金属粉表面に被覆(以下の例では析出によって被覆を達成している。)するには、例えば、まず金属、プラスチック、ガラス等の容器内にカルシウムイオンを含みアルカリ雰囲気下にpH調整を行った水溶液と金属粉を入れ、次いで、リン酸イオンを含む水溶液を添加し、混合後の水溶液中のpHを7以上、Ca/Pを所望の比に調製する。水溶液を調整後、水溶液と水溶液中の金属粉を解砕させながら、混合することが好ましい。この場合、添加順序を変えてリン酸イオンを含む水溶液と金属粉を入れ、後からカルシウムイオンを含む水溶液を添加してもよい。またリン酸イオンを含む水溶液と金属粉及び、カルシウムイオンを同時に入れてもよい。
カルシウムイオンとしては、カルシウム化合物に由来するものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、カルシウムイオン源としては、水酸化カルシウム等の無機塩基のカルシウム塩、硝酸カルシウム等の無機酸のカルシウム塩、酢酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩、有機塩基のカルシウム塩等を挙げることができる。前記リン酸源としては、リン酸や、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のリン酸塩、ピロリン酸(二リン酸)やメタリン酸等の縮合リン酸を挙げることができる。これらのリン酸化合物のうち、水溶液中でリン酸とカルシウムイオンを与える塩(硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物)を反応させることで析出できるものであればいかなるリン酸化合物でもよい。また、混入される不純物の面を考慮すると、リン酸アンモニウム塩を用いて析出させるものが特に良い。
金属粉表面にリン酸カルシウム類で被覆する際、反応溶液中性領域〜塩基性領域であることが好ましい。これにより、金属粉表面の酸化を防ぐことができ、尚且つリン酸カルシウム類のうち、特にヒドロキシアパタイトを形成させることができる。形成時の反応溶液は、リン酸カルシウム類の溶解度積を考慮してもpH7以上であることが好ましく、より好ましくは8〜11であり、さらに好ましくは10〜11である。ヒドロキシアパタイトは、酸性領域では溶解し、中性域ではヒドロキシアパタイト以外のリン酸カルシウムが析出または混在する。また酸性領域では、金属粉の種類によっては、酸化されてしまい、一部酸化物に変換されてサビを生じて変色するものもある。そのためアンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を用いて、反応液のpHを正確に調整する必要がある。
前記解砕とは、撹拌時において金属粉同士の摩擦や衝突によって金属粉にせん断力がかかることを利用して、金属粉の凝集した部分を解きほぐすことをいう。金属粉を解砕しながら金属粉を含む水溶液を混合する方法としては、プラネタリーミキサー、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ミックスローター、エバポレーター、超音波分散等の湿式撹拌(混合)可能であるものであれば、いかなるものも使用できる。中でも、ミックスローター等で回転数を調節し、サンプルに応じた撹拌を行うことが好ましい。金属粉の中でも圧粉磁心用の鉄粉は、アトマイズ法で製造され、比較的広い粒度分布を有し、粉砕不十分な粗大な鉄粉や鉄粉同士の凝集がみられる。粗大な粉末の混入は、磁気特性や成形体密度の低下要因にもなりうるため、このような撹拌を行うことで、磁気特性や成形体密度の低下を防ぎながら、金属粉にリン酸カルシウムを被覆することが可能となる。
上記撹拌速度としては、使用する容器の容積と使用する金属粉の質量や見かけ体積、また水溶液の体積によって、その最適回転速度は変化するが、例えば容器の容積1000cm、使用する金属粉300g、水溶液の体積が金属粉の見かけ体積の120〜130%の場合、30〜300rpmが好ましく、40〜100rpmがより好ましい。この際、容器の回転に伴い、金属粉が容器内壁を適度に流動することが必要とされ、300rpmを超えると、金属粉が流動せずに内壁に張り付いて回転してしまい、結果的に効率的な撹拌が行われない。一方、30rpm未満だと、容器の回転が遅すぎて、金属粉の自重によって容器内底部(撹拌時の一番低い位置)の位置に一定的に留まる状態を引き起こし、撹拌が全く行われない。
金属粉表面へのリン酸カルシウム類の被覆時の反応温度は、室温でも特に問題はないが、温度を高めることで反応を促進させ、被覆に要する時間を短縮することもできる。反応温度としては、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
金属粉表面へのリン酸カルシウム類の被覆時の反応時間としては、カルシウムイオンを含む水溶液とリン酸イオンを含む水溶液の濃度により異なる。各イオンを含む溶液の濃度は、それぞれ0.003〜1.0モル/Lの範囲であることが好ましい。各イオンを含む溶液の濃度は、それぞれ0.001〜2.0モル/Lの範囲が好ましく、0.1〜1.0モル/Lの範囲とすることがより好ましい。この場合の反応時間としては、1〜10時間とすることが好ましく、2〜5時間であることがより好ましい。2.0モル/Lを超えると、金属同士が凝集しやすくなり、成形体とした際の低密度が問題となる。一方、0.01モル/L未満だと、反応時間が必要以上に長くなり、選定した材料次第では、金属粉のムラのない被覆が困難となる。また反応時間が少ない場合、例えば1〜10分程度では、金属粉表面に目的とするリン酸カルシウム類の生成が不十分であり、収率低下、絶縁性(比抵抗)の不足を招く。
金属粉表面へのリン酸カルシウム類の被覆時の水溶液量としては、容器の回転とともに金属粉が効率的に流動できる量が必要とされ、使用する金属粉のみかけ体積の100〜200%が好ましく、110〜140%がより好ましく、120〜130%が最も好ましい。
絶縁性粒子は、粉末状のものを使用してもよいが、スラリー状のものの方が好ましい。すなわち、絶縁性粒子は溶媒(水や有機溶剤)中で凝集せずに分散していることが好ましい。上記絶縁性粒子を金属粉表面に配置させる工程において、粒子を添加する時期は、リン酸カルシウム類の被覆時であっても、リン酸カルシウム類の被覆後であってもよい。金属粉表面にリン酸カルシウム類を被覆する際に上記絶縁性粒子を存在させると、1工程で磁心用粉末を製造することができ、工程を簡略化することができる。
(圧粉磁心の製造)
圧粉磁心は、上述した磁心用粉末を加圧成形及び焼鈍する工程を含む製造方法で得ることができる。ここで圧粉磁心の製造方法は、磁心用粉末に必要に応じて潤滑剤を混合し、それを加圧成形及び焼鈍する工程を含んでもよい。即ちこの圧粉磁心は、磁心用粉末に必要に応じて潤滑剤を混合し、それを加圧成形及び焼鈍して得られても構わない。また潤滑剤は、適当な分散媒に分散して分散液とし、それを金型ダイス内壁面(パンチと接触する壁面)に塗布、乾燥してから使用することもできる。
作製した磁心用粉末は、大きく磁心用粉末を成形用金型へ充填する充填工程と、この圧粉磁心用金属粉を加圧成形する成形工程とを経て圧粉磁心と呼ばれる成形体となる。成形用金型へ充填した圧粉磁心用粉末(上記混合粉末を含む)の加圧成形は、冷間、温間、熱間を問わず、粉末中に内部潤滑剤等を混合した一般的な成形法により行っても良い。しかし、高密度化による磁気特性の向上を図る観点から、次に述べる金型潤滑温間加圧成形法を採用するのがより好ましい。これにより、成形圧力を大きくしても、成形用金型の内面と磁心用粉末との間でかじりを生じたり抜圧が過大となったりせず、金型寿命の低下も抑制できる。そして、高密度な圧粉磁心を試験レベルではなく、工業レベルで量産可能となる。
潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸、ワックス等の長鎖炭化水素、シリコーンオイル等が使用できる。
成形工程における加圧の程度は、圧粉磁心の仕様や製造設備等により適宜選択されるが、上記金型潤滑温間加圧成形法を用いた場合、従来の成形圧力を超越した高圧力下で成形可能である。このため、硬質なFe−Si系磁性粉末であっても、高密度な圧粉磁心を容易に得ることができる。その成形圧力は、例えば、500MPa以上、1000MPa以上、2000MPaさらには2500MPaともできる。成形圧力が高圧である程、高密度の圧粉磁心が得られるが、2000MPa以下で十分である。そこまで高圧成形すると圧粉磁心の密度は真密度に近づき、それ以上の高密度化が実質的に望めず、成形圧力を700以上1500MPa以下とするとことが金型寿命や生産性の観点から好ましい。
磁心用粉末を加圧成形すると、その内部には残留応力や残留歪を生じる。これを除去するために、成形体を加熱、徐冷する焼鈍工程を施すと好適である。これにより、ヒステリシス損が低減される。また、交番磁界に対する追従性等の良好な圧粉磁心が得られる。なお、焼鈍工程で除去される残留歪等は、成形工程前から金属粉内に蓄積された歪等であっても良い。
焼鈍を行うときの雰囲気は、非酸化雰囲気中が好ましい。例えば、真空雰囲気や不活性ガス(H、N、Ar)雰囲気である。なお、焼鈍工程を非酸化雰囲気中で行うのは、圧粉磁心やそれを構成する磁性粉末が過度に酸化されて、磁気特性や電気特性が低下するのを抑止するためである。具体的には、FeOの生成やFeSiO層が生成する場合がある。
上述した磁心用粉末を用いて作製した圧粉磁心は、例えば、モータ(特に、コアやヨーク)、アクチュエータ、リアクトルコア、トランス、誘導加熱器(IH)、スピーカ等の様々な電磁機器に利用できる。特に、この圧粉磁心は、高磁束密度と共に焼鈍等によるヒステリシス損の低減も図れ、比較的低周波数域で使用される機器等においても適応可能である。
圧粉磁心の成形体密度は、7.0g/cm以上であることが好ましく、7.2g/cm以上であることがより好ましく、7.3g/cm以上であることが特に好ましい。密度が7.3g/cm以上であれば該圧粉磁心の磁束密度が向上する傾向がある。成形体密度(g/cm)は、マイクロメーター等で寸法を測定し、圧粉磁心の質量を測定することで、(質量)/(体積)として算出できる。また、別法としてアルキメデス法を用いて、精密天秤によって決定することもできる。
圧粉磁心の成形体の電気抵抗値(比抵抗)は、四端子法と二端子法にて測定することができるが、四端子法にて測定することが好ましい。これは、一定電流を流し込むところ(電流電極と試料表面との間)で、界面現象のために接触抵抗と呼ばれる電圧降下が生じるため、それを排除し、試料の真の体積抵抗率を求めるためである。即ち、四端子法では、電流印加端子と電圧測定端子とを分離することにより、接触抵抗の影響を取り除き、高精度な測定が可能となる。
圧粉磁心の電気抵抗値(比抵抗)は、600℃での焼鈍プロセスを経て経られた場合に、30μΩm以上であることが好ましく、40μΩm以上であることがより好ましく、50μΩm以上であることがさらに好ましい。電気抵抗が30μΩm以上であれば、圧粉磁心の絶縁特性は良好に維持されていると考えられ、ヒステリシス損低減と渦電流損低減の両方の効果を得ることができる傾向がある。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
50mlのポリプロピレン製の円筒形容器に鉄粉(水アトマイズ純鉄粉、川崎製鉄社製KIP−304AS)30gを入れ、これにリン酸カルシウム類(ヒドロキシアパタイト)が鉄粉に対して0.4質量%含まれる配合量として、硝酸カルシウム水溶液3.4ml(0.358M)、純水10ml、25%アンモニア水0.5ml、リン酸二水素アンモニウム水溶液3.4ml(0.215M)を添加した。添加後直ちに蓋をして、回転数40rpmに設定したミックスローターにて撹拌した。2時間後、容器を開封し、絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−13」、20個平均粒子径130nm、SiO濃度24質量%)6.7g、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−3」、20個平均粒子径35nm、SiO濃度20質量%)4.0gをそれぞれ滴下し、再度蓋をして、回転数40rpmに設定したミックスローターにて、1.0時間撹拌した。
なお、ここでの20個平均粒子径とは、少なくとも20個確認できる1枚の走査型電子顕微鏡写真内から任意に20個選定して測定し、20個の各々の測定値を得、この各々の測定値の総和を20で除した値をいう。
撹拌後の鉄粉分散液を、定量分析用No.5Cのろ紙を用いて吸引ろ過を行い、ろ過物をアセトンで洗浄した。得られた粉末を真空デシケータ中で乾燥した。
得られた粉末7.0gを内径14mmの金型に充填し、室温下、成形圧力1000MPaにて、円柱状の錠剤に成形した。この時、得られた錠剤の厚みは約5mmとなる。潤滑剤には、1質量%ステアリン酸亜鉛/エタノール溶液を使用し、金型の壁面に塗布して成形した。この錠剤を窒素雰囲気下、600℃にて1時間焼鈍し、成形体表面を研磨し圧粉磁心を得た。得られた圧粉磁心については、四端子抵抗率計(ナプソン株式会社製、RT−70/RG−5)を用いて評価し、5回の測定値の平均値を比抵抗とした。また、マイクロメーターで圧粉磁心の寸法を測定し、電子天秤を用いて質量を測定することで圧粉磁心の成形体密度を算出した。
(実施例2)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−13」の代わりに超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−5」、20個平均粒子径55nm、SiO濃度20質量%)8.0gを滴下することと、リン酸カルシウムが鉄粉に対して0.6質量%含まれる配合量として、硝酸カルシウム水溶液5.0ml(0.526M)、純水10ml、25%アンモニア水0.5ml、リン酸二水素アンモニウム水溶液5.0ml(0.316M)を添加したこと以外は実施例1と同様として圧粉磁心を得た。
(実施例3)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.6質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−13」の代わりに超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」、20個平均粒子径70nm、SiO濃度23質量%)6.5gを滴下し、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−3」の代わりに超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−2」、20個平均粒子径25nm、SiO濃度20質量%)1.2gを滴下すること以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
(実施例4)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−13」の代わりに超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」、20個平均粒子径70nm、SiO濃度23質量%)9.7gを滴下し、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−3」の代わりに超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−1」、20個平均粒子径15nm、SiO濃度12質量%)1.4gを滴下すること以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
なお、圧粉磁心を作製する工程の途中で得られた圧粉磁心用の粉末については、走査型電子顕微鏡(PHILIPS FEI社製、XL30−FEG)を用いて観察した。写真を図2(A)〜(C)に示した。
(実施例5)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」、20個平均粒子径70nm、SiO濃度23質量%)7.0gを滴下し、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−1」、20個平均粒子径15nm、SiO濃度12質量%)6.7gを滴下すること以外は実施例4と同様にして圧粉磁心を得た。
(実施例6)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」、20個平均粒子径70nm、SiO濃度23質量%)5.2gを滴下し、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−1」、20個平均粒子径15nm、SiO濃度12質量%)10.0gを滴下することと、硝酸カルシウム水溶液、純水、25%アンモニア水、リン酸二水素アンモニウム水溶液の添加時に超高純度コロイダルシリカを滴下すること以外は実施例4と同様にして圧粉磁心を得た。
(比較例1)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」をなしとし、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−1」、20個平均粒子径15nm、SiO濃度12質量%)を20.0g滴下すること以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
(比較例2)
絶縁性粒子が鉄粉に対して0.8質量%含まれる配合量として、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−1」をなしとし、超高純度コロイダルシリカ(扶桑化学工業株式会社製「クオートロンPL−7」、20個平均粒子径70nm、SiO濃度23質量%)を10.4g滴下すること以外は実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
なお、圧粉磁心を作製する工程の途中で得られた圧粉磁心用の粉末については、実施例4と同じく走査型電子顕微鏡を用いて観察した。写真を図1(A)〜(C)に示した。
実施例1〜6及び比較例1〜2についての比抵抗、成形体密度の測定結果を表1に示した。比較例1及び比較例2は20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子3のみ又は粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子4のみであるため、比抵抗が低く高い絶縁性が得られない。また、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた圧粉磁心用の粉末の凸部及び凹部を覆っている絶縁性粒子の粒子径と、絶縁性粒子の付着状態を表2に示した。

A:凹部は概ね絶縁性粒子(大)で覆われている。
凸部は一部溝(当該粒子が存在しない)が存在するものの絶縁性粒子(小)が密集して概ね表面を覆っており絶縁性粒子(大)も散見される。
B:凹部、凸部ともに一部溝(当該粒子が存在しない)が存在するものの絶縁性粒子(小)が密集して概ね表面を覆っている。
C:凹部は概ね絶縁性粒子(大)で覆われている。
凸部は絶縁性粒子(大)が約半分の面積を占めるものの、当該粒子が存在しない空隙部が目立つ。
図1は、金属粉原料である鉄粉のSEM写真である。(A)が全体図(倍率1000倍)、(B)が凸部1aの拡大図(倍率50000倍)、(C)が凹部2aの拡大図(倍率20000倍)である。また、図2は、比較例2で得られた磁心用粉末のSEM写真像である。(A)が全体図(倍率1000倍)、(B)が凸部1bの拡大図(倍率50000倍)、(C)が凹部2bの拡大図(倍率50000倍)である。図1(A)〜(C)と比べると明らかであるが、20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子3のみを用いた比較例2においては、図2(A)〜(C)に示すように、凹部2bでは粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子3がほぼ隙間なく存在するが、凸部1bでは絶縁性粒子の存在しない空隙部5が多く、絶縁性が低下する一因となっていることが分かる。絶縁性粒子の粒子径が大きい場合には、絶縁性粒子が付着しづらいことがこの現象の原因と推定される。
他方、20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子4のみを用いた比較例1においては、表1に示すように比抵抗が低く、高い絶縁性が得られない。このように粒子径が小さい絶縁性粒子のみを用いて成形した場合、個々の磁心において隣り合う粉末同士の絶縁性が充分に確保できないからであると推定される。
図3は、実施例4で得られた粉末のSEM写真像である。(A)が全体図(倍率1000倍)、(B)が凸部1cの拡大図(倍率50000倍)、(C)が凹部2cの拡大図(倍率50000倍)である。実施例4では、20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子3と20個平均粒子径粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子4を併用している。このため、図3(A)〜(C)に示すように、凸部1cにおいて絶縁性粒子の存在しない空隙部5がほとんど観察されないため、高い絶縁性を発現しているものと推定される。
また、実施例6のように鉄粉へのリン酸カルシウム層形成工程と絶縁性粒子配設工程を1工程で行い得られた粉末を用いて圧粉磁心を作製しても、比抵抗と成形体密度は良好であった。
本発明の磁心用粉末は、凹部及び凸部を有する金属粉の表面に絶縁性粒子を備える磁心用粉末であって、凹部には粒子径が50nm以上200nm以下の絶縁性粒子が配置されており、凸部には粒子径が5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配置されている。このため、絶縁性粒子による金属粉表面の被覆率が増加し、優れた絶縁性が発現できるため、圧粉磁心とした際の磁性特性を著しく向上させることができる。
1a,1b,1c…凸部、2a,2b,2c…凹部、20個平均粒子径50nm〜200nmの絶縁性粒子3、20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子。

Claims (14)

  1. 凹部及び凸部を有する金属粉の表面に絶縁性粒子を備える磁心用粉末であって、
    前記凹部には粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子が配置されており、
    前記凸部には粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子が配置されている、磁心用粉末。
  2. 前記絶縁性粒子は金属酸化物である、請求項1に記載の磁心用粉末。
  3. 前記金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化セリウムからなる群より選択される一以上を含む、請求項2に記載の磁心用粉末。
  4. 前記金属酸化物は、二酸化ケイ素である、請求項2又は3に記載の磁心用粉末。
  5. 前記金属粉と前記絶縁性粒子の間に結合剤を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁心用粉末。
  6. 前記結合剤はリン酸カルシウムである、請求項5に記載の磁心用粉末。
  7. 前記リン酸カルシウムは、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム(無水)、第三リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、ピロリン酸カルシウム及びピロリン二水素酸カルシウムからなる群より選ばれる一以上を含む、請求項6に記載の磁心用粉末。
  8. 前記リン酸カルシウムはヒドロキシアパタイトである、請求項6又は7に記載の磁心用粉末。
  9. 凹部及び凸部を有する金属粉の表面に、
    20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子、及び20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子を、結合剤を介して接合する、磁心用粉末の製造方法。
  10. 凹部及び凸部を有する金属粉の表面に、結合剤からなる層を形成する工程と、
    20個平均粒子径50nm以上200nm以下の絶縁性粒子、及び20個平均粒子径5nm以上50nm未満の絶縁性粒子を、前記結合剤からなる層の表面に配設する工程を含む、磁心用粉末の製造方法。
  11. カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液と、前記金属粉とを反応させて前記金属粉の表面に前記結合剤を生じさせる、請求項9又は10記載の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁心用粉末を加圧成形及び焼鈍して成る、比抵抗が30μΩm以上の圧粉磁心。
  13. 金属製コアに導線を巻回した電磁機器であって、
    前記金属製コアは、請求項12に記載の圧粉磁心からなる、電磁機器。
  14. 前記金属製コアは、複数の前記圧粉磁心から構成される、請求項13記載の電磁機器。
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