以下、本発明の実施の形態に係る建設機械のフレーム構造体の代表例として、油圧ショベルの旋回フレームを例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
なお、図1ないし図8の第1の実施の形態では後方超小旋回型の油圧ショベルを示し、図9および図10の第2の実施の形態では超小旋回型の油圧ショベルを示し、図11および図12の第3の実施の形態では後方小旋回型の油圧ショベルを示している。そして、これら3種類の油圧ショベルの旋回フレームには、左縦板の後縦板が共通の部品として使用されている。
まず、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としての油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、後述する上部旋回体4が旋回動作したときにその後側が下部走行体2の車幅内に収まるように構成された例えば後方超小旋回型の油圧ショベルと呼ばれる機体である。また、後方超小旋回型の油圧ショベル1は、オペレータに広い室内空間を提供するために、後述するキャブ22が取付けられている。
そして、後方超小旋回型の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより大略構成されている。
また、作業装置5は、旋回フレーム11の前側に俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、該ブーム5Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム5Bと、該アーム5Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとにより構成されている。また、作業装置5は、左側に後述のキャブ22が配置される関係で、旋回フレーム11の右側寄りに位置して設けられている。
さらに、下部走行体2上に旋回輪3等を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4は、図1、図2に示す如く、後述の旋回フレーム11、キャブ22、カウンタウエイト23、エンジン24、建屋カバー30等によって大略構成されている。
次に、11は上部旋回体4のフレーム構造体を構成する旋回フレームを示している。この旋回フレーム11は、図3に示すように、左,右方向の中央部に位置して前,後方向に延びる後述の中央フレーム12と、該中央フレーム12の左,右両側に配設された左フレーム20,右フレーム21等とにより構成されている。
12は旋回フレーム11の左,右方向の中央部分を構成する中央フレームである。この中央フレーム12は、図4に示す如く、底板13と、該底板13の上面の左寄りに立設されて前,後方向に延びた左縦板14と、該左縦板14の右側に位置し前記底板13上に前,後方向に延びて立設された右縦板17とにより大略構成されている。
13は中央フレーム12のベースとなる底板で、該底板13は、厚肉な鋼板等を用いて前,後方向に延びる略長方形状の板体として形成されている。また、底板13は、下面側に旋回輪3が取付けられる。そして、旋回輪3によって旋回動作したときの旋回中心(センタジョイントの取付け位置)は、符号13Aで示す位置である。
14は底板13の上面の左寄りに立設されて前,後方向に延びた他方の縦板としての左縦板を示している。この左縦板14は、前,後方向の途中箇所に折曲部14Aを有し、この折曲部14Aから前側が前側部14Bとなり、折曲部14Aから後側が後側部14Cとなっている。また、左縦板14は、前側部14Bと右縦板17との間の間隔寸法を小さな寸法W1とし、後側部14Cは、折曲部14Aにより左側に平行移動(オフセット)されることで右縦板17との間の間隔寸法を大きな寸法W2と設定している。
これにより、左縦板14は、前,後方向の途中箇所が折曲げられ、全体的に略クランク形状または湾曲形状に形成されている。そして、左縦板14は、折曲部14Aの位置で分割した後述の前縦板15と後縦板16との2部材によって構成されている。
ここで、前述した前,後方向の途中箇所とは、底板13の旋回中心13Aよりも後側で、後述する4個のエンジン取付部19A,19B,19C,19Dのうち、左前側のエンジン取付部19Aの前側部位である。従って、途中箇所の位置は、図3、図4の平面視で左縦板14の前側から約55〜60%程度位置である。
15は左縦板14の前側部14Bを構成する前縦板である。この前縦板15は、前側が前,後方向にほぼ真直ぐに延びた直線板部15Aとなり、後側が前折曲板部15Bとなっている。また、直線板部15Aの上側は、図5に示すように正面視で山形状をなす作業装置取付部15Cとなっている。一方、前折曲板部15Bは、図4、図8に示す如く、右縦板17から離れる方向、即ち左方向に折曲げられている。これにより、前縦板15の直線板部15A(作業装置取付部15C)と右縦板17(作業装置取付部17A)との間の間隔寸法W1は、後述する後縦板16の直線板部16Bと右縦板17との間の間隔寸法W2よりも小さくなっている(W1<W2)。
このように、前縦板15の作業装置取付部15Cと右縦板17の作業装置取付部17Aとの間の間隔寸法W1を小さくすることにより、小型の作業装置5の取付間隔に適した値にすることができるから、前縦板15の作業装置取付部15Cと右縦板17の作業装置取付部17Bとの間には、別途アタッチメント等を用いることなく、作業装置5のブーム5Aを簡単に、かつ確実に取付けることができる。
また、左縦板14は、その途中箇所が2回の折曲げ加工によってクランク形状または湾曲形状に形成されている。しかし、前縦板15の前折曲板部15Bは、1回の折曲げ加工だけで形成できるから、鋼板等の厚板でも比較的に容易に加工でき、その加工精度も高めることができる。
また、前縦板15の前折曲板部15B側(後側)は、図7に示す如く、底板13を含む断面構造が逆T字状をなし、後縦板16との溶接部位でもある。そこで、前縦板15の前折曲板部15B側は、図7に示すように、その位置での高さ寸法H1を、右縦板17のうち底板13の旋回中心13Aよりも後側となる途中箇所の高さ寸法H2よりも大きな値にしている(H1>H2)。これにより、前縦板15の前折曲板部15B側は、十分な強度をもって形成することができる。しかも、前縦板15の前折曲板部15B側を高くしたことにより、後縦板16と溶接するときの溶接長を長くして溶接強度も高めることができる。
さらに、前縦板15の前折曲板部15Bは、緩やかな曲げ角度(鈍角)をもって折曲げているから、容易に所定の角度まで曲げることができる上に、折曲げ部分から前側を緩やかな立ち上がりにすることができ、この部分に応力が集中するのを防止することができる。
一方、16は左縦板14の後側部14Cを構成する後縦板である。この後縦板16は、前側が後折曲板部16Aとなり、中間部が前,後方向にほぼ真直ぐに延びた直線板部16Bとなり、後側が後述のカウンタウエイト23を取付けるカウンタウエイト取付部16Cとなっている。また、後縦板16は、図5に示すように前側が高くなった緩やかな台形状に形成されている。また、後折曲板部16Aは、図4、図8に示す如く、右縦板17に近付く方向、即ち右方向に折曲げられ、これにより、後縦板16の直線板部16Bと右縦板17との間の間隔寸法W2は、前縦板15の直線板部15Aと右縦板17との間の間隔寸法W1よりも大きくなっている(W2>W1)。
ここで、後方超小旋回型の油圧ショベル1は、上部旋回体4が小さくキャブ22を搭載した場合、旋回フレーム11の中央付近から左側の多くのスペースをキャブ22を設置するために使用するから、左縦板14を構成する前縦板15の作業装置取付部15Cと右縦板17の作業装置取付部17Aは、キャブ22と反対側となる右側に片寄せて配置する必要がある。しかし、後縦板16を左側に移動して右縦板17との間の間隔寸法W2を大きくすることにより、各縦板15,17の作業装置取付部15C,17Aが右方向に片寄った場合でも、カウンタウエイト23の重心に対し後縦板16のカウンタウエイト取付部16Cと右縦板17のカウンタウエイト取付部17Bを左,右方向に均等に配置することができる。これにより、重量物であるカウンタウエイト23を安定して支持することができる。
また、後縦板16の後折曲板部16Aは、前縦板15の前折曲板部15Bと同じ角度(鈍角)をもって折曲げられ、高さ寸法も右縦板17の対応する途中箇所の高さ寸法よりも大きな値に設定されている。これにより、後縦板16の後折曲板部16Aは、前縦板15の前折曲板部15Bと同様の作用効果を得ることができる。
次に、前縦板15と後縦板16との固着方法について説明すると、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを重ね合わせ、両者間に溶接を施す。このときには、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aを高く(上,下方向に長く)形成しているから、溶接長(溶接ビード)を十分に長くすることができ、溶接強度を高めることができる。また、強度面でも重ね合わせ構造によって十分な強度を得ることができる。一方、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを重ね合わせるときの重ね代を調整することにより、後縦板16の直線板部16Bと右縦板17との間の間隔寸法W2を簡単な作業で正確な寸法に仕上げることができる。
さらに、例えば前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを突き合わせて溶接する場合には、切削加工によって突合せ端を正確に仕上げ、溶接ビードを大きく盛る必要があるが、重ね合わせによる溶接では、各前折曲板部15B,16Aに仕上げ精度を必要としないから、容易に製造することができる。また、溶接位置を前,後方向に異ならせることができるから、応力を分散することができる。
17は底板13の上面の右寄りに立設されて前,後方向に延びた一方の縦板としての右縦板で、該右縦板17は、前,後方向に直線状に延びて形成されている。また、右縦板17の前側は、図6に示す背面視で山形状に立ち上がって作業装置5のブーム5Aを取付ける作業装置取付部17Aとなり、後側はカウンタウエイト23を取付けるカウンタウエイト取付部17Bとなっている。また、右縦板17の後側には、その上端縁に倣って短冊状のフランジ板17Cが一体的に溶接されている。これにより、右縦板17の後側部分は、図7に示す如く、底板13を含んでI字状の断面構造にすることができるから、高さ寸法H2が低くても、十分な強度を得ることができる。
18は左縦板14(前縦板15)の前側と右縦板17の前側との間に接合して設けられた補強板で、該補強板18の前側には、作業装置5のブームシリンダ5D用のシリンダブラケット18Aが固着されている。
19A,19B,19C,19Dは底板13の後側に設けられた4個のエンジン取付部(全体としてエンジン取付部19という)で、該各エンジン取付部19A,19B,19C,19Dは、左縦板14(後縦板16)と右縦板17との間に左前,右前,左後,右後に所定の間隔をもって配置されている。そして、各エンジン取付部19は、エンジンマウント(図示せず)を介して後述のエンジン24を支持するものである。ここで、エンジン24は、その構造上から縦板14,17を跨ぐことができないから、4個のエンジン取付部19は、全数を左縦板14と右縦板17との間に配置する必要がある。この構造上の理由からも後縦板16と右縦板17との間の間隔寸法W2が大きくなっている。
20は中央フレーム12の左側に設けられた左フレーム(図3参照)である。この左フレーム20の前側は、後述のキャブ22を搭載できるように設計されたもので、このキャブ22の底面形状に合せて長方形状に形成されている。即ち、左フレーム20は、左端に位置して前,後方向に直線状に延びたサイドフレーム20Aと、該サイドフレーム20Aを中央フレーム12に取付ける複数本の張出しビーム20Bと、前記サイドフレーム20Aの前端部に取付けられたキャブ支持部20Cとにより大略構成されている。
21は中央フレーム12の右側に設けられた右フレームで、該右フレーム21は、後述する燃料タンク27、作動油タンク28、制御弁29等を搭載するものである。この右フレーム21は、旋回動作したときに下部走行体2の車幅内に収まるように、その周囲が円弧状に湾曲している。即ち、右フレーム21は、右端に位置して前側が左向きに湾曲したサイドフレーム21Aと、該サイドフレーム21Aを中央フレーム12に取付ける複数本の張出しビーム21Bとにより大略構成されている。
次に、上述のように構成された旋回フレーム11に搭載される機器類について説明する。まず、22は旋回フレーム11の左前側に搭載されたキャブである。このキャブ22は、中型の油圧ショベル等で標準的に使用されているキャブと同等の大きさのものが適用され、操作性、居住性を確保できるように構成されている。
23は旋回フレーム11の後側に配設されたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト23は、作業装置5との重量バランスをとる重量物として形成されている。また、カウンタウエイト23は、旋回動作したときに下部走行体2の車幅内に収まるように、全体がほぼ円弧状に形成されている。そして、カウンタウエイト23は、左縦板14をなす後縦板16のカウンタウエイト取付部16Cと右縦板17のカウンタウエイト取付部17Bとに取付けられている。このときに、後縦板16と右縦板17との間の間隔寸法W2は、左縦板14の曲げ加工によって広幅にすることができるから、旋回フレーム11に対してカウンタウエイト23を安定して取付けることができる。
24はキャブ22とカウンタウエイト23との間に位置して旋回フレーム11の後側に設けられたエンジンを示している。このエンジン24は、左,右方向に延在する横置き状態で中央フレーム12の後側に搭載されている。そして、エンジン24は、防振マウント(図示せず)を介して各エンジン取付部19に取付けられている。また、エンジン24の右側には油圧ポンプ25が取付けられ、左側にはラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器26が配設されている。
27は油圧ポンプ25の前側に位置して旋回フレーム11の右フレーム21に搭載された燃料タンク、28は燃料タンク27の左隣に配設された作業装置5等を動作させるための作動油を貯える作動油タンクをそれぞれ示している。また、各タンク27,28の前側には制御弁29が配設されている。また、30はキャブ22とカウンタウエイト23との間に位置して旋回フレーム11に設けられた建屋カバーで、該建屋カバー30は、エンジン24等を覆うものである。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、旋回フレーム11を含む上部旋回体4の組立作業について説明する。
まず、旋回フレーム11の中央フレーム12を組立てる場合には、底板13上に左,右の縦板14,17を立設し、溶接手段を用いて底板13に一体的に固着する。このときに、左縦板14は、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを重ね合わせるときの重ね代を調整することにより、後縦板16と右縦板17との間の間隔寸法W2、即ち、各カウンタウエイト取付部16C,17B間の間隔寸法を簡単な作業で正確な寸法に仕上げることができる。そして、中央フレーム12を組立てたら、該中央フレーム12の左,右両側に左フレーム20、右フレーム21を溶接することにより、旋回フレーム11を組立てることができる。
このようにして、旋回フレーム11を組立てたら、前縦板15の作業装置取付部15Cと右縦板17の作業装置取付部17Aとの間に作業装置5のブーム5Aを取付ける。この場合、左縦板14の前側部14Bと右縦板17との間の間隔寸法W1を小さくしているから、狭幅な作業装置5でも、各作業装置取付部15C,17Aは別途アタッチメント等を用いることなく、簡単に、かつ確実に取付けることができる。
また、後縦板16のカウンタウエイト取付部16Cと右縦板17のカウンタウエイト取付部17Bにカウンタウエイト23を取付ける。ここで、小さな旋回フレーム11上に標準仕様のキャブと同等なキャブ22を搭載しているために、作業装置5を右側に片寄せて配置する必要がある。この場合には、通常、カウンタウエイト23の取付位置も右側に片寄ってしまい、旋回フレーム11に対して安定的に取付けることができない。
しかし、左縦板14は、折曲部14Aによって後側部14C、即ち、後縦板16のカウンタウエイト取付部16Cを左側に移動し、該各カウンタウエイト取付部16C,17Bによるカウンタウエイト23の取付幅寸法(後縦板16と右縦板17との間の間隔寸法W2)を大きくしている。これにより、重量物であるカウンタウエイト23の重心位置を旋回フレーム11の左,右方向のほぼ中央に配置できるから、該カウンタウエイト23を安定して支持することができる。
次に、第1の実施の形態による油圧ショベル1を用いて作業を行う場合について説明する。この場合、オペレータは、キャブ22に搭乗して走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)を操作することにより、作業装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
以上のように、第1の実施の形態によれば、左縦板14は、折曲部14Aとなる前,後方向の途中箇所で前縦板15と後縦板16とに分割し、前記前縦板15の後側位置には左向きに折曲げて前折曲板部15Bを設け、後縦板16の前側位置には右向きに折曲げて後折曲板部16Aを設ける。そして、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを一体的に固着することにより、前,後方向の途中箇所がクランク形状または湾曲形状に折曲げられた左縦板14を形成することができる。
まず、左縦板14をクランク形状または湾曲形状に折曲げているから、前縦板15と右縦板17との距離を小さくすることができ、後縦板16と右縦板17との距離を大きくすることができる。即ち、前縦板15の直線板部15A(作業装置取付部15C)と右縦板17(作業装置取付部17A)間の間隔寸法W1小さくでき、この前側の間隔寸法W1よりも後縦板16の直線板部16B(カウンタウエイト取付部16C)と右縦板17(カウンタウエイト取付部17B)との間の間隔寸法W2を大きな値にすることができる。
これにより、狭幅な作業装置5を取付ける場合でも、この作業装置5のブーム5Aの取付間隔に合せて作業装置取付部15C,17A側の間隔寸法W1を小さくでき、各縦板14,17の前側に作業装置5を容易に、かつ確実に取付けることができる。
また、小さな旋回フレーム11上に標準仕様のキャブと同等なキャブ22を搭載した場合には、作業装置5を右側に片寄せて配置する必要がある。しかし、左縦板14は、折曲部14Aによって後縦板16を左側に移動しているから、旋回フレーム11を構成する底板13の旋回中心13Aを挟んだ位置に各縦板16,17のカウンタウエイト取付部16C,17Bを配置することができる。これにより、重量物であるカウンタウエイト23の重心位置を旋回フレーム11の左,右方向のほぼ中央に配置でき、また広い取付幅で支持できるから、作業装置5を右側に片寄せたために重量バランスがとり難い場合でも、カウンタウエイト23を安定して支持することができる。
この結果、旋回フレーム11を構成する左,右の縦板14,17は、作業装置5の取付間隔とカウンタウエイト23の取付間隔の両方に対応することができるから、スペーサ、ブラケット等のアタッチメントを別途用いることなく、作業装置5とカウンタウエイト23の両方を容易に、かつ確実に取付けることができ、取付強度、組立作業性等を向上することができる。
また、前縦板15に対して後縦板16を左側に平行移動させる手段として、各前折曲板部15B、後折曲板部16Aを折曲げる構成としているから、この折曲げ部分を溶接によって形成した場合に比較して剛性を高めることができる。これにより、各縦板14,17等は、板厚寸法を大きくしたり、補強を施したりする必要がないから、組立作業性を向上でき、また旋回フレーム11の重量を軽くして動作性能を高めることができる。
しかも、左縦板14は、前,後方向の途中箇所で前縦板15と後縦板16とに分割しているから、前縦板15の後側に1回の曲げ加工で前折曲板部15Bを形成でき、後縦板16の前側に1回の曲げ加工で後折曲板部16Aを形成できる。そして、前縦板15の前折曲板部15Bと後縦板16の後折曲板部16Aとを一体的に固着することにより左縦板14を形成することができる。従って、前縦板15と後縦板16に対しそれぞれ1回の簡単な曲げ加工を施すだけで、複雑なクランク形状または湾曲形状の折曲げ構造を有する左縦板14を簡単に、かつ正確に形成することができる。
また、左縦板14は、前縦板15の前折曲板部15B、後縦板16の後折曲板部16Aを含む近傍の折曲げ位置の高さ寸法H1を、右縦板17の途中箇所の高さ寸法H2よりも大きな値にしている。これにより、各前折曲板部15B,16Aの位置は、高く形成した分だけ構造的な強度を高めることができる上に、溶接長を長くすることができるから、十分な剛性を得ることができる。
さらに、前縦板15と後縦板16とは、各前折曲板部15B,16Aを重ね合わせた状態で一体的に固着する構成としているから、溶接手段を用いて固着する場合には、溶接長を十分に確保することができ、高い溶接強度を得ることができる。また、前縦板15と後縦板16との重ね合わせ代を調整することにより、左縦板14を正確な寸法で仕上げることができ、寸法精度、組立作業性等を向上することができる。
次に、図9および図10は、本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、前述した第1の実施の形態による左縦板の後縦板を、超小旋回型の油圧ショベルの旋回フレームに共通の部品として使用したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、31は第2の実施の形態による油圧ショベルを示している。この油圧ショベル31は、上部旋回体32が旋回動作したときにオフセット式の作業装置33を含む全体が下部走行体2の車幅内に収まるように構成された例えば超小旋回型の油圧ショベルと呼ばれる機体である。また、超小旋回型の油圧ショベル1は、旋回半径を小さくするために、後述するキャブ44が取付けられている。
また、超小旋回型の油圧ショベル31は、第1の実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1と、作業装置33、上部旋回体32の旋回フレーム34、キャブ44等が相違している。一方、超小旋回型の油圧ショベル31は、第1の実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1の旋回フレーム11を構成する左縦板14の後縦板16を共通の部品として使用している。
ここで、超小旋回型の油圧ショベル31の作業装置33は、後述の旋回フレーム34の前側に俯仰動可能に取付けられた第1ブーム33Aと、該第1ブーム33Aの先端部に左,右方向に揺動可能に取付けられた第2ブーム33Bと、該第2ブーム33Bの先端部に左,右方向に揺動可能に取付けられた第3ブーム33Cと、該第3ブーム33Cの先端部に回動可能に取付けられたアーム33Dと、該アーム33Dの先端部に可動可能に取付けられたバケット33Eと、第1ブーム33Aに対して第3ブーム33Cを配向動作(オフセット動作)させるオフセットリンク33Fと、これらを駆動するブームシリンダ33G、アームシリンダ33H、バケットシリンダ33J、オフセットシリンダ33Kとにより構成されている。
34は上部旋回体32のベースとなる第2の実施の形態によるフレーム構造体としての旋回フレームを示している。この超小旋回型の旋回フレーム34は、図10に示すように、後述の中央フレーム35、左フレーム42、右フレーム43等により構成されている。ここで、超小旋回型の旋回フレーム34には、第1の実施の形態による左縦板14の後縦板16が共通の部品として使用されている。
35は超小旋回型の旋回フレーム34の中央フレームである。この中央フレーム35は、底板36と、折曲部37A、前側部37Bおよび後側部37Cからなる左縦板37と、該左縦板37の前側部37Bをなす前縦板38と、左縦板37の後側部37Cをなす前述の後縦板16と、右縦板39、補強板40、4個のエンジン取付部41A,41B,41C,41D(全体としてエンジン取付部41という)等とにより構成されている。
ここで、中央フレーム35は、第1の実施の形態による中央フレーム12の後縦板16を共通部品として使用することができる。また、底板36には、旋回動作したときの旋回中心36Aがあり、この旋回中心36Aとエンジン取付部41との間の途中箇所に前縦板38と後縦板16の折曲げ位置が配置されている。
42は中央フレーム35の左側に設けられた左フレームで、該左フレーム42は、超小旋回型の旋回フレーム34で専用に用いるものである。この左フレーム42の左前側は、旋回したときに下部走行体2の車幅内に収まるように、その周囲が円弧状に湾曲している。即ち、左フレーム42は、左端に位置して前側が右向きに湾曲したサイドフレーム42Aと、該サイドフレーム42Aを中央フレーム35に取付ける複数本の張出しビーム42Bと、前記サイドフレーム42Aの前端部に取付けられたキャブ支持部42Cとにより大略構成されている。
43は中央フレーム35の右側に設けられた右フレームである。この右フレーム43は、第1の実施の形態による右フレーム21とほぼ同様に、サイドフレーム43A、張出しビーム43B等により構成されている。
44は旋回フレーム34の左前側に搭載された第2の実施の形態による超小旋回型のキャブである。このキャブ44は、旋回したときに下部走行体2の車幅内に収まるように、その左側面側が前側に向けて右側に円弧状に湾曲している。これにより、キャブ44は、下部走行体2が走行可能な場所であれば、周囲の部材と干渉することなく、旋回動作することができる。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、第1の実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1の旋回フレーム11を構成する左縦板14の後縦板16を、超小旋回型の油圧ショベル31の旋回フレーム34に共通部品として用いることができる。これにより、旋回フレーム34の部品点数を削減でき、組立作業性の向上、製造コストの低減等を図ることができる。
次に、図11および図12は、本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、前述した第1の実施の形態による左縦板の後縦板を、後方小旋回型の油圧ショベルの旋回フレームに共通の部品として使用したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図11において、51は第3の実施の形態による油圧ショベルを示している。この油圧ショベル51は、上部旋回体52が旋回動作したときにその後側が下部走行体2の車幅から大きく突出しないように構成されている。また、本実施の形態による後方小旋回型の油圧ショベル51は、前側にスイング式の作業装置53を備えている。
また、後方小旋回型の油圧ショベル51は、第1の実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1と、作業装置53、上部旋回体52の旋回フレーム54等が相違している。一方、後方小旋回型の油圧ショベル51は、第1の実施の形態による後方超小旋回型の油圧ショベル1の旋回フレーム11を構成する左縦板14の後縦板16を共通の部品として使用している。
ここで、スイング式の作業装置53は、後述の旋回フレーム54の前部に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト53Aと、該スイングポスト53Aに俯仰動可能に取付けられたブーム53Bと、該ブーム53Bの先端部に回動可能に取付けられたアーム53Cと、該アーム53Cの先端部に可動可能に取付けられたバケット53Dと、これらを駆動するブームシリンダ53E、アームシリンダ53F、バケットシリンダ53G、スイングシリンダ(図示せず)とにより構成されている。
54は上部旋回体52のベースとなる第3の実施の形態によるフレーム構造体としての旋回フレームを示している。この後方小旋回型の旋回フレームは、図12に示すように、後述の中央フレーム55、左フレーム62、右フレーム63等により構成されている。ここで、後方小旋回型の旋回フレーム54には、第1の実施の形態による左縦板14の後縦板16が共通の部品として使用されている。
55は後方小旋回型の旋回フレーム54の中央フレームである。この中央フレーム55は、底板56と、折曲部57A、前側部57Bおよび後側部57Cからなる左縦板57と、該左縦板57の前側部57Bをなす前縦板58と、左縦板57の後側部57Cをなす前述の後縦板16と、右縦板59、4個のエンジン取付部60A,60B,60C,60D(全体としてエンジン取付部60という)等とにより構成されている。また、中央フレーム55には、左,右の縦板57,59の前側に位置して作業装置53のスイングポスト53Aを支持する作業装置取付部としてのポスト支持部61が設けられている。
ここで、中央フレーム55は、第1の実施の形態による中央フレーム12の後縦板16を共通部品として使用することができる。また、底板56には、旋回動作したときの旋回中心56Aがあり、この旋回中心56Aとエンジン取付部60との間の途中箇所に前縦板58と後縦板16の折曲げ位置が配置されている。
62は中央フレーム55の左側に設けられた左フレームで、該左フレーム62は、第1の実施の形態による左フレーム20とほぼ同様に、サイドフレーム62A、張出しビーム62B、キャブ支持部62C等により構成されている。
また、63は中央フレーム55の右側に設けられた右フレームである。この右フレーム63は、第1の実施の形態による右フレーム21とほぼ同様に、サイドフレーム63A、張出しビーム63B等により構成されている。
さらに、64は旋回フレーム54の左前側に搭載されたキャブで、該キャブ64は、第1の実施の形態による後方超小旋回型のキャブ22とほぼ同様に構成されている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、後方超小旋回型の油圧ショベル1の旋回フレーム11を構成する左縦板14の後縦板16を、後方小旋回型の油圧ショベル51の旋回フレーム54に対しても、共通部品として用いることができる。
なお、第1の実施の形態では、他方の縦板としての左縦板14は、前,後方向の途中箇所に位置する折曲部14Aで前縦板15と後縦板16とに分割し、前記前縦板15の後側位置に1回の曲げ加工で左向きの前折曲板部15Bを設け、後縦板16の前側位置に1回の曲げ加工で右向きの後折曲板部16Aを設け、各前折曲板部15B,16Aを一体的に固着することにより、前,後方向の途中箇所をクランク形状または湾曲形状に折曲げた場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限らず、例えば1枚の板材に対して2回の曲げ加工を施すことによりクランク形状または湾曲形状の左縦板を形成する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用できるものである。
また、第1の実施の形態では、左縦板14の前,後方向の途中箇所(折曲部14A)を、底板13の旋回中心13Aよりも後側で、4個のエンジン取付部19A,19B,19C,19Dのうち、左前側のエンジン取付部19Aの前側部位であり、図4の平面視で左縦板14の前側から約55〜60%程度の位置とした場合を例示した。
しかし、本発明はこれに限らず、例えば図13に示す変形例のように、左縦板71は、前縦板72と後縦板73とを折曲げて接続する前,後方向の途中箇所(折曲部71A)を、例えば左前側のエンジン取付部19Aから前側に離間した位置で、平面視で左縦板71の前側から約45〜55%程度の位置とする構成としてもよい。このように、左縦板の前,後方向の途中箇所(折曲部71A)の位置は、キャブ、エンジン、タンクの位置、大きさ、配管の取り回し等によって機種、仕様毎に決定されるものであり、上述した範囲に限定されるものでない。
また、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1,31,51を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルの旋回フレームに適用してもよい。さらに、油圧ショベル以外にも、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械のフレーム構造体にも広く適用することができる。