以下、本発明の実施の形態による建設機械の旋回フレームを、後方小旋回式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械としての油圧ショベルで、この油圧ショベル1は、左,右の履帯2A,2A等を有した下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を用いて旋回可能に搭載された上部旋回体4と、後述の作業装置8とにより大略構成されている。
また、上部旋回体4は、後述の旋回フレーム11を有し、この旋回フレーム11上には、図1、図2に示す如くキャブ5、外装カバー6およびカウンタウエイト7等が設けられている、そして、キャブ5は、オペレータが乗降する操作運転部を構成し、その内部に運転室を画成している。また、外装カバー6は、エンジン、ラジエータおよび油圧ポンプ(いずれも図示せず)等が収容される機械室をカウンタウエイト7との間で画成するものである。
8は上部旋回体4の前部側に俯仰動可能に設けられたスイングポスト式の作業装置で、該作業装置8は、例えばスイングポスト8A、ブーム8B、アーム8Cおよびバケット8D等を備えている。そして、作業装置8のスイングポスト8Aは、図2に示す連結ピン9等を用いて後述のスイングブラケット18に対し左,右に揺動可能に取付けられている。
これにより、スイングポスト式の作業装置8は、図2に示す連結ピン9を中心にして左,右方向に揺動されると共に、ブーム8Bおよびアーム8Cが上,下に俯仰動され、先端側のバケット8Dによって土砂等の掘削作業(側溝堀を含む)を行うものである。
一方、下部走行体2の前側には、図2に示すように左,右の履帯2A間に位置して排土板10が上,下に回動可能に設けられている。そして、この排土板10は、土砂等の排土作業、地均し作業等を行うときに用いられる。また、排土板10は、油圧ショベル1(車両)の姿勢を安定させるアウトリガーとしても使用されるものである。
11は上部旋回体4のフレームを構成する旋回フレームで、該旋回フレーム11は、図3ないし図6に示す如く後述のセンタフレーム12と、左,右のサイドフレーム28,29等とにより構成されている。そして、旋回フレーム11のサイドフレーム28,29は、図3に示す旋回中心Oを基準とした後述の仮想円30(旋回半径Rの円)内に収めるように円弧状に湾曲して形成されている。
12は旋回フレーム11の中央部分を構成するセンタフレームで、該センタフレーム12は、図3ないし図6に示す如く平板状の板材により形成され、前,後方向に延びた底板13と、後述の前縦板16,17、スイングブラケット18、横板24、後縦板25,26およびウエイト取付部27等とにより構成されている。
そして、旋回フレーム11の底板13には、図3ないし図6に示す如く旋回中心Oに対して同心円状をなすように周方向で互いに離間した多数のボルト穴13A,13A,…が形成され、これらのボルト穴13Aには、図1に示す下部走行体2との間に旋回輪3を取付けるためのボルト(図示せず)等がそれぞれ螺着されるものである。
ここで、旋回フレーム11の底板13は、長さ方向(前,後方向)の中央部が下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に取付けられ、旋回中心Oを中心として左,右に旋回駆動される。また、底板13の前端部13Bは、図5に示す如く後述するスイングブラケット18の下板部20に溶接手段を用いて接合されるものである。
14,15は底板13の上面側に立設され、前,後方向に延びた左,右の縦板で、該縦板14,15は、後述のスイングブラケット18と横板24との間に位置して底板13上に立設された左,右の前縦板16,17と、後述する左,右の後縦板25,26等とによって構成されるものである。
ここで、左,右の前縦板16,17は、旋回フレーム11の曲げ剛性を高めるため、図3、図4に示す如く底板13の上面から上向きに立設されると共に、後述のスイングブラケット18と横板24との間を直線状をなして互いに斜めに延びている。そして、左,右の前縦板16,17は、図3に示す旋回中心Oに対し左,右両側に離間して略「ハ」の字状に延びるように配設され、その前端側は後述のスイングブラケット18に左,右両側から接合されている。
18は底板13および前縦板16,17の前端側に設けられたスイングブラケットで、該スイングブラケット18は、例えば鋳鋼等の材料を用いた鋳造部品として一体成形され、図4に示す如く上,下方向に延びる筒状のボス部19と、後述の下板部20および上板部21とからなる一体物により構成されている。
そして、スイングブラケット18のボス部19には、図4に示す如く前縦板16,17の前端側が外周側に突当てた状態で接合されている。また、スイングブラケット18のボス部19は、上下方向に貫通して延びるピン穴19Aを有し、このピン穴19A内には、図2に例示した連結ピン9が回動可能に挿嵌される。これにより、作業装置8のスイングポスト8Aは、スイングブラケット18に対して左,右に揺動可能に連結されるものである。
20はスイングブラケット18の一部をなす下板部で、該下板部20は、図4および図5に示すようにボス部19の下端外周側から後方へと延び、その左,右両側は略「ハ」の字状の末広がり形状をなしている。そして、下板部20には、前縦板16,17の前部下端側が衝合状態で接合されている。また、下板部20の下面側には、後述の前枠取付部23が設けられている。
21はスイングブラケット18の一部をなす上板部で、該上板部21は、下板部20と上,下で対向し、その左,右両側には、図4に示す如く前縦板16,17の前部上端側が隅肉溶接等の手段を用いて接合されている。また、上板部21の上面側には、後述の台座板39等が取付けられる。
22はスイングブラケット18の上板部21と底板13との間に設けられた閉塞板で、該閉塞板22は、鋼板等の板材を用いて形成され、図3および図6に示すように上板部21に対応して略「ハ」の字状の末広がり形状をなしている。そして、閉塞板22は、左,右の前縦板16,17間に位置して上板部21と底板13との間に配設されている。これにより、閉塞板22は、底板13と前縦板16,17とスイングブラケット18との間の接合強度や曲げ強度等を高め、センタフレーム12の前部側を頑丈な構造に形成するものである。
23はスイングブラケット18の下面側に設けられた前枠取付部で、該前枠取付部23は、図5に示す如くスイングブラケット18の下板部20を左,右方向に横切るように設けられている。そして、前枠取付部23の両端側には、後述するサイドフレーム28,29の左,右の前枠部32,34が左,右方向から嵌合して突合わせ溶接されるものである。
24は前縦板16,17の後端側に位置して底板13上に立設された横板で、該横板24は、底板13および前縦板16,17よりも薄肉の鋼板等を用いて形成され、図3、図4に示す如く底板13の上面と前縦板16,17の後端とにそれぞれ溶接手段を用いて接合されている。
そして、横板24は、底板13上で左,右の前縦板16,17間を互いに連結するものである。また、横板24は、後述のサイドフレーム28側に向けて突出する突出部24Aを有し、該突出部24Aの先端側は、後述の張出ビーム37と共にサイドフレーム28の長さ方向途中部位に溶接等の手段で固定されている。
25,26は横板24の後側に位置して底板13上に立設された左,右の後縦板で、該後縦板25,26は、図3、図4に示すように、横板24と後述のウエイト取付部27との間に左,右に離間して設けられ、下面側が底板13の後部側に接合されると共に、後端側はウエイト取付部27にそれぞれ接合されている。また、後縦板25,26は、前端側が横板24に接合され、前縦板16,17の後端との間で横板24を前,後方向から挟むように配設されている。
27は底板13の後端側に溶接等の手段により固着されたウエイト取付部で、該ウエイト取付部27は、図3、図4に示す如く左,右方向に延びる板材等により構成され、底板13の後部上面と後縦板25,26の後端との間に接合して設けられている。そして、ウエイト取付部27には、図1に示すカウンタウエイト7がボルト等を用いて着脱可能に取付けられるものである。
28,29は旋回フレーム11の一部を構成する左,右のサイドフレーム(以下、左サイドフレーム28,右サイドフレーム29という)で、該左サイドフレーム28と右サイドフレーム29とは、図3、図4に示す如く後述の張出ビーム37,38等を介してセンタフレーム12(底板13)の左,右両側に配設されるものである。
ここで、左サイドフレーム28は、図3に示す旋回中心Oを基準とした旋回半径Rの仮想円30内に収めるように後部側が円弧状に湾曲され前,後方向に延びた左曲げ枠部31と、センタフレーム12の前部から左,右方向へと直線状に延びた左側の枠部材からなる左前枠部32と、該左前枠部32の先端側(左,右方向の外側端部)を左曲げ枠部31の前端に接続する後述の左コーナ部材35とにより構成されている。
この場合、左サイドフレーム28の左曲げ枠部31は、図7に例示するように横断面が略三角形状またはD字状をなす筒状の中空フレーム材(パイプ材)を、図3ないし図6に示す旋回中心Oを基準として円弧状に曲げ加工することにより形成される。そして、左曲げ枠部31の長さ方向途中部位は、後述の張出ビーム37等を介して底板13の長さ方向中間部に連結されるものである。
また、左サイドフレーム28の左前枠部32も、図8に例示するように横断面が略三角形状またはD字状をなす筒状の中空フレーム材(パイプ状の枠部材)を用いて形成されている。しかし、左前枠部32は、図3ないし図6に示すように左,右方向へと直線状に延び、その内側端部は、スイングブラケット18の下板部20側に前枠取付部23を介して嵌合手段、溶接手段等により固定(連結)されるものである。
一方、右サイドフレーム29も、旋回中心Oを基準とした半径Rの仮想円30内に収めるように円弧状に湾曲され前,後方向に延びた右曲げ枠部33と、センタフレーム12の前部から左,右方向へと直線状に延びた右側の枠部材からなる右前枠部34と、該右前枠部34の先端側(左,右方向の外側端部)を右曲げ枠部33の前端に接続する後述の右コーナ部材36とにより構成されている。
そして、右サイドフレーム29の右曲げ枠部33は、左サイドフレーム28の左曲げ枠部31と同様に中空フレーム材を旋回中心Oを基準として円弧状に曲げ加工することにより形成される。また、右前枠部34についても、その内側端部がスイングブラケット18の下板部20側に前枠取付部23を介して嵌合手段、溶接手段等により固定(連結)されるものである。
35は左サイドフレーム28の左曲げ枠部31と左前枠部32との間に設けられた左コーナ部としての左コーナ部材で、この左コーナ部材35は、例えば鋳鋼等の材料を用いた中実な鋳造部品または鍛造部品として図9、図10に示すように、全体として略L字状に屈曲したブロック体として成形されている。そして、左コーナ部材35の両端側には、嵌合凸部35A,35Bが一体形成され、一方の嵌合凸部35Aは、左曲げ枠部31の前端に嵌合した状態で溶接手段により接合されるものである。
ここで、左コーナ部材35を鋳造手段で成形する場合には、例えば加熱溶融状態の鋳鋼材料を予め用意した成形型内に注入し、左コーナ部材35を図9、図10に示すように略L字状をなすブロック体として形成する。また、左コーナ部材35を鍛造手段で成形する場合には、例えば鍛造に適した鉄鋼材料に冷間鍛造等の加圧加工を施すことにより、左コーナ部材35を図9、図10に示すように略L字状をなすブロック体として形成すればよい。
また、他方の嵌合凸部35Bは、左前枠部32の先端に嵌合した状態で溶接手段により接合される。これにより、左サイドフレーム28の左曲げ枠部31と左前枠部32とは、左コーナ部材35を介して略L字状に屈曲した状態で接合されるものである。また、左コーナ部材35は、図3に示す如く左曲げ枠部31、左前枠部32よりも仮想円30の径方向に張出し寸法T1 だけ張出して形成されている。
この場合、左サイドフレーム28は、左コーナ部材35を介して連結された左曲げ枠部31の前側端部と左前枠部32の外側端部とが旋回半径Rの仮想円30から外側に突出している。そして、左サイドフレーム28は、後述の台座板39を介してキャブ5を下側から支持し、半径Rの仮想円30から外側に突出した左コーナ部材35側でキャブ5内の居住空間を広げるものである。
36は右サイドフレーム29の右曲げ枠部33と右前枠部34との間に設けられた右コーナ部としての右コーナ部材で、該右コーナ部材36も、左サイドフレーム28の左コーナ部材35とほぼ同様に鋳造または鍛造等の手段を用いて略L字状のブロック体として形成され、両端側の嵌合凸部36A,36Bが右曲げ枠部33の前端,右前枠部34の先端に嵌合した状態で溶接手段により接合されるものである。そして、右コーナ部材36も、図3に示す如く右曲げ枠部33、右前枠部34よりも仮想円30の径方向に張出し寸法T2 だけ張出して形成されている。
この場合、右コーナ部材36の張出し寸法T2 は、左コーナ部材35の張出し寸法T1 とほぼ等しい寸法に設定すればよい。また、左コーナ部材35の張出し寸法T1 と右コーナ部材36の張出し寸法T2 とは、例えば車両の機種等に応じて変更され、右コーナ部材36の張出し寸法T2 を左コーナ部材35の張出し寸法T1 よりも大きくしてもよく、逆に張出し寸法T1 を張出し寸法T2 よりも大きくする構成としてもよい。
37は左サイドフレーム28をセンタフレーム12に連結する左側の張出ビームで、該張出ビーム37は、基端側がセンタフレーム12の底板13等に接合され、先端側は左サイドフレーム28の左曲げ枠部31に接合されている。そして、張出ビーム37は、図4に示すように横板24の突出部24Aにも接合され、センタフレーム12に対する左サイドフレーム28の接合強度を突出部24Aと共に増大させるものである。
38は右サイドフレーム29をセンタフレーム12に連結する右側の張出ビームで、該張出ビーム38は、基端側がセンタフレーム12の底板13等に接合され、先端側は右サイドフレーム29の右曲げ枠部33に接合されている。そして、張出ビーム38は、センタフレーム12に対する右サイドフレーム29の接合強度を増大させるものである。
39は左サイドフレーム28の左曲げ枠部31および左前枠部32上に脚板40等を介して設けられた台座板で、該台座板39は、図4に示すように前縦板17と脚板40との間を左,右方向に延び、スイングブラケット18の上板部21等により下側から支持されている。そして、台座板39は、例えば横板24の上端等との間で図1、図2に示すキャブ5のフロア(床板)側を下側から支持するものである。
41,42は左,右の曲げ枠部31,33の後端側をセンタフレーム12の後部に接続する接続部材としての左,右の連結金具で、該連結金具41,42は、例えば鋼板等の溶接可能な金属板を図6に示す如くL字状に曲げ加工(プレス成形)することにより形成されている。そして、左,右の連結金具41,42は、曲げ枠部31,33の後端側をセンタフレーム12の後縦板25,26側に溶接手段を用いて接続するものである。
即ち、左側の連結金具41は、一方の端部が左曲げ枠部31の後端に溶接により接合され、他方の端部が後縦板25の後端側にブラケット板43を介して溶接により接合されている。また、右側の連結金具42は、一方の端部が右曲げ枠部33の後端に溶接により接合され、他方の端部が後縦板26の後端側にブラケット板44を介して溶接により接合されるものである。
本実施の形態による後方小旋回式の油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、旋回フレーム11の組立工程等について説明する。
まず、センタフレーム12の組立工程では、図4ないし図6に示す如く厚肉の鋼板等から略長方形状に形成された底板13に対して、その上面側に左,右の前縦板16,17をスイングブラケット18と共にそれぞれ溶接し、前縦板16,17の前端側はスイングブラケット18に対して左,右両側から隅肉溶接等により接合する。
また、左,右の前縦板16,17間には、スイングブラケット18の上板部21と底板13との間に斜め下向きに傾斜して延びる閉塞板22を溶接して設け、これにより、底板13、前縦板16,17およびスイングブラケット18の間にボックス構造をなす閉塞空間を形成する。
そして、このように閉塞板22を用いて旋回フレーム11(センタフレーム12)の前部側にボックス構造をなす閉塞空間を形成することにより、前述した底板13と前縦板16,17とスイングブラケット18との間の接合強度や曲げ強度等を高め、センタフレーム12の前部側を頑丈な構造に形成するものである。
一方、底板13の後部側には、図3、図4に示すように横板24および左,右の後縦板25,26等をそれぞれ溶接により立設し、これらの後縦板25,26の後部側には底板13の後端側に位置してウエイト取付部27を設ける。そして、該ウエイト取付部27には、図1に示すカウンタウエイト7を複数の取付ボルト等を用いて着脱可能に取付けることができる。
次に、このように組立てられたセンタフレーム12の左,右両側には、図3ないし図6に示すように左サイドフレーム28と右サイドフレーム29とを張出ビーム37,38等を介して溶接手段等により組付ける。
この場合、左サイドフレーム28は、図6に示す如く左曲げ枠部31の前端を左コーナ部材35の嵌合凸部35Aに嵌合させて突合わせ溶接等により接合し、左前枠部32の先端(外側端部)を左コーナ部材35の嵌合凸部35Bに嵌合させて突合わせ溶接等により接合する。
また、左前枠部32の内側端部は、スイングブラケット18の前枠取付部23に嵌合して突合わせ溶接等で接合し、左曲げ枠部31の後端側は、連結金具41を介して後縦板25の後端側にブラケット板43を介して溶接により連結する。そして、左曲げ枠部31の長さ方向途中部位を、図6に示すように横板24の突出部24A、張出ビーム37等を介して底板13の長さ方向中間部に接合する。
また、右サイドフレーム29は、図6に示す如く右曲げ枠部33の前端を右コーナ部材36の嵌合凸部36Aに嵌合させて突合わせ溶接等の手段により接合し、右前枠部34の先端(外側端部)を右コーナ部材36の嵌合凸部36Bに嵌合させて突合わせ溶接等により接合する。
また、右前枠部34の内側端部は、スイングブラケット18の前枠取付部23に嵌合して突合わせ溶接等で接合し、右曲げ枠部33の後端側は、連結金具42を介して後縦板26の後端側にブラケット板44を介して溶接により連結する。また、右曲げ枠部33の長さ方向途中部位は、図6に示すように張出ビーム38等を介して底板13の長さ方向中間部に接合する。
次に、このようにして組立てられた旋回フレーム11を備える後方小旋回式の油圧ショベル1の作動について図1および図2を参照して説明する。
まず、外装カバー6内に収容したエンジンによって油圧ポンプを駆動すると、油圧ポンプからの圧油が下部走行体2の走行用モータに給排されることにより、油圧ショベル1(車両)を前進または後退させるように走行駆動できる。
そして、土砂等の掘削作業を行うときには、油圧ポンプからの圧油を作業装置8の各シリンダ等に給排することにより、スイングポスト8Aに対しブーム8Bおよびアーム8Cを上,下に俯仰動させつつ、バケット8Dを回動させて土砂等を掘削する。
また、作業装置8を用いて例えば側溝堀作業等を行うときには、スイングシリンダ(図示せず)等を伸縮させることにより、旋回フレーム11のスイングブラケット18に対し、図2中に示す連結ピン9を中心にしてスイングポスト8Aを水平方向(左,右方向)に揺動し、これにより作業装置8全体が旋回フレーム11に対して左,右にスイングされるものである。
また、旋回フレーム11の左サイドフレーム28と右サイドフレーム29を、図3に示す如く予め決められた旋回半径Rの仮想円30内に収めるため円弧状に湾曲した左,右の曲げ枠部31,33等を用いて形成している。これにより、図2に示す上部旋回体4の旋回半径Rを小さくすることができ、市街地等の狭い作業現場でも上部旋回体4を旋回駆動して掘削作業等を容易に行うことができるという利点がある。
ところで、旋回フレーム11の左サイドフレーム28,右サイドフレーム29に用いる左,右の曲げ枠部31,33と左,右の前枠部32,34とを、従来技術のように1本のパイプ材を曲げ加工して形成するようにすると、パイプ材の曲げ加工に手間がかかり、作業性が悪い上に、曲げ加工に伴う変形、寸法誤差等が発生し易く、寸法精度を確保するのが難しくなってしまう。
そこで、本実施の形態にあっては、旋回フレーム11の左,右のサイドフレーム28,29を、それぞれ左,右の曲げ枠部31,33、前枠部32,34およびコーナ部材35,36により構成し、このコーナ部材35,36を鋳鋼等を用いて略L字状に屈曲した継手部材として成形すると共に、その両端側を曲げ枠部31,33と前枠部32,34とにそれぞれ溶接により接合する構成としている。
このため、例えば鋳鋼材からなる左,右のコーナ部材35,36を用いて曲げ枠部31,33と前枠部32,34との間を溶接手段で強固に接合することができ、例えば左,右のコーナ部材35,36を用いない場合(省略した場合)の溶接作業等に比較して、溶接時の作業性を高めることができる。
また、左,右の曲げ枠部31,33と左,右の前枠部32,34との間に設けるコーナ部材35,36を、例えば90度に近い角度で略L字状に予め屈曲させて成形することにより、例えばパイプ材(中空のフレーム材)等からなる曲げ枠部31,33を、図6に例示するように滑らかな円弧形状に曲げ加工するだけでよくなり、曲げ加工時の作業性も向上することができる。そして、曲げ枠部31,33等の曲げ加工に伴う変形、寸法誤差等を低減でき、寸法精度を容易に高めることができる。
また、この場合の左コーナ部材35は、左曲げ枠部31、左前枠部32よりも外側に張出し寸法T1 だけ張出す形状に形成しているので、例えば狭い作業現場等で上部旋回体4を旋回動作させるときに周囲の障害物が左コーナ部材35に接触するか否かで、旋回動作が可能かどうかを簡単に識別することができ、旋回フレーム11上に搭載するキャブ5、外装カバー6、カウンタウエイト7等が周囲の障害物に接触、干渉するのを未然に防止できると共に、これらを障害物等から保護することができる。また、他方の右コーナ部材36についても同様である。
しかも、左,右のコーナ部材35,36は、鋳鋼等を用いて中実な構造に形成しているために、溶接時の接合強度を高めることができると共に、機械的な強度も向上させることができ、仮に周囲の障害物等に接触した場合でも変形したり、破損、損傷したりするのを抑えることができる。
従って、本実施の形態によれば、鋳造または鍛造等の手段で略L字状に屈曲して成形された左コーナ部材35を、左サイドフレーム28の左曲げ枠部31と左前枠部32との間に設けることにより、左曲げ枠部31の曲げ加工時や溶接時等の作業性を向上できる。そして、右サイドフレーム29についても右コーナ部材36を用いることにより、同様に曲げ加工時や溶接時等の作業性を向上できる。
そして、このような左,右の曲げ枠部31,33、前枠部32,34およびコーナ部材35,36からなる左,右のサイドフレーム28,29を、予め決められた旋回半径Rの仮想円30内に収めるように円弧状に湾曲して形成でき、市街地等の狭い作業現場でも上部旋回体4の旋回半径Rを小さくして、土砂の掘削作業等を容易に行うことができる。
また、左,右のサイドフレーム28,29は、左,右の曲げ枠部31,33の後端側を連結金具41,42を介してセンタフレーム12の後縦板25,26側に溶接によって連結し、この場合の連結金具41,42を鋼板等からなる板状のプレス材により形成しているので、サイドフレーム28,29を組立てるときの寸法誤差等を容易に吸収でき、左,右のサイドフレーム28,29とセンタフレーム12とからなる旋回フレーム11の組立作業を効率的に行うことができる。
即ち、例えば左サイドフレーム28の左曲げ枠部31と左前枠部32との間を左コーナ部材35を介して接続(溶接)したときに、例えば左曲げ枠部31の後端とセンタフレーム12(後縦板25)の後端部との間に寸法のバラツキ等が発生しても、両者の間を板状のプレス材からなる連結金具41を用いて溶接(接続)することにより、寸法のバラツキ等を容易に吸収することができる。
そして、この点は、右サイドフレーム29についても同様であり、これによって、左,右のサイドフレーム28,29とセンタフレーム12からなる旋回フレーム11の製造、組立工程全体にわたった作業性を向上できると共に、製造コスト等を確実に低減することができる。
次に、図11ないし図16は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、サイドフレームのコーナ部に下面側に位置して凹窪部を形成する構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、51は本実施の形態で採用した旋回フレームを示し、この旋回フレーム51は、前述した第1の実施の形態で述べた旋回フレーム11とほぼ同様に、センタフレーム52と後述の左サイドフレーム57,右サイドフレーム62とにより構成されている。そして、センタフレーム52も、第1の実施の形態で述べたセンタフレーム12とほぼ同様に、底板13、縦板14,15、横板24および後述のスイングブラケット53等により構成されている。
53は底板13および前縦板16,17の前端側に設けられたスイングブラケットで、該スイングブラケット53も、第1の実施の形態で述べたスイングブラケット18とほぼ同様に、ピン穴54Aを有する筒状のボス部54、下板部55および上板部56等により構成されている。しかし、この場合のスイングブラケット53は、図14に示すように下板部55の下面に後述の前枠部59が溶接等の手段を用いて一体に接合されている点で異なるものである。
57は本実施の形態で採用した左サイドフレームで、該左サイドフレーム57は、第1の実施の形態で述べた左サイドフレーム28とほぼ同様に、左曲げ枠部58、前枠部59および後述の左コーナ部材60により構成されている。しかし、この場合の左曲げ枠部58は、左コーナ部材60が前,後方向に延びることにより、左コーナ部材60の長さ寸法分だけ前,後方向の長さが短くなっている。
また、この場合の前枠部59は、後述する右サイドフレーム62の前枠部を兼用するように左,右方向に長く延びる単一の枠部材(中空のフレーム材)を用いて形成されている。そして、前枠部59の長さ方向中間部は、図14に示すようにスイングブラケット53の下板部55を左,右方向に横切り、下板部55の下面に溶接手段を用いて接合されている。
そして、前枠部59の長さ方向一側は、後述の左コーナ部材60が嵌合して取付けられる左側取付部59Aとなり、前枠部59の長さ方向他側は、後述する右サイドフレーム62の右コーナ部材64が嵌合して取付けられる右側取付部59Bとなっている。また、前枠部59の上面側には、図13に示す如く台座板39が脚板40等を介して取付けられている。
60は左サイドフレーム57の左曲げ枠部58を前枠部59の左側取付部59Aに接続する左コーナ部材で、該左コーナ部材60は、第1の実施の形態で述べた左コーナ部材35とほぼ同様に鋳造または鍛造等の手段を用いて略L字状の中実なブロック体として構成され、その両端側には図15に示す如く嵌合凸部60A,60Bが一体形成されている。しかし、この場合の左コーナ部材60は、図12に示す如く左曲げ枠部58よりも外側に張出し寸法T3 だけ張出すと共に、前,後方向に長く延びている。
そして、左コーナ部材60は、その前側端部(嵌合凸部60B)が前枠部59の左側取付部59Aに嵌合して突合わせ溶接され、左コーナ部材60の後側端部(嵌合凸部60A)は、左曲げ枠部58の前側端部に嵌合して突合わせ溶接されている。また、左コーナ部材60の上面側にも、図13に示すように台座板39が脚板40等を介して取付けられている。
61は左コーナ部材60の下面側に設けられた凹窪部で、該凹窪部61は、図13ないし図16に示す如く左コーナ部材60の下面側を部分的に切取るようにして凹ませることにより形成されている。そして、この凹窪部61は、図11に例示した下部走行体2の履帯2Aと旋回フレーム51の前部(左コーナ部材60)下面との間に部分的に大きな隙間を形成する。これにより、キャブ5に乗降するオペレータは、この隙間を利用して履帯2A上に足を掛けて、上部旋回体4側に容易に乗降することが可能となるものである。
62は本実施の形態で採用した右サイドフレームで、該右サイドフレーム62は、第1の実施の形態で述べた右サイドフレーム29とほぼ同様に構成され、右曲げ枠部63および右コーナ部材64を有している。そして、右コーナ部材64も、第1の実施の形態で述べた右コーナ部材36と同様に鋳造または鍛造等の手段を用いて略L字状のブロック体として形成されている。しかし、この場合の右サイドフレーム62は、左サイドフレーム57と共通の前枠部59を有している点で異なっている。そして、右サイドフレーム62の右コーナ部材64は、前枠部59の右側取付部59Bに嵌合して突合わせ溶接されているものである。
かくして、このように構成される本実施の形態にあっても、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、左サイドフレーム57の左コーナ部材60に凹窪部61を設けているため、下部走行体2の履帯2Aとの間に部分的に大きな隙間を形成でき、キャブ5に乗降するオペレータは、この隙間を利用して履帯2A上に足を掛けて、上部旋回体4側に容易に乗降することができる。
また、左サイドフレーム57と右サイドフレーム62とは、その前枠部59を単一の枠部材を用いて構成しているので、前枠部59の長さ方向中間部をセンタフレーム52の前部下面(スイングブラケット53の下板部55)に溶接手段で接合することにより、左,右のサイドフレーム57,62をセンタフレーム52に対して一体に接合でき、両者の接合強度を高めることができると共に、旋回フレーム51全体の構造を簡素化することができる。
次に、図17は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、サイドフレームのコーナ部に外側に向けて突出するステップを設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、71は本実施の形態で採用した旋回フレームを示し、この旋回フレーム71は、前述した第1の実施の形態で述べた旋回フレーム11とほぼ同様に、センタフレーム12、右サイドフレーム29および後述の左サイドフレーム72により構成されている。
72は本実施の形態で採用した左サイドフレームで、該左サイドフレーム72は、第1の実施の形態で述べた左サイドフレーム28とほぼ同様に、左曲げ枠部73、左前枠部74および後述の左コーナ部材75により構成されている。しかし、この場合の左曲げ枠部73は、左コーナ部材75が前,後方向に延びることにより、左コーナ部材75の長さ寸法分だけ前,後方向の長さが短くなっている。
75は左サイドフレーム72の左曲げ枠部73と左前枠部74との間を接続する左コーナ部材で、該左コーナ部材75は、第1の実施の形態で述べた左コーナ部材35とほぼ同様に、鋳造または鍛造等の手段を用いて略L字状に屈曲したブロック体として成形されている。しかし、この場合の左コーナ部材75は、前,後方向に長く延びて形成され、左曲げ枠部73および左前枠部74にほぼ対応した外形状を有している。
そして、左コーナ部材75は、その前側端部が左前枠部74の外側端部に嵌合して突合わせ溶接され、左コーナ部材75の後側端部は、左曲げ枠部73の前側端部に嵌合して突合わせ溶接されている。また、左コーナ部材75の上面側には、図17に示すように台座板39が脚板40等を介して取付けられている。
76は左コーナ部材75の外側面に設けられたステップで、該ステップ76は、左コーナ部材75の外側面から台形状に張出した板状枠体として形成されている。そして、このステップ76は、例えばオペレータ等が図1に例示したキャブ5側に乗降するときに足を掛けて、乗り降りを容易に行うことができるものである。
かくして、このように構成される本実施の形態にあっても、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、左サイドフレーム72の左コーナ部材75にステップ76を設けているため、キャブ5に乗降するオペレータ等は、このステップ76に足を掛けて、上部旋回体4側に容易に乗降することができる。
また、この場合のステップ76は、左サイドフレーム72の左コーナ部材75から外側に張出しているので、例えば狭い作業現場等で上部旋回体4を旋回動作させるときに周囲の障害物がステップ76に接触するか否かで、旋回動作が可能かどうかを簡単に識別できる。そして、旋回フレーム71上に搭載するキャブ5、外装カバー6、カウンタウエイト7等が周囲の障害物に接触、干渉するのを、ステップ76によって未然に防止でき、これらを障害物等から保護することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、左曲げ枠部31、左前枠部32を図7、図8に示すような横断面の中空フレームを用いて形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば特開2003−129522号公報に記載のように、横断面が四角形、三角形、円形状の中空フレーム材またはコ字形状をなすフレーム材等を用いて、左,右の曲げ枠部および前枠部等を形成してもよい。そして、この点は第2,第3の実施の形態についても同様である。
また、前記第2の実施の形態では、左,右のサイドフレーム57,62の前枠部59を単一の枠部材により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1の実施の形態で述べた左,右の前枠部32,34とほぼ同様に、左,右2個の枠部材を用いて形成してもよい。一方、第1,第3の実施の形態にあっては、単一の枠部材を用いて前枠部を構成してもよいものである。
また、前記各実施の形態では、内部に運転室を画成する箱形状のキャブ5を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばオペレータが乗降する操作運転部は、キャノピ等を用いて運転席を上側から覆う構成としてもよい。
また、前記各実施の形態では、スイングポスト式の作業装置8が設けられた後方小旋回式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばオフセットブーム式の作業装置が設けられた油圧ショベル、標準機と呼ばれる中型の油圧ショベル等、種々の建設機械の旋回フレームにも適用してもよいものである。