JP7371571B2 - 非水電解質蓄電素子及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質蓄電素子及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7371571B2
JP7371571B2 JP2020082073A JP2020082073A JP7371571B2 JP 7371571 B2 JP7371571 B2 JP 7371571B2 JP 2020082073 A JP2020082073 A JP 2020082073A JP 2020082073 A JP2020082073 A JP 2020082073A JP 7371571 B2 JP7371571 B2 JP 7371571B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
positive electrode
active material
electrode active
material layer
aqueous electrolyte
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020082073A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021177458A (ja
Inventor
祐輝 酒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
GS Yuasa International Ltd
Original Assignee
GS Yuasa International Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by GS Yuasa International Ltd filed Critical GS Yuasa International Ltd
Priority to JP2020082073A priority Critical patent/JP7371571B2/ja
Publication of JP2021177458A publication Critical patent/JP2021177458A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7371571B2 publication Critical patent/JP7371571B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Electric Double-Layer Capacitors Or The Like (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子及びその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、非水電解質二次電池以外の非水電解質蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
非水電解質蓄電素子用の正極活物質として、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が知られている。このような複合酸化物であり、遷移金属(Me)に対するマンガンの含有量がモル比で0.5以下であり、遷移金属に対するリチウムのモル比がほぼ1である、いわゆるLiMeO型活物質を用いた非水電解質二次電池が実用化されている。
一方、近年、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の中でも、LiMnOとLiMeOとの固溶体であるともされる、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超え、遷移金属に対するリチウムのモル比が1を超えるリチウム遷移金属複合酸化物が知られている(特許文献1、2参照)。このような、マンガン含有量及びリチウム含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物は、質量あたりの容量が大きい正極活物質として注目されている。容量が大きい正極活物質を用いることで、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度がより高まることが期待できる。
特開2012-104335号公報 特開2013-191390号公報
上記のようなマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物の粒子は、一般的に見かけ密度が低いため、正極を作製した際の正極活物質層の体積あたりの容量密度が低い。このため、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を用いて正極を作製する場合、プレス等により正極活物質層を高密度化することが望ましい。しかし、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を含み高密度化された正極活物質層を備える非水電解質蓄電素子は、充放電サイクルに伴う容器膨れが大きくなるという不都合を有する。
本発明の目的は、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制された非水電解質蓄電素子、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供することである。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子である。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子である。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法である。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法である。
本発明の一態様によれば、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制された非水電解質蓄電素子、及びこのような非水電解質蓄電素子の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を示す外観斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子及びその製造方法の概要について説明する。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子(A)である。
当該非水電解質蓄電素子(A)は、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制されている。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子(B)である。
当該非水電解質蓄電素子(B)も、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制されている。
上記の効果が生じる理由は定かでは無いが、以下のことが推測される。一般に、プレス等によって正極活物質層を高密度化する場合、プレス圧が大きいと、正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物粒子が圧壊されることがある。このような場合、圧壊によって新しく生じた粒子の表面(新生面)による比表面積の増大によって、非水電解質との副反応が生じやすくなるため、ガス発生に伴う膨れが大きくなる傾向がある。
LiMnOとLiMeOとの固溶体であるとされるマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物は、通常、遷移金属に対するリチウムの含有量がモル比で1を超えることから、リチウム過剰型活物質とも呼ばれる。このような、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物の作製方法としては、遷移金属に対するリチウムのモル比がほぼ1であるLiMeO型活物質の場合と同様に、水酸化物前駆体を経由する方法と、炭酸塩前駆体を経由する方法とがある。
水酸化物前駆体を経由してマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を作製した場合、上記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子は、LiMeO型活物質の粒子に比べて嵩高く、見かけ密度が低いものとなる。この理由は、Ni(OH)やCo(OH)の一次粒子の結晶形態は針状であるのに対し、Mn(OH)の一次粒子の結晶形態は六角板状であるという特徴と関連するものであり、遷移金属中のMn比率が高いことに由来するものである。
また、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属の酸化還元反応に加え、酸素の酸化還元反応を利用することで、大きい容量が得られるとされている。しかし、酸素の酸化還元反応は反応抵抗が大きい。このようなマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物の粒子において、反応抵抗を低減する方法として、比表面積を大きくすることが考えられる。そこで、炭酸塩前駆体を経由してマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を作製することで、一次粒子径を小さく形成でき、比表面積の大きい粒子が得られる。ところが、そのような一次粒子から形成される二次粒子は、一次粒子間に多くの細孔又は空隙を有する。このことから、炭酸塩前駆体を経由してマンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を作製した場合も、上記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子は、LiMeO型活物質の粒子に比べて嵩高く、見かけ密度が低いものとなる。
以上のようなことから、通常、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物は、LiMeO型活物質等に比べて見かけ密度が低い。従って、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を活物質として用いた正極は、通常の圧力でプレスを行っても正極活物質層が充填されにくいことから、正極活物質層を高密度化する場合には、通常よりも大きな圧力でプレスを行う必要がある。このプレス工程で、活物質の二次粒子に強い圧力がかかるため、一次粒子間の空隙及び細孔が潰される形で、二次粒子が圧壊されやすい。
これに対して、LiMeO型活物質等の他の活物質の粒子は、上記マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を活物質と比較して嵩高いものではないので、通常の圧力でプレスを行うことで、十分に高密度の正極活物質層が得られるので、上記したような、プレス工程による活物質二次粒子の圧壊は生じ難い。
すなわち当該非水電解質蓄電素子(A)及び非水電解質蓄電素子(B)は、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子において正極活物質層を高密度化しようとした場合に顕著に生じる特有の課題を解決するものである。
当該非水電解質蓄電素子(A)においては、活物質粒子の表面において、非水電解質に含有されているフッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩又はフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩由来の良好な被膜が形成されると推測される。このような被膜により、非水電解質との副反応が抑制され、ガス発生に伴う容器膨れが抑制されていると推測される。なお、当該非水電解質蓄電素子(A)においては、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高い結果、正極活物質層の体積あたりのエネルギー密度が高いものとなり得る。
当該非水電解質蓄電素子(B)においても、上述した非水電解質蓄電素子(A)と同様の理由により、非水電解質との副反応が抑制され、ガス発生に伴う容器膨れが抑制されていると推測される。また、当該非水電解質蓄電素子(B)においても、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高い結果、正極活物質層の体積あたりのエネルギー密度が高いものとなり得る。
正極活物質層の多孔度とは、正極活物質層を構成する各成分の真密度から算出される正極活物質層の真密度と、正極活物質層の見かけ密度とから、下記式により求められる値をいう。
多孔度(%)=100-(見かけ密度/真密度)×100
正極活物質層の見かけ密度とは、正極活物質層の質量を正極活物質層の見かけ体積で除した値をいう。見かけ体積とは、空隙部分を含む体積をいい、正極活物質層の平均厚さと面積との積として求めることができる。正極活物質層の平均厚さは、任意の5ヶ所で測定した厚さの平均値とする。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法(A)である。
当該非水電解質蓄電素子の製造方法(A)によれば、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制された非水電解質蓄電素子を製造することができる。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法(B)である。
当該非水電解質蓄電素子の製造方法(B)によっても、マンガン含有量の多いリチウム遷移金属複合酸化物を正極に用いた非水電解質蓄電素子であって、正極活物質層の体積あたりの容量密度が高く、充放電サイクルに伴う容器膨れが抑制された非水電解質蓄電素子を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、及びその製造方法について詳説する。
<非水電解質蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体は容器に収納され、この容器内に非水電解質が充填される。非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、容器としては、通常用いられる公知の金属容器、樹脂容器等を用いることができる。以下、非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
(正極)
正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するとは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が10Ω・cm超であることを意味する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)に規定されるA1085、A3003等が例示できる。
正極基材の平均厚さとしては、5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。正極基材の平均厚さを上記下限以上とすることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さを上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。正極基材及び後述する負極基材の「平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいう。
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バインダ及び導電性を有する粒子を含む。中間層は、例えば、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。
正極活物質層は、正極活物質を含む正極合剤の層である。正極活物質層(正極合剤)は、正極活物質の他、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいてよい。
正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物を含む。このリチウム遷移金属複合酸化物は、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超える。上記リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属に対するリチウムの含有量がモル比で1を超える、いわゆるリチウム過剰型活物質であってよい。当該二次電池においてこのような正極活物質が用いられていることで、質量あたりの容量が大きいものとなる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物は、下記式1で表されるものであってよい。
Li1+αMe1-α ・・・1
式1中、0<α<1である。遷移金属(Me)に対するLiの含有量はモル比で1.0超であり、1.1以上又は1.2以上が好ましく、1.3以上が好ましいこともある。遷移金属(Me)に対するLiの含有量の上限は、モル比で1.5又は1.45であってよい。この値は(1+α)/(1-α)で表される。
上記式1中のMeはMnを含む遷移金属である。遷移金属(Me)に対するMnの含有量はモル比で0.5超であり、0.55以上又は0.6以上が好ましい。遷移金属(Me)に対するMnの含有量の上限は、モル比で0.7であってよい。
上記式1中のMeは、Mn以外に、Ni又はCoを含むことが好ましく、Niを含むことがより好ましい。Meには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の遷移金属元素が含有されていてもよい。
遷移金属(Me)に対するNiの含有量は、0.1以上0.5未満が好ましく、0.15以上0.4以下がより好ましい。Niの含有量を上記範囲とすることにより、エネルギー密度、容量密度等が向上する。
遷移金属(Me)に対するCoの含有量は、例えば0以上0.3以下であってよい。
なお、本明細書におけるリチウム遷移金属複合酸化物の組成比は、次の方法により完全放電状態としたときの組成比をいう。まず、非水電解質蓄電素子を、0.05Cの電流で通常使用時の充電終止電圧となるまで定電流充電し、満充電状態とする。30分の休止後、0.05Cの電流で通常使用時の下限電圧まで定電流放電する。解体し、正極を取り出し、金属リチウム電極を対極とした試験電池を組み立て、正極合剤1gあたり10mAの電流値で、正極電位が2.0V vs.Li/Liとなるまで定電流放電を行い、正極を完全放電状態に調整する。再解体し、正極を取り出す。ジメチルカーボネートを用いて、取り出した正極に付着した非水電解質を十分に洗浄し、室温にて一昼夜乾燥後、正極活物質のリチウム遷移金属複合酸化物を採取する。採取したリチウム遷移金属複合酸化物を測定に供する。非水電解質蓄電素子の解体から測定までの作業は露点-60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。ここで、通常使用時とは、当該非水電解質蓄電素子について推奨され、又は指定される充放電条件を採用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合であり、当該非水電解質蓄電素子のための充電器が用意されている場合は、その充電器を適用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合をいう。
上記リチウム遷移金属複合酸化物は、固相法、ゾルゲル法、水熱法、共沈法等の種々の方法で合成することができる。これらの中でも、遷移金属の分布の均一性が高いことなどから、共沈法により合成された複合酸化物を用いることが好ましい。共沈法は、水溶液中で沈殿(共沈)させることにより、Mn等の遷移金属を含む前駆体を作製し、この前駆体とリチウム化合物との混合物を焼成してリチウム遷移金属複合酸化物を合成する方法である。上記共沈により得られる前駆体としては、水酸化物前駆体又は炭酸塩前駆体を採用することができる。
上記前駆体は、水酸化物前駆体でもよいが、炭酸塩前駆体を採用することで、真球度の高い前駆体及びリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができる。したがって、このリチウム遷移金属複合酸化物を用いると、均一で平滑度の高い正極活物質層を備えた正極を製造することができる。また、炭酸塩前駆体から得られた上記リチウム遷移金属複合酸化物は、ピーク微分細孔容積が0.7mm/(g・nm)以上又は0.8mm/(g・nm)以上となる傾向にある。
本発明の一実施形態において、上記リチウム遷移金属複合酸化物のピーク微分細孔容積は0.7mm/(g・nm)以上が好ましく、0.8mm/(g・nm)以上がより好ましい。上記リチウム遷移金属複合酸化物のピーク微分細孔容積が上記下限以上であることで、容量を大きくすることなどができる。一方、ピーク微分細孔容積が大きいリチウム遷移金属複合酸化物は、通常、プレス等による圧壊が特に生じ易い。従って、ピーク微分細孔容積が上記下限以上であるリチウム遷移金属複合酸化物が用いられている場合、充放電サイクルに伴う容器膨れを特に効果的に抑制することができ、本発明を採用することによる容器膨れの抑制効果が顕著に表れる。なお、上記リチウム遷移金属複合酸化物のピーク微分細孔容積の上限は、例えば3mm/(g・nm)であってよく、2.5mm/(g・nm)であってもよい。
リチウム遷移金属複合酸化物のピーク微分細孔容積は、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求める値とする。具体的には、ピーク微分細孔容積は以下の方法により測定する。測定試料としてリチウム遷移金属複合酸化物1.00gを測定用のサンプル管に入れ、120℃にて6時間、続いて180℃にて6時間真空乾燥することで、測定試料中の水分を十分に除去する。次に、液体窒素を用いた窒素ガス吸着法により、相対圧力P/P0(P0=約770mmHg)が0から1の範囲内で吸着側及び脱離側の等温線を測定する。そして、脱離側の等温線を用いてBJH法により計算することにより、累積細孔容積カーブを求める。このカーブから、全細孔容積(cm/g)の値が得られる。次に、上記累積細孔容積カーブを線形(Linear)微分することにより、横軸を細孔径(nm)とし、縦軸を微分細孔容積(mm/(g・nm)とする微分細孔容積カーブを得る。本明細書において、「ピーク微分細孔容積」とは、上記微分細孔容積カーブの最大点における縦軸の値をいう。また、「微分細孔容積が最大値を示す細孔径」とは、上記微分細孔容積カーブの最大点における横軸の値をいう。
上記リチウム遷移金属複合酸化物の微分細孔容積が最大値を示す細孔径は、10nmから200nmの範囲にあることが好ましく、20nmから100nmの範囲にあることがより好ましい。また、上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積は、0.03cm/g以上0.2cm/g以下が好ましく、0.06cm/g以上0.1cm/g以下がより好ましい。上記リチウム遷移金属複合酸化物の微分細孔容積が最大値を示す孔径、又は全細孔容積が上記範囲である場合、容量をさらに大きくすることなどができ、また、本発明を採用したときの容器膨れの抑制効果がより顕著に表れる。
正極活物質には、上記リチウム遷移金属複合酸化物以外の他の正極活物質が含まれていてもよい。上記正極活物質中の上記リチウム遷移金属複合酸化物の含有量は例えば50質量%以上であってよいが、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上がよりさらに好ましく、実質的に100質量%であってもよい。正極活物質に占める上記リチウム遷移金属複合酸化物の含有割合を高めることで、正極活物質層の体積あたりの容量密度をより高めることができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物以外の他の正極活物質としては、リチウムイオン二次電池等に通常用いられる公知の正極活物質の中から適宜選択できる。上記正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。例えば、上述したLiMeO型活物質、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。
正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。ここで、「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
正極活物質等の粒子を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極活物質層における正極活物質の含有量としては、70質量%以上99質量%以下が好ましく、80質量%以上98質量%以下がより好ましく、90質量%以上96質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記範囲とすることで、二次電池の電気容量を大きくすることなどができる。
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、黒鉛;ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;金属;導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。
正極活物質層における導電剤の含有量としては、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記範囲とすることで、二次電池の電気容量を大きくすることなどができる。
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極活物質層におけるバインダの含有量としては、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、アルミノケイ酸塩等が挙げられる。
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
正極活物質層は、ホスホン酸等のリンのオキソ酸、又はリンのオキソ酸に由来する成分がさらに含有されていてもよい。このような場合、正極活物質層の表面にリンのオキソ酸に由来する被膜が形成されガス発生抑制効果が高まることなどにより、充放電サイクルに伴う容器膨れがより抑制される。
本発明の一実施形態において、正極活物質層の多孔度の上限は35%であり、34%、33%又は32%であることが好ましい。正極活物質層の多孔度が上記上限以下であることで、正極活物質層の体積あたりの容量密度を高めることができる。一方、この正極活物質層の多孔度の下限は、例えば25%が好ましく、27%又は30%がより好ましいこともある。正極活物質層の多孔度が上記下限以上であることで、充放電サイクルに伴う容器膨れをより抑制することなどができる。
本発明の他の実施形態において、正極活物質層の見かけ密度の下限は2.6g/cmであり、2.7g/cmが好ましい。正極活物質層の見かけ密度が上記下限以上であることで、正極活物質層の体積あたりの容量密度を高めることができる。一方、この正極活物質層の見かけ密度の上限は、例えば3.2g/cmが好ましく、3.0g/cmがより好ましいこともある。正極活物質層の見かけ密度が上記上限以下であることで、充放電サイクルに伴う容器膨れをより抑制することなどができる。
上記正極活物質層の多孔度及び見かけ密度は、正極活物質層形成時のプレス圧の強度等によって調整することができる。
(負極)
負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。負極の中間層の構成は特に限定されず、正極の中間層と同様の構成とすることができる。
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さとしては、3μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。負極基材の平均厚さを上記下限以上とすることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さを上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
負極活物質層は、負極活物質を含む負極合剤の層である。負極活物質層(負極合剤)は、負極活物質の他、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいてよい。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。負極活物質層におけるこれらの各任意成分の含有量は、正極活物質層におけるこれらの含有量として記載した範囲とすることができる。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
ここで、黒鉛及び非黒鉛質炭素を定義する「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の材質としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、大気下で室温から500℃まで加熱したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、大気下で室温から800℃まで加熱したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。上記質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、二次電池の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
(非水電解質)
非水電解質は、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する。非水電解質は、非水電解液であってよい。非水電解質が非水電解液である場合、上記リン酸塩及びホウ酸塩の少なくとも一方に加えて、非水溶媒と、電解質塩とをさらに含む。
フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩は、通常、このリン酸塩を構成するアニオン中にフッ素原子及び酸素原子を含む。このリン酸塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等であってよいが、これらの中でもリチウム塩が好ましい。
フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩としては、ジフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロジオキサラトリン酸リチウム、テトラフルオロオキサラトリン酸リチウム等が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウムが好ましい。
フッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩は、通常、このホウ酸塩を構成するアニオン中にフッ素原子及び酸素原子を含む。このホウ酸塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等であってよいが、これらの中でもリチウム塩が好ましい。
フッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩としては、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウムが好ましい。
上記非水電解質における上記フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方の含有量としては、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下がより好ましい。上記含有量を上記下限以上とすることで、十分な被膜が形成でき、ガス発生に伴う容器膨れをより抑制することができる。一方、上記含有量を上記上限以下とすることで、非水電解質蓄電素子の充放電性能等を高めることができる。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。
非水溶媒として、水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。上記ハロゲンとしては、フッ素が好ましい。水素原子の一部がフッ素に置換されたフッ素化溶媒、すなわちフッ素化環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート等のフッ素原子を有する溶媒を用いることで、正極電位が高電位に至る使用条件下でも十分に使用できる。非水溶媒中のフッ素化溶媒の含有量としては、50体積%以上が好ましく、70体積%以上、90体積%以上又は100体積%がより好ましい。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、フッ素化された環状カーボネートが好ましく、FECがより好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でも、フッ素化された鎖状カーボネートが好ましく、TFEMCがより好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。なお、この電解質塩には、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩は含まれないものとする。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
非水電解質における電解質塩の含有量は、0.1mol/dm以上2.5mol/dm以下が好ましく、0.3mol/dm以上2.0mol/dm以下がより好ましく、0.5mol/dm以上1.7mol/dm以下がさらに好ましく、0.7mol/dm以上1.5mol/dm以下が特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解質のイオン伝導度を高めることができる。
非水電解質は、さらに添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えばビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非水電解質に含まれる上記添加剤の含有量は、非水電解質に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下が特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又は充放電サイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiI-LiS-P、Li10Ge-P12等が挙げられる。
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極活物質層を有する正極を準備すること(正極準備工程)と、非水電解質を準備すること(非水電解質準備工程)とを備える。
正極準備工程は、正極を作製する工程であってよい。正極の作製は、正極基材に直接又は中間層を介して、正極合剤ペーストを塗布し、乾燥後の塗布層(正極活物質層)をプレスすることなどにより行うことができる。上記正極合剤ペーストには、正極活物質等、正極活物質層(正極合剤)を構成する各成分、及び分散媒が含まれる。正極活物質には、上記リチウム遷移金属複合酸化物が含まれる。
当該製造方法の一実施形態においては、プレス圧の強度等によって、正極活物質層の多孔度が35%以下となるように調整する。これにより、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、多孔度が35%以下の正極活物質層が形成される。
また、当該製造方法の他の実施形態においては、プレス圧の強度等によって、正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上となるように調整する。これにより、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、見かけ密度が2.6g/cm以上の正極活物質層が形成される。
当該製造方法においては、ピーク微分細孔容積が0.7mm/(g・nm)以上、さらには0.8mm/(g・nm)以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を用いることが好ましい。
非水電解質準備工程は、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質を準備する工程である。非水電解質準備工程は、上記非水電解質を調製する工程であってよい。非水電解質の調製は、例えば、非水溶媒、電解質塩、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方、並びに必要に応じて添加剤を混合することによって行うことができる。
当該非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極を準備することと、非水電解質を準備することとの他、負極を準備すること、上記正極及び上記負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより電極体を形成すること、上記電極体を容器に収容すること、並びに上記容器に上記非水電解質を注入すること等を備えていてよい。注入後、注入口を封止することにより当該非水電解質蓄電素子を得ることができる。また、組み立てられ、注入口が封止された未充放電蓄電素子に対して初期充放電をすることを経て当該非水電解質蓄電素子を得てもよい。
<その他の実施形態>
本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
また、上記実施の形態においては、非水電解質蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の非水電解質蓄電素子であってもよい。その他の非水電解質蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
図1に、本発明に係る非水電解質蓄電素子の一実施形態である矩形状の非水電解質蓄電素子1(非水電解質二次電池)の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質蓄電素子1は、電極体2が容器3に収納されている。電極体2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して巻回されることにより形成されている。正極は、正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明に係る非水電解質蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の非水電解質蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質蓄電素子1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
正極活物質として、α-NaFeO構造を有し、かつLi1+α(Ni0.33Mn0.671-α((1+α)/(1-α)=1.33、α=0.14)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を準備した。上記リチウム遷移金属複合酸化物について、上記した方法にて細孔分布を測定したところ、微分細孔容積が最大値を示す細孔径が40nmから80nmの範囲で、ピーク微分細孔容積が0.98mm/(g・nm)であった。また、全細孔容積は0.075cm/gであった。質量比で、正極活物質:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)=94.75:3.0:2.25の割合(固形物換算)で含み、N-メチルピロリドン(NMP)を分散媒とする混合物を作製した。この混合物に、添加剤として、正極活物質の質量に対して0.5質量%のホスホン酸(HPO)を添加し、正極合剤ペーストを作製した。この正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後プレスし、正極Aを得た。得られた正極Aの正極活物質層の多孔度及び見かけ密度を上記した方法にて算出した。多孔度は32%、見かけ密度は2.77g/cmであった。
負極として、金属リチウム負極を作製した。
セパレータとして、ポリオレフィン製微多孔膜を用意した。
非水電解質として、FECとTFEMCとを体積比30:70で混合した非水溶媒に、電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)が1.0mol/dmの含有量となるように溶解させた溶液を調製した。さらにこの溶液に対し、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)を約0.5質量%混合し、非水電解質とした。なお、この非水電解質はLiDFPの飽和溶液として調製した。
上記セパレータを介して、上記正極Aと負極とを積層することにより電極体を作製した。この電極体を容器に収納し、内部に上記非水電解質を注入した後、封口し、実施例1の非水電解質蓄電素子を得た。
[実施例2、比較例1、2]
非水電解質に、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)に替えて表1に記載の化合物を0.5質量%混合した、又は化合物を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1、2の各非水電解質蓄電素子を得た。なお、表中、LiDFPは「ジフルオロリン酸リチウム」LiDFOBは「ジフルオロオキサラトホウ酸リチウム」、TMSPは「リン酸トリス(トリメチルシリル)」を示す。また、表中「-」は、該当する化合物を混合していないことを示す。
[参考例1]
実施例1の正極Aの作製時と比較してプレス圧の強度を弱くしてプレスを行ったこと以外は実施例1と同様にして、正極Bを得た。得られた正極Bの正極活物質層の多孔度及び見かけ密度を上記した方法にて算出した。多孔度は40%、見かけ密度は2.45g/cmであった。正極として上記正極Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、参考例1の非水電解質蓄電素子を得た。
[参考例2から4]
非水電解質に、ジフルオロリン酸リチウム(LiDFP)に替えて表1に記載の化合物を0.5質量%混合した、又は化合物を混合しなかったこと以外は、参考例1と同様にして、参考例2から4の各非水電解質蓄電素子を得た。
(初期充放電)
得られた各非水電解質蓄電素子について、25℃にて、以下の条件にて2サイクルの初期充放電を行った。充電は、充電電流0.1C、充電電圧4.7Vの定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、充電電流が0.05Cとなるまでとした。放電は、放電電流0.1C、放電終止電圧2.0Vの定電流(CC)放電とした。充電後及び放電後にはそれぞれ10分間の休止期間を設けた。2サイクル目の放電電気量に基づいて、正極活物質層の体積あたりの容量密度(mAh/cm)を求めた。
(充放電サイクル試験)
次いで、初期充放電後の各非水電解質蓄電素子について、25℃にて、以下の条件にて50サイクルの充放電サイクル試験を行った。
充電は、充電電流0.2C、充電電圧4.7Vの定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は、充電電流が0.05Cとなるまでとした。放電は、放電電流0.1C、放電終止電圧2.0Vの定電流(CC)放電とした。充電後及び放電後にはそれぞれ10分間の休止期間を設けた。
上記充放電サイクル試験前後で、各非水電解質蓄電素子の体積を測定し、充放電サイクル試験後の体積増加率(%)を求めた。
各非水電解質蓄電素子の正極活物質層の体積あたりの容量密度(mAh/cm)及び体積増加率(%)について表1に示す。
Figure 0007371571000001
表1から以下のことが確認できる。比較例2と参考例4とを比較すると、正極活物質層の多孔度を低くする、あるいは見かけ密度を高くすると、正極活物質層の体積あたりの容量密度は高まるものの、充放電サイクル後の体積増加率が大きくなる。比較例2と参考例4との対比から、充放電サイクル後に体積増加率が大きくなること、つまり、容器膨れが大きくなることは、正極活物質層を高密度化した場合に顕著になるものであるといえる。
上記比較例2に対して、非水電解質にフッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩であるLiDFP又はフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩であるLiDFOBを含有する実施例1、2は、高い容量密度を保ちつつ、体積増加率が低減されていることがわかる。しかし、非水電解質にTMSPを含有する比較例1は、体積増加率の低減効果が表れなかった。
一方、参考例1から3のように、正極活物質層が高密度化されていない場合は、非水電解質に各化合物を混合しても体積増加率の低減効果は表れなかった。なお、これは、各化合物によって形成される被膜によるガス発生抑制効果よりも、各化合物が分解するときのガス発生の影響が大きいためと推測される。
このように、充放電サイクル後の体積増加率の抑制効果は、高密度化された正極活物質層を備える非水電解質蓄電素子に対して、特定の化合物を含有する非水電解質を適用した場合に生じる特有の効果であることが確認できる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される非水電解質蓄電素子等に適用できる。
1 非水電解質蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、
    上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、
    上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子。
  2. 正極活物質層を有する正極と、非水電解質とを備え、
    上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、
    上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子。
  3. 正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、
    上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    上記正極活物質層の多孔度が35%以下であり、
    上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法。
  4. 正極活物質層を有する正極を準備することと、非水電解質を準備することとを備え、
    上記正極活物質層が、α-NaFeO構造を有し、遷移金属に対するマンガンの含有量がモル比で0.5を超えるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    上記正極活物質層の見かけ密度が2.6g/cm以上であり、
    上記非水電解質が、フッ素原子と酸素原子とを有するリン酸塩及びフッ素原子と酸素原子とを有するホウ酸塩の少なくとも一方を含有する非水電解質蓄電素子の製造方法。
JP2020082073A 2020-05-07 2020-05-07 非水電解質蓄電素子及びその製造方法 Active JP7371571B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020082073A JP7371571B2 (ja) 2020-05-07 2020-05-07 非水電解質蓄電素子及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020082073A JP7371571B2 (ja) 2020-05-07 2020-05-07 非水電解質蓄電素子及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021177458A JP2021177458A (ja) 2021-11-11
JP7371571B2 true JP7371571B2 (ja) 2023-10-31

Family

ID=78409545

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020082073A Active JP7371571B2 (ja) 2020-05-07 2020-05-07 非水電解質蓄電素子及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7371571B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006093067A (ja) 2004-09-27 2006-04-06 Kusaka Rare Metal Products Co Ltd リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
JP2013211239A (ja) 2012-03-30 2013-10-10 Toda Kogyo Corp 正極活物質粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
JP2014011064A (ja) 2012-06-29 2014-01-20 Toyota Motor Corp リチウム二次電池
WO2019117282A1 (ja) 2017-12-15 2019-06-20 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池
JP2020004693A (ja) 2018-06-21 2020-01-09 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006093067A (ja) 2004-09-27 2006-04-06 Kusaka Rare Metal Products Co Ltd リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
JP2013211239A (ja) 2012-03-30 2013-10-10 Toda Kogyo Corp 正極活物質粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
JP2014011064A (ja) 2012-06-29 2014-01-20 Toyota Motor Corp リチウム二次電池
WO2019117282A1 (ja) 2017-12-15 2019-06-20 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池
JP2020004693A (ja) 2018-06-21 2020-01-09 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021177458A (ja) 2021-11-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2022075345A (ja) 蓄電素子用正極及び蓄電素子
JP2022073197A (ja) 蓄電素子用正極活物質合剤、蓄電素子用正極及び蓄電素子
JP2020123465A (ja) 負極及び負極の製造方法
WO2023286718A1 (ja) 蓄電素子
WO2023276863A1 (ja) 非水電解質蓄電素子
EP4047678A1 (en) Electricity storage element and electricity storage device
CN117044001A (zh) 非水电解质蓄电元件
JP7409132B2 (ja) 非水電解質蓄電素子
JP7371396B2 (ja) 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池の製造方法
JP2022091626A (ja) 蓄電素子
JP7371571B2 (ja) 非水電解質蓄電素子及びその製造方法
JP2022134613A (ja) 非水電解質蓄電素子用正極合剤、非水電解質蓄電素子用正極及び非水電解質蓄電素子
CN115516660A (zh) 蓄电元件用正极和蓄电元件
WO2022181516A1 (ja) 非水電解質蓄電素子
WO2024010016A1 (ja) 非水電解質蓄電素子、機器、非水電解質蓄電素子の使用方法及び非水電解質蓄電素子の製造方法
WO2023224071A1 (ja) 非水電解質蓄電素子
WO2023199942A1 (ja) 非水電解質蓄電素子
WO2022097612A1 (ja) 非水電解質蓄電素子用正極、非水電解質蓄電素子及び蓄電装置
WO2023190422A1 (ja) 非水電解質蓄電素子用の正極及びこれを備える非水電解質蓄電素子
WO2022209815A1 (ja) 非水電解質蓄電素子用正極活物質、非水電解質蓄電素子用正極、非水電解質蓄電素子、蓄電ユニット及び蓄電装置
WO2022249667A1 (ja) 非水電解質蓄電素子及び蓄電装置
WO2023100801A1 (ja) 非水電解質蓄電素子、機器及び非水電解質蓄電素子の使用方法
WO2023032751A1 (ja) 非水電解質蓄電素子用の正極、非水電解質蓄電素子及び蓄電装置
WO2022230835A1 (ja) 非水電解質蓄電素子
WO2023204049A1 (ja) 非水電解質蓄電素子及び蓄電装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230208

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230913

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230919

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20231002

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7371571

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150