JP6872845B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
Siを構成元素に含む負極活物質は、Liイオンと固溶体や金属間化合物を形成することにより、Liイオンを多量に貯蔵することができる。
この発明について、(0003)〜(0005)には、リチウムイオン二次電池における放電容量低下の原因について、「SEI(surface electronic interphase)と呼ばれる皮膜が負極活物質上に生成されるが、この皮膜が過剰に生成されて抵抗が増大することが容量低下の一員となりやすい。」、特に、「高容量を持つことで注目されているシリコンやスズを含有する負極に対しては、不十分であった。」と記載されている。
そして、実施例には、上記の「環状硫酸エステル」として、「1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド」を含む非水電解液と、シリコン/酸化シリコン=1/2(重量比)の混合物を負極活物質とするリチウムイオン二次電池が記載され、400サイクル後の容量維持率が優れ、サイクル特性が良好であったと記載されている。
環状硫酸エステル誘導体としては、(0033)に「1,2−プロパンジオール硫酸エステル」が例示され、負極活物質としては、(0044)に「黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;Si、Snなどのリチウムと合金化可能な元素で構成される金属または該元素を含有する合金あるいは酸化物」が例示されている。実施例4には、「1,2−プロパンジオール硫酸エステル」を含有する非水電解液と、人造黒鉛である負極活物質とを有する非水電解質二次電池が記載され、200サイクル目の容量維持率が向上したことが記載されている。
[化1]R1−A−R2(1)
(式中、‥R1とR2は互いに結合して−A−とともに不飽和結合を含んでいてもよい環状構造を形成し、Aは式(2)〜(5)のいずれかで表される構造を有する)」の発明が記載されており、Aが式(5)である場合の具体例として、(0019)には、「硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸エチルメチル、硫酸メチルプロピル、硫酸エチルプロピル、硫酸メチルフェニル、硫酸エチルフェニル、硫酸フェニルプロピル、硫酸ベンジルメチル、硫酸ベンジルエチル等の鎖状硫酸エステル;エチレングリコール硫酸エステル、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、1,2−ブタンジオール硫酸エステル、1,3−ブタンジオール硫酸エステル、2,3−ブタンジオール硫酸エステル、フェニルエチレングリコール硫酸エステル、メチルフェニルエチレングリコール硫酸エステル、エチルフェニルエチレングリコール硫酸エステル等の環状硫酸エステル;および上記鎖状硫酸エステルや環状硫酸エステルのハロゲン化物を挙げることができる。」と記載されている。
また、負極を構成する材料として、(0023)には、炭素質材料と並んで、「酸化錫、酸化珪素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料」が例示されている。
実施例には、エチレンサルファイト(ES)、ジメチルサルファイト(DMS)、スルフォラン(SLA)、スルフォレン(SLE)、1,3−プロパンスルトン(PSL)、環状カーボネートであるエチレンカーボネート(EC)、鎖状カーボネートであるジエチルカーボネート(DEC)、環状エステルであるγ−ブチロラクトン(GBL)、鎖状エステルであるプロピオン酸メチル(MP)、環状エーテルであるテトラヒドロフラン(THF)、鎖状エーテルであるジメトキシエタン(DME)を表1に示す組成で混合した溶媒を用いた電解液と人造黒鉛を負極材料とする非水電解液電池が記載されており、サイクル特性に優れた二次電池を提供できることが記載されている。
この発明は、サイクル特性と高温貯蔵特性の向上を解決しようとするものであり、負極活物質については、(0021)に、「黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、Si、Snなどのリチウムと合金化可能な金属又はその合金」が例示され、実施例として、「人造黒鉛」が用いられている。
特許文献2、3の実施例において用いられている負極活物質は黒鉛のみであって、シリコン酸化物を負極活物質とする負極の初期を除く充放電サイクル中の不可逆容量について、示唆するものでない。
特許文献4には、非水電解液に1,2−プロパンジオール硫酸エステルを添加することは記載されているが、負極活物質として、シリコン酸化物は例示されていないし、実施例は黒鉛負極のみであって、やはり、シリコン酸化物を負極活物質とする負極の初期を除く充放電サイクル中の不可逆容量について、知見を提供するものでない。
一方、初期を除く充放電サイクル中に生じる不可逆容量については、これが大きければ大きいほど、同じ放電容量を得るために必要な充電電気量が嵩むという問題が生じる。そこで、本発明者は、初期を除く充放電サイクル中に生じる不可逆容量に着目した。
1.正極、負極及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、 前記負極に含まれる負極活物質が、SiOx(0.5≦x≦1.5)を有し、前記非水電解質が下記式(1)で表される化合物を10質量%以下含有し、該化合物によって充放電サイクル中に前記SiOx上に保護被膜が形成されることを特徴とする非水電解質二次電池。
2.正極、負極及び非水電解質を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記負極に含まれる負極活物質が、SiOx(0.5≦x≦1.5)を有し、上記式(1)で表される化合物を0.1質量%以上10質量%以下添加した非水電解質を注液することを含む、非水電解質二次電池の製造方法。
ここで、上記式(1)で表される化合物が、下記式(2)で表される1,2-プロパンジオール硫酸エステルであることが好ましい。
SiOxを負極活物質として用いた場合、負極にリチウムが吸蔵された充電状態において、SiOx粒子の表面に、SiLi4.4及びLi2Oが点在して形成されていると推定される。一方、Si又はSi合金を負極活物質として用いた場合、Si又はSi合金粒子の表面に、SiLi4.4が形成されていると推定される。Li2Oは、SiLi4.4に比べて、電解液との界面においてより安定して存在できることが、SiOxは、Si又はSi合金よりも、フロート充電性能若しくは充放電効率が優れる理由と考えられる。
初回充電時には、SiOx活物質由来の不可逆容量に加えて、固−液界面の反応によりSiOxの表面に安定な保護被膜が形成されることに伴い、一定の電気量が消費される。一方、初期を除く充放電サイクル中においては、充放電時のLi挿入・脱離による体積膨張・収縮がSiOx粒子の表面に割れを生じさせ、新たな固−液界面が生じるため、不可逆容量が生じる。
上記の知見に基づき、SiOxを活物質とする負極と組み合わせて、より速やかに安定な被膜を形成し得る非水電解質について、種々検討した。その結果、非水電解質に上記式(1)で表される化合物を添加することにより、充放電サイクル中に安定な保護機能を有する被膜を形成することができ、初期を除く充放電サイクル中に生じる不可逆容量が抑制されることを見出し、本発明をなすに至った。
以下、本発明の非水電解質二次電池について詳述する。
本発明は、負極活物質としてSiとOとを構成元素に含む材料を用いることにより、放電容量の大きい、高エネルギー密度の非水電解質二次電池を得ることができる。
弾性率の高いポリイミド等で活物質同士を強固に結着することができる。
ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドの弾性率は、3GPa以上が好ましい。また、伸び率は、25%以下が好ましい。
得られた負極合剤ペーストを銅箔等の集電体の上に塗布し、乾燥して溶媒を除去し、プレスして目標の多孔度に調整することができる。
前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
以上のようにして、本発明に係る負極を作製することができる。
正極活物質としては、二酸化マンガン、五酸化バナジウムのような遷移金属化合物や、硫化鉄、硫化チタンのような遷移金属カルコゲン化合物、Li1+XMeO2(1≦x、MeはCo、Ni及びMnから選択される一種以上の遷移金属)で表されるα−NaFeO2型、又はLiMn2O4等のスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物、これらの複合酸化物の遷移金属サイト又はリチウムサイトをAl、V、Fe、Cr、Ti、Zn、Sr、Mo、W、Mgなどの金属元素、若しくはP、Bなどの非金属元素で置換した化合物、LiFePO4等のオリビン型のリン酸化合物を用いることができる。
この中では、Li(NixCoyMnz)O2(x+y+z=1)で表されるいわゆるNCM型や、Li1+αMe1−αO2(0<α、MeはCo、Ni及びMnから選択される一種以上の遷移金属)で表されるリチウムが過剰なα−NaFeO2型の正極活物質が、負極活物質の高容量性を活かす組み合わせとして好ましい。
本発明に係る非水電解質は、電解質塩を非水溶媒に溶解した電解質に、下記式(1)で表される化合物を添加したものである。
この化合物は、Rの炭素数が1〜3であるので、非水電解質の主溶媒に対する溶解度が高い。また、Rの炭素鎖が長すぎないので、緻密な保護膜形成を妨げる立体障害を起こすことがない。Rは炭素数が2以下であることが好ましい。
具体的な化合物には、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,2−ブタンジオール硫酸エステル、1,2−ペンタジオール硫酸エステル、及びこれらのフッ素置換体が含まれる。以下、この化合物を「式(1)の環状硫酸エステル」という場合がある。
式(1)の環状硫酸エステルの添加量は、本発明の効果が十分に奏されるものとするため、非水電解質に対して0.1質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。また、非水電解質のイオン伝導度を十分なものとするため、非水電解質に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
セパレータとしては、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を用いることができ、特に、合成樹脂微多孔膜が好適に用いることができる。その材質としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィンが例示される。なかでもポリエチレンおよびポリプロビレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜などのポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗等の面で好適に用いられる。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
上記したように、Siを含む負極活物質は、初期充放電効率が低いという特徴を生かして、「リチウム過剰型」正極活物質を用いた正極を備える非水電解質電池の負極に用いることで、正負極の容量バランスを調整することができる。このことからわかるように、以下の実施例において、仮にそのような「リチウム過剰型」正極活物質を対極に用いると、負極の不可逆容量が、対極で生じる不可逆容量によって相殺されるため、負極の不可逆容量を正しく評価することができない。従って、以下の実施例では、対極に、充放電サイクルが進行しても負極制限の容量バランスを維持できる正極活物質であるLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用いた。
(負極の作製)
活物質として、カーボンで被覆されたSiOx、及び、鱗片状黒鉛(TIMCAL社製、品名:SFG−15)を用いた。前記カーボンで被覆されたSiOx(以下、「SiO」ともいう。)は、xは約1、カーボン含有率6質量%、D50=5μmである。前記鱗片状黒鉛は、流動法窒素ガス吸着法により測定されたBET比表面積が7.7m2/gであり、粒径(D50)が10μmである。
まず、質量比で、SiO:鱗片状黒鉛=4:6となるように混合した。
組成式LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2で表される正極活物質、導電材であるアセチレンブラック及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を93:3:4の質量比率で含有し、NMPを分散媒とする正極ペーストを作製した。正極集電体である厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、前記正極ペーストを塗布後、乾燥工程及びプレス工程を経て、正極合剤層が正極集電体の両面に形成されてなる正極板を作製した。正極集電体の片方の面に形成された正極合剤層の質量は22.7mg/cm2であり、正極集電体及び両面に形成された正極合剤層を含む正極板の厚みは175μmである。正極合剤層の多孔度は32%である。
前記の正極板と負極板の間に、空隙率50%、厚さ27μmのポリエチレン製微多孔膜を用いたセパレータを介して巻回し、発電要素を作製した。
非水電解質には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比3:7の混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解したものに、さらに下記式(2)で表される1,2−プロパンジオール硫酸エステル(PGLST)2質量%を添加したものを用いた。
前記発電要素をアルミニウム製電槽に収納し、前記電槽内に前記非水電解質を注液し、最後に注液口を封止した。このようにして、実施例1に係る非水電解質二次電池を組み立てた。
非水電解質に、1,2−プロパンジオール硫酸エステルに代えて、下記式(3)で表される1,2−ペンタジオール硫酸エステル(PEGLST)を2質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る非水電解質二次電池を作製した。
非水電解質に、1,2−プロパンジオール硫酸エステルを添加しない以外は実施例と同様にして、比較例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
非水電解質に、1,2−プロパンジオール硫酸エステルに代えて、下記式(4)で表される1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキシド(DTD)を2質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る非水電解質二次電池を作製した。
非水電解質に、1,2−プロパンジオール硫酸エステルに代えて、ビニレンカーボネート(VC)を2質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る非水電解質二次電池を作製した。
(負極の作製)
活物質としての人造黒鉛(Gr)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を質量比96.7:2.1:1.2で含有し、水を分散媒とするスラリーを調製した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔集電体の両面に塗布し、乾燥して溶媒を除去し、ロールプレスを行い、多孔度34%の負極板を得た。
非水電解質には、1,2−プロパンジオール硫酸エステルを添加しない以外は実施例と同様のもの(EC:EMC=3:7(体積比))の混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解したもの)を用いた。
負極を比較例4と同様に作成した以外は、実施例と同様にして、比較例5に係る非水電解質二次電池を作製した。
温度25℃の環境下で、充電電流0.1CmA、充電時間16h、放電電流0.2CmAにて1サイクルの初回充放電を行った。このときの充電容量(mAh)から放電容量(mAh)を差し引いたものを「初回不可逆容量(mAh)」として記録した。
(2)初期放電容量の測定
続いて、温度25℃の環境下で、充電電流0.2CmA、充電時間8h、放電電流0.2CmAにて、1サイクルの充放電を行った。このときの放電容量を「初期放電容量(Ah)」として記録した。
(3)初期を除く不可逆容量の測定
続いて、温度45℃の環境下で、充電電流1CmA、充電時間3h、放電電流1CmAにて、40サイクルの充放電を行った。この充放電サイクル試験における計40回の充電電気量を積算した総充電電気量(mAh)から、この充放電サイクル試験における計40回の放電電気量を積算した総放電電気量(mAh)を差しい引いた値を「初期を除く不可逆容量(mAh)」として記録した。
(4)サイクル後放電容量の測定
さらに、温度45℃の環境下で、充電電流1CmA、充電時間3h、放電電流1CmAにて、10サイクルの充放電を行った。続いて、温度25℃の環境下で、充電電流0.2CmA、充電時間8h、放電電流0.2CmAにて、1サイクルの充放電を行った。このときの放電容量を「サイクル後放電容量(Ah)」として記録した。
一方、初期を除く不可逆容量について見ると、式(1)の環状硫酸エステルを添加した非水電解質を用いた実施例1,2では、比較例1〜3に対してこの値が小さい。
これは、充放電サイクル中に負極活物質の割れが進行し、新たな固−液界面が継続的に生成する事象に対して、PGLSTやPEGLSTによって負極活物質上に緻密な保護被膜を速やかに形成され、活物質と非水電解質との副反応に消費されるLiの消費が抑制されたためと推察される。特に、PGLSTを添加した実施例1では、初期を除く不可逆容量が殆ど発生していない。
このように、実施例1,2においては、初期を除く充放電サイクル中に生じる不可逆容量が抑制されているから、比較例1〜3と同程度のサイクル後放電容量を得るために必要な充電電気量を抑制することができる。したがって、効率の優れた充放電を行うことができる。
これは、黒鉛負極では充放電サイクルに伴う体積変化が殆どないため、新たな電解質との反応面が生成しがたいことによるものと考えられる。
しかし、黒鉛の理論容量はSiを構成元素に含む活物質の理論容量に及ばないから、放電容量が実施例の電池に及ばない。
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3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
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