JP7143062B2 - 鍍金性改良剤、鍍金用成形体、鍍金成形体及び鍍金方法 - Google Patents
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Description
成形体への鍍金方法としては、エッチング(表面粗化)、中和、触媒付与、活性化、無電解鍍金、酸活性、電気鍍金等の工程を、順次、進める、所謂、キャタリスト・アクセレレーター法や、このうち、無電解鍍金工程を省略したダイレクト鍍金法が知られている。
本発明の鍍金性改良剤の一態様は、異相重合体粒子を含有する鍍金性改良剤であって、0.05μm以上の粒子径を有する重合体粒子の含有割合は、上記異相重合体粒子の全体に対して80体積%以上であり、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する重合体粒子の含有割合は、上記異相重合体粒子の全体に対して10~60体積%である。
本発明の鍍金性改良剤の他態様では、更に、水を含有することができる。
本発明の鍍金用成形体の一態様は、適用例1又は2に記載の鍍金性改良剤と、熱可塑性樹脂とを含有する。
上記鍍金性改良剤に含まれる上記異相重合体粒子及び上記熱可塑性樹脂の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10~80質量%及び20~90質量%であることが好ましい。
本発明の鍍金成形体の一態様は、適用例3又は4に記載の鍍金用成形体と、該鍍金用成形体の表面に配された鍍金層とを備える。
本発明の鍍金方法の一態様は、適用例3又は4に記載の鍍金用成形体に鍍金層を形成する方法であって、上記鍍金用成形体を、30~80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する方法である。
本発明の鍍金用成形体によれば、鍍金による銅層等の金属層又は合金層の形成性及びこれらの層の下地への密着性に優れた鍍金成形体を与える。
本発明の鍍金成形体は、金属層又は合金層の下地成形部への密着性に優れるので、外観性も優れる。
本発明の鍍金方法によれば、下地成形部への密着性に優れた金属層又は合金層を効率よく形成することができる。
本明細書における「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~」及び「メタクリル酸~」の双方を包括する概念である。「~(メタ)アクリレート」とは、「~アクリレート」及び「~メタクリレート」の双方を包括する概念である。また、「(メタ)アリル」とは、「アリル」及び「メタリル」の双方を包括する概念である。
本発明の鍍金性改良剤は、異相重合体粒子を含有し、0.05μm以上の粒子径を有する重合体粒子の含有割合は、異相重合体粒子の全体に対して80体積%以上であり、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する重合体粒子の含有割合は、異相重合体粒子の全体に対して10~60体積%であることを特徴とする。本発明の鍍金性改良剤は、必要に応じて、他の成分(後述)を含有することができる。
以下、本発明の鍍金性改良剤に含まれる各成分について詳細に説明する。
本発明に係る異相重合体粒子は、均一相ではなく、互いに異なる2以上の相から構成された粒子である。
上記異相重合体粒子の断面構造としては、コアシェル異相構造(図1)、海島状(アイランド・イン・シー)異相構造(図2)、いいだこ状異相構造(図3、図4)、並置型(サイド・バイ・サイド)異相構造(図5)、ラズベリー状異相構造(図7)、多粒子異相型異相構造(図6、図8)、だるま状異相構造(図9)等が挙げられる。これらの異相構造のうち、コアシェル異相構造(図1)が好ましい。本発明の鍍金性改良剤は、上記のような各種の異相構造の2種以上が組み合わされて1つの異相粒子を形成したものを含んでもよい。
上記異相重合体粒子が、化学構造の異なる2以上の重合体により構成されている場合、耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する重合体を、本発明の鍍金性改良剤と併用される熱可塑性樹脂(スチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等)との親和性が高い化学構造を有する重合体と組み合わされてなるものであることが好ましい。また、上記異相重合体粒子が、化学構造の異なる2以上のブロック構造を有する重合体により構成されている場合、耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有するブロックと、熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有するブロックとを有し、それが相分離して異相構造を形成していることが好ましい。
しかし、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有する重合体Aと、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有する重合体Bとを有する異相重合体粒子、あるいは、1つの主要な耐衝撃性等の機械特性が優れた化学構造を有するブロック構造A‘と、他の1つの主要な熱可塑性樹脂との親和性が高い化学構造を有するブロック構造B’とを有する異相重合体粒子を、上記好ましい構成で含有することにより、エッチング後に鍍金用成形体の機械強度を大幅に劣化させることなく、良好な機械特性を示す鍍金成形体を作製することができる。
尚、異相重合体粒子の粒子径は、この粒子を四酸化オスミウムにより染色した後、染色された粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られたTEM画像を解析することにより測定することができる。また、上記含有割合R1は、0.05μm以上の粒子径を有する異相重合体粒子の合計体積をV1とし、鍍金性改良剤に含まれる異相重合体粒子の全体の体積をVとして、下記式により算出することができる。
R1=(V1/V)×100
更に、上記含有割合R2は、0.05μm以上0.15μm未満の粒子径を有する異相重合体粒子の合計体積をV2とし、鍍金性改良剤に含まれる異相重合体粒子の全体の体積をVとして、下記式により算出することができる。
R2=(V2/V)×100
以下、このような異相重合体粒子を構成する重合体に含有される繰り返し単位について、説明する。
また、上記異相重合体粒子は、共役ジエンに由来する繰り返し単位(r1)が45質量%以上である重合体と、熱可塑性樹脂との親和性が高い官能基を有する繰り返し単位(r2)の合計が20質量%以上である重合体とを含有することがより好ましい。
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、この(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが特に好ましい。
不飽和ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の、モノカルボン酸又はジカルボン酸が挙げられる。これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸が好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミドとしては、アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等が挙げられる。
上記異相重合体粒子において、この粒子を構成する複数の相の吸熱ピーク差が5℃以上であることが好ましい。
また、本発明においては、異相重合体粒子を、JIS K7121に準拠する示差走査熱量測定(DSC)に供したときに、-100℃~200℃の温度範囲において2つ以上の吸熱ピークを示す重合体粒子であることが好ましい。この温度範囲に2つ以上の吸熱ピークを有する異相重合体粒子を含有する鍍金性改良剤を含む鍍金用成形体は、優れた耐衝撃性及び鍍金密着性に優れる。尚、2つ以上の吸熱ピークは、-95℃~180℃の範囲にあることがより好ましく、-90℃~160℃の範囲にあることが特に好ましい。
更に、50℃~200℃の温度範囲において2つ以上の吸熱ピークを示す異相重合体粒子を含有する鍍金性改良剤を含む組成物は、鍍金用成形体を製造する際の溶融混練時に適度な流動性を有し、成形加工性に優れる。この場合、2つ以上の吸熱ピークの温度は、70℃~180℃の範囲にあることが好ましく、90℃~160℃の範囲にあることがより好ましい。
また、上記異相重合体粒子の平均粒子径は、50nm~400nmの範囲にあることが好ましく、80nm~250nmの範囲にあることがより好ましい。異相重合体粒子の平均粒子径が上記範囲内にあると、異相重合体粒子を含有する鍍金性改良剤を含む鍍金用成形体に対して鍍金を行う場合に、エッチング(表面粗化)にて、微細なアンカー孔を効率よく形成させ、鍍金後の金属膜又は合金膜の密着性をより向上させることができる。
尚、異相重合体粒子の平均粒子径は、異相重合体粒子を四酸化オスミウムにより染色し、その後、染色された重合体粒子を透過型電子顕微鏡により観察して得られた画像より、染色された粒子を任意に、例えば、200個選択し、解析ソフトを用いて算出することができる。
尚、このグラフト率は、下記式により求められる。
グラフト率(質量%)={(S-T)/T}×100
(式中、Sは、製造された異相重合体粒子1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離・乾燥して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、異相重合体粒子1gに含まれる、共役ジエンに由来する繰り返し単位を有する原料粒子の質量(g)である。)
尚、グラフト部位の平均厚さは、公知の方法により、異相重合体粒子を四酸化オスミウム等で染色し、透過型電子顕微鏡により観察することにより測定することができる。
本発明の鍍金性改良剤は、水、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、充填剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等の他の成分を含有することができる。本発明の更に好ましい態様は、水を含む鍍金性改良剤である。水を含む鍍金性改良剤を、熱可塑性樹脂とともに含有する組成物を用いて鍍金用成形体を製造すると、外観性に優れ、更に鍍金を行った場合には、良好な密着性を有する鍍金膜を備える鍍金成形体を得ることができる。尚、この場合の鍍金性改良剤における水の含有割合は、異相重合体粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~1質量部、より好ましくは0.2~0.5質量部である。
本発明の鍍金性改良剤に含まれる水は、JIS K7251 「プラスチック-水分含有率の求め方」のB法(カールフィッシャー法)に準拠して定量することができる。
しかしながら、上記の含有割合で水を含む鍍金性改良剤を含有する組成物を用いて、鍍金用成形体を製造すると、優れた鍍金特性を示すこととなるのである。この発現機構は、明らかではないが、本発明者らは、以下のような作用に起因するものと推察している。
しかしながら、成形時の加熱により気化し、鍍金用成形体の内部から表面へ移動し、そして適度に成形体表面を荒しながら脱離する水分は、このような成形体そのものの機械的強度への影響は小さいと推測する。その結果、異相重合体粒子だけでなく水を含む鍍金性改良剤を用いることにより、成形体自身の機械的強度の変化を最低限に抑制したまま、より効果的に成形体表面にアンカー孔を形成させ、鍍金膜の密着強度を向上させることができたと考察する。
老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p-フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
滑剤としては、ワックス、シリコーン、脂質等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。
熱安定剤としては、ホスファイト系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、アミン系熱安定剤等が挙げられる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルや、これらの変性化合物、縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
本発明の鍍金用成形体は、鍍金性改良剤と、熱可塑性樹脂とを含有する物品である。本発明の鍍金用成形体は、鍍金性改良剤及び熱可塑性樹脂を含有する組成物又はこれらの成分を、射出成形装置、プレス成形装置、カレンダー成形装置、Tダイ押出成形装置、異形押出成形装置等、従来、公知の成形装置で加工することにより製造することができる。
また、上記熱可塑性樹脂がABS樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイを含む場合、鍍金性改良剤に由来する異相重合体粒子の含有割合は、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは15~90質量部、より好ましくは25~75質量部である。尚、上記アロイの構成は、鍍金用成形体の耐衝撃性、及び、鍍金膜の密着強度の観点から、ABS樹脂100質量部に対するポリカーボネート樹脂の割合は、好ましくは100~1000質量部である。
本発明の鍍金成形体は、鍍金用成形体の表面の少なくとも一部に金属又は合金を含む鍍金層を備える物品である。鍍金層の厚さは、好ましくは5~200μm、より好ましくは5~150μmである。
本発明の鍍金方法は、鍍金用成形体に30~80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する方法である。
エッチング工程で用いるエッチング液は、特に限定されないが、重クロム酸、重クロム酸/硫酸混液、無水クロム酸、無水クロム酸/硫酸混液等を含むものとすることができる。このエッチング工程では、エッチング液の温度によりエッチング状態が変化し、アンカー孔のサイズに影響を与えるため、エッチング液の温度は、30~80℃であり、好ましくは40~70℃である。エッチング液の温度が低過ぎると、アンカー孔の形成が不十分となる。一方、エッチング液の温度が高過ぎると、オーバーエッチングとなる。
その後の鍍金工程では、上記記載の方法を適用することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
合成例1
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び各原料添加装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、イオン交換水150質量部、1,3-ブタジエン100質量部、tert-ドデシルメルカプタン0.5質量部、高級脂肪酸ナトリウム4質量部、炭酸ナトリウム0.8質量部、水酸化カリウム0.075質量部及び過硫酸カリウム0.15質量部を仕込み、80℃で5時間反応させ、ジエン系重合体粒子(以下、「原料粒子L1」という)の水分散体(ラテックス)を得た。
その後、老化防止剤0.5質量部を添加し、次いで、硫酸水溶液を添加して凝固させ、乾燥することにより、異相重合体粒子P1の粉体を得た。
グラフト率=100×(S-T)/T
更に、アセトン可溶分、即ち、未グラフトの(共)重合体を構成する、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位の含有量(シアン化ビニル化合物単位量)を測定した。サンプルを元素分析することにより窒素を定量し、得られた窒素量からシアン化ビニル化合物単位量を算出したところ、25%であった。
その後、サンプルを、加温により発生させた四酸化オスミウム蒸気に接触させて、異相重合体粒子P1を染色した。これを日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM-1400Plus」により、倍率2500倍にて任意に200個を観察し、相の異なる染色部と非染色部が一つの粒子中に存在することを確認した。その結果、異相重合体粒子P1は、図1に示すコアシェル型の異相重合体粒子であることが分かった。
得られたTEM画像を、画像解析ソフト「Image-Pro Plus Ver.4.0 for Windows(登録商標)」を用いて、異相重合体粒子P1の体積平均粒子径を測定したところ、90nmであった。また、全粒子の体積を算出し、更に、粒子径が0.05μm以上0.15μm未満の粒径区間に存在する粒子の体積%、及び、粒子径が0.15μm以上0.5μm以下の粒径区間に存在する粒子の体積%を算出した。結果を表1に示す。
電解質の使用量及び重合時間を、適宜、調整した以外は、合成例1における原料粒子L1の製造と同様の操作を行って、原料粒子L2~L7を得た。原料粒子L2~L7のガラス転移温度、体積平均粒子径、及び、粒子径分布の標準偏差を合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
次いで、原料粒子L2~L7を含む各ラテックスを用い、重合開始剤又は連鎖移動剤の使用量を、適宜、調整した以外は、合成例1と同様の操作を行って、異相重合体粒子P2~P7を合成した。異相重合体粒子P2~P7の物性についても、合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、各原料添加装置及び助剤添加装置を備えるステンレス鋼製オートクレーブに、イオン交換水150質量部、1,3-ブタジエン50質量部、tert-ドデシルメルカプタン0.3質量部、高級脂肪酸ナトリウム2質量部、水酸化カリウム0.075部及び過硫酸カリウム0.15質量部を仕込み、80℃で重合を開始した。3時間経過後、1,3-ブタジエン50質量部及びtert-ドデシルメルカプタン0.3質量部を添加し、更に4時間重合を継続して、原料粒子L8の水分散体を得た。得られた原料粒子L8のガラス転移温度、体積平均粒子径、及び、粒子径分布の標準偏差を合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
次いで、原料粒子L8を含むラテックスを用い、重合開始剤又は連鎖移動剤の使用量を、適宜、調整した以外は、合成例1と同様の操作を行って、異相重合体粒子P8を合成した。異相重合体粒子P8の物性についても、合成例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1-1
15質量部の異相重合体粒子P1及び30質量部の異相重合体粒子P5を混合し、鍍金性改良剤M1を得た。
その後、サンプルを、加温により発生させた四酸化オスミウム蒸気に接触させて、鍍金性改良剤M1を染色した。これを日本電子社製透過型電子顕微鏡「JEM-1400Plus」により、倍率2500倍にて任意に200個を観察した。
得られたTEM画像を、画像解析ソフト「Image-Pro Plus Ver.4.0 for Windows(登録商標)」を用いて、粒子径が0.05μm以上0.15μm未満の粒径区間に存在する粒子の体積%、及び、粒子径が0.15μm以上0.5μm以下の粒径区間に存在する粒子の体積%を算出した。結果を表2に示す。
各種異相重合体粒子を、表2に記載の割合で用いて、鍍金性改良剤M2~M14を製造した。そして、実施例1-1と同様にして、物性測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例2-1
45質量部の鍍金性改良剤と、熱可塑性樹脂として、55質量部のアクリロニトリル・スチレン共重合体(アクリロニトリルに由来する繰り返し単位:30質量%、スチレンに由来する繰り返し単位量:70質量%、重量平均分子量Mw:104,000)とを、ヘンシェルミキサーにより混合した後、バンバリーミキサーを用いて、溶融混練(設定温度200℃)し、鍍金用組成物のペレットを作製した。
その後、得られた触媒化試験片を、20℃の水で水洗し、45℃の「CRPセレクターA」及び「CRPセレクターB」にそれぞれ、3分間浸して導体化処理を行った。そして、導体化処理後の試験片を、20℃の水で水洗し、室温で60分間、電気銅鍍金を施して、厚み40μmの銅層を得た。次いで、この銅層付き試験片を、20℃の水で水洗し、80℃で2時間、乾燥させた。
上記銅層付き試験片における銅層の密着性を評価するため、JIS H 8630に準じて、ピーリング強度を測定した。このピーリング強度が1.0kN/m以上であれば、鍍金密着性に優れると判断できる。
「○」:鍍金成形体に光沢があり、過度な凹凸が認められない場合には実用に供し得る外観である。
「×」:明らかに凹凸が認められ、美観を損なうため実用に供することが困難である。
各種鍍金性改良剤と、上記アクリロニトリル・スチレン共重合体とを、表3に記載の割合で用いて、実施例2-1と同様にして、鍍金用組成物を製造した。そして、実施例2-1と同様にして、各種評価を行った。その結果を表3に示す。
30質量部の鍍金性改良剤M9と、20質量部の上記アクリロニトリル・スチレン共重合体と、50質量部の三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート樹脂「ノバレックス7022R」(商品名)とを、ヘンシェルミキサーにより混合した後、バンバリーミキサーを用いて、溶融混練(設定温度260℃)し、鍍金用組成物のペレットを作製した。
Claims (5)
- 異相重合体粒子(但し、質量平均粒子径が0.20~0.50μmであるゴム状重合体(d1)40~70質量部に、芳香族ビニル化合物(a1)60~80質量%と、シアン化ビニル化合物(a2)20~40質量%と、該芳香族ビニル化合物(a1)及びシアン化ビニル化合物(a2)と共重合可能な他のモノビニル化合物(a3)0~20質量%とからなる単量体成分(a)30~60質量部をグラフト重合したグラフト共重合体(A-1)(ただし、ゴム状重合体(d1)と単量体成分(a)の合計100質量部)10~30質量%と、質量平均粒子径が0.06~0.15μmであるゴム状重合体(d2)40~70質量部に、前記単量体成分(a)30~60質量部をグラフト重合したグラフト共重合体(A-2)(ただし、ゴム状重合体(d2)と単量体成分(a)の合計100質量部)5~20質量%と、芳香族ビニル化合物(b1)50~80質量%と、シアン化ビニル化合物(b2)20~50質量%と、該芳香族ビニル化合物(b1)及びシアン化ビニル化合物(b2)と共重合可能な他のモノビニル化合物(b3)0~20質量%とを共重合した共重合体(B)5~50質量%と、ポリカーボネート樹脂(C)20~70質量%とを含有し、前記グラフト共重合体(A-1)とグラフト共重合体(A-2)と共重合体(B)とポリカーボネート樹脂(C)の合計100質量%に対する、前記ゴム状重合体(d1)とゴム状重合体(d2)の合計の割合が10~20質量%であり、かつ、前記グラフト共重合体(A-1)とグラフト共重合体(A-2)と共重合体(B)とポリカーボネート樹脂(C)の合計100質量部に対して、融点が25~100℃である酸化防止剤(D)が1~8質量部配合されためっき用樹脂組成物に用いられる、上記グラフト共重合体(A-1)及び上記グラフト共重合体(A-2)を除く)を含有する鍍金性改良剤であって、
前記異相重合体粒子は、体積平均粒子径が50nm~270nmの異相重合体粒子からなり、
0.05μm以上の粒径を有する重合体粒子の含有割合は、前記異相重合体粒子の全体に対して80体積%以上であり、
0.05μm以上0.15μm未満の粒径を有する重合体粒子の含有割合は、前記異相重合体粒子の全体に対して10~60体積%であり、
更に、水を含有する鍍金性改良剤。 - 請求項1に記載の鍍金性改良剤と、熱可塑性樹脂とを含有する、鍍金用成形体。
- 前記鍍金性改良剤に含まれる前記異相重合体粒子及び前記熱可塑性樹脂の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10~80質量%及び20~90質量%である、請求項2に記載の鍍金用成形体。
- 請求項2又は3に記載の鍍金用成形体と、該鍍金用成形体の表面に配された鍍金層とを備える、鍍金成形体。
- 請求項2又は3に記載の鍍金用成形体に鍍金層を形成する方法であって、前記鍍金用成形体を、30~80℃でエッチングを行った後、鍍金層を形成する、鍍金方法。
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