以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図10を参照しつつ詳細に説明する。
建設機械の代表例である油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とにより構成されている。下部走行体2の前側には、排土作業を行う排土装置5が設けられている。上部旋回体4の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置6が設けられている。
作業装置6は、後述する旋回フレーム7の前端に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト6Aと、スイングポスト6Aに俯仰動可能に取付けられたブーム6Bと、ブーム6Bの先端に回動可能に取付けられたアーム6Cと、アーム6Cの先端に回動可能に取付けられたバケット6Dと、ブームシリンダ6E、アームシリンダ6F、バケットシリンダ6Gを備えて構成されている。また、旋回フレーム7とスイングポスト6Aとの間には、スイングポスト6Aを左,右方向に揺動させるスイングシリンダ(図示せず)が設けられている。
旋回フレーム7は、上部旋回体4のベースとなるもので、旋回装置3を介して下部走行体2上に取付けられている。旋回フレーム7の前部側には、前方に突出する支持ブラケット7Aが設けられ、この支持ブラケット7Aには、作業装置6のスイングポスト6Aが左,右方向に揺動可能に支持されている。一方、旋回フレーム7の後部側にはカウンタウエイト8が設けられ、このカウンタウエイト8によって作業装置6との重量バランスが保たれている。ここで、カウンタウエイト8は、左,右方向の中央部が後方に突出した円弧状の重量物として鋳造により一体成形され、図4に示すように、カウンタウエイト8の上面8Aには後述するキャノピ取付台座15が設けられている。
運転席9は、カウンタウエイト8の前側に位置して旋回フレーム7上に設けられている。運転席9は油圧ショベル1を操縦するオペレータが着席するもので、運転席9の前部左側には、オペレータが運転席9に乗り降りするための乗降口10が形成されている。運転席9を挟んで左,右両側には、旋回装置3および作業装置6を操作するための左,右の操作レバー装置11(左側のみ図示)が設けられている。また、運転席9の前側には、下部走行体2の走行装置(図示せず)を操作するための走行レバー・ペダル装置12が設けられている。
左外装カバー13は、運転席9の左側に位置して旋回フレーム7上に設けられている。左外装カバー13は、カウンタウエイト8の左端部から乗降口10までの範囲に設けられている。右外装カバー14は、運転席9の右側に位置して旋回フレーム7上に設けられている。右外装カバー14は、カウンタウエイト8の右端部から旋回フレーム7の右前端部までの範囲に設けられている。これら左外装カバー13、右外装カバー14およびカウンタウエイト8によって囲まれた空間内には、旋回フレーム7に搭載されたエンジン、油圧ポンプ、熱交換装置、作動油タンク、燃料タンク等の搭載機器(いずれも図示せず)が収容されている。
キャノピ取付台座15は、運転席9の後側に配置されたカウンタウエイト8の上面8Aに設けられ、後述するキャノピ18が取付けられるものである。キャノピ取付台座15の上面15Aは左,右方向に延びる平坦面となり、後述する左ベース部材20を取付けるための3個の雌ねじ穴15B,15C,15Dと、後述する右ベース部材21を取付けるための3個の雌ねじ穴15E,15F,15Gとが、それぞれ左,右方向に間隔をもって形成されている。これら各雌ねじ穴15B〜15Gは、カウンタウエイト8に鋳込まれたインサートに形成されている。
また、キャノピ取付台座15のうち雌ねじ穴15Cと15Dとの間には、後述する左転倒防止ピン31を取付けるための左ピン用インサート16が埋設されている。キャノピ取付台座15のうち雌ねじ穴15Eと15Fとの間には、後述する右転倒防止ピン29を取付けるための右ピン用インサート17が埋設されている。
左ピン用インサート16は円筒体からなり、その内周側には上,下方向に延びる台座側ねじ部としての雌ねじ穴16Aが螺設されている。右ピン用インサート17は、左ピン用インサート16と同一形状をなす円筒体からなり、右ピン用インサート17の内周側には、上,下方向に延びる台座側ねじ部としての雌ねじ穴17Aが螺設されている。これら左ピン用インサート16の上面16Bおよび右ピン用インサート17の上面17Bは、キャノピ取付台座15の上面15Aと同一平面を形成している。
次に、キャノピ取付台座15に取付られる2柱式のキャノピ18について説明する。
キャノピ18は、キャノピ取付台座15に取付けられ、運転席9を上側から覆うものである。キャノピ18は、後述するベース部材19と、ベース部材19から上方に延びた左支柱23および右支柱24と、これら左支柱23および右支柱24の上側位置に設けられたルーフ27とを備えた2柱式のキャノピとして構成されている。
ベース部材19は、キャノピ18の土台となるもので、キャノピ取付台座15の上面15Aに着脱可能に取付けられている。ここで、ベース部材19は、左,右方向の左側に配置された左ベース部材20と、右側に配置された右ベース部材21とにより構成されている。なお、ベース部材19は、左,右のベース部材20,21によって構成するものに限らず、左,右方向に延びる1個のベース部材として構成してもよい。
左ベース部材20は、キャノピ取付台座15の左,右方向の中央部から左側の範囲に設けられ、左支柱23の下端が固定されるものである。図3、図5および図6に示すように、左ベース部材20は、底板20Aと、半割筒体20Bと、補強リブ20Cと、ピン挿通孔20Dと、円筒状ボス20Eと、排水溝20Fとを有し、例えば鋳造により一体成形されている。
底板20Aは、カウンタウエイト8の形状に沿って円弧状に湾曲した板体からなり、底板20Aの下面20A1は、キャノピ取付台座15の上面15Aに当接する平坦面となっている。底板20Aには、キャノピ取付台座15に形成された3個の雌ねじ穴15B,15C,15Dと対応する位置に、上,下方向に貫通する3個のボルト挿通孔20A2,20A3,20A4が形成されている。
半割筒体20Bは、底板20Aから上方に延びて設けられている。半割筒体20Bは、円筒状の内周面を有する筒体を縦方向に2分割した半割り形状を有し、左支柱23の下端側が固定されるものである。半割筒体20Bは、横断面が半円弧状をなして上,下方向に延びる凹面部20B1を有し、この凹面部20B1に左支柱23の外周面を面接触させた状態で、左支柱23の下端側が、半割筒体20Bに溶接等の手段を用いて固定されている。
補強リブ20Cは、底板20Aと半割筒体20Bとの間に設けられている。補強リブ20Cは、前,後方向で間隔をもって対面した状態で半割筒体20Bの上端から底板20Aに向けて三角形状に広がる2枚の板体によって構成されている。補強リブ20Cは、底板20Aと半割筒体20Bとの間で半割筒体20Bを支えるように補強することにより、左ベース部材20の強度を高めるものである。左ベース部材20は、ボルト挿通孔20A2,20A3,20A4にそれぞれ挿通されたボルト22を、キャノピ取付台座15の雌ねじ穴15B,15C,15Dに螺着することにより、キャノピ取付台座15の上面15A上に左,右方向に延びた状態で固定される。
ピン挿通孔20Dは、左ベース部材20の底板20Aに上,下方向に延びて設けられている。ピン挿通孔20Dは、後述するキャノピ転倒防止機構28の一部を構成するもので、後述の左転倒防止ピン31が挿通されるものである。ピン挿通孔20Dは、左ベース部材20の底板20Aのうち、キャノピ取付台座15に埋設された左ピン用インサート16の雌ねじ穴16Aに対応する部位に、上,下方向に貫通して形成されている。ピン挿通孔20Dの周囲には、底板20Aから上向きに突出した円筒状ボス20Eが設けられ、ピン挿通孔20Dは、円筒状ボス20Eの上面20E1から底板20Aの下面20A1までを上,下方向に貫通している。
排水溝20Fは、底板20Aの下面20A1のうちピン挿通孔20Dに対応する部位に設けられている。図3に示すように、排水溝20Fは、ピン挿通孔20Dの直径と等しい溝幅をもって底板20Aの下面20A1を前,後方向に切欠くことにより形成されている。この排水溝20Fは、ピン挿通孔20Dの下端20D1とキャノピ取付台座15の上面15Aとの間に排水通路20Gを形成している(図5参照)。これにより、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に浸入した雨水等は、排水通路20Gを通じて左ベース部材20の外部に排出される構成となっている。
右ベース部材21は、キャノピ取付台座15の左,右方向の中央部から右側の範囲に設けられ、右支柱24の下端が固定されるものである。右ベース部材21は、左ベース部材20と同様に、底板21Aと、半割筒体21Bと、補強リブ21Cと、ピン挿通孔21Dと、円筒状ボス21Eと、排水溝21Fとを有し、例えば鋳造により一体成形されている。
底板21Aは、カウンタウエイト8の形状に沿って円弧状に湾曲した板体からなり、底板21Aの下面21A1は、キャノピ取付台座15の上面15Aに当接する平坦面となっている。底板21Aには、キャノピ取付台座15に形成された3個の雌ねじ穴15E,15F,15Gと対応する位置に、上,下方向に貫通する3個のボルト挿通孔21A2,21A3,21A4が形成されている。
半割筒体21Bは、底板21Aから上方に延びて設けられ、右支柱24の下端側が固定されるものである。半割筒体21Bは、横断面が半円弧状をなして上,下方向に延びる凹面部21B1を有し、この凹面部21B1に右支柱24の外周面を面接触させた状態で、右支柱24の下端側が、半割筒体21Bに溶接等の手段を用いて固定されている。
補強リブ21Cは、底板21Aと半割筒体21Bとの間に設けられ、右ベース部材21の強度を高めるものである。補強リブ21Cは、前,後方向で間隔をもって対面した状態で半割筒体21Bの上端から底板21Aに向けて三角形状に広がる2枚の板体によって構成されている。補強リブ21Cは、底板21Aと半割筒体21Bとの間で半割筒体21Bを支えるように補強している。右ベース部材21は、ボルト挿通孔21A2,21A3,21A4にそれぞれ挿通されたボルト22を、キャノピ取付台座15の雌ねじ穴15E,15F,15Gに螺着することにより、キャノピ取付台座15の上面15A上に左,右方向に延びた状態で固定される。
ピン挿通孔21Dは、右ベース部材21の底板21Aに上,下方向に延びて設けられている。ピン挿通孔21Dは、キャノピ転倒防止機構28の一部を構成するもので、後述の右転倒防止ピン29が挿通されるものである。ピン挿通孔21Dは、右ベース部材21の底板21Aのうち、キャノピ取付台座15に埋設された右ピン用インサート17の雌ねじ穴17Aに対応する部位に、上,下方向に貫通して形成されている。ピン挿通孔21Dの周囲には、底板21Aから上向きに突出した円筒状ボス21Eが設けられ、ピン挿通孔21Dは、円筒状ボス21Eの上面21E1から底板21Aの下面21A1までを上,下方向に貫通している(図7参照)。
排水溝21Fは、底板21Aの下面21A1のうちピン挿通孔21Dに対応する部位に設けられている。排水溝21Fは、ピン挿通孔21Dの直径と等しい溝幅をもって底板21Aの下面21A1を前,後方向に切欠くことにより形成されている。この排水溝21Fは、ピン挿通孔21Dの下端21D1とキャノピ取付台座15の上面15Aとの間に排水通路21Gを形成している(図7参照)。これにより、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に浸入した雨水等は、排水通路21Gを通じて右ベース部材21の外部に排出される構成となっている。
左支柱23は、下端側が左ベース部材20に固定され、左ベース部材20から上方に延びている。右支柱24は、下端側が右ベース部材21に固定され、右ベース部材21から上方に延びている。これら左支柱23および右支柱24は、例えば左ベース部材20の円筒状ボス20Eよりも大きな外径寸法を有するパイプ材を用いてL字状に形成され、左支柱23および右支柱24の上端側は、運転席9の上側を前方に向けて延びている。左,右の支柱23,24の上,下方向の中間部は、左,右方向に延びる連結梁25によって連結されている。また、左,右の支柱23,24の上側位置には、前,後方向に離間して2個のルーフ取付部材26設けられ、左,右の支柱23,24は、連結梁25と各ルーフ取付部材26とを介して左,右方向で連結されている。
ルーフ27は、左,右の支柱23,24の上側位置に設けられている。ルーフ27は、左,右の支柱23,24間に取付けられた2個のルーフ取付部材26に取付けられ、運転席9の上方に張出している。ルーフ27は、運転席9を上側から覆うことにより、運転席9に着席したオペレータを雨水、日照、落下物等から保護するものである。
次に、本実施の形態に用いられるキャノピ転倒防止機構28について説明する。
キャノピ転倒防止機構28は、キャノピ取付台座15と左ベース部材20との間、およびキャノピ取付台座15と右ベース部材21との間にそれぞれ設けられている。キャノピ転倒防止機構28は、例えばユーザーが取外したキャノピ18を再びキャノピ取付台座15に取付ける際に、キャノピ18のベース部材19を締結しているボルト22に対して十分な締付トルクが加えられない状態で、油圧ショベル1を稼働した場合に、上部旋回体4の振動によってベース部材19を締結しているボルト22が緩んだとしても、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して前方に傾く(前傾する)のを抑えるものである。
ここで、キャノピ取付台座15と右ベース部材21との間に設けられたキャノピ転倒防止機構28について説明する。図7に示すように、キャノピ転倒防止機構28は、右ベース部材21の底板21Aに設けられたピン挿通孔21Dと、後述の右転倒防止ピン29とにより構成されている。
右転倒防止ピン29は、キャノピ取付台座15に着脱可能に取付けられている。右転倒防止ピン29は、右ベース部材21のピン挿通孔21Dに挿通され、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して傾いたときにピン挿通孔21Dの内周面に当接することにより、キャノピ18の傾きを抑えるものである。右転倒防止ピン29は、図4および図7に示すように、キャノピ取付台座15に埋設された右ピン用インサート17の雌ねじ穴17Aに螺着されるねじ軸部29Aと、ねじ軸部29Aの上側に配置され、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に挿通される円柱状の転倒防止軸部29Bとにより構成されている。
キャノピ18がキャノピ取付台座15に対し、図1に示す正規の取付状態にあるときには、図7に示すように、右転倒防止ピン29の転倒防止軸部29Bは、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面に当接していない。即ち、転倒防止軸部29Bの外周面と、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面との間には、全周に亘って環状の隙間30が形成されている。一方、図8に示すように、キャノピ18が、左,右のベース部材20,21と共にキャノピ取付台座15に対して前方に傾いた場合、図9に示すように、右転倒防止ピン29の転倒防止軸部29Bの外周面に、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面が当接する。従って、右転倒防止ピン29がつっかえ棒となって、右ベース部材21がキャノピ取付台座15の上面15Aから前方に傾く(浮上がる)のを抑えることができる構成となっている。
ここで、右転倒防止ピン29(転倒防止軸部29B)の上端29Cは、右ベース部材21に設けられた円筒状ボス21Eの上面21E1よりも上方に突出している。これにより、キャノピ18をキャノピ取付台座15に取付けた状態で、右転倒防止ピン29を外部から目視することができる構成となっている。
工具係合部29Dは、右転倒防止ピン29を構成する転倒防止軸部29Bの下端側(ねじ軸部29A側)の外周面に設けられている。工具係合部29Dは、転倒防止軸部29Bの外周面のうち径方向で互いに反対側となる2箇所を互いに平行となるように切欠いた矩形状の平坦面として形成されている。工具係合部29Dは、右転倒防止ピン29のねじ軸部29Aを右ピン用インサート17の雌ねじ穴17Aに対して着脱するときに、スパナ等の工具(図示せず)を係合させるものである。この場合、工具係合部29Dは、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に配置されている。従って、キャノピ取付台座15から右ベース部材21を取外さない限り、スパナ等を工具係合部29Dに係合させることができない構成となっている。
一方、キャノピ取付台座15と左ベース部材20との間に設けられたキャノピ転倒防止機構28は、左ベース部材20の底板20Aに設けられたピン挿通孔20Dと、後述の左転倒防止ピン31とにより構成されている。
左転倒防止ピン31は、右転倒防止ピン29の左側に離間してキャノピ取付台座15に着脱可能に取付けられている。左転倒防止ピン31は、左ベース部材20のピン挿通孔20Dに挿通され、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して傾いたときにピン挿通孔20Dの内周面に当接することにより、キャノピ18の傾きを抑えるものである。左転倒防止ピン31は、右転倒防止ピン29と同一形状を有し、キャノピ取付台座15に埋設された左ピン用インサート16の雌ねじ穴16Aに螺着されるねじ軸部31Aと、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に挿通される転倒防止軸部31Bとにより構成されている。キャノピ18がキャノピ取付台座15に対し、図1に示す正規の取付状態にあるときには、右転倒防止ピン29と同様に、左転倒防止ピン31の転倒防止軸部31Bの外周面と、左ベース部材20のピン挿通孔20Dの内周面との間には、全周に亘って環状の隙間(図示せず)が形成されている。
左転倒防止ピン31の上端31Cは、左ベース部材20に設けられた円筒状ボス20Eの上面20E1よりも上方に突出している。これにより、キャノピ18をキャノピ取付台座15に取付けた状態で、左転倒防止ピン31を外部から目視することができる構成となっている。また、左転倒防止ピン31の転倒防止軸部31Bの下端側の外周面には、スパナ等の工具を係合させるための工具係合部31Dが設けられ、工具係合部31Dは、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に配置されている。
ここで、例えばユーザーが取外したキャノピ18を再びキャノピ取付台座15に取付ける際に、キャノピ18のベース部材19を締結しているボルト22に対して十分な締付トルクが加えられない状態で、油圧ショベル1を稼働した場合には、上部旋回体4の振動によってベース部材19を締結しているボルト22が緩んでしまい、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して前方に傾くことがある(図8参照)。
この場合には、図9に示すように、右転倒防止ピン29の転倒防止軸部29Bの外周面に、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面が当接すると共に、左転倒防止ピン31の転倒防止軸部31Bの外周面に、左ベース部材20のピン挿通孔20Dの内周面が当接する。これにより、左転倒防止ピン31および右転倒防止ピン29は、左,右のベース部材20,21が図9に示す姿勢からさらに前方に傾くのを抑え、キャノピ18が、図8に示す姿勢からさらに前方に傾くのを抑えることができる構成となっている。
ここで、図6に示すように、左ベース部材20の前端32と、右ベース部材21の前端33とは、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して前方に傾くときの支点となっている。これに対し、左転倒防止ピン31と右転倒防止ピン29とは、左ベース部材20の前端32と右ベース部材21の前端33とを結ぶ仮想線34に沿って左,右方向に並んで配置されている。これにより、キャノピ18が、左,右のベース部材20,21と共にキャノピ取付台座15に対して前方に傾いたときに、左ベース部材20のピン挿通孔20Dの内周面と右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面とが、左転倒防止ピン31の外周面と右転倒防止ピン29の外周面に同時に当接することができる構成となっている。
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如きキャノピ転倒防止機構28を有するもので、この油圧ショベル1を用いて土砂の掘削作業等を行う場合には、オペレータが運転席9に着席し、走行レバー・ペダル装置12を操作することにより、油圧ショベル1を走行させることができる。また、オペレータが、操作レバー装置11を操作することにより、上部旋回体4を旋回させつつ作業装置6を俯仰動させ、この作業装置6を用いて土砂の掘削作業等を行なうことができる。この油圧ショベル1の作動時において、キャノピ18のルーフ27は運転席9を上側から覆い、運転席9に着席したオペレータを雨水、日照、落下物等から保護する。
ここで、例えばユーザーが取外したキャノピ18を再びキャノピ取付台座15に取付ける際に、キャノピ18のベース部材19を締結しているボルト22に対して十分な締付トルクが加えられない状態で、油圧ショベル1を稼働した場合には、上部旋回体4の振動によってベース部材19を締結しているボルト22が緩んでしまい、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して前方に傾くことがある。
右ベース部材21が前方に傾いた場合には、図9に示すように、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面が、右転倒防止ピン29の転倒防止軸部29Bの外周面に当接する。同様に、左ベース部材20が前方に傾いた場合には、左ベース部材20のピン挿通孔20Dの内周面が、左転倒防止ピン31の転倒防止軸部31Bの外周面に当接する。これにより、左転倒防止ピン31および右転倒防止ピン29は、左,右のベース部材20,21が図9に示す姿勢を超えてキャノピ取付台座15の上面15Aから前方に傾くのを抑えることができる。この結果、キャノピ18が、図8に示す姿勢からさらに前方に傾いて転倒するのを抑えることができる。
この場合、キャノピ18は、左ベース部材20の前端32と右ベース部材21の前端33を支点として前方に傾く。これに対し、左転倒防止ピン31と右転倒防止ピン29とは、左ベース部材20の前端32と右ベース部材21の前端33との間を結ぶ仮想線34に沿って配置されている。このため、キャノピ18が前方に傾いたときには、左ベース部材20のピン挿通孔20Dの内周面が左転倒防止ピン31の外周面に当接すると同時に、右ベース部材21のピン挿通孔21Dの内周面が右転倒防止ピン29の外周面に当接する。従って、左,右の転倒防止ピン31,29に対し、キャノピ18が傾くときの荷重を均等に作用させることができる。この結果、キャノピ18の傾きを左,右の転倒防止ピン31,29によって確実に抑えることができ、かつ左,右の転倒防止ピン31,29の耐久性を高めることができる。
しかも、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に挿通された左転倒防止ピン31の上端31Cは、ピン挿通孔20Dが形成された円筒状ボス20Eの上面20E1よりも上方に突出している。また、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に挿通された右転倒防止ピン29の上端29Cは、ピン挿通孔21Dが形成された円筒状ボス21Eの上面21E1よりも上方に突出している。これにより、図1および図2に示すように、キャノピ18をキャノピ取付台座15に取付けた状態で、左転倒防止ピン31と右転倒防止ピン29を外部から目視することができる。この結果、左転倒防止ピン31および右転倒防止ピン29が損傷しているか否かを常に確認することができ、かつ損傷した左,右の転倒防止ピン31,29に対するメンテナンス作業を迅速に行うことができる。
一方、左,右の転倒防止ピン31,29は、左,右のベース部材20,21を構成する円筒状ボス20E,21Eの内周側に形成されたピン挿通孔20D,21Dに挿通され、円筒状ボス20E,21Eは、キャノピ18の左,右の支柱23,24よりも小さな外径寸法を有している。このため、左,右の転倒防止ピン31,29の外径寸法を小さく抑えることができ、重量の増加を抑えることができる。
また、実施の形態では、左ベース部材20を構成する底板20Aの下面20A1に設けられた排水溝20Fによって、ピン挿通孔20Dの下端とキャノピ取付台座15の上面15Aとの間に排水通路20Gが形成されている。右ベース部材21を構成する底板21Aの下面21A1に設けられた排水溝21Fによって、ピン挿通孔21Dの下端とキャノピ取付台座15の上面15Aとの間に排水通路21Gが形成されている。これにより、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に雨水等が浸入したとしても、この雨水等を、ピン挿通孔20Dの下端20D1から排水通路20Gを通じて外部に排出することができる。これと同様に、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に雨水等が浸入したとしても、この雨水等を、ピン挿通孔21Dの下端21D1から排水通路21Gを通じて外部に排出することができる。
さらに、左転倒防止ピン31の転倒防止軸部31Bに設けられた工具係合部31Dは、左ベース部材20のピン挿通孔20D内に配置され、右転倒防止ピン29の転倒防止軸部29Bに設けられた工具係合部29Dは、右ベース部材21のピン挿通孔21D内に配置されている。従って、キャノピ取付台座15から左,右のベース部材20,21を取外さない限り、左,右の転倒防止ピン31,29の工具係合部31D,29Dにスパナ等の工具を係合させることができない。この結果、左,右の転倒防止ピン31,29に対するいたずら、盗難等を防止し、左,右の転倒防止ピン31,29を保護することができる。
かくして、実施の形態によれば、キャノピ取付台座15と左,右のベース部材20,21との間に設けられたキャノピ転倒防止機構28が、左,右のベース部材20,21に上,下方向に延びて設けられたピン挿通孔20D,21Dと、キャノピ取付台座15に固定されて上端29C,31C側が左,右のベース部材20,21の円筒状ボス20E,21Eの上面20E1,21E1よりも上方に突出した状態でピン挿通孔20D,21Dに挿通され、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して傾いたときにピン挿通孔20D,21Dの内周面に当接する左,右の転倒防止ピン31,29とにより構成されている。
これにより、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して前方に傾くときには、左,右のベース部材20,21に設けられたピン挿通孔20D,21Dの内周面に、キャノピ取付台座15に固定された左,右の転倒防止ピン31,29が当接するので、キャノピ取付台座15に対するキャノピ18の傾きを抑えることができる。この場合、左転倒防止ピン31の上端31Cは、左ベース部材20の円筒状ボス20Eの上面20E1よりも上方に突出し、右転倒防止ピン29の上端29Cは、右ベース部材21の円筒状ボス21Eの上面21E1よりも上方に突出している。このため、キャノピ18をキャノピ取付台座15に取付けた状態で、左,右の転倒防止ピン31,29を外部から目視することができ、左,右の転倒防止ピン31,29の損傷の有無を常に確認することができる。
実施の形態では、キャノピ18の左ベース部材20および左支柱23と、右ベース部材21および右支柱24とは互いに離間して設けられ、キャノピ転倒防止機構28は、キャノピ取付台座15と左,右のベース部材20,21との間にそれぞれ設けられている。これにより、左支柱23と右支柱24とを有する2柱式のキャノピ18が、キャノピ取付台座15に対して前方に傾いたときに、左ベース部材20および右ベース部材21の傾きを、キャノピ転倒防止機構28によってそれぞれ抑えることができる。
実施の形態では、左,右のベース部材20,21の下面20A1,21A1には、ピン挿通孔20D,21Dの下端20D1,21D1とキャノピ取付台座15の上面15Aとの間に排水通路20G,21Gを形成する排水溝20F,21Fが形成されている。これにより、左,右のベース部材20,21のピン挿通孔20D,21D内に雨水等が浸入したとしても、この雨水等をピン挿通孔20D,21Dの下端20D1,21D1から排水通路20G,21Gを通じて外部に排出することができる。
実施の形態では、左,右の転倒防止ピン31,29は、キャノピ取付台座15に設けられた左,右のピン用インサート16,17の雌ねじ穴16A,17Aに螺着されるねじ軸部31A,29Aと、ねじ軸部31A,29Aの上側で左,右のベース部材20,21のピン挿通孔20D,21Dに挿通される転倒防止軸部31B,29Bとを有し、転倒防止軸部31B,29Bには、ピン挿通孔20D,21D内に位置して左,右の転倒防止ピン31,29を着脱するための工具係合部31D,29Dが設けられている。従って、キャノピ取付台座15に左,右のベース部材20,21が取付けられた状態では、左,右の転倒防止ピン31,29の工具係合部31D,29Dにスパナ等の工具を係合させることができず、左,右の転倒防止ピン31,29に対するいたずら、盗難等を防止することができる。
実施の形態では、キャノピ取付台座15には、ボルト22を用いて左,右のベース部材20,21が設けられ、左,右の転倒防止ピン31,29は、左,右のベース部材20,21のピン挿通孔20D,21Dに挿通された状態でキャノピ取付台座15に設けられ、左,右の転倒防止ピン31,29は、キャノピ18がキャノピ取付台座15に対して傾くときの支点となる左,右のベース部材20,21の前端32,33を結んだ仮想線34に沿って配置されている。これにより、キャノピ18が傾いたときに、左,右のベース部材20,21のピン挿通孔20D,21Dの内周面を、左,右の転倒防止ピン31,29の外周面に同時に当接させることができ、左,右の転倒防止ピン31,29に対し、キャノピ18が傾くときの荷重を均等に作用させることができる。この結果、キャノピ18の傾きを左,右の転倒防止ピン31,29によって確実に抑えることができ、かつ左,右の転倒防止ピン31,29の耐久性を高めることができる。
実施の形態では、上部旋回体4には、作業装置6との重量バランスをとるために運転席9の後側に位置してカウンタウエイト8が設けられ、キャノピ取付台座15はカウンタウエイト8の上面8Aに形成されている。これにより、カウンタウエイト8を利用してキャノピ18を取付けることができるので、キャノピ18を取付けるための部材を不要にすることができ、部品点数を削減することができる。
なお、実施の形態では、キャノピ転倒防止機構28を、左,右のベース部材20,21に形成されたピン挿通孔20D,21Dと、キャノピ取付台座15に設けられた雌ねじ穴16A,17Aと、左,右の転倒防止ピン31,29とにより構成した場合を例示している。図10は、参考例によるキャノピ転倒防止機構41を示している。
即ち、図10に示すキャノピ転倒防止機構41は、ベース部材42に形成された雌ねじ孔42Aと、キャノピ取付台座43のピン用インサート44に形成されたピン挿通孔44Aと、雌ねじ孔42Aに螺着されるねじ軸部45Aおよびピン挿通孔44Aに挿通される転倒防止軸部45Bを有する転倒防止ピン45とにより構成されている。これにより、キャノピ18と共にベース部材42が傾いたときには、転倒防止ピン45の転倒防止軸部45Bが、キャノピ取付台座43(ピン用インサート44)のピン挿通孔44Aの内周面に当接し、キャノピ18の傾きを抑えることができる。
実施の形態では、キャノピ取付台座15をカウンタウエイト8の上面8Aに設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばカウンタウエイト8とは別部材からなるキャノピ取付台座を旋回フレーム7上に設け、このキャノピ取付台座とキャノピを構成するベース部材との間にキャノピ転倒防止機構を設ける構成としてもよい。
実施の形態では、左支柱23と右支柱24とを有する2柱式のキャノピ18を備えた油圧ショベル1を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば1本の支柱を有するキャノピを備えた油圧ショベルにも適用することができる。
さらに、上述した実施の形態では、キャノピ18を備えた建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、キャノピを備えている建設機械であれば、例えばホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等の他の建設機械にも適用することができる。