JP2022033631A - 非水電解質蓄電素子及び非水電解質蓄電素子の製造方法 - Google Patents

非水電解質蓄電素子及び非水電解質蓄電素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022033631000001
【課題】充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子、及び該非水電解質蓄電素子の製造方法の提供。
【解決手段】正極活物質を含有する正極、及び下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を備える非水電解質蓄電素子。(式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基。nは、1以上4以下の整数。)
Figure 2022033631000013

【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子及び非水電解質蓄電素子の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、非水電解質二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
非水電解質蓄電素子の非水電解質には、非水溶媒及び電解質塩に加え、性能向上などを目的として各種添加剤が含まれることがある。例えば特許文献1においては、ビフェニル及び/又はビフェニル誘導体を含む非水電解液を備える非水電解液二次電池が提案されている。
特開2013-69659号公報
非水電解質蓄電素子においては、充放電を繰り返しても初期の良好な性能が維持されることが望ましい。しかし、通常、非水電解質蓄電素子は、充放電サイクルに伴って放電容量が徐々に低下する。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供することである。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質を含有する正極、及び下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を備える非水電解質蓄電素子である。
Figure 2022033631000002
(式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質を含有する正極を準備すること、及び下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を準備することを備える非水電解質蓄電素子の製造方法である。
Figure 2022033631000003
(式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の容量維持率が高い。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法によれば、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を示す外観斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子及び非水電解質蓄電素子の製造方法の概要について説明する。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質を含有する正極、及び下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を備える非水電解質蓄電素子である。
Figure 2022033631000004
(式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)
当該非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の容量維持率が高い。当該非水電解質蓄電素子において上記効果が生じる理由は定かではないが以下の理由が推測される。従来の非水電解質蓄電素子において充放電サイクルに伴って放電容量が低下する原因としては、正極活物質粒子の膨張収縮による割れなどによって正極活物質粒子間の電子伝導経路が途切れ、正極の導電性が低下することや、正極活物質粒子中の成分の非水電解質への流出などによって、正極活物質粒子表面に高抵抗な表面層が形成されることなどが考えられる。これに対し当該非水電解質蓄電素子においては、非水電解質に含まれる上記式1で表される化合物が、充電の際に正極活物質粒子表面において酸化されることで重合反応が生じ、導電性のポリマーとなって正極活物質粒子表面に付着すると考えられる。正極活物質粒子間の電子伝導経路が途切れた部分に、このような導電性のポリマーが付着すれば、電子伝導経路が保たれるため、正極の導電性の低下が抑えられる。また、正極活物質粒子の割れや成分の流出などの不具合が生じなくても、正極活物質粒子表面又は正極活物質粒子間に導電性のポリマーが付着することで、正極の導電性は高まる又は導電性の低下が抑制される。このようなことから、当該非水電解質蓄電素子において、充放電サイクルに伴う放電容量の低下を抑制でき、充放電サイクル後の容量維持率が高まっていると推測される。なお、後述する比較例にて示されるように、同様に重合すれば導電性のポリマーとなるとも考えられるビフェニルを用いた場合は、上記効果は低い。これは、上記式1で表される化合物が有するチオフェン環と比べて、ビフェニルが有するベンゼン環はより高い電位で重合反応が生じること、正極活物質表面に付着しにくいことなどが原因であると推測される。また、上記式1で表される化合物は硫黄原子を含むことから、正極活物質粒子表面に形成された硫黄を含む導電性のポリマーが、犠牲酸化剤として働き、特にリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含有する場合、リチウム遷移金属複合酸化物からの酸素の脱離を軽減し、正極活物質表面の変質に伴う劣化を抑制していることも推測される。
また、当該非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の抵抗増加率が低いという利点も有する。この理由も定かではないが、同様に、上記式1で表される化合物によって形成される硫黄を含む導電性のポリマーによって正極の導電性の改善、または、正極活物質表面の変質に伴う劣化の抑制によるものと推測される。
上記nが2であることが好ましい。このような場合、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。
上記R、R及び複数のRが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のハロゲン化アルコキシ基であることが好ましい。このような場合、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。この理由は定かではないが、これらの置換基が比較的炭素数の小さい基等であることで、立体障害が生じ難く、重合反応が進行しやすことなどが推測される。
上記R及びRがそれぞれ水素原子であることが好ましい。このような場合、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。この理由は定かではないが、上記式1で表される化合物が分子の両末端の部分に少なくとも一部が無置換のチオフェン環を有することで、重合反応が進行しやすくなり、長鎖の導電性のポリマーが形成されやすくなることなどが推測される。
上記正極活物質が、ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に占めるニッケルの含有割合が50モル%以上であってよい。ニッケルの含有割合が高いリチウム遷移金属複合酸化物は、充放電の繰り返しに伴って割れが生じやすい正極活物質である。従って、当該非水電解質蓄電素子がこのようなリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含む場合、正極活物質の割れ等を要因とする充放電サイクルに伴う放電容量の低下を抑制し、充放電サイクル後の容量維持率を高めるという利点がより効果的に得られる。また、このようなニッケルの含有割合が高いリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含む従来の非水電解質蓄電素子は、正極活物質の割れ等を要因とする充放電サイクルに伴う抵抗増加が顕著に生じる。また、ニッケルの含有割合が高いと、リチウム遷移金属複合酸化物からの酸素の脱離が起こりやすい。従って、当該非水電解質蓄電素子がこのようなリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として含む場合、充放電サイクル後の抵抗増加率を低くするという利点が特に十分に得られる。
上記正極活物質が二次粒子であってもよい。二次粒子の正極活物質も、一次粒子間に隙間が生じやすいなど、充放電の繰り返しに伴って割れが生じやすい正極活物質である。従って、当該非水電解質蓄電素子がこのような二次粒子の正極活物質を含む場合、正極活物質の割れ等を要因とする充放電サイクルに伴う放電容量の低下及び抵抗の増加を抑制し、充放電サイクル後の容量維持率を高め、抵抗増加率を低くするという利点がより効果的に得られる。また、このような二次粒子である正極活物質を用いた場合、正極活物質の表面積が広いため、出力性能等を高めることができる。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質を含有する正極を準備すること、及び下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を準備することを備える非水電解質蓄電素子の製造方法である。
Figure 2022033631000005
(式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)
当該製造方法によれば、充放電サイクル後の容量維持率が高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。また、当該製造方法により製造される非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の抵抗増加率が低いという利点も有する。
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、非水電解質蓄電素子の製造方法、及びその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
<非水電解質蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。非水電解質蓄電素子は、さらにセパレータを有していてもよい。以下、非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。すなわち、通常電極体は、正極、負極及びセパレータから構成されている。この電極体は容器に収納され、この容器内に非水電解質が充填される。非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、容器としては、二次電池の容器として通常用いられる公知の金属容器、樹脂容器等を用いることができる。
(正極)
上記正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
上記正極基材は、導電性を有する。なお、「導電性を有する」とは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味し、「導電性を有さない」とは、上記体積抵抗率が10Ω・cm超であることを意味する。基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。正極基材の形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
正極基材の平均厚さは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上60μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下がさらに好ましく、10μm以上25μm以下が特に好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいう。他の部材等に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定義される。
上記中間層は、正極基材の表面の被覆層であり、炭素粒子等の導電性を有する粒子(導電性粒子)を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば樹脂バインダ及び導電性粒子を含有する組成物により形成できる。
上記正極活物質層は、正極合剤から形成されている層である。この正極合剤(正極活物質層)は、正極活物質を含む。正極合剤(正極活物質層)は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー、分散剤等の任意成分を含む。
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物や、ポリアニオン化合物が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えばLiMeO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα-NaFeO型結晶構造を有するLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiNiαCo1-α、LiNiαCoβAl1-α-β、LiNiαMnβCo1-α-β、Li1+x(NiαMnβCo1-α-β1-x等、スピネル型結晶構造を有するLiMn、LiNiαMn2-α等)が挙げられる。また、ポリアニオン化合物としては、LiMe(XO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらは表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極活物質は、ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含有していてよい。ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるニッケル(Ni)の含有割合(Ni/Me)の下限としては、例えば30モル%であってもよいが、50モル%が好ましい。このような、ニッケルの含有割合の高いリチウム遷移金属複合酸化物を用いることで、電気容量を大きくすることができる。一方、このニッケルの含有割合(Ni/Me)の上限としては、例えば100モル%であってよく、90モル%であってもよい。上記ニッケルの含有割合(Ni/Me)は、上記いずれかの下限以上上記いずれかの上限以下であってよい。
ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物は、マンガン及びコバルトの少なくとも一方をさらに含むことが好ましく、マンガン及びコバルトの双方をさらに含むことがより好ましい。ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるマンガン(Mn)の含有割合(Mn/Me)としては、5モル%以上50モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるコバルト(Co)の含有割合(Co/Me)としては、5モル%以上50モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。
ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)の含有割合(Li/Me)としては、モル比で1以上1.5以下が好ましく、1であってもよい。
ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物としては、アルミニウムを含むものも好ましい。
ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば層状のα-NaFeO型結晶構造を有するLiNiO(1≦x≦1.5)、LiNiαCo1-α(1≦x≦1.5、0.5≦α<1)、LiNiαCoβAl1-α-β(1≦x≦1.5、0.5≦α<1、0<β≦0.5)、LiNiαMnβCo1-α-β(1≦x≦1.5、0.5≦α<1、0<β≦0.5)、Li1+x(NiαMnβCo1-α-β1-x(0<x<1、0.5≦α<1、0<β≦0.5)等;スピネル型結晶構造を有するLiNiαMn2-α(1≦x≦1.5、1≦α≦2)等を挙げることができる。
ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、例えばLiNi3/5Co1/5Mn1/5、LiNi1/2Co1/5Mn3/10、LiNi1/2Co3/10Mn1/5、LiNi8/10Co1/10Mn1/10等を挙げることができる。なお、正極活物質の組成は、最初の充電処理(すなわち、正極、負極、非水電解質等の電池構成要素を組み立てた後に初めて行う充電処理)が行われる前の状態の組成を示すものとする。
ニッケルの含有割合が高いリチウム遷移金属複合酸化物は、電気容量が大きい一方、充放電の繰り返しに伴って割れが生じやすい。従って、ニッケルの含有割合が高いリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として用いられる場合、正極活物質粒子間の電子伝導経路が途切れることなどを原因とする充放電サイクルに伴う放電容量の低下及び抵抗の増加が抑制でき、充放電サイクル後の容量維持率を高め、抵抗増加率を低くするという当該二次電池の利点が、より効果的に奏される。
同様に、充放電の繰り返しに伴って正極活物質中の成分(鉄、マンガン等)が非水電解質へ流出することによって、正極活物質粒子表面に高抵抗な表面層が形成されやすい正極活物質を用いる場合も、当該二次電池の利点が、より効果的に奏される。このような充放電の繰り返しにより鉄やマンガンが非水電解質へ流出し得る正極活物質としては、例えば、リン酸鉄系正極活物質(LiFePO等)、リン酸マンガン系正極活物質(LiMnPO等)、マンガン酸リチウム系正極活物質(LiMn等)、マンガンを含むリチウム過剰型リチウム遷移金属複合酸化物(Li1+x(MnαMe1-α1-x(Meはマンガン以外の遷移金属、0<x<1、0.4≦α<1)等)などが挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。
全正極活物質に占めるニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物又は充放電により鉄やマンガンが非水電解質へ流出し得る正極活物質の含有量は、70質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。これらの特定の正極活物質の含有量を上記範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。また、従来の正極であれば、全正極活物質におけるこれらの特定の正極活物質の含有割合が高い場合、割れや成分の流出により、導電性が低下しやすくなる傾向がある。そのため、本発明の一実施形態において全正極活物質に占めるこれらの正極活物質の含有量が上記下限以上である場合、当該二次電池の利点がより効果的に奏される。
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質は、二次粒子であることが好ましい。二次粒子であることで、表面積が広くなり、出力性能等を高めることができる。一方、二次粒子である場合、充放電の繰り返しに伴って割れが生じやすい。従って、正極活物質が二次粒子である場合、正極活物質粒子間の電子伝導経路が途切れることなどを原因とする充放電サイクルに伴う放電容量の低下及び抵抗の増加が抑制でき、充放電サイクル後の容量維持率を高め、抵抗増加率を低くするという当該二次電池の利点が、より効果的に奏される。
正極活物質の一次粒子径(平均粒径)は、300nm以上1μm以下が好ましい。また、正極活物質の二次粒子径(平均粒径)は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の一次粒子径及び二次粒子径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。また、各平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の二次粒子径とする。二次粒子の「平均粒径」は、以下の方法で求める。JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を二次粒子の平均粒径とする。一次粒子の「平均粒径」は、以下の方法で求める。走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される正極活物質層の表面において、正極活物質粒子を構成する一次粒子を少なくとも50個観察し、その長径の長さを画像解析により算出し、その平均値を一次粒子の平均粒径とする。SEMの観察条件は特に限定されないが、通常は10000倍から100000倍(例えば50000倍)の倍率である。
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極活物質層における正極活物質の含有量としては、例えば80質量%以上98質量%以下とすることができ、90質量%以上であることが好ましい。
導電剤としては、二次電池性能に悪影響を与えない導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックス等が挙げられ、アセチレンブラックが好ましい。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
バインダとしては、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
フィラーとしては、二次電池性能に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。フィラーの主成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス等が挙げられる。
正極活物質層(正極合剤)は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
正極においては、電位が3.00V vs.Li/Liの放電状態から、電位が4.35V vs.Li/Liの充電状態になったときの正極活物質層のBET比表面積の増加率が、15%以上のものであってよく、30%以上のものであってもよく、45%以上のものであってもよい。このように、放電状態から充電状態になったときのBET比表面積の増加率が大きい正極活物質層の場合、正極活物質粒子の割れなどが生じやすい。従って、このような正極活物質層の場合、当該二次電池の効果がより十分に奏される。一方、上記BET比表面積の増加率は、例えば100%以下であってよく、70%以下であってよい。
上記BET比表面積の増加率は、以下の方法にて求めるものとする。正極に対して、相対圧0.05から0.2の範囲で、多点法を用いた窒素ガス吸着法で表面積を測定する。得られた表面積(窒素ガスの吸着量:m)を正極活物質層の質量(g)で除することで、BET比表面積(m/g)を求める。上記放電状態及び充電状態のそれぞれの正極に対して正極活物質層のBET比表面積を求め、増加率を算出する。なお、BET比表面積の増加率を測定するものであるため、正極において正極活物質層が積層されていない部分がある正極の場合も同様に測定することができる。すなわち、「正極活物質層のBET比表面積の増加率」は、「正極のBET比表面積の増加率」であってよい。また、電位が3.00V vs.Li/Liの放電状態の正極及び電位が4.35V vs.Li/Liの充電状態の正極は、以下の方法により電位を調整したものが用いられる。
電位が3.00V vs.Li/Liの放電状態の正極は、25℃で3.00V vs.Li/Liまで放電電流0.2Cで定電流放電し、10分間の休止期間を設けた後、3.00V vs.Li/Liまで放電電流0.05Cで定電流放電を行うことで得られる。4.35V vs.Li/Liの充電状態の正極は、25℃で4.35V vs.Li/Liまで充電電流0.2Cで定電流にて充電した後に、充電時間の合計が7時間となるまで4.35V vs.Li/Liで定電圧充電を行うことで得られる。このとき、対極Liのハーフセルを用いてもよいし、Li参照極を挿入したフルセルを用いてもよい。
(負極)
負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
負極基材は、正極基材と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
負極活物質層は、負極活物質を含む負極合剤から形成される。この負極合剤(負極活物質層)は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー、分散剤等の任意成分を含む。導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー、分散剤等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。
負極活物質層(負極合剤)は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
ここで、「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1μnm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が例えば炭素材料である場合、その平均粒径は1μm以上100μm以下が好ましい場合がある。負極活物質が、金属、半金属、金属酸化物、半金属酸化物、チタン含有酸化物、ポリリン酸化合物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下が好ましい場合がある。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
(非水電解質)
非水電解質は、下記式1で表される化合物を含有する。非水電解質は、非水電解液であってよい。非水電解質は、上記化合物に加え、通常、非水溶媒と電解質塩とを含む。
上記化合物は、充電によって正極活物質粒子表面において重合反応が進行し、導電性のポリマーとなって正極活物質粒子表面に付着すると推測される。但し、このように正極活物質粒子表面に付着すると推測される導電性のポリマーの体積抵抗率は特に限定されるものでは無く、体積抵抗率が10Ω・cm超であってもよい。
Figure 2022033631000006
式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子等を挙げることができる。
炭化水素基としては、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などの脂肪族鎖状炭化水素基;
シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、
シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基などの1価の脂環式炭化水素基;及び
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基
を挙げることができる。
ハロゲン化炭化水素基としては、上述した炭化水素基が有する一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換された基を挙げることができる。
アルコキシ基は、炭化水素基に酸素原子が結合した基(-OR:Rは炭化水素基である)をいう。アルコキシ基としては、上述した各炭化水素基に酸素原子が結合した基を挙げることができる。
ハロゲン化アルコキシ基としては、上述したアルコキシ基が有する一部又は全部の水素原子がハロゲン原子で置換された基を挙げることができる。
、R及び複数のRのそれぞれは、炭素数が12以下の基が好ましく、炭素数が6以下の基であることがより好ましい。なお、例えば炭素数が12以下の基には、炭素を含まない基(原子)、すなわち炭素数が0である基(水素原子及びハロゲン原子)を含む。このように、置換基であるR、R及びRが比較的炭素数の小さい基等である場合、立体障害が小さく、導電性のポリマーが形成されやすいため、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のハロゲン化アルコキシ基であることがより好ましい。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であることもより好ましい。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のハロゲン化アルコキシ基であることがより好ましい。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であることもより好ましい。複数のRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基であることがさらに好ましい。また、複数のRのうちの少なくとも1つが炭化水素基であることがより好ましい場合もある。
また、R、R及び複数のRのうちの2以上が水素原子であることが好ましく、R及びRの双方が水素原子であることがより好ましい。このように上記式1で表される化合物が少なくとも2つの基が無置換のチオフェン環を有し、好ましくは分子の両末端の部分に少なくとも一部(好ましくは5位)が無置換のチオフェン環を有することで、重合反応が進行しやすくなるため、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。
nは、2以上であることが好ましい。上記式1で表される化合物として、2量体以上の化合物を用いることで、重合度の高いポリマーが形成されやすくなり、その結果、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。一方、nは、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。nの値を比較的小さくすることで、非水溶媒への溶解性が高まり、十分な量の上記式1で表される化合物を非水溶媒へ溶解させることができる。このようなことから、nは、2であることが特に好ましい。
上記式1で表される化合物の好適な形態としては、下記式2で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2022033631000007
式2中、R及びRは、式1中のR及びRと同義である。R3a、R3b、R3c及びR3dは、それぞれ独立して、式1中のRと同義である。mは、0以上3以下の整数である。mが2以上の場合、複数のR3c及び複数のR3dは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式2中のR及びRの具体的形態及び好適形態は、式1中のR及びRと同様である。
式2中のR3a、R3b、R3c及びR3dの具体的形態及び好適形態は、式1中のRと同様である。R3a及びR3dは、水素原子が好ましい場合がある。R3b及びR3cは、炭素数1以上6以下の炭化水素基が好ましい場合があり、炭素数1以上3以下の炭化水素基がより好ましい場合もある。
mは0以上2以下が好ましく、1以下又は1以上が好ましい場合もあり、1が特に好ましい。
非水電解質における上記式1で表される化合物の含有量は特に限定されないが、0.005質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上0.2質量%以下がさらに好ましく、0.03質量%以上0.1質量%以下がよりさらに好ましく、0.04質量%以上0.08質量%以下がよりさらに好ましい。上記含有量は、0.06質量%以上又は0.08質量%以上がよりさらに好ましい場合もある。上記式1で表される化合物の含有量を上記下限以上とすることで、導電性のポリマーが十分な量で形成されることなどにより、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることができる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることで、上記式1で表される化合物の副反応が抑制されることなどにより、充放電サイクル後の容量維持率をより高め、抵抗増加率をより低くすることなどができる。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの少なくとも一方を用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
非水電解質における電解質塩の含有量は、0.1mol/dm以上2.5mol/dm以下が好ましく、0.3mol/dm以上2.0mol/dm以下がより好ましく、0.5mol/dm以上1.7mol/dm以下がさらに好ましく、0.7mol/dm以上1.5mol/dm以下が特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解質のイオン伝導度を高めることができる。
非水電解質は、その他の成分として各種添加剤を含んでもよい。その他の成分としては、例えばビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非水電解質に含まれる上記式1で表される化合物、非水溶媒及び電解質塩以外の成分(その他の成分)の含有量は、非水電解質全体に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。また、この含有量は、1質量%以下又は0.1質量%以下であってもよい。その他の成分の含有量を上記範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又は充放電サイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形態としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、非水電解質蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
当該非水電解質蓄電素子は、以下の方法により製造することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質を含有する正極を準備すること(正極準備工程)、及び上記式1で表される化合物を含有する非水電解質を準備すること(非水電解質準備工程)を備える。
(正極準備工程)
正極準備工程は、例えば、正極を作製する工程であってよい。正極は正極合剤ペーストを用いて作製することができる。
正極合剤ペーストは、通常、正極活物質及びバインダを含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。正極合剤ペーストは、これらの成分を混合することにより得ることができる。この正極合剤ペーストを正極基材表面に塗布し、乾燥させることにより、正極が得られる。
正極合剤ペーストには、通常、分散媒として、有機溶媒が用いられる。この有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトン、エタノール等の極性溶媒や、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の無極性溶媒を挙げることができる。
正極合剤ペーストの塗布方法としては特に限定されず、ローラーコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング等の公知の方法により行うことができる。
(非水電解質準備工程)
非水電解質準備工程は、例えば、非水電解質を調製する工程であってよい。非水電解質は、例えば、上記式1で表される化合物とその他の成分(電解質塩、非水溶媒等)とを混合することにより調製することができる。
当該製造方法は、正極準備工程及び非水電解質準備工程の他、通常の非水電解質蓄電素子の製造方法に備わる他の工程を備えていてよい。当該製造方法は、例えば、負極を準備すること、正極及び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより交互に重畳された電極体を形成すること、正極及び負極(電極体)を容器に収容すること、並びに非水電解質を容器に注入すること等を備えることができる。通常、電極体を容器に収容した後、非水電解質を容器に注入するが、この順番は逆であってもよい。これらの工程の後、注入口を封止することにより非水電解質蓄電素子を得ることができる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、上記正極又は負極において、中間層を設けなくてもよい。また、当該非水電解質蓄電素子の正極において、正極合剤は明確な層を形成していなくてもよい。例えば上記正極は、メッシュ状の正極基材に正極合剤が担持された構造等であってもよい。
また、上記実施の形態においては、非水電解質蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の非水電解質蓄電素子であってもよい。その他の非水電解質蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
図1に、本発明に係る非水電解質蓄電素子の一実施形態である矩形状の非水電解質蓄電素子1の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質蓄電素子1は、電極体2が容器3に収納されている。電極体2は、正極合剤を備える正極と、負極合剤を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。また、容器3には、非水電解質が注入されている。
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子(二次電池)の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。本発明は、上記の非水電解質蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質蓄電素子1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた各添加剤(上記式1で表される化合物及びその代替物)を以下に示す。
・化合物(A):下記式(A)で表される化合物(3,3’-ジメチル-2,2’-ビチオフェニル)
・化合物(B):下記式(B)で表される化合物(3-ヘキシルチオフェン)
・化合物(X):下記式(X)で表される化合物(ビフェニル)
Figure 2022033631000008
[実施例1]
(非水電解質の調製)
ECとEMCとを30:70の体積比で混合した非水溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.0mol/dmの濃度で溶解させ、これに添加剤としてVCを0.3質量%、ジフルオロリン酸リチウムを1.0質量%、化合物(A)を0.05質量%含有させ、非水電解質を得た。
(正極の作製)
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3、導電剤としてのアセチレンブラック及びバインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:4:3の質量比で含有し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を分散媒とする正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥することにより、正極を得た。
また、上記正極活物質は、二次粒子であり、一次粒子径(平均粒径)は550nm、二次粒子径(平均粒径)は8μmであった。
(負極の作製)
負極活物質としてのグラファイト(黒鉛)、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を98:1:1の質量比で含有し、水を分散媒とする負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを負極基材としての銅箔の表面に塗布し、乾燥することにより、負極を得た。
(組み立て)
上述の正極と負極とをポリオレフィン製多孔質樹脂フィルムセパレータを介して巻回することで電極体を作成した。この電極体をアルミニウム製の角型容器に挿入した後に、容器の蓋をレーザ溶接した。容器に設けられた注液孔を介して、容器に上述の非水電解質を注入したあと、注液孔を封止し、非水電解質蓄電素子(非水電解質二次電池)を得た。
[実施例2、3、比較例1、2]
添加剤として、表1に記載の種類及び含有量の化合物を含有させた、又は添加剤を含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子を得た。
[評価]
(初期の性能評価)
実施例1から3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子に対し、以下の容量確認試験を行った。25℃で4.25Vまで充電電流0.2Cの定電流にて充電したのちに、4.25Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電時間が合計7.5時間になるまでとした。充電後に10分間の休止期間を設けたのちに、25℃で2.75Vまで1.0Cの定電流にて放電した。これにより得られた放電容量を、初期の放電容量とした。
また、実施例1から3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子について、50%SOCでの25℃における内部抵抗(直流抵抗:DCR)を以下の方法にて測定した。「SOC」(State of Charge)とは、非水電解質蓄電素子が通常使用される電圧範囲で測定される、定格容量を基準とする、該非水電解質蓄電素子の充電状態であり、本実施例においては、端子間電圧(閉回路電圧(CCV))が4.25V(上限電圧)から2.75V(下限電圧)の条件で測定される、定格容量を基準とする充電状態をいう。本実施例において、定格容量は上記初期の放電容量とした。得られた各非水電解質蓄電素子について、25℃にて、電流1.0Cの定電流充電を行い、SOCを50%にした後、25℃にて電流0.2Cで30秒間放電した。その後、電流0.2Cで30秒間定電流充電し10分間の休止期間を設けた。次に、電流0.5Cで30秒間放電し、電流0.2Cで75秒間定電流充電し、10分間の休止期間を設けた。最後に、電流1.0Cで30秒間放電した。各放電電流における電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから得られた直線の傾きから内部抵抗を求めた。
また、実施例1から3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子の正極について、上記方法にて、電位が3.00V vs.Li/Liの放電状態から、電位が4.35V vs.Li/Liの充電状態になったときのBET比表面積の増加率を測定した。BET比表面積の増加率は、いずれも57%であった。
(充放電サイクル試験)
実施例1から3及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子に対し、以下の充放電サイクル試験を行った。60℃において、4.25Vまで充電電流1.0Cの定電流にて充電したのちに、4.25Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電時間が合計3時間になるまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。その後、2.75Vまで1.0Cの定電流にて放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。いずれの実施例及び比較例も、この充放電を500サイクル実施した。
(充放電サイクル後の性能評価)
充放電サイクル試験後、上記「初期の性能評価」と同様の方法にて容量確認試験及び25℃における内部抵抗(DCR)の測定を行った。充放電サイクル試験後の放電容量を初期の放電容量で除し、容量維持率(%)を求めた。また、充放電サイクル試験後の内部抵抗の初期の内部抵抗からの増加量を初期の内部抵抗で除し、抵抗増加率(%)を求めた。それぞれの測定結果を表1に示す。
Figure 2022033631000009
表1に示されるように、上記式1で表される化合物である化合物(A)又は化合物(B)を含有する非水電解質を備える実施例1から3の非水電解質蓄電素子は、非水電解質に添加剤を含有していない比較例1の非水電解質蓄電素子に対して、充放電サイクル後の容量維持率が高い。また、実施例1から3の非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の抵抗増加率が低い。特に、化合物(A)を用いた実施例1、2は、これらの効果がより優れたものとなっている。なお、ビフェニルを含有する非水電解質を備える比較例2の非水電解質蓄電素子は、非水電解質に添加剤を含有していない比較例1の非水電解質蓄電素子に対して、容量維持率の向上効果が低く、抵抗増加率は逆に高まっている。充放電サイクル後の容量維持率の向上効果及び抵抗増加率の抑制効果は、チオフェン環を有する上記式1で表される化合物を用いた場合に十分に生じる特有の効果であると考えられる。
[実施例4]
正極及び負極として以下の手順で作製したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の非水電解質蓄電素子を得た。
(正極の作製)
正極活物質としてのLiFePO、導電剤としてのアセチレンブラック及びバインダとしてのPVDFを90:5:5の質量比で含有し、NMPを分散媒とする正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥することにより、正極を得た。
(負極の作製)
負極活物質としての黒鉛、導電剤としてのアセチレンブラック、バインダとしてのSBR及び増粘剤としてのCMCを95.7:1.0:2.1:1.2の質量比で含有し、水を分散媒とする負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを負極基材としての銅箔の表面に塗布し、乾燥することにより、負極を得た。
[実施例5、比較例3]
添加剤として、表2に記載の種類及び含有量の化合物を含有させた、又は添加剤を含有させなかったこと以外は実施例4と同様にして、実施例5及び比較例3の各非水電解質蓄電素子を得た。
[評価]
(初期の性能評価)
実施例4、5及び比較例3の各非水電解質蓄電素子に対し、以下の容量確認試験を行った。25℃で3.6Vまで充電電流1.0Cの定電流にて充電したのちに、3.6Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電時間が合計3時間になるまでとした。充電後に10分間の休止期間を設けたのちに、25℃で2.0Vまで0.2Cの定電流にて放電した。これにより、初期の放電容量を求めた。
(充放電サイクル試験)
実施例4、5及び比較例3の各非水電解質蓄電素子に対し、以下の充放電サイクル試験を行った。45℃において、3.6Vまで充電電流1.0Cの定電流にて充電したのちに、3.6Vの定電圧にて充電した。充電の終了条件は、充電時間が合計3時間になるまでとした。その後、10分間の休止期間を設けた。その後、2.0Vまで1.0Cの定電流にて放電を行い、その後、10分間の休止期間を設けた。いずれの実施例及び比較例も、この充放電を50サイクル実施した。
(充放電サイクル後の性能評価)
充放電サイクル試験後、上記「初期の性能評価」と同様の方法にて容量確認試験を行った。充放電サイクル試験後の放電容量を初期の放電容量で除し、容量維持率(%)を求めた。測定結果を表2に示す。
Figure 2022033631000010
表2に示されるように、正極活物質がLiFePOである場合も、上記式1で表される化合物である化合物(A)を非水電解質に含有させることにより、充放電サイクル後の容量維持率が高まることがわかる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される非水電解質蓄電素子等に適用できる。
1 非水電解質蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (7)

  1. 正極活物質を含有する正極、及び
    下記式1で表される化合物を含有する非水電解質
    を備える非水電解質蓄電素子。
    Figure 2022033631000011
    (式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)
  2. 上記nが2である、請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
  3. 上記R、R及び複数のRが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上3以下の炭化水素基、炭素数1以上3以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上3以下のハロゲン化アルコキシ基である、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子。
  4. 上記R及びRがそれぞれ水素原子である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質蓄電素子。
  5. 上記正極活物質が、ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、
    上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に占めるニッケルの含有割合が50モル%以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質蓄電素子。
  6. 上記正極活物質が二次粒子である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質蓄電素子。
  7. 正極活物質を含有する正極を準備すること、及び
    下記式1で表される化合物を含有する非水電解質を準備すること
    を備える非水電解質蓄電素子の製造方法。
    Figure 2022033631000012
    (式1中、R、R及び複数のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上20以下のハロゲン化炭化水素基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、又は炭素数1以上20以下のハロゲン化アルコキシ基である。nは、1以上4以下の整数である。)

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