JP6854718B2 - 鍍金用組成物、鍍金用成形体、鍍金成形体及び鍍金方法 - Google Patents

鍍金用組成物、鍍金用成形体、鍍金成形体及び鍍金方法 Download PDF

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本発明は、鍍金用組成物、鍍金用成形体、鍍金成形体及び鍍金方法に関する。更に詳しくは、本発明は、鍍金により、その表面に、密着性に優れた金属膜又は合金膜を形成することができる鍍金用成形体を与える鍍金用組成物、金属膜又は合金膜を備える鍍金成形体、並びに、鍍金方法に関する。
従来、成形体の表面に鍍金を行うことにより得られた、金属膜又は合金膜を備える鍍金成形体は、例えば、外観性を金属調としたり、デザイン性を高めたり、耐久性や耐候性を高めたり、制電性、通電性、電磁波遮蔽性を付与したりといった目的で、車両部品、電気・電子部品、OA機器用部品、家電製品、住宅用部品、服飾用品等において用いられている。
成形体への鍍金方法としては、エッチング(表面粗化)、中和、触媒付与、活性化、無電解鍍金、酸活性、電気鍍金等の工程を、順次、進める、所謂、キャタリスト・アクセレレーター法や、このうち、無電解鍍金工程を省略したダイレクト鍍金法が知られている。
成形加工性、耐衝撃性等に優れ、鍍金により、その表面に対する金属層又は合金層の形成に好適な成形体を与える熱可塑性樹脂組成物としては、ABS樹脂を主とする組成物が知られている。(特許文献1、2等)
特開2002−338636号公報 特開2007−177223号公報
鍍金成形体の用途拡大に伴い、鍍金により作製される金属層との密着性により優れた成形体を与える鍍金用成形材料が必要である。また、成形体に対して衝撃を与えた場合、成形体が脆性破壊すると破片が飛散してしまう。これを抑制するために、衝撃に対し延性破壊される成形体を作製するための鍍金用成形材料が必要である。
本発明は、外部からの衝撃に対して延性破壊される傾向を有し、耐衝撃性に優れ、その表面に、鍍金により密着性に優れた金属層又は合金層を形成することができる成形体(鍍金用成形体)を与える鍍金用組成物、金属層又は合金層を備える鍍金成形体並びに鍍金方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
適用例1
本発明の鍍金用組成物の一態様は、異相重合体粒子及び水を含有し、水の含有割合は、鍍金用組成物の全体に対して0.1〜1質量%である。
適用例2
上記異相重合体粒子の粒子径の変動係数は40〜90%であることが好ましい。
適用例3
上記異相重合体粒子において、0.05μm以上の粒子径を有する重合体粒子の含有割合が、上記異相重合体粒子の全体に対して80体積%以上であり、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する重合体粒子の含有割合が、上記異相重合体粒子の全体に対して10〜60体積%であることが好ましい。
適用例4
本発明の鍍金用成形体の一態様は、適用例1乃至3のいずれか一項に記載の鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する。
適用例5
本発明の鍍金用成形体において、上記鍍金用組成物に含まれる上記異相重合体粒子及び上記熱可塑性樹脂の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜80質量%及び20〜90質量%であることが好ましい。
適用例6
本発明の鍍金成形体の一態様は、適用例4又は5に記載の鍍金用成形体と、該鍍金用成形体の表面に配された鍍金層とを備える。
適用例7
本発明の鍍金方法の一態様は、適用例4又は5に記載の鍍金用成形体に鍍金層を形成する方法であって、上記鍍金用成形体を、30〜80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する方法である。
本発明の鍍金用組成物及び鍍金用成形体は、密着性に優れた金属層又は合金層の形成に好適である。そして、外部からの衝撃に対して耐衝撃性に優れる。
本発明の鍍金用成形体によれば、鍍金による銅層等の金属層又は合金層の形成性及びこれらの層の下地への密着性に優れた鍍金成形体を与える。
本発明の鍍金成形体は、金属層又は合金層の下地成形部への密着性に優れるので、外観性も優れる。
本発明の鍍金方法によれば、下地成形部への密着性に優れた金属層又は合金層を効率よく形成することができる。
コアシェル異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 海島状(アイランド・イン・シー)異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 いいだこ状異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 別のいいだこ状異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 並置型(サイド・バイ・サイド)異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 多粒子異相型異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 ラズベリー状異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 別の多粒子異相型異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。 だるま状異相構造を有する異相重合体粒子の断面図。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本明細書における「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」及び「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」及び「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。また、「(メタ)アリル」とは、「アリル」及び「メタリル」の双方を包括する概念である。
1.鍍金用組成物
本発明の鍍金用組成物は、異相重合体粒子及び水を含有し、水の含有割合は、鍍金用組成物の全体に対して0.1〜1質量%であることを特徴とする。本発明の鍍金用組成物は、必要に応じて、他の成分(後述)を含有することができる。
本発明の鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する鍍金用成形材料を用いて鍍金用成形体を製造した場合、異相重合体粒子は、成形体の内部に含まれるだけでなく、その表面に露出する。この鍍金用成形体に電気鍍金等を施す場合には、初めに、鍍金用成形体の表面をエッチング液に接触させる等の処理がなされるが、このとき、鍍金用成形体の表面に露出した異相重合体粒子は除去され、成形体表面に凹部が形成される。このようにして形成された凹部は、鍍金膜の密着性を向上させるアンカー孔として機能し、良好な密着強度を発現する鍍金膜が作製できると推測する。
以下、本発明の鍍金用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1−1.異相重合体粒子
本発明に係る異相重合体粒子は、均一相ではなく、互いに異なる2以上の相から構成された粒子である。
上記異相重合体粒子の断面構造としては、コアシェル異相構造(図1)、海島状(アイランド・イン・シー)異相構造(図2)、いいだこ状異相構造(図3、図4)、並置型(サイド・バイ・サイド)異相構造(図5)、ラズベリー状異相構造(図7)、多粒子異相型異相構造(図6、図8)、だるま状異相構造(図9)等が挙げられる。これらの異相構造のうち、コアシェル異相構造(図1)が好ましい。本発明の鍍金用組成物は、上記のような各種の異相構造の2種以上が組み合わされて1つの異相粒子を形成したものを含んでもよい。
上記異相重合体粒子は、化学構造が異なる2以上の重合体あるいは化学構造が異なる2以上のブロック構造を有する重合体が形成する単一粒子であることが好ましい。
上記異相重合体粒子が、化学構造の異なる2以上の重合体により構成されている場合、耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する重合体が、本発明の鍍金用組成物と併用される熱可塑性樹脂(スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等)との親和性が高い化学構造を有する重合体と組み合わされてなるものであることが好ましい。また、上記異相重合体粒子が、化学構造の異なる2以上のブロック構造を有する重合体により構成されている場合、耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有するブロックと、熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有するブロックとを有し、それが相分離して異相構造を形成していることが好ましい。
尚、耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する単一の重合体により構成される均質な重合体粒子と、熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有する単一の重合体により構成される均質な重合体粒子を熱可塑性樹脂とともに混練して得られた組成物では、2種類の均質な重合体粒子の比重差、粒子表面張力、表面の極性の違い等により、熱可塑性樹脂の中に均一に分散することは困難である。しかし、本発明の鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子が、上述のような化学構造が異なる2以上の重合体あるいは化学構造が異なる2以上のブロック構造を有する重合体が形成する単一粒子である場合、重合体の違いによる熱可塑性樹脂による不均質な分散を抑制することができ、熱可塑性樹脂の中に均一に混合することが容易になる。
上記異相重合体粒子を熱可塑性樹脂の中に均一に分散させてなる組成物(鍍金用成形材料)を用いて作製された本発明の鍍金用成形体の表面には、均質に異相重合体粒子が露出する。鍍金用成形体に金属膜又は合金膜を形成するために鍍金を行う場合、露出した異相重合体粒子は、鍍金用成形体の表面をエッチング液に接触させる等、エッチング(表面粗化)を行う処理により除去される。その結果、成形体表面に均質なアンカー孔が形成される。このようにして作製されたアンカー孔を有する成形体の表面に鍍金層を作製することにより、良好な密着強度を発現する鍍金膜が作製できると推測する。
上記異相重合体粒子が、化学構造が異なる2以上の重合体で構成されている場合、該重合体のうち、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する重合体Aと、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有する重合体Bとの質量比(A/B)は、好ましくは1/0.1〜1/1.5、より好ましくは1/0.3〜1/1である。また、重合体Aと重合体Bとの合計量の割合は、異相重合体粒子全体に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
上記異相重合体粒子が、化学構造が異なる2以上のブロック構造を有する重合体で構成されている場合、該重合体のブロック構造の割合は、該重合体のうち、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有するブロック構造A’と、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有するブロック構造B’との質量比(A‘/B’)は、好ましくは1/0.1〜1/1.5、より好ましくは1/0.3〜1/1である。また、ブロック構造A‘とブロック構造B’との合計量の割合は、異相重合体粒子全体に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
上記異相重合体粒子を含有する本発明の鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含む鍍金用成形材料を用いて作製された鍍金用成形体において、その表面に露出した異相重合体粒子は、エッチングにより除去されてアンカー孔を形成し、その後、良好な密着強度を発現する鍍金膜を与えると推測する。しかし、鍍金用成形体の表面に露出していない異相重合体粒子は、エッチングにより除去されることなく鍍金用成形体の内部に残留し、成形体の機械的強度に影響を与える。
しかし、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する重合体Aと、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有する重合体Bとを有する異相重合体粒子、あるいは、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有するブロック構造A‘と、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有するブロック構造B’とを有する異相重合体粒子を、上記好ましい構成で含有することにより、エッチング後に鍍金用成形体の機械強度を大幅に劣化させることなく、良好な機械特性を示す鍍金成形体を作製することができる。
本発明の鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の粒子径は、特に限定されないが、0.03〜1μmの範囲にあることが好ましい。
また、上記異相重合体粒子の平均粒子径は、50nm〜400nmの範囲にあることが好ましく、80nm〜250nmの範囲にあることがより好ましい。異相重合体粒子の平均粒子径が上記範囲内にあると、異相重合体粒子を含有する本発明の鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含む鍍金用成形材料を用いて作製された鍍金用成形体に対して鍍金を行う場合に、エッチング(表面粗化)にて、微細なアンカー孔を効率よく形成させ、鍍金後の金属膜又は合金膜の密着性をより向上させることができる。
尚、異相重合体粒子の平均粒子径は、異相重合体粒子を四酸化オスミウムにより染色し、その後、染色された重合体粒子を透過型電子顕微鏡により観察して得られた画像より、染色された粒子を任意に、例えば、200個選択し、解析ソフトを用いて算出することができる。
本発明において、異相重合体粒子の粒子径の変動係数は、耐衝撃性に優れた鍍金用成形体を与え、この鍍金用成形体に鍍金を行った際に、下地成形部に対する密着性に優れた金属層又は合金層が効率よく形成されることから、好ましくは40〜90%、より好ましくは40〜80%、更に好ましくは45〜75%である。
上記変動係数は、異相重合体粒子の体積平均粒子径と粒子径分布の標準偏差とを用いて、下記式により得ることができる。
変動係数(%)=(標準偏差/体積平均粒子径)×100
尚、異相重合体粒子の粒子径は、上記のように、四酸化オスミウムにより染色した粒子の透過型電子顕微鏡による観察と、TEM画像の解析により測定することができるので、体積平均粒子径及び標準偏差は、粒子径の測定値から算出することができる。
本発明において、0.05μm以上の粒子径を有する異相重合体粒子の含有割合R1は、鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の全体に対して、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上である。また、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する異相重合体粒子の含有割合R2は、鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の全体に対して、好ましくは10〜60体積%、より好ましくは20〜50体積%である。異相重合体粒子の含有割合R1及びR2が上記構成を有することにより、鍍金用組成物及び熱可塑性樹脂を含む鍍金用成形材料を用いて作製された鍍金用成形体の耐衝撃性及び鍍金による金属層等の密着性を向上させることができる。
尚、上記含有割合R1は、0.05μm以上の粒子径を有する異相重合体粒子の合計体積をV1とし、鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の全体の体積をVとして、下記式により算出することができる。
R1=(V1/V)×100
更に、上記含有割合R2は、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する異相重合体粒子の合計体積をV2とし、鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の全体の体積をVとして、下記式により算出することができる。
R2=(V2/V)×100
上記異相重合体粒子の粒子径の変動係数は、異相重合体粒子の製造条件により制御することができる。また、予め、2種類以上の異相重合体粒子を作製し、それらを併用することにより、変動係数を制御してもよい。例えば、互いにサイズの異なる異相重合体粒子(A1)及び異相重合体粒子(A2)の2種を併用して変動係数を制御する場合、異相重合体粒子(A1)の粒子径は、好ましくは50〜150nm、より好ましくは60〜120nmであり、また、異相重合体粒子(A2)の粒子径は、好ましくは200〜800nm、より好ましくは250〜700nmである。
上記のように、好ましい態様の異相重合体粒子は、化学構造が異なる2以上の重合体あるいは化学構造が異なる2以上のブロック構造を有する重合体を含有する。本発明においては、耐衝撃性等の機械特性に寄与する、共役ジエンに由来する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(r1)」という)と、本発明の鍍金用組成物と併用される熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(r2)」という)とを含む化学構造が異なる2以上の重合体あるいは化学構造が異なる2以上のブロック構造を有する重合体を含有することが好ましい。
以下、このような異相重合体粒子を構成する重合体に含有される繰り返し単位について、説明する。
共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)を有する異相重合体粒子及び水を含有する鍍金用組成物を、熱可塑性樹脂とともに併用することにより、耐衝撃性等の機械特性に優れた鍍金用成形体を製造することができる。尚、上記繰り返し単位(r1)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。これらのうち、1,3−ブタジエンが特に好ましい。尚、異相重合体粒子に含まれる、共役ジエンに由来する繰り返し単位は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
上記繰り返し単位(r1)の含有割合は、共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)を含有する重合体を100質量部とした場合に、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。鍍金用成形体が、共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)の含有割合が上記範囲内にある異相重合体粒子及び水を含む鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料を用いて得られたものであると、耐衝撃性のさらなる向上が可能となる。
また、上記異相重合体粒子は、共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)が45質量%以上である重合体と、熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位(r2)の合計が20質量%以上である重合体を含有することがより好ましい。
上記異相重合体粒子は、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位(r2)を含有することができ、この場合、上記異相重合体粒子及び水を含む鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを混練した際に、熱可塑性樹脂の中に異相重合体粒子を均一分散させることができ、機械的強度に優れた鍍金用成形体を製造することができる。
上記熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、ジカルボン酸無水物基、カルボニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、ホルミル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、イミド基、オキサゾリン基、イソシアネート基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、メルカプト基、スルフィド基、スルフィニル基、チオカルボニル基、チオリン酸基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基等が挙げられる。これらのうち、カルボン酸エステル基及びシアノ基が好ましい。尚、異相重合体粒子に含まれる繰り返し単位(r2)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
カルボン酸エステル基を含む繰り返し単位を与える単量体としては、不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、この(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが特に好ましい。
シアノ基を含む繰り返し単位を与える単量体としては、不飽和ニトリル化合物等が挙げられる。
不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。
上記繰り返し単位(r2)の含有割合は、異相重合体粒子を構成する重合体が含有する繰り返し単位の合計を100質量%とした場合に、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%である。鍍金用成形体が、特に、不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位(r2)の含有割合が上記範囲内にある異相重合体粒子及び水を含む鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料を用いて得られたものであると、機械的強度のさらなる向上が可能となる。
上記異相重合体粒子は、上記以外の他の繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(r3)」という)を含んでもよい。上記繰り返し単位(r3)としては、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位、エチレン性不飽和結合を有する含フッ素化合物に由来する繰り返し単位、エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミドに由来する繰り返し単位、カルボン酸ビニルエステルに由来する繰り返し単位、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物に由来する繰り返し単位、エチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドに由来する繰り返し単位等が挙げられる。尚、異相重合体粒子に含まれる繰り返し単位(r3)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。これらのうち、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位、及び、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位が好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の、モノカルボン酸又はジカルボン酸が挙げられる。これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸が好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する含フッ素化合物としては、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドとしては、アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記好ましい態様の異相重合体粒子において、上記繰り返し単位(r1)、(r2)及び(r3)はどのように分布していてもよいが、少なくとも繰り返し単位(r2)は、粒子の表面に露出していることが好ましい。
次に、異相重合体粒子の物性について、説明する。
上記異相重合体粒子において、この粒子を構成する複数の相の吸熱ピーク差が5℃以上であることが好ましい。
また、本発明においては、異相重合体粒子を、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)に供したときに、−100℃〜200℃の温度範囲において2つ以上の吸熱ピークを示す重合体粒子であることが好ましい。この温度範囲に2つ以上の吸熱ピークを有する異相重合体粒子及び水を含有する鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料を用いて得られる鍍金用成形体は、優れた耐衝撃性及び鍍金密着性を有する。尚、2つ以上の吸熱ピークは、−95℃〜180℃の範囲にあることがより好ましく、−90℃〜160℃の範囲にあることが特に好ましい。
また、−100℃〜0℃の温度範囲において2つ以上の吸熱ピークを示す異相重合体粒子及び水を含有する鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する成形材料を用いて得られる鍍金用成形体は、弾性が向上し、耐衝撃性がより良好となる。この場合、2つ以上の吸熱ピークの温度は、−95℃〜−20℃の範囲にあることが好ましく、−90℃〜−40℃の範囲にあることがより好ましい。
更に、50℃〜200℃の温度範囲において2つ以上の吸熱ピークを示す異相重合体粒子及び水を含有する鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含む成形材料は、鍍金用成形体を製造する際の溶融混練時に適度な流動性を有し、成形加工性に優れる。この場合、2つ以上の吸熱ピークの温度は、70℃〜180℃の範囲にあることが好ましく、90℃〜160℃の範囲にあることがより好ましい。
異相重合体粒子の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは50,000〜150,000である。尚、このMwは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)により測定された標準ポリスチレン換算値である。
本発明の鍍金用組成物に含まれる異相重合体粒子の製造方法は、特に限定されず、従来、公知の方法により製造することができる。例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法等の二段重合による方法、複数の重合体を溶剤の存在下あるいは非存在下に混合し、凝固乾燥後、粉砕し、又は、スプレードライ法等の方法により噴霧乾燥して粉体とする方法等を適用することができる。本発明で用いられる異相重合体粒子の製造方法の具体例としては、常法により、所定の単量体を用いて、重合転化率が20〜100%となるまで重合し、引き続き、別の重合体となる単量体を添加し、常法により重合させる方法(二段重合法)や、別々に合成されたラテックス状の2種類以上の重合体粒子を室温〜300℃で、2〜100時間攪拌混合し、異相重合体粒子を形成させる方法等が挙げられる。
上記好ましい態様の異相重合体粒子、即ち、共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)を含む異相重合体粒子を製造する場合、例えば、公知の重合法により作製した所定の平均粒子径を有し、繰り返し単位(r1)を含む重合体粒子(原料粒子)の水分散体(ラテックス)に、熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位を与える単量体を添加して乳化重合させ、グラフト化する方法を適用することが好ましい。この単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等が好ましい。このグラフト重合により、異相重合体粒子が水系媒体に分散した水分散体(ラテックス)を得た場合、凝固剤を添加することにより沈降させ、その後、水洗、乾燥することにより、異相重合体粒子を含む粉体とすることができる。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸等を用いることができる。
尚、乳化重合において用いることのできる乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;パーフルオロブチルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等のフッ素系界面活性剤等が挙げられる。使用する乳化剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
また、重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。使用する重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
グラフト重合の際には、連鎖移動剤を併用することができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。使用する連鎖移動剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)を含む原料粒子の水分散体に、グラフト重合用の単量体を添加して重合を行った場合、得られる異相重合体粒子におけるグラフト率は、好ましくは10〜150質量%、より好ましくは30〜100質量%である。
尚、このグラフト率は、下記式により求められる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
(式中、Sは、製造された異相重合体粒子1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離・乾燥して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、異相重合体粒子1gに含まれる、共役ジエンに由来する繰り返し単位を有する原料粒子の質量(g)である。)
上記グラフト重合の際に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を用いる場合、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計使用量の割合は、単量体の全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)を含む原料粒子の水分散体に、熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位を与える単量体を添加してグラフト重合することにより製造された異相重合体粒子において、形成されたグラフト部位の平均厚さは、好ましくは3〜30nm、より好ましくは4〜25nmである。
尚、グラフト部位の平均厚さは、公知の方法により、異相重合体粒子を四酸化オスミウム等で染色し、透過型電子顕微鏡により観察することにより測定することができる。
本発明の鍍金用組成物は、複数の異相重合体粒子を含有することができ、このような態様の異相重合体粒子を製造する場合であって、例えば、異相重合体粒子(A11)及び異相重合体粒子(A12)を含有する異相重合体粒子を製造する場合、異相重合体粒子(A11)を含有する水分散体と、異相重合体粒子(A12)を含有する水分散体とを混合し、その後、混合液に凝固剤を添加すればよい。また、異相重合体粒子(A11)を含有する水分散体と、異相重合体粒子(A12)を含有する水分散体とを、それぞれ、凝固させて各粉体を製造した後、混合してもよい。
1−2.水
本発明の鍍金用組成物は、水を含有し、その含有割合は、鍍金用組成物の全体に対して0.1〜1質量%であり、好ましくは0.2〜0.5質量%である。上記の含有割合の水を含む鍍金用組成物を、熱可塑性樹脂とともに含む鍍金用成形材料を用いて鍍金用成形体を製造すると、外観性に優れ、更に鍍金を行った場合には、良好な密着性を有する鍍金膜を備える鍍金成形体を得ることができる。
本発明の鍍金用組成物に含まれる水は、JIS K7251 「プラスチック−水分含有率の求め方」のB法(カールフィッシャー法)に準拠して定量することができる。
一般的に、水は、上記鍍金用成形材料を成形に供した際の高い温度にて気化し、得られる成形体の外観を損なうと考えられてきた。このため、熱可塑性の鍍金用成形材料においては、水の混入を可能な限り回避しようとすることが業界の常識であった。
しかしながら、上記の含有割合で水を含む鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを用いて、鍍金用成形体を製造すると、優れた鍍金特性を示すこととなるのである。この発現機構は、明らかではないが、本発明者らは、以下のような作用に起因するものと推察している。
鍍金用成形体においては、その表面に形成される鍍金膜の密着強度を向上させるために、表面に適度な凹凸が必要である。上記のように、本発明の鍍金用組成物の必須成分である異相重合体粒子は、鍍金用成形体において内部に存在するだけでなく表面に露出するため、鍍金用成形体がエッチング液に接触した際に、露出した異相重合体粒子は除去され、アンカー孔が形成される。一方、鍍金用成形体の内部に含まれ、表面に露出していない異相重合体粒子は、エッチング後においても内部に残留し、成形体の機械的強度に影響を与えてしまう。このため、鍍金用成形体を製造するための成形材料に異相重合体粒子を多量に配合することにより、成形体表面にアンカー孔を多数作製し、鍍金膜の密着強度を向上させることができるものの、成形体の機械的強度そのものも大幅に変化してしまう。
しかしながら、成形時の加熱により気化し、鍍金用成形体の内部から表面へ移動し、そして適度に成形体表面を荒しながら脱離する水分は、このような成形体そのものの機械的強度への影響は小さいと推測する。その結果、異相重合体粒子だけでなく水を含む鍍金用組成物を用いることにより、成形体自身の機械的強度の変化を最低限に抑制したまま、より効果的に成形体表面にアンカー孔を形成させ、鍍金膜の密着強度を向上させることができたと考察する。
本発明の鍍金用組成物における水の量は、例えば、乳化重合により異相重合体粒子を製造した場合、凝固後の乾燥方法を適宜、選定する等により制御することができる。その具体例は、脱湿乾燥機、減圧乾燥機、熱風乾燥機等の乾燥機を用い、合成された異相重合体粒子に適した温度及び時間で加熱処理することである。
1−3.他の成分
本発明の鍍金用組成物は、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、充填剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等の他の成分を含有することができる。
老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
滑剤としては、ワックス、シリコーン、脂質等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。
充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。
熱安定剤としては、ホスファイト系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、アミン系熱安定剤等が挙げられる。
難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、これらの変性化合物、縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
2.鍍金用成形体
本発明の鍍金用成形体は、鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する物品である。本発明の鍍金用成形体は、鍍金用組成物及び熱可塑性樹脂を含む鍍金用成形材料又はこの成形材料を構成する個々の原料成分を、射出成形装置、プレス成形装置、カレンダー成形装置、Tダイ押出成形装置、異形押出成形装置等、従来、公知の成形装置で加工することにより製造することができる。
本発明の鍍金用成形体に含まれる異相重合体粒子及び熱可塑性樹脂の含有割合は、その表面に密着性に優れた金属層又は合金層の形成に好適であり、外部からの衝撃に対して耐衝撃性に優れる鍍金用成形体が効率よく得られることから、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜80質量%及び20〜90質量%、より好ましくは15〜70質量%及び30〜85質量%、更に好ましくは20〜60質量及び40〜80質量%である。
上記熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・マレイミド系化合物三元共重合体、ポリスチレン、スチレン・無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;又はこれらの少なくとも2種を含むアロイ等が挙げられる。これらのうち、スチレン系樹脂が好ましく、鍍金用組成物に含まれた異相重合体粒子が、均質に分散されており、機械的強度により優れることから、ABS樹脂が特に好ましい。
上記熱可塑性樹脂がABS樹脂を含む場合、鍍金用組成物に由来する異相重合体粒子の含有割合は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは30〜180質量部、より好ましくは50〜150質量部である。
また、上記熱可塑性樹脂がABS樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイを含む場合、鍍金用組成物に由来する異相重合体粒子の含有割合は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは15〜90質量部、より好ましくは25〜75質量部である。尚、上記アロイの構成は、鍍金用成形体の耐衝撃性、及び、鍍金膜の密着強度の観点から、ABS樹脂100質量部に対するポリカーボネート樹脂の割合は、好ましくは100〜1000質量部である。
本発明の鍍金用成形体は、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、充填剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等の他の成分を含有することができる。
本発明の鍍金用成形体を、従来、公知の鍍金方法であるキャタリスト・アクセレレーター法や、ダイレクト鍍金法、クロムフリー鍍金法等に供することにより、アンカー孔を効率よい形成性、更には、金属又は合金の優れた析出性及び成長性が得られ、下地に対する密着性及び外観性に優れた金属層又は合金層を形成することができる。
3.鍍金成形体
本発明の鍍金成形体は、鍍金用成形体の表面の少なくとも一部に金属又は合金を含む鍍金層を備える物品である。鍍金層の厚さは、好ましくは5〜200μm、より好ましくは5〜150μmである。
本発明の鍍金成形体において、鍍金層(金属層又は合金層)が形成されている下地成形部が、異相重合体粒子の脱離により形成された凹部を含むことから、下地成形部の表面と、鍍金層との密着性に優れ、鍍金成形体の外観性にも優れる。
本発明の鍍金成形体は、公知の方法を適用して、鍍金用成形体の表面に鍍金することにより製造することができる。例えば、鍍金用成形体に対して、エッチング(表面粗化)、中和、触媒付与、活性化、無電解鍍金、酸活性、電気鍍金等の工程を、順次、進めるキャタリスト・アクセレレーター法や、このキャタリスト・アクセレレーター法における無電解鍍金工程を省略したダイレクト鍍金法等により、鍍金層を形成し、鍍金成形体を製造することができる。
本発明の鍍金成形体は、車両用部品、電気製品、電子部品、筐体、枠、取っ手等に使用することができる。
4.鍍金方法
本発明の鍍金方法は、鍍金用成形体に30〜80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する方法である。
エッチング工程で用いるエッチング液は、特に限定されないが、重クロム酸、重クロム酸/硫酸混液、無水クロム酸、無水クロム酸/硫酸混液等を含むものとすることができる。このエッチング工程では、エッチング液の温度によりエッチング状態が変化し、アンカー孔のサイズに影響を与えるため、エッチング液の温度は、30〜80℃であり、好ましくは40〜70℃である。エッチング液の温度が低過ぎると、アンカー孔の形成が不十分となる。一方、エッチング液の温度が高過ぎると、オーバーエッチングとなる。
その後の鍍金工程では、上記記載の方法を適用することができる。
5.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
5−1.異相重合体粒子の合成
合成例1
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び各原料添加装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、イオン交換水150質量部、1,3−ブタジエン100質量部、tert−ドデシルメルカプタン0.5質量部、高級脂肪酸ナトリウム4質量部、炭酸ナトリウム0.8質量部、水酸化カリウム0.075質量部及び過硫酸カリウム0.15質量部を仕込み、80℃で5時間反応させ、ジエン系重合体粒子(以下、「原料粒子L1」という)の水分散体(ラテックス)を得た。
日機装社製「マイクロトラックUPA150粒度分析計」を用いてレーザードップラー/周波数解析を行い、原料粒子L1の体積平均粒子径を測定した結果、原料粒子L1の体積平均粒子径は83nmであり、粒子径分布の標準偏差は3nmであった。
次に、撹拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、40質量部の原料粒子L1を含むラテックスと、ピロリン酸ナトリウム0.2質量部、硫酸第一鉄7水和物0.004質量部及びブドウ糖0.3質量部を、イオン交換水8質量部に溶解した溶液とを仕込み、撹拌下、内温70℃でイオン交換水30質量部、ロジン酸カリウム0.5質量部、スチレン45質量部、アクリロニトリル15質量部、tert−ドデシルメルカプタン0.45質量部及びクメンハイドロパーオキサイド0.25質量部を、3.5時間かけて連続的に添加した。そして、この反応液を、更に1時間撹拌し、異相重合体粒子P1の水分散体(ラテックス)を得た。
その後、老化防止剤0.5質量部を添加し、次いで、硫酸水溶液を添加して凝固させ、乾燥することにより、異相重合体粒子P1の粉体を得た。
1gの異相重合体粒子P1を、アセトン20mlに投入し、2時間振とうした。次いで、完全に2層に分かれるまで遠心分離を行い、不溶分を回収して、乾燥・固化させた後、不溶分の質量(Sグラム)を測定した。異相重合体粒子P1の1g中に含まれる原料粒子の質量は既知(Tグラム)であるので、下記式により、グラフト率78%を得た。
グラフト率=100×(S−T)/T
また、グラフト率を求める際に得られたアセトン可溶分、即ち、未グラフトの(共)重合体を乾燥・固化させた後、THFに溶解したサンプルを、示差屈折率検出器を用いたGPC測定に供し、標準ポリスチレンによる重量平均分子量(Mw)を算出した結果、103,000であった。
更に、アセトン可溶分、即ち、未グラフトの(共)重合体を構成する、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位の含有量(シアン化ビニル化合物単位量)を測定した。サンプルを元素分析することにより窒素を定量し、得られた窒素量からシアン化ビニル化合物単位量を算出したところ、25%であった。
1gの異相重合体粒子P1を、アセトン20mlに投入し、2時間振とうした。次いで、完全に2層に分かれるまで遠心分離を行い、不溶分を回収して、アセトンの中に再分散させた。この分散液40μlを水100gで希釈し、この希釈液をTEMグリッドに載せ、乾燥させることにより、粒子測定用のサンプルを作製した。
その後、サンプルを、加温により発生させた四酸化オスミウム蒸気に接触させて、異相重合体粒子P1を染色した。これを日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−1400Plus」により、倍率2500倍にて任意に200個を観察し、相の異なる染色部と非染色部が一つの粒子中に存在することを確認した。その結果、異相重合体粒子P1は、図1に示すコアシェル型の異相重合体粒子であることが分かった。
得られたTEM画像を、画像解析ソフト「Image−Pro Plus Ver.4.0 for Windows(登録商標)」を用いて、異相重合体粒子P1の体積平均粒子径を測定したところ、90nmであった。また、全粒子の体積を算出し、更に、粒子径が0.05μm以上0.15μm未満の粒径区間に存在する粒子の体積%、及び、粒子径が0.15μm以上0.5μm以下の粒径区間に存在する粒子の体積%を算出した。結果を表1に示す。
また、異相重合体粒子P1について、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)を行い、ガラス転移温度Tgを観測した。2つのTgが観測され、−81℃及び103℃であった。
合成例2〜7
電解質の使用量及び重合時間を、適宜、調整した以外は、合成例1における原料粒子L1の製造と同様の操作を行って、原料粒子L2〜L7を得た。原料粒子L2〜L7のガラス転移温度、体積平均粒子径、及び、粒子径分布の標準偏差を合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
次いで、原料粒子L2〜L7を含む各ラテックスを用い、重合開始剤又は連鎖移動剤の使用量を、適宜、調整した以外は、合成例1と同様の操作を行って、異相重合体粒子P2〜P7を合成した。異相重合体粒子P2〜P7の物性についても、合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
合成例8
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、各原料添加装置及び助剤添加装置を備えるステンレス鋼製オートクレーブに、イオン交換水150質量部、1,3−ブタジエン50質量部、tert−ドデシルメルカプタン0.3質量部、高級脂肪酸ナトリウム2質量部、水酸化カリウム0.075部及び過硫酸カリウム0.15質量部を仕込み、80℃で重合を開始した。3時間経過後、1,3−ブタジエン50質量部及びtert−ドデシルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に4時間重合を継続して、原料粒子L8の水分散体を得た。得られた原料粒子L8のガラス転移温度、体積平均粒子径、及び、粒子径分布の標準偏差を合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
次いで、原料粒子L8を含むラテックスを用い、重合開始剤又は連鎖移動剤の使用量を、適宜、調整した以外は、合成例1と同様の操作を行って、異相重合体粒子P8を合成した。異相重合体粒子P8の物性についても、合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006854718
5−2.鍍金用組成物の製造
実施例1−1
15質量部の異相重合体粒子P1及び30質量部の異相重合体粒子P5を混合し、鍍金用組成物M1を得た。この鍍金用組成物M1について、JIS K7251 「プラスチック−水分含有率の求め方」のB法(カールフィッシャー法)に準拠して、含水率を測定した。結果を表2に示す。
また、1gの鍍金用組成物M1を、アセトン20mlに投入し、2時間振とうした。次いで、完全に2層に分かれるまで遠心分離を行い、不溶分を回収して、アセトンの中に再分散させた。この分散液40μlを水100gで希釈し、この希釈液をTEMグリッドに載せ、乾燥させることにより、粒子測定用のサンプルを作製した。
その後、サンプルを、加温により発生させた四酸化オスミウム蒸気に接触させて、鍍金用組成物M1を染色した。これを日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM−1400Plus」により、倍率2500倍にて任意に200個を観察した。
得られたTEM画像を、画像解析ソフト「Image−Pro Plus Ver.4.0 for Windows(登録商標)」を用いて、粒子径が0.05μm以上0.15μm未満の粒径区間に存在する粒子の体積%、及び、粒子径が0.15μm以上0.5μm以下の粒径区間に存在する粒子の体積%を算出した。結果を表2に示す。
更に、鍍金用組成物M1について、異相重合体粒子P1と同様にして、体積平均粒子径及び標準偏差を測定し、下記式により、変動係数を算出した。結果を表2に示す。
変動係数(%)=(標準偏差/体積平均粒子径)×100
実施例1−2〜1−11及び比較例1−1〜1−6
各種異相重合体粒子を、表2に記載の割合で用いて、鍍金用組成物M2〜M17を製造した。そして、実施例1−1と同様にして、物性測定を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0006854718
5−3.鍍金用成形体の製造及び評価
実施例2−1
45質量部の鍍金用組成物M1と、熱可塑性樹脂として、55質量部のアクリロニトリル・スチレン共重合体(アクリロニトリルに由来する繰り返し単位:30質量%、スチレンに由来する繰り返し単位量:70質量%、重量平均分子量Mw:104,000)とを、ヘンシェルミキサーにより混合した後、バンバリーミキサーを用いて、溶融混練(設定温度200℃)し、鍍金用成形材料のペレットを作製した。
上記ペレット1gを、アセトン(上記熱可塑性樹脂が完全に溶解する適切な溶媒)20mlに投入し、2時間振とうした。次いで、完全に2層に分かれるまで遠心分離を行い、不溶分を回収して、アセトンの中に再分散させた。この分散液40μlを水100gで希釈し、この希釈液をTEMグリッドに載せ、乾燥させることにより、ペレットに含まれる異相重合体粒子を測定するためのサンプルを作製した。そして、上記と同様にして、粒子径が0.05μm以上0.15μm未満の粒径区間に存在する粒子の体積%、及び、粒子径が0.15μm以上0.5μm以下の粒径区間に存在する粒子の体積%を算出したところ、鍍金用成形材料を製造前の表2に示す鍍金用組成物M1と同じ結果を得た。
また、上記処理により回収した異相重合体粒子について、体積平均粒子径及び標準偏差を測定し、下記式により、変動係数を算出したところ、鍍金用成形材料を製造前の表2に示す鍍金用組成物M1に含まれる異相重合体粒子と同じ結果を得た。
変動係数(%)=(標準偏差/体積平均粒子径)×100
上記ペレットを用いて、日本製鋼所社製射出成形機「J100E−C5型」(型式名)により、シリンダー設定温度220℃及び金型温度40℃の条件で射出成形し、ISO 179に準ずるサイズの試験片(ノッチ付き、厚さ2mm)を得た。そして、デジタル衝撃試験機「DG−CB」(型式名)を用いて、ISO179に準拠してシャルピー衝撃強さ(単位kJ/m)を測定した。シャルピー衝撃強さが15kJ/mであれば、耐衝撃性に優れると判断できる。その結果を表3に示す。
更に、上記ペレットを用いて、上記成形条件により、長さ150mm、幅70mm、厚さ3.2mmの試験片を作製し、奥野製薬工業社製のCRPプロセスを用いて、この表面に銅鍍金を行った。そして、得られた鍍金成形体における鍍金膜のピーリング強度及び外観性を、以下の方法で評価した。その結果を表3に示す。
初めに、試験片を40℃の「CRPクリーナー」に3分間浸し、脱脂した。その後、20℃の水で水洗し、67℃のエッチング液(クロム酸;400g/l、硫酸;400g/l)に10分間浸し、エッチングを行った。次いで、その試験片を20℃で水洗した後、35℃の35%塩酸水溶液により1分間プリディップし、更に、35℃の「CRPキャタリスト」に6分間浸すことにより、Pd−Snコロイド触媒処理を行った。
その後、得られた触媒化試験片を、20℃の水で水洗し、45℃の「CRPセレクターA」及び「CRPセレクターB」にそれぞれ、3分間浸して導体化処理を行った。そして、導体化処理後の試験片を、20℃の水で水洗し、室温で60分間、電気銅鍍金を施して、厚み40μmの銅層を得た。次いで、この銅層付き試験片を、20℃の水で水洗し、80℃で2時間、乾燥させた。
上記銅層付き試験片における銅層の密着性を評価するため、JIS H 8630に準じて、ピーリング強度を測定した。このピーリング強度が1.0kN/m以上であれば、鍍金密着性に優れると判断できる。
また、銅層付き試験片を目視にて観察し、下記基準で外観性を判定した。
「○」:鍍金成形体に光沢があり、過度な凹凸が認められない場合には実用に供し得る外観である。
「×」:明らかに凹凸が認められ、美観を損なうため実用に供することが困難である。
実施例2−2〜2−10及び比較例2−1〜2−6
各種鍍金用組成物と、上記アクリロニトリル・スチレン共重合体とを、表3に記載の割合で用いて、実施例2−1と同様にして、鍍金用成形材料を製造した。そして、実施例2−1と同様にして、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
実施例2−11
30質量部の鍍金用組成物M11と、20質量部の上記アクリロニトリル・スチレン共重合体と、50質量部の三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート樹脂「ノバレックス7022R」(商品名)とを、ヘンシェルミキサーにより混合した後、バンバリーミキサーを用いて、溶融混練(設定温度260℃)し、鍍金用成形材料からなるペレットを作製した。
作製したペレットを用いて、日本製鋼所社製射出成形機「J100E−C5型」(型式名)により、シリンダー設定温度260℃及び金型温度60℃の条件とした以外は、実施例2−1と同様にして射出成形し、試験片を作製した。そして、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0006854718
表2及び表3から明らかなように、本願発明に相当する実施例2−1〜2−11において、鍍金密着性及び耐衝撃性に優れ、鍍金外観が良好な鍍金成形体を製造することができた。一方、本願発明に該当しない比較例2−1〜2−6では、耐衝撃性、鍍金密着性及び外観性の全てが良好な鍍金成形体を製造することができなかった。

Claims (7)

  1. 異相重合体粒子及び水を含有する鍍金用組成物であって、
    前記水の含有割合は、前記鍍金用組成物の全体に対して0.1〜1質量%である鍍金用組成物。
  2. 前記異相重合体粒子の粒子径の変動係数が40〜90%である請求項1に記載の鍍金用組成物。
  3. 前記異相重合体粒子において、
    0.05μm以上の粒径を有する重合体粒子の含有割合が、前記異相重合体粒子の全体に対して80体積%以上であり、
    0.05μm以上0.15μm未満の粒径を有する重合体粒子の含有割合が、前記異相重合体粒子の全体に対して10〜60体積%である、請求項1又は2に記載の鍍金用組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鍍金用組成物と、熱可塑性樹脂とを含有する、鍍金用成形体。
  5. 前記鍍金用組成物に含まれる前記異相重合体粒子及び前記熱可塑性樹脂の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜80質量%及び20〜90質量%である、請求項4に記載の鍍金用成形体。
  6. 請求項4又は5に記載の鍍金用成形体と、該鍍金用成形体の表面に配された鍍金層とを備える、鍍金成形体。
  7. 請求項4又は5に記載の鍍金用成形体に鍍金層を形成する方法であって、前記鍍金用成形体を、30〜80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する、鍍金方法。
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