以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、オフセット式の作業装置を備えた小旋回型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図19を参照しつつ詳細に説明する。ここで、油圧ショベルには、キャノピ仕様の機種とキャブ仕様の機種とが用意されている。
まず、オフセット式の作業装置を備えたキャノピ仕様の油圧ショベルについて、図1ないし図6を参照して説明する。
図1において、1はキャノピ仕様の小旋回型油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成され、上部旋回体3の前側には、後述するオフセット式の作業装置8が設けられている。
また、上部旋回体3は、図1ないし図3に示す如く、支持構造体をなす後述の旋回フレーム9と、該旋回フレーム9上に取付けられた後述のフロア部材11と、該フロア部材11上に設けられオペレータが着座する運転席4と、該運転席4の上方および右側方を覆うキャノピ5と、エンジン、油圧ポンプ等の機器類(図示せず)を覆う外装カバー6と、旋回フレーム9の後端部に設けられ作業装置8との重量バランスをとるカウンタウエイト7とにより大略構成されている。
この場合、図3に示すように、上部旋回体3の旋回中心をOとし、旋回中心Oからカウンタウエイト7の後端面7Aまでの距離によって規定される旋回半径をRとすると、上部旋回体3は、旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C内に収まるように、上方からみて略円形状に形成されている。
ここで、キャノピ5は、図6に示すように、運転席4と作業装置8との間に立設され運転席4を右側方から覆う側壁部5Aと、該側壁部5Aの上端側から左側に延び運転席4を上方から覆う天蓋部5Bとにより大略構成されている。また、キャノピ5は、右前ピラー5C、左後ピラー5D、右後ピラー5Eを有し、前記右前ピラー5Cの下端部には、後述する共通フロア12の前側建屋取付板16に対面する前側取付部5Fが左側に延びて設けられている。また、前側取付部5Fには、前側建屋取付板16に設けられた建屋取付孔20に対応してボルト挿通孔5Gが形成されている。一方、左後ピラー5D、右後ピラー5Eの下端部には、後側建屋取付板18に対面する後側取付板5Hが固着され、該後側取付板5Hには、後側建屋取付板18に設けられた建屋取付孔20に対応してボルト挿通孔5Gが形成されている。
そして、キャノピ5は、共通フロア12の前側建屋取付板16上に前側取付部5Fを配置し、該前側取付部5Fのボルト挿通孔5Gに挿通したボルト(図示せず)を前側建屋取付板16の建屋取付孔20に螺着することにより、前側をフロア部材11に固定している。また、キャノピ5の後側は、後側建屋取付板18上に後側取付板5Hを配置し、該後側取付板5Hのボルト挿通孔5Gに挿通したボルトを後側建屋取付板18の建屋取付孔20に螺着することによりフロア部材11に固定している。
また、カウンタウエイト7は、上部旋回体3の旋回半径Rを規定するもので、旋回半径Rの仮想円C内に収まるように円弧状に湾曲して左,右方向に延びる凸湾曲形状をなし、鋳造手段等によって一体形成されている。そして、カウンタウエイト7の上側部位は、外装カバー6とほぼ同一面を形成し、該外装カバー6と共にエンジン等の機器類を後方から覆っている。
このように、上部旋回体3は、キャノピ5、カウンタウエイト7の後端面7Aを旋回半径Rの仮想円C内に収めることにより小旋回型の油圧ショベル1を実現し、市街地等の狭い作業現場で旋回動作を行なった場合でも、キャノピ5、カウンタウエイト7等が周囲の障害物に衝突するのを防止できる構成となっている。
8は運転席4の右側から上部旋回体3の前側に延びて設けられたオフセット式の作業装置を示している。この作業装置8は、基端側が旋回フレーム9に俯仰動可能に取付けられたロアブーム8Aと、該ロアブーム8Aの先端側に左,右方向に揺動可能に取付けられたアッパブーム8Bと、該アッパブーム8Bの先端側に左,右方向に揺動可能に取付けられたアーム支持部材8Cと、該アーム支持部材8Cの先端側に回動可能に取付けられたアーム8Dと、該アーム8Dの先端側に回動可能に取付けられたバケット8Eと、ロアブーム8Aとアーム支持部材8Cとの間を連結するリンク8Fと、ブームシリンダ8G、オフセットシリンダ8H、アームシリンダ8J、バケットシリンダ8Kとにより大略構成されている。
そして、作業装置8は、オフセットシリンダ8Hを伸長、縮小させることによりアーム8Dをロアブーム8Aに対して左,右方向に平行移動させ、この状態でロアブーム8Aを俯仰動させつつアーム8D、バケット8Eを回動させることにより、側溝等の掘削作業を行なうものである。
9は上部旋回体3のベースとなるキャノピ仕様の旋回フレームで、該旋回フレーム9は、図4に示すように、後述の共通フレーム10のみ(単体)によって構成されるものである。この場合、共通フレーム10は、それ単体ではキャノピ仕様の旋回フレーム9を構成し、図10および図11に示す後述のガード部材35を取付けたときには、このガード部材35と共に後述するキャブ仕様の旋回フレーム34を構成するものである。
10はキャノピ仕様の旋回フレーム9を構成する共通フレームで、該共通フレーム10は、図3に示す上部旋回体3の旋回中心Oを中心とした仮想円C内に収まるように、上方からみてほぼ円形状に形成されている。また、共通フレーム10は、厚肉な鋼板等を用いて前,後方向に延びる略長方形状に形成された底板10Aと、該底板10A上に左,右に間隔をもって立設され、作業装置8のロアブーム8Aが取付けられる左,右の縦板10B,10Cと、前記底板10A、左縦板10Bの左側に設けられた左サイドフレーム10Dと、前記底板10A、右縦板10Cの右側に設けられた右サイドフレーム10Eと、左サイドフレーム10D上に設けられたフロア支持板10F等とにより強固な支持構造体として構成されている。
ここで、左サイドフレーム10Dは、仮想円C内に収まるように円弧状に湾曲して前,後方向に延びる左曲げ枠部10D1と、該左曲げ枠部10D1の前端側から底板10A、左縦板10Bに向けて左,右方向に延びる左前枠部10D2と、これら左曲げ枠部10D1と左前枠部10D2との間を接続する左コーナ部10D3とにより構成されている。また、右サイドフレーム10Eも、左サイドフレーム10Dと対称形状をなすように、右曲げ枠部10E1、右前枠部10E2、右コーナ部10E3により構成されている。
一方、フロア支持板10Fは、左サイドフレーム10Dの左前枠部10D2等の上方に左,右方向に延びて取付けられ、該フロア支持板10Fには、後述する共通フロア12の前側建屋取付板16が取付けられている。さらに、共通フレーム10の後側には、横置き状態で搭載されたエンジンを跨ぐように支持部材(図示せず)が取付けられ、該支持部材は、共通フロア12の後側建屋取付板18を支持するものである。
11はキャノピ仕様の旋回フレーム9を構成する共通フレーム10上に設けられたキャノピ仕様のフロア部材を示している。このフロア部材11は、図5に示すように、後述の共通フロア12のみ(単体)によって構成されるものである。この場合、共通フロア12は、それ単体ではキャノピ仕様のフロア部材11を構成し、図14等に示す後述の追加ブラケット40を取付けたときには、この追加ブラケット40と共に後述するキャブ仕様のフロア部材39を構成するものである。
12はキャノピ仕様のフロア部材11を構成する共通フロアで、該共通フロア12は、その左側部分が、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とした仮想円C内に収まるように、上方からみてほぼ円弧状に形成されている。また、共通フロア12は、後述の床板部13、レバー・ペダル取付板14、ブラケット取付板15、前側建屋取付板16、後部台座17、後側建屋取付板18、補強パイプ19等により大略構成されている。
13は運転席4に着座したオペレータの足元に敷設された床板部で、該床板部13は、左,右方向に長尺なほぼ長方形状に形成されている。また、床板部13の左前側部分は、前側に向けて右側に傾斜した段付状の傾斜縁部13Aとなり、該傾斜縁部13Aにより床板部13の左側は仮想円C内に収まることができる。
14は床板部13の前端に取付けられたレバー・ペダル取付板で、該レバー・ペダル取付板14は、左,右方向に延びる板体として形成されている。また、レバー・ペダル取付板14の左端部は、前側に向けて右側に傾斜した傾斜端14Aとなり、この傾斜端14Aによりレバー・ペダル取付板14は仮想円C内に収まっている。また、レバー・ペダル取付板14には、左,右方向のほぼ中央部に後述の走行レバー・ペダル22を取付けるための走行レバー・ペダル取付開口14Bが設けられ、該取付開口14Bの左,右両側に後述する他のペダル(図示せず)を取付けるためのペダル取付開口14C,14Dが設けられている。
また、15はレバー・ペダル取付板14の左側に設けられたブラケット取付板で、該ブラケット取付板15は、後述の追加ブラケット40が取付け、取外し可能に取付けられるものである。また、ブラケット取付板15は、前,後方向に延びた長方形状の板体からなり、レバー・ペダル取付板14の傾斜端14Aの傾斜角度に合せるように該傾斜端14Aの下側に溶接等の手段を用いて固着されている。さらに、ブラケット取付板15は、追加ブラケット40を介してキャブ33の荷重を受承するものであるから、強度を高めるために後述の前側建屋取付板16と補強パイプ19に対しても溶接されている。そして、ブラケット取付板15には、追加ブラケット40をボルト止めするためのボルト取付孔15Aが2個設けられている。
16はブラケット取付板15の前端に取付けられた前側建屋取付板で、該前側建屋取付板16は、左,右方向に延びる断面逆L字状の強度部材からなり、上側の取付面16Aには、キャノピ5またはキャブ33を取付けるための後述の建屋取付孔20が設けられている。
17は床板部13の後側に設けられ、後述する前部台座21と共に運転席4を支持する後部台座で、該後部台座17は、床板部13の後側から立上がった立上り壁17Aと、該立上り壁17Aの上端から後方に延びた運転席支持板17Bと、該運転席支持板17Bの後端から斜め上側に延びた背板部17C等とにより構成されている。
18は後部台座17の上端部から後側に張出した後側建屋取付板で、該後側建屋取付板18は、共通フレーム10の後側に取付けられた支持部材に支持されている。また、後側建屋取付板18には、キャノピ5の各後ピラー5D,5Eが取付けられている。
19は強度を増すために床板部13、後部台座17等に亘って設けられた補強パイプ(図5、図17に図示)を示している。この補強パイプ19は、その大部分が床板部13、後部台座17等の裏面側に隠れ、一部分だけが後部台座17から前側に露出している。また、補強パイプ19のうち、共通フロア12の左前側に位置する部位は、ブラケット取付板15の裏面に配置され、該ブラケット取付板15を支持している。
20は共通フロア12に設けられた複数個の建屋取付孔で、該各建屋取付孔20は、キャノピ5または後述のキャブ33をボルト止めするためのねじ孔(例えば溶接ナット等)として形成されている。そして、各建屋取付孔20は、例えば床板部13の傾斜縁部13Aの後側、床板部13の右前側、レバー・ペダル取付板14の右側、前側建屋取付板16の取付面16A、後側建屋取付板18に配設されている。
21は後部台座17の前側に取付けられる前部台座(図1中に図示)で、該前部台座21は、後部台座17と一緒に運転席4を支持するものである。ここで、本実施の形態では、組立作業性、メンテナンス作業性を良好にするために、後部台座17に対し前部台座21を着脱可能に取付ける構成としている。従って、後部台座17と前部台座21とを2部材とせず、両者を一体化した形状とすることもできる。
22はレバー・ペダル取付板14の走行レバー・ペダル取付開口14Bに取付けられた走行レバー・ペダル、23はレバー・ペダル取付板14のペダル取付開口14C,14Dに取付けられたオフセットペダル、予備ペダル等の他のペダル(左側のみ図示)をそれぞれ示している。さらに、24は運転席4の左,右両側に設けられた作業レバーを示している。
図1および図2に示すキャノピ仕様の油圧ショベル1は、上述の如き共通フレーム10のみ(単体)によって構成されたキャノピ仕様の旋回フレーム9を有し、また、共通フロア12のみによって構成されたキャノピ仕様のフロア部材11を有するものである。そして、油圧ショベル1は、下部走行体2上で上部旋回体3を旋回させつつ、オフセット式の作業装置8を用いて側溝等の掘削作業を行なうことができる。
この場合、図3に示すように、上部旋回体3のキャノピ5、カウンタウエイト7等は、旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C内に収められているので、例えば市街地等の狭い作業現場で上部旋回体3の旋回動作を行なった場合でも、キャノピ5、カウンタウエイト7等が周囲の障害物に衝突するのを防止することができる。
次に、オフセット式の作業装置を備えたキャブ仕様の油圧ショベルについて、図7ないし図19を参照して説明する。なお、このキャブ仕様の油圧ショベルのうち、上述したキャノピ仕様の油圧ショベル1と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図7において、31はキャブ仕様の小旋回型油圧ショベルで、該油圧ショベル31は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体32とにより大略構成され、上部旋回体32の前側にはオフセット式の作業装置8が設けられている。
また、上部旋回体32は、図7ないし図9に示す如く、後述の旋回フレーム34と、該旋回フレーム34上に取付けられた後述のフロア部材39と、該フロア部材39上に設けられオペレータが着座する運転席4と、該運転席4を収容する運転室を画成したキャブ33と、エンジン、油圧ポンプ等の機器類(図示せず)を覆う外装カバー6と、旋回フレーム34の後端部に設けられ作業装置8との重量バランスをとるカウンタウエイト7とにより構成されている。
ここで、キャブ33は、図12に示すように、前面部33A、後面部33B、左側面部33C、右側面部33D、上面部33E等によって囲まれた箱状に形成され、その内部は運転席4を収容する運転室が画成されている。また、キャブ33の下端部には、内向きに突出して底枠部33Fが設けられ、該底枠部33Fには、図13に示す如く、共通フロア12の建屋取付孔20に対応する複数個のボルト挿通孔33Gと、後述する追加ブラケット40のキャブ取付孔40Gに対応する1個のボルト挿通孔33Hとが設けられている。
また、ボルト挿通孔33Hは、図16中にハッチングで示すように、共通フロア12の床板部13、レバー・ペダル取付板14から左側に外れた部位に位置している。しかし、本実施の形態では、共通フロア12の左前側に追加ブラケット40を取付けることにより、フロア部材11と一体物を構成する追加ブラケット40にキャブ33の左前側部位を取付けることができる。
そして、図9に示すように、上部旋回体32は、旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円C内にほぼ収まるように、上方からみて略円形状に形成されている。しかし、キャブ33は、運転室内におけるオペレータの作業スペースを大きく確保するため、前面部33Aと左側面部33Cとが交わる左前角隅部33Jが、上述の仮想円Cから径方向外側に突出する構成となっている。
このため、キャブ仕様の油圧ショベル31は、上部旋回体32の旋回動作時にキャブ33の左前角隅部33Jが周囲の障害物と衝突するのを防止するため、後述する旋回フレーム34の形状を、キャノピ仕様の旋回フレーム9とは異ならせる構成となっている。また、キャブ33の左前側部位が共通フロア12から突出するために、後述のフロア部材39は、キャノピ仕様のフロア部材11とは異ならせる構成となっている。
34は上部旋回体32のベースとなるキャブ仕様の旋回フレームで、該旋回フレーム34は、図10および図11に示すように、キャノピ仕様の旋回フレーム9を構成する共通フレーム10と、該共通フレーム10に取付けられた後述のガード部材35とにより構成されている。
35はキャブ仕様の旋回フレーム34の場合にのみ共通フレーム10に取付けられるガード部材で、該ガード部材35は、図8ないし図11に示すように、取付部36と突出部37とにより構成され、共通フレーム10を構成する左サイドフレーム10Dの左前角隅部に取付けられている。また、ガード部材35の取付部36は、鋼板等を用いて左,右方向に延びる長方形状の板体として形成され、該取付部36には2個のボルト挿通孔36Aが穿設されている。一方、突出部37は、例えば略L字状に屈曲した中実体または中空体からなり、取付部36に溶接等の手段を用いて一体的に固着されている。
そして、ガード部材35は、取付部36のボルト挿通孔36Aに挿通したボルト38を左サイドフレーム10Dの左前枠部10D2に下側から螺着することにより、左サイドフレーム10Dの左前角隅部に固定することができる。この状態では、突出部37は、図3、図10に示すように、左サイドフレーム10Dの外周側から旋回半径Rの径方向外側に突出し、この旋回半径Rの仮想円Cから突出したキャブ33の左前角隅部33Jを下側から保護する構成となっている。これにより、上部旋回体32の旋回動作時には、キャブ33の左前角隅部33Jが周囲の障害物に衝突しようとしたときに、ガード部材35の突出部37が、キャブ33の左前角隅部33Jに先立って障害物に衝突することにより、キャブ33を障害物から保護することができる。
また、ガード部材35を、ボルト38を用いて左サイドフレーム10Dに着脱可能に取付けることにより、例えばガード部材35が障害物と衝突して変形、破損等を生じた場合でも、新たなガード部材35を左サイドフレーム10Dに交換して取付けることにより、キャブ仕様の旋回フレーム34を迅速かつ容易に修復できる構成となっている。
39はキャブ仕様の旋回フレーム34を構成する共通フレーム10上に設けられたキャブ仕様のフロア部材を示している。このフロア部材39は、図14、図15に示すように、キャノピ仕様のフロア部材11を構成する共通フロア12と、該共通フロア12に取付けられた後述の追加ブラケット40とにより構成されている。
40はキャブ仕様のフロア部材39の場合にのみ共通フロア12に追加して取付けられるキャブ支持用の追加ブラケット(以下、追加ブラケット40という)を示している。この追加ブラケット40は、図15、図17に示すように、共通フロア12の左前側に取付けられている。また、追加ブラケット40は、共通フロア12を構成する床板部13、レバー・ペダル取付板14、前側建屋取付板16を左側に延長するように設けられている。
即ち、追加ブラケット40は、図18、図19に示す如く、右側の端縁が床板部13の傾斜縁部13A、レバー・ペダル取付板14の傾斜端14Aに沿うように形成され、左側の端縁がキャブ33の左側面部33Cに合わせてほぼ直線的に形成された平板部40Aと、前側建屋取付板16に続くように該平板部40Aの前端に固着された断面逆L字状の強度板40Bと、共通フロア12のブラケット取付板15に対面するように平板部40Aの右端縁から下向きに延びた取付板部40Cと、前記平板部40Aの下面側に固着され前,後方向に延びた後部が左側に屈曲したL字状の縦リブ40Dと、前記平板部40Aと取付板部40Cとの間の剛性を高めるために平板部40A、取付板部40C、縦リブ40Dに固着された横リブ40Eとにより大略構成されている。
また、追加ブラケット40は、取付板部40Cにブラケット取付板15の各ボルト取付孔15Aに対応する2個のボルト挿通孔40Fを備え、平板部40Aの後側位置にキャブ33の底枠部33Fに形成されたボルト挿通孔33Hに対応するキャブ取付孔40Gを備えている。
ここで、追加ブラケット40は、平板部40A、取付板部40Cに対して強度板40B、縦リブ40D、横リブ40Eを溶接等の手段を用いて固着することにより、十分な強度を有する強度部材として形成されている。この場合、追加ブラケット40は、キャブ33自体の重量を受け止めて安定的に支持することができる。しかも、上部旋回体3を旋回動作させたときには、このときの遠心力の作用によってキャブ33の上側が外側に倒れようとし、フロア部材39の左前側には大きな荷重が作用する。このときにも、強度部材からなる追加ブラケット40は、遠心力による大きな荷重を受け止めることができ、フロア部材39上にキャブ33を安定的に支持することができる。
そして、追加ブラケット40は、図17に示す如く、その取付板部40Cを共通フロア12のブラケット取付板15に対面させ、この状態で取付板部40Cのボルト挿通孔40Fに挿通したボルト41をブラケット取付板15のボルト取付孔15Aに螺着することにより、フロア部材39の一部として共通フロア12の左前側部位に強固に取付けることができ、追加ブラケット40の分だけフロア面積を広げることができる。
これにより、キャブ仕様のフロア部材39は、追加ブラケット40の分だけ共通フロア12を左前側に拡張することができるから、キャブ33の底枠部33Fを確実に閉塞することができる。しかも、共通フロア12の床板部13、レバー・ペダル取付板14から左側に外れた部位に設けられたキャブ33のボルト挿通孔33Hは、追加ブラケット40のキャブ取付孔40Gに確実に取付けることができる。
本実施の形態によるキャノピ仕様の油圧ショベル1とキャブ仕様の油圧ショベル31とは、上述の如き構成を有するもので、次に、各油圧ショベル1,31の上部旋回体3,32を組立てる方法について説明する。
まず、キャノピ仕様の油圧ショベル1の上部旋回体3を組立てる場合には、図4に示すように共通フレーム10のみでキャノピ仕様の旋回フレーム9を形成し、該旋回フレーム9にエンジン、油圧ポンプ等の機器類、外装カバー6、カウンタウエイト7を取付け、旋回フレーム9の左側にキャノピ仕様のフロア部材11等を取付ける。
この場合、フロア部材11は、図5に示すように共通フロア12のみで形成し、該フロア部材12には運転席4、キャノピ5、走行レバー・ペダル22、作業レバー24等を組付ける。ここで、キャノピ5は、その前側取付部5Fを共通フロア12の前側建屋取付板16上に配置し、該前側取付部5Fのボルト挿通孔5Gに挿通したボルトを前側建屋取付板16の建屋取付孔20に螺着することにより、前側をフロア部材11に固定することができる。また、キャノピ5の後側は、フロア部材11を構成する共通フロア12の後側建屋取付板18上に後側取付板5Hを配置し、該後側取付板5Hのボルト挿通孔5Gに挿通したボルトを後側建屋取付板18の建屋取付孔20に螺着することによりフロア部材11に固定することができる。
このように組立てられたキャノピ仕様の油圧ショベル1の動作について説明する。オペレータは、運転席4に着座し、走行レバー・ペダル11を操作することにより、下部走行体2を走行させる。また、オペレータが左,右の作業レバー24を操作することにより、上部旋回体3を旋回動作させつつ、作業装置8を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。このときに、作業装置8を左,右方向にオフセット動作(平行移動)することにより、側溝掘り作業を行うことができる。
次に、キャブ仕様の油圧ショベル31の上部旋回体32を組立てる場合について説明する。まず、図10、図11に示すように、キャノピ仕様の旋回フレーム9に用いた共通フレーム10の左前角隅位置にガード部材35を取付けることによりキャブ仕様の旋回フレーム34を形成する。また、旋回フレーム34には、エンジン、油圧ポンプ等の機器類、外装カバー6、カウンタウエイト7を取付け、旋回フレーム34の左側にキャブ仕様のフロア部材39等を取付ける。
この場合、フロア部材39は、図14、図17等に示すように、キャノピ仕様のフロア部材11に用いた共通フロア12の左前側部位にキャブ支持用の追加ブラケット40を取付けることにより形成することができる。そして、フロア部材39には運転席4、走行レバー・ペダル22、作業レバー24、キャブ33等を組付ける。
ここで、キャブ33をフロア部材39に取付ける場合には、底枠部33Fに設けられた複数個のボルト挿通孔33Gに挿通したボルトを共通フロア12の建屋取付孔21に螺着し、左前側に位置する1個のボルト挿通孔33Hに挿通したボルトを追加ブラケット40のキャブ取付孔40Gに螺着する。これにより、キャブ33は、底枠部33Fに設けられた全てのボルト挿通孔33G,33Hを用いてフロア部材39に確実に固定することができる。
次に、このように組立てられたキャブ仕様の油圧ショベル31は、キャノピ仕様の油圧ショベル1と同様に、運転席4に着座したオペレータが走行レバー・ペダル22を操作することにより下部走行体2を走行させる。また、左,右の作業レバー24を操作することにより、上部旋回体3、作業装置8を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
この場合、キャブ仕様の油圧ショベル31は、図9に示すように、キャブ33の左前角隅部33Jが旋回中心Oを中心とした旋回半径Rの仮想円Cから突出している。しかし、この左前角隅部33Jの下側には、旋回フレーム34を構成するガード部材35が配置されている。このため、例えば市街地等の狭い作業現場で上部旋回体32の旋回動作を行なうことにより、キャブ33の左前角隅部33Jが周囲の障害物に衝突しようとしたとしても、ガード部材35の突出部37が、キャブ33の左前角隅部33Jに先立って障害物に衝突することにより、キャブ33を障害物から保護することができる。
また、ガード部材35が障害物と衝突して変形、破損等を生じた場合でも、ボルト38を用いて新たなガード部材35を左サイドフレーム10Dに交換して取付けることにより、キャブ仕様の旋回フレーム34を容易に修復することができる。
一方、キャブ仕様のフロア部材39は、共通フロア12の左前側に追加ブラケット40を追加して取付けているから、共通フロア12だけでは取付けることができなかったキャブ33のボルト挿通孔33Hに挿通したボルトを追加ブラケット40のキャブ取付孔40Gに螺着することができる。これにより、フロア部材39の一部をなし、十分な強度を有する追加ブラケット40は、キャブ33自体の重量を受け止めて安定的に支持することができる。しかも、上部旋回体3を旋回動作させたときの遠心力による大きな荷重も受け止めることができる。
このように、本実施の形態によれば、キャノピ仕様の油圧ショベル1は、共通フレーム10単体でキャノピ仕様の旋回フレーム9を構成することができ、また、共通フロア12単体でキャノピ仕様のフロア部材11を構成することができる。これにより、共通フロア12にエンジン、運転席4、カウンタウエイト7、共通フロア12等を搭載し、共通フロア12にキャノピ仕様の上部旋回体3を組立てることができる。
一方、キャブ仕様の油圧ショベル31は、共通フレーム10にガード部材35を取付けるだけでキャブ仕様の旋回フレーム34を構成することができ、また、共通フロア12に追加ブラケット40を取付けるだけでキャブ仕様のフロア部材39を構成することができる。
これにより、キャノピ仕様の旋回フレーム9、フロア部材11からキャブ仕様の旋回フレーム34、フロア部材39に簡単に仕様変更することができる。また、キャブ仕様からキャノピ仕様にも簡単に仕様変更することができる。
この結果、共通フレーム10にガード部材35を追加して取付けるか否か、共通フロア12に追加ブラケット40を追加して取付けるか否かにより、キャノピ仕様の油圧ショベル1とキャブ仕様の油圧ショベル31との2機種を作り分けることができる。これにより、キャノピ仕様の油圧ショベル1またはキャブ仕様の油圧ショベル31を製造するときの仕様変更を迅速かつ簡単に行うことができ、組立て作業性を向上し生産性を高めることができる。
しかも、少ない部品点数で旋回フレーム9,34、フロア部材11,39を形成することができるので、部品管理や工数管理を簡略化して製造コストを低減することができる。
また、共通フロア12に追加ブラケット40を取付けたときには、キャブ33の左前側部位を追加ブラケット40にボルト止めすることができる。従って、フロア部材39上にキャブ33を安定的に取付けることができる。しかも、追加ブラケット40は、平板部40A、強度板40B、取付板部40C、リブ40D,40Eを溶接することにより強度部材として形成でき、共通フロア12に対してボルト41により強固に取付けることができる。
この結果、旋回動作時の遠心力でキャブ33が外側に大きく揺れた場合でも、このときの大きな荷重を追加ブラケット40を介して共通フロア12で受け止めることができ、振動等に対する耐久性を向上することができる。
なお、実施の形態では、オフセット式の作業装置8を備えたキャノピ仕様の油圧ショベル1とキャブ仕様の油圧ショベル31とを例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図20に示す変形例によるキャブ仕様の油圧ショベル51のように、モノブーム式の作業装置52を備えた建設機械にも適用することができる。
即ち、油圧ショベル51に設けられたモノブーム式の作業装置52は、オフセット動作を行わないタイプの標準的な作業装置で、ブーム52A、アーム52B、バケット52Cおよび各シリンダ52D,52E,52Fにより大略構成されている。また、モノブーム式の作業装置52は、キャノピ仕様の油圧ショベルにも同様に適用することができるものである。
また、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1,31を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル、油圧クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。